説明

運転支援制御装置

【課題】舵角センサやヨーレートセンサを用いることなく車両の操舵を検出して運転支援制御を行なう。
【解決手段】車載カメラ2により走行路を含む車両周辺を撮影し、車線区分線検出部31により車載カメラ2の撮影画像中の車線区分線の画像部分を抽出し、操舵検出部34により、車線区分線の画像部分の乱れの度合から、舵角センサやヨーレートセンサを用いることなく、車両1の操舵を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操舵の検出に基づいてドライバに対する運転支援(車線逸脱警報など)を制御する運転支援制御装置に関し、詳しくは、舵角センサやヨーレートセンサを用いない操舵の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車線逸脱警報装置は、車両に搭載されたカメラが撮影する自車前方の画像から車両区分線(主に白線)を検出して車両の走行車線を認識し、その走行車線から車両が逸脱すると判定した場合に警報を出力するものであるが、方向指示器がオフの状態であることを条件に警報を出力するようにすれば、方向指示器がオン(動作中)の状態であってドライバが意識して車線を逸脱する操作を行なっていいるときには警報が出力されず、ドライバに煩わしさを与えなくなるが、反面、方向指示器をオフすることを忘れて走行している場合等に車線を逸脱しそうになっても警報が出力されない不利益が生じる。
【0003】
そこで、車線の逸脱方向とオンしている方向指示器の指示方向とが同一であるときには、警報を行なわないようにして上記の不利益が生じないようにすることが提案されている(例えば、特許文献1(要約書、請求項1、段落[0005]、[0027]、図1−図3等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−69323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車線逸脱警報装置の場合、方向指示器をオフしたままドライバが緊急回避のために意識的に急操舵をして車線を逸脱した際には、警報が出力されてしまい、乗員に煩わしさを与えてしまう。
【0006】
そこで、車両に舵角センサやヨーレートセンサを備えて舵角変化やヨーレート変化から緊急回避のための急な操舵を検出し、この検出があった場合には、警報を行なわないようにすることが考えられるが、舵角センサやヨーレートセンサによる操舵検出には時間を要し、実際には、舵角センサやヨーレートセンサによる操舵検出では、緊急回避の急な操舵を検出することは容易でなく、警報が出力されてしまう可能性が高い。しかも、操舵を検出するために、カメラの他に舵角センサやヨーレートセンサを備える必要があり、コストアップを招く。
【0007】
そして、操舵の検出は車線逸脱警報以外にも用途があるが、舵角センサやヨーレートセンサを用いないで操舵を検出することは、従来は発明されていない。
【0008】
本発明は、舵角センサやヨーレートセンサを用いることなく車両の操舵を検出して運転支援制御を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明の運転支援制御装置は、操舵の検出に基づいてドライバに対する運転支援制御を行なう運転支援制御装置であって、走行路を含む車両周辺を撮影する車載カメラと、前記車載カメラの撮影画像中の走行路の静止物の画像部分を抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した前記静止物の画像部分の乱れの度合から操舵を検出する検出手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0010】
また、本発明の運転支援制御装置は、走行車線から逸脱すると判定した場合に警報を行なう車線逸脱警報の機能をさらに備え、前記抽出手段は、前記静止物の画像部分として車線区分線の画像部分を抽出し、前記車線逸脱警報機能は、走行車線からの逸脱判定が発生しても前記検出手段が急操舵を検出する場合には警報を禁止することを特徴としている(請求項2)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、車載カメラの撮影画像の車線区分線のような走行路の静止物の画像部分は、操舵によって車両の走行方向が変わることにより、撮影時間差に起因した乱れが生じ、とくに車載カメラがインタレース走査方式の場合は、毎フレームの撮影画像を形成する奇数フィールドの撮影画像と偶数フィールドの撮影画像の静止物の画像部分が操舵によって「ぎざぎざ」のある状態に乱れることに着目し、抽出手段が抽出した撮影画像中の静止物の画像部分の乱れの度合いに基づき、検出手段により操舵を検出する。
【0012】
したがって、舵角センサやヨーレートセンサを用いないコスト低減を図った構成で車両の操舵を迅速に検出することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、車線逸脱警報の機能をさらに備え、緊急回避のための急操舵により車線区分線を逸脱したとしても、前記検出手段が急操舵を検出する場合には車線逸脱の警報を禁止して行なわないようにすることができ、ドライバ等の乗員に煩わしさを与えてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の運転支援制御装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の撮影画像の一例の説明図である。
【図3】図2の撮影画像のエッジ検出フィルタの一例の説明図である。
【図4】(a)、(b)は急操舵のない場合の図2の撮影画像の車線区分線の画像部分、その水平エッジ画像の一例の説明図である。
【図5】(a)、(b)は急操舵が発生した場合の図2の撮影画像の車線区分線の画像部分、その水平エッジ画像の一例の説明図である。
【図6】図1の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0016】
図1は車両1に搭載された本実施形態の運転支援制御装置を示し、この運転支援制御装置は、車両1の進行方向を撮影する車載カメラ2、マイクロコンピュータ等で形成された車線逸脱判定装置3及び、メータパネルの表示手段やブザー等からなる警報手段4で構成され、車線逸脱警報の機能を備える。
【0017】
そして、車載カメラ2は、例えば2次元CCDのモノクロまたはカラーの単眼の2:1インタレース走査方式で撮影するカメラであり、走行路を含む車両周辺として、走行路の路面を含む車両1の前方を撮影し、1/30秒間隔の毎フレームに、それぞれ1/60秒の奇数フィールドの撮影画像と偶数フィールドの撮影画像とを合成した1フレームの撮影画像の信号を出力する。
【0018】
車載カメラ2の毎フレームの撮影画像の信号は、車線逸脱判定装置3の車線区分線検出部(本発明の抽出部)31に取り込まれ、区分線検出部31は、周知の白線検出の画像処理手法(例えば、テンプレートマッチングの手法)で車両1の走行車線の両側あるいは片側の車線区分線(白線)を検出する。
【0019】
図2は毎フレームの撮影画像Pの1例を示し、画像の下端側が車両1の前端側であり、図中のa、bは、車載カメラ2の撮影画像P中の本発明の走行路の静止物の画像としての左、右の車線区分線の画像であり、xは横軸、yは縦軸(高さ方向の軸)である。
【0020】
そして、区分線検出部31が検出した画像部分は逸脱判定部32に入力され、逸脱判定部32は、例えば、車線区分線a、bと車両1の車速等から推定された走行予定軌跡とに基づき、車両1が車線区分線a、b間の自車の走行路から逸脱するか否かを判定し、逸脱する可能性があれば警報手段4に警報指令を出力する。
【0021】
一方、車線区分線検出部31が毎フレームの撮影画像Pから抽出した車線区分線a、bの画像部分がROI(関心領域)として水平エッジ検出部33に入力され、水平エッジ検出部33は、例えば、毎フレームのROIの画像部分の水平エッジを検出して車線区分線a、bの水平エッジ画像を形成する。具体的には、例えばROIの部分に2次元の重み付けフィルタを適用し、ROIの部分の各画素に重み付けフィルタの係数(定数)を乗算して水平エッジを検出して車線区分線a、bの水平エッジ画像を形成する。水平エッジ画像を形成するのは、車線区分線a、bの後述する「ぎざぎざ」が主に水平エッジ成分を含むからである。
【0022】
図3は前記した2次元の重み付けフィルタFの一例を示し、図中の+1、−1が係数(定数)である。
【0023】
ところで、毎フレームの撮影画像Pの車線区分線a、bは、実際には、1/60秒の時間差で撮影された奇数フィールドの撮影画像と偶数フィールドの撮影画像とからなるので、ドライバの操舵によって車両1の進行方向が左右に曲がると、奇数フィールドの撮影画像の車線区分線a、bと、偶数フィールドの撮影画像の車線区分線a、bとは、両フィールドの撮影時間差に基づいてずれる。そのため、毎フレームの撮影画像Pの車線区分線a、bの画像部分は操舵に応じて乱れ、車線区分線a、bそれぞれの両側に操舵の緩急及び操舵量に応じた「ぎざぎざ」が生じ、水平エッジ画像では「ぎざぎざ」が一層鮮明になる。
【0024】
図4(a)、(b)は急操舵のない場合の車線区分線aの画像部分Pα、その水平エッジ画像Qαの例であり、図5(a)、(b)は急操舵があった場合の車線区分線aの撮影画像Pβ、その水平エッジ画像Qβの例である。
【0025】
図4、図5の比較からも明らかなように、車線区分線a、bの画像部分(例えば画像部分Pα、Pβ)、それらの水平エッジ画像(例えば水平エッジ画像Qα、Qβ)には操舵の緩急の度合い及び操舵量に応じた大きさ・数の「ぎざぎざ」が生じる。
【0026】
そこで、水平エッジ検出部33の水平エッジ画像が操舵検出部34に入力され、操舵検出部34は、例えば、車線区分線a、bの水平エッジ画像上での「ぎざぎざ」の各歯の高さ(長さ)の平均、又は、車線区分線a、bの水平エッジ画像上での「ぎざぎざ」のエッジ数(エッジピークの数)から、車両1の操舵を検出する。具体的には、一定以上の急操舵を検出する場合は、例えば「ぎざぎざ」の各歯の高さの平均又は「ぎざぎざ」のエッジ数が、設定されたしきい値より大きく(多く)なることから急操舵を検出する。操舵量を検出する場合は、例えば「ぎざぎざ」の各歯の高さの平均の画素数やエッジ数に対して、異なる大きさの複数のしきい値を設定して比較等することから操舵量を測定して検出したり、予め設定された「ぎざぎざ」の各歯の高さ、エッジ数と操舵量との対応関係のテーブルから操舵量を換算して検出したりする。
【0027】
つぎに、本実施形態では、急操舵を検出して車線逸脱の警報を禁止するため、操舵検出部34の検出結果が急操舵確定部(操舵検出部34とともに本発明の検出手段を形成する)35に送られ、急操舵確定部35は、検出部34が一定以上の急操舵を検出したときには、ドライバが緊急回避のための急操舵をしたものと判定して確定し、警報禁止指令を警報手段4に出力する。
【0028】
警報手段4は、逸脱検出部32から警報指令が出力され、車両1が車線を逸脱する状態になったとしても、同時に、急操舵確定部35から警報禁止指令が入力されるときには、警報禁止指令を優先して警報手段4の警報出力を禁止する。
【0029】
図6は車線逸脱判定装置3の概略の処理手順を示し、毎フレームに車線区分線検出部31が撮影画像を取り込み(ステップS1)、その車線区分線a、bの画像部分を検出し(ステップS2)、水平エッジ検出部33は車線区分線a、bの水平エッジ画像を形成する(ステップS3)。さらに、操舵検出部34により水平エッジ画像の車線区分線a、bの画像部分の「ぎざぎざ」の状態から操舵を検出し、急操舵確定部35により急操舵を判定して確定すると(ステップS4のYES)、急操舵確定部35から警報手段4に警報禁止指令を送って警報を禁止し(ステップS5)、ドライバの緊急回避のための急な操舵による車線逸脱に対しては車線逸脱の警報を出力しないようにする。
【0030】
したがって、本実施形態の場合、車載カメラ2がインタレース走査方式で車両1の走行路の路面を含む車両1の前方を撮影する車載カメラ2の毎フレームの撮影画像を形成する奇数フィールドの撮影画像と偶数フィールドの撮影画像の車線区分線a、bの画像部分(走行路の静止物の画像部分)が、ドライバの操舵の応じて「ぎざぎざ」の状態に乱れることを利用して、舵角センサやヨーレートセンサを用いないコスト低減を図った構成で操舵(とくに急操舵)を検出し、緊急回避のための急な操舵に対しては、警報を行なわないようにしてドライバ等の乗員に煩わしさを与えないようにすることができる。
【0031】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、前記実施形態においては、毎フレームのフィールド間の静止物の画像部分の乱れの度合から操舵を検出したが、同様にしてフレーム間の静止物の画像部分の乱れの度合から操舵を検出してもよい。したがって、車載カメラ2は、種々のインタレース走査方式のカメラであってよいのは勿論、フレーム間の静止物の画像部分の乱れの度合から操舵を検出する場合はノンインタレース走査方式(プログレッシブ走査方式)で撮影するカメラであってもよい。さらに、撮影カメラ2は前方を撮影するものに限るものではなく、例えば、車両1の後方を撮影するものであってもよい。
【0032】
つぎに、走行路の静止物の画像部分は、車線区分線の部分に限るものではなく、例えば、路面に印された標識等の種々の路面ペイント部分であってもよく(この場合は操舵の検出はペイント部分の撮影期間に行なわれる)、ガードレールや車道と歩道の境界線や道路端等の画像部分であってもよい。
【0033】
つぎに、車線区分線の検出手法や車線逸脱の検出手法及び、警報手段4の構成等はどのようであってもよい。
【0034】
つぎに、本発明の検出手段により操舵量を検出する場合は、図1の急操舵確定部35を省くことが可能であり、この場合は、検出結果(操舵量)を従来の舵角センサやヨーレートセンサの操舵検出に代えて用いることができる。
【0035】
そして、本発明は、種々の車両の運転支援制御装置に適用することができ、さらには、種々の用途の操舵検出にも適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 車両
2 車載カメラ
3 車線逸脱判定装置
4 警報手段
31 車線区分線検出部
33 水平エッジ検出部
34 操舵検出部
35 急操舵確定部
a、b 車線区分線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵の検出に基づいてドライバに対する運転支援制御を行なう運転支援制御装置であって、
走行路を含む車両周辺をくり返し撮影する車載カメラと、
前記車載カメラの時系列の複数の撮影画像中の走行路の静止物の画像部分を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した前記静止物の画像部分の撮影時間差に起因した乱れの度合から操舵を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする運転支援制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援制御装置において、
走行車線から逸脱すると判定した場合に警報を行なう車線逸脱警報の機能をさらに備え、
前記抽出手段は、前記静止物の画像部分として車線区分線の画像部分を抽出し、
前記車線逸脱警報機能は、走行車線からの逸脱判定が発生しても前記検出手段が急な操舵を検出する場合には警報を禁止することを特徴とする運転支援制御装置。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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