説明

過剰圧力バルブを備えたパファー・サーキット・ブレーカ

【課題】パファー・ボリュームの中の過剰圧力を解放するためのバルブを備えたパファー・サーキット・ブレーカを提供する。
【解決手段】サーキット・ブレーカは、パファー・ボリューム9、及び、もしその中の圧力が所定の閾値を超えた場合にパファー・ボリューム9から排出されるガスための少なくとも一つの過剰圧力バルブ16を有している。この過剰圧力バルブ16は、可動接点アセンブリ2の固定サポート・ボディの中の、ピストン17及びスプリング19並びにキャビティ18により構成されている。この過剰圧力バルブ16は、コンパクト且つシンプルなデザインであって、小さなヒステリシス及び大きな断面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過剰圧力バルブを有するパファー・サーキット・ブレーカ(puffer circuit breaker)に係る。
【背景技術】
【0002】
パファー・サーキット・ブレーカは、非常に高い電流レベルで、それらのパファー・ボリュームの中に、高圧を発生させる。その圧力は、接点速度、パファー・ボリューム、電流の非対称性、及び接点機構の寸法に依存する。サーキット・ブレーカの中で、一定の圧力レベルを実現することが望ましいが、高過ぎる圧力は、望ましくない。その理由は、圧力により作り出される力は、接点の動きに逆らうように作用し、遮断の瞬間の接点の距離を減少させ、および/または、より強力なブレーカ駆動機構を使用することを要求する。
【0003】
従って、パファー・ボリュームの中の圧力を制限するために、過剰圧力バルブを使用することが、これまでに知られている。しかしながら、別個のユニットとして可動接点アセンブリのサポートに取り付けられる、そのような過剰圧力バルブは、高価である。それに加えて、それらはスペースを必要とし、あるいは、もし小型のデザインの場合には、小さな直径しか持たず、そのことは、その中を流れるガスの流量の減少をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故に、本発明の目的は、これらの問題に対処するパファー・サーキット・ブレーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1のサーキット・ブレーカにより、解決される。
従って、前記サポートは、バルブのスプリングを受け入れるための一体化されたバルブ・キャビティを有している。更に、前記サポートは、一体化されたバルブ入口開口を有し、この入口開口は、パファー・ボリュームの中に開口し、且つ、バルブのピストンにより閉じられることが可能である。
【0006】
バルブ・キャビティ及び入口開口が、サポートの中に一体化されているので、サポート自体は、それらの壁面を構成することになる。これに対して、従来のデザインは、バルブ・キャビティ及びバルブ入口開口を構成する別個のバルブ・ユニットを使用している。従って、そのバルブ・ユニットは、サポートにより、例えばねじの中に保持されなければならず、それはより多くのスペースを必要とする。
【0007】
好ましくは、前記サポートは、可動接点アセンブリの駆動ロッドの周囲を取り囲む一体型の、シングル・ピースのボディを有していて、バルブ・キャビティとバルブ入口開口が、その中に一体化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の更なる実施形態、優位性及び適用は、従属請求項の中、並びに図面を参照して行われる以下の説明の中に開示されている。
【0009】
図1のサーキット・ブレーカは、高電圧サーキット・ブレーカであって、例えば少なくとも72.5kVの電圧に対して設計されている。このサーキット・ブレーカは、固定接点アセンブリ1及び可動接点アセンブリ2を有している。可動接点アセンブリ2は、固定サポート3の中に移動可能に保持されている。ロッド4は、ベース部材4a及びチューブ4bを有し、可動接点アセンブリ2を変位方向(通常、サーキット・ブレーカの長手方向軸5に一致している)に沿って移動させるために、可動接点アセンブリ2に接続されている。
【0010】
固定接点アセンブリ1は、一連の第一の固定接点6を有し、それらは、相手となる可動接点アセンブリ2の第二の接点7に接触するように配置されている。サーキット・ブレーカが作動したとき、第二の接点7は、第一の接点6から離れ、アークがアーク・ボリュ−ムの中に生ずる。アーク・ボリュ−ムの中に発生した圧力は、可動接点アセンブリ2とサポート3の間に形成されるパファー・ボリューム9(また“バッファ・ボリュ−ム”とも呼ばれる)の中に、部分的に、戻る。パファー・ボリューム9は、サポート3のフロント・プレート11と、可動接点アセンブリ2のシリンダ・ハウジング12との間に形成される。フロント・プレート11は、シリンダ・ハウジング12の中にスライド可能に配置される。
【0011】
サポート3は、鋳造金属のシングル・ピースから作られた一体化された管状のボディ10を有している。ボディ10は、管状であって、ほぼ円筒形で、ロッド4の周りを伸びている。そのボディは、一方の端でフロント・プレート11を形成し、その反対側の端で円筒形のベース部分13aを形成し、そして、バルブ部分13bが、フロント・プレート11とベース部分13aの間に位置している。ロッド4は、ボディ3の軸方向キャビティ14の中に位置していて、その中で摩擦軸受15によりガイドされている。
【0012】
過剰圧力バルブ16が、サポート3の一体化された管状のボディ10のバルブ部分13bの中に取り付けられている。この実施形態においては、全部で4個のそのような過剰圧力バルブ16が、2つの対の状態で、例えば、0°,45°,180°,225°の角度位置で、設けられている。これらの過剰圧力バルブ16の内の二つが、図1の中に示されている。これらのバルブ16の目的は、もし、その中の圧力が所定の閾値(例えば45bar)を超えた場合に、パファー・ボリューム9からガスを逃がすことである。
【0013】
図2の中で良く分かるように、各過剰圧力バルブ16は、可動ピストン17を有している。可動ピストンの後端17aは、管状のボディ10のバルブ部分13bの中のボアにより構成されるバルブ・キャビティ18の中に伸びている。バルブ・スプリング19は、ピストン17の後端17aを取り囲み、僅かに圧縮された状態で、ピストン17の肩部20とバルブ・キャビティ18の後部壁面21の間に伸びている。
【0014】
ピストン17の前端のヘッド22は、バルブ入口開口23の中に伸びている。バルブ入口開口23は、サポート3のフロント・プレート11を貫通するボアにより構成される。
【0015】
停止部材24は、ピストン17から横方向に突出して、長く伸びた穴またはリセス25の中に至るねじにより構成される。ピストンのストロークは、何か他の手段、例えば中心のねじまたはゼーガー・リング(Seeger-ring)により、制限されることも可能である。
【0016】
管状のボディ10は、少なくとも一つのウインドウ26を更に有していて、このウインドウは、バルブ・キャビティ18とバルブ入口開口23の間の領域からサーキット・ブレーカの排出スペースまでのダクトを形成している。ここに示された実施形態において、ウインドウ26は、管状のボディ10の外側に位置する排出スペース27の中、並びに、軸方向キャビティ14の中に開口している。ここで、軸方向キャビティ14は、管状のボディ10の中の大きな開口(図示せず)により、排出スペース27に接続されている。
【0017】
運転の際、パファー・ボリューム9の中に過剰圧力が無いときには、スプリング19がピストン17を前方に押し込み、それによって、ピストンのヘッド22が、バルブ入口開口23の中に伸び、それによって、バルブ16を閉じる。パファー・ボリューム9の中の圧力が、バルブ16の閾値の圧力を超えたときには、ピストン17が後方に押されて、バルブ入口開口23を解放し、バルブ16を開き、それによって、パファー・ボリューム9からのガスがウインドウ26を通ることが可能になる。
【0018】
ピストン17の最大変位は、停止部材24により制限され、この停止部材は、穴またはリセス25の後端25aに突き当たる。あるいは、上記の最大変位は、ピストン17の後端17aより制限され、その場合、その後端17aは、バルブ・キャビティ18の後部壁面21に突き当たる。このような制限は、パファー・ボリューム9内の圧力が非常に高い場合においても、スプリング19の過剰な、損傷の危険を伴う圧縮を防止する。
【0019】
ピストン17は、サーキット・ブレーカの長手方向軸5に対して平行な変位方向に沿って、変位することが可能である(図1参照方)。ピストンのヘッド22は、一定の断面を有している。即ち、変位の方向に対して垂直の断面が、変位の方向に沿って変わらない。同様に、バルブ入口開口23の少なくとも端部23aは、一定の断面を有している。前記双方の断面は、ヘッド22が端部23aの中に伸びたときに、シールを形成するために適合している。
【0020】
ヘッド22は、前記変位方向に対して垂直に伸びるピストン17の端面28の中で終了する。同様に、バルブ入口開口23の端部23aは、前記変位方向に対して垂直に伸びるサポート3の表面29で終了する。これらの手段は全て、個別に及び互いに組み合わされて、過剰圧力バルブ16のヒステリシスを減少させるために寄与する。
【0021】
例えば、図2の中に見られるように、ピストン17は、キャビティ18の前端を閉じる。ピストン17が動いている間の、キャビティ18とその周囲の間のガスの交換を可能にするために、ダクト30が、バルブ・キャビティ18を、排出スペース27(または、バルブ・キャビティ18と比べて遥かに大きい他のボリュ−ム)に接続している。ダクト30の寸法は、その中を通るガスが、キャビティ18の中でピストン17の動きに制動をかけるための十分な摩擦を生ずるように、設定される。
【0022】
ここに示されたデザインに基づく過剰圧力バルブ16は、非常にコンパクトである。それ故に、この過剰圧力バルブは、本来的に、速度が早い。その速度を更に一層増大させるため、ピストン17はアルミニウムで作られ、それによって、その重量が軽減されている。
【0023】
この過剰圧力バルブ16は、非常にコンパクトではあるが、比較的大きな断面を有するチャネルを開放することが可能であり、それによって、迅速にパファー・ボリューム9の中を排気することができる。そのような排気を更に促進するため、ウインドウ26が、軸方向キャビティ14の方向に開口し、且つ、ウインドウ26(好ましくは、同一のウインドウ26)が、排出スペース27の方向にも開口する。好ましくは、ウインドウ26は大きく、各一つが、2つの隣接する過剰圧力バルブ16を接続する。そのこともまた、経路の利用可能な断面を増大させる。
【0024】
ここに示された過剰圧力バルブ16のデザインは、シンプルで且つコンパクトである。過剰圧力バルブが、サポート3の中に一体化されているので、その組み立てのためのコストが低い。そうであっても、この過剰圧力バルブは、迅速に反応し、ヒステリシスが小さく、迅速にパファー・ボリューム9の中を排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、サーキット・ブレーカの断面図である。
【図2】図2は、図1の拡大断面図であって、単一の過剰圧力バルブを示している。
【符号の説明】
【0026】
1…固定接点アセンブリ、2…可動接点アセンブリ、3…サポート、4…ロッド、4a…ベース部材、4b…チューブ、5…長手方向軸、6…第一の接点、7…第二の接点、9…パファー・ボリューム、10…ボディ、11…フロント・プレート、12…シリンダ・ハウジング、13a…ベース部分、13b…バルブ部分、14…軸方向キャビティ、15…摩擦軸受、16…過剰圧力バルブ、17…ピストン、17a…ピストン17の後端、18…バルブ・キャビティ、19…バルブ・スプリング、20…肩部、21…バルブ・キャビティ18の後部壁面、22…ピストン17のヘッド、23…バルブ入口開口、23a…バルブ入口開口の端部、24…停止部材、25…穴またはリセス、26…ウインドウ、27…排出スペース、28…端面、29…表面、30…ダクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パファー・サーキット・ブレーカであって、
固定接点アセンブリ(1)及び可動接点アセンブリ(2)と;
前記可動接点アセンブリ(2)に接続され、前記可動接点アセンブリ(2)を駆動するためのロッド(4)と;
前記可動接点アセンブリ(2)を移動可能に保持し、前記ロッド(4)の周りに配置されたサポート(3)と;
前記サポート(3)と前記可動接点アセンブリ(2)の間に形成されたパファー・ボリューム(9)と;
前記サポート(3)に配置され、前記パファー・ボリューム(9)内の過剰圧力を解放するための、少なくとも一つの過剰圧力バルブ(16)と;を備え、
前記過剰圧力バルブ(16)が、可動ピストン(17)及びスプリング(19)を有する、パファー・サーキット・ブレーカにおいて、
前記サポート(3)が、前記スプリング(19)を受け入れるための一体化されたバルブ・キャビティ(18)、及び、前記パファー・ボリューム(9)の中に開口し、前記ピストン(17)により閉鎖可能な、一体化されたバルブ入口開口(23)を有していること、を特徴とするパファー・サーキット・ブレーカ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のサーキット・ブレーカ:
前記サポート(3)は、前記ロッド(4)の周りに配置され一体化された管状のボディ(10)を有し、
前記バルブ・キャビティ(18)及び前記バルブ入口開口(23)は、前記管状のボディ(10)により形成されている。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載のサーキット・ブレーカ:
前記管状のボディ(10)は、前記バルブ・キャビティ(18)と前記バルブ入口開口(23)の間の領域から、前記パファー・サーキット・ブレーカの排出スペース(27)までのダクトを形成する少なくとも一つのウインドウ(26)を有している。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載のサーキット・ブレーカ:
少なくとも二つの隣接する過剰圧力バルブ(16)が、共通のウインドウ(26)を分かち合っている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項3または4に記載のサーキット・ブレーカ:
前記ウインドウ(26)は、前記管状のボディ(10)の外側に位置するスペース(27)の中、並びに、前記管状のボディ(10)の内側の軸方向キャビティ(14)の中に開口している。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
前記バルブのピストン(17)は、前記ピストン(17)の変位方向に沿って一定の断面を有するヘッド(22)を有し、
前記ヘッド(22)は、前記入口開口(23)の端部(23a)の中に伸びるように配置され、
前記端部(23a)はまた、前記変位方向に沿って一定の断面を有し、
前記ヘッド(22)が前記端部(23a)の中に伸びたとき、シールを形成するために、前記端部(23a)の断面は、前記ヘッド(22)の断面に適合している。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項6に記載のサーキット・ブレーカ:
前記端部(23a)は、前記変位方向に対して垂直に伸びる前記サポート(3)の表面(29)で、終了する。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項6または7に記載のサーキット・ブレーカ:
前記ヘッド(22)は、前記変位方向に対して垂直に伸びる表面(28)で、終了する。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8のいずれか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
前記ピストン(17)は、前記バルブ・キャビティ(18)の中に伸び、
前記サポート(3)は、前記バルブ・キャビティ(18)を、前記バルブ・キャビティ(18)よりも大きいボリュ−ム(27)に接続して、前記ピストン(17)の変位による前記バルブ・キャビティ(18)内の過剰圧力を解放するため、且つ、前記ピストン(17)の動きに制動をかけるための、少なくとも一つのダクト(30)を有している。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9のいずれか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
前記ピストン(17)から横方向に突出し、前記ピストン(17)の長手方向の変位を制限するための停止部材(24)を有している。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項10に記載のサーキット・ブレーカ:
前記サポート(3)は、前記ピストン(17)に隣接するリセスまたは開口(25)を有し、
前記停止部材(24)は、前記リセスまたは開口(25)の中に伸びている。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項1から11のいずれか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
前記ピストン(17)は、少なくとも部分的に、アルミニウムで作られている。

【図1】
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【図2】
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