説明

運転支援装置

【課題】 自車と隣車線を走行する車両との位置関係を容易に把握できるようにする。
【解決手段】 車両の後部に設けた路面照射手段で自車の側方あるいは後方における隣車線の路面を所定形状に照射するので、運転者は車線変更時や合流時に路面の照射部分を基準にして隣車線を走行する他車との距離を的確に把握し、車線変更や合流を安全に完了することができる。路面照射手段を方向指示灯21、車幅灯あるいは制動灯に設けたので、それらのバルブを利用して路面を照射することができ、構造を簡素化してコストを削減することができる。路面を照射する形状が車両の走行方向と直交する方向の直線形状のガイド線24であるので、他車の距離を的確に把握することができる。また複数の路面照射手段を複数設け、それぞれの路面照射手段で隣車線の路面の車両走行方向の異なる位置を照射すれば、他車の距離をより的確に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車と隣車線を走行する車両との位置関係を容易に把握できるようにして車線変更等を支援するための運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、テレビカメラで撮像した自車の斜め後方の画像をモニタに表示するものにおいて、そのモニタの画面上に隣車線の自車から所定距離後方の位置を示すガイド線を重畳して表示することで、自車の車線変更時や右左折時に自車に対する他車の位置関係を容易に把握できるようにしたものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開2006−51850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載されたものは、図6(A)に示すように他車がガイド線の後方に位置する場合にはガイド線に対する他車の位置関係を把握し易いが、図6(B)に示すように他車がガイド線よりも前方に接近すると、他車の画像上にガイド線が重なって表示されるため、ガイド線が空中に浮き上がって見えて他車の距離感がつかみ難くなる問題があった。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、自車と隣車線を走行する車両との位置関係を容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車両の後部に設けた路面照射手段で、前記車両が走行する車線の隣車線における前記車両の側方ないし後側方の路面を所定形状に照射することを特徴とする運転支援装置が提案される。
【0006】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記路面照射手段は、方向指示灯、車幅灯および制動灯の少なくとも一つに設けられることを特徴とする運転支援装置が提案される。
【0007】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記所定形状は、前記車両の走行方向と直交する方向の直線形状であることを特徴とする運転支援装置が提案される。
【0008】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記路面照射手段車は複数設けられ、それぞれの路面照射手段は前記隣車線の路面における車両走行方向の異なる位置を照射することを特徴とする運転支援装置が提案される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、車両の後部に設けた路面照射手段で自車の側方ないし後側方における隣車線の路面を所定形状に照射するので、運転者は車線変更時や合流時に路面の照射部分を基準にして隣車線を走行する他車との距離を的確に把握し、車線変更や合流を安全に実行することができる。
【0010】
また請求項2の構成によれば、路面照射手段を方向指示灯、車幅灯あるいは制動灯に設けたので、それらのバルブを利用して路面を照射することができ、構造を簡素化してコストを削減することができる。
【0011】
また請求項3の構成によれば、路面を照射する形状が車両の走行方向と直交する方向の直線形状であるので、他車の距離を的確に把握することができる。
【0012】
また請求項4の構成によれば、複数設けられた路面照射手段車でそれぞれ隣車線の路面の車両走行方向の異なる位置を照射するので、他車の距離をより的確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図5は本発明の実施の形態に係るもので、図1は自動車の運転席から前方を見た図、図2は方向指示灯の断面図、図3は運転支援装置のブロック図、図4は路面に表示されたガイド線を示す図、図5は表示手段に画像を示す図である。
【0015】
図1に示すように、自動車の運転席の前方に配置されたステアリングホイール11の近傍に方向指示灯を作動させる方向指示レバー12が設けられており、ダッシュボード13の中央部にはナビゲーションシステムに兼用される液晶モニタよりなる表示手段14が設けられる。また左右のサイドミラー15L,15Rには、車体の側方から後方への所定の角度範囲を撮像可能なテレビカメラ16L,16Rが設けられる。
【0016】
図2に示すように方向指示灯21は、バルブ22と、バルブ22を覆う透明なカバー23と、カバー23に形成した拡散レンズ部23aと、カバー23に形成した集光レンズ部23bを備える。図4に示すように、バルブ22から出て集光レンズ部23bを通過した光は、自車の後端から所定距離(例えば12m)後方であって、自車が走行する車線から隣車線に跨がる範囲に、車線の方向と直交する方向に延びる直線状のガイド線24を投射する。投射されるガイド線24の幅は、視認性を確保するために10cm以上の太さとされる。左側の方向指示灯21は自車に左後方にガイド線24を投射し、右側の方向指示灯21は自車に右後方にガイド線24を投射する。前記12mという距離は、他車と干渉することなく安全に車線変更を行うことができる距離として設定されている。
【0017】
図3に示すように、電子制御ユニットUは、方向指示レバー12からの信号と、テレビカメラ16L,16Rからの信号とに基づいて、表示手段14に映し出される画像および方向指示灯21の作動を制御する。尚、電子制御ユニットUにはナビゲーションシステム17が接続されており、テレビカメラ16L,16Rで撮像した画像を表示手段14に表示しないときには、表示手段14はナビゲーションシステム17のモニタとして使用される。
【0018】
しかして、例えば右車線に車線変更しようとして方向指示レバー12を右折方向Rに操作すると、電子制御ユニットUからの指令で右折を指示する車体右側の方向指示灯17が作動すると同時に、右側のテレビカメラ16Rが自車の後側方の所定の領域を撮像して表示手段14に表示し、画像の表示は方向指示レバー12が中立位置に戻るまで継続する。このとき、表示手段14の画像には方向指示灯21の集光レンズ部23bから路面に投射されたガイド線24が写し出される。運転者はステアリングホイール11を右に切って実際に車線変更を行う前に表示手段14の画像を見ることで、表示手段14に写ったガイド線24よりも自車に近い位置に他車が存在しないことを確認した後に(図4(A)および図5(A)参照)、安全に車線変更を開始することができる。
【0019】
一方、表示手段14に写ったガイド線24よりも自車に近い位置に他車が存在することが確認された場合には(図4(B)および図5(A)参照)、運転者は他車が自車を追い越すのを待って車線変更を開始するか、加速して車間距離を増加させてから車線変更を開始するか、車線変更を断念するかを判断することができる。
【0020】
尚、方向指示灯21の集光レンズ部23bから投射された光は他車にも当たるが、前記光は12m後方で焦点を結ぶように投射されるため、他車の車体表面に明瞭なガイド線24が投射されることはなく、また曲面で構成される他車の表面に投射されたガイド線は12m後方の路面に投射されたガイド線24と直線状に連なることはないため、路面に投射されたガイド線24は恰も路面に直接描かれたように見え、ガイド線24が路面から浮き上がって見えて距離感が掴み難くなる不具合が解消される。
【0021】
特に、車線変更時や合流時に方向指示レバー12を操作すると、方向指示灯21の作動に連動して路面照射手段が作動するので、運転者の操作負担を増加させることなく車線変更や合流を補助することができる。方向指示灯21のバルブ22は所定時間間隔で点滅するので、路面に投射されるガイド線が点滅して視認性が更に高められる。
【0022】
また上記特許文献1に記載されたものは、表示手段の画面に仮想的なガイド線を重畳するためにコンピュータにおける処理が複雑になるが、本実施の形態によれば実際に路面に投射されたガイド線24を撮像するだけなので、コンピュータにおける処理が複雑になる問題は発生しない。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0024】
例えば、実施の形態では自車の後側方の画像を表示する表示手段14を備えているが、表示手段14を用いずに、運転者がドアミラー15L,15Rを介して、あるいは斜め後方を振り返って、他車およびガイド線24の位置関係を確認することができる。
【0025】
また実施の形態では方向指示灯21を利用して路面を照射しているが、制動灯や車幅灯を利用して路面を照射することができる。また路面照射用の特別の光源を設けることができ、この場合にレーザー光を利用して路面を照射すればガイド線24の視認性を一層高めることができる。
【0026】
また実施の形態では方向指示レバー12の操作に応じて路面照射手段を発光させているが、運転者により操作される専用のスイッチの操作に応じて路面照射手段を発光させても良い。
【0027】
また実施の形態では路面に直線状のガイド線24を照射しているが、照射する図形は直線に限定されず、曲線や点線、あるいは所定の広がりを有する領域であっても良い。
【0028】
また単一の路面照射手段で、あるいは複数の路面照射手段で路面上の複数の異なる位置を照射することができ、この場合に異なる位置毎に照射する色を変化させれば距離の視認性が一層向上する。路面の照射位置は車両の側方から後側方の任意の範囲を選択することができるが、自車の制動中は他車が大きな相対速度差をもって接近する可能性が高いため、照射位置を自車に近い位置(自車の側方)に設定することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】自動車の運転席から前方を見た図
【図2】方向指示灯の断面図
【図3】運転支援装置のブロック図
【図4】路面に表示されたガイド線を示す図
【図5】表示手段に画像を示す図
【図6】従来の表示手段に画像を示す図
【符号の説明】
【0030】
12 方向指示レバー
14 表示手段
16L テレビカメラ
16R テレビカメラ
21 方向指示灯
24 ガイド線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に設けた路面照射手段で、前記車両が走行する車線の隣車線における前記車両の側方ないし後側方の路面を所定形状に照射することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記路面照射手段は、方向指示灯、車幅灯および制動灯の少なくとも一つに設けられることを特徴とする、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記所定形状は、前記車両の走行方向と直交する方向の直線形状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記路面照射手段車は複数設けられ、それぞれの路面照射手段は前記隣車線の路面の車両走行方向における異なる位置を照射することを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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