説明

運動靴

【課題】 左右に分離した分離甲被片の間隔調節を1度行うのみで、履脱が迅速に行える運動靴を得る。
【解決手段】甲被(2)の後部を左右に分離し、該左右に分離した分離甲被片(2a,2b)の前後の間隔を個別に調節する複数の一次連結具(5)を設け、各一次連結具(5)の連結作動を保持した状態で甲被(2)の後部を分離又は連結する二次連結具(14)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右に分離した分離甲被片の間隔を着用者の足の大きさ、形状に合わせて容易に調節できるようにした運動靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、左右に分離した分離甲被片の一方に、第1のゴムバンドに連結されかつ先端部の裏面に雌面ファスナーを有するバンドと、第2のゴムバンドに連結された雄面ファスナーとをそれぞれ前後に複数設け、他方の分離甲被片に前記バンドが摺動可能に嵌合する環体を前後に複数設け、前記各バンドを前記各環体に挿通して折り返し、該各バンドの先端部の雌面ファスナーを前記雄面ファスナーに係合させるようにしたものがあった。
【0003】
前記従来のものは、各バンドの折り返し長さを調節することにより、左右に分離した分離甲被片同士の前後の基準間隔を着用者の足の大きさ、形状に合わせることができる。また、第1のゴムバンド及び第2のゴムバンドが伸縮することによつて締め圧を均一にすることができる。
しかしながら、前記従来のものは、運動靴を履脱する都度、各バンドの係脱及び折り返し長さの調節を個々に行う必要があり、履脱操作に手数を要するものであった。特に障害者にあっては前記履脱が困難になるものであった。
【特許文献1】特開平11−4704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、左右に分離した分離甲被片の間隔調節を1度行うのみで、履脱が迅速に行える新規な運動靴を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、甲被の後部を左右に分離し、該左右に分離した分離甲被片の前後の間隔を個別に調節する複数の一次連結具を設け、各一次連結具の連結作動を保持した状態で甲被の後部を一括して分離又は連結する二次連結具を設ける構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記一次連結具は、一方の分離甲被片に複数のバンドを並列に設けるとともに、各バンドの基部表面に表面ファスナーを、各バンドの先端部裏面に裏面ファスナーをそれぞれ設け、他方の分離甲被片に前記バンドが摺動可能に嵌合する環体を設けてなり、二次連結具は、前記バンドのうち、一つのバンドの先端部に残余のバンドの先端部方向に向かって突出する台片を一体的に設け、該台片の表面に前記残余の裏面ファスナーと係脱可能な第1面ファスナーを、該台片の裏面に前記残余の表面ファスナーと係脱可能な第2面ファスナーをそれぞれ設ける構成にしたものである。
請求項3に係る発明は、前記一次連結具は、左右の分離甲被片を面ファスナーを介して連結又は分離可能なバンドとし、二次連結具は、前記左右の分離甲被片の一方を前記バンドの側方にて左右に分離するとともに、該分離部を開閉するスライドファスナーを設ける構成にしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、一次連結具によって左右の分離甲被片の前後の間隔を着用者の足の形状、大きさに調節した後、二次連結具を解除操作すると甲被の後部が分離し、着用者は運動靴を容易に脱ぐことができる。また、着用者が運動靴を履き、前記二次連結具を締結操作すると甲被の後部が前記一次連結具で設定された間隔を保持した状態で連結され、着用者の足にフィットすることになる。このため、左右の分離甲被片の間隔調節を1度行うのみで済み、運動靴の履脱が迅速に行えることになる。
請求項2に係る発明は、一つのバンドを折り返してその先端部の裏面ファスナー及び台片の第1面ファスナーをバンドの基部に設けた表面ファスナーに係合させ、次いで残余のバンドの折り返し長さを調節してその先端部の裏面ファスナーを前記台片の第2面ファスナーに係合させると、左右の分離甲被片の間隔が着用者の足の形状、大きさに設定される。この状態で前記台片を有する一つのバンドの先端部を前記表面ファスナーに対して離脱、または係合させると、各バンドが前記設定された長さに保持された状態で前記表面ファスナーに対して一括して離脱、または係合され、前述と同様に運動靴の履脱が迅速に行えることになる。
請求項3に係る発明は、各バンドによって左右の分離甲被片の間隔を着用者の足の形状、大きさに設定し、この状態でスライドファスナーを開閉操作すると、一方の分離甲被片に設けた分離部が開閉し、運動靴の履脱が迅速に行えることになる。そして、スライドファスナーを閉操作した際には、左右の分離甲被片の間隔が前記各バンドで設定された間隔に復帰することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図において、図1は本発明の第1実施例によるベルト調節前の状態を示す平面図、図2はベルト調節初期の状態を示す平面図、図3はベルト調節終期の状態を示す平面図、図4はベルト調節後におけるベルト開放状態を示す平面図、図5は本発明の第2実施例を示す平面図である。
【0008】
図1において、1は左足用の運動靴、2は足の甲部を覆う甲被である。該甲被2は足の挿入側(後部側)を左右に分離し、該分離した左右の分離甲被片2a,2bを一次連結具5及び二次連結具14により連結する。
【0009】
前記一次連結具5は以下の如くなっている。即ち、左部(一方)の分離甲被片2aの前部と後部とに2個のバンド6,7を前後に所定の間隔をおいて連結し、各バンド6,7の基部表面に雄形の表面ファスナー8,9を、各バンド6,7の先端部裏面に雌形の裏面ファスナー10,11をそれぞれ逢着する。また、右部(他方)の分離甲被片2bの前部と後部とに枠状に形成した2個の環体12,13を、前記各バンド6,7と対応する如く前後に配置して取り付け、各環体12,13に前記バンド6,7を個々に挿通するとともに、その挿通量を調節して折り曲げ、各バンド6,7の先端部を、表面ファスナー8及び後述の第1面ファスナー16に係合させることにより、左右の分離甲被片2a,2bの間隔を前後に亘たって個別に調節する。なお、前記バンド6,7及び環体12,13は2個以上としてもよい。
【0010】
前記二次連結具14は以下の如くなっている。即ち、前記バンド6,7のうち、後部のバンド7の先端部を前方に向けてL形に屈曲させ、該後部のバンド7の先端部から前方に突出する突出部を台片15とし、該台片15の表面に、図2に示すように、雄形の第1面ファスナー16を逢着し、該台片15の裏面に、図1、図4に示すように、雌形の第2面ファスナー17をそれぞれ逢着する。
【0011】
前記第1面ファスナー16は、前部のバンド6の先端部裏面に取り付けた裏面ファスナー10と係脱可能とし、前記第2面ファスナー17は、前部のバンド6の基部表面に取り付けた表面ファスナー8と係脱可能とする。18は、前後の分離甲被5,6の間隙部を閉塞する舌片である。
【0012】
次に、前記第1実施例の使用態様について説明する。まず、図2に示すように、後部のバンド7の環体13に対する挿通量を調節して折り返し、その先端部を、裏面ファスナー11、第2面ファスナー17、表面ファスナー8,9を介して各バンド6,7の基部に係合させ、左右の分離甲被片2a,2bの後部側の間隔を設定する。
【0013】
次いで、図3に示すように、前部のバンド6の環体12対する挿通量を調節して折り返し、その先端部を、裏面ファスナー10、第1面ファスナー16を介して後部の各バンド7の台片15に係合させ、左右の分離甲被片2a,2bの前部側の間隔を設定する。これにより、前記左右の分離甲被片2a,2bの後部及び前部の間隔を着用者の足に対応させる。
【0014】
そして、前記調節した運動靴を脱ぐ際には、二次連結具14の係合を解除する。即ち、図4に示すように、前部のバンド6の先端部を第1面ファスナー16に係合、つまり台片15に係合させた状態で、後部のバンド7の先端部の裏面ファスナー11及び台片15の第2面ファスナー17を表面ファスナー8,9から離脱させる。さすれば、各バンド6,7の先端部が一気に開放されて左右の分離甲被片2a,2bが開き、運動靴を容易に脱ぐことができる。
【0015】
次に、前記運動靴を履く際には、後部のバンド7を折り曲げ、その先端部及び台片15を前記表面ファスナー8,9に係合させて左部の分離甲被片2aに連結すると、前部のバンド6が台片15を介して同時に折れ曲がり、該バンド6の先端部が台片15を介して左部の分離甲被片2aに連結されることになる。これにより、運動靴を迅速に履くことができると共に、左右の分離甲被片2a,2bの後部及び前部の間隔が初期設定された状態に保持されることになる。
【0016】
図5は第2実施例を示す。図5において、20は右足用の運動靴、21は足の甲部を覆う甲被である。該甲被21は足の挿入側(後部側)を左右に分離し、該分離した左右の分離甲被片21a,21bを一次連結具22及び二次連結具25により連結する。
【0017】
前記一次連結具22は、右部の分離甲被片21bの縁部に5個のバンド23を前後に配列して逢着するとともに、該バンド23の基部表面に雄形の表面ファスナー23aを固着し、該バンド23の先端部裏面に雌形の裏面ファスナー23bを固着する。また、左部の分離甲被片21bの縁部に5個の環体24を前後に配列して連結してなる。
【0018】
前記一次連結具22は、各バンド23を各環体24に個別に挿通するとともに、その挿通量を調節して折り曲げ、各バンド23の先端部を、裏面ファスナー23bを介して前記表面ファスナー23aに係合させることにより、左右の分離甲被片21a,21bの間隔を前後に亘たって個別に調節する。
【0019】
前記第2連結具25は、右部の分離甲被片21bを前記各バンド23の側方にて左右に分離するとともに、該分離部にスライドファスナー26を取り付けてなる。これにより、前記スライドファスナー26によって前記分離部を開閉すると、前記一次連結具22による左右の分離甲被片21a,21bの連結に左右されることなく、甲被21が一括して開閉され、運動靴の履脱が簡便に行えることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例によるベルト調節前の状態を示す平面図である。
【図2】ベルト調節初期の状態を示す平面図である。
【図3】ベルト調節終期の状態を示す平面図である。
【図4】ベルト調節後におけるベルト開放状態を示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 運動靴
2 甲被
2a,2b 分離甲被片
5 一次連結具
6,7 バンド
8,9 表面ファスナー
10,11 裏面ファスナー
12,13 環体
14 二次連結具
15 台片
16 第1面ファスナー
17 第2面ファスナー
18 舌片
20 運動靴
21 甲被
21a,21b 分離甲被片
22 一次連結具
23 バンド
23a 表面ファスナー
23b 裏面ファスナー
24 環体
25 第2連結具
26 スライドファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲被(2)の後部を左右に分離し、該左右に分離した分離甲被片(2a,2b)の前後の間隔を個別に調節する複数の一次連結具(5)を設け、各一次連結具(5)の連結作動を保持した状態で甲被(2)の後部を一括して分離又は連結する二次連結具(14)を設けたことを特徴とする運動靴。
【請求項2】
一次連結具(5)は、一方の分離甲被片(2a)に複数のバンド(6,7)を並列に設けるとともに、各バンド(6,7)の基部表面に表面ファスナー(8,9)を、各バンド(6,7)の先端部裏面に裏面ファスナー(10,11)をそれぞれ設け、他方の分離甲被片(2b)に前記バンド(6,7)が摺動可能に嵌合する環体(12,13)を設けてなり、二次連結具(14)は、前記バンド(6,7)のうち、一つのバンド(7)の先端部に残余のバンド(6)の先端部方向に向かって突出する台片(15)を一体的に設け、該台片(15)の表面に前記残余の裏面ファスナー(10)と係脱可能な第1面ファスナー(16)を、該台片(15)の裏面に前記残余の表面ファスナー(8)と係脱可能な第2面ファスナー(17)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1記載の運動靴。
【請求項3】
一次連結具(22)は、左右の分離甲被片(21a,21b)を面ファスナー(23a,23b)を介して連結又は分離可能なバンド(23)とし、二次連結具(25)は、前記左右の分離甲被片(21a,21b)の一方(21b)を前記バンド(23)の側方にて左右に分離するとともに、該分離部を開閉するスライドファスナー(26)を設けたことを特徴とする請求項1記載の運動靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−159881(P2007−159881A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361245(P2005−361245)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505464202)
【Fターム(参考)】