説明

過酸化水素のその場(insitu)生成

過酸化水素を生成させるための装置(10)が開示されている。本装置は、水の電気分解を使用することで、必要に応じて過酸化水素を生成する。水素と酸素を電気分解装置(14)中にて混合し、水中での水素/酸素混合物を反応器(16)において反応させて過酸化水素を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具(appliances)に使用するための水から直接過酸化水素を生成させるための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、最も広く実施されている工業的規模の過酸化水素生成法は、アルキルアントラキノンを作用物質として使用する、水素と酸素の間接的な反応による方法である。最初の接触水素化工程において、アルキルアントラキノン[有機溶媒(例えば、ジイソブチルカルビノールやメチルナフタレン)を含む作用溶液中に溶解]をアルキルアントラヒドロキノンに転化させる。別の自動酸化工程において、この還元化合物が酸化されてアルキルアントラキノンを再生し、これにより過酸化水素が生成する。引き続き、水性抽出操作、精製操作、および濃縮操作による分離を使用して商業等級の生成物を得る。
【0003】
形成に対するこの間接的ルート(キャリヤー媒体が還元され、次いで酸化される)は、全体としては、複雑さが増し、高い据え付け費と高い運転コストを必要とする。1つの顕著な欠点は、過酸化水素生成物を分離するのに使用される水性抽出媒体に対するアルキルアントラキノンの溶解性がかなり高いという点である。このため作用溶液の損失が助長され、過酸化水素が輸送に適したレベルに濃縮されたときに、過酸化水素と反応しやすい有機化学種による過酸化水素生成物の汚染が引き起こされる。第2の問題点は、アルキルアントラキノン作用溶液に対する水性抽出溶液の溶解性に関するものである。湿潤作用溶液が、間接的な酸化段階へ再循環すべく水性相から分離されると、有機溶液内の残留水性相“ポケット”により、過酸化水素生成物が危険になる程度にまで濃縮される区域がもたらされる。第3の問題点は、少量の過酸化水素が、水性流れ中に有機汚染物を含まない状態で必要とされるときの、有機化合物の使用量と回収に関するものである。
【0004】
アルキルアントラキノンのルートよりはるかに単純で経済的なのが、ガス状水素供給流れとガス状酸素供給流れからの過酸化水素の直接合成である。この方法は、米国特許第4,832,938B1号および他の文献に開示されているが、商業化に向けた試みにおいて、この方法がもつ固有の爆発危険性のために工場災害を引き起こした。すなわち、標準温度と標準圧力での、酸素−水素ガス混合物中における水素の爆発濃度は4.7〜93.9容量%である。従ってこの範囲は極めて広い。
【0005】
さらに、このガス混合物を窒素のような不活性ガスで希釈しても、2種のガスの下限濃度(不活性ガスを含まない場合を基準として)は殆ど変わらない、ということが知られている。圧力変化(1〜200気圧)と温度変化(0〜100℃)の通常範囲内では、爆発範囲は殆ど変わらないことが知られている。さらに、これらの反応物が、可燃性範囲(flammability envelope)の外側である比率で均一な状態にて一緒にされたときでも、純粋な成分から均一性が確立されると、必然的に、可燃性範囲を少なくとも一時的に通過する。これらの理由から、水素と酸素の直接的な接触に付きものの爆発危険性は、簡単には軽減されない。
【0006】
酸素と水素を直接接触させるという技術分野においては、液相での反応を含むよう幾らかの努力もなされた。例えば米国特許第5,925,588B1号は、水性液相にて最適性能を得るように、改質された疎水性/親水性担体を有する触媒を使用することを開示している。さらに、米国特許第6,042,804B1号は、速やかに流れている酸性の水性液体媒体(触媒を含有)中に水素と酸素の微小なバブルを分散させることを開示している。しかしながら残念なことに、水素反応物と酸素反応物は、これら文献に開示されている水性反応溶媒に対してわずかに溶解性があるにすぎない。
【0007】
他の文献、すなわち米国特許第4,336,240B1号と米国特許第4,347,231B1号は、均一系触媒を有機相中に溶解した状態の二相反応系を開示している。これら2つの文献の前者に記載されているように、均一触媒系は一般に、商業的利用に対して妨げとなるような欠点を有する。不利な特性としては、反応条件下での触媒安定性が良くないこと、反応媒体に対する触媒の溶解性が限られていること、および過酸化水素の生成に対する反応速度が低いことなどがある。さらに、二相液体反応系の上のガス状H/O含有環境が、液相中に溶解しているこれらの反応物の平衡濃度を保持する。従って反応液体の上のこのガス状雰囲気は、必ず可燃性範囲の外側でなければならず、このため液相中の可能な反応物モル比の範囲が大幅に制限される。
【0008】
従って、追加の化学薬品を必要とすることなく、また廃棄物流れを生じることなく、従来のやり方で必要に応じて過酸化水素を製造するための装置と方法を提供することが有用である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、器具において使用するための溶液中にて過酸化水素を製造することに関する。本発明は、水入口ポートと過酸化水素出口ポートを有するハウジングを含む。電気分解装置がハウジング内に配置され、水入口ポートの近くに設置される。本発明はさらに、ハウジング内に配置され、そして電気分解装置と過酸化水素出口ポートとの間に配置された反応器を含む。本発明は、必要に応じて過酸化水素を生成し、過酸化水素を貯蔵したり、過酸化水素を直接取り扱ったりする必要性を取り除く。
【0010】
他の実施態様においては、本発明はさらに、酸素を反応器に供給するための酸素入口ポートを含む。酸素入口ポートは、電気分解装置と反応器との間に配置するのが好ましい。
1つの実施態様においては、電気分解装置は、セパレーターによって隔離された複数の電極を含み、このとき電極は、400μm未満の隙間によって(好ましくは約200μmの隙間によって)隔離されている。本発明はさらに反応器を含み、このとき反応器は、水素と酸素を液相中にて反応させて過酸化水素水溶液を形成させるための、担体に担持された適切な触媒を含む。
【0011】
他の実施態様においては、本発明は、入口ポートと出口ポートを有するハウジングを含む。本発明は、入口ポートを通って入ってくる水の一部を分解するための、入口ポートの近くに配置された電気分解装置を含む。電気分解装置は、ハウジング内に入ってくる水が電極上を自由に流れるのを可能にするように配向された複数の電極を含む。本発明は、担持触媒で構成される反応器を含み、このとき触媒は、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、および金から選択される。本発明はさらに、過酸化水素が必要とされるときに電気分解装置に電力を供給するための制御システムを含む。
【0012】
本発明の他の目的、利点、および応用は、下記の本発明の詳細な説明を参照すれば明らかになるであろう。
下記の説明において、幾つかの添付図面における同じ番号は同じ部品を表わしている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の概略図である。
【図2】図2は、一般化された本発明に対する大まかな概略図である。
【図3】図3は、本発明に対する電極配列体である。
【図4】図4は、電気分解装置のための電極の概略図である。
【図5】図5は、好ましい構造における電極配列体である。
【図6】図6は、電気分解装置において使用するための電極設計物である。
【図7】図7は、電極・触媒区域を含むプレート構造物である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
漂白剤が有用であるような多くのアプリケーションがある(例えば、衣類洗浄容器やシンク洗浄容器からの汚れの除去や、殺菌のために漂白剤を使用すること)。従来、個人宅等の環境において漂白剤を使用するには、漂白剤の購入を必要とする。漂白剤を容器中に保存しなければならず、またユーザーは、使用可能な手持ちの量を知っておかなければならない。漂白剤はさらに、殺菌の目的(例えば、生ごみ廃棄物への漂白剤の定期的な施用)に対しても使用することができる。生ごみ廃棄物に対して使用すると、生ごみ廃棄物中に増殖することで不快な臭気を生じる細菌を除去することができる。このような漂白剤の1つが過酸化水素である。しかしながら過酸化水素は、紫外線による分解を防止するために、適切な容器中に保存しなければならない(例えば、褐色のプラスチック容器を使用)。過酸化水素はさらに、時間の経過と共に分解し、かなり長時間にわたって放置されると、溶液は効果がなくなる。
【0015】
本発明は、過酸化水素水溶液を、普通の水道(a water line)に対してインラインにて、あるいは普通の水道に対するパラレル流れとして生成させることを提供する。過酸化水素水溶液は、送水管(a water pipe)に繋げたときに、化学薬品を加える必要なく必要に応じて生成される。本発明は、水道から導かれる水を解離させるための電気分解装置を含む。電気分解装置によって生成されたガス(水素と酸素)が、電気分解装置と流体連通関係にある反応器に送られ、反応器においては、水素を過酸化水素に酸化するための適切な触媒上を水が流れている。図1は、本発明の概略図である。本発明の内蔵型過酸化水素ユニット10は、ハウジング12、電気分解装置14、および過酸化水素反応器16を含む。過酸化水素ユニット10は、水のための入口20と過酸化水素溶液のための出口22を有する。電気分解装置14は、ハウジング12内にて、水のための入口20の近位に位置している。過酸化水素反応器16は、ハウジング12内にて、電気分解装置14と出口22との間に配置されている。電気分解装置14は、図3に示されているような少なくとも2つの電極18を含む。電極18は、電極18上での水の流れを促進するように配向されている。電気分解装置14は、水を水素ガスと酸素ガスに解離させる。水素と酸素が反応器16上を流れる。電極18上を流れる水の中に水素と酸素が溶解し、この水が反応器16上を流れるのが好ましい。水素と酸素が触媒の存在下にて反応して、水相中に過酸化水素が生成する。過酸化水素溶液が出口22から流れ出て、用意されていたように利用される。個別の配置構成は異なってもよいけれども、配向は、装置を通過する水の流路が水入口20を介して流入し、電気分解装置14の電極18上を流れ、反応器16を通って出口22から出る、というような配向である。追加の酸素(通常は空気の形態)が必要な場合は、任意の独立した空気入口26を介して反応器16に送ることができる。空気入口26は、電気分解装置14と反応器16との間に配置するのが好ましい。
【0016】
出口22は、過酸化水素溶液を求められる行き先に送る任意の適切な導管に接続することができる。漂白する、消毒する、洗浄する、殺菌する、あるいは化学処理を施すために簡便な酸化剤を供給するという目的に対して必要になったときに、過酸化水素を即座に生成させることが有用である。本発明は、保存や廃棄物処理に関連した問題を起こすことなく、過酸化水素を必要に応じて速やかに生成させること、および過酸化水素を求められる行き先に送ることを可能にする。求められる行き先として、漂白剤、防腐剤、または殺菌剤として使用するための過酸化水素溶液を、漂白剤もしくは殺菌剤を使用する装置に向けて送ってよい。求められる行き先としては、洗濯機、食器洗い機、温泉場、プール、ホットタブ、蛇口、生ごみ処理機、エアコン、冷蔵庫、冷凍器、加湿器、除湿器、トイレ、男子用便器、およびビデなどがあるが、これらに限定されない。本発明の装置はさらに、農機具や農業機械(例えば、搾乳器や食品加工装置)と共に使用することもできる。これにより、細菌やかびの増殖が予想される場合に、装置を定期的に殺菌することが可能となる。
【0017】
他の実施態様においては、本発明の一般的な配置構成を図2に示す。過酸化水素ユニット10は、電気分解装置14、水素/酸素混合物をつくり出すための任意のミキサー19、および過酸化水素反応器16を含む。ユニット10は、水のための入口20を有する。入口20は2つの導管28と30に分かれ、一方の導管28が水を電気分解装置14に送り、他方の導管30が水を反応器16に送る。電気分解装置14が、水素と酸素をガスとして生成する。電気分解装置14は、水素のための導管32と酸素のための導管34を有し、これらが水素と酸素をミキサー19に送る。ミキサー19は、水素と酸素のための入口ポートを含む。水素導管32は水素入口ポートと流体連通関係にあり、酸素導管34は酸素入口ポートと流体連通関係にある。必要に応じて、ミキサー19は、水素と酸素に酸素を加えてミキサー19中における水素に対する酸素の比率を増大させるための、少なくとも1つの入口ポート36を含む。入口ポート36は、必要に応じて、図2に示すように酸素導管34において存在してもよいし、あるいはミキサー19に対する追加の入口ポート(図示せず)であってもよい。これとは別に、酸素のための入口ポートは、水素に対する酸素の比率の増大を達成するために、空気のための入口ポートとしても使用することができる。ミキサー19は、反応器16と流体連通関係にある出口ポート40を含む。出口ポート40は、水素/酸素混合物を反応器16に移送する。反応器16は、過酸化水素溶液を求められる行き先に送るための、生成物導管22と流体連通関係にある生成物出口ポートを含む。または、ユニット10は、電気分解装置14から生成される水素の一部を別の行き先(例えば、熱を発生させるための燃焼器)に向けるための導管42を含む。酸素(または空気)のための入口ポート38は、必要に応じて、追加の酸素(または空気)をミキサー19より下流の反応器16に移送することができる。入口ポート38は、図に示すように水素/酸素混合物を移送する導管に入ってもよいし、あるいは反応器16の入口側に存在してもよい。
【0018】
電気分解装置
電気分解装置は、普通の水道水を使用して、エネルギーを加えることで水道水の一部を水素ガスと酸素ガスに転化させるための簡便な装置である。好ましい実施態様は、電力を使用する電気分解装置を含む。電気分解装置を使用することは、反応物、水素、および酸素を必要に応じて生成させるための簡便な方法である。他の化学薬品を供給したり、あるいは反応物を貯蔵したりする必要はなく、従って生成される過酸化水素で、廃棄されるような過酸化水素もない。
【0019】
水を分解するのに電気分解装置を使用することは、水素を生成させる上でのクリーンな方法である。水の標準自由エネルギー、標準エンタルピー、および標準エントロピーはそれぞれ、G=237.19kJ/モル(56.69kcal/モル)、H=285.85kJ/モル(68.32kcal/モル)、およびS=70.08J/(モル・K)(16.72cal/(モル・K))である。自由エネルギーに対する値は、1.23Vの起電力と同等であり、この値は、標準温度と標準圧力の条件にて進行する反応を得るのに必要とされる最小電圧である。反応を進行させるのに必要とされる全エネルギーがエンタルピーであり、電気エネルギーと熱との組み合わせであってよい。G=H−T・Sであって、Sはポジティブであるので、必要とされる電気的仕事(G)は、より高い温度で操作することによって少なくすることができる。これは、動作温度の上昇による電気エネルギーから熱へのエネルギー負荷の移動である。一般には、熱を発生させるほうが電気より低コストであるので、このことは望ましいことである。
【0020】
電気分解装置はセルを有し、セルの中に水が入れられる。セル内に異なった極性を有する2つの電極があり、電流が、セル内の水を通って一方の電極から他方の電極に流れることができる。電流がセルを通過すると水が分解され、一方の電極に水素が、そして他方の電極に酸素が発生する。電気分解装置は、3つのタイプの方法[すなわち、水性アルカリシステム;固体ポリマー電解質(SPE);または700℃〜1000℃の範囲の温度での高温スチーム電気分解]の1つを使用することができる。しかしながら、水素と酸素を分離する必要がない方法の場合、電気分解装置は、単に水中における電極を必要とするだけである。
【0021】
水性アルカリシステムは従来の方法であり、セルを通る導電性を向上させるために、水にイオン性化合物を加える。水性電解質システムは、一般には、電極にて生成するブロッキングガス(blocking gas)を除いた液相に対して多孔性のバリヤーを使用し、このバリヤーが、酸素ガスと水素ガスを別々に捕集することを可能にし、混ざり合いを防止する。電気分解装置は、タンク型であっても、あるいはフィルタープレス型であってもよい。タンク型は、並列に接続された複数の個別セルを有する。これにより、低電圧を使用する1つの電源を使用することが可能となる。必要な電流はセルの数に比例し、従って変圧器と整流器は所定の大きさに作製される。フィルタープレス型は、直列に接続された複数のセルを有する。これはバイポーラ配列と呼ばれ、必要とされる電圧は、ユニットに対するセルの数に比例する。ユニットは、100kPa(0psig)〜600kPa(72.4psig)の圧力で運転される。高めの圧力で運転することでより小さなラインにすることが可能となり、また高めの圧力での運転が、ガスを圧縮する効率的な方法である。電気分解装置は、0℃〜60℃(好ましくは25℃〜40℃)の温度で運転される。水を加熱すると、電気分解装置の所要電力の一部が減少する。セルにおいて使用される代表的なイオン性化合物は水酸化カリウム(KOH)である。
【0022】
別の電気分解装置は、セルを通る導電性を向上させるのに固体ポリマー電解質(SPE)を使用する。電気分解装置に使用できる固体ポリマー電解質の1つの例はポリスルホン化フルオロイオノマーである。ポリスルホン化フルオロイオノマーは市販されており、例えば、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン社によってNAFION(商標)が製造されている。SPEをポリマーシートの形で使用する電気分解装置は、ポリマーシートと電気的に接触している電極を有する。陽極において水素イオン(H)が生成され、これがSPEを通って陰極に移動してHを生成する。ヒドロキシルイオン(OH)は、陽極において酸素を生成する。これらのユニットは内部抵抗が低く、水性アルカリユニットより高い温度で運転することができる。
【0023】
代表的な直流電気分解装置の場合、電極は、異なった発生ガスを別個の受け入れ装置に送るように隔離されている。ガスが捕集され、それぞれのガスがミキサーに別々に送られ、そこで混合されて、触媒と接触すると反応する安定な混合物を形成する。それぞれのガスが、少なくとも1つの入口ポートにてミキサーに入り、そこでガスが混合され、この混合物が、導管供給端(conduit supply end)と流体連通関係にある出口ポートに送られる。空気からの追加酸素を加えることによって、あるいは別の用途向けの水素の一部を流用することによって、適切な比率の酸素/水素が作製される。
【0024】
その後の反応のために水を分解する理由は、水素を、必要に応じて比較的少量にて生成させるのに、電気分解が安全且つ簡便な方法である、ということにある。次いで水素と酸素を反応させて、水中に過酸化水素を生成させる(このとき他の生成物は生じない)。しかしながら、電気分解装置からの水素と酸素を取り扱う現在の方法は、これらのガスが混ざり合うと、高度に可燃性の混合物を形成するので、これらのガスを別個に保持するというものである。
【0025】
水素と酸素との混合物を取り扱う場合、混合物を取り扱う方法は通常、希釈剤(例えば、スチームや不活性ガス)を使用すること、また燃焼範囲(combustion envelope)の外側に移動するために、水素もしくは酸素との混合物を大過剰にて使用することを必然的に伴う。このことはしばしば、水素と酸素とを反応させて過酸化水素を形成させる場合に、最適からは程遠い条件をつくり出す。
【0026】
水素と酸素からの直接的な過酸化水素生成は、混合物の組成が燃焼範囲内であるときに最も効率的になされる。しかしながら、混合物が充分に小さい限定されたスペースにあるときは、燃焼反応における開始反応と生長反応が抑制される、ということが見出された。実験は、安全性に対するファクターを定量化するように行った。内部体積が大きい場合、すなわち、500μmより大きい特性長(a characteristic length)を有する体積の場合、操作は危険であり、水素と酸素との燃焼反応は、開始すると制御不能であった。水素と酸素との間の燃焼反応は、いったん開始されると、大きな体積(不活性物質を充填した大きな体積を含めて)に対しても制御不能であった。実験室装置の赤外線画像を使用することによって、反応をある程度モニターした(温度上昇が急激であるということは、燃焼反応が起きていることを示す)。
【0027】
500μmの管(tubing)を使用して実験プロセスを実施し、比較的安全ではあるものの、制御は難しいことがわかった。安全性に影響を及ぼすファクターは、開始反応と生長反応を抑制する内部冷却水を使用することを含んだ。100μmのより小さな管を使用すると、本プロセスは極めて安全であり、容易に制御されることがわかった。
【0028】
物理的実験のほかに、幾つかの数値シミュレーションを行った。水素と酸素の燃焼の開始反応と生長反応を、600μm、500μm、および450μmの特性幅(characteristic widths)を有するチャンネルに関して調べた。500μmと600μmのチャンネルに関しては、反応が開始されると、生長反応が遅くなることがわかった。450μmのチャンネルを使用した数値実験に対する結果によれば、反応が開始されたときに全く生長を示さなかった。
【0029】
特定の理論で拘束されるつもりはないが、水素/酸素混合物のある体積に対する臨界寸法は、この混合物を含む反応の安全な操作のためには450μm〜500μmであると考えられる。サイジングに関する考察(sizing consideration)は、サイズを臨界値未満に保持することである。このことは、先行技術では証明されていない。管とミキシングチャンバーの寸法が500μm(0.5mm)より大きく、さらに一般的には1mmのオーダー(これは危険な操作形態である)だからである。
【0030】
好ましい実施態様においては、水素と酸素が生成されたときに、これらを分離する必要がない。電気分解装置は、ハウジング12内に配置された電極18の少なくとも2つであってよい。電極18はガスを生成させることができ、そして電極18間の間隔が450μm未満の隙間であれば(200μm〜400μmの隙間であるのが好ましい)、水素と酸素が混ざり合って混合物を形成することを可能にする。電極18間の隙間は、電極18間にスペーサー44を配置することによって設けることができる。
【0031】
スペーサー44は、円形、正方形、または長方形の断面を有する、長くて薄い構造の物体(例えばワイヤ)であるのが好ましい。電極18は、第1の寸法(すなわち長さ)、第2の寸法(すなわち幅)、および第3の寸法(すなわち厚さ)を有するプレート状の構造物である。説明を分かりやすくするため、電極は、長さが、プレート上にて水の流れ方向になっていて、幅が、流れ方向に対して横断の方向になっているように配向されている。スペーサーは、電極の長さ以上の長さと、約450μm未満(好ましくは200〜400μm)の厚さを有し、このとき厚さはプレート間の隙間をつくり出すスペーサーの寸法である。
【0032】
スペーサーは、セラミックやプラスチックを含めた任意の非導電性材料で作製することができる。電極配列に対する1つの実施態様を図3に示す。スペーサー44は、プレート状構造を有する電極18間にサンドイッチ状にはさまれている。スペーサー44は、隣接した電極18間に、電極18の長さにそって配置されている。スペーサー44は、電極18間にチャンネルを形成する。電極18とスペーサー44を含む構造物を作製する1つの方法は、450μm未満の厚さおよび電極18の長さより大きい長さを有する非導電性材料(例えばプラスチック)のシートを形成させることである。電極の長さ以上の長さを有する非導電性のスペーサーシートに、200μm〜2mmの幅を有するスリットをカットする。スペーサー44間の間隔またはスリットの幅は、幾何学的形状に大きく依存する。スペーサー44は、電極18の短絡を防止しなければならない。板状電極の場合、スリットの幅は大きくてよいが、らせん構造もしくは円筒構造の電極の場合、スリットの幅は小さくて、らせん形の半径が増大するにつれて変わる。例えばスペーサーは、一対のらせん巻き電極に対するマンドレルの近くにより近く存在し、このとき電極が半径を増大しつつ巻かれるので、隣接したスペーサー間の距離はより大きくなる。スペーサー44は、押出や予備形成形状での成形を含めた当業界に公知の方法を使用して作製することができる。
【0033】
電極18とスペーサーのために使用される非導電性材料のシートが、スリットの端部が電極18の少なくとも端部に延びている状態にて交互に連続して積み重ねられ、これによりスペーサー44と電極とが交互に存在する層状構造物がつくり出され、このとき電極18の長さに沿って、スペーサー44間にチャンネルがつくり出される。
【0034】
これとは別に、図4のような電極18のスタックを作製する代わりに、図5に示すように、スペーサー44を電極の隔離を保持するように使用して、コイル形状に巻くこともできる。一対の電極シート18がコイルに作製されるとき、スペーサー44が、電極18の間にて、電極18の外側面の1つに沿って配置される。マンドレル46が電極18のエッジに取り付けられている。マンドレル46は、任意の非導電性材料から作製することができる。電極18がマンドレル46の周りに巻きつけられ、実質的に円筒形の物体が形成される。各電極18は、電源に接続するための導線を有する。他の態様(図示せず)においては、電極18が、増大する直径を有する複数の同心管を含む。これにより、各対の管の間の隙間が400μm未満である一組の入れ子構造の管(nested tubes)が得られる。
【0035】
水の分解は、全電極に対して行われるのが好ましい。電場は、電極上のシャープな先端もしくはシャープな箇所にて電場のラインを集束させる。1つの実施態様においては、電気分解装置が織り目加工された表面を有する電極を含み、このとき織り目加工された表面は、局在化されたピーク(localized peak)が分散されている。局在化されたピークは、ガスをより速やかに液相に移送するより小さな泡を供給する。このような織り目加工電極の1つの例を図6に示す。ここでは電極が、ピーク62を有するピラミッド形状60の配列を含む。局在化ピーク62は、標準的な幾何学的形状物(例えば、円錐形状物、ピラミッド形状物、および角柱形状物などがあるが、これらに限定されない)を使用して作製することができる。水は、ピーク62において優先的に分解され、微小な気泡が生成される。さらに、これらの形状物により、電極18上を流れている水中への気泡のより容易な脱離が可能となる。これにより、より小さな気泡、およびガスの水中へのより速やかな溶解がもたらされる。
【0036】
反応させようとするガスの体積は、電気分解装置に供給する電力の量によって簡単に制御される。電気分解装置の詳細は、米国特許第6,036,827号(該特許の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載のように、当業界によく知られている。電気分解装置に供給する電力は、0.01mg/分〜10g/分の割合で水を解離させるのに充分な量である。電気分解装置によって使用される電力量に上限を設けるために、必要に応じて、電気分解装置中に制御システム(電気分解装置に対する電源を切るためのヒューズなどがあるが、これに限定されない)が組み込まれる。
【0037】
電気分解装置において使用される水が硬水供給源からのものであるとき、最初に水を軟水にする必要がある。硬度(特に、鉄イオン含量)は、電気分解装置の運転に対して悪影響を及ぼす。
【0038】
ミキサー
電気分解装置からのガスは、必要に応じて、ミキサーにて混合される。ミキサーは、第1の流体流れを受け入れるための第1の供給管受け入れ端部と、前記受け入れ端部に対向する排出端部とを有する、少なくとも1つの第1の供給管;第2の流体流れを受け入れるための第2の供給管受け入れ端部と、前記受け入れ端部に対向する排出端部とを有する、少なくとも1つの第2の供給管;第1と第2の供給管排出端部と流体連通関係にあるミキシングチャンバー;および、第1と第2の流体流れの混合流れをミキシングチャンバーから排出するためのミキシングチャンバー出口;を有する。ミキサーの好ましい実施態様においては、ミキサーのミキシングチャンバーが、複数の第1の供給管排出端部と流体連通関係にあり、そして複数の第2の供給管排出端部と流体連通関係にある。複数の第1と第2の供給管排出端部は、ミキシングチャンバー上に、互いにかみ合ったパターンにて配列されている。これにより、ミキシングチャンバーに入るとガスの層状化がなされ、チャンバー内での速やかな拡散混合がなされる。
【0039】
ミキサーは、ガスを混合するためのミキサーであればいかなるタイプのものであってもよい。しかしながら、ミキサーに対する制約条件は、ミキシングチャンバーとチャンネルを、水素と酸素の混合物の体積を安定に保持する、すなわち、体積をセルの大きさ(このとき水素と酸素との燃焼反応の開始と生長が起こる)未満の体積に保持するようなサイズにする必要がある、というものである。上記ミキサーの好ましい実施態様においては、供給管の排出端部が0.02cm未満の内径を有し、ミキシングチャンバーが0.02cm未満の内径を有する。
【0040】
他の可能なミキサー設計物は充填層を含む。本ミキサーは、ミキシングチャンバーと流体連通関係にある複数の供給管排出端部を有する。ミキシングチャンバーは、0.02cm未満のチャンネル直径を有する一連の相互に絡み合ったチャンネルをもたらす、不活性物質の充填層である。
【0041】
1つの可能なミキサー設計物は、米国特許第6,655,829B1号(該特許の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載のミキシングユニットを含む。ミキシングユニットは、ミキシングチャンバーの周囲に配置された複数の供給管を有するミキシングチャンバー含む。供給管は、確定した流量にて導入された特定の流体が、同心円状に内側に向かって流れる流体らせんを形成するような仕方でミキシングチャンバー中に向かって開く。こうした渦形成が、ミキシングチャンバー内の流体滞留時間を大幅に増大し、これによりミキシング特性が改良される。所望のらせん流路と内向き流路の確立は、主として、ミキシングチャンバー中への流体導入の角度と流体の運動エネルギーとの関数である。放射状に導入される、あるいは円筒状ミキシングチャンバーの場合には、その中心に向かって直接導入される流体は、接線方向に充分な運動エネルギーを有する他の流体によって作用を受けない場合は、らせん流路を想定しない。本発明のミキサーは、混合すべき第1と第2の流体を接線方向と半径方向に導入することによって、ひときわ優れた混合を達成する。1つの実施態様においては、接線方向の流体運動エネルギー成分は、効果的な混合を可能にするのに充分な数の巻きを有する全体的ならせん流れパターンを想定するように、放射状流れ成分を曲げるのに充分な大きさである。ある流体が接線方向に、そして別の流体が半径方向に導入されるので、接線方向に流れる流体の流体運動エネルギーと、半径方向に流れる流体の流体運動エネルギーとの比は、所望のらせん・内向き流れパターンをもたらすように約0.5より大きい。供給管は、ガス混合物中の水素に対する酸素の比を調節するために、混合物に空気を加えるための追加の管を含んでよい。ミキシングチャンバーは、内径が約0.02cm未満になるように造られる。
【0042】
反応器
1つの実施態様においては、本発明の反応器16はトリクル床反応器である。トリクル床反応器は、水素と酸素を反応器に導入するための少なくとも1つの入口ポートを含む。水を反応器に導入するための入口ポートを設けることもできるし、あるいはこれとは別に、水を反応器に導入するための別の入口ポートを設けることもできる。トリクル床反応器は、触媒を担体物質上に保持するためのチャンバー(触媒床と呼ばれる)を含む。反応器においては、充分な体積を有する触媒床上を水が流れて、触媒の表面上に液体層を形成する。水素と酸素が反応器を流れ、水性相中に溶解する。溶液中の水素が触媒床の表面上で酸化されて、水性相中に過酸化水素を形成する。過酸化水素の水溶液が、出口ポートを通って反応器16を出る。出口ポートは、過酸化水素溶液を所望の行き先に向けて送るための導管34と流体連通関係にある。所望の行き先は、前述したとおりである。反応器は、約5モル%未満の過酸化水素溶液を生成するような大きさに造られる。
【0043】
1つの実施態様においては、触媒は少なくとも1種の触媒金属を含む。触媒金属は、水素の過酸化水素への酸化を行うのに適切な任意の金属である。触媒用に適切な金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、金(Au)、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。触媒金属は、白金、パラジウム、およびこれらの混合物から選択するのが好ましい。触媒は、上記金属の少なくとも1種を含みつつ、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される促進剤金属をさらに含んでよい。
【0044】
触媒金属は、担体上に堆積させるのが好ましい。担体は、水素の酸化を果たすために、湿潤可能な充分に大きい表面積をもたらす、任意の不活性多孔質材料である。担体用に適した材料としては、カーボン、活性炭の形態のカーボン、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素、シリカ−アルミナ、珪藻土、クレー、モレキュラーシーブ、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。触媒は、当業者に公知の方法によって担体上に堆積される。代表的な方法としては、化学蒸着法や含浸法などがあり、当業界によく知られている。触媒用に適したモレキュラーシーブとしては、アルミナに対するシリカの比が6であるH−ZSM−5やアルミナに対するシリカの比が3.25であるH−ferrierite等のゼオライトがある。好ましい担体はカーボンである。担体は、例えば、押出物、球体、および丸剤等を含めたさまざまな形状にて作製することができ、当業界に公知の方法によって作製される。
【0045】
カーボン担体の場合、触媒床は、多孔質のカーボン担体をつくり出すことによって作製され、カーボン担体は、重質炭化水素やポリマー等の熱分解によってつくり出すことができる。金属触媒は、当業界に公知の方法によってカーボン担体上に堆積される。代表的な方法は化学蒸着法や含浸法であり、当業界によく知られている。
【0046】
シリカもしくは無機金属酸化物の担体上にPt金属および/またはPd金属を含む触媒の場合、触媒は、コロイド状担体物質とPt金属および/またはPd金属の化合物との混合物を噴霧乾燥することによって作製される。PtとPdの両方が存在する場合、Pt:Pdの好ましい原子比は0.01〜0.1であり、さらに好ましい比は約0.05である。
【0047】
他の実施態様においては、触媒金属をシート材料上に堆積させるか、あるいは触媒金属を担体(例えばモレキュラーシーブ)上に堆積させて、この触媒金属と担体をシート上に堆積させる。シート用に適した材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(TEFLON)(商標)としても知られている)、テフロン関連ポリマー、またはこれらの混合物等のポリマーがあるが、これらに限定されない。反応器は、複数のシートを、スペーサーがシートを隔離しているスタック状態にて含む。シート間のスペーサーによってもたらされる隙間は400μm未満であるのが好ましい。必要に応じて、シートは、シートのセクション間の隙間をつくり出すために、スペーサーと共にらせん巻きにて巻かれる。シートはさらに、入れ子式の同心管状構造物としても作製することができ、このときスペーサーが隣接管の間の隙間を形成する。これとは別に、スペーサー用に使用される材料は、電極間のイオンの移動を可能にするよう穿孔されている波形構造物であってよい。例えば、穿孔のサイズと分配は、流体の流れや構成上の考慮等の基準に基づいて選択される。
【0048】
他の実施態様においては、触媒金属を、繊維で構成される多孔質マトリックス上に堆積させるか、あるいは触媒金属を担体上に堆積させて、この触媒金属と担体を多孔質マトリックス上に堆積させる。多孔質マトリックスは、多孔質マットまたは繊維で構成される多孔質マットの層である。繊維は、天然物質またはプラスチック等の人工物質から作製される。適切な物質としては、セルロース繊維、セルロースアセテート、ナイロン、ポリエステル、コットン、天然繊維材料、プラスチック(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)から製造される繊維、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0049】
他の実施態様においては、反応器が固定床反応器であって、このとき固定床が触媒を上記のように含む。固定床反応器に水を充填し、反応器に水素ガスと酸素ガスを吹き込む。ガスを混合して、水中に溶解させるのが好ましい。水性相中にて水素を酸素化することで、過酸化水素溶液が形成される。反応器出口ポートを介して、溶液を反応器から取り出す。
【0050】
反応器設計物は、ガス混合物が水の流れとほぼ同じ方向に流れるという、トリクル床におけるような並流反応器であってもよいし、あるいは反応器設計物は、ガス混合物が、水流れの下方流れに逆らって上向きに泡立つという逆流反応器であってもよい。
【0051】
本発明の1つの好ましい実施態様は少なくとも2つのプレートを含み、このとき各プレートが、電極と触媒で被覆された支持体を含む。このようなプレート48の例を図7に示す。プレート48は、剛性材料であっても、柔軟性材料であってもよい。プレート48は、電極区域18;電気絶縁性区域50;および触媒区域52;の3つの区域で構成される。
【0052】
1つの実施態様においては、プレート48が非導電性の支持体を含んでいて、支持体が電極区域18のための前面と裏面を有し;導電性材料が前面と裏面上に堆積されており;電気絶縁性区域50が未処理のままであり;そして触媒区域52が触媒で被覆されている。
【0053】
電気分解装置14と反応器16は、スペーサー44によってプレート48を隔離した状態で、複数のプレート48を積み重ねることによって作製される。スペーサー44は、プレートを100μm〜400μmの隙間で隔離するような大きさに造られ、電気分解装置14から反応器16までチャンネルをもたらすように配向される。
【0054】
または、電気分解装置14と反応器16は2つのプレート48で構成される。プレート48を、スペーサー44をプレート48の1つの外側面に沿って配置した状態で、スペーサー44によって隔離する。マンドレル46を、電極区域18から触媒区域52まで延びているプレート48のエッジの1つに沿って取り付ける。マンドレル46の周りにプレート48を巻きつけて、電気分解装置の電極18と反応器16とを含み、水が電極18から反応器16へと流れるためのチャンネルを有する、ほぼ円筒形の物体を形成する。
【0055】
他の反応器代替物は、非固定床反応器(non−fixed bed reactors)を含む。非固定床反応器の例としては、連続式プロセスまたはバッチ式プロセスを使用する攪拌タンク反応器がある。攪拌タンク反応器は、水を反応チャンバーに導入するための、反応チャンバーと流体連通関係にある水入口ポートを含む。反応チャンバーは、担持触媒を、水溶液と担持触媒を含むスラリーにて収容するためのリザーバーを含む。インペラーを使用してスラリーを攪拌混合し、溶液と触媒との混合状態を良好に保持する。ガスをチャンバーに導入するためのガス入り口ポートは、チャンバーと流体連通関係にある。ガス入り口ポートは、小さい気泡の分散をつくり出すためのスパージャーを介して、あるいはガスを溶液中に分散させるための他の任意の適切なメカニズムを介して、ガス混合物を溶液中に強制的に送り込むことができる。過酸化水素の水溶液を、生成物出口ポートを介して反応チャンバーから取り出す。攪拌タンク反応器は、固体触媒粒子をフィルターにかけるための、そして固体粒子が生成物溶液と共に反応チャンバーから掃き出されるのを防ぐための、生成物出口ポートを横切って配置されるスクリーンを含む。これとは別の設計物は、固体触媒粒子を溶液から分離するための、そして触媒粒子を反応チャンバー中に再注入するための分離ユニットを含むことができる。
【0056】
触媒を作製する別の方法は、金属化合物の濃縮溶液とシリカとを混合することによってペーストを形成させるという方法である。ペーストを濾過し、シリカ担持触媒のゆっくりした結晶化を可能にするような条件下にて乾燥する。これらの条件は、250℃〜400℃における水素雰囲気下での還元性環境を含む。臭化物化合物を2mg/リットル〜20mg/リットルの濃度にて、そして臭素を0.05〜2重量%の濃度にて含有する酸性溶液でペーストを処理し、そしてペーストを10℃〜80℃の温度で処理する。引き続きペーストを濾過し、100℃〜140℃の温度で乾燥する。
【0057】
好ましい実施態様においては、装置10は、電気分解装置14と、ミキサー19なしの反応器16を含む。電気分解装置14の好ましい設計により、水溶液を反応器の触媒上に通す前に、水中への水素と酸素の混合と溶解を提供し、ミキサー19が必要なくなり、そして装置10の構築コストを下げることが可能となる。
【0058】
本発明は、反応器16の下流に配置されたセンサーを必要に応じてさらに含む。センサーは過酸化水素の存在を検出し、電気分解装置14に供給する電力を制御するためのフィードバックをもたらす。可能性のあるセンサーは、分光学的方法(例えば、紫外線分光法や赤外線分光法)および電位差測定法を含む。過酸化水素を検出するためのセンサーは当業界に公知である(例えば、米国特許第6,129,831号(該特許を参照により本明細書に含める)に記載されている)。
【0059】
現時点において好ましいと考えられる実施態様に関して本発明を説明してきたが、理解しておかなければならないことは、本発明は、開示されている実施態様に限定されず、特許請求の範囲の範囲に含まれる種々の改良形や同等の集成体を含むよう意図されている、という点である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を入れるための水入口ポート(20)と過酸化水素出口ポート(22)とを有するハウジング;
ハウジング内に配置されていて、水入口ポート(20)と流体連通状態にある、水素と酸素を発生させるための電気分解装置(14)(ここで、前記電気分解装置(14)が、スペーサー(44)によって隔離された複数の電極(18)を含み、前記スペーサーが、電極の長さに沿ってチャンネルを形成し、そして前記スペーサーが、100μm〜450μmの隙間を形成するよう電極を分離する);および
ハウジング内にて、電気分解装置(14)と出口ポート(22)との間に配置された、過酸化水素を生成させるための反応器(16)(ここで、水が水入口ポート(20)において流入し、電気分解装置を通って反応器に進み、出口ポートから出ていく);
を含む、過酸化水素をその場で生成させるための装置。
【請求項2】
電気分解装置(14)と反応器(16)との間に配置された酸素入口ポートをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
電気分解装置(14)から反応器(16)へと流れる水に酸素を分散させるための、酸素入口ポートと流体連通状態にあるスパージャーをさらに含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
水素の一部を電気分解装置(14)から離れるよう誘導するための、電気分解装置(14)と流体連通状態にある水素出口ポートをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
電気分解装置(14)と反応器(16)との間に配置された電気的に絶縁するセパレーターをさらに含む、請求項1〜4にいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
電気分解装置(14)が、シートとして形成され、らせん構造に巻かれ、そしてほぼ円筒形を形成する一対の電極(18)を含み、スペーサー(44)が電極(18)間の隙間を保持する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
電極(18)が局在化されたピークを有する材料のシートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
反応器が、触媒と触媒が担持されている担体を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
担体が、プラスチック、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、カーボン、炭化ケイ素、シリカ−アルミナ、珪藻土、モレキュラーシーブ、およびこれらの混合物からなる群から選択される多孔性物質を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
触媒が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、金、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−538267(P2009−538267A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512242(P2009−512242)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/069348
【国際公開番号】WO2007/140158
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】