説明

過硫酸製造装置及び過硫酸製造方法

【課題】硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を製造することが可能な過硫酸製造装置及び過硫酸製造方法を提供する。
【解決手段】陽極30と陰極32とを備え、陽極30と陰極32との間に電流を流し、硫酸溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置1であって、前記硫酸溶液の電解時に、陽極30と陰極32との間を流れる電流を所定の間隔で停止させるか又は逆電流を流す制御手段38を備える過硫酸製造装置および過硫酸製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤等として有用な過硫酸の溶解水を電気化学的手法により製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程におけるウエハ洗浄は、レジスト残渣、微粒子、金属及び自然酸化膜等を剥離洗浄するプロセスであり、例えば、濃硫酸と過酸化水素との混合溶液(SPM)、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)等を用いてウエハを洗浄する方法が多用されている。このように、(高濃度)硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると、硫酸が酸化されて過硫酸が生成される。そして、過硫酸は、自己分解する際に強い酸化力を発するため、上記ウエハ等の洗浄に役立つことが知られている。
【0003】
SPMを用いる洗浄方法では、生成した過硫酸は自己分解等によって、使用とともに酸化力が低下してしまう。そのため、洗浄時には過酸化水素水の補給を繰り返す必要がある。また、過酸化水素水を補給すると、SPM中の硫酸濃度が低減するため、硫酸濃度が所定の濃度を下回ると、新しい高濃度硫酸と交換する必要がある。
【0004】
また、SPMを用いる洗浄方法では、一回洗浄槽を満たした高濃度硫酸と数回の過酸化水素水添加により発生する過硫酸量は少ない。また、SOMを用いる洗浄方法では、オゾン吹き込み量に対する過硫酸の発生効率が非常に低い。したがって、これらの方法では、生成する過硫酸の濃度に限界があるため、洗浄効果にも限界がある。
【0005】
過硫酸を生成する方法としては、上記方法の他に、硫酸溶液を電解して過硫酸を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。このような電気化学的手法は、上記方法より過硫酸濃度を高めることができ、薬品使用量を低減することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−192874号公報
【特許文献2】特表2003−511555号公報
【特許文献3】特表2006−111943号公報
【特許文献4】特開2008−19507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ウエハ上に形成されるレジスト膜の剥離効果を高めるためには、過硫酸濃度のみならず硫酸濃度も高濃度であることが望まれる。しかし、上記のような従来の電気化学的手法では、硫酸濃度が高いと、過硫酸生成のための電流効率が低下してしまうという問題がある。また、電解条件として、熱による過硫酸の自己分解を抑制するために、低温で電解する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を製造することが可能な過硫酸製造装置及び過硫酸製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、陽極と陰極とを備え、前記陽極と前記陰極との間に電流を流し、硫酸含有溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置であって、前記硫酸含有溶液の電解時に、前記陽極と前記陰極との間を流れる電流を所定の間隔で停止させるか又は逆電流を流す制御手段を備えるものである。
【0010】
また、前記過硫酸製造装置において、陽極側に供給する溶液中の硫酸濃度は92〜96重量%の範囲であり、温度は60℃以下であることが好ましい。
【0011】
また、前記過硫酸製造装置において、前記制御手段は、停止させるか又は逆電流を流す間の電解量を0.1〜5Ah/Lの範囲とし、前記電流の停止時間又は前記逆電流を流す時間を10秒〜10分の範囲とすることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、陽極と陰極との間に電流を流し、硫酸含有溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造方法であって、前記硫酸含有溶液の電解時に、陽極と陰極との間を流れる電流を所定の間隔で停止するか又は逆電流を流すものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硫酸及び過硫酸が高濃度で共存する過硫酸溶解水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】本実施形態の通電パターンの一例を示す図である。
【図3】実施例1及び比較例1における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係を示す図である。
【図4】実施例2における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係を示す図である。
【図5】実施例3及び比較例2における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係を示す図である。
【図6】実施例4及び比較例3における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る過硫酸製造装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、過硫酸製造装置1は、電解槽10、陽極液タンク12、陽極液ポンプ14、陽極液供給ライン16、過硫酸排出ライン18、陰極液タンク20、陰極液ポンプ22、陰極液供給ライン24、陰極液排出ライン26、を備えるものである。
【0017】
電解槽10は、イオン交換膜等の隔膜28、陽極30、陰極32、を備えている。電解槽10は、隔膜28により陽極室34及び陰極室36に区画されている。そして、陽極室34には陽極30が配置され、陰極室36には陰極32が配置されている。陽極30及び陰極32は、導線により電解槽10外のコントローラ38(制御手段)を介して電源40に接続されている。
【0018】
電解槽10の陽極室34側には、陽極液入口及び陽極液出口が設けられている。電解槽10の陽極液入口と陽極液タンク12とは、陽極液供給ライン16により接続されている。また、陽極液供給ライン16には、陽極液ポンプ14が設けられている。電解槽10の陽極液出口には、過硫酸排出ライン18が接続されている。一方、電解槽10の陰極室36側には、陰極液入口及び陰極液出口が設けられている。電解槽10の陰極液入口と陰極液タンク20とは、陰極液供給ライン24により接続されている。また、陰極液供給ライン24には、陰極液ポンプ22が設けられている。電解槽10の陰極液出口には、陰極液排出ライン26が接続されている。なお、本実施形態では、陽極液の一部が循環するように、過硫酸排出ライン18を分岐させ、その分岐ライン18aが陽極液タンク12に接続され、また、陰極液が循環するように、陰極液排出ライン26が陰極液タンク20に接続されている。
【0019】
以下に、本実施形態に係る過硫酸製造装置1の動作について説明する。
【0020】
まず、陽極液ポンプ14を稼働させ、陽極液タンク12から陽極液供給ライン16を通して、陽極液を電解槽10の陽極室34に供給する。また、陰極液ポンプ22を稼働させ、陰極液タンク20から陰極液供給ライン24を通して、陰極液を電解槽10の陰極室36に供給する。ここで、陽極30液及び陰極32液には、硫酸含有溶液を用いている。その後、電源40から陽極30に正電圧、陰極32に負電圧を印加し、陽極30及び陰極32間に電流を流すと、陽極室34では、主に下式のような反応が起こる。
【0021】
2SO42- → S282- + 2e- (1)
2HSO4- → S282- + 2H+ + 2e- (2)
HSO4- + H2O → HSO5- + 2H+ + 2e- (3)
【0022】
また、陰極室36では、主に下式のような反応が起こる。
2H+ + 2e- → H2
【0023】
そして、このように硫酸含有溶液を電解することによって、ペルオキソ一硫酸(H2SO5)、ペルオキソ二硫酸(H228)等の過硫酸を含む過硫酸溶解水が得られる。過硫酸溶解水は、過硫酸排出ライン18を通り、ウエハ等の洗浄に用いられる。また、過硫酸溶解水の一部は、分岐ライン18aを通り、陽極液タンク12に戻される。一方、陰極室36を通過した陰極液は、陰極液排出ライン26を通り、陰極液タンク20に戻される。
【0024】
高濃度の硫酸を電解する場合、通常、陽極30に正電圧、陰極32に負電圧を印加し、陽極30及び陰極32間に電流を通電し続けると、電解電圧が上昇し、過硫酸生成のための電流効率が低下して、過硫酸の生成量が低下してしまう。特に、通電量が高く、陽極室34に供給する硫酸含有溶液の硫酸濃度がより高い場合に起こり易い。これは、陽極30及び陰極32間に電流を通電し続けることにより、生成した過硫酸イオン(HSO5-、S282-)が、陽極30近傍に留まるため、新たな硫酸イオン(及び亜硫酸イオン)が、陽極30近傍へ拡散(或いは吸着)し難くなるためであると考えられる。そこで、本実施形態では、陽極30と陰極32との間を流れる電流を所定の間隔で停止するか又は逆電流を流すことにより、生成した過硫酸イオンを陽極30近傍から離し、低下した硫酸イオンの拡散性(吸着性)を回復させ、電圧上昇による過硫酸生成のための電流効率の低下を抑制している。
【0025】
図2は、本実施形態の通電パターンの一例を示す図である。図2(A)は、陽極30及び陰極32間における通電と停止とを繰り返し行う通電パターンである。また、図2(B)は、陽極30に正電圧及び陰極32に負電圧を印加、陽極30に負電圧及び陰極32に正電圧を印加し、陽極30及び陰極32間に正電流及び逆電流を繰り返し行う通電パターンである。このような制御は、図1に示すコントローラ38に上記のような通電パターンを記憶させることにより、行われる。
【0026】
ここで、電流の停止時間又は逆電流を流す時間(図2(A)及び(B)に示すt2)は、陽極30側の電解量、陽極30側に供給する硫酸含有溶液の硫酸濃度等により適宜設定されるものであればよいが、例えば、停止させるか又は逆電流を流す間の電解量が0.1〜5Ah/Lの範囲であるとき、電流の停止時間又は逆電流を流す時間は、10秒〜10分の範囲であることが好ましい。電流の停止時間又は逆電流を流す時間が10秒未満であると、低下した陽極30近傍への硫酸イオンの拡散性(吸着性)を回復させることが困難となり、10分超であると、陽極30側からの過硫酸の生成量が低下し、ウエハ上に形成されるレジスト膜の剥離効果が低下する場合がある。また、(正)電流を流す時間(図2(A)及び(B)に示すt1)は、電流の停止時間又は逆電流を流す時間よりも長くすることが好ましく、例えば、1分〜30分の範囲であることが好ましい。
【0027】
本実施形態に用いる陽極液としての硫酸含有溶液の硫酸濃度は、92〜96重量%の範囲であることが好ましい。硫酸溶液の濃度が92重量%未満であると、過硫酸生成量は増加するものの、本実施形態の電解方法により得られる過硫酸溶解水中の硫酸濃度が低くなり、ウエハ上に形成されるレジスト膜の剥離効果が低下する場合がある。また、硫酸濃度が96重量%超であると、本実施形態の電解方法によっても、十分な量の過硫酸が生成されない場合がある。また、陽極液としての硫酸含有溶液の温度は、本実施形態の電解方法により得られる過硫酸の自己分解を抑制することができる点で、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、40℃以下がさらにより好ましい。硫酸含有溶液の温度制御方法は、特に制限されるものではないが、例えば、陽極液タンク12にヒータを設置したり、陽極液供給ライン16に冷却器を設置することによって、行われる。
【0028】
本実施形態に用いる陰極液としては、陽極液と同じ硫酸含有溶液であっても、陽極液と異なるような導電性物質を溶解した溶液であってもよい。また、陰極液として硫酸含有溶液を用いた場合、陽極液としての硫酸含有溶液と同程度の濃度の硫酸含有溶液を用いる方が、より多くの過硫酸を生成することができる点で好ましいが、陽極液の硫酸濃度より低い濃度、例えば10重量%以下の硫酸含有溶液であってもよい。
【0029】
本実施形態に用いる電解槽10は、図1に示すように隔膜28で陽極室34及び陰極室36に区画された2室型電解槽でもよいし、隔膜28を設けない無隔膜型電解槽でもよい。しかし、無隔膜型電解槽では、陽極30で一旦生成したペルオキソ一硫酸イオン(HSO5-)、ペルオキソ二硫酸イオン(S282-)等の過硫酸イオンが陰極32に接触して硫酸イオンに還元される可能性があるため、2室型電解槽を使用することが好ましい。また、電解槽10は単極式でも複極式でも特に制限されるものではない。
【0030】
本実施形態に用いる隔膜28としては、例えば、商品名Poreflon等の中性膜や商品名Nafion,Aciplex,Flemion等の陽イオン交換膜等が使用できるが、耐食性の点で、陽イオン交換膜を使用することが好ましい。
【0031】
本実施形態に用いる陽極30及び陰極32としては、例えば、白金、ダイアモンド被覆電極等を使用するが、陰極32はその他に、カーボン、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム電極等を使用することができる。隔膜28を有することで陰極32側に供給する硫酸含有溶液を低濃度にすることができる場合には、白金、ダイアモンド被覆電極等より、カーボン、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム電極等を使用することが、耐食性、コストの点で好ましい。
【0032】
陽極30及び陰極32間の距離は、特に制限されるものではないが、短い方が好ましい。陽極30及び陰極32間の距離を短くすることにより、溶液抵抗によるジュール熱の発生が抑えられ、生成した過硫酸の自己分解を抑制することができるからである。陽極30及び陰極32間の距離は、例えば、1〜100mmの範囲であることが好ましい。また、陽極30及び陰極32間の電流密度は、特に制限されるものではないが、例えば10〜2000mA/cm2の範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1,2)
図1に示す過硫酸製造装置を用いて、硫酸溶液を以下の条件で電解し、過硫酸溶解水を製造した。陽極液には、濃度96重量%の硫酸溶液(60℃以下)を用い、陰極液には、濃度1mol/Lの硫酸溶液(60℃以下)を用いた。過硫酸製造装置で使用した陽極はダイアモンド被覆電極、陰極はジルコニウム電極であった。実施例1の電解条件は、240秒通電後、60秒停止を1サイクルとし、これを繰り返すこととし、実施例2の電解条件は、290秒通電後、10秒停止を1サイクルとし、これを繰り返すこととした。
【0035】
(比較例1)
比較例1では、陽極及び陰極間に常時通電させて、硫酸溶液を電解したこと以外は、実施例1と同様の条件で、過硫酸溶解水を製造した。
【0036】
(実施例3)
実施例3では、陽極液に濃度92重量%の硫酸溶液(60℃以下)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0037】
(比較例2)
比較例2では、陽極及び陰極間に常時通電させて、硫酸溶液を電解したこと以外は、実施例3と同様の条件(陽極液に濃度92重量%の硫酸溶液(60℃以下))で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0038】
(実施例4)
実施例4では、陽極液に濃度85重量%の硫酸溶液(60℃以下)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0039】
(比較例3)
比較例3では、陽極及び陰極間に常時通電させて、硫酸溶液を電解したこと以外は、実施例4と同様の条件(陽極液に濃度85重量%の硫酸溶液(60℃以下))で、硫酸溶液を電解し、過硫酸溶解水を製造した。
【0040】
表1に、通電量10Ah/Lでの実施例1,2及び比較例1の電流効率をまとめた。また、図3に、実施例1及び比較例1における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係をまとめた。図4に、実施例2における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係をまとめた。また、表2に、通電量10Ah/Lでの実施例3及び比較例2の電流効率をまとめた。また、図5に、実施例3及び比較例2における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係をまとめた。また、表3に通電量10Ah/Lでの実施例4及び比較例3の電流効率をまとめた。また、図6に実施例4及び比較例3における通電量と過硫酸(H228)濃度及び電圧との関係をまとめた。
【0041】
【表1】

【表2】

【表3】

【0042】
表1から判るように、陽極液の硫酸濃度が96重量%の場合、通電量10Ah/L時の電流効率は、常時通電を行った比較例1より通電−停止を繰り返した実施例1,2の方が高い値を示した。また、図3から判るように、陽極液の硫酸濃度が96重量%の場合、常時通電を行った比較例1では、通電量が5Ah/L以上の時、電解電圧が上昇し、過硫酸濃度もほぼ一定の値となった。これに対し、240秒通電−60秒停止を繰り返した実施例1では、通電量が増加しても電解電圧は上昇することなく、また、通電量の増加に比例して過硫酸濃度も上昇した。また、図4から判るように、290秒通電−10秒停止を繰り返した実施例2では、通電量が増加しても電解電圧は上昇することなく、また、通電量の増加に比例して過硫酸濃度も上昇した。すなわち、通電−停止時間を変えても、通電量の増加による電解電圧の上昇を抑え、また通電量の増加に比例して過硫酸濃度を増加させることができると判った。
【0043】
また、表2から判るように、陽極液の硫酸濃度が92重量%の場合、通電量10Ah/L時の電流効率は、常時通電を行った比較例2より通電−停止を繰り返した実施例3の方が高い値を示した。また、図5から判るように、陽極液の硫酸濃度が92重量%の場合、常時通電を行った比較例2では、通電量が13Ah/L以上の時、電解電圧が上昇したのに対し、240秒通電−60秒停止を繰り返した実施例3では、通電量が13Ah/L以上でも、電解電圧の上昇は起きなかった。また、比較例2では、通電量の増加と共に、過硫酸濃度は増加するが、その増加率は減少した。これに対し、実施例3では、通電量を増加させても、過硫酸濃度の増加率はほとんど減少しなかった。
【0044】
なお、表3から判るように、陽極液の硫酸濃度が85重量%の場合では、通電量10Ah/L時の電流効率は、常時通電を行った比較例3及び通電−停止を繰り返した実施例4ともに、ほとんど同じ値であった。また、図6から判るように、陽極液の硫酸濃度が85重量%の場合では、通電量の増加に伴う、電解電圧の挙動及び過硫酸濃度の増加傾向は、常時通電を行った比較例3及び240秒通電−60秒停止を繰り返した実施例4ともに、ほとんど同じであった。
【0045】
また、実施例1,3,4については、通電−停止の電解条件から240秒正電流−60秒逆電流の電解条件に代えて試験を行った。その結果、正電流−逆電流の電解条件でも通電−停止の電解条件と同様の結果が得られることを確認した。以上のことから、通電−停止又は正電流−逆電流を繰り返す電解条件により過硫酸を製造する本実施形態の装置では、陽極液の硫酸濃度が低い場合でも、常時通電を行って過硫酸を製造する装置と同等の性能を示し、また、陽極液の硫酸濃度が高い場合には、常時通電を行って過硫酸を製造する装置より、通電量の増加による電圧上昇を抑制し、さらに過硫酸の生成量を増加させることができるとわかった。
【符号の説明】
【0046】
1 過硫酸製造装置、10 電解槽、12 陽極液タンク、14 陽極液ポンプ、16陽極液供給ライン、18 過硫酸排出ライン、18a 分岐ライン、20 陰極液タンク、22 陰極液ポンプ、24 陰極液供給ライン、26 陰極液排出ライン、28 隔膜、30 陽極、32 陰極、34 陽極室、36 陰極室、38 コントローラ、40 電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極とを備え、前記陽極と前記陰極との間に電流を流し、硫酸含有溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造装置であって、
前記硫酸含有溶液の電解時に、前記陽極と前記陰極との間を流れる電流を所定の間隔で停止させるか又は逆電流を流す制御手段を備えることを特徴とする過硫酸製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の過硫酸製造装置であって、陽極側に供給する溶液中の硫酸濃度は92〜96重量%の範囲であり、温度は60℃以下であることを特徴とする過硫酸製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の過硫酸製造装置であって、前記制御手段は、停止させるか又は逆電流を流す間の電解量を0.1〜5Ah/Lの範囲とし、前記電流の停止時間又は前記逆電流を流す時間を10秒〜10分の範囲とすることを特徴とする過硫酸製造装置。
【請求項4】
陽極と陰極との間に電流を流し、硫酸含有溶液を電解して、過硫酸溶解水を製造する過硫酸製造方法であって、
前記硫酸含有溶液の電解時に、前記陽極と前記陰極との間を流れる電流を所定の間隔で停止するか又は逆電流を流すことを特徴とする過硫酸製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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