説明

遊星ボールミル

【課題】自転するミルポットを1箇所のみでシールできるようにすることである。
【解決手段】ミルポット7の上端開口部に、先端が開口する筒状のガイド部材17を、ミルポット7の自転軸と同一軸心で挿入し、ガイド部材17に原料供給管18と製品排出部としての接続管27を接続し、これらの原料供給管18と接続管27の接続位置よりも先端側で、ミルポット7の上端開口部をシール部材20でシールすることにより、自転するミルポット7を1箇所のみでシールできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸の周囲に同心円上に配設した複数のミルポットを公転させながら自転させて、ミルポット内の原料を粉砕ボールで粉砕する遊星ボールミルに関する。
【背景技術】
【0002】
高速で回転する主軸の周囲に同心円上に配設した複数のミルポットを、主軸の回りに公転させながら自転させて、ミルポット内の原料を粉砕ボールで粉砕する遊星ボールミルには、ミルポットへ連続的または断続的に原料を供給する原料供給管と、粉砕された製品をミルポットから気流で排出する製品排出部とを設けた連続式ガススエプト型のものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたものでは、ミルポットの一端側の自転中心部に原料供給管を接続し、他端側の自転中心部に製品排出部としての取出し管を接続して、L字状に屈曲させた取出し管を主軸の周囲に形成した環状空間の共通基部に接続し、この共通基部の端に接続された静止した吸引管から製品を外部へ排出するようにしている。
【0004】
特許文献2に記載されたものでは、同様に各ミルポットの一端側の自転中心部に原料供給管を接続し、他端側の自転中心部に設けた通過孔を主軸の拡径部に設けた円環状の製品排出部に接続して、この製品排出部に連通する主軸の出口側軸孔を通して製品を外部へ排出するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特公昭34−7493号公報
【特許文献2】特公平6−104206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載された連続式ガススエプト型の遊星ボールミルは、自転するミルポットの一端側に原料供給管を接続し、他端側に製品排出部を接続しているので、ミルポットの気密性を確保するために、自転するミルポットと、自転しない原料供給管および製品排出部との間を、それぞれ別々にシールする必要がある。このため、複数箇所にミルポットのシール手段を必要とし、ひいては、ミルポットの気密性も損なわれやすい問題がある。マグネシウムやアルミニウム等の酸化しやすい粉体原料を粉砕する場合は、原料の急激な酸化を防止するために、アルゴンガス等の不活性ガスを供給することがあり、ミルポットの気密性を確保することは、特に重要となる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、自転するミルポットを1箇所のみでシールできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、回転する主軸の周囲に同心円上に配設した複数のミルポットを、主軸の回りを公転させながら自己の自転軸を中心に自転させ、これらのミルポットへ連続的または断続的に原料を供給する原料供給管と、粉砕された製品をミルポットから気流で排出する製品排出部とを設けた遊星ボールミルにおいて、前記ミルポットの開口部に、先端だけが開口する筒状のガイド部材をミルポットの自転軸と同一軸心で挿入し、このガイド部材に前記原料供給管と製品排出部とを接続し、これらの原料供給管と製品排出部の接続位置よりも先端側で、前記ミルポットの開口部をシールするシール手段を設けた構成を採用した。
【0009】
すなわち、ミルポットの開口部に、先端だけが開口する筒状のガイド部材をミルポットの自転軸と同一軸心で挿入し、このガイド部材に原料供給管と製品排出部とを接続し、これらの原料供給管と製品排出部の接続位置よりも先端側で、ミルポットの開口部をシールするシール手段を設けることにより、自転するミルポットを1箇所のみでシールできるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遊星ボールミルは、ミルポットの開口部に、先端だけが開口する筒状のガイド部材をミルポットの自転軸と同一軸心で挿入し、このガイド部材に原料供給管と製品排出部とを接続し、これらの原料供給管と製品排出部の接続位置よりも先端側で、ミルポットの開口部をシールするシール手段を設けたので、自転するミルポットを1箇所のみでシールすることができ、ひいては、ミルポットの気密性も容易に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この遊星ボールミルは、図1および図2(a)に示すように、下端に取り付けられたプーリ1aを介して回転駆動される主軸1が、フレーム2に取り付けられた筒状のハウジング3に縦向きに軸受4a、4bで支持され、ハウジング3に取り付けられたケーシング5内で主軸1に外嵌された回転テーブル6に、2つのミルポット7が180°の位相で同心円上に配設され、ミルポット7を収納するポットケース8に設けられた遊星歯車9と、ハウジング3に環状の取り付け部材10を介して固定された太陽歯車11が噛み合わされており、各ミルポット7が主軸1の回りを公転しながら自己の自転軸を中心に自転するようになっている。
【0012】
図2(a)および図3に示すように、前記主軸1の上端には、外径がミルポット7の配設された同心円よりも大径に形成された円環部12aと、その中心を通る直線部12bを有する水平なプレート部材12が取り付けられ、その上面の中心に縦向きの筒部材13が取り付けられて、ケーシング5内の天井から筒部材13に挿入された原料とガスの投入管14が軸受15で支持されている。投入管14の先端はプレート部材12の中心孔12cに開口し、静止した投入管14と回転する筒部材13の間はシール部材16でシールされている。
【0013】
前記プレート部材12の直線部12bには、各ミルポット7の自転中心位置に向かって斜め下向きに突出する突出部12dが設けられ、その中心孔12cから両側に延びて突出部12dの下端に開口する直線通路12eが形成されており、各突出部12dの下端に、先端となる下端だけが開口する筒状のガイド部材17が、各ミルポット7の自転軸と同一軸心で取り付けられて、ミルポット7の上端開口部に挿入されている。また、ガイド部材17の上端部には原料供給管18が接続され、この原料供給管18が直線通路12eに接続されてミルポット7の下部へ垂下され、ミルポット7へ原料とガスが連続的または断続的に供給されるようになっている。
【0014】
前記ガイド部材17の上部には製品とガスの排出孔17aが設けられ、この排出孔17aの部分に、後述する製品排出部としての接続管27が接続されており、ミルポット7で粉砕された製品は、ガイド部材17に案内されて、排出孔17aから接続管27へ排出される。なお、図4に示すように、ガイド部材17の下端部には、原料供給管18を振れ止めする複数の支持腕19が放射状に設けられている。
【0015】
図3に示すように、前記ミルポット7の上端開口縁にはシールホルダ20aが取り付けられ、シールホルダ20aに装着されたシール手段としてのシール部材20によって、ガイド部材17の先端側の下部外径面との間がシールされ、ミルポット7の気密性が確保されるようになっている。また、ミルポット7を収納するポットケース8は、回転テーブル6に設けられた孔の縁に取り付けられた筒状の支持部材21に軸受22で回転自在に支持され、その外周面には冷却用のフィン8aが設けられている。
【0016】
前記プレート部材12の円環部12aの外径端には、下向きの円筒部23aと、円筒部23aから外径側に張り出す円環部23bとから成り、内外径面に貫通する貫通孔23cが形成された回転リング23が一体に設けられるとともに、回転リング23の円環部23bを回転可能に抱え込む環状凹部24aと、環状凹部24aに連なり、円環部23bの貫通孔23cが開口する外径面と対向する環状通路24bが形成された静止リング24が設けられており、環状凹部24aには、抱え込まれた回転リング23の円環部23bの上下両面との間をシールするシール部材25が設けられている。なお、図1に示したように、静止リング24は支持部材26でケーシング5に固定されている。
【0017】
前記回転リング23の内径側には、ミルポット7内をガイド部材17を介して貫通孔23cと連通させる製品排出部としての接続管27が設けられている。接続管27は、ガイド部材17の排出孔17aが設けられた外径面と回転リング23の円筒部23aとに両端を固定されている。
【0018】
また、前記静止リング24の環状通路24bには製品を外部へ排出する1本の排出管28が接続され、円環部23bの外径面には、図2(a)、(b)に示すように、各貫通孔23cの回転方向後面側で、各貫通孔23cから環状通路24bに移送される製品をガスと一緒に排出管28へ排出するガイド羽根29が設けられている。したがって、ミルポット7で粉砕された製品は、主軸1とともに回転するガイド部材17、接続管27および回転リング23の貫通孔23cから静止リング24の環状通路24bへ移送され、ガスと一緒に排出管28から排出されて、図1に示したように、捕集機30で捕集される。
【0019】
上述した実施形態では、主軸を縦向きとして、その同心円上に2つのミルポットを配設したが、主軸は横向きのものとすることもできる。また、ミルポットの配設個数は3つ以上とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態の遊星ボールミルを示す縦断面図
【図2】aは図1のIIa−IIa線に沿った切欠き矢視図、bはaのIIb−IIb線に沿った断面図
【図3】図1の要部を拡大して示す縦断面図
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図
【符号の説明】
【0021】
1 主軸
1a プーリ
2 フレーム
3 ハウジング
4a、4b 軸受
5 ケーシング
6 回転テーブル
7 ミルポット
8 ポットケース
8a フィン
9 遊星歯車
10 取り付け部材
11 太陽歯車
12 プレート部材
12a 円環部
12b 直線部
12c 中心孔
12d 突出部
12e 直線通路
13 筒部材
14 投入管
15 軸受
16 シール部材
17 ガイド部材
17a 排出孔
18 原料供給管
19 支持腕
20 シール部材
20a シールホルダ
21 支持部材
22 軸受
23 回転リング
23a 円筒部
23b 円環部
23c 貫通孔
24 静止リング
24a 環状凹部
24b 環状通路
25 シール部材
26 支持部材
27 接続管
28 排出管
29 ガイド羽根
30 捕集機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する主軸の周囲に同心円上に配設した複数のミルポットを、主軸の回りを公転させながら自己の自転軸を中心に自転させ、これらのミルポットへ連続的または断続的に原料を供給する原料供給管と、粉砕された製品をミルポットから気流で排出する製品排出部とを設けた遊星ボールミルにおいて、前記ミルポットの開口部に、先端だけが開口する筒状のガイド部材をミルポットの自転軸と同一軸心で挿入し、このガイド部材に前記原料供給管と製品排出部とを接続し、これらの原料供給管と製品排出部の接続位置よりも先端側で、前記ミルポットの開口部をシールするシール手段を設けたことを特徴とする遊星ボールミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−291683(P2009−291683A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145660(P2008−145660)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】