説明

遊技機

【課題】キーシリンダーを用いることなく高い防犯性能で前扉及びガラス枠を施錠でき、コストの上昇を抑えた遊技機を提供する。
【解決手段】本体ケースと、該本体ケースに開閉可能に枢支された前扉と、該本体ケース及び該前扉のうちいずれか一方に設けられた被係止部材と、他方に設けられ該前扉が閉じる以前にハーフロック位置で該被係止部材に係合し、かつ該前扉が閉じたときにフルロック位置で該被係止部材に係合する係止部材41と、該係止部材41を該ハーフロック位置及び該フルロック位置でロックするロック部材5と、該ハーフロック位置の該係止部材41を該フルロック位置に駆動する係止駆動部(共通駆動部6)と、該ロック部材5のロックを解除する電動操作のロック駆動部(共通駆動部6)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ台などの遊技機に関し、より詳細には遊技機の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技店に設置されるパチンコ台などの遊技機は、本体ケースと、本体ケースに開閉可能に枢支された前扉とを主要部材として構成されるのが一般的である。遊技面を備えた前扉には電子制御装置や表示装置などが多数搭載されており、遊技中の不具合への対応や閉店後の調整のために、頻繁に開閉される場合が多い。この多頻度開閉を行うために、前扉の一辺部を本体ケースに枢支させて、回転動作するようにした構造が普及している。しかしながら、前扉はかなりの重量を有するため、開けたときに自重で下方に下がる“扉下がり”の状態が発生しやすく、閉じる際に大きな労力が必要となりがちであった。また、前扉は、遊技者が勝手に開閉操作できないように常時施錠されているが、係員が不注意な閉じ方をすると不完全な施錠となるケースも想定され、好ましくなかった。
【0003】
この対策として、本願出願人は特許文献1に遊技機用施錠装置を開示している。特許文献1の施錠装置は駆動機構を備え、前扉が作業者によって中間位置まで閉じられたときに、以降の施錠操作をアシストするように構成されている。これにより、作業者にかかる負荷は低減され、また、前扉が完全な施錠位置まで確実に回動されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−87692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の施錠装置では、解錠操作はキーをキーシリンダーに差し込んで行うようになっている。特許文献1に限らず、前扉の解錠では、前扉あるいは本体ケースの前面からキーをキーシリンダーに差し込み、回動操作する方式が多用されている。この方式では、キーシリンダーが露出していて不特定の者が容易に触れ得るため、合鍵やピッキングなどによる不正な解錠操作のおそれがあり、防犯性が高いとは言えなかった。
【0005】
一方、特許文献1の施錠装置は、施錠用の駆動機構として例えばモーターを備えている。このモーターは、外部から不正に操作できないように遊技機内部に設けることができるため、解錠用に応用できれば、コストの上昇を抑えつつ防犯性を高めることが可能と考えられる。
【0006】
また、パチンコ台では遊技面を覆い開閉可能なガラス枠が設けられるのが一般的である。このガラス枠の施錠についても、防犯性の向上が望まれている。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、キーシリンダーを用いることなく高い防犯性能で前扉及びガラス枠を施錠でき、コストの上昇を抑えた遊技機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遊技機は、本体ケースと、該本体ケースに開閉可能に枢支された前扉と、該本体ケース及び該前扉のうちいずれか一方に設けられた被係止部材と、他方に設けられ該前扉が閉じる以前にハーフロック位置で該被係止部材に係合し、かつ該前扉が閉じたときにフルロック位置で該被係止部材に係合する係止部材と、該係止部材を該ハーフロック位置及び該フルロック位置でロックするロック部材と、該ハーフロック位置の該係止部材を該フルロック位置に駆動する係止駆動部と、該ロック部材のロックを解除する電動操作のロック駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、特許文献1に開示した施錠装置の改良を主眼としており、施錠時のアシスト機能を維持しつつ防犯性能を高めるため、係員によるキー操作に代えて電動操作によりロックを解除するようにしている。本発明は、パチンコ台の他スロットマシンなどの施錠装置に適用することができる。本体ケースや前扉自体、あるいは枢支部分には、従来の各種構造を適用することができる。
【0010】
被係止部材は、本体ケース及び前扉のうちいずれか一方に固定して設けられた部材であり、例えば、水平に固定される棒材で形成することができる。係止部材は本体ケース及び前扉のうち他方に設けられた部材であり、例えば外周部に係止溝をもち回動する部材で形成することができる。そして、前扉が本体ケースに接近するにつれて被係止部材と係止部材とが接近し、前扉が閉じる以前に被係止部材が係止溝に嵌入し、以降は前扉が完全に閉じるまで被係止部材が係止部材を押して回動させるように配設することができる。ここで、被係止部材が係止溝に嵌合し、その嵌合を解除されないときの係止部材の回動位置がハーフロック位置であり、前扉が完全に閉じたときの係止部材の回動位置がフルロック位置である。被係止部材及び係止部材はそれぞれ1個でもよく、あるいは複数組としてもよい。
【0011】
ロック部材は、係止部材をハーフロック位置及びフルロック位置でロックする部材である。上述の回動する係止部材の例では、係止部材の外周部にハーフロック溝とフルロック溝とを形成することができる。そして、ハーフロック溝及びフルロック溝に嵌合する突起部をロック部材に設け、係止部材に向けて付勢されるように配置することができる。さらに、係止部材が回動してハーフロック位置あるいはフルロック位置に来たとき、突起部がハーフロック溝あるいはフルロック溝に嵌合するように配置することができる。そして、突起部がどちらかのロック溝に嵌合したとき、係止部材の解錠方向の回動が阻止されるようにすることができる。このように、ロック部材の突起部を係止部材のロック溝に嵌合することにより、ロックすなわち施錠を行うことができる。
【0012】
係止駆動部は、ハーフロック位置にある係止部材をフルロック位置に駆動する部位である。係止駆動部は、駆動力を生起するモーターなどの駆動源と、駆動力を適宜変換し伝達する係止駆動機構と、で形成することができる。係止部材がハーフロック位置にあることは、別途センサを設けて検出してもよく、所定位置で自動的に駆動が開始されるメカニカルな機構を付設するようにしてもよい。係止駆動部が係止部材をフルロック位置に駆動するということは、前扉を完全に閉じるように駆動することを意味し、いわゆる“クローザー”の役割を有している。つまり、係員が前扉を閉じる途中で係止駆動部が動作して、係員の労力を低減するようにアシストするとともに、完全な施錠位置まで確実に駆動するようになっている。
【0013】
ロック駆動部は、ロック部材のロックを電動操作で解除する部位である。上述の突起部をもち係止部材に向けて付勢されるロック部材の例では、ロック駆動部はロック部材を係合部材から引き離す方向に駆動することで、ロックを解除することができる。なぜなら、突起部が、嵌合していたロック溝から抜け出て、係止部材の解錠方向の回動が許容されるようになるからである。ロック駆動部は、駆動力を生起する電動駆動源と、駆動力を適宜変換し伝達するロック駆動機構と、で形成することができる。
【0014】
前記ロック駆動部の一部は前記係止駆動部に兼用されることが好ましい。つまり、ロック駆動部の電動駆動源や駆動機構の一部を、係止駆動部に兼用することが好ましい。例えば、ロック駆動部の電動駆動源の出力軸に2個のカムを設け、それぞれが異なる回転位相で係止駆動機構とロック駆動機構とを駆動するように構成することができる。必要に応じ、減速機構なども用いて、所望する駆動トルクや駆動速度を得ることもできる。以上のようにロック駆動部の一部を兼用することにより、遊技機構成の簡素化、コスト上昇の抑制、部品配置の省スペース化を図ることができる。
【0015】
次に、防犯性を一層高めるための電子認証部について説明する。所定の電子認証条件が満たされたときにのみ、前記ロック駆動部の操作を許容する電子認証部を備えることが好ましい。
【0016】
電動操作のロック駆動部に電源を接続すれば解錠操作を行うことができるが、通常のスイッチを設けるだけでは不特定の遊技者が触れ得るため、防犯性の面で問題がある。したがって、合鍵やピッキングによる不正操作の困難な電子認証部を組み込むことが好ましい。電子認証部は、例えばロック駆動部の電源線の途中にスイッチと直列に挿入することができる。そして、所定の電子認証条件が満たされたときにのみ導通するように構成することができる。
【0017】
電子認証の方式としては、磁気情報や、暗証コード、生体情報などの公知の方式を適用することができる。例えば、特定の磁気情報が記録された電子キーやICカードを、遊技機前面に設けたアクセプタに差し込むことを認証条件とすることができる。あるいは、各遊技機に受信機を設け、遊技機ごとの固有の暗証コードにより、無線で解錠指令を送信するようにしてもよい。さらには、指紋や声紋などの生体情報読み取り装置を設けて、登録された係員のみを峻別するようにしてもよい。
【0018】
次に、ガラス枠の施錠装置について説明する。前記本体ケースまたは前記前扉に開閉可能に枢支されたガラス枠と、該ガラス枠を施錠する枠施錠部と、該枠施錠部のロックを解除する電動操作の枠ロック駆動部と、を備え、前記電子認証部は該枠ロック駆動部の操作を許容するようにしてもよい。
【0019】
アシスト機能を必要としないガラス枠の枠施錠部でも、電動操作の枠ロック駆動部と、電子認証部と、を備えた構成とすることができる。ここで、電源及び電子認証部を、前扉とガラス枠とで共用し、電子認証条件が満たされたときにどちらでも解錠操作できるようにすることができる。この態様によれば、ガラス枠の施錠装置の防犯性を高めることができ、かつ遊技機を簡素に構成してコストの上昇を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の遊技機では、前扉を施錠するロック部材のロックを解除するために、電動操作のロック駆動部を設けたので、従来の合鍵やピッキングによる不正操作を防止することができる。さらに、電子認証部を備える態様では、係員以外の操作は困難であり、防犯性能は一層向上する。また、電子認証部はガラス枠の枠施錠部にも共用することができ、防犯性能はさらに向上するとともに、コストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図9を参考にして説明する。図1は、遊技機9の一般的な構造を説明する図である。遊技機9は、立設された略矩形枠状の本体ケース1と、遊技面や遊技ハンドルなどを備えた前扉2と、常時前扉2を覆うガラス枠3と、を主にして構成されている。前扉2及びガラス枠3は、本体ケース1の左端前面に設けられた枢支部91により、開閉可能に枢支されている。すなわち、前扉2は、図中左側の一辺部を軸心として回動することにより、本体ケース1に対して開閉するようになっている。また、ガラス枠3は、図中奥側の一辺部を軸心として回動することにより、前扉2に対して開閉するようになっている。ここで、前扉2とガラス枠3とは独立して開閉するため、別々に施錠することが必要である。そして、施錠のための各種部材は、遊技機9の右側に配設されている。
【0022】
図2は、本発明の実施例の遊技機を説明する図であり、図1に示す遊技機9の右側X方向からみた要部である。図2は、前扉2とガラス枠3の両方が施錠された状態を示しており、見易くするために不必要な部材は省略してある。本発明の遊技機では、前扉2の施錠装置として。2組の被係止部材及び係止部材と、ロック部材5と、係止駆動部及びロック駆動部を兼ねる共通駆動部6と、を備えている。また、ガラス枠3の施錠装置として、2組の被係止部材及び係止部材と、枠ロック駆動部7と、を備えている。さらに、共通駆動部6及び枠ロック駆動部7の操作を許容する部位として、図2には示されていない電子認証部を備えている。
【0023】
まず、前扉2の施錠装置から説明する。前扉2用の被係止部材は、本体ケースの右側前面に棒材が水平に固定して形成されており、下側が下被係止部材11、上側が上被係止部材12である。係止部材は、前扉2側で被係止部材と対向する箇所にそれぞれ設けられ、下側が下係止部材41、上側が上係止部材42である。図2に示されるように、上係止部材42は、中央421が枢支され、一端が上方に折り曲げられて返し部422が形成されている。この返し部422は、ばね423により上方に付勢され、前扉2が閉じた状態で上被係止部材12を係止するようになっている。上係止部材42の他端には連結孔424が設けられ、後述の上連結部材67が結合されている。
【0024】
下係止部材41は、下被係止部材11を係止する一方で、ロック部材5によってロックされる板状の部材である。図3は、下係止部材41、ロック部材5、及び共通駆動部6を説明する部分拡大斜視図である。図3に示されるように、下被係止部材41は、中央411が枢支されて回動し、外周部の上側に係止溝412をもつように形成されている。係止溝412は、下被係止部材11を保持できるだけの幅及び深さをもち、図中の反時計回りに回動することにより係止するようになっている。また、下係止部材41の外周部の左上部には、ロック部材5が嵌合する2つのロック溝が形成されており、図中左側がハーフロック溝413、右側がフルロック溝414である。さらに、下係止部材41の外周部の下側には後述の係止用カム63に駆動される従動突部415が形成されている。
【0025】
ロック部材5は、下係止部材41の上方に配設される板状の部材であり、右端511が枢支されて揺動するように形成されている。ロック部材5の下側には、下係止部材41に向かって突出する突起部512が形成されている。ロック部材5と下係止部材41とは、互いを押圧するように、ばね52によって付勢されている。このばね52により、突起部512は下係止部材41に向けて付勢され、ハーフロック溝413やフルロック溝414に嵌合するようになっている。ここで、突起部512がハーフロック溝413に嵌合するときの下係止部材41の回動位置がハーフロック位置であり、突起部512がフルロック溝414に嵌合するときの係止部材41の回動位置がフルロック位置である。
【0026】
なお、突起部512と、ハーフロック溝413及びフルロック溝414とは、非対称に形成されて、ラチェット機能を有している。すなわち、ばね52による付勢時には、下係止部材41は反時計回りには回動できても、時計回りの回動は阻止されている。したがって、突起部512は、非嵌合位置からハーフロック溝413へ、ハーフロック溝413からフルロック溝414へと、施錠方向へのみ動作して嵌合し、ロック機能を果たすことができる。
【0027】
次に、下係止部材41及びロック部材5を共通に駆動する共通駆動部6を、図3及び図4を参考にして説明する。図4に示されるように、共通駆動部6は、駆動源として共通駆動モーター61を備えている。共通駆動モーター61の出力軸にはウォームギヤ621が設けられ、ウォームギヤ621と噛合するヘリカルギヤ622には一緒に回転する小ギヤ623が設けられている。さらに小ギヤ623と噛合する大ギヤ624には、一緒に回転する係止用カム63が紙面手前側に、解錠用カム64が紙面奥側に設けられている。これらのギヤ621、622、623、624を組み合わせた駆動機構によって、出力回転数は適宜減速されるようになっている。また、共通駆動モーター61の電源線は反転接続可能とされ、回転方向を切り替えられるように構成されている。
【0028】
図3に戻り、係止用カム63は、時計回りに回転することにより、従動突部415に当接してこれを駆動し、下係止部材41を反時計回りに回動するようになっている。また、係止用カム63の反時計回りの回動を途中で止めるストッパー631が設けられている。さらに、共通駆動部6は、下係止部材41のハーフロック位置を検出する図略のセンサを備え、ハーフロック位置を検出したときに、共通駆動モーター61を自動的に動作させるようにしている。
【0029】
図3で、解錠用レバー65は、中央651が枢支されて揺動可能であり、図中右側で図示されていない解錠用カム64と係合されている。解錠用レバー65の図中左側には下連結部材66及び上連結部材67が結合され、常時左側が下がるようにばね652で付勢されている。下連結部材66は、上方でロック部材5の左端513に結合している。上連結部材67は、上方で上係止部材42の連結孔424に結合されている。そして、解錠用カム64が反時計回りに回動すると、解錠用レバー65は右側が下降して左側が上昇するようになっている。この動作により、ロック部材5及び上係止部材42が駆動される。
【0030】
次に、上述のように構成された前扉2の施錠装置の操作、作用について、図5及び図6を参考にして説明する。図5は、前扉2の施錠操作を説明する図であり、(A)は解錠状態、(B)はハーフロック状態、(C)はフルロック状態をそれぞれ示している。図5(A)において、前扉2は解錠されて開放されており、下被係止部材11と、下係止部材41とは離れている。このとき、下係止部材41は時計回りの方向いっぱいまで回動され、係止溝412は右上方に開いて、下被係止部材11の嵌入が可能な状態となっている。また、ロック部材5の突起部512は、下係止部材41のハーフロック溝413よりも左側に位置している。
【0031】
図5(A)の解錠状態から、係員が前扉2を回動して本体ケースに近付けてゆくと、図中矢印Yで示されるように、下係止部材41が下被係止部材11に接近する。そして、図5(B)に示されるように、下被係止部材11が係止溝412に嵌入し、下係止部材41が反時計回りに回動を始める。すると、ハーフロック溝413も回動して、突起部512が嵌合する。
【0032】
係員が勢いよく操作を行った場合には、惰性により前扉2は一気に完全に閉じて、図5(C)に示されるように、下係止部材41は反時計回りに回りきり、突起部512はハーフロック溝413から滑動してフルロック溝414に嵌合する。係員の操作が緩やかな場合や、“扉下がり”により摩擦抵抗が生じた場合などでは、(B)のハーフロック状態で一旦停止あるいは閉じる速度が低下する。このとき、図略のセンサは下係止部材41のハーフロック位置を検出し、共通駆動モーター61を動作させる。すると、図4に示された駆動機構により、係止用カム63が時計回りに駆動されて従動突部415を押し、下係止部材41は反時計回りに回りきり、(C)のフルロック状態まで操作がアシストされる。
【0033】
閉操作の途中及び閉状態では、突起部51とロック溝413、414との間にラチェット機能が働いている。したがって、下係止部材41の時計回りの回動は阻止され、最終的に、突起部512がフルロック溝414に嵌合した(C)のフルロック状態で、前扉2が施錠される。
【0034】
なお、図2に示された上係止部材42においては、上被係止部材12の係止は、下係止部材41側に同期して行われる。すなわち、係員が前扉2を本体ケースに近付けてゆくと、上係止部材42は離れていた上被係止部材12に接近する。続いて、上被係止部材12は、ばね423に抗して上係止部材42の返し部422を下方に押し下げ、返し部422を乗り越える。そして一旦乗り越えた上被係止部材12は、ばね423と返し部422との作用により、図2に示されるようにロックされる。
【0035】
続いて、図6を参考にして前扉2の解錠操作について説明する。図6は、前扉2の解錠操作を説明する図であり、(A)はフルロック状態、(B)は解錠状態、をそれぞれ示している。図6(A)のフルロック状態において、ばね52の付勢により、下被係止部材11を係止している下係止部材41に、ロック部材5が押圧されている。この押圧により、ロック部材5の突起部512は、下係止部材41のフルロック溝414に嵌合している。また、解錠用レバー65は、ばね652により付勢されて、左側が下がった状態となっている。
【0036】
ここで、係員により解錠指令が出されると、共通駆動モーター61の電源線が反転接続されて動作し、係止用カム63及び解錠用カム64を反時計回りに駆動する。係止用カム63は、(B)に示されるようにストッパー631に当接するまで回動して、従動突部415から離隔する。また、解錠用カム64が回動すると解錠用レバー65の右側653に係合し、ばね652に抗して右側653を押し下げるので、左側は上昇する。したがって、解錠用レバー65の左側に結合された下連結部材66及び上連結部材67は上昇する。さらに、下連結部材66により、ロック部材5の左端513が上方に駆動されると、突起部512も上方に駆動されてフルロック溝414から抜け出て、図6(B)に示される解錠状態となる。この状態で、前扉2を開ければ、下係止部材41は時計回りに回動して係止溝412は右上方に開き、下被係止部材11は図中矢印Z方向に抜け出ることができる。
【0037】
また、上連結部材67により、上係止部材42の他端が上方に駆動されると、一端側の返し部422は、ばね423に抗して下方に駆動される。これにより、上被係止部材12は係止を解かれる。結局、下被係止部材11と上係止部材とは、一緒に係止を解かれて解錠され、前扉2を開けることができる。
【0038】
以上説明したように、実施例の前扉2の施錠装置は、キーシリンダーをもたないので、合鍵やピッキングによる不正な解錠は行えず、防犯性能は高い。
【0039】
次に、ガラス枠3の施錠装置を説明する。図2に示されるように、ガラス枠3用の被係止部材は、ガラス枠3の右側裏面に棒材が水平に固定して形成されており、下側が下被係止部材35、上側が上被係止部材36である。係止部材は、前扉2側で被係止部材と対向する箇所にそれぞれ設けられ、下側が下係止部材45、上側が上係止部材46である。図示されるように、下係止部材45及び上係止部材46は、中央451、461が枢支されている。下係止部材45及び上係止部材46の一端には、下方に折り曲げられた返し部452、462が形成され、ばね(図3に下側のみ459として図示)によって下方に付勢されている。下係止部材45及び上係止部材46の他端には、上下に長い長孔453、463が穿孔されている。さらに、2つの長孔453、463の間は、連結部材47で結合されている。連結部材47の中央付近には、図7に示される枠ロック駆動部7が設けられている。
【0040】
図7は、ガラス枠3の施錠装置のロックを解除する枠ロック駆動部7の斜視図である。枠ロック駆動部7は、駆動源として枠用駆動モーター71を備えている。枠用駆動モーター71の出力軸にはウォームギヤ721が設けられ、ウォームギヤ721と噛合するヘリカルギヤ722の側面には駆動突部73が設けられている。また、枠操作レバー74は中央741が枢支されて揺動可能であり、図中左端742は連結部材47と結合している。枠操作レバー74の図中右側には従動溝743が形成され、駆動突部73が係合するようになっている。さらに、従動溝743の入り口右側には、駆動突部73が嵌合する窪んだ嵌合座744が形成されている。
【0041】
次に、上述のように構成されたガラス枠3の施錠装置の操作、作用について、図2及び図8を参考にして説明する。なお、上下2箇所の枠施錠部分は略同一の動作、作用であるため、上側を代表にして説明する。係員がガラス枠3を回動して前扉2に近付けてゆくと、上被係止部材36は、離れていた上係止部材46に接近する。続いて、上被係止部材36は、上係止部材46の返し部462を上方に押し上げ、返し部462を通過する。このとき、上係止部材46の他端は長穴463で連結部材47と結合していて遊びがあるため、連結部材47には妨害されない。そして一旦通過した上被係止部材36は、図2に示されるように、返し部462によってロックされる。
【0042】
図8は、ガラス枠3の解錠操作を説明する図であり、(A)は施錠状態、(B)は解錠状態、をそれぞれ示している。図8(A)の施錠状態において、枠操作レバー74は図中右側が下がり、駆動突部73が嵌合座744に嵌合している。この状態で、係員により解錠指令が出されると、枠用駆動モーター71が動作し、ヘリカルギヤ722を時計回りに駆動する。すると、駆動突部73は、嵌合座744を抜け出て従動溝743に係合しつつ、枠操作レバー74を反時計回りに駆動する。これにより、枠操作レバー74の左端742は下降し、連結部材47も下降して、上係止部材46他端の長孔463を引き下げる。すると上係止部材46の一端の返し部462が上昇して、上被係止部材36が係止を解かれる。同様に、下被係止部材35も係止を解かれて、ガラス枠3は解錠される。
【0043】
ガラス枠3の施錠装置においては、ガラス枠3と前扉2との隙間などから下係止部材45及び上係止部材46の一方をピッキングしても、長孔453、463の遊びにより連結部材47は動かない。したがって、上下両方の係止は同時には解かれず、解錠されない。また、連結部材47のピッキングは、図8(A)に示されるように枠操作レバー74によって阻止されている。詳述すると、施錠状態において連結部材47を下降させるためには、枠操作レバー74を反時計回りに揺動して、左端742を下降させる必要がある。ところが、左端742を下降させようとしても、枠操作レバー74の右側の嵌合座744は、駆動突部73をヘリカルギヤ722の軸心方向にのみ押圧することになる。したがって、駆動突部73は、嵌合座744の左右どちらへも抜けず、枠操作レバー74は揺動せず、解錠されない。
【0044】
以上説明したように、実施例のガラス枠3の施錠装置もまた、高い防犯性能を有している。
【0045】
次に、防犯性を一層高めるための電子認証部について、図9を参考にして説明する。図9は、実施例の遊技機の電気接続に電子認証部8を組み込んだ接続概念図である。図9に示されるように、実施例の電気接続方法では、電源93から機内電装品92への接続線が分岐されて、電子制御ユニット81の入力側811に接続されている。電子制御ユニット81には、前扉用スイッチ85と枠用スイッチ86とが設けられている。そして、電子制御ユニット81の出力側812は、電子認証部8の入力側801に接続されている。電子認証部8の出力側802には、共通駆動モーター61と枠用駆動モーター71とが、並列に接続されている。なお、電子認証部8、前扉用スイッチ85、及び枠用スイッチ86は、遊技機前面に設けられている。
【0046】
電子認証部8は、所定の電子認証条件が成立したときにのみ、入力側801と出力側802とが導通するように構成されている。電子認証部8には、公知の各種方式を適用することができ、制約はない。また、電子認証部8では、前扉用スイッチ85が操作された場合に共通駆動モーター61のみが導通し、枠用スイッチ86が操作された場合に枠用駆動モーター71のみが導通するようになっている。電子制御ユニット81は、解錠の一定時間後に、この導通を遮断するように制御している。
【0047】
上述のように電子認証部8を組み込んだ電気接続によれば、係員が電子認証部8で所定の電子認証条件を満足させ、かつ、前扉用スイッチ85または枠用スイッチ86を選択的に操作することにより、前扉2またはガラス枠3を解錠することができる。さらに、前扉2を閉じる際には、共通駆動モーター61により操作がアシストされる。
【0048】
一方、遊技者は、前扉用スイッチ85や枠用スイッチ86を操作することはできても、電子認証部8の電子認証条件を満足させることはできない。したがって、防犯性能は一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】遊技機の一般的な構造を説明する図である。
【図2】本発明の実施例の遊技機において、前扉の施錠装置の要部を説明する図である。
【図3】図2の実施例において、下係止部材、ロック部材、及び共通駆動部を説明する部分拡大斜視図である。
【図4】図2の実施例において、共通駆動部を説明する図である。
【図5】図2の実施例において、前扉の施錠操作を説明する図であり、(A)は解錠状態、(B)はハーフロック状態、(C)はフルロック状態をそれぞれ示している。
【図6】図2の実施例において、前扉の解錠操作を説明する図であり、(A)はフルロック状態、(B)は解錠状態、をそれぞれ示している。
【図7】本発明の実施例の遊技機において、ガラス枠の施錠装置のロックを解除する枠ロック駆動部の斜視図である。
【図8】ガラス枠の解錠操作を説明する図であり、(A)は施錠状態、(B)は解錠状態、をそれぞれ示している。
【図9】実施例の遊技機の電気接続に電子認証部を組み込んだ接続概念図である。
【符号の説明】
【0050】
1:本体ケース
11:下被係止部材 12:上被係止部材
2:前扉
3:ガラス枠
35:下被係止部材 36:上被係止部材
41:下係止部材 42:上係止部材
45:下係止部材 46:上係止部材 47:連結部材
5:ロック部材 52:ばね
6:共通駆動部(係止駆動部及びロック駆動部を兼ねる)
61:共通駆動モーター 63:係止用カム 64;解錠用カム
65:解錠用レバー 66:下連結部材 67:上連結部材
7:枠ロック駆動部
71:枠用駆動モーター 73:駆動突起 74:枠操作レバー
8:電子認証部
81:電子制御ユニット 85:前扉用スイッチ 86:枠用スイッチ
9:遊技機
91:枢支部 92:機内電装品 93:電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
該本体ケースに開閉可能に枢支された前扉と、
該本体ケース及び該前扉のうちいずれか一方に設けられた被係止部材と、
他方に設けられ該前扉が閉じる以前にハーフロック位置で該被係止部材に係合し、かつ該前扉が閉じたときにフルロック位置で該被係止部材に係合する係止部材と、
該係止部材を該ハーフロック位置及び該フルロック位置でロックするロック部材と、
該ハーフロック位置の該係止部材を該フルロック位置に駆動する係止駆動部と、
該ロック部材のロックを解除する電動操作のロック駆動部と、
を備えることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記ロック駆動部の一部は前記係止駆動部に兼用される請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
所定の電子認証条件が満たされたときにのみ、前記ロック駆動部の操作を許容する電子認証部を備える請求項1または2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記本体ケースまたは前記前扉に開閉可能に枢支されたガラス枠と、該ガラス枠を施錠する枠施錠部と、該枠施錠部のロックを解除する電動操作の枠ロック駆動部と、を備え、前記電子認証部は該枠ロック駆動部の操作を許容する請求項3に記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−319536(P2007−319536A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154985(P2006−154985)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【出願人】(598023126)エィ・ケィ・ケィ・エム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】