説明

運動検出装置、運動検出方法、及びプログラム

【課題】精度良く運動を検出するための運動検出装置を提供すること。
【解決手段】身体の動きを検出し、検出した時系列の動きを示す第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成し、生成した第1の周波数データを非線形変換して第2の周波数データを生成し、生成した第2の周波数データを時間領域のデータに変換して第2の時間データを生成し、生成した第2の時間データから低周波成分を抽出して第3の時間データを生成し、生成した第3の時間データを周波数領域のデータに変換して第3の周波数データを生成し、生成した第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出する、運動検出装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動検出装置、運動検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
身体の動きを分析し、その分析結果を健康状態の管理やリハビリテーションの場面で利用しようという試みが行われている。こうした試みを進める上で問題となるのは、身体の動きを如何にして精度良く検出するかということである。身体の動きは、加速度センサ、ジャイロセンサ、皮膚温センサ、脈拍センサ等の運動センサを利用することにより検出される。例えば、加速度センサやジャイロセンサを利用すると、歩く、走る、座る、立つ、横になる、といった日常的な行動を検出することができる。
【0003】
運動センサを利用した日常的な行動の検出方法として、例えば、下記の特許文献1には、運動センサによる検出結果を示すセンサデータの波形から日常的な行動を検出する方法が開示されている。通常、座っている状態や横になっている状態では加速度センサにより得られるセンサデータの波形は、振幅の小さいものとなる。そのため、センサデータの振幅が所定の閾値よりも小さい場合には、座っている状態か横になっている状態であると判定することができる。さらに、重力のかかる方向を判別することにより、座っている状態と横になっている状態を区別することも可能である。同文献に開示されている方法を利用すると、このようにして日常的な行動を検出することができる。
【0004】
また、下記の特許文献2には、日常的な行動の種類ではなく、運動のペースを検出する方法が開示されている。同文献には、例えば、加速度センサにより得られるセンサデータの波形を分析して歩行のペースを検出する方法が開示されている。通常、歩行は、1歩を1周期とする周期的なパターンを持つ運動である。特に、歩行中は、あるペースで腰部、脚部、腕部などの身体部位が運動を繰り返す。そのため、これらの身体部位に加速度センサを装着し、その加速度センサにより得られたセンサデータの波形に現れる周期性を検出することにより、歩行のペースを検出することが可能になる。同文献に開示されている方法を利用すると、このようにして歩行のペースを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−24026号公報
【特許文献2】特開2008−154733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の各文献に開示されている方法を利用しても、十分な精度で「運動」(例えば、歩行のような周期性のある動き)を検出することはできない。一般に、センサデータには、ある身体部位の運動を直接反映した周波数成分と、その他の周波数成分が含まれる。その他の周波数成分としては、例えば、運動とは直接関係のない他の身体部位が発生させる細かな振動などがある。運動を反映した周波数成分は、低周波帯域に現れる。一方、その他の周波数成分は、高周波帯域に現れる。しかし、いずれの周波数成分も、同じ生体の動きに起因して生じるものであるため、これらを明確に分けることは容易でない。上記の各文献に開示されている方法は、これら周波数成分を十分な精度で分けることができないため、結果として「運動」を十分な精度で検出することができないのである。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より精度良く運動のペースを検出することが可能な、新規かつ改良された運動検出装置、運動検出方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、身体の動きを検出する動き検出手段と、前記動き検出手段により検出された時系列の動きを示す第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成する第1の時間・周波数変換手段と、前記第1の時間・周波数変換手段により生成された第1の周波数データを非線形変換して第2の周波数データを生成する非線形変換手段と、前記非線形変換手段により生成された第2の周波数データを時間領域のデータに変換して第2の時間データを生成する第1の周波数・時間変換手段と、前記第1の周波数・時間変換手段により生成された第2の時間データから低周波成分を抽出して第3の時間データを生成する低周波成分抽出手段と、前記低周波成分抽出手段により生成された第3の時間データを周波数領域のデータに変換して第3の周波数データを生成する第2の時間・周波数変換手段と、前記第2の時間・周波数変換手段により生成された第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出するペース検出手段と、を備える運動検出装置が提供される。
【0009】
また、前記第1の時間・周波数変換手段は、前記動き検出手段による検出結果のうち、所定のサンプリング周期、所定の切り出し間隔で切り出された第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成するように構成されていてもよい。この場合、前記低周波成分抽出手段は、前記所定のサンプリング周期及び前記所定の切り出し間隔に応じた所定の閾値を用いて第2の時間データから低周波成分を抽出する。
【0010】
また、前記ペース検出手段は、離散的なデータ列である前記第3の周波数データを所定の補間方法により補間し、補間後の前記第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出するように構成されていてもよい。
【0011】
また、上記の運動検出装置は、前記第2の時間・周波数変換手段により生成された第3の周波数データに対し、前記非線形変換手段による非線形変換の逆変換を施して第4の周波数データを生成する非線形逆変換手段と、前記非線形逆変換手段により生成された第4の周波数データを時間領域のデータに変換して第4の時間データを生成する第2の周波数・時間変換手段と、運動の種別毎に予め生成された前記第4の時間データを蓄積するデータ蓄積手段と、前記動き検出手段により検出された動きに基づいて前記第2の周波数・時間変換手段により生成された第4の時間データと、前記データ蓄積手段に蓄積された第4の時間データとを比較して、前記動き検出手段により検出された動きに対応する運動の種別を判定する運動種別判定手段と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
また、前記運動種別判定手段は、前記動き検出手段により検出された動きに基づいて前記第2の周波数・時間変換手段により生成された第4の時間データと、前記データ蓄積手段に蓄積された第4の時間データとの間のパターン類似度を算出する類似度算出手段と、
前記データ蓄積手段に蓄積された第4の時間データのうち、前記類似度算出手段により算出されたパターン類似度が高い第4の時間データを抽出し、抽出した第4の時間データに対応する運動の種別を出力する判定結果出力手段と、を含んでいてもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、身体の動きを検出する動き検出ステップと、前記動き検出ステップで検出された時系列の動きを示す第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成する第1の時間・周波数変換ステップと、前記第1の時間・周波数変換ステップで生成された第1の周波数データを非線形変換して第2の周波数データを生成する非線形変換ステップと、前記非線形変換ステップで生成された第2の周波数データを時間領域のデータに変換して第2の時間データを生成する第1の周波数・時間変換ステップと、前記第1の周波数・時間変換ステップで生成された第2の時間データから低周波成分を抽出して第3の時間データを生成する低周波成分抽出ステップと、前記低周波成分抽出ステップで生成された第3の時間データを周波数領域のデータに変換して第3の周波数データを生成する第2の時間・周波数変換ステップと、前記第2の時間・周波数変換ステップで生成された第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出するペース検出ステップと、を含む運動検出方法が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、身体の動きを検出する動き検出機能と、前記動き検出機能により検出された時系列の動きを示す第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成する第1の時間・周波数変換機能と、前記第1の時間・周波数変換機能により生成された第1の周波数データを非線形変換して第2の周波数データを生成する非線形変換機能と、前記非線形変換機能により生成された第2の周波数データを時間領域のデータに変換して第2の時間データを生成する第1の周波数・時間変換機能と、前記第1の周波数・時間変換機能により生成された第2の時間データから低周波成分を抽出して第3の時間データを生成する低周波成分抽出機能と、前記低周波成分抽出機能により生成された第3の時間データを周波数領域のデータに変換して第3の周波数データを生成する第2の時間・周波数変換機能と、前記第2の時間・周波数変換機能により生成された第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出するペース検出機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムが提供される。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記プログラムが記録された、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、より精度良く運動のペースを検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンシング装置、運動解析装置の機能構成について説明するための説明図である。
【図2】同実施形態に係る運動解析装置に含まれるデータ処理手段の詳細な機能構成について説明するための説明図である。
【図3】センサデータの波形について説明するための説明図である。
【図4】スペクトルの形状について説明するための説明図である。
【図5】対数スペクトルの形状について説明するための説明図である。
【図6】高域フィルタリング後のスペクトル形状について説明するための説明図である。
【図7】同実施形態に係る運動検出方法について説明するための説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る運動解析装置に含まれるデータ処理手段の詳細な機能構成について説明するための説明図である。
【図9】同実施形態に係る運動検出方法について説明するための説明図である。
【図10】本発明の第1及び第2実施形態に係る運動解析装置の機能を実現することが可能なハードウェア構成について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る運動検出方法を実現するためのシステム構成について説明する。この中で、同実施形態に係るセンシング装置10、運動解析装置20の構成について説明する。次いで、図2を参照しながら、同実施形態の運動解析装置20が有するデータ処理手段203の詳細な構成について説明する。次いで、図7を参照しながら、同実施形態に係る運動検出方法について説明する。
【0020】
次に、図8を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る運動解析装置20が有するデータ処理手段203の詳細な構成について説明する。次いで、図9を参照しながら、同実施形態に係る運動検出方法について説明する。次いで、図10を参照しながら、本発明の第1及び第2実施形態に係る運動解析装置20の機能を実現することが可能なハードウェア構成について説明する。
【0021】
<1:第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、運動センサにより得られたセンサデータから運動のペースを精度良く検出する方法に関する。
【0022】
[1−1:はじめに]
まず、運動センサにより得られるセンサデータの特徴について説明する。一例として、ウェイトマシンを4回動作させ、上腕部に取り付けた加速度センサにより得られたセンサデータの測定値を図3に示した。図3のセンサデータを参照すると、波形の中に振幅が大きな部分と小さな部分が存在していることが分かる。また、振幅が大きな部分と小さな部分とが交互に繰り返されていることが分かる。このように、センサデータには、運動の動作を反映した特徴的なパターンが含まれている。
【0023】
こうしたパターンは、波形の包絡線に相当する概形(以下、スペクトル包絡成分)として現れる。しかし、図3の例からも分かるように、センサデータの波形には細かな振動成分(以下、スペクトル微細構造)が含まれている。そのため、センサデータの波形に現れる特徴的なパターンを精度良く分析するには、スペクトル微細構造とスペクトル包絡成分を分離しなければならない。しかし、従来の方法では、スペクトル微細構造とスペクトル包絡成分を十分に分離した後で運動の分析が行われておらず、十分な精度で運動のペースを検出することができなかった。そこで、本件発明者は、運動のペースを検出する際に妨げとなるスペクトル微細構造を十分に除去し、より精度良く運動のペースを検出する方法を考案した。以下、この方法について詳細に説明する。
【0024】
[1−2:システム構成]
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係るシステム構成について説明する。特に、本実施形態に係るセンシング装置10の構成、運動解析装置20の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るセンシング装置10、運動解析装置20の構成を説明するための説明図である。
【0025】
このシステムは、センシング装置10、及び運動解析装置20により構成される。センシング装置10は、運動センサの機能を提供する。例えば、センシング装置10は、上腕、手首、腰部など、身体部位に装着して用いられる。一方、運動解析装置20は、センシング装置10により取得されたセンサデータを解析して運動のペースを検出するために用いられる。なお、センシング装置10と運動解析装置20は、有線又は無線の通信路により接続されている。そして、センシング装置10により取得されたセンサデータは、有線又は無線の通信路を通じて運動解析装置20に送信される。なお、無線の通信路としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、無線LANなどを適用することができる。
【0026】
(センシング装置10の構成)
図1に示すように、センシング装置10は、主に、センシング手段101と、データ送信手段102とを有する。
【0027】
センシング手段101は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、皮膚温センサ、脈拍センサ、角速度センサ、筋電位センサ、傾きセンサなどの運動センサである。なお、以下では、説明の都合上、センシング手段101として加速度センサを想定する。もちろん、センシング手段101は、加速度センサに限定されない。センシング装置10を装着したユーザが運動を行うと、センシング手段101は、その運動を検出してセンサデータを出力する。例えば、センシング手段101は、運動に起因して生じた加速度を検出し、その加速度データをセンサデータとして出力する。センシング手段101から出力されたセンサデータは、データ送信手段102に入力される。センサデータが入力されると、データ送信手段102は、有線又は無線の通信路を通じて、入力されたセンサデータを運動解析装置20に送信する。
【0028】
(運動解析装置20の構成)
一方、運動解析装置20は、図1に示すように、主に、データ受信手段201と、データ蓄積手段202と、データ処理手段203と、表示手段204とを有する。
【0029】
センシング装置10から送信されたセンサデータは、データ受信手段201により受信される。データ受信手段201により受信されたセンサデータは、データ蓄積手段202に蓄積される。データ蓄積手段202に蓄積されたセンサデータは、データ処理手段203により読み出される。そして、データ処理手段203は、データ蓄積手段202から読み出したセンサデータを解析して運動のペースを検出する。なお、データ処理手段203の構成については、後段において詳述する。データ処理手段203により運動のペースが検出されると、その検出結果は、表示手段204に入力される。そして、表示手段204は、データ処理手段203により検出された運動のペースを表示する。
【0030】
以上説明したように、センシング装置10によりセンサデータが取得され、運動解析装置20によりセンサデータから運動のペースが検出される。本実施形態は、データ処理手段203によるセンサデータの解析方法に特徴がある。そこで、以下では、データ処理手段203の構成について、より詳細に説明する。
【0031】
[1−3:データ処理手段203の詳細]
図2に示すように、データ処理手段203は、主に、第1周波数変換手段2031と、対数変換手段2032と、周波数逆変換手段2033と、低域通過フィルタ2034と、第2周波数変換手段2035と、ペース検出手段2036とを有する。
【0032】
上記の通り、データ処理手段203は、データ蓄積手段202に蓄積されたセンサデータを読み出し、読み出したセンサデータを解析して運動のペースを検出する。データ蓄積手段202には、センシング装置10から送信されたセンサデータが蓄積されている。このセンサデータは、所定のサンプリング周期(例えば、サンプリング周波数50Hzなど)でセンシング手段101により検出された時系列のデータ(例えば、図3を参照)である。データ処理手段203は、データ蓄積手段202に蓄積されたセンサデータを読み出す際、所定の時間間隔(切り出し区間)で解析対象とするセンサデータを切り出す。
【0033】
なお、運動の種別が切り替わったタイミングを検出可能であり、運動の始点、終点がセンサデータから読み取れる場合、データ処理手段203は、運動の始点から終点までの区間を解析対象の切り出し区間に設定してセンサデータを切り出す。一方、運動の始点、終点がセンサデータから読み取れない場合、データ処理手段203は、任意に設定した切り出し区間(例えば、2秒、4秒など)に基づいて解析対象のセンサデータを切り出す。また、センシング装置10のセンシング手段101が2軸加速度センサや3軸加速度センサなどである場合、軸毎に検出されたセンサデータの合成などが必要になるが、この合成は、例えば、センサデータが読み出されたタイミングで実行される。
【0034】
このようにしてデータ蓄積手段202から読み出されたセンサデータは、第1周波数変換手段2031に入力される。なお、第1周波数変換手段2031に入力されるセンサデータは時間領域のデータであるため、以下では、このデータを第1の時間データと呼ぶことにする。第1の時間データが入力されると、第1周波数変換手段2031は、入力された第1の時間データに所定の時間・周波数変換を施して周波数領域のデータ(以下、第1の周波数データ)を算出する。所定の時間・周波数変換としては、例えば、フーリエ変換、アダマール変換、コサイン変換、ヒルベルト変換、離散ウェーブレット変換などを適用することができる。なお、以下では、所定の時間・周波数変換としてフーリエ変換を想定して説明する。
【0035】
第1の時間データをフーリエ変換して得られた第1の周波数データは、例えば、図4のような波形になる。図4は、図3に示した第1の時間データをフーリエ変換して得られた第1の周波数データ(スペクトル強度)である。このフーリエ変換により、ナイキスト周波数(サンプリング周波数の1/2)までのスペクトル強度が得られる。なお、第1の時間データをx(k=0,…,N−1)、第1の周波数データをX(n=0,…,N−1)とすると、第1の周波数データXは、下記の式(1)により得られる。なお、|Xをスペクトル強度と呼ぶことにする。また、第1の周波数データXを解析する際には、センサデータの測定時などに生じるランダムノイズの影響を除去するため、複数の第1の周波数データXを平均したピリオドグラムを利用する方が好ましい。
【0036】
【数1】

…(1)

【0037】
このようにして第1周波数変換手段2031により算出された第1の周波数データXは、対数変換手段2032に入力される。第1の周波数データが入力されると、対数変換手段2032は、入力された第1の周波数データのスペクトル強度|Xに対数変換を施して第2の周波数データ(対数スペクトル強度:log|X)を算出する。先に述べた通り、センサデータには、運動のペースに直接関係する低周波成分と、その他の動きから生じる高周波成分とが含まれる。いま、低周波成分に対応する第1の周波数データXの成分をL、高周波成分に対応する成分をHとすると、対数スペクトル強度log|Xは、下記の式(2)のように展開される。
【0038】
【数2】

…(2)

【0039】
上記の式(2)からも分かるように、対数変換を施すことにより、畳込み演算の形で第1の周波数データに含まれていたセンサデータの低周波成分と高周波成分が和演算の形に変換される。このように、畳み込み演算の形から和演算の形に変換されることで、低周波成分と高周波成分を切り分けるのが容易になる(図5を参照)。なお、ここでは対数変換を例に挙げたが、対数変換と同様の効果を得ることが可能な他の非線形変換手法を適用することも可能である。他の非線形変換手法として、例えば、「スペクトル強度の逆変換の負数(−1/|X)」や「平方根変換」などを適用することもできる。
【0040】
このようにして対数変換手段2032により算出された第2の周波数データは、周波数逆変換手段2033に入力される。第2の周波数データが入力されると、周波数逆変換手段2033は、入力された第2の周波数データに所定の周波数・時間変換を施して第2の時間データを算出する。ここで用いる所定の周波数・時間変換は、第1周波数変換手段2031による所定の時間・周波数変換の逆変換である。従って、利用する所定の時間・周波数変換の種類に応じて、ここで利用する所定の周波数・時間変換の種類も決まる。但し、ここでは逆フーリエ変換(下記の式(3)を参照)が第2の周波数データに施され、第2の時間データが算出されるものとする。
【0041】
【数3】

…(3)

【0042】
このようにして周波数逆変換手段2033により算出された第2の時間データは、低域通過フィルタ2034に入力される。第2の時間データが入力されると、低域通過フィルタ2034は、入力された第2の時間データに含まれる高周波成分をカットし、低周波成分を抽出する。通常、運動により生じる低周波成分の帯域と高周波成分の帯域は近い。そのため、対数変換手段2032により対数変換が行われていない場合には、低域通過フィルタ2034により精度良く高周波成分だけをカットするのは難しい。しかし、低域通過フィルタ2034に入力される第2の時間データは、一旦対数変換されたものであり、低周波成分と高周波成分が周波数軸上で分離されているため、低域通過フィルタ2034により容易に高周波成分だけをカットすることができる。
【0043】
ここで、運動の強度と高周波成分の関係について説明する。一般に、加速度の大きな運動をする場合には運動する身体部位にかかる負荷(抵抗)が小さくなる。そのため、運動の際に身体に生じる微細な振動(高周波成分に相当)は比較的粗い振動(比較的周波数の低い振動)になる。一方、加速度の小さな運動(低周波成分に相当)をする場合には運動する身体部位にかかる負荷(抵抗)が大きくなる。そのため、運動の際に身体に生じる微細な振動(高周波成分に相当)は比較的細かな振動(比較的周波数の高い振動)になる。
【0044】
運動の強度が大きい場合、スペクトル強度の最大値|Xmaxは大きくなる。この場合、高周波成分のピークは比較的低域に現れる。一方、運動の強度が小さい場合、スペクトル強度の最大値|Xmaxは小さくなる。この場合、高周波成分のピークは比較的高域に現れる。つまり、スペクトル強度の最大値|Xmaxの大小に応じて高周波成分のピークが現れる位置が変化する。そこで、低域通過フィルタ2034において高周波成分をカットするために利用する閾値qは、スペクトル強度の最大値|Xmaxに応じた値に設定される(下記の式(4)を参照)。
【0045】
【数4】

…(4)

【0046】
但し、上記の式(4)においてパラメータαは、サンプリング周波数と切り出し区間の長さに応じて決まる定数である。このパラメータαは、事前実験により予め測定された値が用いられる。例えば、事前実験としてn個のセンサデータを測定し、それぞれに対してスペクトル強度|Xmaxを検出した上で、図5に示したスペクトルの谷を決定する。このスペクトルの谷は、高周波成分のピークよりも低域に位置し、対数スペクトル強度が最小となる周波数軸上の位置を示す。
【0047】
このスペクトルの谷をn個のセンサデータについて検出し、上記の式(4)のqに代入する。さらに、n個のセンサデータについて検出したスペクトル強度|Xmaxを上記の式(4)に代入する。そして、上記の式(4)により得られたn個のパラメータαを利用し、2乗誤差の和が最小となるパラメータαの値を回帰分析などを用いて推定する。このような方法を適用することにより、上記の式(4)に含まれるパラメータαを得ることができる。例えば、サンプリング周波数50Hz、切り出し区間4秒の場合、α=2.1×10−17と推定される。
【0048】
上記の閾値qを用いて低域通過フィルタ2034により高周波成分がカットされたデータ(以下、第3の時間データ)は、第2周波数変換手段2035に入力される。第3の時間データが入力されると、第2周波数変換手段2035は、入力された第3の時間データに時間・周波数変換を施して第3の周波数データを算出する。ここで用いる所定の時間・周波数変換は、第1周波数変換手段2031による所定の時間・周波数変換と同じである。ここではフーリエ変換が第3の時間データに施され、第3の周波数データが算出されるものとする。
【0049】
このようにして第2周波数変換手段2035により算出された第3の周波数データは、ペース検出手段2036に入力される。第3の周波数データが入力されると、ペース検出手段2036は、入力された第3の周波数データに現れるピークを検出し、検出したピークが位置する周波数を運動のペースとして出力する。このとき、ペース検出手段2036は、離散的なデータ列である第3の周波数データに所定の線形又は非線形補間を施し、補間後の第3の周波数データ(図6を参照)からピークを検出する。ペース検出手段2035から出力された運動のペースは、表示手段204に入力される。
【0050】
ここで、補間の必要性について説明を補足する。一般に、ウェイトマシンを用いた運動のペースは0.1〜0.5Hz程度である。例えば、切り出し区間を4秒とすると、周波数分解能は0.25Hz(4秒の逆数)となる。つまり、0.25Hz程度の分解能では、0.1〜0.5Hz程度の運動ペースを十分な精度で検出することができない。1kHz程度の信号を解析する場合には、このような問題は生じない。しかしながら、周波数の低い運動ペースを解析する場合には、低い分解能を補償して十分な精度で運動ペースを検出できるようにする工夫が必要になる。
【0051】
その工夫として、本件発明者は、離散的なデータ列で得られる第3の周波数データを補間する方法を考案した。補間方法としては、例えば、スプライン補間、ラグランジュ補間、エルミート補間などが適用可能である。3次スプライン補間の場合、次のような方法で第3の周波数データを補間することができる。
【0052】
周波数とスペクトル強度の組を(f,p)、…、(f,p)とし、区間[f,fj+1]における補間関数をS(x)とすると、この補間関数S(x)は、未知定数a,b,c,dを用いて、下記の式(5)のように表現される。未知定数が4個あるため、これらの未知定数を決めるために4×N個の方程式をたてる。なお、境界条件から下記の式(6)〜式(9)の方程式が得られる。これら4×N個の方程式を解くことにより、4個の未知定数が算出され、3次スプライン関数S(x)が得られる。このような補間を行うことにより、分解能不足を補って高い精度で運動のペースが検出される。
【0053】
【数5】

(j=0,1,2,…,N−1)
…(5)


…(6)


(S’はSの一次導関数)
…(7)


(S”はSの二次導関数)
…(8)


(S”はSの二次導関数)
…(9)

【0054】
以上、データ処理手段203の詳細な構成について説明した。
【0055】
[1−4:運動検出方法]
次に、図7を参照しながら、本実施形態に係る運動検出方法について説明する。図7は、本実施形態に係る運動検出方法を実現するための処理の流れを示す説明図である。ここでは、上記のセンシング装置10、運動解析装置20の動作フローについて述べる。
【0056】
まず、センシング装置10により運動が検出され、センサデータが取得される(S101)。次いで、センシング装置10から運動解析装置20へとセンサデータが送信され、運動解析装置20によりセンサデータの切り出しなどが実行される(S102)。この段階で、データ処理手段203により処理可能な形式にセンサデータが前処理される。次いで、データ処理手段203は、センサデータ(第1の時間データ)に時間・周波数変換を施して第1の周波数データを生成する(S103)。
【0057】
次いで、データ処理手段203は、第1の周波数データのスペクトル強度に対数変換を施して第2の周波数データを生成する(S104)。次いで、データ処理手段203は、第2の周波数データに周波数・時間変換を施して第2の時間データを生成する(S105)。次いで、データ処理手段203は、第2の時間データに高域フィルタリングを施して高周波成分をカットし、第3の時間データを生成する(S106)。
【0058】
次いで、データ処理手段203は、第3の時間データに時間・周波数変換を施して第3の周波数データを生成する(S107)。次いで、データ処理手段203は、第3の周波数データにスプライン補間を施し、補間後の第3の周波数データから運動のペースを検出する(S108)。次いで、表示手段204は、データ処理手段203により検出された運動のペースを表示する(S109)。以上説明した流れで処理が実行され、本実施形態に係る運動検出方法が実現される。
【0059】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。
【0060】
<2:第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、上記の第1実施形態に係るセンサデータの分析方法を運動種別の判定に応用した運動検出方法に関する。なお、上記の第1実施形態との主な違いは、データ処理手段203の構成にある。そのため、以下では重複する説明を省略して相違点についてのみ詳細に述べる。
【0061】
[2−1:データ処理手段203の詳細]
図8に示すように、本実施形態に係るデータ処理手段203は、主に、第1周波数変換手段2131と、対数変換手段2132と、第1周波数逆変換手段2133と、低域通過フィルタ2134と、第2周波数変換手段2135と、指数変換手段2136と、第2周波数逆変換手段2137と、運動判定手段2138と、教師データ蓄積手段2139とを有する。
【0062】
上記の第1実施形態と同様、データ蓄積手段202から読み出されたセンサデータは、第1周波数変換手段2131に入力される。また、第1周波数変換手段2131に入力されるセンサデータを第1の時間データと呼ぶ。第1の時間データが入力されると、第1周波数変換手段2131は、入力された第1の時間データに所定の時間・周波数変換を施して周波数領域のデータ(以下、第1の周波数データ)を算出する。所定の時間・周波数変換としては、例えば、フーリエ変換、アダマール変換、コサイン変換、ヒルベルト変換、離散ウェーブレット変換などを適用することができる。なお、以下では、所定の時間・周波数変換としてフーリエ変換を想定して説明する。
【0063】
第1の時間データをフーリエ変換して得られた第1の周波数データは、対数変換手段2132に入力される。第1の周波数データが入力されると、対数変換手段2132は、入力された第1の周波数データのスペクトル強度|Xに対数変換を施して第2の周波数データ(対数スペクトル強度:log|X)を算出する。なお、ここでは対数変換を例に挙げたが、対数変換と同様の効果を得ることが可能な他の非線形変換手法を適用することも可能である。他の非線形変換手法として、例えば、「スペクトル強度の逆変換の負数(−1/|X)」や「平方根変換」などを適用することもできる。
【0064】
このようにして対数変換手段2132により算出された第2の周波数データは、第1周波数逆変換手段2133に入力される。第2の周波数データが入力されると、第1周波数逆変換手段2133は、入力された第2の周波数データに所定の周波数・時間変換を施して第2の時間データを算出する。ここで用いる所定の周波数・時間変換は、第1周波数変換手段2131による所定の時間・周波数変換の逆変換である。
【0065】
このようにして第1周波数逆変換手段2133により算出された第2の時間データは、低域通過フィルタ2134に入力される。第2の時間データが入力されると、低域通過フィルタ2134は、入力された第2の時間データに含まれる高周波成分をカットし、低周波成分を抽出する。なお、低域通過フィルタ2134の構成は、上記の第1実施形態に係る低域通過フィルタ2034の構成と実質的に同じである。つまり、先に説明した閾値qを用いて、低域通過フィルタ2134により高周波成分がカットされたデータ(以下、第3の時間データ)が得られ、そのデータは第2周波数変換手段2135に入力される。
【0066】
第3の時間データが入力されると、第2周波数変換手段2135は、入力された第3の時間データに時間・周波数変換を施して第3の周波数データを算出する。ここで用いる所定の時間・周波数変換は、第1周波数変換手段2131による所定の時間・周波数変換と同じである。このようにして第2周波数変換手段2135により算出された第3の周波数データは、指数変換手段2136に入力される。第3の周波数データが入力されると、指数変換手段2136は、入力された第3の周波数データに指数変換を施して第4の周波数データを生成する。
【0067】
この指数変換は、対数変換手段2132による対数変換の逆変換である。従って、対数変換に代えて他の非線形変換が利用される場合には、指数変換に代えて他の非線形変換の逆変換が適用される。このようにして指数変換手段2136により生成された第4の周波数データは、第2周波数逆変換手段2137に入力される。第4の周波数データが入力されると、第2周波数逆変換手段2137は、入力された第4の周波数データに所定の周波数・時間変換を施して第4の時間データを生成する。ここで用いる所定の周波数・時間変換は、第1周波数変換手段2131による所定の時間・周波数変換の逆変換である。
【0068】
このようにして第2周波数逆変換手段2137により生成された第4の時間データは、運動判定手段2138に入力される。第4の時間データが入力されると、運動判定手段2138は、入力された第4の時間データと教師データ蓄積手段2139に予め蓄積された教師データを比較して運動の種別を判定する。
【0069】
ここで、教師データ蓄積手段2139に予め蓄積された教師データについて説明する。ここで言う教師データとは、予め運動の種別が分かっている特徴的なデータのことをである。例えば、歩行中にセンシング装置10により検出されたセンサデータ、或いは、このセンサデータを加工して生成されたデータは、「歩行」という運動の種別を反映した特徴的なデータになる。このように、運動の種別毎に予め検出・加工された特徴的なデータのことを教師データと呼ぶ。教師データ蓄積手段2139には、様々な運動の種類について、予め生成された教師データが蓄積されている。
【0070】
ここでは、低域通過フィルタ2134により高周波成分がカットされ、運動種別を特徴付けるセンサデータのスペクトル包絡成分を強く反映した特徴的なデータを教師データとして利用する。具体的には、例えば、所定の運動種別毎にセンシング装置10により検出されたセンサデータを第1周波数変換手段2131、対数変換手段2132、第1周波数逆変換手段2133、低域通過フィルタ2134、第2周波数変換手段2135、指数変換手段2136、第2周波数逆変換手段2137により加工したデータ(第4の時間データ)が教師データ蓄積手段2139に蓄積される。
【0071】
第4の時間データは、スペクトル微細構造が抑圧されたセンサデータに相当する。従って、予め運動種別の分かっている第4の時間データを教師データに用い、この教師データと、実際に測定されたセンサデータから得られる第4の時間データとを比較することにより、より高い精度で運動種別を判定することが可能になる。なお、第4の時間データそのものだけでなく、先に説明した第1実施形態の運動検出方法により得られる運動のペース、第4の時間データの窓平均値(所定長の区間で切り出した成分毎の平均値)、分散、ピーク強度、ピーク位置などを教師データとして利用してもよい。
【0072】
実際に測定されたセンサデータについて第4の時間データが得られ、その第4の時間データが入力されると、運動判定手段2138は、入力された第4の時間データ(以下、実測データ)と教師データ蓄積手段2139から読み出した教師データを比較する。上記の通り、比較対象となるデータの要素は、例えば、第4の時間データの各時点における値(第4の時間データの波形に相当)や運動のペースなどを含む。運動判定手段2138は、これらの要素を並べて特徴量ベクトルとして表現し、実測データの特徴量ベクトルと教師データの特徴量ベクトルの類似度(以下、パターン類似度)を算出する。
【0073】
上記の通り、教師データ蓄積手段2139には、運動種別毎に教師データが蓄積されている。そこで、運動判定手段2138は、運動種別毎にパターン類似度を算出し、パターン類似度の高い教師データを検出し、その検出結果から実測データに対応する運動種別を判定する。パターン類似度の比較、運動種別の判定は、例えば、サポートベクタマシンや隠れマルコフモデルに基づくパターン認識器を利用して実現される。
【0074】
ここで、第4の時間データの波形パターンを比較する方法について考えてみたい。この場合、まず、所定の時間間隔で切り出した実測データと同じ時間間隔に対応する教師データを用意する。また、その時間間隔の中で実測データと教師データをそれぞれ正規化しておく。例えば、各時刻のデータ値を、その時間間隔における合計のデータ値で割り算しておく。このような前処理を施しておくことにより、測定毎にばらつきのあるセンサデータの強度に関わらず、実測データの波形と教師データの波形を比較できるようになる。
【0075】
このようにして正規化された時刻kの実測データをf、運動種別Φに対応する時刻kの教師データをfkΦとすると、時刻kにおける実測データと教師データの差異は、{f−fkΦ}で与えられる。運動判定手段2138は、教師データ蓄積手段2139に蓄積された全ての運動種別Φに対応する教師データについて、下記の式(10)で与えられるパラメータQΦを算出する。そして、運動判定手段2138は、このパラメータQΦが最小となる運動種別Φを検出し、検出した運動種別Φを実測データの運動種別と判定する。
【0076】
【数6】

…(10)

【0077】
このようにして運動判定手段2138により判定された実測データの運動種別は、表示手段204に入力される。実測データの運動種別が入力されると、表示手段204は、入力された実測データの運動種別を表示する。このとき、上記の第1実施形態と同様にデータ処理手段203により運動のペースが検出されている場合には、表示手段204に運動のペースが併せて表示されるように構成されていてもよい。
【0078】
以上、本発明の第2実施形態に係るデータ処理手段203の構成について説明した。
【0079】
[2−2:運動検出方法]
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係る運動検出方法について説明する。図9は、本実施形態に係る運動検出方法を実現するための処理の流れを示す説明図である。ここでは、上記のセンシング装置10、運動解析装置20の動作フローについて述べる。
【0080】
まず、センシング装置10により運動が検出され、センサデータが取得される(S201)。次いで、センシング装置10から運動解析装置20へとセンサデータが送信され、運動解析装置20によりセンサデータの切り出しなどが実行される(S202)。この段階で、データ処理手段203により処理可能な形式にセンサデータが前処理される。次いで、データ処理手段203は、センサデータ(第1の時間データ)に時間・周波数変換を施して第1の周波数データを生成する(S203)。
【0081】
次いで、データ処理手段203は、第1の周波数データのスペクトル強度に対数変換を施して第2の周波数データを生成する(S204)。次いで、データ処理手段203は、第2の周波数データに周波数・時間変換を施して第2の時間データを生成する(S205)。次いで、データ処理手段203は、第2の時間データに高域フィルタリングを施して高周波成分をカットし、第3の時間データを生成する(S206)。
【0082】
次いで、データ処理手段203は、第3の時間データに時間・周波数変換を施して第3の周波数データを生成する(S207)。次いで、データ処理手段203は、第3の周波数データに指数変換を施して第4の周波数データを生成する(S208)。次いで、データ処理手段203は、第4の周波数データに周波数・時間変換を施して第4の時間データを生成する(S209)。
【0083】
次いで、データ処理手段203は、実測されたセンサデータから得られた第4の時間データと、運動種別毎に予め測定されたセンサデータに対応する第4の時間データとを比較して運動の種別を判定する(S210)。次いで、表示手段204は、データ処理手段203による運動種別の判定結果を表示する(S211)。このとき、上記の第1実施形態に係る運動検出方法と同様にして検出された運動のペースが表示手段204に表示されるように構成されていてもよい。
【0084】
以上説明した流れで処理が実行され、本実施形態に係る運動検出方法が実現される。
【0085】
<3:ハードウェア構成>
上記の運動解析装置20が有する各構成要素の機能は、例えば、図10に示す情報処理装置のハードウェア構成を用いて実現することが可能である。つまり、当該各構成要素の機能は、コンピュータプログラムを用いて図10に示すハードウェアを制御することにより実現される。なお、このハードウェアの形態は任意であり、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、PHS、PDA等の携帯情報端末、ゲーム機、又は種々の情報家電がこれに含まれる。但し、上記のPHSは、Personal Handy−phone Systemの略である。また、上記のPDAは、Personal Digital Assistantの略である。
【0086】
図10に示すように、このハードウェアは、主に、CPU902と、ROM904と、RAM906と、ホストバス908と、ブリッジ910と、を有する。さらに、このハードウェアは、外部バス912と、インターフェース914と、入力部916と、出力部918と、記憶部920と、ドライブ922と、接続ポート924と、通信部926と、を有する。但し、上記のCPUは、Central Processing Unitの略である。また、上記のROMは、Read Only Memoryの略である。そして、上記のRAMは、Random Access Memoryの略である。
【0087】
CPU902は、例えば、演算処理装置又は制御装置として機能し、ROM904、RAM906、記憶部920、又はリムーバブル記録媒体928に記録された各種プログラムに基づいて各構成要素の動作全般又はその一部を制御する。ROM904は、CPU902に読み込まれるプログラムや演算に用いるデータ等を格納する手段である。RAM906には、例えば、CPU902に読み込まれるプログラムや、そのプログラムを実行する際に適宜変化する各種パラメータ等が一時的又は永続的に格納される。
【0088】
これらの構成要素は、例えば、高速なデータ伝送が可能なホストバス908を介して相互に接続される。一方、ホストバス908は、例えば、ブリッジ910を介して比較的データ伝送速度が低速な外部バス912に接続される。また、入力部916としては、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、及びレバー等が用いられる。さらに、入力部916としては、赤外線やその他の電波を利用して制御信号を送信することが可能なリモートコントローラが用いられることもある。
【0089】
出力部918としては、例えば、CRT、LCD、PDP、又はELD等のディスプレイ装置、スピーカ、ヘッドホン等のオーディオ出力装置、プリンタ、携帯電話、又はファクシミリ等、取得した情報を利用者に対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置である。但し、上記のCRTは、Cathode Ray Tubeの略である。また、上記のLCDは、Liquid Crystal Displayの略である。そして、上記のPDPは、Plasma Display Panelの略である。さらに、上記のELDは、Electro−Luminescence Displayの略である。
【0090】
記憶部920は、各種のデータを格納するための装置である。記憶部920としては、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等が用いられる。但し、上記のHDDは、Hard Disk Driveの略である。
【0091】
ドライブ922は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体928に記録された情報を読み出し、又はリムーバブル記録媒体928に情報を書き込む装置である。リムーバブル記録媒体928は、例えば、DVDメディア、Blu−rayメディア、HD DVDメディア、各種の半導体記憶メディア等である。もちろん、リムーバブル記録媒体928は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード、又は電子機器等であってもよい。但し、上記のICは、Integrated Circuitの略である。
【0092】
接続ポート924は、例えば、USBポート、IEEE1394ポート、SCSI、RS−232Cポート、又は光オーディオ端子等のような外部接続機器930を接続するためのポートである。外部接続機器930は、例えば、プリンタ、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、又はICレコーダ等である。但し、上記のUSBは、Universal Serial Busの略である。また、上記のSCSIは、Small Computer System Interfaceの略である。
【0093】
通信部926は、ネットワーク932に接続するための通信デバイスであり、例えば、有線又は無線LAN、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB用の通信カード、光通信用のルータ、ADSL用のルータ、又は各種通信用のモデム等である。また、通信部926に接続されるネットワーク932は、有線又は無線により接続されたネットワークにより構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、可視光通信、放送、又は衛星通信等である。但し、上記のLANは、Local Area Networkの略である。また、上記のWUSBは、Wireless USBの略である。そして、上記のADSLは、Asymmetric Digital Subscriber Lineの略である。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、センシング装置10にリムーバブル記憶媒体を搭載しておき、センサデータをリムーバブル記憶媒体に蓄積して、そのリムーバブル記憶媒体を運動解析装置20に装着して、そのリムーバブル記憶媒体のセンサデータを解析するように構成されていてもよい。このような構成にすると、センシング装置10と運動解析装置20との間に通信経路を設けずに済むようになり、センシング装置10や運動解析装置20の設置自由度が増すと共にコストを低減することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 センシング装置
101 センシング手段
102 データ送信手段
20 運動解析装置
201 データ受信手段
202 データ蓄積手段
203 データ処理手段
2031、2131 第1周波数変換手段
2032、2132 対数変換手段
2033 周波数逆変換手段
2034、2134 低域通過フィルタ
2035、2135 第2周波数変換手段
2036 ペース検出手段
2133 第1周波数逆変換手段
2136 指数変換手段
2137 第2周波数逆変換手段
2138 運動判定手段
2139 教師データ蓄積手段
204 表示手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の動きを検出する動き検出手段と、
前記動き検出手段により検出された時系列の動きを示す第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成する第1の時間・周波数変換手段と、
前記第1の時間・周波数変換手段により生成された第1の周波数データを非線形変換して第2の周波数データを生成する非線形変換手段と、
前記非線形変換手段により生成された第2の周波数データを時間領域のデータに変換して第2の時間データを生成する第1の周波数・時間変換手段と、
前記第1の周波数・時間変換手段により生成された第2の時間データから低周波成分を抽出して第3の時間データを生成する低周波成分抽出手段と、
前記低周波成分抽出手段により生成された第3の時間データを周波数領域のデータに変換して第3の周波数データを生成する第2の時間・周波数変換手段と、
前記第2の時間・周波数変換手段により生成された第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出するペース検出手段と、
を備える
ことを特徴とする、運動検出装置。
【請求項2】
前記第1の時間・周波数変換手段は、前記動き検出手段による検出結果のうち、所定のサンプリング周期、所定の切り出し間隔で切り出された第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成し、
前記低周波成分抽出手段は、前記所定のサンプリング周期及び前記所定の切り出し間隔に応じた所定の閾値を用いて第2の時間データから低周波成分を抽出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の運動検出装置。
【請求項3】
前記ペース検出手段は、離散的なデータ列である前記第3の周波数データを所定の補間方法により補間し、補間後の前記第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出する
ことを特徴とする、請求項2に記載の運動検出装置。
【請求項4】
前記第2の時間・周波数変換手段により生成された第3の周波数データに対し、前記非線形変換手段による非線形変換の逆変換を施して第4の周波数データを生成する非線形逆変換手段と、
前記非線形逆変換手段により生成された第4の周波数データを時間領域のデータに変換して第4の時間データを生成する第2の周波数・時間変換手段と、
運動の種別毎に予め生成された前記第4の時間データを蓄積するデータ蓄積手段と、
前記動き検出手段により検出された動きに基づいて前記第2の周波数・時間変換手段により生成された第4の時間データと、前記データ蓄積手段に蓄積された第4の時間データとを比較して、前記動き検出手段により検出された動きに対応する運動の種別を判定する運動種別判定手段と、
をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の運動検出装置。
【請求項5】
前記運動種別判定手段は、
前記動き検出手段により検出された動きに基づいて前記第2の周波数・時間変換手段により生成された第4の時間データと、前記データ蓄積手段に蓄積された第4の時間データとの間のパターン類似度を算出する類似度算出手段と、
前記データ蓄積手段に蓄積された第4の時間データのうち、前記類似度算出手段により算出されたパターン類似度が高い第4の時間データを抽出し、抽出した第4の時間データに対応する運動の種別を出力する判定結果出力手段と、
を含む
ことを特徴とする、請求項4に記載の運動検出装置。
【請求項6】
身体の動きを検出する動き検出ステップと、
前記動き検出ステップで検出された時系列の動きを示す第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成する第1の時間・周波数変換ステップと、
前記第1の時間・周波数変換ステップで生成された第1の周波数データを非線形変換して第2の周波数データを生成する非線形変換ステップと、
前記非線形変換ステップで生成された第2の周波数データを時間領域のデータに変換して第2の時間データを生成する第1の周波数・時間変換ステップと、
前記第1の周波数・時間変換ステップで生成された第2の時間データから低周波成分を抽出して第3の時間データを生成する低周波成分抽出ステップと、
前記低周波成分抽出ステップで生成された第3の時間データを周波数領域のデータに変換して第3の周波数データを生成する第2の時間・周波数変換ステップと、
前記第2の時間・周波数変換ステップで生成された第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出するペース検出ステップと、
を含む
ことを特徴とする、運動検出方法。
【請求項7】
身体の動きを検出する動き検出機能と、
前記動き検出機能により検出された時系列の動きを示す第1の時間データを周波数領域のデータに変換して第1の周波数データを生成する第1の時間・周波数変換機能と、
前記第1の時間・周波数変換機能により生成された第1の周波数データを非線形変換して第2の周波数データを生成する非線形変換機能と、
前記非線形変換機能により生成された第2の周波数データを時間領域のデータに変換して第2の時間データを生成する第1の周波数・時間変換機能と、
前記第1の周波数・時間変換機能により生成された第2の時間データから低周波成分を抽出して第3の時間データを生成する低周波成分抽出機能と、
前記低周波成分抽出機能により生成された第3の時間データを周波数領域のデータに変換して第3の周波数データを生成する第2の時間・周波数変換機能と、
前記第2の時間・周波数変換機能により生成された第3の周波数データに現れるピーク位置から前記動きのペースを検出するペース検出機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188901(P2011−188901A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55492(P2010−55492)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度総務省「ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発(ユビキタスサービスプラットフォーム技術の研究開発)」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】