説明

運転支援装置

【課題】運転者の運転姿勢に応じた適切な運転支援を可能とする運転支援装置を提供することを目的とする。
【解決手段】運転支援装置1は、車両のシートベルトの引出し長さを検出するシートベルト長さ検出センサー43と、車両の周辺状況を監視し周辺状況に基づいて運転支援制御を行う制御部21と、を備え、制御部21は、シートベルト長さ検出センサー43で検出された引出長さに一時的な変動があった場合に、引出し長さに基づいて制御を変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のコンバインが知られている。このコンバインでは、走行機体の後方に存在する障害物を検出して、操縦者や周辺作業者に知らしめるバックソナー等の後方監視手段を備えている。この種のコンバインにおいては、圃場の畦際で後進する際や車庫入れのために後進する際、走行機体の後部と、その後方に存在する障害物が接触する直前まで後進操作を行わなければならない場合があり、この後進操作を操縦者が安全且つ確実に行うようにすることが提案されている。このため、走行機体に接近する障害物と走行機体との距離に応じて、走行機体の後進操作を運転者や周辺作業者に知らしめる後進警報用ホーンの警報出力周期を変化せしめるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−191911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の装置では、運転者の姿勢によって後方視界も変わり、警報の必要性等も運転者の姿勢によって異なるものである。すなわち、運転者が後方視界に優れるような姿勢で運転している場合と、そうでない場合とでは、運転者が必要とする運転支援も異なっている。従って、運転者の運転姿勢を考慮に含めて適切な運転支援を提供することが望まれている。
【0005】
本発明は、運転者の運転姿勢に応じた適切な運転支援を可能とする運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運転支援装置は、車両のシートベルトの引出し長さを検出するシートベルト長さ検出センサーと、車両の周辺状況を監視し周辺状況に基づいて運転支援制御を行う制御手段と、を備え、制御手段は、シートベルト長さ検出センサーで検出された引出長さに一時的な変動があった場合に、引出し長さに基づいて制御を変更することを特徴とする。
【0007】
この運転支援装置は、シートベルトの一時的な引出長さの変動があった場合には、引出長さに基づいて運転支援の制御が変更される。シートベルトの引出長さの一時的な変動は、運転者の運転姿勢の変更を反映するものと考えられるので、この運転支援装置では、運転者の運転姿勢に対応した適切な運転支援を提供することができる。
【0008】
また、制御手段は、車両周辺のうち運転者の死角範囲の映像を運転者に提示する運転支援制御を行うものであり、引出長さに一時的な変動があった場合には、引出し長さに基づいて、運転者への映像提示の対象範囲である死角範囲を変更することとしてもよい。
【0009】
車両の運転者の運転姿勢が変更されれば、車両周辺の視界も変更され、運転支援による映像提供を望む死角範囲も変更される。よって、この運転支援装置の構成によれば、運転者が運転姿勢に合わせて、運転者が望む死角範囲の映像を適切に提供することができる。
【0010】
また、制御手段は、車両周辺のうち運転者の死角範囲に存在する障害物を検出し当該障害物に関する情報を運転者に提示する運転支援制御を行うものであり、引出長さに一時的な変動があった場合には、引出し長さに基づいて、障害物の検知対象範囲である死角範囲を変更することとしてもよい。
【0011】
車両の運転者の運転姿勢が変更されれば、車両周辺の視界も変更され、運転支援による障害物検知を望む死角範囲も変更される。よって、この運転支援装置の構成によれば、運転者が運転姿勢に合わせて、運転者が望む死角範囲の障害物情報を適切に提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の運転支援装置によれば、運転者の運転姿勢に応じた適切な運転支援が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】車両の運転者の姿勢に対応する死角を示す側面図である。
【図3】車両の運転者の姿勢に対応する死角を示す平面図である。
【図4】図1の運転支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る運転支援装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示す運転支援装置1は、自動車100(図2,3参照)に搭載され、車両の周辺状況を監視し運転者に映像として提供するものである。運転支援装置1は、車両の周辺状況を撮像するため、車両の前方を撮像するフロントワイドカメラ11と、車両の左右の前方コーナーを撮像するフロントコーナーカメラ12と、車両の左右の後側方を撮像する後側方カメラ13と、を備えている。更に、運転支援装置1は、これらのカメラ11〜13の撮像データを処理する制御部(制御手段)21と、処理された撮像データに基づく映像を出力するディスプレイモニタ31と、を備えている。モニタ31は運転席に設けられており、上記カメラ11〜13で撮像された車両周辺の状況を、映像として運転者に提示することができる。
【0016】
運転支援装置1は、更に、運転席のシート位置を検出するシート位置検出センサー41と、運転席のヘッドレストの高さを検出するヘッドレスト高さ検出センサー42と、運転席のシートベルトの引出し長さを検出するシートベルト長さ検出センサー43と、を備えている。これらのセンサー41〜43から得られる情報は、制御部21に電気信号として入力される。
【0017】
制御部21は、視点位置算出器23、死角範囲算出器25、及び画像認識器27を備えている。なお、制御部21は例えばECU(Electronic Control Unit)等のハードウエアで構成される。また、視点位置算出器23、死角範囲算出器25、及び画像認識器27は、例えば、ECUが所定のプログラムに従って動作することでソフトウエア的に実現される構成要素である。
【0018】
ここで、運転者が通常の姿勢でシートに座っていると仮定すれば、運転者の目の位置(視点位置)は、シート位置及びヘッドレスト高さによってほぼ一意に決定されると考えてよい。そこで、視点位置算出器23は、前述のセンサー41,42から得られたシート位置情報、ヘッドレスト高さ情報に基づいて、運転者の視点位置を算出する。
【0019】
また、自動車100のウインドウ形状は一定であるので、運転者の視点位置が決定されれば、車両周辺における運転者の死角の範囲が一意に決定されると考えてよい。そこで、死角範囲算出器25は、車両周辺の運転者の死角範囲を算出する。そして、死角範囲算出器25は、カメラ11〜13から得られた撮像情報のうち、上記の死角範囲に該当する一部の範囲について、モニタ31に映像出力することとする。運転者にとって映像確認の必要性が最も高いのが死角範囲であるところ、この運転支援装置1によれば、算出された死角範囲のみを対象として映像情報をモニタ31に提示することで、当該死角範囲について拡大された映像で詳細な情報を運転者に提供することができる。
【0020】
更に、画像認識器27は、上記死角範囲の映像情報を処理して死角範囲に存在する障害物の検知処理を行う。そして、死角範囲に上記障害物が存在する場合には、運転者に注意を促す表示や障害物に関する情報(例えば、障害物までの距離等)をモニタ31に表示する。このように、障害物検知の対象範囲を死角範囲のみとすることで、過剰な検出・報知による運転者の煩わしさを抑えることができる。また、比較的必要性が低い範囲(死角範囲以外の範囲)の障害物検出を省略することにより、映像処理等の処理負荷を低減させ、運転支援装置1のコスト抑制にも繋がる。
【0021】
以上は、運転者が通常の姿勢(以下「通常姿勢」)でシートに座っていることを前提としているが、例えば、図2に示すように、運転者(D1又はD2の符号で示す)が一時的に前傾姿勢で運転することも考えられる。図2及び図3に示すように、前傾姿勢時の運転者D2の死角範囲A2は、通常姿勢時の運転者D1の死角範囲A1とは異なっている。また、運転者の前傾姿勢の度合いによっても、死角範囲は異なる。
【0022】
ここで、運転者が前傾した場合にはシートベルトを更に前方に引き出す必要があるので、運転者の前傾姿勢への移行は、シートベルトの引出し長さの変動として現れると考えてよい。また、運転者の前傾姿勢の度合いは、通常姿勢時と比較した引出し長さの差分として現れると考えてよい。すなわち、シートベルト引出し長さが通常姿勢時を基準として長い方に変動した場合には、運転者が前傾姿勢になったと考えられ、引出し長さの通常姿勢時との差分が大きいほど、運転者の視点位置が前方にあると考えてよい。
【0023】
そこで、シートベルト長さ検出センサー43で得られるシートベルト引出し長さが一時的に変動した場合には、視点位置算出器23は、前述のシート位置情報及びヘッドレスト高さ情報に加え更にシートベルト引出しに基づいて、運転者の視点位置を算出することとする。
【0024】
以下、このような運転支援装置1の処理について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0025】
まず、運転開始時に運転者が通常姿勢でシートに着席した際に、シート位置検出センサー41がシート位置を検出し、制御部21にシート位置情報を送信する(S1)。また、ヘッドレスト高さ検出センサー42がヘッドレストの高さを検出し、制御部21にヘッドレスト高さ情報を送信する(S2)。次に、視点位置算出器23が、シート位置情報とヘッドレスト高さ情報とに基づいて、運転者の通常姿勢時の視点位置を算出する(S3)。更に、シートベルト長さ検出センサー43がシートベルトの引出し長さを検出し、制御部21にシートベルト長さ情報を送信する(S4)。この処理S3で得られた引出し長さは、通常姿勢時の引出し長さである。
【0026】
次に、制御部21は、現在のシートベルト長さを取得し、通常姿勢時の値であるか否かを判定する(S5)。ここで、現在のシートベルト長さが通常姿勢時の値である場合には(S5でYes)、処理S3で得られた通常姿勢時の視点位置に基づいて死角範囲算出器25が通常姿勢時の死角範囲を算出する(S6)。そして、画像認識器27が上記死角範囲の障害物検知を実行し(S7)、当該死角範囲の映像および当該死角範囲に存在する障害物の情報をモニタ31に表示する。
【0027】
その一方、処理S5において、現在のシートベルト長さが通常姿勢時の値とは異なる場合には(S5でNo)、現在のシートベルト長さと通常姿勢時のシートベルトの長さとの差分(前傾姿勢の度合いに対応)に基づいて、現在の視点位置を算出する(S9)。そして、上記視点位置に基づいて、死角範囲算出器25が、前傾姿勢の度合いに対応する死角範囲を算出する(S10)。そして、画像認識器27が、現在の死角範囲の障害物検知を実行し(S11)、当該死角範囲の映像および当該死角範囲に存在する障害物の情報をモニタ31に表示する(S8)。
【0028】
以上のような運転支援装置1によれば、運転者が前傾姿勢になった場合にも、リアルタイムで前傾の度合いを認識し、前傾の度合いまで考慮に含めて運転者の視点位置、死角範囲を適切に算出することができる。その結果、運転者の運転姿勢が変化した場合にも、死角範囲の映像及び死角範囲の障害物情報を適切に提供することができる。
【0029】
また、運転者の姿勢を検出する手段として、インナーミラーやサイドミラーの角度に基づいて姿勢を算出する手法も考えられるが、インナーミラーやサイドミラーが電子ミラー化された場合には、このような手法を用いることができない。また、複数のカメラで運転者を撮像し、画像処理により運転者の姿勢を検出する手法も考えられるが、高コスト化の要因となってしまう。これに対し、運転支援装置1によれば、シートベルト長さの検出といった単純な手法で運転者の前傾姿勢を検出することができ、低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…運転支援装置、21…制御部(制御手段)、43…シートベルト長さ検出センサー、100…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートベルトの引出し長さを検出するシートベルト長さ検出センサーと、
前記車両の周辺状況を監視し周辺状況に基づいて運転支援制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記シートベルト長さ検出センサーで検出された引出長さに一時的な変動があった場合に、前記引出し長さに基づいて制御を変更することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記車両周辺のうち運転者の死角範囲の映像を運転者に提示する運転支援制御を行うものであり、
前記引出長さに一時的な変動があった場合には、前記引出し長さに基づいて、前記運転者への映像提示の対象範囲である前記死角範囲を変更することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記車両周辺のうち運転者の死角範囲に存在する障害物を検出し当該障害物に関する情報を運転者に提示する運転支援制御を行うものであり、
前記引出長さに一時的な変動があった場合には、前記引出し長さに基づいて、前記障害物の検知対象範囲である前記死角範囲を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−83950(P2012−83950A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229706(P2010−229706)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】