説明

過負荷防止機構を備えたロードセル

【課題】過負荷による破損を防ぐ過負荷防止用のストッパ部材を備えたロードセルであって、ストッパ部材の取り付け作業を精度よく、かつ、容易に行うことができるロードセルを提供する。
【解決手段】水平方向に延在する上ビーム部2と、下ビーム部3と、上ビーム部2及び下ビーム部3の一端同士を連結する固定部4と、他端同士を連結し負荷を受けて鉛直方向に変位する可動部5と、を備えたロバーバル型のロードセルである。断面が円形である円柱状のストッパ部材7をさらに備え、固定部4には断面が円形である第1円形孔9が形成されており、可動部5には断面が円形であって、かつ、第1円形孔9と同心である第2円形孔10が形成されている。ストッパ部材7の基端部分が第1円形孔9にはめ込まれて固定され、かつ、ストッパ部材7の先端部分が第2円形孔10の内面との間に所定幅の隙間が生じるように第2円形孔10の内側に位置するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるロバーバル型のロードセルであって、特に過負荷による破損を防ぐ過負荷防止機構を備えたロードセルに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるロバーバル型のロードセルは、被計量物の位置に影響を受けないロバーバル機構を採用したものであって、秤量用として広く利用されている。図4は、一般的なロバーバル型のロードセル41の概略を示した図である。図4(a)に示すように、一般的なロバーバル型のロードセル41は、上部に位置する上ビーム部42と、下部に位置する下ビーム部43と、装置本体などの静止体に固定される固定部44と、鉛直方向に外力を受ける可動部45とから成り、全体として矩形の形状を有している。そして、上ビーム部42及び下ビーム部43の外周面の両端に合計4つのひずみゲージ46が貼着されている。
【0003】
ロードセル41に図4(b)に示す矢印の方向に負荷をかけると、ロードセル41の全体が歪む。この歪みに伴って、4箇所に貼着されたひずみゲージ46のうち図中の左上と右下に貼着されたひずみゲージ46は伸び、右上と左下に貼着されたひずみゲージ46は縮む。当然ながら、ロードセル41に加わる負荷が大きくなれば、ひずみゲージ46の歪みの程度も大きくなる。また、ひずみゲージ46は、その伸びや縮みの程度によって電気抵抗が変化するという特性を有している。そのため、ホイートストンブリッジ回路を用いてひずみゲージ46の電気抵抗を電圧に変換し、この電圧値を取得することで、ロードセル41にかかる負荷の大きさを検出することができる。
【0004】
ただし、ロバーバル型のロードセル41は、上記のような構成を備えていることから、ロードセル41に過度の負荷がかかるとロードセル41が大きく歪み、これによってひずみゲージ46が破損してしまう恐れがある。そのため一般的には、ロードセル41に過度な負荷がかかるのを防止するため、ロードセル41の外部又はロードセル41の本体にストッパ部材47が設けられる。例えば、図4に示すように可動部45の下方にストッパ部材47が設けられる。図4のように、可動部45の下方に隙間を空けてストッパ部材47を設ければ、可動部45がその隙間の分だけ変位するとストッパ部材47に接触し、これ以上可動部45が変位しなくなる。これにより、ロードセル41に過度な負荷がかかるのを防止することができる。
【0005】
また、別の機構として、図5に示すものがある。図5は、図4とは別の機構を有するロバーバル型のロードセル51の斜視図である。図5に示すロードセル51では、固定部54の紙面手前側表面に溝が形成され、その溝に板状のストッパ部材57が固定されている。また、可動部55の紙面手前側表面にも溝が形成されているが、可動部55に形成された溝の幅はストッパ部材57の幅よりも大きく、可動部55の溝とストッパ部材57との間には上下方向においてわずかな隙間が生じている。図5に示すロードセル51は、このような構成を有しているため、可動部55に負荷がかかって変位すると、可動部55に形成された溝の内側がストッパ部材57に接触し、これ以上可動部55が変位しなくなる。これにより、ロードセル51に過度な負荷がかかるのを防止することができる。
【0006】
さらに、別の機構としては、特許文献1で開示されているものがある(特許文献1の図1〜図4を参照)。特許文献1では、上ビームと下ビームの両方から内側に向かってストッパが設けられている。これらのストッパは、左右方向にわずかな隙間が生じるように形成されている。そのため、ロードセルに外力がかかって歪みが生じると、両ストッパが左右方向に変位して接触し、これ以上可動部が変位しなくなる。これにより、ロードセルに過度な負荷がかかるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−288019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過負荷防止機構を備えたロバーバル型のロードセルとしては上記のものがあるが、実際のロードセルでは、可動部が変位する量は非常に小さく(図4や図5では、ストッパ部材47、57の前後に設けられた隙間は理解しやすいように大きく描かれているが、実際にはわずかである。)、ストッパ部材47、57の位置は接触の相手側部品との隙間を100分の1ミリ単位で調整する必要がある。そのため、図4に示すロードセル41において、可動部45との隙間が適切な寸法となるようにストッパ部材47を設置する作業は非常に難しい。また、図5に示すロードセル51の場合では、固定部54の溝とストッパ部材57との境界部分において、両者を固定するためのカシメ作業を行うが、その際可動部55の溝に対するストッパ部材57の位置がずれてしまうことが多く、取り付け作業が非常に困難であった。また、特許文献1のロードセルの場合についても、ストッパ同士の隙間が非常に小さくなるように加工する必要があるが、このような加工も非常に困難であった。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、過負荷による破損を防ぐ過負荷防止用のストッパ部材を備えたロードセルであって、ストッパ部材の取り付け作業を精度よく、かつ、容易に行うことができるロードセルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、本発明に係るロードセルは、水平方向に延在する上ビーム部と、該上ビーム部の下方において該上ビーム部に対して平行に延在する下ビーム部と、該上ビーム部及び該下ビーム部の一端同士を連結するとともに、静止体に固定される固定部と、該上ビーム部及び該下ビーム部の他端同士を連結するとともに、鉛直方向の負荷を受けて鉛直方向に変位する可動部と、を備えたロバーバル型のロードセルであって、断面が円形である円柱状のストッパ部材をさらに備え、前記固定部には断面が円形である第1円形孔が形成されており、前記可動部には断面が円形であって、かつ、前記第1円形孔と同心である第2円形孔が形成されており、前記ストッパ部材の基端部分が前記第1円形孔にはめ込まれて固定され、かつ、前記ストッパ部材の先端部分が前記第2円形孔の内面との間に所定幅の隙間が生じるように前記第2円形孔の内側に位置するように形成されている。
【0011】
かかる構成によれば、互いに断面が同心円となるように第1円形孔と第2円形孔を形成し、基端部分が第1円形孔に固定される寸法で、かつ、先端部分が第2円形孔の内面との間に所定幅の隙間が生じるような寸法になるようストッパ部材を形成するといった比較的簡単な加工を行えば、ストッパ部材の基端部分を第1円形孔に挿入するだけで、ストッパ部材を精度良く取り付けすることができる。よって、本発明によれば、ストッパ部材の取り付け作業を精度よく、かつ、容易に行うことができる。
【0012】
また、上記のロードセルにおいて、前記第1円形孔と前記第2円形孔とは同じ内径であり、かつ、前記ストッパ部材の先端部分は基端部分よりも外径が小さくなるように形成されていてもよい。
【0013】
また、上記のロードセルにおいて、前記第1円形孔は前記第2円形孔よりも内径が小さく、かつ、前記ストッパ部材の先端部分は基端部分と同じ外径になるように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ストッパ部材の取り付け作業を精度よく、かつ、容易に行うことができるロードセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロードセルの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るロードセルの製造方法を示した図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るロードセルの製造方法を示した図である。
【図4】一般的なロバーバル型のロードセルの概略を示した図である。
【図5】従来の過負荷防止機構を備えたロードセルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るロードセルの実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
(第1実施形態)
はじめに、本発明の第1実施形態に係るロードセル1について説明する。図1は本実施形態に係るロードセル1の斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係るロードセル1は、ロバーバル型のロードセルであって、上ビーム部2、下ビーム部3、固定部4、及び可動部5から成る矩形状(正確には矩形の板枠状)のロードセル本体6と、ストッパ部材7と、から主に構成されている。以下、各構成について順に説明する。
【0018】
上ビーム部2は、矩形状のロードセル本体6のうち上部に位置し、水平方向に延在する部分である。上ビーム部2の内周面(下面)には、その固定部4側と可動部5側において、上ビーム部2の伸延方向に対して直角の方向に伸延する溝状の切欠部が形成されている。また、上ビーム部2の外周面(上面)のうち上記の切欠部に対応する位置には、ひずみゲージ8が貼着されている。なお、上ビーム部2を含むロードセル本体6、及びストッパ部材7は、例えば、全てアルミニウムを材料としている。ただし、ストッパ部材7の材料をロードセル本体6の材料よりも剛性の高いものにするなど、ストッパ部材7とロードセル本体6とを異なる材料にしてもよい。
【0019】
下ビーム部3は、矩形状のロードセル本体6のうち下部に位置し、水平方向に延在する部分である。また、下ビーム部3は、上ビーム部2と対になるよう上ビーム部2に対して平行に形成されている。下ビーム部3の内周面(上面)は、その固定部4側と可動部5側において、下ビーム部3の伸延方向に対して直角の方向に伸延する溝状の切欠部が形成されている。また、下ビーム部3の外周面(下面)のうち上記の切欠部に対応する位置には、ひずみゲージ8(図2(d)を参照)が貼着されている。
【0020】
固定部4は、矩形状のロードセル本体6のうち一方側の側部に位置し、鉛直方向に延在する部分である。つまり、固定部4は、上ビーム部2と下ビーム部3の一端(紙面左側)同士を連結している。また、固定部4は、その外周面側において、例えば装置の本体など地面に対して変位しない静止体に接して固定される。そのため、ロードセル1に上下方向の負荷が加わったとしても、固定部4が変位することはない。また、固定部4の中央部分には第1円形孔9が形成されている。第1円形孔9は、断面が円形であって、その中心軸が上ビーム部2及び下ビーム部3に対して平行に伸延している。
【0021】
可動部5は、矩形状のロードセル本体6のうち他方側の側部に位置し、鉛直方向に延在している部分である。つまり可動部5は、固定部4に対向するとともに、上ビーム部2と下ビーム部3の他端(紙面右側)同士を連結している。また、可動部5は、その上面、下面、又は外周面に、秤量の対象となる被計量物を載せるための計量台や計量容器などが取り付けられ、鉛直方向に負荷を受けて鉛直方向に変位する。さらに、可動部5の中央部分には第2円形孔10が形成されている。第2円形孔10は、断面が円形であって、その中心軸が第1円形孔9の中心軸と一致しており、また、内径も第1円形孔9の内径と一致している。つまり、第1円形孔9と第2円形孔10は同軸同径に形成されている。
【0022】
ストッパ部材7は、過負荷による破損を防ぐための部材である。ストッパ部材7は、断面が円形である円柱状の形状を有しており、基端部分が他の部分より大径に形成されている。そして、基端部分が第1円形孔9に嵌挿されて固定部4に固定されており、先端部分が第2円形孔10の内側に所定幅の隙間が生じるように配設されている。これは、ストッパ部材7の基端部分が第1円形孔9に挿入されるとその内部で固定されるような寸法に形成され、また、先端部分が第2円形孔10に挿入されるとその内面との間に所定幅の隙間が生じるような寸法に形成されているからである。なお、本実施形態では、ストッパ部材7の先端は可動部5の外周面から外方に突出しないように形成されている。例えば、ストッパ部材7の先端が可動部5の外周面から外方に突出していると、可動部5の外周面に計量台などを取り付ける際には障害になってしまうからである。
【0023】
以上が本実施形態に係るロードセル1の構成である。以上のように、本実施形態に係るロードセル1は、ストッパ部材7の基端部分が第1円形孔9に嵌挿されて固定部4に固定されているとともに、先端部分が第2円形孔10とわずかな隙間が生じるようにその内側に位置している。そのため、上記の隙間の幅だけ可動部5が変位すると、第2円形孔10の内面がストッパ部材7の外面に接触し、可動部5の移動が制限される。よって、ロードセル1に過度な負荷がかかることによるロードセル1(ひずみゲージ8)の破損を防ぐことができる。
【0024】
次に、本実施形態に係るロードセル1の製造工程について説明する。図2は、本実施形態に係るロードセル1の製造工程を示したものである。以下、図2の(a)〜(d)に沿って順に製造工程を説明する。
【0025】
まず、図2(a)に示すように、ストッパ部材7を加工する。具体的には、ストッパ部材7を中心軸で回転させ、バイト等で側面を削る旋盤加工を行う。この旋盤加工では、第1円形孔9に挿入したときにストッパ部材7が固定されるようなはめあいになる寸法(以下、「第1寸法」と称す。)までストッパ部材7全体を切削する。その後、第2円形孔10と所定幅の隙間が生じるような外径寸法になるまで、ストッパ部材7の基端部分以外の部分を切削する。なお、本実施形態では、第1寸法の領域の幅(長さ)は、固定部4の厚み程度になるよう加工している。
【0026】
続いて、図2(b)に示すように、ロードセル本体6を加工する。具体的には、フライス盤を用いて、ドリル等で直方体の材料をくり抜いて、上ビーム部2、下ビーム部3、固定部4、及び可動部5を成形する。ただし、上ビーム部2、下ビーム部3、固定部4、及び可動部5を別々に製造し、ねじを用いてこれらを組み立ててロードセル本体6を形成してもよい。その後、固定部4の外周面側又は可動部5の外周面側からドリルを通し、第1円形孔9と第2円形孔10を同時に加工する。なお、第1円形孔9及び第2円形孔10の内径は、ストッパ部材7の基端部分が挿入されたときにストッパ部材7の基端部分が固定されるような寸法に加工する。これにより、同径同軸である第1円形孔9及び第2円形孔10が同時に形成される。
【0027】
続いて、図2(c)に示すように、ストッパ部材7を固定部4の外周面側からロードセル本体6に挿入していく。具体的には、ストッパ部材7を第1円形孔9へ挿入し、さらに第2円形孔10に向かって挿入していく。ただし、ストッパ部材7の先端部分側から挿入するものとする。ストッパ部材7の先端部分は、その外径が第1円形孔9や第2円形孔10の内径よりもよりも小さいため、ストッパ部材7の先端部分側から挿入すると第1円形孔9及び第2円形孔10から抵抗を受けることなく作業を行えるからである。
【0028】
続いて、図2(d)に示すように、ストッパ部材7をロードセル本体6に固定する。具体的には、図2(c)の状態からストッパ部材7をさらに可動部5側へ挿入する。上記のように、ストッパ部材7の基端部分は、第1円形孔9に圧入して固定されるような寸法に形成されている。そのため、ストッパ部材7の基端部分が第1円形孔9に挿入されると、ストッパ部材7は第1円形孔9に固定される。なお、ストッパ部材7が第1円形孔9から外周面側に突出している場合は、その部分を切断しても良い。ストッパ部材7は、その先端部分が第2円形孔10に一部でも挿入されていれば、ストッパとしての機能を果すからである。そして、最後にひずみゲージ8を所定の位置に貼着すれば、本実施形態に係るロードセル1が完成する。
【0029】
以上が、本実施形態に係るロードセル1の製造工程である。上記のように、第1円形孔9及び第2円形孔10を互いの断面が同心円となるように形成する加工や、ストッパ部材7を所定の外径寸法に仕上げる作業は比較的容易に行うことができる。そして、このように加工されている限り、ストッパ部材7を第1円形孔9にはめ込むだけで、ストッパ部材7の先端部分を第2円形孔10と隙間を生じるようにその内側に配置することができる。なお、このようなストッパ部材7の配置は、断面が円形の孔と円柱の組合せによってはじめて実現できる。なぜなら、断面が円形の孔と円柱の組合せは、断面が矩形の孔と角柱など他の形状の組合せに比べて、両者(孔と柱)の中心軸が高い精度で一致するからである。そのため、断面が円形の孔(本実施形態では第1円形孔9が相当)と同心円の断面形状を有する他の孔(本実施形態では第2円形孔10が相当)についても、円柱(本実施形態ではストッパ部材7が相当)と中心軸が高い精度で一致するのである。よって、本実施形態に係るロードセル1によれば、ストッパ部材7の取り付け作業を精度よく、かつ、容易に行うことができる。
【0030】
なお、ロードセルにかかる力には水平方向の成分が含まれている場合があり、このときロードセルは捻れた状態で上下方向へ変位する。図4や図5に示すような従来のロードセルでは、ロードセルが捻れるとストッパ部材とこれに対向する部材との鉛直方向における隙間(距離)が小さくなる。そのため、上下方向の変位量が少ないにもかかわらずストッパ部材が作用してしまうという現象が生じる。ところが、本実施形態によれば、ストッパ部材7及び第2円形孔10はいずれも断面が円形であるため、ロードセル(ロードセル本体6)が捻れたとしても、ストッパ部材7と第2円形孔10との鉛直方向の隙間(距離)が変化することはない。そのため、ロードセル(ロードセル本体6)が捻れているか否かにかかわらず、常に同じ変位位置でストッパ部材7が作用する。つまり、本実施形態によれば、ロードセルに捻れが生じた場合であっても、ストッパ部材を適切に機能させることができる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るロードセル1について説明する。本実施形態に係るロードセル1は、第1実施形態に係るロードセル1と基本的に同じ構成を備えている。ただし、第1実施形態に係るロードセル1では第1円形孔9と第2円形孔10とは内径が同じであり、ストッパ部材7の基端部分は先端部分よりも外径が大きく形成されていたのに対し、本実施形態に係るロードセル1では、第1円形孔9が第2円形孔10よりも内径が小さく、ストッパ部材7は基端部分と先端部分の外径が同じである点で両者は構成が異なる。つまり、本実施形態に係るストッパ部材7は段のない円柱形状に、また、第1円形孔と第2円形孔の内径は異なるように形成されている。
【0032】
より具体的には、本実施形態に係るストッパ部材7は、円柱の形状を有しており、第1円形孔9に挿入したときにその内部に固定されるような外径寸法に基端から先端まで均一に加工されている。一方、第1円形孔9は、ストッパ部材7が挿入されたときストッパ部材7が固定されるような内径寸法に加工され、第2円形孔10は、ストッパ部材7が挿入されたときストッパ部材7との間に所定幅の隙間が生じるような内径寸法に加工されている。
【0033】
本実施形態に係るロードセル1は以上のような構成を備えているが、この場合であっても、ストッパ部材7の基端部分が第1円形孔に固定されるとともに、先端部分が第2円形孔10とわずかな隙間が生じるようにその内側に位置している。そのため、上記の隙間の幅だけ可動部5が変位すると、第2円形孔10の内面がストッパ部材7の外面に接触し、可動部5の移動が制限される。よって、ロードセル1に過度な負荷がかかることによるロードセル1(ひずみゲージ8)の破損を防ぐことができる。
【0034】
次に、本実施形態に係るロードセル1の製造工程について説明する。図3は、本実施形態に係るロードセル1の製造工程を示したものである。以下、図3の(a)〜(d)に沿って順に製造工程を説明する。
【0035】
まず、図3(a)に示すように、ストッパ部材7を加工する。具体的には、ストッパ部材7を中心軸で回転させ、バイト等で側面を削る旋盤加工を行う。この旋盤加工では、第1円形孔9に挿入したときにストッパ部材が固定されるような寸法になるまでストッパ部材7を切削する。
【0036】
続いて、図3(b)に示すように、ロードセル本体6を加工する。具体的には、フライス盤を用いて、ドリル等で直方体の材料をくり抜いて、上ビーム部2、下ビーム部3、固定部4、及び可動部5を成形する。ただし、上ビーム部2、下ビーム部3、固定部4、及び可動部5を別々に製造し、ねじを用いてこれらを組み立ててロードセル本体6を形成してもよい。その後、固定部4の外周面側又は可動部5の外周面側からドリルを通し、第1円形孔9と第2円形孔10を同時に加工する。さらに、第2円形孔については、ドリルを外径の大きいものに交換して第1円形孔の内径よりも内径が大きくなるように加工する。なお、第1円形孔9の内径は、ストッパ部材7が挿入されたときにストッパ部材7が固定されるような寸法に加工する。また、第2円形孔10は、ストッパ部材7が圧入により挿入された場合に所定幅の隙間が生じるような寸法に加工する。これにより、同軸であるが内径の異なる第1円形孔9及び第2円形孔10がそれぞれ固定部4及び可動部5に形成される。
【0037】
続いて、図3(c)に示すように、ストッパ部材7を可動部5の外周面側からロードセル本体6に挿入していく。具体的には、ストッパ部材7を第2円形孔10へ挿入し、さらに第1円形孔9に向かって挿入していく。ストッパ部材7は、その外径が第2円形孔10の内径よりもよりも小さいため、第1円形孔9に挿入するまでは抵抗無く挿入することができる。
【0038】
続いて、図3(d)に示すように、ストッパ部材7をロードセル本体6に固定する。具体的には、図3(c)の状態からストッパ部材7をさらに固定部4側へ挿入する。上記のように、ストッパ部材7は、第1円形孔9に固定されるような寸法に形成されている。そのため、ストッパ部材7が第1円形孔9に挿入されると、ストッパ部材7は第1円形孔9に固定される。そして、最後にひずみゲージ8を所定の位置に貼着すれば、本実施形態に係るロードセル1が完成する。
【0039】
以上が、本実施形態に係るロードセル1の製造方法である。上記のうように、第1円形孔9及び第2円形孔10を互いの断面が同心円となるように形成する加工や、ストッパ部材7を所定の外径に仕上げる作業は比較的容易に行うことができる。そして、このように加工されている限り、ストッパ部材7を第1円形孔9にはめ込むだけで、ストッパ部材7を第2円形孔10に隙間を生じるようにその内側に配置することができる。よって、本実施形態に係るロードセル1によれば、ストッパ部材7の取り付け作業を精度よく、かつ、容易に行うことができる。
【0040】
以上、本発明に係る第1実施形態及び第2実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、ストッパ部材の取り付け作業を精度よく、かつ、容易に行うことができるロードセルを提供することができる。よって、ロードセルの技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0042】
1 ロードセル
2 上ビーム部
3 下ビーム部
4 固定部
5 可動部
6 ロードセル本体
7 ストッパ部材
8 ひずみゲージ
9 第1円形孔
10 第2円形孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延在する上ビーム部と、
該上ビーム部の下方において該上ビーム部に対して平行に延在する下ビーム部と、
該上ビーム部及び該下ビーム部の一端同士を連結するとともに、静止体に固定される固定部と、
該上ビーム部及び該下ビーム部の他端同士を連結するとともに、鉛直方向の負荷を受けて鉛直方向に変位する可動部と、
を備えたロバーバル型のロードセルであって、
断面が円形である円柱状のストッパ部材をさらに備え、
前記固定部には断面が円形である第1円形孔が形成されており、
前記可動部には断面が円形であって、かつ、前記第1円形孔と同心である第2円形孔が形成されており、
前記ストッパ部材の基端部分が前記第1円形孔にはめ込まれて固定され、かつ、前記ストッパ部材の先端部分が前記第2円形孔の内面との間に所定幅の隙間が生じるように前記第2円形孔の内側に位置するように形成されている、ロードセル。
【請求項2】
前記第1円形孔と前記第2円形孔とは同じ内径であり、かつ、前記ストッパ部材の先端部分は基端部分よりも外径が小さくなるように形成されている、請求項1に記載のロードセル。
【請求項3】
前記第1円形孔は前記第2円形孔よりも内径が小さく、かつ、前記ストッパ部材の先端部分は基端部分と同じ外径になるように形成されている、請求項1に記載のロードセル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate