説明

過剰増殖性障害を処置するための組成物および方法

本発明は概して、濃縮NK細胞集団を含む組成物に関する。本発明はさらに、処置を必要とする哺乳動物被験体へ濃縮NK細胞集団を投与することによって、固形腫瘍または過剰増殖性障害を処置する方法に関する。本発明は、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物を提供する。濃縮同種異系NK細胞集団はさらにKIR/KIRリガンド−不適合性の濃縮同種異系NK細胞集団を含む。本発明はさらにKIR/KIRリガンド−不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年11月2日に出願された米国仮出願番号60/624,803に関し、その全開示は参考文献に含まれる。
【0002】
(分野)
本発明は概して、濃縮NK細胞集団を含む組成物に関する。本発明はさらに濃縮NK細胞集団を必要とする哺乳動物被験体へ濃縮NK細胞集団を投与することによって、固形腫瘍または過剰増殖性障害の治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ナチュラルキラー(NK)細胞は抗原非依存性の腫瘍細胞毒性を有し、マウスモデルにおいて腫瘍の増殖及び播種性転移(dissemination)を抑制・阻止することが示されている(非特許文献1;非特許文献2)。しかし、ヒトの癌の抑制におけるNK細胞の正確な役割に関しては未だ議論の余地がある。
【0004】
NK細胞は特定の抗原受容体をコードする遺伝子の再配列は起こさず、むしろ活性化または阻止シグナルのバランスを通じて標的へのそれらの認識を制御する(非特許文献3)。重要なことは、それらが正常な宿主組織を破壊することを防止するためにNK細胞の不活化が必要とされる(非特許文献4)。したがって、活性化リガンドの存在下でさえ、細胞上に発現した阻害性リガンドが、無効にする(overriding)信号を送って、NK細胞の機能を最終的に抑制させる。近年、ますます多くのNK細胞の阻害・活性化受容体が特徴付けされている(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。NK細胞は、その表面に発現したキラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)を介して、MHCクラスI及びクラスI様分子を認識できる。正常組織および悪性組織の両方におけるMHCクラスIによるKIRの結合によって、NK細胞の機能は抑制される。MHCクラスI分子は特定のKIRに対するリガンドとしての役割を果たし、NK細胞媒介性の細胞傷害性を抑制するグループに分類される。HLA−Cにおいて、77位及び80位に位置するアミノ酸残基における多型は、その標的KIRに対する特異性を決定づける(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)。KIR2DL1は、77位にアスパラギン、80位にリジンを有するグループ2のHLA−C分子を認識し、KIR2DL2及びKIR2DL3は、77位にセリン、80位にアスパラギンを有するグループ1のHLA−C分子を認識する。
【0005】
自己HLA分子によるNK細胞の不活化は、悪性形質転換した宿主細胞がNK細胞媒介性免疫から回避を許容する機構であり得る。腫瘍−KIRリガンドは常にNK細胞KIRと対応されるため、活性化リガンドの存在下でさえ、自己NK細胞はMHCクラスI発現腫瘍によって阻害されうる。このことは、養子移入された(adoptively transfused)自己NK(非特許文献12)またはリンフォカイン活性化キラー細胞(LAK)が最も転移性の高い固形腫瘍に対する抗腫瘍効果を媒介できないことを部分的に説明しうる(非特許文献13)。MHCクラスI発現を喪失しているか、またはドミナントな活性化リガンドを有する腫瘍細胞のみがこのような集団に感受性になると予想されうる(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21)。
【非特許文献1】Morettaら、Nat.Immunol.(2002)3:6−8
【非特許文献2】Kimら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2000)97:2731−2736
【非特許文献3】Morettaら、Annu.Rev.Immunol.(2001)19:197−223
【非特許文献4】Vilchesら、Annu.Rev.Immunol.(2002)20:217−251
【非特許文献5】Yokoyamaら、Semin.Immunol.(1995)7:89−101
【非特許文献6】Takeiら、Immunol.Rev.(1997)155:67−77
【非特許文献7】Lanierら、Annu.Rev.Immunol.(1998)16:359−393
【非特許文献8】Longら、Immunol.Rev.(2001)181:223−233
【非特許文献9】Morettaら、J.Exp.Med.(1995)182:875−884
【非特許文献10】Winterら、J.Immunol.(1997)158:4026−4028
【非特許文献11】Winterら、J.Immunol.(1998)161:571−577
【非特許文献12】Frohnら、J.Immunother.(2000)23:499−504
【非特許文献13】Rosenbergら、N.Engl.J.Med.(1985)313:1485−1492
【非特許文献14】Liaoら、Science,(1991)253:199−202
【非特許文献15】Giebelら、Blood,(2003)102:814−819
【非特許文献16】Childsら、N.Engl.J.Med.(2000)343:750−758
【非特許文献17】Riniら、J.Urol.(2001)165:1208−1209
【非特許文献18】Bregniら、Blood,(2002)99:4234−4236
【非特許文献19】Uenoら、J.Clin.Oncol.(1998)16:986−993
【非特許文献20】Hentschkeら、Bone Marrow Transplant,(2003)31:253−261
【非特許文献21】Strairら、J.Clin.Oncol.(2003)21:3785−3791
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自己HLA分子又はMHCクラスI発現腫瘍によるナチュラルキラー細胞の不活化を抑制するか、または無効にする組成物及び方法の発見が当該分野において必要とされる。NK細胞の不活化によって、腫瘍細胞が宿主NK細胞媒介性免疫から回避可能となりうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要約)
本発明は概して、濃縮NK細胞集団を含む組成物に関する。処置を必要とする哺乳動物被験体へ濃縮NK細胞集団を投与する工程を包含する、固形腫瘍または過剰増殖性障害を処置する方法を提供する。本発明は、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物を提供する。濃縮同種異系NK細胞集団はさらにKIR/KIRリガンド−不適合性の濃縮同種異系NK細胞集団を含む。本発明はさらにKIR/KIRリガンド−不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を提供する。
【0008】
固形腫瘍の処置又は固形腫瘍の再発を予防するための有効量で、増強剤(potentiating agent)(例えば、化学薬品や化学療法薬)と、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法を提供する。増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせるように作用する。一態様では、増強剤は化学療法剤または他の腫瘍感作因子でありうる。固形腫瘍の治療又は固形腫瘍の再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法を提供する。
【0009】
固形腫瘍を処置する方法は、哺乳動物被験体に対する本発明の組成物の投与を含む。本発明は、KIR/KIRリガンドが不適合(「KIR/KIRリガンド不適合性」)である同種異系NK細胞を含む組成物を利用した方法を提供し、この方法はKIR/KIRリガンドの適合した自己および同種異系の対応するものよりもin vitroにおいて固形腫瘍に対する強い細胞傷害性を示す。本発明ではさらに、グループ1(C−G1)又はグループ2(C−G2)のいずれかのHLA−C対立遺伝子がホモ接合であり、適合したKIR−抑制性HLA−Cリガンドを欠くEBV−LCL、腎細胞癌(RCC)、黒色腫(MEL)細胞に対する細胞傷害性が上昇しているが、KIR−リガンドの適合した標的に対する細胞傷害性が最小限であるような癌患者又は健常人ドナーの血液から濃縮およびクローン化された同種異系NK集団を提供する。この細胞傷害性作用は、NK細胞へのγ線照射後少なくとも48時間にわたって持続する。
【0010】
本発明はさらに、「KIR/KIRリガンド不適合性」であり、グループ1(C−G1)又はグループ2(C−G2)のいずれかのHLA−C対立遺伝子がホモ接合である患者からin vitroで分離および増殖可能な“自己CD158a陽性又はCD158b陽性のKIR不適合性NK細胞(AKI−NK細胞)”の少数集団を提供する。これらのAKI−NK細胞は、自己“バルク(bulk)”NK細胞や他の自己NK細胞部分集団と比較して、in vitroで自己腫瘍細胞及びEBV−LCLに対する細胞傷害性の強化を示した。
【0011】
NK細胞(例えば、CD3CD16NK細胞、CD3CD56NK細胞、KIR2DL2/3陽性NK細胞)を高率に増殖させる方法を提供する。KIR2DL2/3に結合することが判明しているHLA−C対立遺伝子を欠くか、またはHLA−C対立遺伝子がヘテロ接合性に発現しているEBV LCLフィーダー細胞を使用して、KIR2DL2/3陽性NK細胞を有意により高率に増殖可能である。
【0012】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体への組成物の投与前のNK細胞集団へのγ線照射を含む。この方法はさらにNK細胞へのγ線照射後48時間までの被験体へのγ線照射済みNK細胞集団の投与を含む。
【0013】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体に対する組成物の投与前でのNK細胞集団へのγ線照射を含む。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。さらに詳細な態様では、増強剤は5−フルオロウラシルでありうる。
【0014】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体に対する組成物の投与前でのNK細胞集団へのγ線照射を含む。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。さらに詳細な態様では、増強剤は5−フルオロウラシルでありうる。
【0015】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、KIR/KIRリガンド不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体に対する組成物の投与前でのNK細胞集団へのγ線照射を含む。
【0016】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体に対する組成物の投与前でのNK細胞集団へのγ線照射を含む。
【0017】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体に対する組成物の投与前でのNK細胞集団へのγ線照射を含む。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。
【0018】
過剰増殖性障害を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体に対する組成物の投与前でのNK細胞集団へのγ線照射を含む。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。
【0019】
過剰増殖性障害を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、KIR/KIRリガンド不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法を提供する。この方法はさらに、哺乳動物被験体に対する組成物の投与前でのNK細胞集団へのγ線照射を含む。一態様では、過剰増殖性障害は、血液の悪性疾患、固形腫瘍、黒色腫、尿生殖器の悪性疾患である。詳細な態様では、尿生殖器の悪性疾患は膀胱、泌尿器、腎臓、睾丸、前立腺の悪性疾患である。
【0020】
他の実施形態では、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘発させるか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための方法は、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する有効量の濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物へ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を含む。一態様では、腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、黒色腫、尿生殖器の悪性疾患である。詳細な態様では、尿生殖器の悪性疾患は膀胱癌、泌尿器癌、腎臓癌、睾丸癌、または前立腺癌である。
【0021】
他の実施形態では、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘発させるか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための方法は、増強剤と、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する有効量の濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とへ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を含む。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。さらなる態様では、腫瘍細胞は哺乳動物被験体の膀胱内にある。この方法はさらに、KIRとKIRリガンドとの結合の阻害による、NK細胞集団の細胞傷害性を強化する工程を含む。詳細な態様では、この方法はKIR細胞質ドメインに対する干渉RNA(RNAi)、KIR細胞質ドメインに対するアンチセンスRNA、KIR細胞質ドメインに対するリボザイム、またはKIR細胞外ドメインもしくはKIR細胞質ドメインに対する抗体でNK細胞集団を処理する工程を含む。
【0022】
哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘発させるか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための方法は、増強剤と、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する有効量の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とへ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を含む。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。さらなる態様では、腫瘍細胞は哺乳動物被験体の膀胱内にある。
【0023】
他の実施形態では、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘発させるか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための方法は、増強剤と、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する有効量の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とへ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を含む。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。さらなる態様では、腫瘍細胞は哺乳動物被験体の膀胱内にある。
【0024】
哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘発させるか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための方法は、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する有効量のKIR/KIRリガンド不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物へ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を含む。さらなる態様では、腫瘍細胞は哺乳動物被験体の膀胱内にある。一態様では、濃縮自己NK細胞集団は、KIRグループ1内のHLA−Cw遺伝子座がホモ接合である。ホモ接合性のHLA−Cw遺伝子座がCw1、Cw3、Cw7、Cw8、Cw12、Cw13、Cw14、Cw1507、またはCw16である、請求項49記載の方法。さらなる態様では、濃縮自己NK細胞集団は、KIRグループ2内のHLA−Cw遺伝子座がホモ接合である。ホモ接合性のHLA−Cw遺伝子座がCw2、Cw0307、Cw0315、Cw4、Cw5、Cw6、Cw0707、Cw0709、Cw1205、Cw12041、Cw12042、Cw15、Cw1602、Cw17またはCw18である、請求項50記載の方法。
【0025】
さらなる態様では、濃縮自己NK細胞集団は、Bw4又はBw6内のHLA−B遺伝子座がホモ接合である。ホモ接合性のHLA−B遺伝子座がBw−5、Bw−13、Bw−1513、Bw−1516、Bw−1517、Bw−1523、Bw−1524、Bw−17、Bw−21、Bw−27、Bw−37、Bw−38、Bw−44、Bw−47、Bw−49、Bw−51、Bw−52、Bw−53、Bw−57、Bw−58、Bw−59、Bw−63またはBw−77である、請求項51記載の方法。ホモ接合性のHLA−B遺伝子座がBw−7、Bw−8、Bw−12、Bw−14、Bw−18、Bw−2708、Bw−35、Bw−39、Bw−40、Bw−4005、Bw−41、Bw−42、Bw−45、Bw−46、Bw−48、Bw−50、Bw−54、Bw−55、Bw−56、Bw−60、Bw−61、Bw−62、Bw−64、Bw−65、Bw−67、Bw−71、Bw−72、Bw−73、Bw−75、Bw−76、Bw−78またはBw−81である、請求項51記載の方法。さらなる態様では、被験体はホモ接合性のKIRリガンドを有しており、かつNK集団が自己HLA分子と結合できないKIRを発現することを停止させることができない。被験体は例えば、Bw4又はBw6内にHLA−B遺伝子座を有することができる。被験体は例えば、KIRグループ1又はKIRグループ2内にHLA−Cw遺伝子座を有することができる。濃縮自己NK細胞集団は例えば、KIRグループ1又はKIRグループ2内にホモ接合性のHLA−Cw遺伝子座を有することができる。濃縮自己NK細胞集団は例えば、KIRグループ1又はKIRグループ2内にヘテロ接合性のHLA−Cw遺伝子座を有することができる。
【0026】
さらなる態様では、方法は、KIRとKIRリガンドとの結合阻害によるNK細胞集団の細胞傷害性を強化する工程を含む。詳細な態様では、方法は、KIR細胞質ドメインに対する干渉RNA(RNAi)、KIR細胞質ドメインに対するアンチセンスRNA、KIR細胞質ドメインに対するリボザイム、またはKIR細胞外ドメインもしくはKIR細胞質ドメインに対する抗体でNK細胞集団を処理する工程を含む。
【0027】
増強剤による腫瘍細胞の処理を含む、NK細胞集団の腫瘍細胞に対する細胞傷害性を高める方法を提供する。一態様では、増強剤はNK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を起こさせる。増強剤は例えば、化学薬剤又は化学療法剤でありうる。詳細な態様では、増強剤はプロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤でありうる。
【0028】
EBVリンパ芽球性細胞株を使用したNK細胞の増殖を含む、哺乳動物被験体からNK細胞の部分集団を増殖させる方法を提供する。一態様では、部分集団はKIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団である。詳細な態様では、KIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団はKIR 2DL2/3である。別の態様では、NK細胞は自己NK細胞集団である。詳細な態様では、自己NK細胞の部分集団は少なくとも10倍に増殖される。
【0029】
末梢血単核細胞を使用したNK細胞の増殖を含む、哺乳動物被験体からNK細胞の部分集団を増殖させる方法を提供する。一態様では、部分集団はKIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団である。KIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団は例えば、KIR 2DL2/3、KIR 2DL1、またはNKB1を発現できる。さらなる態様では、NK細胞は自己NK細胞集団であり、自己NK細胞の部分集団は少なくとも10倍に増殖される。詳細な態様では、自己NK細胞の部分集団は少なくとも10倍に増殖される。
【0030】
KIRとKIRリガンドとの結合阻害を含む、NK細胞集団の細胞傷害性を増大させる方法が提供される。この方法はさらに、KIR細胞質ドメインに対する干渉RNA(RNAi)によるNK細胞集団の処理による、腫瘍に対するNK細胞の細胞傷害性の強化を含む。この方法はさらに、KIR細胞質ドメインに対するアンチセンスRNAでNK細胞を処理することによって、腫瘍に対するNK細胞の細胞傷害性の強化を含む。この方法はさらに、KIR細胞外ドメイン又はKIR細胞質ドメインに対する抗体でNK細胞を処理することによって、NK細胞の細胞傷害性の強化を含む。一態様では、抗体はモノクローナル抗体又は一本鎖Fv抗体である。さらなる態様では、NK細胞集団は同種異系NK細胞集団である。さらなる態様では、NK細胞集団は自己NK細胞集団である。
【0031】
ストリンジェントな条件下でキラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)の標的遺伝子とハイブリダイズする核酸分子の哺乳動物への投与、そして標的遺伝子の発現の減弱を含む、哺乳動物における固形腫瘍又は過剰増殖性障害を処置する方法を提供する。一態様では、この方法はさらに、核酸分子と濃縮同種異系又は自己NK細胞集団との接触を含む。さらなる態様では、核酸分子はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらなる態様では、核酸分子は二本鎖RNA分子である。詳細な態様では、二本鎖RNA分子は短鎖干渉RNA(siRNA)又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である。さらなる態様では、核酸分子はKIR標的遺伝子の細胞内ドメインとハイブリダイズする。
【0032】
他の実施形態では、キラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)タンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する方法は、(i)KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現が抑制されるべき生物系を提供する工程、(ii)KIRタンパク質をコードする転写産物にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドとこの系とを接触させる工程、および(iii)KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する工程を含む。一態様では、生物系は濃縮同種異系又は自己NK細胞集団である。さらなる態様では、この方法は、哺乳動物被験体における濃縮NK細胞集団へアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与する工程、そして固形腫瘍又は過剰増殖性疾患の状態に対するNK細胞の細胞傷害性を増大させる工程を含む。
【0033】
他の実施形態では、KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する方法は、(i)KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現が抑制されるべき生物系を提供する工程、(ii)KIRタンパク質をコードする転写産物にハイブリダイズする二本鎖RNA分子と系とを接触させる工程、および(iii)KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する工程を含む。一態様では、生物系は濃縮同種異系又は自己NK細胞集団である。詳細な態様では、この方法はさらに、哺乳動物被験体における濃縮NK細胞集団へ二本鎖RNAを投与する工程、そして固形腫瘍又は過剰増殖性疾患の状態に対するNK細胞の細胞傷害性を増大させる工程を含む。さらなる態様では、二本鎖RNA分子は短鎖干渉RNA(siRNA)又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明は概して、濃縮NK細胞集団を含む組成物に関する。濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物を提供する。濃縮同種異系NK細胞集団はさらにKIR/KIRリガンド不適合性NK細胞を含む。濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を提供する。本発明はさらに、上記のように、固形腫瘍を治療するため、もしくはその再発を予防するための有効量で、濃縮同種異系又は自己NK細胞集団の組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法に関する。キラーIg様受容体(KIR)を介した細胞不活化は、潜在的に、腫瘍細胞を宿主のNK細胞媒介性免疫から回避可能にする。本発明は、KIR/KIRリガンドが不適合である同種異系NK細胞を含む組成物を利用した方法を提供し、この方法は、KIR/KIRリガンドの適合した自己および同種異系の方法よりも、in vitroで固形腫瘍に対する強い細胞傷害性を示す。本発明ではさらに、グループ1(C−G1)又はグループ2(C−G2)のいずれかのHLA−C対立遺伝子がホモ接合であり、適合したKIR−抑制性HLA−Cリガンドを欠くEBV−LCL、腎細胞癌(RCC)、黒色腫(MEL)細胞に対する細胞傷害性が上昇しており、KIR−リガンドの適合した標的に対する細胞傷害性が最小限であるような癌患者又は健常人ドナーの血液から濃縮およびクローン化された同種異系NK集団を提供する。この細胞傷害性作用は、NK細胞へのγ線照射後少なくとも48時間にわたって持続する。
【0035】
KIR及びそのHLAクラスIリガンドをコードする遺伝子は、異なる染色体上に位置する。結果として、自己HLA分子と結合できないKIRを発現するNK細胞はまた、健常者および癌患者に存在することもできる。本発明はさらに、グループ1(C−G1)又はグループ2(C−G2)のいずれかのHLA−C対立遺伝子がホモ接合性である患者からin vitroで分離および増殖可能な、自己CD158a陽性又はCD158b陽性のKIR不適合性NK細胞(AKI−NK)の少数集団を提供する。これらのAKI−NKは、自己「バルク(bulk)」NK細胞や他の自己NK細胞部分集団と比較して、in vitroで自己腫瘍細胞及びEBV−LCLに対する強化した細胞傷害性を有することが示された。HLA−CグループI対立遺伝子がホモ接合である癌患者3例及び健常人ドナー2例において、CD3−/CD158a+/CD158b− AKI−NK細胞の小集団(通例<1%)が、流動選別によって単離された。AKI−NK細胞をin vitroで増殖させ、5例全てで、CD3−/CD158a−/CD158b+KIR適合「バルク」非選択自己NK細胞集団と比較して、自己腫瘍細胞及び/又は自己EBV−LCL株に対する細胞傷害性が増大していた。
【0036】
これらのデータに基づき、本発明はさらに、初期又は進行期の固形腫瘍を有する患者へ養子移入された同種異系又は自己KIR不適合性NK細胞の抗腫瘍能を利用した免疫療法レジメンを開発することによって、固形腫瘍の治療法を提供する。
【0037】
以下のことが判明している。
【0038】
1) キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)リガンドがKIRに不適合な同種異系NK細胞は、KIR適合集団と比較して、固形腫瘍に対する細胞傷害性が増大している。
【0039】
2) 非選択“バルク”NK細胞集団と比較して自己固形腫瘍細胞及び/又はEBVリンパ芽球性細胞株(EBV−LCL)に対して細胞傷害性の強化した、自己「KIR/KIRリガンド不適合性」ナチュラルキラー細胞集団が、ヒトにおいて単離および増殖可能である。
【0040】
3) γ線照射されたNK細胞は、照射後48時間まで腫瘍標的に対する顕著な細胞傷害性を保持している。さらに、照射後少なくとも24時間は、KIR不適合腫瘍標的を殺傷する能力を保持している。
【0041】
4) 高率のNK細胞(例えば、CD3CD16NK細胞、CD3CD56NK細胞、またはKIR2DL2/3陽性NK細胞)の増殖方法が開発されている。照射済みEBV−LCLフィーダー細胞を、IL−2を含む濃縮NK細胞培養液に加えた場合、NK細胞集団は急速に増殖可能である。さらに、フィーダー細胞として特定のNK細胞KIRに対するMHCクラスIリガンドを欠くEBV−LCL細胞を使用する場合、所望のKIRを発現するNK細胞集団が選択的に増殖される。例えば、グループIIのホモ接合性EBV−LCLフィーダー細胞(KIR2DL2/3に結合することが判明しているHLA−C対立遺伝子の発現がない)又はHLA−C対立遺伝子の発現がヘテロ接合性であるEBV−LCLフィーダー細胞をNK細胞の増殖に使用した場合、より高率のKIR2DL2/3陽性NK細胞が選択的に増殖する。
【0042】
“Natural killer(NK) cells(ナチュラルキラー細胞)”とは、特定の抗原刺激の不在下で、MHCクラスによる制限なく、標的細胞を殺傷する免疫系の細胞である。標的細胞は、腫瘍細胞又はウイルスの寄生した細胞でありうる。NK細胞は、CD56の存在及びCD3表面マーカーの不在によって特徴付けられる。NK細胞は通常、正常末梢血の単核球画分の約10−15%を占める。歴史的に、NK細胞は、予備免疫または活性化なしに、特定腫瘍細胞を溶解する能力によって最初に同定された。NK細胞は、MHCクラスIの提示をダウンレギュレートすることでCTL反応を回避しうるウイルスや腫瘍に対する「予備的な(back up)」防御機構をもたらすと考えられる。直接的な細胞傷害性殺傷への関与に加えて、NK細胞はまた、癌または感染症の抑制に重要となりうるサイトカイン産生においても重要な役割を果たし、また胚子着床にも関与しうる。
【0043】
“Cytotoxic(細胞傷害性)”及び“Cytolytic(細胞溶解性)”とは、NK細胞などのエフェクター細胞の活性を述べるために使用する場合、同義語となることを意図している。一般に、細胞傷害活性は、様々な生物学的、生化学的、生物物理学的機構のいずれかによる標的細胞の殺傷と関連する。細胞溶解性とは、より具体的には、エフェクターが標的細胞の細胞膜を溶解させて、その物理的な完全性を破壊する活性をいう。これは標的細胞の死をもたらす。理論に拘束されたくないが、NK細胞の細胞傷害作用は細胞溶解に起因すると考えられる。
【0044】
“Activation of NK cell(NK細胞の活性化)”とは、NK細胞の異質細胞又は異常細胞に対する細胞傷害活性または細胞増殖抑制活性の活性自体、またはプレアクティブな(即ち、既に活性化している)NK細胞の異質細胞又は異常細胞に対する細胞傷害活性または細胞増殖抑制活性の上昇、ならびにサイトカイン産生の刺激などの他の生物学的機能の上昇をいう。
【0045】
“Target cell(標的細胞)”とは、本発明のNK細胞の細胞傷害活性によって殺傷される細胞を示す。これらとしては、具体的には、悪性細胞又はそうでなければ癌由来細胞、HIV、EBV、CMV、ヘルペスのような病原性ウイルスによって感染された細胞が挙げられる。
【0046】
“An enriched NK cell population(濃縮NK細胞集団)”とは、所望の抗腫瘍/細胞傷害活性を有する細胞の部分集団に選択され、細胞マーカー(例えば、細胞表面マーカー又は細胞内マーカー)によって選択可能なNK細胞集団を示す。濃縮NK細胞集団は、細胞マーカーへ蛍光プローブを結合させ、そして、蛍光細胞分析分離装置(FACS)カラム、免疫磁気ビーズを使用したネガティブ除去(negative depletion)、もしくは当該分野で公知の他の細胞選択および分離方法によって濃縮NK細胞集団を選択することによって、単離可能である。
【0047】
“Allogeneic”又は“Allogenic(同種異系の)”とは、一卵性(同一の)双生児ではない、同じ種の異なる個体から採取された組織、細胞、DNAを示す。2以上の個体又はこれらの個体の細胞は、各個体の配列において1以上の遺伝子座が同一ではない場合、同種異系である。
【0048】
“Autologous”又は“Autogeneic”又は“Autogenous(自己の)”とは、個体自身の組織から採取された組織、細胞、DNAをいう。例えば、NK細胞の自己移入および移植において、ドナーとレシピエントとが同一人物である。“Autologous(自己の)”は自己と関連するか、もしくは生物自体に由来している。
【0049】
“KIR/KIR ligand−incompatible NK cell population(KIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団)”とは、NK細胞集団が細胞表面に発現しているキラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)を介して、例えば腫瘍細胞または悪性組織上のMHCクラスI及びクラスI様分子を認識することができないために、NK細胞の細胞傷害性を保持したNK細胞を示す。正常組織、悪性組織いずれのMHCクラスIによるKIRの結合によっても、KIR/KIRリガンド不適合の場合を除いて、NK細胞の機能抑制が可能となる。MHCクラスI分子は、特定のKIRに対するリガンドとしての役割を果たし、NK細胞媒介細胞傷害を抑制するグループに分類される。例えば、MHCクラスI HLA−Cにおいて、77位及び80位に位置するアミノ酸残基における多型は、その標的KIRに対する特異性を決定づける。
【0050】
“KIR ligand(KIRリガンド)”とは、キラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)、例えば、細胞表面上のMHCクラスI分子に結合する分子をいう。
【0051】
“Patient(患者)”、“Subject(被験体)”、“Mammal(哺乳動物)”は互換的に使用され、ウサギ、ラット、マウス、他の動物などの実験動物の他、ヒトの患者及びヒト以外の霊長類などの哺乳動物をいう。動物には全ての脊椎動物(例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、鶏、両生類、は虫類などの哺乳類及び非哺乳類)が含まれる。
【0052】
“Treating(処置する)”又は“Treatment(処置)”は、症状の発症、合併症、疾患の生化学的兆候を予防および遅延させるための、本発明の濃縮NK細胞の組成物、化合物、薬品の投与、症状の緩和、疾患、症状、障害(例えば、癌、転移性癌、転移性固形腫瘍)のさらなる進行の停止および抑制を含む。処置は予防的であり得、つまり補助化学療法(疾患の発症の予防又は遅延、もしくはその臨床および亜臨床的症状の発現の予防)、又は疾患発症後の症状の治療的抑制又は緩和であり得る。
【0053】
“An amount effective to reduce or eliminate the solid tumor or to prevent its occurrence or recurrence(固形腫瘍を縮小又は排除する、もしくはその発生および再発を予防するための有効量)”又は“An amount effective to reduce or eliminate the hyperproliferative disorder or to prevent its occurrence or recurrence(過剰増殖性障害を縮小又は排除する、もしくはその発生および再発を予防するための有効量)”とは、患者の検査データ、生存率データ、腫瘍マーカー値の上昇又は抑制、遺伝的プロファイルに基づく感受性の低下、環境因子に対する曝露によって測定される、腫瘍の病状又は過剰増殖性障害に対する、治療後の患者の転帰又は生存率を改善させる治療用化合物の量を示す。
【0054】
“Cancer(癌)”、“Malignancy(悪性)”、“Solid tumor(固形腫瘍)”、“Hyperproliferative disorder(過剰増殖性障害)”は同義語として使用され、多数の特有の構造的及び/又は分子的特性の他、細胞の無制御な異常増殖、局所的に又は血流やリンパ系を介して他の身体部分へ拡大する(つまり転移する)病的細胞の能力によって特徴付けられる多数の疾患をいう。“Cancerous(癌性の)”、“Malignant cell(悪性細胞)”、“Solid tumor cell(固形腫瘍細胞)”は、特定の構造特性を有し、分化しておらず、浸潤および転移能を有する細胞と理解される。“Cancer(癌)”とは、癌腫や肉腫を含む、哺乳動物で見出される全ての種類の癌、新生物、悪性疾患を示す。例えば、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、脳腫瘍、頭頸部癌、神経髄芽細胞腫、骨肉腫、肝臓癌、結腸癌、泌尿生殖器癌、膀胱癌、腎臓癌、睾丸癌、子宮癌、卵巣癌、頸癌、前立腺癌、黒色腫、中皮腫、肉腫である。(DeVitaら、(eds.), 2001, Cancer Principles and Practice of Oncology, 6th. Ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA参照;この参考文献は、その全体が本明細書において参考として援用される)。
【0055】
“Cancer−associated(癌関連の)”とは、核酸およびその発現の有無、又はタンパク質およびそのレベルもしくは活性の有無と、対象細胞における悪性疾患の発症との関係を示す。例えば、正常細胞では発現しない、もしくは低レベルでしか発現しない特定遺伝子の発現と癌とが関連し得る。反対に、癌関連遺伝子は、悪性細胞(又は形質転換中の細胞)では発現していない、もしくは悪性細胞中において正常細胞で発現しているよりも低レベルでしか発現していない遺伝子であり得る。
【0056】
癌との関連で、“Transformation(形質転換)”という用語は、正常細胞が悪性化する際に受ける変化をいう。真核生物において、“Transformation(形質転換)”という用語は、細胞培養での正常細胞の悪性細胞への変化を述べるために使用する。
【0057】
“Hyperproliferative disease(過剰増殖性障害)”とは、正常な組織増殖よりも細胞が急速に増殖する疾患又は異常を示す。したがって、過剰増殖中の細胞は、正常細胞よりも急速に増殖する細胞である。
【0058】
“Proliferating cell(増殖中の細胞)”は、活発に細胞分裂を起こしており、指数増殖している細胞である。“Loss of cell proliferation control(細胞増殖制御の喪失)”とは、正常では細胞分裂の適切な制限を保証する細胞周期制御を失った細胞の特性をいう。このような制御を失った細胞は、刺激シグナルがなくとも正常速度よりも速く増殖し、抑制シグナルには応答しない。
【0059】
“Advanced cancer(進行癌)”は腫瘍の原発部位にはもはや局在していない癌、または対癌米国合同委員会(AJCC)に従って病期III、IVの癌を意味する。
【0060】
“Well tolerated(耐容性良好である)”とは、治療の結果として生じ、治療決定に影響を及ぼしうる健康状態の有害な変化がないことをいう。
【0061】
“Metastatic(転移性の)”とは、免疫不全マウスの乳腺脂肪体及び/又は血液循環への注入時に免疫不全マウスの肺、肝臓、骨、脳に腫瘍の二次病変を形成できる腫瘍細胞(例えば、ヒトの固形腫瘍又は尿生殖器の悪性疾患)をいう。
【0062】
(癌の処置)
“Solid tumor(固形腫瘍)”としては、肉腫、黒色腫、癌腫、他の固形腫瘍癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
“Sarcoma(肉腫)”とは、胎生結合組織様の物質から構成され、一般に繊維状物質又は均質物質に埋め込まれた緊密に凝集した細胞からなる腫瘍をいう。肉腫としては、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉種、Abemethy肉腫、脂肪肉腫、脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫、絨毛腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞性肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉肉腫、傍骨性骨肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、血管拡張性肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
“Melanoma(黒色腫)”とは、皮膚または他の器官の色素細胞系から生じる腫瘍をいう。黒色腫としては、例えば、末端性黒子性黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性の若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング−パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0065】
“Carcinoma(癌腫)”とは、周辺組織に浸潤して転移を起こす傾向のある、上皮細胞から構成される悪性新生物を示す。典型的な癌腫としては、例えば、細葉細胞癌、腺房細胞癌、腺嚢癌腫、腺様嚢胞癌、腺癌、副腎皮質癌、細気管支肺胞上皮癌、肺胞細胞癌、基底細胞癌、基底細胞癌、類基底細胞癌、基底有棘細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支癌、脳状癌、胆管細胞癌、絨毛癌、膠様癌、面皰癌、脳梁癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円柱状癌、円柱細胞癌、腺管癌、硬性癌腫、胎生期癌、脳様癌、類表皮癌(epiermoid carcinoma)、腺様上皮腫、外向発育癌、潰瘍癌、繊維性癌、膠様癌、膠様癌、巨細胞癌、巨細胞癌、腺癌、顆粒膜細胞腫、毛母癌、血液様癌、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞腫、硝子様癌、過剰芽フロイド癌腫(hypemephroid carcinoma)、小児型胎児性癌、上皮内癌(carcinoma in situ)、表皮内癌、上皮内癌(intraepithelial carcinoma)、蚕食性癌、Kulchitzky細胞癌、大細胞癌、レンズ状癌、レンズ状癌、脂肪腫性癌、リンパ上皮癌、髄様癌、髄様癌、黒色癌、軟性癌、粘液性癌、粘液分泌癌(carcinoma muciparum)、印環細胞癌、粘液類表皮癌(mucoepidernoid carcinoma)、粘液癌、粘膜癌、粘液腫様癌、鼻咽腔癌、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、乳頭癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、有棘細胞癌、髄質様癌、腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫様癌、シュナイダー癌腫、スキルス癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌腫(solanoid carcinoma)、回転楕円面細胞癌腫、紡錐細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、線状癌(string carcinoma)、血管拡張性癌、毛細血管拡張様癌、移行上皮癌、結節癌、結節癌、疣状癌、絨毛癌(carcinoma viflosum)が挙げられる。
【0066】
“Leukemia(白血病)”とは、造血臓器の進行性の悪性疾患であり、通常、血液及び骨髄中の白血球及びその前駆細胞の誤った増殖および発生を特徴とする。白血病は通常、(1)疾患の持続時間および特徴−−急性又は慢性;(2)関与する細胞の種類;骨髄(骨髄性)、リンパ系(リンパ性)、単球性;ならびに(3)血中の異常細胞数の増加又は非増加−−白血病性又は非白血病性(亜白血病性)、に基づいて臨床的に分類される。白血病としては、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、無白血球白血病、好塩基性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリーセル白血病、血芽球白血病、血球母細胞白血病、組織球白血病、幹細胞性白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、リンパ性白血病、リンパ性白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄性顆粒球白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞性白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、亜白血性白血病、未分化白血病が挙げられる。
【0067】
さらなる癌としては、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺癌、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌皮膚病変、睾丸癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽腫、食道癌、泌尿生殖器系癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質細胞癌、前立腺癌が挙げられる。
【0068】
(増強剤)
哺乳動物被験体に対する固形腫瘍の処置又は固形腫瘍の再発を予防するための有効量で、増強剤(例えば、化学薬品や化学療法薬)及び濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物を投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法が提供される。哺乳動物被験体に対する固形腫瘍の処置又は固形腫瘍の再発を予防するための有効量で、増強剤(例えば、化学薬品や化学療法薬)及び濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法が提供される。“Potentiating agent(増強剤)”とは、NK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を生じさせることによって治療プロファイルを改善させるように作用する化合物をいう。一態様では、増強剤は、化学療法剤または他の腫瘍感作因子でありうる。詳細な態様では、この増強剤はプロテアソーム阻害剤(例えば、Velcade(ボルテゾミブ))、ヒストンデアセチラーゼ(例えば、デプシペプチド)であり得る。さらに詳細な態様では、この増強剤は、5−フルオロウラシルであり得る。
【0069】
増強剤(例えば、化学薬品又は化学療法薬)は、疾患治療に有用な化合物又は薬剤をいう。化学薬品又は化学療法薬は、例えば腫瘍性疾患又は癌などの疾患の治療において、NK細胞による殺傷に対して腫瘍の感作を生じさせるように作用する。癌の化学療法薬は、一般に抗腫瘍薬とも呼ばれる。多数の併用薬物療法、薬物送達手段、治療スケジュールの他、多数の化学療法化合物群が存在し、100近くの個々の薬剤を包含している。これらの化学療法薬は、それぞれ化合物の種類や治療される病状などのいくつかの基準に従って分類され得る。癌細胞の急速な分裂または細胞周期の標的特異的段階を利用してある種の薬剤が開発されており、もう1つの分類方法をもたらしている。薬剤は種類、副作用の重症度、薬物送達手段によっても分類可能である。しかし、化学療法薬の最も一般的な分類は、化合物群によるもので、これは、これらの化合物の作用機構を広く網羅している。
【0070】
参照する参考資料に応じて、抗新生物薬の分類には若干の違いがある。化合物群としては、プロテアソーム阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、アルカロイド、アルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン及びホルモン類似物質、免疫賦活剤、感光剤、混合型の他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない(米国特許第6,911,200号を参照のこと。その開示は、その全体が本明細書中に援用される)。
【0071】
プロテアソーム阻害剤としては、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、PSI(N−カルボベンゾイル−Ile−Glu−(OtBu)−Ala−Leu−CHO)、MG−132(N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Leu−CHO)、MG−115(N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Nva−CHO)、MG−101又はCalpain Inh I(N−アセチル−Leu−Leu−norLeu−CHO)、ALLM(N−アセチル−Leu−Leu−Met−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Phe−Leu−CHO、N−カルボベンゾイル−Gly−Pro−Ala−Phe−CHO、N−カルボベンゾイル−Leu−Leu−Phe−CHO、N−カルボベンゾイル−Leu−Ala−Leu−CHO)、Gliotoxin、NF−κB MW2781のSN50NLS、Bay 11−7082、カプサイシン、PDTC、ALLN、MG−262、PPM−18、Cyclosporin A、Epoxomicinが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤には、以下の構造クラスが含まれるが、これらに限定されない:1) ヒドロキサム酸、2) 環状ペプチド、3) ベンズアミド、4) 短鎖脂肪酸(米国特許第6,905,669号参照。その開示は、その全体が本明細書中に援用される)。(HDAC)阻害剤として使用される環状ペプチドは、主に、環状テトラペプチドである。環状ペプチドの例としては、デプシペプチド、Trapoxin A、Apicidin、FR901228が挙げられるが、これらに限定されない。Trapoxin Aは、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル(AOE)部分を含む環状テトラペプチドである(Kijima et al., J. Biol. Chem. 268: 22429−22435, 1993)。Apicidinは、強力な広域スペクトルの抗原虫活性を示し、ナノモル濃度でHDAC活性を阻害する真菌代謝物である(Darkin−Rattray et al., Pro. Natl. Acad. Sci. USA 93: 13143−13147, 1996)。FR901228は、クロモバクテリウム−ビオラセウムから単離されるデプシペプチドであり、マイクロモル濃度でHDAC活性を阻害することが示されている。
【0073】
(検出可能な標識)
アッセイで使用される具体的な標識又は検出基は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的方法によって検出可能である。アッセイで使用されるNK細胞上の細胞マーカーへの抗体の特異的結合を著しく妨げない限り、標識の具体的な型は、本発明における決定的な局面ではない。検出基は、検出可能な物理的、化学的特性を有する任意の物質であり得る。このような検出可能な標識は、アッセイ又は免疫アッセイの分野において十分に開発されており、概して、このような方法において有用な標識のほとんどを本発明に適用可能である。したがって、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的方法によって検出可能な任意の組成物である。本発明の有用な標識としては、磁気ビーズ(例えば、DynabeadsTM)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性同位元素(例えば、H、14C、35S、125I、121I、112In、99mTc)、マイクロバブルなどの他の造影剤(超音波画像診断)、18F、11C、15O(ポジトロン放射断層撮影)、99mTC、111In(単一光子放出型コンピュータ断層撮影)、酵素(例えば、ELISAで一般に使用されるホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、コロイド金、色ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの比色測定用標識が挙げられる。このような標識の使用を記載した特許としては、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号、同第4,366,241号が挙げられ、それらの開示は全て、全ての目的について、本明細書中に援用される。Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(6th Ed., Molecular Probes, Inc., Eugene OR.)もまた参照のこと。
【0074】
標識は、当技術分野で周知の方法に従って、アッセイの所望の化合物と、直接的又は間接的に結合可能である。前述のとおり、広範に種々の標識が、要求される感度、化合物との結合しやすさ、安定性要件、適用可能な機器、使い捨て器具に応じて選択され、使用され得る。
【0075】
非放射性標識は、間接的な方法によって付着される場合が多い。一般に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、分子と共有結合される。次に、リガンドは、固有に検出可能であるか、またはシグナル系(例えば、検出可能な酵素、蛍光化合物、化学発光化合物)と共有結合したかのいずれかである、抗リガンド(例えば、ストレプトアビジン)分子に結合する。多数のリガンド及び抗リガンドが使用可能である。リガンドが天然の抗リガンド(例えば、ビオチン、サイロキシン、コルチゾール)を有する場合、標識された天然型抗リガンドと組み合わせて使用可能である。あるいは、任意のハプテン化合物又は抗原性化合物を、抗体と組み合わせて使用可能である。
【0076】
分子は、シグナル発生化合物(例えば、酵素又はフルオロフォアとの結合による)と直接結合させることもできる。標識として目的の酵素は、主に、ヒドロラーゼ(特に、ホスファターゼ、エステラーゼ、グリコシダーゼ)又はオキシドレダクターゼ(特に、ペルオキシダーゼ)である。蛍光化合物としては、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光化合物には、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン(例えば、ルミノール)が挙げられる。使用可能な様々な標識化又はシグナル発生システムの概説は、米国特許第4,391,904号を参照のこと。その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0077】
標識の検出手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、標識が放射性標識である場合、検出方法としては、シンチレーションカウンター、またはオートラジオグラフィーで使用される写真用フィルムが挙げられる。標識が蛍光標識である場合、適切な波長の光で蛍光色素を励起させ、生じる蛍光を検出することによって検出可能である。蛍光は、写真用フィルム、電荷結合素子(CCD)や光電子増倍管などの電子感知器の使用によって目視で検出可能である。同様に、酵素標識は、適当な基質を酵素に与えて、生じる反応生成物を検出することで検出可能である。最後に、標識と関連する色を観察するだけで簡単な熱量標識を検出可能である。このように、各種の計量(dipstick)アッセイにおいて、共役金はピンク色を呈することが多いが、各種の共役ビーズはビーズの色を呈する。
【0078】
一部のアッセイ形式では、標識化化合物の使用は不要である。例えば、標的抗体の存在を検出するために凝集アッセイを使用可能である。この場合、標的抗体を含む検体によって抗原コーティングされた粒子を凝集させる。この形式では、いずれの化合物も標識する必要はなく、標的抗体の存在を簡単な目視検査で検出する。
【0079】
しばしば、細胞マーカー及び細胞マーカーに対する抗体には、検出可能なシグナルを与える物質を共有結合又は非共有結合させることで標識する。
【0080】
(処置計画)
本発明は、薬学的に受容可能なキャリアとともに製剤された、疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍、過剰増殖性障害)の処置用の濃縮NK細胞集団を含む医薬組成物を提供する。一部の組成物は、本発明の複数(例えば、2以上)の濃縮NK細胞集団の組み合わせを含む。
【0081】
予防に用いる場合、疾患又は病状(即ち、過剰増殖疾患又は固形腫瘍)に感受性のある、もしくはそのリスクのある患者に対して、過剰増殖疾患又は固形腫瘍の再発リスクを除外又は軽減し、重症度を軽減させ、発病(疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動上の症状、その合併症、発病中に呈する中間の病理学的表現型を含む)を遅らせるための十分量の医薬組成物又は薬剤を投与する。治療で用いる場合、そのような疾患の疑われる、もしくはそれを既に罹患している患者に対して、その合併症及び発病中での中間の病理学的表現型を含む病状(生化学的、組織学的及び/又は行動上)を治癒する、もしくは少なくとも部分的に停止させるための十分量の組成物又は薬剤を投与する。治療又は予防上の処置を完了するための適当量は、治療又は予防の有効量と定義される。予防および治療計画において、十分な抗増殖反応が得られるまで、通常、数種の用量で薬剤を投与する。通常、抗増殖反応をモニターして、抗増殖反応が弱まった場合、繰り返し投与する。
【0082】
(RNAおよびDNA干渉法)
(短鎖干渉RNA(RNAi))
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)を介した転写後遺伝子サイレンシングの機構であり、アンチセンスやリボザイムに基づくアプローチとは異なる(RNAi及びsiRNAの概説については、Jain, K.K., 2004, Pharmacogenomics 5: 239−42を参照のこと)。RNA干渉は、ストリンジェントな条件下でキラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)標的遺伝子にハイブリダイズして標的遺伝子の発現を弱める核酸分子(例えば、dsRNA)の哺乳動物への投与によって、腫瘍又は過剰増殖疾患の状態を治療する方法として有用である。dsRNA分子は、まずDICER(Bernstein et al., 2001, Nature 409: 363)と呼ばれるRNaseIII様酵素による、小さな2つの21ヌクレオチド鎖からなるdsRNA分子へのプロセシング後に、様々な種類の細胞におけるmRNAの配列特異的な分解を指向すると考えられている。このdsRNA分子は、それぞれ、5’リン酸および3’水酸基を有し、他方の鎖と厳密に相補的な19ヌクレオチドの領域を含み、その結果、2ヌクレオチド3’側に突出した19ヌクレオチドの二本鎖領域が存在する。このようにRNAiは、短鎖干渉RNA(siRNA)を介しており、これは通常、約19ヌクレオチド長の二本鎖領域からなり、各鎖1〜2ヌクレオチド3’側に突出しており、全長約21〜23ヌクレオチドとなっている。哺乳動物細胞では、30ヌクレオチドより長いdsRNAは通常、インターフェロン反応を介した非特異的mRNA分解を誘導する。しかし、インターフェロン反応よりもむしろ、哺乳動物細胞内でのsiRNAの存在が配列特異的な遺伝子サイレンシングをもたらす。
【0083】
一般に、短鎖干渉RNA(siRNA)は、好ましくは、約19bp長のRNA二本鎖からなり、さらに必要に応じて、1又は2の一本鎖オーバーハング又はループからなる。siRNAは、互いにハイブリダイズする2本のRNA鎖からなるか、もしくは代わりに自己ハイブリダイズ部分を含む一本鎖RNAからなる。siRNAは、1つ以上の遊離の鎖末端を含み、これはリン酸及び/又は水酸基を含み得る。siRNAは通常、ストリンジェントな条件下で、標的転写産物とハイブリダイズする部分を含む。siRNAの1つの鎖(又は、siRNAの自己ハイブリダイズ部分)は通常、標的転写産物の部分と厳密に相補的であり、このことは、siRNAが1つのミスマッチもなく標的転写産物とハイブリダイズすることを意味する。完全な相補性の得られていない本発明の特定の実施態様では、任意のミスマッチがsiRNA末端、もしくはその近傍に位置することが通常好ましい。
【0084】
siRNAがトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションなどの方法で哺乳動物内に移入された場合、もしくは様々なプラスミド法のいずれかによって細胞内で発現させた場合、遺伝子発現をダウンレギュレートすることが示されている。siRNAを用いたRNA干渉は、例えばTuschl, T., 2002, Nat. Biotechnol. 20: 446−448において概説されている(Yu, J.ら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci., 99: 6047−6052; Sui, G.ら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci USA., 99: 5515−5520; Paddison, P.ら、2002, Genes and Dev. 16, 948−958; Brummelkamp, T.ら、2002, Science 296, 550−553; Miyagashi, M. and Taira, K., 2002, Nat. Biotech. 20: 497−500; Paul, C.ら、2002, Nat. Biotech. 20: 505−508も参照のこと)。これらの参考文献または他の参考文献で記載されているとおり、siRNAは2本の個々の核酸鎖又はヘアピン(ステムループ)構造を形成可能な自己相補部位を有する1本の鎖からなり得る。構造、長さ、ミスマッチの数、ループの大きさ、オーバーハング内のヌクレオチドの同一性などにおける多数のバリエーションが、効果的なsiRNA誘発性遺伝子サイレンシングと一致する。理論に拘束されることを望まないが、多様な異なる前駆体の細胞内プロセシング(例えば、DICERによる)が効果的に遺伝子サイレンシングを媒介可能なsiRNA産生をもたらすと考えられる。一般に、イントロンよりもエクソンを標的とする方が好ましく、標的転写産物の3’部位内の領域と相補的な配列を選択することも好まれ得る。一般に、ほぼ等モル比の異なるヌクレオチドを含む配列を選択して、単一の残基が複数回繰り返される箇所を避けることが好ましい。
【0085】
このようにsiRNAは、約19ヌクレオチド長の二本鎖領域と各鎖に1〜2ヌクレオチドの3’オーバーハングとを有する、全長約21〜23ヌクレオチドのRNA分子からなり得る。本明細書で使用される場合、siRNAは、in vivoでプロセシングを受けて、このような分子を生じうる様々なRNA構造も含む。このような構造には、相互にハイブリダイズしてステム、ループ、そして必要に応じてオーバーハング(好ましくは、3’オーバーハング)を形成する2本の相補的分子を含むRNA鎖を含む。好ましくは、ステムは約19bp長、ループは約1〜20、より好ましくは約4〜10、最も好ましくは約6〜8ヌクレオチド長、そして/又はオーバーハングは、約1〜20、より好ましくは約2〜15ヌクレオチド長である。本発明の特定の実施態様では、ステムは最低19ヌクレオチド長であり、約29ヌクレオチド長までが可能である。4ヌクレオチド以上のループはそれより短いループほど立体障害を受けにくく、従って、好まれ得る。オーバーハングは、5’リン酸及び3’水酸基を含み得る。オーバーハングは複数のU残基(例えば、1〜5個のU残基)で構成できるが、必ずしもその必要はない。上記の従来のsiRNAは、標的となるmRNAの分解を誘導し、それによってタンパク質の合成速度も低下させる。従来の経路を介して作用するsiRNAに加えて、テンプレート転写産物の3’UTRに結合するある種のsiRNAは、従来のRNA干渉(例えば、転写産物の安定性の低下よりも、転写産物の翻訳量の減少による)と関連するが、それとは異なる機構によってテンプレート転写産物によってコードされるタンパク質の発現を抑制し得る。このようなRNAは、microRNA(mRNA)と呼ばれ、通常、約20〜26ヌクレオチド長(例えば、22ヌクレオチド長)である。それらは、小さな一時的(Small temporal)RNA(stRNA)として知られているより大きな前駆体又はmRNA前駆体に由来すると考えられ、これらは通常約70ヌクレオチド長で、約4〜15ヌクレオチドのループを有する(Grishok, A. et al., 2001, Cell 106: 23−24; Hutvagner, G.ら、2001, Science 293: 834−838; Ketting, R.ら、Genes Dev., 15, 2654−2659を参照のこと)。この種の内因性RNAが、哺乳動物を含む多くの生物において同定されており、転写後遺伝子サイレンシングの機構が広範囲に存在する可能性を示唆している(Lagos−Quintana, M.ら、2001, Science 294, 853−858; Pasquinelli, A., 2002, Trends in Genetics 18: 171−173、及び上述の2本の論文中の参考文献)。microRNAは、哺乳動物細胞中で標的部位を含む標的転写産物の翻訳を阻害することが示されている(Zeng, Y.ら、2002, Molecular Cell 9: 1−20)。
【0086】
3’ UTR(又は標的転写産物の別の領域)内に結合して翻訳を阻害する天然型又は人工の(即ち、ヒトによって設計された)mRNAなどのsiRNAは、siRNA/テンプレート二本鎖中のより多くのミスマッチを受容可能であり、特に二本鎖の中央領域内のミスマッチを受容可能である。実際に、in vitroで翻訳を抑制することが示されているmRNAが示すように、天然型のstRNAはこのようなミスマッチを示すことが多いため、一部のミスマッチが望ましい、もしくは必要であり得るとの証拠がある。例えば、標的転写産物にハイブリダイズする場合、このようなsiRNAは、ミスマッチ領域によって分離された完全に相補的な2本の伸長を含むことが多い。様々な構造が可能である。例えば、mRNAは複数の非同一(ミスマッチ)領域を含みうる。非同一(ミスマッチ)領域は、標的とmRNAとの両方が対合しないヌクレオチドを含むという意味で、対称である必要はない。通常、完全に相補的なストレッチは、少なくとも5ヌクレオチド長(例えば、6、7ヌクレオチド長以上)であり、ミスマッチ領域は、例えば1、2、3、4ヌクレオチド長であり得る。
【0087】
siRNA及びmRNA前駆体を模倣するように設計されたヘアピン構造は、細胞内でプロセシングを受けて、標的転写産物の発現を減少又は抑制可能な分子になる(McManus, M. T.ら、2002, RNA 8: 842−850)。これらのヘアピン構造は、19bpの二本鎖構造を形成する2本のRNA鎖からなる従来のsiRNAに基づいており、クラスI又はクラスIIヘアピンに分類される。クラスIヘアピンは、アンチセンスsiRNA鎖(即ち、その抑制を目的とする標的転写産物と相補的な鎖)の5’又は3’末端においてループを組み込むが、その他の点では従来のsiRNAと同じである。クラスIIヘアピンは、ステム中の1つ以上のヌクレオチドミスマッチに加えて、19ヌクレオチドの二本鎖領域と二本鎖のアンチセンス鎖の3’又は5’末端のいずれかにループを含む点で、mRNA前駆体と類似している。これらの分子は、細胞内でプロセシングを受けて、サイレンシングを媒介可能な小さなRNA二本鎖構造になる。これらは、天然型mRNA及びstRNAで考えられるように、翻訳抑制を通じてよりも、標的mRNAの分解を通じてその効果を示すと思われる。
【0088】
このように、二本鎖構造を含む多様なRNA分子の集合が様々な機構を通じてサイレンシングを媒介可能であることが明らかである。本発明の目的のためには、分解誘発、翻訳抑制、もしくは他の方法によってかに関わらず、その一部が標的転写産物に結合してその発現を低下させる、任意のこのようなRNAが、siRNAと見なされ、このようなsiRNA(即ち、RNAの前駆体としての役割を果たす)を生じる構造は、本発明の実施に際して有用である。
【0089】
本発明において、siRNAは治療の目的(例えば、腫瘍又は過剰増殖性障害のリスクにさらされた、もしくはそれを罹患している被験体においてKIRタンパク質の発現を調節する)で有用である。一実施形態では、抗体、アンチセンスベクター、二本鎖RNAベクターを併用した、濃縮NK細胞集団による固形腫瘍又は過剰増殖性障害の治療的処置である。
【0090】
したがって、本発明は(i)抑制性KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する生物系を提供する工程、(ii)抑制性KIRタンパク質をコードする転写産物を標的とするsiRNAと系との接触の工程を包含する、抑制性KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現の抑制方法を提供する。本発明の特定の実施態様では、この生物系はNK細胞を含み、接触工程は細胞内でのsiRNAの発現を含む。本発明の特定の実施態様では、生物系は被験体(例えば、マウスまたはヒトなどの哺乳動物被験体)を含み、接触工程は被験体へのsiRNA投与、もしくは被験体内でのsiRNA発現を含む。本発明の特定の実施態様では、siRNAは、誘導的及び/又は細胞型特異的もしくは組織特異的に発現させる。
【0091】
“Biological system(生物系)”とは、生体分子(例えば、核酸、ポリペプチド、多糖類、脂質など)、細胞又は細胞集団、組織、器官、生物などを入れる器、ウェル、容器を意味する。通常、生物系は、細胞又は細胞集団(例えば、NK細胞)であるが、上記方法は、精製又は組み換え型タンパク質を使用した器内でも実施できる。
【0092】
本発明は、KIRタンパク質をコードする転写産物を標的とするsiRNA分子を提供する。特に、本発明は、濃縮NK細胞集団内において、このような転写産物の多型変異体をコードする転写産物を選択的又は特異的に標的とするsiRNA分子を提供する。“Selectively(選択的に)”又は“Specifically targeted to(特異的に標的とする)”の用語は、ここでは、siRNAが他の変異体(即ち、被験体での存在が化学療法に耐性の腫瘍性疾患に対する感受性又は有無を示さないような変異体)よりも変異体の発現をより大きく減少させることを示すことが意図される。siRNA又はsiRNA群は、必要に応じて、さらなる化合物と共に、キットの形態で提供可能である。
【0093】
(短鎖ヘアピンRNA(shRNA))
二本鎖RNA(dsRNA)により媒介される転写後遺伝子サイレンシングの機構であるRNA干渉(RNAi)は、ストリンジェントな条件下でキラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)標的遺伝子にハイブリダイズして、当該標的遺伝子の発現を弱める核酸分子(例えば、dsRNA)の哺乳動物への投与による、哺乳動物における腫瘍性疾患の処置方法として有用である(RNAi及びsiRNAの概説については、Jain, K.K., 2004, Pharmacogenomics 5: 239−42を参照のこと)。本発明のRNA干渉のさらなる方法は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)の使用である。特定の所望のsiRNA配列をコードするDNA配列を含むプラスミドを、トランスフェクション又はウイルス媒介感染によって標的細胞内に移入させる。一度、細胞内に入れば、DNA配列は継続的にRNA分子に転写され、RNA分子は分子内の塩基対合を介してそれ自体が折れ曲がり、ヘアピン構造を形成する。これらのヘアピン構造は、細胞によってプロセシングを受けた場合、移入されたsiRNA分子と同等であり、細胞によって利用されて所望のタンパク質のRNAiを媒介する。shRNAの使用は、タンパク質発現の安定かつ長期間の抑制が可能なため、siRNAトランスフェクションよりも有利である。トランスフェクションされたsiRNAによるタンパク質発現の抑制は、数日以上の長期間にわたって起こることのない一過性の現象である。一部の例では、このことが好ましく、望まれ得る。より長期間のタンパク質の抑制が必要な場合、shRNA媒介性の抑制が好ましい。
【0094】
(完全/部分長アンチセンスRNA転写産物)
アンチセンスRNA転写産物は同じ細胞内の他のRNA転写産物の一部又は全てと相補的な塩基配列を有する。このような転写産物は、RNAスプライシングの調節、RNA輸送の調節、mRNA翻訳の調節などの様々な機構を通じて遺伝子発現を調節することが示されている(Denhardt, 1992, Ann NY Acad. Sci. 660: 70; Nellen, 1993, Trends Biochem. Sci. 18: 419; Baker and Monia, 1999, Biochim. Biophys. Acta, 1489: 3; Xuら、2000, Gene Therapy 7: 438; French and Gerdes, 2000, Curr. Opin. Microbiol. 3: 159; Terryn and Rouze, 2000, Trends Plant Sci. 5: 1360)。
【0095】
(アンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド)
アンチセンス核酸は通常、標的核酸(例えば、mRNA転写産物)の一部分と相補的な一本鎖核酸(DNA、RNA、修飾DNA、修飾RNA)であるため、標的に結合して二本鎖を形成する。通常、これらは15〜35ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであり、長さは10から約50ヌクレオチドに及び得る。通常、結合によって標的核酸の機能を低下又は抑制する。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAに結合した場合には転写を阻害し、mRNAに結合した場合には翻訳を阻害し、そして/又は核酸の分解を導き得る。抑制性KIRポリペプチドの発現は、ポリペプチドをコードするmRNA核酸と相補的な配列からなるアンチセンス核酸又はペプチド核酸の投与によって減少され得る。アンチセンス技術及びその応用は、当業者に周知であり、Phillips, M. I. (ed.) Antisense Technology, Methods Enzymol., 2000, Volumes 313 and 314, Academic Press, San Diego及び本明細書の参考文献に記載されている。Crooke, S. (ed.), “Antisense Drug Technology: Principles, Strategies, and Applications” (1st Edition), Marcel Dekker及び本明細書で引用されている参考文献も参照のこと。
【0096】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞内の任意のRNA転写産物の一部と相補的な塩基配列で合成可能である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNAスプライシングの調節、RNA輸送の調節、mRNAの翻訳の調節などの様々な機構を通じて遺伝子発現を調節可能である(Denhardt, 1992)。安定性、毒性、組織分布、細胞取り込み、結合親和性などのアンチセンスオリゴヌクレオチドの様々な特性は、(i)ホスホジエステル骨格(例えば、ペプチド核酸、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、ホスホロアミデートオリゴヌクレオチド)の置換、(ii)糖ベース(例えば、2’−O−プロピルリボース、2’−メトキシエトキシリボース)の修飾、(iii)核酸(例えば、C−5プロピニルU、C−5チアゾールU、及びフェノキサジンC)の修飾などの化学修飾を通じて改変可能である(Wagner, 1995, Nat. Medicine 1: 1116; Vargaら、1999, Immun. Lett. 69: 217; Neilsen, Curr. Opin. Biotech. 10: 71, 1999; Woolf, 1990, Nucleic Acids Res. 18: 1763)。
【0097】
(リボザイム)
リボザイム又はデオキシリボザイムと呼ばれる特定の核酸分子が、配列特異的なRNA分子の切断を触媒することが示されている。切断部位は、RNA又はDNA酵素内のヌクレオチドと標的RNA内のヌクレオチドとの相補的な対合によって決まる。したがって、RNAおよびDNA酵素は、任意のRNA分子を切断するように設計され得、これによって分解率を高め得る(Cotten and Birnstiel, 1989, EMBO J. 8: 3861−3866; Usman et al., 1996, Nucl, Acids Mol. Biol. 10: 243; Usmanら、1996, Curr. Opin. Struct. Biol. 1: 527; Sunら、2000, Pharmacol. Rev., 52: 325;Cotten and Birnstiel, 1989, EMBO J. 8: 3861−3866も参照のこと)。
【0098】
(SCFVファージライブラリー)
キラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)の細胞内ドメイン又は細胞外ドメインに対するscFv抗体ライブラリーを使用して、固形腫瘍又は過剰増殖性障害の処置が可能である。KIRタンパク質へ特異的に結合する抗体組成物の同定のためのファージディスプレイライブラリーでの1つのアプローチは、scFvファージライブラリーの使用である(例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 85: 5879−5883, 1988; Chaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 87: 1066−1070, 1990参照)。バクテリオファージ外殻タンパク質上にディスプレイされるscFvライブラリーの様々な実施態様が記述されてきた。例えば、WO96/06213、WO92/01047(Medical Research Council et al.)、WO97/08320(Morphosys)に記載されているような、ファージディスプレイ法の改良も知られており、これらは参考として本明細書中に援用される。例えば、WO92/01047(CAT/MRC)及びWO91/17271(Affymax)に記載されているような、Fabライブラリーのディスプレイも知られている。
【0099】
抗体又は抗体断片はファージ又はファージミド粒子の表面に存在するため、良好な結合活性を保持した変異体を同定するために、固形腫瘍又は過剰増殖性障害の処置のためのNK細胞上のKIRと関連する適当な抗原に対してディスプレイベクターにクローニングされたハイブリッド抗体又はハイブリッド抗体断片を選択可能である。例えば、Barbas IIIら、Phage Display, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2001を参照のこと。この内容は参考として本明細書中に援用される。例えば、Fab断片の場合、軽鎖及び重鎖Fd産物はlacプロモーターの制御下にあり、そして各鎖は、細菌宿主のペリプラスム間隙を指向させるために、そのプロモーターに融合されたたリーダーシグナルを有する。この間隙において、抗体断片が適切にアセンブル可能となり得る。重鎖断片はファージの外殻タンパク質ドメインとの融合体として発現させられ、これによって組み立てられた抗体断片が新たに作られたファージ又はファージミド粒子の外殻内に組み込み可能になる。新しいファージミド粒子の生成には、ファージの必要な全遺伝子を含むヘルパーファージの添加が必要となる。抗体断片のライブラリーがファージ又はファージミド表面上に提示されると、パニングと呼ばれる過程が続く。これは、i)ファージ又はファージミド粒子の表面上にディスプレイされた抗体が目的の抗原に結合し、ii)未結合のものは洗い流され、iii)結合粒子は抗原から溶出され、iv)追加選択用に濃縮プールを増幅させるために、溶出粒子を新しい細菌宿主に曝露させる方法である。通常、抗体クローンの特異的結合をスクリーニングする前にパニングを3回または4回実施する。この方法で、ファージ/ファージミド粒子によって、遺伝子型(DNA)と結合表現型(抗体)との関連付けが可能となり、抗体ディスプレイ技術の使用を成功させる。しかし、選択及び/又はスクリーニングのための溶菌性ファージベクター(改変T7又はLambda Zapシステム)内への抗体断片ライブラリーのクローニングなど、このヒト化プロセスにおいて他のベクター型を使用可能である。
【0100】
目的のハイブリッド抗体及び/又はハイブリッド抗体断片の選択後、当業者に周知の任意の方法によってそれらが大量生産(例えば、原核生物又は真核生物細胞での発現など)され得ることが企図される。例えば、抗体の重鎖をコードする発現ベクターを構築するための従来の方法を利用してハイブリッド抗体又は断片を産生可能であり、ここでCDR、そして必要に応じて、本来の種の抗体結合における特異性を保持するために必要な可変領域の枠組みの最小部位(本明細書に記載の方法に従って作成)が、元の種の抗体由来であり、抗体の残り部分が、本明細書に記載のとおりに操作可能な標的種の免疫グロブリン由来であり、これによってハイブリッド抗体の重鎖の発現用ベクターを作成する。
【0101】
詳細な実施態様では、様々な癌疾患を伴う5、10、15、20人以上の患者の末梢血リンパ球から、単鎖Fv(scFv)抗体ライブラリーを調製可能である。次に、完全にヒトの高親和性scFv抗体を合成シアリルLewisとLewisBSAコンジュゲートを使用して選択可能である。1例の研究では、これらのヒトscFv抗体は、ELISA、BIAcore、膵臓腺癌細胞の細胞表面へのフローサイトメトリー結合によって実証されているとおり、シアリルLewisとLewisに特異的であった。ヌクレオチド配列決定により、少なくとも4つの固有のscFv遺伝子が含まれていることが明らかになった。K値は1.1〜6.2×10−7Mであり、二次免疫反応由来のmAbの親和性と同程度であった。これらの抗体は、糖鎖抗原の構造及び機能の究明、そしてヒトの腫瘍疾患の処置における有益な試薬となりうる(Maoら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 6953−6958, 1999)。
【0102】
さらに詳細な実施態様では、ファージディスプレイコンビナトリアル抗体ライブラリーを使用して、転移細胞と関連する適当な抗原(例えば、NK細胞上のKIRタンパク質)に対する多種類の抗体を生成および選択可能である。ファージの外殻タンパク質であるpVII及びpIXを使用して、抗体のFv部分のヘテロ二量体構造をディスプレイすることが可能である。この方法の態様は、繊維状バクテリオファージのpIX上にディスプレイされる4.5×10の大きなヒトの単鎖Fv(scFv)ライブラリーの作成に拡大されている。さらに、ライブラリーの多様性、品質、有用性が6種の異なるタンパク質抗原に対するscFvクローンの選択によって実証された。特に、選択されたクローンの90%以上が、わずか3回のパニング後にそれらの各抗原に対する結合に陽性を示した。分析されたscFvは高品質であることもまた、判明した。例えば、動態分析(BIAcore)によって、ブドウ球菌のエンテロトキシンB及びコレラ毒素Bサブユニットに対するscFvの解離定数は、それぞれナノモル及びナノモル以下であり、免疫によって得られるmAbと同程度又はそれ以上の親和性をもたらした。異なるタンパク質間のみならず、より密接に関連したタンパク質間[例えば、トウゴマ(“リシン”)凝集素(RCA60、RCA120)]で両者間の80%以上の配列相同性にもかかわらず、高い特異性が得られた。pIXディスプレイライブラリーの性能が、pIIIディスプレイ型の性能を上回り、多様な標的抗原のパニングに理想的に適する可能性を、この結果は示唆した(Gao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99: 12612−12616, 2001)。
【0103】
抗体又は他の結合剤と抗原との特異的結合は、少なくとも10−6Mの結合親和性を意味する。好ましい結合剤は、少なくとも10−7Mの結合親和性で結合し、好ましくは、10−8M、10−9M、10−10M、10−11M、10−12Mである。エピトープという用語は、抗体への特異的結合の可能な抗原決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの化学的に活性な分子の表面基からなり、固有の電荷特性の他、固有の三次元構造特性を有する。立体構造又は非立体構造エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下で失われる点で区別される。
【0104】
(有効量)
本明細書に記載されている疾患(例えば、転移癌、固形腫瘍、過剰増殖性障害)の処置のための濃縮NK細胞集団の組成物の有効量は、投与方法、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるのか、他の投薬、処置が予防的または治療的のいずれを目的としているのか、といった多くの異なる要因によって変動する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニックの哺乳動物を含めたヒト以外の哺乳動物も処置可能である。処置用量を漸増させて、安全性および有効性を最適化する必要がある。
【0105】
濃縮NK細胞集団の投与において、用量は患者1人当たり約1×10から約1×1012NK細胞である。濃縮NK細胞集団の投与において、用量はレシピエントの体重1kg当たり約1×10から約1×10NK細胞、もしくはレシピエントの体重1kg当たり約5×10から約1×10、NK細胞である。典型的な処置計画は、2週間に1回又は1ヶ月に1回又は3〜6ヶ月に1回の投与を必要とする。一部の方法では、2種以上の濃縮NK細胞集団を同時に投与し、この場合、投与される各濃縮NK細胞集団の用量は示された範囲内に収まる。濃縮NK細胞集団は複数回投与できる。一回投与の間には1週間、1ヶ月、又は1年の間隔を置くことができる。患者での濃縮NK細胞集団の血中濃度測定で示されるように、間隔は不定期でも可能である。代替的な方法として、濃縮NK細胞集団は徐放性製剤としても投与可能であり、この場合、投与回数を減らす必要がある。用量及び回数は、患者における濃縮NK細胞集団の半減期に応じて変動する。投与の用量及び回数は、処置が予防的とまたは治療的のいずれを目的とするのかによって変動し得る。予防で用いる場合、長期間にわたり、比較的低頻度で比較的低用量を投与する。一部の患者は、その後処置を受け続ける。治療で用いる場合、疾患の進行が軽減する、もしくは終結するまで、または好ましくは、患者が病状の部分的又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要となる場合がある。その後、患者に予防計画を施すことができる。
【0106】
(投与経路)
疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍、過剰増殖性障害)の処置用の濃縮NK細胞集団の組成物は、静脈内、膀胱内、髄腔内、非経口、局所、皮下、経口、経鼻、動脈内、頭蓋内、腹腔内、筋肉内により投与可能である。予防的/アジュバントとして、もしくは疾患の処置として、濃縮NK細胞集団は過剰増殖性障害又は固形腫瘍(例えば、尿生殖器の悪性疾患)を標的とし、かつ/又は治療上の処置を目的としている。最も標準的な免疫原の投与経路は皮下であるが、他の経路も同様に効果的である。次に最も一般的な経路は筋肉注射である。この種の注射は腕又は脚の筋肉に施されるのが最も標準的である。一部の方法では、沈着物が蓄積した特定組織内に薬剤を直接注射する(例えば、頭蓋内注射)。静脈注射時の筋肉注射が、濃縮NK細胞集団の投与において好ましい。一部の方法では、特定の治療用の濃縮NK細胞を膀胱内に直接注射する。
【0107】
本発明の薬剤は、各種の過剰増殖性障害を含む様々な疾患の治療において少なくとも部分的に有効な他の薬剤との選択的な併用投与が可能である。腫瘍が脳へ転移した場合、本発明の薬剤は、本発明の薬剤の血液脳関門(BBB)の通過を促進させる他の薬剤と併用投与することも可能である。
【0108】
(処方)
疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍、過剰増殖性障害)の処置のための濃縮NK細胞集団の組成物
疾患(例えば、転移性癌、固形腫瘍、過剰増殖性障害)の処置のための濃縮NK細胞集団の組成物は、活性医薬品(即ち、他の医薬品として受容可能な様々な化合物)を含む医薬組成物として投与される場合が多い(例えば、Alfonso R Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, (旧Remington’s Pharmaceutical Sciences) 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 2003、その全体が本明細書において参考として援用される)。好ましい型は、目的の投与方法や治療への用途に左右される。組成物は、目的の処方に応じて、医薬品として受容可能な、毒性のないキャリア又は希釈剤を含むことも可能で、これらは動物やヒトへ投与するための医薬組成物の処方に一般的に使用される賦形剤として定義される。組み合わせの生物活性に影響を及ぼさないように、希釈剤を選択する。このような希釈剤の例は、10%不活化ヒトAB血清又は10%自己血清を含むX−vivo 20 media(Cambrex Bio Science社、メリーランド州ウォーカーズビル)である。このような希釈剤のさらなる例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、ハンクス液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他のキャリア、アジュバント、又は毒性のない非治療用の非免疫原性安定剤なども含むことができる。
【0109】
医薬組成物は、タンパク質、キトサンなどの多糖類、ポリラクチド、ポリグリコール酸及び共重合体(ラテックス官能化SepharoseTM、アガロース、セルロースなど)、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、脂質凝集体(油滴、リポソームなど)などの大きく代謝の遅い高分子を含むことも可能である。加えて、これらのキャリアは免疫促進物質(即ち、アジュバント)としても機能できる。
【0110】
非経口投与の場合、本発明の組成物を、水油、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの滅菌液にできる医薬キャリアを用いて、生理学的に受容可能な希釈剤中の物質溶液又は懸濁液という注射可能な投薬形態で投与できる。また、湿潤剤又は乳化剤などの補助剤、界面活性剤、pH緩衝剤などが組成物中に存在できる。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物、又は合成起源、例えば、ビーナッツオイル、大豆油、鉱物油の成分である。一般に、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射液剤には好ましい液体キャリアである。濃縮NK細胞集団は、有効成分を徐放できるように処方可能な蓄積注射又はインプラント製剤の形で投与可能である。典型的な組成物は、50 mM L−ヒスチジン、150 mM NaClの水性緩衝液で製剤され、HClでpH 6.0に調整された5 mg/mLの濃縮NK細胞集団を含む。
【0111】
通常、組成物は、液体溶液又は懸濁液として、注射物質として調製する。注射前の液体溶媒中への溶解又は懸濁に適した固形も調製できる。上記のとおりに、アジュバント効果を高めるために、製剤を乳化するか、もしくはリポソーム又はポリラクチド、ポリグリコリド、共重合体などのマイクロ粒子内に封入することもできる(Langer, Science, 249: 1527, 1990; Hanes, Advanced Drug Delivery Reviews, 28: 97−119, 1997、その全体が本明細書において参考として援用される)。本発明の薬剤は、有効成分を徐放又はパルス放出できるように処方可能な蓄積注射又はインプラント製剤の形で投与可能である。
【0112】
他の投与方法に適したさらなる処方には、経口、経鼻、肺への投与、座薬、経皮投与が含まれる。
【0113】
座薬では、結合剤及びキャリアとしては、例えばポリアルキレングリコール又はトリグリセライドが挙げられる。このような座薬は、有効成分を0.5〜10%、好ましくは1〜2%含む混合物から形成され得る。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル剤、カプセル、徐放製剤、粉末の形態であり、有効成分を10〜95%、好ましくは25〜70%含む。
【0114】
局所適用は、経皮又は皮内送達を可能にする。局所投与は、コレラ毒素又は無毒化誘導体、又はこれらのサブユニット、もしくは他の同様の細菌毒素と薬剤を同時投与することで促進可能である(Glennら、Nature, 391: 851, 1998)。成分を混合物として、もしくは化学架橋又は融合タンパク質として発現させることで得られる連結分子として使用することで、同時投与が可能となる。
【0115】
代替的な方法として、皮膚パッチまたはトランスフェロソーム(transferosome)を使用して、経皮送達が可能となる(Paulら、Eur. J. Immunol., 25: 3521−24, 1995; Cevcら、Biochem. Biophys. Acta., 1368: 201−15, 1998、その全体が本明細書において参考として援用される)。
【0116】
医薬組成物は通常、患者への投与に適した形態の濃縮NK細胞集団の組成物を含む。医薬組成物は通常、無菌的で、実質的に等張であり、米国食品医薬品局の医薬品製造管理および品質管理基準(GMP)の全規則を全面順守して処方設計される。
【0117】
(毒性)
好ましくは、本明細書に記載の治療に有効量の濃縮NK細胞集団の組成物が、深刻な毒性を生じることなく治療的有用性をもたらす。
【0118】
本明細書に記載のNK細胞集団の毒性は、細胞培養又は実験動物での標準的な医薬用手順によって測定される[例えば、LD50(集団の50%が致死となる用量)又はLD100(集団の100%が致死となる用量)]。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用において毒性のない用量範囲で処方計画を立てる際に使用可能である。本明細書に記載の濃縮NK細胞集団の用量は、毒性のほとんどない有効量を含む血中濃度の範囲内であることが好ましい。用量は、採用した剤形や使用した投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。厳密な処方、投与経路、用量は、患者の状態を考慮して各医師によって選択可能である(例えば、Finglら、The Pharmacological Basis Of Therapeutics, Ch. 1, 1975、その全体が本明細書において参考として援用される)。
【0119】
(キット)
本発明の組成物(例えば、濃縮NK細胞集団)を含むキット及び使用方法も本発明の範囲内である。キットは、本発明の少なくとも1種の追加試薬、もしくは1種以上の追加ヒト抗体(例えば、最初のヒト抗体とは異なる抗原中のエピトープに結合する、補体活性を有するヒト抗体)をさらに含むことができる。キットは通常、キットの内容物の目的の用途を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上、キットと同梱、もしくは他の方法でキットに添付された文書又は記録を含む。
【実施例】
【0120】
典型的な実施形態
(実施例1)
同種異系KIR不適合性NK細胞の単離及び増殖
EBV形質転換B細胞株の作成:100μg/mLサイクロスポリンA(CSA, Sandoz Pharmaceuticals Inc, ワシントンDC)存在下で、B95−8細胞株(ATCC、バージニア州マナサス)から回収されたEBV上精とともに末梢血単核球(PBMC)を培養することによって、EBウイルス形質転換リンパ芽球性細胞株(EBV−LCL)を樹立した。ヒト黒色腫(MEL)細胞株St−MEL及びR−MEL、そしてヒト腎細胞癌(RCC)細胞株Wh−RCCを、転移病巣の生検及び腎腫瘍の1次試料(国立癌研究所[NCI])から樹立した。ヒトRCC細胞株SJ−RCCを、NCIから入手した腎摘出術での検体から樹立して、当研究所にて維持した。EBV−LCL、MEL、RCC株は10%ウシ胎仔血清(FCS)含有RPMI1640で維持した。MHCクラスIタイピングは、配列特異的プライマーによるPCR(PCR−SSP)を用いて、国立衛生研究所HLA研究所にて実施された。簡単に説明すると、まずゲノムDNAを、Bunceら、Tissue Antigens, 46: 355−367, 1995(その全体が本明細書において参考として援用される)に記載のプライマー及びPCR条件を利用して、末梢血リンパ球又は腫瘍サンプルから抽出した。最終PCR産物を、エチジウムブロマイド染色よって2%アガロースゲル上で可視化して、大まかなバンドサイズの有無によって結果を判定した。この試験の目的のために、単一HLA−C反応性KIR(KIR2DL2/3又はKIR2DL1;表1)への結合が予測されるHLA−C対立遺伝子がホモ接合性となるように、腫瘍株を特異的に選択した。
【0121】
【表1】

HLA−Cグループの患者をHLA−C対立遺伝子及び対応するKIRリガンドによってグループ分けした。
SKEMは、RCC患者SJにおいてHLAが同一の同胞ドナーである。
+Wh−RCCはHLA−Cw遺伝子座を喪失していた。
【0122】
NK細胞培養液:バルクNK細胞及び限界希釈クローニングにより単離されたNK細胞を、10%ヒトAB結成、50 U/mLペニシリン、50 μg/mLストレプトマイシン、500 IU/mLインターロイキン−2(IL−2)を含むCellgro SCGM無血清培地(CellGenix、メリーランド州ガイザースバーグ)で増殖させた(特に指定のない場合)。バルクNK細胞及び限界希釈クローニングにより単離されたNK細胞も、10%不活化ヒトAB血清又は10%自己血清を含むX−vivo 20培地(Cambrex Bio Science社、メリーランド州ウォーカーズビル)で増殖させた。
【0123】
フローサイトメトリー:以下の抗ヒトモノクローナル抗体(mAb)を使用して、フローサイトメトリーによって細胞表面の表現型を決定した:抗CD16−phycoerythrin(PE)(クローンB73.1マウス免疫グロブリンG1[IgG1];Becton Dickinson、カリフォルニア州サンホゼ)、抗CD158a−PE(クローンEB6、マウスIgG1;Immunotech、フランス マルセイユ)、抗CD158b−PE(クローンGTL83、マウスIgG1;Immunotech)、抗CD56−Cy−chrome(クローンMY31、マウスIgG1;Becton Dickinson)、抗CD3−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(クローンSK7、マウスIgG1;Becton Dickinson)、抗LFA−1/CD11a−PE(クローンHI111、マウスIgG1;PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)、及び抗ヒトHLA−A,−B,−C,−PE(クローンG46−2.6、マウスIgG1;PharMingen)。細胞は対応するアアイソタイプの一致する対照mAb(PharMingen)でも染色した。全てのサンプルを、EPICS XL−MCL(Beckman Coulter、フロリダ州マイアミ)を使用して分析した。EXPO 32ADCソフトウェア(Beckman Coulter)を、データ収集及び分析のために使用した。
【0124】
腫瘍細胞株上のNKG2リガンドの評価:NKG2L、MICA(M363)、MICB(M364)、MICB(M364)、ULBP1(M295)、ULBP2(M311)、ULBP3(M551)に対する非結合体化抗体(Amgen、ワシントン州シアトル)。AlexaFluor488結合ヒツジ抗マウス免疫グロブリン(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)で二次抗体染色を実施した。I−309反応性IgG1アイソタイプ対照抗体(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)であるMAB272を使用して、特異的染色を明らかにした。FACScan機器(Becton Dickinson)を使用して、染色を評価した。
【0125】
自己又は同種異系NK細胞の単離及び増殖:5〜25リットルのアフェレーシス療法後の癌患者又は健常人ドナーから、最初に、単核球を回収した。次に、以下の2つの異なる免疫磁気ビーズ法の1つを利用して、ネガティブ除去によって単核球画分のNK細胞を濃縮した。1)メーカーの推奨条件に従ったDynal beads(Dynal NK細胞単離キット、Dynal Biotech、ニューヨーク州レイクサクセス)、2)cGMPガイドラインに従ったMiltenyi Biotec CliniMACS(登録商標)CD56 MicroBeads NK細胞単離機器の使用。これは、CliniMACS T細胞CD3 MicroBeadsを使用したT細胞除去段階と、その後のCD56NK細胞のポジティブ選択からなる2段階手順を包含する。
【0126】
次に、単離したNK細胞をin vitroで2〜4週間にわたり、10%不活化ヒトAB血清又は10%自己血清および500 IU/mLのIL−2(4−7日ごとにIL−2を添加)を含むX−vivo 20培地(Cambrex Bio Science、メリーランド州ウォーカーズビル)中で増殖させた。1日目及び15日目に、2つの異なる照射されたフィーダー集団のうちの1つを、バルクNK細胞に添加した:1)各NK細胞に対して10〜100個のEBVLCL細胞(通常、20個のEBVLCL細胞)の比率の、照射(75〜100 Gy)された同種異系EBV−LCL、もしくは2)各NK細胞に対して50−100個のPBMC(通常、100個のPBMC)の比率の、照射(25〜100 Gy、通常50 Gy)された自己又は同種異系PBMC。PBMCフィーダーを使用して、NK細胞を4週間にわたって2−3logまで増殖させ、一方、EBVLCLフィーダーは通常、同じ時間間隔で4−5logまで増殖する。
【0127】
同種異系KIR不適合性NK細胞の単離及び増殖:メーカーの推奨条件に従い、免疫磁気ビーズ(Dynal NK細胞単離キット、Dynal Biotech、ニューヨーク州レイクサクセス)を使用したネガティブ除去によって、グループ1(C−G1;KIR2DL2/3に結合)又はグループ2(C−G2;KIR2DL1に結合)のいずれかのHLA−C対立遺伝子がホモ接合性である健常人ドナーから得たPBMCからNK細胞集団を濃縮した。PBMCを緩やかに転倒混和しながら、4℃で10分間にわたり、抗CD3、抗CD14、抗CD36、抗CDw123、抗HLAクラスII DR/DPを含む抗体の混合物と培養した。細胞を、PBS/0.1%ヒトAB血清で洗浄し、500gで8分間遠心分離した。上精を捨てて、細胞の沈殿をPBS/0.1%ヒトAB血清に再懸濁させ、除去Dynabeadsの添加後、4℃で10分間インキュベートした。この細胞懸濁液を、磁性粒子濃縮器(Dynal MPC)内に2分間置いた後、上精の除去そして除去ビーズ段階を繰り返した。NK細胞の純度をフローサイトメトリーで測定した(通常、98%以上の範囲内)。濃縮NK細胞の一部分を使用して、500 IU/mLのIL−2及びフィーダー細胞として1ウェル当たり10個の照射(100 Gy)された同種異系EBV−LCLを含む96ウェルU底プレート内に、1〜10細胞/ウェルの密度での限界希釈により、NK細胞株を作成した。培養液の半分を新鮮なIL−2を含む新しいNK細胞培地と週1回交換した。濃縮NK細胞の残り部分を、500 IU/mLのIL−2及び照射(100 Gy)された同種異系EBV−LCLフィーダー細胞(EBV−LCL対NK細胞の比率 1,000:1;EBV−LCL対NK細胞の比率 20:1も使用した)を含むNK細胞培地中で、バルクNK細胞集団として増殖させた。約1:1から1000:1の範囲のEBV−LCL対NK細胞比率が、NK細胞を増殖させる際に有効であり得る。増殖から2週間後、バルクNK細胞を抗CD158b−FITC及び抗CD56 Cy−chromeで染色し、次いでMoFloフローサイトメーター(Dako−Cytomation Inc.,コロラド州フォートコリンズ)を使用して分類し、CD56/CD158b又はCD56/CD158a集団を単離し、上記のとおりにEBV−LCLフィーダー及びNK細胞培地を使用して2週間にわたり再増殖させた。ほとんどの実験において、NK細胞と反対のグループ内のHLA−C対立遺伝子がホモ接合である同種異系EBV−LCLをフィーダー細胞として使用した。
【0128】
AKI−NK細胞の単離及び増殖:メーカーの推奨条件に従い、免疫磁気ビーズ(Dynal NK細胞単離キット、Dynal Biotech、ニューヨーク州レイクサクセス)を使用したネガティブ除去によって、グループ1(C−G1;KIR2DL2/3に結合)又はグループ2(C−G2;KIR2DL1に結合)のいずれかのHLA−C対立遺伝子がホモ接合性である癌患者又は健常人ドナーから得た末梢血単核球から、NK細胞集団を濃縮した。簡単に説明すると、PBMCを緩やかに転倒混和させながら、4℃で10分間にわたり抗CD3、抗CD14、抗CD36、抗CDw123、抗HLAクラスII DR/DPを含む抗体の混合物と培養した。細胞をPBS/0.1%ヒトAB血清で洗い、500gで8分間遠心分離した。上精を捨てて、細胞の沈殿をPBS/0.1%ヒトAB血清に再懸濁し、除去Dynabeadsの添加後、4℃で10分間培養した。細胞懸濁液を磁性粒子濃縮機(Dynal MPC)内に2分間置いた後、除去ビーズ段階を繰り返した。次いで、NK細胞を、抗CD158b−FITC、抗CD158a−PE、抗CD3−PerCP、抗NKB1−APCで染色した。MoFloフローセルソーターを使用して、NK細胞を5つの異なるNK部分集団に分類した:CD3陰性NK細胞(バルクNK)、CD158b−/CD158a−/NKB1−/CD3− NK細胞、CD158b+/CD158a−/NKB1−/CD3− NK細胞、CD158a+/CD158b−/NKB1−/CD3− NK細胞、NKB1+/CD158b−/CD158a−/CD3− NK細胞。別の方法として、NK細胞を抗体結合磁気ビーズ(例えば、抗CD56、抗CD158a、抗CD158b)によって分類可能であり、ビーズに結合したNK細胞を磁気カラムで濃縮した。抗CD56、抗CD158a、抗CD158b磁気ビーズに結合する二次抗体と一緒に磁気ビーズも使用可能である。次に分類された細胞を刺激因子として照射したEBV−LCL(EBV−LCL対NK細胞比率:1,000:1)を使用して直接増殖させるか、または1ウェル当たり500 IU/mLのIL−2及びフィーダー細胞として10個の照射(100Gy)した同種異系EBV−LCLを含む200μLのNK細胞培養液の入った96ウェル丸底細胞培養プレート内で、限界希釈によってクローニングした。
【0129】
NKバルク集団、フローソーティングされたNK部分集団、及びNKクローンを、上記のとおりにEBV−LCLフィーダー及びNK細胞培地を使用して、4〜6週間にわたって増殖させた。次に、NK集団を再び表現型分類して、全集団中の2%以上を占める任意のT細胞集団を、Dynal CD3ワンステップ磁気ビーズ除去によって除去した。フローソーティング又はツーステップDynal磁気ビーズ除去法のいずれかによって、他のKIR発現NK細胞の有意な存在を除去した。
【0130】
NK細胞増殖の最適化:バルクNK細胞の増殖において、C−G1又はC−G2がヘテロ接合性又はホモ接合性であるEBV−LCLをフィーダーとして使用し、増殖したCD158a又はCD158bNK細胞の割合をフローサイトメトリーによって測定した。約1:1から1,000:1の範囲のEBV−LCL対NK細胞比率を、NK細胞の増殖に使用可能である。バルクNK細胞をトリパンブルー染色することによって増殖倍率を測定し、増殖後の生存細胞総数を増殖前の生存細胞数で除算した。
【0131】
細胞傷害性アッセイ:NK細胞の増殖後、自己及び同種異系KIR適合/KIR不適合EBV−LCL及び固形腫瘍株に対する、NK細胞の細胞傷害性を試験した。標準的なクロム遊離試験(Takahashiら、Blood, 103: 1383−1390, 2004、その全体が本明細書において参考として援用される)を利用して、NK細胞の細胞傷害性を評価した。簡単に説明すると、10個の標的細胞を、100μCiのNa51CrO(Amersham Biosciences、ニュージャージー州)と一緒に1時間培養して、洗浄し、0.7〜1×10細胞/100μLの濃度で再懸濁した。各100μLのエフェクター(エフェクター:標的比率10〜20:1)及び標的(2又は3のレプリケート)を、96ウェル丸底プレート(Nalge Nunc International、ニューヨーク州)で全容積200μL/ウェルで共培養した。37℃で5時間培養後、100μLの上清を回収して、ガンマカウンターでその放射能含有量を測定した。
【0132】
次式を用いて特異的溶解の割合を算出した:100×[試験サンプルからの放出量(cpm)−自然放出量(cpm)]/[最高放出量(cpm)−自然放出量(cmp)]。示された全ての値が、二連で+/−標準偏差の平均を表している。一部の標的を20μg/mLのモノクローナル抗体W6/32(抗全クラス1 MHCモノクローナル抗体;DAKO)と前培養させて、MHCクラスI遮断のNK細胞の細胞傷害性に及ぼす影響を評価した。
【0133】
(実施例2)
EBVLCLフィーダー細胞株上でのNK細胞の増殖
EBVLCLフィーダーを含むNK細胞は、10倍以上に増殖可能であり、これはIL−2含有SCGM培地中で培養されたNK細胞集団よりも有意に高く、IL−2含有SCGM培地では約10倍の正味の増殖が通常認められる。表2を参照のこと。高率のKIR 2DL2/3陽性NK細胞を増殖させる方法を開発した。KIR 2DL2/3に結合することが判明しているHLA−C対立遺伝子の発現を欠いた、もしくはそれがヘテロ接合性であるEBVLCLフィーダーを使用して、有意に高い割合のKIR 2DL2/3陽性NK細胞を増殖可能である。
【0134】
EBV−LCLをPBMCと培養した場合,NK細胞の好ましい増殖が起こる(Perussiaら、Nat. Immun. Cell Growth Regul., 6: 171−188, 1987; Mainieroら、J. Immunol., 152: 446−454, 1994,その全体が本明細書において参考として援用される)。したがって、EBV−LCLフィーダー細胞を使用して、バルクNK細胞集団の増殖を高めることが可能であるか否かを調べた。PBMCからネガティブ除去によって濃縮(通常、CD3及びCD56が90%以上)されたNK細胞(1×10)を500 IUのIL−2を含む幹細胞増殖倍地(SCGM)のみ、もしくは1×10個の照射したEBV−LCLを加えて培養した。14日後、EBV−LCLフィーダーを含むNK細胞が、IL−2を含むSCGM培地のみで増殖させたNK細胞集団と比較して10倍以上に増殖し、IL−2を含むSCGM培地のみの場合には、通常、約10倍の正味の増殖が認められた。NK細胞のHLA−Cグループが不適合な場合と比較して、HLA−C対立遺伝子が適合したEBV−LCLを使用した場合、NK細胞の増殖において有意差は認められなかった。しかし、KIR2DL2/3に結合することが判明しているHLA−Cの対立遺伝子の発現を欠いているか、もしくはヘテロ接合性であるEBV−LCLフィーダーを使用した場合、HLA−Cグループ1がホモ接合性であるドナーから有意に高い割合でKIR 2DL2/3陽性NK細胞が増殖された(表2)。IL−2濃度の5−500 IU/mLの変動は、EBV−LCLをフィーダーに使用した場合、NK細胞の増殖に影響を及ぼさなかった。
【0135】
【表2】

HLA−Cグループ1(C−G1)がホモ接合である健常人ドナー(KR0350)のPBMCから陰性セレクションによってNK細胞を濃縮し、照射済みEBVLCLフィーダーを使用してin vitroで増殖させた:1)HLA−Cグループ2(C−G2)EBVLCL、2)自己EBVLCL、3)HLA−Cグループはヘテロ接合性のEBVLCLである。2週間後、増殖させたNK細胞をカウントして、表現型分析を実施した。C−G2がホモ接合性であるフィーダー細胞と自己フィーダー細胞間でのCD3−CD56+CD158b+陽性集団における差は有意であった(*p=0.0085)。値は3回の独立した実験での平均値±SDを表している。
**値は2回の独立した実験での平均値を表している。
【0136】
(実施例3)
同種異系NK細胞は、KIRリガンド適合の腫瘍標的よりもKIRリガンド不適合な腫瘍標的に対して細胞傷害性がより高い
KIRリガンド適合の腫瘍標的よりもKIRリガンド不適合な腫瘍標的に対して同種異系NK細胞の細胞傷害性はより高かった。腫瘍がNK細胞エフェクター上で発現される特異的KIRに対するHLA−C対立遺伝子を欠く場合にバルク同種異系NK集団による殺傷に対する黒色腫及びRCCの感受性が高まるか否かを判断するためにin vitroでの評価をまず実施した。HLA−Cグループ1(C−G1)がホモ接合性のドナーから陰性セレクションによってPBMCから濃縮されたNK細胞を、照射済みEBV−LCLをフィーダー細胞に使用してin vitroで増殖させた。2週間後、CD158b(KIR 2DL2/3)を発現しているNK細胞をフローソーティングによって単離し、さらに2週間増殖させて、残存する結合抗体を除去した(図1A)。KIRリガンド適合(例えば、C−G1ホモ接合)又はKIRリガンド不適合(例えば、C−G2ホモ接合)である腫瘍標的のCD158b濃縮(約80%陽性)バルクNK細胞の細胞傷害作用に対する感受性における差をin vitroで試験した。
【0137】
KIR適合C−G1ホモ接合性の腫瘍の対応するものよりも有意に高い割合で、KIR不適合、C−G2ホモ接合性の黒色腫及びRCC株がCD158b濃縮NK細胞によって溶解された(図1B)。KIRリガンド不適合EBV−LCL標的と比較し、KIRリガンド適合(自己)に対して細胞傷害性の同様のパターンが認められた。同様に、C−G2ホモ接合性のKIR適合標的と比較して、CD158a濃縮NK細胞はより高い割合のKIR不適合、C−G1ホモ接合性のEBV−LCL及び黒色腫細胞を溶解した(図1B、D)。
【0138】
図1は、CD158b(KIR 2DL2/3)及びCD 158a(KIR 2DL1)陽性NK集団の単離を示している。図1Aでは、HLA−Cグループ1(C−G1)がホモ接合性である健常人ドナー(KR0350)のPBMCから陰性セレクションによってNK細胞を濃縮し、照射済みEBVLCLフィーダーを使用してin vitroで増殖させた。2週間後、CD3−/CD56+/CD158b+ NK細胞をフローソーティングによって単離して、さらに2週間増殖させて、残存する表面の結合抗体を除去した。図1Bでは、エフェクターと標的の比率20:1では、CD 158bで濃縮したNK細胞(80%陽性)は、HLA−Cグループ1ホモ接合性のKIR適合腫瘍標的と比較して、有意に高い割合のHLA−Cグループ2(KIR不適合)ホモ接合性のKIR不適合EBVLCL、黒色腫、およびRCC細胞を溶解した。図1Cでは、HLA−Cグループ2(C−G2)がホモ接合である健常人ドナーMORRCからフローソーティングによってCD158a+NK細胞集団を単離した。図1Dでは、これらの細胞は、HLA−Cグループ2ホモ接合性KIR適合標的と比較して、有意に高い割合のHLA−Cグループ1がホモ接合(KIR不適合)のEBVLCL及び黒色腫細胞を溶解した。
【0139】
KIR不適合EBV−LCL集団を特異的に殺傷するNK細胞株を、健常人ドナー又は癌患者から単離して、KIRリガンド不適合黒色腫又はRCC標的と比較して、KIRリガンド適合に対するそれらの細胞傷害作用を評価した。C−G1又はC−G2がホモ接合性である健常人又は癌患者からのPBMCのNK細胞集団をネガティブ除去によって濃縮し、同種異系KIRリガンド不適合EBV−LCLをフィーダー細胞に使用して限界希釈によってクローニングした。蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を使用して、NK株の表現型を決定して、KIR適合(自己)又はKIR不適合EBV−LCL標的に対する細胞傷害性を試験した。
【0140】
C−G1がホモ接合である健常人ドナー(KR0350)から34種のCD3−/CD56−NK細胞株を増殖させた。9種がC−G2がホモ接合性のEBV−LCL細胞を溶解させた(エフェクター:標的[E/T]比率20:1で35−100%の溶解)。KIR適合(自己)EBV−LCLの溶解は最低限であったか、又はほとんど認められなかった(データ省略)。8−5株は追加実験用に十分に増殖した(図2A)。
【0141】
この株には自己EBV−LCLに対する細胞傷害性はなく、C−G2がホモ接合であるEBV−LCLをほぼ100%溶解し、これはKIR不適合による殺傷と矛盾しなかった。E/T比率20:1では、KIRリガンド適合(C−G1ホモ接合)腫瘍標的よりも有意に高い割合で、KIRリガンド不適合の黒色腫及びRCC細胞(C−G2ホモ接合)が殺傷された(図2B)。同様に、C−G1がホモ接合性である広範囲に転移した黒色腫を有する患者(St)のPBMCからの限界希釈後に濃縮NK細胞を増殖させた。この患者からのNK株S−8は、KIRリガンド適合自己標的(EBV−LCLの5%、黒色腫細胞の19%)よりも有意に高い割合で、KIRリガンド不適合EBV−LCL(95%)及び黒色腫細胞(72%)を殺傷した(図2C)。
【0142】
C−G2がホモ接合であるKIRリガンド適合同種異系EBV−LCL及び黒色腫細胞と比較して、C−G1がホモ接合であるKIRリガンド不適合同種異系EBV−LCL及び黒色腫細胞に対する細胞傷害性の増大したC−G2がホモ接合である健常人ドナーからもNK株を増殖可能であった(図2D)。
【0143】
図2はRCC及び黒色腫細胞がKIR適合株よりもKIR不適合NKクローンの細胞傷害作用に対して感受性の高いことを示している。癌患者St(HLA−Cグループ2がホモ接合)又はHLA−Cグループ1がホモ接合である健常人ドナーからNK細胞を濃縮して、限界希釈法によってクローニングした。(A)C−G1ホモ接合性の健常人ドナー(KR0350)から増殖させたNK細胞株8−5は、KIR適合自己EBV−LCL又はKIR適合同種異系C−G1ホモ接合性黒色腫及びRCC細胞よりも、C−G2ホモ接合性のKIR不適合EBV−LCL、黒色腫、RCC細胞を有意に高い割合で殺傷した(B)。(C)広範囲に転移した黒色腫を有するC−G1ホモ接合性の患者(St)から増殖させたNK株S−8は、自己KIR適合EBV−LCL及び黒色腫細胞よりも有意に高い割合で、KIR不適合C−G2ホモ接合性EBVLCL及び黒色腫細胞を殺傷し、この場合、最小限の細胞傷害性しか認められなかった。3サンプルの平均値+/−SDを示している。(D)C−G2ホモ接合性の健常人ドナー(MORRC)から増殖したMORRC NK細胞株10は、KIR不適合C−G1ホモ接合性の標的に対する細胞傷害性は認められたが、KIR適合C−G2ホモ接合性の標的には細胞傷害性は認められなかった。
【0144】
MHCクラスI遮断によって、in vitroでKIRリガンド適合腫瘍に対するNK細胞の細胞傷害性の増大が認められている。したがって、MHCクラスIがモノクローナル抗体W6/32で遮断されたKIRリガンド適合NK細胞標的腫瘍と比較して、RCC及び黒色腫細胞に対する同種異系KIRリガンド不適合NK細胞の細胞傷害能を調べた。
【0145】
健常人、SKEM(C−G1ホモ接合性;HLAの同一なRCC患者SJと同胞)のPBMCから濃縮したNK細胞を限界希釈後に増殖させ、KIR適合(C−G1ホモ接合)対KIR不適合(C−G2ホモ接合)標的に対する細胞傷害性をスクリーニングした。C−G2不適合対C−G1適合EBV−LCLに対する細胞傷害性の有意に高い3種のNK株(SKEM NK株2、6および7;図3A)を同定した。
【0146】
E/T比率10:1では、NK株がVolle EBV−LCL(C−G1適合)の4−25%を溶解した。Volle EBV−LCLをモノクローナル抗体W6/32(全クラス1 MHC抗体)と前培養した場合、全3株での細胞傷害性が有意(80%より高く)に増大し、NK細胞のKIRリガンドとして機能する標的細胞上のMHCクラスI分子と一致している(図3B)。SKEM NK株は、実質的に細胞傷害性の認められないKIRリガンド適合C−G1ホモ接合性SJ RCC細胞に対するよりも、KIRリガンド不適合C−G2ホモ接合性R黒色腫細胞に対する細胞傷害性が有意に高かった。SJ RCC細胞を全MHCクラスIモノクローナル抗体W6/32で前処理することで、このKIR適合腫瘍標的に対して全3種のNK細胞株の細胞傷害作用が大幅に増大した。
【0147】
図3は、限界希釈クローニングによって単離された同種異系KIR不適合NK細胞株のKIR不適合腫瘍標的に対する細胞傷害性の増大を示している。図3Aでは、健常人ドナーSKEM(C−G1ホモ接合:HLAの同一なRCC患者SJの同胞)のPBMCから限界希釈によってNK細胞株2、6、および7を単離した。図3Bでは、全3種の株は、少数のC−G1ホモ接合性KIR適合VOLLE EBVLCLを溶解した。VOLLE EBVLCLをW6/32で前培養することで、全3株の細胞傷害作用が有意に増大し、NK細胞の機能を阻害するMHCクラスI分子と一致していた。図3Cでは、実質的に細胞傷害性の認められなかったKIR適合(C−G1ホモ接合)SJ細胞と比較して、NK株2、6、および7はKIRリガンド不適合R−MEL細胞(C−G2ホモ接合)に対する細胞傷害性が有意に高かった。SJ RCC細胞をW6/32で前培養することで、KIR適合RCC標的に対する全3株の細胞傷害作用が有意に増大した。
【0148】
(実施例4)
γ線照射済みNK細胞は照射後少なくとも48時間に亘って、腫瘍細胞に対する細胞傷害性を維持する
in vitroでのデータは、養子移入されたKIR不適合同種異系NK細胞はin vivoでも有益な抗腫瘍作用を持ちうることを示唆している。したがって、γ線照射がNK細胞媒介性の腫瘍細胞傷害性に及ぼす影響をさらに調べた。健常人ドナーのPBMCから増殖させたバルクNK細胞にγ線照射(50 Gy)して、照射後0、24、48、60、96時間後のNK細胞感受性K562細胞に対する細胞傷害性を試験した(図4A)。大部分のNK細胞がFACSによって速やかにアネキシンV又はヨウ化プロピジウム(PI)陽性(図4B)となったが(照射誘発性のアポトーシス及び細胞死と一致)、K562細胞に対する有意な細胞傷害性が照射後48時間まで依然として測定可能であった。健常人ドナーKR0350からのNK細胞株8−5は、照射から24時間後にKIR不適合EBV−LCL細胞に対する殺傷能力を保持しており、非照射対照と比較して細胞傷害能のわずかな低下しか認められなかった(図4C)。
【0149】
γ線照射済みNK細胞は照射後48時間まで腫瘍標的に対する有意な細胞傷害性を保持している。さらに、それらは、照射後少なくとも24時間にわたってKIR不適合腫瘍標的の殺傷能力を保持している。図4は、γ線照射済みNK細胞が照射後少なくとも48時間にわたって腫瘍細胞に対する細胞傷害性を保持することを示している。健常人ドナーKR0350のPBMCから増殖させたバルクNK細胞にγ線照射(50 Gy)して、K562細胞に対する細胞傷害性を試験した。図4Aは、NK細胞へのγ線照射から0、24、48、60、96時間後の同種異系NK細胞によるK562腫瘍細胞の溶解率を示している。図4Bは、照射がNKのアポトーシス(アネキシンV陽性)及びネクローシス(ヨウ化プロピジウム陽性)を引き起こしたが、NK細胞の持続的な細胞傷害性がγ線照射後48時間まで認められたことを示している。図4Cは、ドナーKR0350からのC−G1ホモ接合性NK細胞株(8−5)が50 Gyのγ線照射から24時間後にKIR不適合R−EBVLCL細胞に対して高レベルの細胞傷害性を保持していることを示している。
【0150】
(実施例5)
自己腫瘍細胞に対する細胞傷害性の増大したサブドミナントNK細胞画分の同定及び増殖
自己HLA分子と結合できないKIR分子を発現しているサブドミナントNK細胞集団(AKI−NK細胞)をin vitroで単離および増殖させることができ、これらは未選択の“バルク”NK細胞と比較して、自己腫瘍標的に対する細胞傷害性が有意に増大する。図5を参照のこと。
【0151】
図5は、自己腫瘍細胞に対する細胞傷害性の増大したサブドミナントなNK細胞画分の同定及び増殖を示している。図5Aは、グループ1 KIRリガンド(Cw 01, 03)がホモ接合である患者から採取されたPBMCのNK細胞を、免疫磁気ビーズ(Dynal NK細胞単離キット)を使用したネガティブ除去によって濃縮した。照射済みEBVLCLフィーダー細胞を使用してNK細胞を2週間以上にわたり増殖させた。CD158a+/CD158b− NK細胞である自己KIR不適合性NK細胞(AKI−NK)のサブドミナント画分(1.7%)を同定した。図5Bでは、NK細胞をバルクで増殖(バルクNK細胞)させたか、あるいは、3つの異なる部分集団、1)CD158b+/CD158a−KIR適合NK細胞、2)CD158b−/CD158a−(“ナルNK細胞”)、3)CD158b−/CD158a+(AKI−NK)NK細胞)にFACSを使用して分類した。分類されたNK細胞集団をEBV−LCLフィーダー細胞を使用してin vitroで2週間にわたって増殖させた。図5Cは、全てで4つの異なるNK細胞画分がK562細胞によって殺傷されたことを示している。図5Dは、バルクNK細胞、CD158b+/CD158a−KIR適合NK細胞及びナルNK細胞と比較して、自己腫瘍細胞(腎細胞癌RCC)に対するAKI−NK細胞の細胞傷害性が増大していることを示している。
【0152】
(実施例6)
抑制性KIRの発現及び機能をノックアウトするためのRNA干渉(RNAi)転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)
これらの結果に基づき、RNA干渉(RNAi)転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を使用して、抑制性KIRの発現と機能をノックアウトし、これによって腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を増大させる。NK細胞の抑制性KIR細胞質ロングドメインを特異的にノックダウンするRNAiをコードするレンチウイルスベクターを開発中である。RNAiは抑制性のKIR 2DL2/3及び2DL1の細胞質ロングテールに特異的である。
【0153】
図6は、抑制性のKIR細胞質ロングドメインをノックダウンするように機能するRNAiのレンチウイルスによる移入によるNK細胞抗腫瘍効果の増大を実証するために、提案された実験を示している。ネガティブ除去又はポジティブセレクションによってバルクNK集団を濃縮する。抑制性のKIR 2DL2/3及び2DL1の細胞質ロングテールに特異的なRNAiをコードするレンチウイルスベクターをバルクNK細胞に移入する。このような移入されたNK細胞は、野生型NK細胞集団と比較して、腫瘍細胞に対する細胞傷害性が増大することが予測される。
【0154】
提案された実験では、自己NK細胞にこのレンチウイルスベクターを移入させる。RNAiの移入によって、SHP−1(チロシンホスファターゼ)のITIMへの結合能が破壊されて、抑制性KIRを介したNK細胞の不活性化を防止する。重要なことは、相補的な活性化KIR(即ち、2DS2/3及び2DS1)の細胞質ショートテールがインタクトなままで、下流のNK細胞の活性化カスケードを引き起こすことが可能となる。移入されて、抑制性KIRの機能を不活化するNK細胞では、自己及び同種異系腫瘍標的に対する細胞傷害性の増大が予測される。このような集団では、養子移入された場合、転移性の固形腫瘍及び血液の悪性疾患の退行を誘導することがさらに予測される。
【0155】
(実施例7)
上皮起源の腫瘍細胞に対して同様のNK細胞媒介性の効果がin vitroで生じることが実証されている。より具体的には、黒色腫及びRCC細胞では、HLA不適合に起因して、腫瘍の抑制性のHLA−C対立遺伝子が結合できないKIRを発現する同種異系NK細胞の細胞傷害作用に対する感受性がより高い。同じHLA−C対立遺伝子グループを欠く標的に対して同種反応性を有するNK細胞の頻度が高い、グループ1又はグループ2のHLA−C対立遺伝子がホモ接合であるドナー又は患者からNK細胞株を生成した。さらに、KIR不適合がNK細胞の細胞傷害性に及ぼす影響を評価し得るために、グループ1又はグループ2のHLA−C対立遺伝子がホモ接合であるEBV−LCL、黒色腫、RCC腫瘍標的を使用した。
【0156】
頻度が異なるものの、HLA−Cグループ不適合EBV−LCLを選択的に殺傷するNK細胞は、試験した全ドナーから単離可能であった。ほとんどの場合、KIR不適合EBV−LCLに対する細胞傷害性の増大したNK細胞も、KIRリガンド適合腫瘍細胞と比較して、有意に高い割合で、適合する抑制性HLA−C KIRリガンドを欠く黒色腫及びRCCを殺傷した。細胞傷害性のレベル差は顕著な場合が多く、ほとんど溶解の起こらないKIR適合標的と比較して、KIRリガンド不適合腫瘍標的の溶解は大幅に高かった(60%より高い)。このNK細胞の現象は、健常人ドナーに限られていた。C−G1又はC−G2がホモ接合性の癌患者からのNK細胞株を同定し、これは、自己腫瘍は殺傷できないが、同種異系KIRリガンド不適合腫瘍株に対する有意に高い細胞傷害性を持つ。KIR不適合性はHLA−C遺伝子座に限定されていた。KIRが不適合であるこのようなNK細胞集団のHLA−B、HLA−A遺伝子座は評価されておらず、AML及びEBV−LCL細胞に対して生じるものと同様の細胞傷害性の増大が推測できる。
【0157】
表4は、濃縮自己NK細胞集団のHLA−C及びHLA−B遺伝子座を示している。HLA−Cグループ1のCw対立遺伝子は、α1ヘリックス内のSer77とAsn80が共通しており、KIR2DL2/3を結合する(CD158b)。HLA−Cグループ2のCw対立遺伝子は、α1ヘリックス内のAsn77とLys80が共通しており、KIR2DL1を結合する(CD158a)。“Bw4”グループに該当するHLA−B遺伝子座は、NKB1KIRと結合する。“Bw6”グループに該当するHLA−B遺伝子座はNKB1KIRには結合しない。
【0158】
【表4】

活性化シグナルと抑制シグナルとのバランスによって標的細胞がNK細胞媒介性の溶解に感受性となるか否かが最終的に決まる。骨髄性白血病(AML及びCML)細胞上のLFA−1の存在そしてNK細胞耐性ALL細胞上でのその不在は、この接着分子がNK細胞活性化受容体のリガンドとして機能しうることを示唆した。同種反応性NK細胞の殺傷開始に必要となる、これらの実験で使用した腫瘍細胞上の活性化リガンドを研究中である。フローサイトメトリー分析によって、本研究で使用した全てのRCC及び黒色腫株のLFA−1陰性が示された。しかし、本試験で使用された腫瘍株は、NK細胞活性化受容体NKG2Dの既知のリガンドである、MHCクラスI鎖関連抗原(MICA又はMICB)(Bauerら、Science, 285: 727−729, 1999;Wuら、Science, 285: 730−732, 1999)又はUL16結合タンパク質(Cosmanら、Immunity, 7: 273−283, 1997;Cosmanら、Immunity, 14: 123−133, 2001;Sutherlandら、Immunol. Rev., 181: 185−192, 2001;Sutherlandら、J. Immunol., 168: 671−679, 2002)(ULBP;表5参照)の種々の密度を有した。Ruggeriら、Blood,94:333−339,1999。各引用の全体が本明細書において参考として援用される。
【0159】
【表5】

NKG2Dリガンドの発現;フローサイトメトリーを使用して、ストレス誘導性の表面糖タンパク質MIC A/B、UL16結合タンパク質(ULBP)、ULBP1、ULBP2、ULBP3を測定した。
【0160】
研究によって、これらのリガンドを含む白血病、リンパ腫(Salihら、Blood, 102: 1389−1396, 2003)及び黒色腫株(Pendeら、Eur. J. Immunol., 31: 1076−1086, 2001;Pendeら、Cancer Res., 62: 6178−6186, 2002)は、NKG2D発現NK細胞によって特異的に溶解可能であることが示されている。異なる活性化リガンドの発現レベルを代理マーカーとして利用して、KIR不適合性NK細胞に感受性であるこれらの悪性疾患を同定しうるか否かは不明なままである(Natarajanら、Annu. Rev. Immunol., 20: 853−885, 2002)。各引用の全体が本明細書において参考として援用される。
【0161】
IL−2投与又はLAK細胞の養子移入によって固形腫瘍に対する宿主のNK細胞媒介性の免疫を増強する試みはほとんど成功していない(Atkinsら、Med. Oncol; 18: 197−207, 2001;Rosenbergら、J. Natl. Cancer Inst., 85: 622−632, 1993、各々の全体が本明細書において参考として援用される)。腫瘍のHLAクラス1又はクラス1様リガンドによるNK細胞の機能のKIR媒介性阻害は、自己NK細胞治療を制限する主要因子となりうる。マウス及びヒトでの研究によって、同種反応性NK細胞がGVH反応を誘発しないことが示されている(Ruggeriら、Science, 295: 2097−2100, 2002、この全体が本明細書において参考として援用される)。これらの知見は、KIR適合又は自己NK集団と比較してKIR不適合性NK細胞の腫瘍細胞傷害性の増大を示した本発明者らのデータと合わせて、ヒトにおけるそれらの抗腫瘍能を研究するための理論的根拠として利用可能である。照射済みEBV−LCLをフィーダーとして使用して、PBMCをフィーダーとして使用した場合に達成可能と先に報告された最大限の増殖の10倍、10倍にバルクNK集団を増殖させた。したがって、わずか10−25 mLの末梢血の開始材料からの養子移入で1010以上の同種異系NK細胞をex vivoで増殖可能であったと思われる。この集団には、長期生着や、Tリンパ球混入の結果として輸血に伴って起こりうるGVHDを予防するために、同種異系の設定での養子移入前に照射が必要になると思われる。照射がNK細胞のアポトーシス、そして最終的には細胞死を誘発したことは驚くことではない。しかし、本発明者らのin vitroのデータは、一定レベルのNK細胞の細胞傷害機能が50 Gyへの曝露後48時間まで持続したことを示した。実際に、γ線照射された、部分的に不適合な同種異系PBMCの注入が、転移性RCCを伴う一部の患者において疾患の退行を誘導したことが最近報告されている。本発明者らのデータは、KIR不適合の養子移入され、照射済み同種異系NK細胞が、比較的低い割合のNK細胞を含む未操作の同種異系PBMCの注入と比較して、同様又はさらに増大された抗腫瘍作用を有する可能性を示唆している。
【0162】
大きな転移病変から単離された新鮮な初期継代の腫瘍細胞に関する予備データは、樹立された腫瘍株で認められるのと同様にKIR不適合性NK細胞に対する感受性の増大を示している。
【0163】
最後に、同種異系造血幹細胞の移植が、進行性のサイトカイン不応性転移性RCCを伴う一部の患者において移植片対腫瘍効果を誘導することが最近示された(Storbら、Hematology(Am. Soc. Hematol. Educ. Program), 372−397, 2003、その全体が本明細書において参考として援用される)。HLA適合同胞をドナーとして使用したため、同種反応性NK細胞は増殖しないと考えられる。KIR不適合のNK細胞に対するRCC及び黒色腫細胞の感受性の増大を示す本研究のデータは、KIR不適合同種移植後のAMLに対して見られるNK細胞媒介性の抗腫瘍作用が、選択された固形腫瘍に対するのと同様に誘導されうることを示唆している。無関係のドナーを利用した転移性RCCに対する移植の試みは既に進行中である(Uenoら、Blood, 102: 3829−3836, 2003その全体が本明細書において参考として援用される)。本発明者らの所見に基づいて、KIR不適合の、単一HLA不適合(GVHの方向)である無関係のドナーの利用を評価する試験を考慮する必要がある。これは移植後の同種反応性NK細胞の注入の影響を検証する機会も与え、この注入は、生着を促進させ、GVHDのリスクを減らし、不適合移植マウスモデルの白血病を根治することが過去に示されている(Ruggeriら、Science, 295: 2097−2100, 2002その全体が本明細書において参考として援用される)。
【0164】
(実施例8)
NK細胞の殺傷に対して腫瘍細胞を感作させる方法
本発明は、腫瘍細胞をNK細胞媒介性の溶解により感受性にすることによって腫瘍疾患を治療する方法を提供する。腫瘍細胞を増強剤(例えば、化学薬品、化学療法薬)と、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物又は濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とで処置する方法を提供する。図7では、RENCA腫瘍細胞を化学薬品(例えば、デプシペプチド又はベルケード)で治療後、NK細胞の感受性アッセイを実施した。結果は、NK細胞単独での腫瘍細胞の処理と比較して、化学薬品と濃縮NK細胞集団との併用による腫瘍細胞の処理によって、腫瘍細胞をNK細胞媒介性の溶解により感受性にすることを実証している。化学薬品デプシペプチドはヒストンデアセチラーゼ阻害剤であり、ヒストンデアセチラーゼの酵素活性を阻害することで遺伝子発現調節を妨げる。デプシペプチドは、マウスモデルにおいて細胞増殖を阻害し、腫瘍形成を予防することによって抗腫瘍作用を有することが示されている。実験ではデプシペプチド処理時のMIC−A/B誘導が示された。化学薬品ベルケード(ボルテゾミブ)はプロテアソーム阻害剤である。実験では、プロテアソーム阻害剤PS−341がc−FLIPレベルの低下によってTRAIL媒介性のアポトーシスに対して腫瘍細胞を感作させることが示されている(Sayers TJ, Blood 102: 303−310, 2003)。さらなる実験では、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブが、薬剤の移植片対腫瘍効果を保持しながら急性移植片対宿主病を抑制することが示されている(Kai Sun, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 101: 8120−8125, 2004)。
【0165】
図7は、デプシペプチド又はベルケードによる腫瘍細胞の前処理によって、NK細胞媒介性の溶解に対する腫瘍細胞の感受性が高まることを示している。RENCA腫瘍細胞をデプシペプチド[25ng/mL]又はベルケード[10nM]で40時間処理して、37℃で1時間、51Cr標識した。その後、標準的な細胞傷害性アッセイにおいて腫瘍細胞のNK細胞感受性を試験した。B10.d2マウスの脾細胞から、T細胞、B細胞、単球および顆粒球の陰性磁気ビーズ除去によってNK細胞を精製した。フローサイトメトリーによるDX5及びCD3染色によってNK細胞の純度を評価した。NK細胞の純度は常に90−100%であった。
【0166】
図8は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作させたマウス腎細胞癌(RENCA)のNK細胞に対する感受性の増大を示している。10nMベルケード又は25ng/mLデプシペプチドの存在下でRENCA腫瘍細胞を14時間培養した。その後、細胞を1時間51Cr標識して、標準的な4時間アッセイにおいてNK細胞媒介性溶解に対する感受性を試験した。マウスの自己Balb/c NK細胞を未処理(□)、ベルケード(○)、デプシペプチド(△)で処理したRENCA細胞株(Balb/c由来)に対して試験した。
【0167】
図9は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作させたヒトの腎細胞癌(RCC)の同種異系NK細胞に対する感受性の増大を示している。10nMベルケード又は25ng/mLデプシペプチドの存在下でヒト(JOHW)及びマウス(RENCA)腫瘍細胞をそれぞれ40時間、14時間培養した。その後、細胞を1時間51Cr標識して、標準的な4時間アッセイにおいて同種異系NK細胞媒介性溶解に対する感受性を試験した。
【0168】
図10は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作させたヒトの腎細胞癌(RCC)の自己NK細胞に対する感受性の増大を示している。10nMベルケード又は25ng/mLデプシペプチドの存在下でヒト(JOHW)及びマウス(RENCA)腫瘍細胞をそれぞれ40時間、14時間培養した。その後、細胞を1時間51Cr標識して、標準的な4時間アッセイにおいて自己NK細胞媒介性溶解に対する感受性を試験した。
【0169】
図11は、デプシペプチド又はベルケードで事前に感作させたヒト腎細胞癌(SAUJ RCC又はSTART RCC)の自己NK細胞に対する感受性の増大が示している。ヒトRCC細胞株STAR又はSAUJを25ng/mLデプシペプチド又は10nMベルケードで24時間処理して、37℃で1時間、51Cr標識した。その後、標準的な細胞傷害性アッセイにおいて腫瘍細胞のNK細胞感受性を試験した。末梢血から、T細胞、B細胞、単球および顆粒球の陰性磁気ビーズ除去によって自己NK細胞を精製した。フローサイトメトリーによるCD56及びCD3染色によってNK細胞の純度を評価した。NK細胞の純度は常に90−100%であった。
【0170】
図12は、ヒトRCC細胞株と化学薬品又は化学療法薬とのインキュベーションを最適化するための経時変化を示している。ヒトRCC細胞株JOHWを10nMのベルケードで2、8、16、24、40時間処理して、その後、37℃で1時間ラベリングした。標準的な細胞傷害性アッセイにおいて腫瘍細胞のNK細胞感受性を試験した。同種異系ランダムドナーから、T細胞(CD3)の陰性磁気ビーズ除去及びCD56細胞の陽性磁気ビーズセレクションによってNK細胞を精製した。フローサイトメトリーによるCD56及びCD3染色によってNK細胞の純度を評価した。NK細胞の純度は常に90−100%であった。
【0171】
ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作したヒト腎細胞癌(RCC)のNK細胞に対する感受性の増大は、TRAIL(図13)又はFasリガンド(図14)を含む機構を介して起こる。ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作し、TRAIL又はFasリガンドで16時間培養したRCC細胞において細胞溶解が増加した。4種のヒトRCC細胞株(JOHW、PORJC、SAUJ、STAR)をデプシペプチド[25ng/mL]又はベルケード[10nM]で24時間処理して、その後、37℃で1時間51Cr標識した。次に細胞を96ウェルプレートに4,000細胞/ウェルで播種した。組み換え型TRAIL[75−300ng/mL]又は組み換え型Fasリガンド[12.5−100ng/mL]を細胞に加えて、上精を16時間の培養後に回収した。TRAIL及びFasリガンドによる溶解レベルを51Crの自然放出量及び51Crの最大放出量に基づいて算出した。
【0172】
図15ではRCC細胞株を比較しており、生存率(アポトーシス)、増殖、MHCクラスI発現、MIC−A/B発現における差はない。3種のヒトRCC細胞株(JOHW、SAUJ、STAR)及び1種のマウスRCC細胞株(RENCA)をデプシペプチド[25ng/mL]又はベルケード[10nM]で6−40時間処理した。アポトーシスレベルをAnnexin−V、7−AAD染色(上左図)によって評価した。ヒトRCCに対するHLA−ABC、およびマウスRCCに対するH−2Dd/KdによるフローサイトメトリーによってMHCクラスI発現を評価した(下左図)。ヒトRCC上のMIC−A/B発現をモノクローナル抗体染色及びフローサイトメトリーによって評価した(下右図)。様々な濃度のデプシペプチド及びベルケードでヒト/マウスRCCを72時間処理した。増殖分析のために細胞をHチミジン標識した(上右図)。
【0173】
さらなる試験では、他の腫瘍細胞(例えば、前立腺、結腸、黒色腫、リンパ腫、乳房)におけるNK細胞の殺傷に対する増強剤(例えば、化学薬品又は化学療法薬)の感作を測定する。腫瘍及びNK細胞のマイクロアレイ分析、遮断、腫瘍の表現型を使用して作用機構を明確にする。これらのアッセイを利用して、治療に対する反応性を予測する。マウスの処置モデルを開発する。
【0174】
図16では、NK細胞の攻撃に対してヒトの腫瘍を感作させるヒトでの臨床試験を提案している。アフェレーシスによって癌患者からNK細胞を単離する。NK細胞をin vitroで増殖させる。患者を、例えば、FDAが多発性骨髄腫の処置に承認しているベルケード(ボルテゾミブ)などの化学薬品で処置して、NK細胞の養子移入後のNK細胞の殺傷に感作させる。
【0175】
分子量などの物理的特性や化学式などの化学的特性についての範囲を本明細書で使用する場合、そこでの範囲及び特定の実施態様の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせを含むことを意図する。
【0176】
本文書内で引用又は記載されている、各々の特許、特許出願、刊行物の開示はその全体が本明細書において参考として援用される。
【0177】
当業者であれば、本発明の実施形態に対して多数の変化及び改変が可能であり、かつ、このような変化及び改変が本発明の精神から逸脱せずになされ得ることを十分に理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内のこのような同等の全てのバリエーションに係る。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1A、1B、1C、1Dは、CD158b(KIR 2DL2/3)及びCD158a(KIR 2DL1)陽性NK集団の単離を示している。
【図2】図2A、2B、2C、2Dは、RCC及び黒色腫細胞が、KIR適合株よりもKIR不適合性NK細胞株の細胞傷害性作用に対して感受性が高いことを示している。
【図3】図3A、3B、3Cは、限界希釈クローニングによって単離された同種異系KIR不適合性NK細胞株ではKIR不適合腫瘍標的に対する細胞傷害性が増大していることを示している。
【図4A】図4Aでは、γ線照射されたNK細胞が、照射後少なくとも48時間にわたって腫瘍細胞に対する細胞傷害性を維持していることを示している。
【図4B】図4Bでは、γ線照射されたNK細胞が、照射後少なくとも48時間にわたって腫瘍細胞に対する細胞傷害性を維持していることを示している。
【図4C】図4Cでは、γ線照射されたNK細胞が、照射後少なくとも48時間にわたって腫瘍細胞に対する細胞傷害性を維持していることを示している。
【図5A】図5Aは、自己腫瘍細胞に対する細胞傷害性が増大したサブドミナントなNK細胞画分の同定及び増殖を示している。
【図5B】図5Bは、自己腫瘍細胞に対する細胞傷害性が増大したサブドミナントなNK細胞画分の同定及び増殖を示している。
【図5C】図5Cは、自己腫瘍細胞に対する細胞傷害性が増大したサブドミナントなNK細胞画分の同定及び増殖を示している。
【図5D】図5Dは、自己腫瘍細胞に対する細胞傷害性が増大したサブドミナントなNK細胞画分の同定及び増殖を示している。
【図5E】図5Eは、自己腫瘍細胞に対する細胞傷害性が増大したサブドミナントなNK細胞画分の同定及び増殖を示している。
【図6】図6は、抑制性KIR細胞質ロングドメインをノックダウンするRNAiのレンチウイルス形質導入、そして示されたNK細胞抗腫瘍効果の増大を示している。
【図7】図7は、デプシペプチド又はベルケード(Velcade)で腫瘍細胞を前処理することで、腫瘍細胞のNK細胞媒介性溶解に対する感受性が高まることを示している。
【図8】図8は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作されたマウス腎細胞癌(RENCA)のNK細胞に対する感受性の増大を示している。
【図9】図9は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作されたヒト腎細胞癌の同種異系NK細胞に対する感受性の増大を示している。
【図10】図10は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作されたヒト腎細胞癌の自己NK細胞に対する感受性の増大を示している。
【図11】図11は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作されたヒト腎細胞癌の自己NK細胞に対する感受性の増大を示している。
【図12】図12は、ヒト腎細胞癌の細胞株と化学薬品との培養を最適化するための経時変化を示している。
【図13】図13は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作されたヒト腎細胞癌のNK細胞に対する感受性の増大がTRAILを含む機構を介して起こりうることを示している。
【図14】図14は、ベルケード又はデプシペプチドで事前に感作されたヒト腎細胞癌のNK細胞に対する感受性の増大がFasリガンドを含む機構を介して起こりうることを示している。
【図15】図15は、ヒト腎細胞癌の細胞株における生存率(アポトーシス)、増殖、MHCクラスI発現、MIC−A/B発現を比較している。
【図16】図16は、ヒトの腫瘍をNK細胞攻撃に感作させるヒトでの臨床試験を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物。
【請求項2】
さらにKIR/KIRリガンド不適合性NK細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
KIR/KIRリガンド不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物。
【請求項4】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法。
【請求項5】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記NK細胞へのγ線照射後48時間まで、前記被験体へ前記γ線照射済みNK細胞集団を投与する工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法。
【請求項8】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記増強剤がNK細胞による殺傷に対して前記腫瘍の感作を起こさせる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記増強剤が化学薬品又は化学療法薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記増強剤がプロテアソーム阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法。
【請求項13】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記増強剤がNK細胞による殺傷に対して前記腫瘍の感作を起こさせる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記増強剤が化学薬品又は化学療法薬である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記増強剤がプロテアソーム阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、KIR/KIRリガンド不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、固形腫瘍を処置する方法。
【請求項18】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法。
【請求項20】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
固形腫瘍を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法。
【請求項22】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記増強剤がNK細胞による殺傷に対して前記腫瘍の感作を起こさせる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記増強剤が化学薬品又は化学療法薬である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記増強剤がプロテアソーム阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
過剰増殖性障害を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、増強剤と濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とを哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法。
【請求項27】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記増強剤がNK細胞による殺傷に対して前記腫瘍の感作を起こさせる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記増強剤が化学薬品又は化学療法薬である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記増強剤がプロテアソーム阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
過剰増殖性障害を縮小もしくは除去するか、またはその発生もしくは再発を予防するための有効量で、KIR/KIRリガンド不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、過剰増殖性障害を処置または予防する方法。
【請求項32】
前記哺乳動物被験体へ前記組成物を投与する前に、さらに前記NK細胞集団へのγ線照射を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
過剰増殖性障害が血液の悪性疾患、固形腫瘍、黒色腫、または尿生殖器の悪性疾患である、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記尿生殖器の悪性疾患が膀胱、尿路、腎臓、睾丸、又は前立腺の悪性疾患である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための有効量で、濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物へ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を包含する、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項36】
哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための有効量で、増強剤と濃縮同種異系NK細胞集団を含む組成物とへ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を包含する、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項37】
前記増強剤がNK細胞による殺傷に対して前記腫瘍の感作を起こさせる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記増強剤が化学薬品又は化学療法薬である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記増強剤がプロテアソーム阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための有効量で、増強剤と濃縮自己NK細胞集団を含む組成物とへ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を包含する、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項41】
前記増強剤がNK細胞による殺傷に対して前記腫瘍の感作を起こさせる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記増強剤が化学薬品又は化学療法薬である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記増強剤がプロテアソーム阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、または腫瘍細胞の増殖を抑制するための有効量で、KIR/KIRリガンド不適合性の濃縮自己NK細胞集団を含む組成物へ腫瘍細胞を接触または曝露させる工程を包含する、哺乳動物被験体において腫瘍細胞死を誘導するか、もしくは腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項45】
前記腫瘍細胞が前記哺乳動物被験体の膀胱内にある、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍細胞が前記哺乳動物被験体の膀胱内にある、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記腫瘍細胞が前記哺乳動物被験体の膀胱内にある、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記腫瘍細胞が前記哺乳動物被験体の膀胱内にある、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記濃縮自己NK細胞集団がKIRグループ1内にホモ接合性のHLA−Cw遺伝子座を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記濃縮自己NK細胞集団がKIRグループ2内にホモ接合性のHLA−Cw遺伝子座を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記濃縮自己NK細胞集団がBw4又はBw6内にホモ接合性のHLA−B遺伝子座を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記ホモ接合性HLA−Cw遺伝子座がCw1、Cw3、Cw7、Cw8、Cw12、Cw13、Cw14、Cw1507またはCw16である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記ホモ接合性HLA−Cw遺伝子座がCw2、Cw0307、Cw0315、Cw4、Cw5、Cw6、Cw0707、Cw0709、Cw1205、Cw12041、Cw12042、Cw15、Cw1602、Cw17またはCw18である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記ホモ接合性HLA−B遺伝子座がBw−5、Bw−13、Bw−1513、Bw−1516、Bw−1517、Bw−1523、Bw−1524、Bw−17、Bw−21、Bw−27、Bw−37、Bw−38、Bw−44、Bw−47、Bw−49、Bw−51、Bw−52、Bw−53、Bw−57、Bw−58、Bw−59、Bw−63またはBw−77である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記ホモ接合性HLA−B遺伝子座がBw−7、Bw−8、Bw−12、Bw−14、Bw−18、Bw−2708、Bw−35、Bw−39、Bw−40、Bw−4005、Bw−41、Bw−42、Bw−45、Bw−46、Bw−48、Bw−50、Bw−54、Bw−55、Bw−56、Bw−60、Bw−61、Bw−62、Bw−64、Bw−65、Bw−67、Bw−71、Bw−72、Bw−73、Bw−75、Bw−76、Bw−78またはBw−81である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記被験体がホモ接合性のKIRリガンドを有し、かつNK集団が自己HLA分子と結合できないKIRを発現することを停止させることができない、請求項44に記載の方法。
【請求項57】
前記被験体がBw4又はBw6内にHLA−B遺伝子座を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記被験体がKIRグループ1又はKIRグループ2内にHLA−Cw遺伝子座を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記濃縮自己NK細胞集団がKIRグループ1又はKIRグループ2内にホモ接合性のHLA−Cw遺伝子座を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記濃縮自己NK細胞集団がKIRグループ1又はKIRグループ2内にヘテロ接合性のHLA−Cw遺伝子座を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記腫瘍が、血液の悪性疾患、固形腫瘍、黒色腫、または尿生殖器の悪性疾患である、請求項35に記載に記載の方法。
【請求項62】
前記尿生殖器の悪性疾患が、膀胱癌、尿路癌、腎臓癌、睾丸癌、又は前立腺癌である、請求項35に記載の方法。
【請求項63】
腫瘍細胞を増強剤で処理する工程を包含する、NK細胞集団の腫瘍細胞傷害性を強化する方法。
【請求項64】
前記増強剤がNK細胞による殺傷に対して前記腫瘍の感作を起こさせる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記増強剤が化学薬品又は化学療法薬である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記増強剤がプロテアソーム阻害剤又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
EBVリンパ芽球性細胞株を使用したNK細胞の増殖を含む、哺乳動物被験体からのNK細胞部分集団の増殖方法。
【請求項68】
前記部分集団がKIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記NK細胞が自己NK細胞集団である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記自己NK細胞の部分集団を少なくとも10倍に増殖させる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記KIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団がKIR2DL2/3である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
末梢血単核球を使用したNK細胞の増殖を含む、哺乳動物被験体からのNK細胞部分集団の増殖方法。
【請求項73】
前記部分集団がKIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記NK細胞が自己NK細胞集団である、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記自己NK細胞の部分集団を少なくとも10倍に増殖させる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記自己NK細胞の部分集団を少なくとも10倍に増殖させる、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記KIR/KIRリガンド不適合性NK細胞集団がKIR2DL2/3、KIR2DL1またはNKB1を発現する、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
KIRとKIRリガンドとの結合を阻害する工程を包含する、NK細胞集団の細胞傷害性の強化方法。
【請求項79】
前記KIR細胞質ドメインに対する干渉RNA(RNAi)でNK細胞集団を処理することによって、腫瘍に対するNK細胞の細胞傷害性を強化する工程をさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記KIR細胞質ドメインに対するアンチセンスRNAでNK細胞を処理することによって、腫瘍に対するNK細胞の細胞傷害性を強化する工程をさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記KIR細胞外ドメイン又はKIR細胞質ドメインに対する抗体でNK細胞を処理することによって、NK細胞の細胞傷害性を強化する工程をさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記抗体がモノクローナル抗体又は一本鎖Fv抗体である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記NK細胞集団が同種異系NK細胞集団である、請求項78に記載の方法。
【請求項84】
前記NK細胞集団が自己NK細胞集団である、請求項78に記載の方法。
【請求項85】
KIRとKIRリガンドとの結合阻害によるNK細胞集団の細胞傷害性を強化する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項86】
前記KIR細胞質ドメインに対する干渉RNA(RNAi)、該KIR細胞質ドメインに対するアンチセンスRNA、該KIR細胞質ドメインに対するリボザイム、または該KIR細胞外ドメインもしくは該KIR細胞質ドメインに対する抗体で前記NK細胞集団を処理する工程をさらに含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
KIRとKIRリガンドとの結合阻害による、NK細胞集団の細胞傷害性を強化する工程をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項88】
前記KIR細胞質ドメインに対する干渉RNA(RNAi)、該KIR細胞質ドメインに対するアンチセンスRNA、該KIR細胞質ドメインに対するリボザイム、または該KIR細胞外ドメインもしくは該KIR細胞質ドメインに対する抗体で前記NK細胞集団を処理する工程をさらに含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
ストリンジェントな条件下でキラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)の標的遺伝子とハイブリダイズする核酸分子の哺乳動物への投与、そして該標的遺伝子の発現の減弱を含む、哺乳動物における固形腫瘍又は過剰増殖性障害を処置する方法。
【請求項90】
前記核酸分子と濃縮同種異系又は自己NK細胞集団との接触をさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記核酸分子がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記核酸分子が二本鎖RNA分子である、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記二本鎖RNA分子が短鎖干渉RNA(siRNA)又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記核酸分子が前記KIR標的遺伝子の細胞内ドメインにハイブリダイズする、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
(i)KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現が抑制されるべき生物系を提供する工程、(ii)該KIRタンパク質をコードする転写産物にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドと該系とを接触させる工程、(iii)該KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する工程を含む、キラー免疫グロブリン(Ig)様受容体(KIR)タンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項96】
前記生物系が濃縮同種異系又は自己NK細胞集団である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
哺乳動物被験体における濃縮NK細胞集団へ前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与する工程、そして固形腫瘍又は過剰増殖性障害に対するNK細胞の細胞傷害性を強化する工程をさらに含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
(i)KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現が抑制されるべき生物系の提供、(ii)KIRタンパク質をコードする転写産物にハイブリダイズする二本鎖RNA分子と該系とを接触させる工程、(iii)該KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する工程を含む、KIRタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項99】
前記生物系が濃縮同種異系又は自己NK細胞集団である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
哺乳動物被験体における濃縮NK細胞集団へ前記二本鎖RNA分子を投与する工程、そして固形腫瘍又は過剰増殖性障害に対するNK細胞の細胞傷害性を強化する工程をさらに含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記二本鎖RNA分子が短鎖干渉RNA(siRNA)又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である、請求項98に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−518945(P2008−518945A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539250(P2007−539250)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/039282
【国際公開番号】WO2006/050270
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507143347)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (2)
【Fターム(参考)】