説明

道路上の温度測定・管理方法、観測機器の設置方法、道路上の温度推定方法および道路上の温度予測方法

【課題】冬期道路の道路管理に必要な線としての路面情報をリアルタイムで、効率よく測定・収集して道路上の温度を管理する。
【解決手段】道路上の予め定められた定点の観測位置A,B,C,・・・に第1温度計5を備えた支柱3を立設せしめ、第2温度計7を備えた移動車15を定点の観測位置から道路上を走行させる。予め定められた間隔毎の移動位置において、日時を変えて予め定められたn回数毎に第1温度計5による道路上の定点温度(x,x,・・・x)と移動温度(y,y,・・・y)をそれぞれ測定し、これらの測定した温度データから相関係数rと各定点温度(x,x,・・・x)の分散Sと各移動温度(y,y,・・・y)の分散Sと共分散Sxyとの相関関係式(r=Sxy/S)により各地点における相関係数rのr値並びに相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを連続して求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば冬期道路の道路管理に必要な線としての路面情報(路面表面温度、気温、路面状態等)をリアルタイムで、効率よく測定・収集して道路上の温度を管理する道路上の温度測定・管理方法と、道路上の温度を管理するための観測機器の設置方法と、予め定めた間隔毎の各地点の道路上の温度を推定する道路上の温度推定方法と、得られる気象情報を利用して予め定めた間隔毎の各地点の道路上の温度を予測する道路上の温度予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば路線の温度を推定する方法には、一般には統計方法が多く用いられている。そのため、精度の向上には数多くのデータが必要になる。これらのデータを収集する方法としては、自動車などの観測車に温度計等を搭載し、多くの労力と時間、費用を費やして対応しているが、データ量が不足し、精度の向上が期待できないものであった。
【0003】
これに対処するために、従来では、特許文献1に示されているように、路面を観察して路面の状況を判断する路面状況センサと、路面温度を測定する路面温度計と、路面の塩分濃度を測定する塩分温度計と、観測車が観測している地点を特定する位置検出手段と、前記各機器を制御する制御部と、を移動自在の観測車に備えている路面情報移動収集システムが開発されている。
【特許文献1】特許第2972173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の特許文献1の方法においては、主として路面凍結防止を行うために、観測車に搭載した路面状況センサ、路面温度計等で路面の状況を把握し、この路面状況のデータと観測地点におけるGPVに基づいて、その観測地点における路面凍結の恐れがあるか否かを判断し、路面凍結の恐れがある場合は凍結防止剤を散布するために使用されている。所謂、道路上における点的な温度の情報処理システムが主たる目的であった。したがって、リアルタイムに道路上で線的に路面温度を高精度に把握したり、さらにはリアルタイムに道路上で線的に路面温度を高精度に予測したりするまでには至っていないものであった。
【0005】
実際、リアルタイムに道路上で線的に路面温度を高精度に把握したり、予測したりするには、より一層、数多くのデータが必要になるが、従来の方法では例えば冬期道路の道路管理に必要な線としての路面情報(路面表面温度、気温、路面状態等)をリアルタイムで、効率よく収集して路面温度を管理するには十分ではないという問題点があった。
【0006】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の道路上の温度測定・管理方法は、道路上の予め定められた定点の観測位置に第1温度計を備えた支柱を立設せしめ、第2温度計を備えた移動車を前記定点の観測位置から道路上を走行させて、予め定められた間隔毎の移動位置において、前記第1温度計による道路上の定点温度(x)と前記第2温度計による道路上の移動温度(y)をそれぞれ測定し、さらに日時を変えて予め定められたn回数毎に前記道路上の定点温度(x,x,・・・x)と移動温度(y,y,・・・y)を測定し、これらの測定した温度データから相関係数rと前記各定点温度(x,x,・・・x)の分散Sと前記各移動温度(y,y,・・・y)の分散Sと共分散Sxyとの相関関係式(r=Sxy/S)により各地点における相関係数rのr値並びに相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを連続して求めることを特徴とするものである。
【0008】
この発明の道路上の温度測定・管理方法は、前記道路上の温度測定・管理方法において、前記第1,第2温度計が路面温度計であることが好ましい。
【0009】
この発明の道路上の温度測定・管理方法は、前記道路上の温度測定・管理方法において、前記移動車に緯度と経度を測定するGPS受信機を備え、定点の観測位置から予め定められた間隔の位置を、前記緯度と経度から距離に換算されることが好ましい。
【0010】
この発明の道路上の観測機器の設置方法は、前記請求項1,2又は3記載の道路上の温度測定・管理方法で求めた前記各地点における相関係数rのr値を予め決められた設定値rと比較し、r≧rの位置からr<rとなった区間の所望の位置を、新たな定点の観測位置とし、この新たな定点の観測位置に別の第1温度計を備えた支柱を立設せしめることを特徴とするものである。
【0011】
この発明の道路上の温度推定方法は、前記請求項1,2又は3記載の道路上の温度測定・管理方法で求めた前記各地点における相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを基にして、定点の観測位置において測定された定点温度(t)に対する各地点における推定温度(T)を相関式T=a・t+bにより求めて推定することを特徴とするものである。
【0012】
この発明の道路上の温度推定方法は、前記道路上の温度推定方法において、前記定点の観測位置が、所望の間隔で離れた位置に複数箇所(A,B,C,・・・n)に設けられ、前記各定点の観測位置(A,B,C,・・・n)に各第1温度計を備えた支柱を立設し、前記各第1温度計と移動車に備えた第2温度計でもって、前記各定点の観測位置(A,B,C,・・・n)に対応する道路上の各地点における相関係数rのr値を求め、道路上の各地点においては予めどの定点の観測位置に対応する相関係数rのr値を用いるかの優先順位を定めておき、この優先順位に基づいて道路上の各地点における前記推定温度(T)を求めることが好ましい。
【0013】
この発明の道路上の温度予測方法は、前記道路上の温度推定方法による相関式T=a・t+bを利用し、予測された時刻の温度(t’)を基にして各地点における予測温度(T’)を相関式T’=a・t’+bにより求めて予測することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の道路上の温度測定・管理方法によれば、第1,第2温度計により、日時を変えて予め定められたn回数毎に前記道路上の定点温度(x,x,・・・x)と移動温度(y,y,・・・y)を測定し、これらの測定した温度データは、相関係数rと相関関係式(r=Sxy/S)により各地点における相関係数rのr値並びに相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを連続して求めるので、新たに測定される道路上の定点温度(x)だけで、この定点温度(x)を測定した時刻の各地点の道路上の温度(y)を上記の相関式から計算してリアルタイムに推定可能となるように活用できる。すなわち、例えば冬期道路管理に必要な道路上の線的温度等のデータを有効かつ効果的に収集・提供することができる。
【0015】
また、この発明の観測機器の設置方法によれば、各地点における相関係数rのr値を予め決められた設定値rと比較し、r≧rであるときは高相関区間であると判断し、その逆にr<rの低相関区間である場合は、この区間の所望の位置を新たな定点の観測位置として別の第1温度計を備えた支柱を立設するので、機器の効果的な設置を行うことができると共に、冬期道路管理に必要な道路上の線的温度等のデータを有効かつ効果的に収集・提供することができる。
【0016】
また、この発明の道路上の温度推定方法によれば、各地点における相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを基にして、定点の観測位置において測定された定点温度(t)に対する各地点における推定温度(T)を相関式T=a・t+bにより計算して推定するので、新たに測定される道路上の定点温度(t)だけで、この定点温度(t)を測定した時刻の各地点の路面温度、つまり推定温度(T)を上記の相関式から計算してリアルタイムに推定できる。
【0017】
また、この発明の道路上の温度予測方法によれば、各地点における道路上の推定温度の相関式T=a・t+bにより、予測された時刻の温度(t’)を基にして各地点における予測温度(T’)を相関式T’=a・t’+bに基づいて計算するので、リアルタイムに得られる予測された時刻の温度(t’)から各地点における道路上の予測温度(T’)をリアルタイムで予測できる。しかも、各地点の点予測を線的予測に展開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係る道路上の温度測定・管理装置1としては、道路Rに沿って予め定められた定点の各観測位置A,B,C,・・・nには支柱3が立設されており、各支柱3には第1温度計としての例えば路面温度計5や外気温度計7が備えられている。前記路面温度計5や外気温度計7で測定された路面温度及び外気温は自動的に時系列的に1秒毎に収集され、例えばLANケーブル9で除雪基地内の事務所11の制御装置13に送信される。
【0020】
また、路線の温度を推定するために統計方法が用いられ、精度の向上を図るために数多くのデータが必要になる。これらのデータを収集するために、自動車などのように移動可能な移動車15には、第2温度計としての例えば路面温度計17や外気温度計19、GPS受信機21等の各種機器を搭載している。つまり、路線の縦断方向に連続して路面温度、外気温の各種データを収集することを目的としている。収集されるデータとしては、年月目時分秒、緯度・経度、気温、路面温度であり、これらのデータは移動車15が出動する毎に例えば1秒ピッチで収集される。
【0021】
なお、上記のデータの回収方法には2通りある。1つは、移動車15で得られたデータを図示しないPCカードなどのメモリに収集し、前記PCカードから例えば除雪基地内の事務所11の制御装置13でデータ解析が行われる。他の方法には、図2に示されているように移動車15に無線LANアンテナ23、無線LANアンプ25などの機器を搭載し、上記の各種データが無線で道路Rの各所に設けた無線LANアクセスポイント27へ送信される。無線LANアクセスポイント27からLANケーブル9で除雪基地内の事務所11の制御装置13に送信されて解析される。
【0022】
移動車15は、例えば、図1に示されているように定点の観測位置Aからスタートして図1において右方向へ走行し、ある地点で折り返して再び定点の観測位置Aへ戻ってくる。この間に上記のデータが収集される。このデータのうちの例えば道路Rの各地点の路面温度を道路Rの移動距離毎にプロットすると、図3に示されているように各地点の路面温度がどの程度の差があるのか、各区間における各地点の路面の温度分布を把握できるのである。
【0023】
この実施の形態では、特に、図3に示したようにして各地点の路面の温度分布をリアルタイムに把握するために、路面上の線的温度等のデータを有効かつ効果的に収集・分析して管理・提供することを例にとって説明する。なお、上記のデータのうちの道路上の外気温については、路面温度とほぼ同様にしてデータ収集・分析して管理・提供することができる。
【0024】
上記の各データは、時系列的に整理すると、例えば、図4に示されているように表示される。すなわち、例えば1秒単位の時刻毎に移動車15の現在地が緯度・経度で示されており、そのときの路面温度と、外気温がデータとして収集されている。なお、移動車15の緯度・経度は前記GPS受信機21で人工衛星により識別されるものであり、図4のGPS状態がc1であるとは、人工衛星で計測できるような状態を示している。また、衛星数使用数は時には複数の衛星を使用することもあり、1以上であれば問題ない。さらに、進行方向(°;度)はジャイロによるものであり、例えば移動車15がトンネルに入ったために上記の人工衛星により現在地を識別できないときに、前記ジャイロにより代行できるようにされている。
【0025】
したがって、道路Rの各地点は、図4の移動車15の緯度・経度により、ある地点からの距離票(kp;キロポイント、単位はkm)に変換して図5に示されているように表すことができる。図5では、200×年×月×日の3時35分に移動車15が道路Rの上り車線を出動し、距離票23kpの地点で折り返して下り車線を走行して戻っている。この間に得られた各地点の路面温度と外気温のデータが整理して表示されている。
【0026】
日時を変えて、上記のように移動車15の出動回数を増やすことにより、多くのデータ収集が行われる。これにより、道路Rの各地点毎に多数のデータが収集されることになる。このようにして得られた多数のデータは、制御装置13によって解析される。
【0027】
図7を参照するに、制御装置13は、中央処理装置としてのCPU29を備えており、このCPU29には、種々のデータやプログラム等を入力するキーボードやタッチパネルなどの入力装置31と、CRTや液晶などの表示装置33と、入力装置31から入力されたプログラムや第1温度計としての例えば路面温度計5や外気温度計7、第2温度計としての例えば路面温度計17や外気温度計19、GPS受信機21等の各種機器から送信されたデータなどを記憶するメモリ35とが備えられている。
【0028】
さらに、前記CPU29には、路面温度計5や外気温度計7、路面温度計17や外気温度計19でそれぞれ求められた温度データをプロットするデータファイル37と、後述する(1)式(r=Sxy/S)から、道路Rの各地点毎の相関係数rとr値を計算する第1演算装置39と、前記r値と予め設定した設定値rを比較し、r値が設定値r以上であるか否かを判断する比較判断装置41と、各地点の相関式y=a・x+bに基づいて傾きa,切片bを計算する第2演算装置43とが備えられている。
【0029】
さらに、前記CPU29には、第2演算装置43による各地点の相関式y=a・x+bの傾きa,切片bに基づいて、各地点の路面推定温度の線的推定式T=a・t+bにより、推定温度(T)を計算する第3演算装置45と、気象庁等で発表しているGPV(数値予報)等による予測された時刻の温度(t’)と各地点における予測温度(T’)との相関式T’=a・t’+bにより、予測温度(T’)を計算する第4演算装置47と、移動車15の緯度・経度のデータを、ある地点からの距離票(kp;キロポイント、単位はkm)に変換する変換式に基づいて前記距離票を計算する第5演算装置49と、が接続されている。
【0030】
次に、多数のデータに基づいて上記の制御装置13による各地点におけるデータの解析について、道路Rの各地点の路面温度を例にとって説明する。なお、道路上の外気温については路面温度の場合とほぼ同様であるので、その詳しい説明は省略する。
【0031】
例えば、図1における定点の観測位置Aの各測定時刻毎の路面温度計5(第1温度計)による路面の定点温度(定点観測値)はx,x,・・・xと表示し、上記の定点の観測位置Aの各測定時刻に対応する、ある地点の路面温度計17(第2温度計)による路面の移動温度(移動観測値)はy,y,・・・yと表示する。
【0032】
これらのデータは、各測定時刻毎のデータとして(x,y),(x,y),・・・(x,y)がグラフにプロットされると、例えば図6のようになる。もし、上記の2つの変数x,yの間に直線関係に近い傾向が見られる場合は、「相関関係がある」という。この相関関係があるか否かの判定基準となる相関係数rは(1)式で求められる。
【0033】
r=Sxy/S・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ただし、Sは各定点温度(x,x,・・・x)の分散で、Sは前記各移動温度(y,y,・・・y)の分散で、Sxyは共分敷である。
【数1】

【0034】
また、このときの相関式は、
y=a・x+b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
となる。ただし、aは傾きで、bは切片である。
【0035】
上記の(1)式から、道路Rの各地点毎の相関係数rとr値が計算され、上記の(2)式、y=a・x+bから傾きa,切片bが得られる。なお、上記のr値が大きいほど高相関であり、r値が小さいほど低相関であるということになる。つまり、高相関であるほど各データが相関式y=a・x+bの直線上に集中するので、各データx、y間の信頼性が高くなる。
【0036】
道路Rの各地点毎の相関係数rとr値はそれぞれ異なってくるので、当然各地点毎のy=a・x+bも傾きa,切片bがそれぞれに対応して異なってくる。
【0037】
したがって、各地点に対応して、相関式は
y=a・x+b・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
となる。
【0038】
ただし、aは、各地点の傾きa,a,・・・aを示し、bは、各地点の切片b,b,・・・bを示している。なお、a及びbは任意の地点の数値である。
【0039】
図8を参照するに、この実施の形態の道路上の温度測定・管理方法、換言すれば、各地点における相関関係の状態をどのように効率よく収集して路面温度を管理するかを分かり易く説明するために、例えば、図5の表中の距離票の欄において、表中にはデータが記載されていないが、距離票25.5kpの地点に定点の観測位置Aが設けられ、距離票35.5kpの地点に定点の観測位置Bが設けられているとする。
【0040】
前述したように収集されたデータを解析して各地点の相関式を求める場合、例えば、定点の観測位置Aに対する距離票28.8kpの地点においては、図6で説明したように、n回数のデータ(x,y),(x,y),・・・(x,y)がグラフにプロットされると、図8の左側のグラフのようになる。このグラフから前述した(1)式および(2)式に基づいて求めると、距離票28.8kpの地点における相関式は、y=0.84x+1.13となり、相関係数rのr値は、r=0.81となる。また、同じようにして、定点の観測位置Aに対する距離票30.5kpの地点においては、図8の右側のグラフのようになり、このグラフから距離票30.5kpの地点における相関式は、y=0.73x+0.96となり、相関係数rのr値は、r=0.60となる。
【0041】
したがって、上記の2つを比較すると、距離票28.8kpの地点では高相関にあり、距離票30.5kpの地点では低相関にあると言うことができる。
【0042】
以上のようにして、例えば、図9に示されているように、距離票51.6kpの地点に定点の観測位置Dが設けられ、距離票57kpの地点に定点の観測位置Eが設けられ、距離票61.3kpの地点に定点の観測位置Fが設けられているとする。各定点の観測位置D,E,Fに対応する道路Rの各地点毎の相関係数rのr値は図9のようになる。つまり、図9は、各定点の観測位置D,E,Fに対する道路Rの各地点における相関関係を解析したものである。
【0043】
ここで、予め決められた設定値rを設定しておき、この設定値r以上のr値を示す地点(r≧r)を高相関区間とし、この高相関区間の各地点の相関式y=a・x+bに基づいて、新たに測定される路面の定点温度(x)だけで、この定点温度(x)を測定した時刻の各地点の路面温度(y)を上記の相関式から計算してリアルタイムに推定可能となる。つまり、各地点の推定温度(T)を推定することができる。なお、この各地点の推定温度(T)についての詳細な説明は後述する。
【0044】
各地点の相関状態は、例えば、上記の設定値rを例えば0.95とすると、定点の観測位置D(51.6kp)に対応して設定値0.95以上を示すr値(r≧0.95)の高相関区間は、連続した黒塗りの部分で示されているように48.5kp〜55.5kpまでの区間である。なお、r値が0.90以上で0.95より小さい中相関区間(0.95>r≧0.90)は、ハッチングの部分で示されているように56kp〜61kpまでの区間である。r値が0.90より小さい低相関区間(r<0.90)は、白塗りの部分で示されているように61.5kpから大きい数のkpの区間である。
【0045】
一方、定点の観測位置E(57kp)に対応して設定値0.95以上を示すr値(r≧0.95)の高相関区間は、連続した黒塗りの部分で示されているように55.5kp〜61.0kpまでの区間である。なお、r値が0.90以上で0.95より小さい中相関区間(0.95>r≧0.90)は、断続した黒塗りの部分とハッチングの部分で示されているように48.5kp〜55kpまでの区間である。r値が0.90より小さい低相関区間(r<0.90)は、白塗りの部分で示されているように61.5kpから大きい数のkpの区間である。
【0046】
さらに、定点の観測位置F(61.3kp)に対応して設定値0.95以上を示すr値(r≧0.95)の高相関区間は、連続した黒塗りの部分で示されているように61.5kpから大きい数のkpの区間である。なお、r値が0.90以上で0.95より小さい中相関区間(0.95>r≧0.90)は、無く、r値が0.90より小さい低相関区間(r<0.90)は、白塗りの部分で示されているように61kpより小さい数のkpの区間である。
【0047】
以上のことから、道路Rの各地点においては予めどの定点の観測位置に対応する相関係数rのr値を用いるかの優先順位を定めておき、この優先順位に基づいて路面上の各地点における前記推定温度(T)を求めることが望ましいのである。
【0048】
上記の例で言えば、距離票48.5kp〜55.5kpの区間は定点の観測位置Dに対応する相関係数rのr値を第1順位とし、定点の観測位置Eに対応するr値を第2順位とし、定点の観測位置Fに対応するr値を第3順位とする。また、距離票56kp〜61kpの区間は定点の観測位置Eに対応するr値を第1順位とし、定点の観測位置Dに対応するr値を第2順位とし、定点の観測位置Fに対応するr値を第3順位とする。また、距離票61.5kpより大きい数のkpの区間は定点の観測位置Fに対応するr値を第1順位とし、定点の観測位置Eに対応するr値を第2順位とし、定点の観測位置Dに対応するr値を第3順位とする。
【0049】
以上のように、各地点において使用する定点の観測位置の相関関係式の優先順位をつけることで、たとえ第1優先順位の定点の観測位置が誤動作などのトラブルを起こしても、次に相関の良い第2優先順位の定点の観測位置にすぐに切り替えることができる。例えば、図9において54.5kpの地点では、もし第1優先順位の定点の観測位置Dに誤作動があった場合、第2優先順位の定点の観測位置Eの値を用いることにより、トラブルを回避できる。
【0050】
また、この実施の形態の観測機器の設置方法としては、上記のように各定点の観測位置A,B,C,・・・nに対応する道路Rの各地点毎の相関係数rのr値が予め決められた設定値rと比較されたとき、例えば図10に示されているように定点の観測位置B,C間でいずれの定点の観測位置B,Cに対しても各地点の相関係数rのr値がr<rとなる低相関区間が生じた場合は、この低相関区間の所望の位置を、新たな定点の観測位置B’とし、この新たな定点の観測位置B’に別の路面温度計5(第1温度計)を備えた支柱3を立設することが必要となってくる。すなわち、上記の低相関区間は新たな定点の観測位置B’に対応する道路Rの各地点毎の相関係数rのr値が予め決められた設定値r以上の数値(r≧r)を示す高相関区間となるので、各地点の相関式y=a・x+bに基づいて、定点温度(x)を測定した時刻の各地点の路面温度(y)を計算できる。つまり、各地点の推定温度(T)を推定することができる。
【0051】
以上ことから、各地点の相関式y=a・x+bにおける傾きa,切片bは、図11のように整理して表示することができる。
【0052】
なお、図11において、全路面式とは、路面が乾燥している場合も、湿潤・積雪・凍結している場合も含めた全天候における路面のデータを基にして得られた相関式y=a・x+bにおける傾きa,切片bの値を示している。
【0053】
一方、乾燥路面式とは、上記の全路面式の中から路面が乾燥している場合のデータだけを基にして相関式y=a・x+bにおける傾きa,切片bの値を示している。また、湿潤・積雪・凍結路面式とは、上記の全路面式の中から路面が湿潤・積雪・凍結している場合のデータだけを基にして相関式y=a・x+bにおける傾きa,切片bの値を示している。その理由は、乾燥路面式と湿潤・積雪・凍結路面式に分けた方が、全路面式の場合より、より一層、高相関関係となるからである。
【0054】
この実施の形態の道路上の温度推定方法としては、上記の相関式の移動温度y(移動観測値)が推定温度(T)に相当し、定点温度x(定点観測値)が定点の観測位置Aの定点温度(t)に相当するので、各地点の路面温度の線的推定式は、
T=a・t+b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
となる。
【0055】
例えば、図11の表に基づいて、24kpの路面の推定温度(T)を推定する場合、28.5kpの定点の観測位置Aに備えられた第1温度計としての例えば路面温度計5による観測値として、路面の定点温度(t)が−1.5℃で、路面状態が乾燥であるとき、乾燥路面式の相関式y=a・x+b、すなわちT=a・t+bが用いられる。
【0056】
したがって、24kpの路面の相関式の傾きa=1.120で、切片b=0.86であるので、
24kpの路面の推定温度Tは、
T=a・t+b
=1.120t+0.86=1.120×〔−1.5(℃)〕+0.86
=−0.82(℃)
となる。
【0057】
したがって、新たに測定された路面の定点温度(t)の−1.5℃だけで、この同じ時刻における24kpの路面の路面温度、つまり推定温度(T)の−0.82℃を上記の相関式から計算してリアルタイムに推定できる。
【0058】
以上のように、路面の各地点の推定温度(T)は、図11の各傾きa及び切片bの数値を活用して同様に、しかも、パソコンなどの制御装置13を用いて瞬時に求められる。
【0059】
したがって、現時点での各地点の路面温度の線的推定温度は、前述した(4)式の線的推定式T=a・t+bにより求められ、図12に示されているように表される。
【0060】
また、この実施の形態の道路上の温度予測方法としては、気象庁等で発表しているGPV(数値予報)等のデータを活用して、この予報データと上記の(4)式の各地点の路面温度の線的推定式T=a・t+bとを活用することにより、例えば、今後の予測温度を予測することができる。
【0061】
すなわち、GPV(数値予報)による予測された時刻の温度(t’)と各地点における予測温度(T’)との相関式は、
T’=a・t’+b・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
となる。
【0062】
したがって、GPV(数値予報)による予測された時刻の温度(t’)を活用して、1時間後および2時間後の各地点の路面温度の線的予測温度は、上記の(5)式の線的推定式T’=a・t’+bにより、リアルタイムで求められて予測でき、図12に示されているように表される。
【0063】
以上のことから、路面温度計5や外気温度計7(第1温度計)、路面温度計17や外気温度計19(第2温度計)により、日時を変えて予め定められたn回数毎に前記道路上の定点温度(x,x,・・・x)と移動温度(y,y,・・・y)を測定し、これらの測定した温度データは、相関係数rと相関関係式(r=Sxy/S)により各地点における相関係数rのr値並びに相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを連続して求めるので、新たに測定される道路上の定点温度(x)だけで、この定点温度(x)を測定した時刻の各地点の路面温度(y)を上記の相関式y=a・x+bから計算してリアルタイムに推定可能となるように活用できる。すなわち、冬期道路管理に必要な道路上の路面温度や外気温の線的温度等のデータを有効かつ効果的に収集・提供することができる。
【0064】
また、移動車15に緯度と経度を測定するGPS受信機21を備えると共に、定点の観測位置から予め定められた間隔の位置を、前記緯度と経度から距離に換算するので、複雑な計算を要することなく、各地点の測定データを確実に把握することができる。
【0065】
また、各地点における相関係数rのr値を予め決められた設定値rと比較し、r≧rであるときは高相関区間であると判断し、その逆にr<rの低相関区間である場合は、この区間の所望の位置を新たな定点の観測位置として別の路面温度計5(第1温度計)を備えた支柱3を立設するので、機器の効果的な設置を行うことができると共に、冬期道路管理に必要な道路上の路面温度や外気温の線的温度等のデータを有効かつ効果的に収集・提供することができる。
【0066】
また、各地点における相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを基にして定点の観測位置において測定された定点温度(t)に対する各地点における推定温度(T)を相関式T=a・t+bにより計算して推定するので、新たに測定される道路上の定点温度(t)だけで、この定点温度(t)を測定した時刻の各地点の路面温度、つまり推定温度(T)を上記の相関式から計算してリアルタイムに推定できる。
【0067】
また、前記定点の観測位置が、所望の間隔で離れた位置に複数箇所(A,B,C,・・・n)に設けられ、前記各定点の観測位置に各路面温度計5を備えた支柱3を立設し、前記各路面温度計5と移動車15に備えた路面温度計17でもって、前記各定点の観測位置(A,B,C,・・・n)に対応する路面上の各地点における相関係数rのr値を求め、道路上の各地点においては予めどの定点の観測位置に対応する相関係数rのr値を用いるかの優先順位を定めておき、この優先順位に基づいて道路上の各地点における前記推定温度(T)を求めるので、たとえ優先順位の高い定点の観測位置が誤動作などのトラブルを起こしても、次に相関の良い優先順位の定点の観測位置にすぐに切り替えてトラブルを回避できる。
【0068】
また、各地点における道路上の推定温度の相関式T=a・t+bにより、予測された時刻の温度(t’)を基にして各地点における予測温度(T’)を相関式T’=a・t’+bに基づいて計算するので、リアルタイムに得られる予測された時刻の温度(t’)から各地点における道路上の予測温度(T’)をリアルタイムで予測できる。しかも、各地点の点予測を線的予測に展開することができる。
【0069】
以上のことから、例えば、凍結防止剤を効果的に散布するために薬剤散布の出動等の判断資料(時期、場所、散布量等)を提供することができる。いつ頃、どの地点が凍結しやすいか、あるいはどの程度凍結しているか等を判断できる。さらには、凍結防止剤の薬剤量がどの程度必要かなどの判断を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施の形態の道路上の温度測定・管理装置の概略的な斜視図である。
【図2】移動車に搭載された機器による測定データを制御装置へ送信する概略的な状態説明図である。
【図3】この発明の実施の形態の道路上の温度測定・管理装置で得られる路面上の各地点における路面温度の分布状態のイメージ図である。
【図4】移動車を走行して得られたデータを時系列的に表示したデータ表である。
【図5】図4のデータ表の緯度・経度から距離票(kp)に変換して表示したデータ表である。
【図6】定点温度(定点観測値)と移動温度(移動観測値)の相関図である。
【図7】制御装置のブロック図である。
【図8】各地点における相関関係の状態を示す例の説明図である。
【図9】各定点の観測位置に対する各地点における相関係数rのr値と、高相関区間、中相関区間、および低相関区間を示す説明図である。
【図10】新規の定点の観測位置を必要とする場合の説明図である。
【図11】各地点の相関式y=a・x+bにおける傾きa,切片bを示すデータ表である。
【図12】各地点の路面温度の線的推定温度と、1時間後および2時間後の各地点の路面温度の線的予測温度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
1 道路上の温度測定・管理装置
3 支柱
5 路面温度計(第1温度計)
7 外気温度計
9 LANケーブル
11 除雪地内事務所
13 制御装置
15 移動車
17 路面温度計(第2温度計)
19 外気温度計
21 GPS受信機
23 無線LANアンテナ
29 CPU
31 入力装置
33 表示装置
35 メモリ
37 データファイル
39 第1演算装置
41 比較判断装置
43 第2演算装置
45 第3演算装置
47 第4演算装置
49 第5演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の予め定められた定点の観測位置に第1温度計を備えた支柱を立設せしめ、第2温度計を備えた移動車を前記定点の観測位置から道路上を走行させて、予め定められた間隔毎の移動位置において、前記第1温度計による道路上の定点温度(x)と前記第2温度計による道路上の移動温度(y)をそれぞれ測定し、さらに日時を変えて予め定められたn回数毎に前記道路上の定点温度(x,x,・・・x)と移動温度(y,y,・・・y)を測定し、これらの測定した温度データから相関係数rと前記各定点温度(x,x,・・・x)の分散Sと前記各移動温度(y,y,・・・y)の分散Sと共分散Sxyとの相関関係式(r=Sxy/S)により各地点における相関係数rのr値並びに相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを連続して求めることを特徴とする道路上の温度測定・管理方法。
【請求項2】
前記第1,第2温度計が路面温度計であることを特徴とする請求項1記載の道路上の温度測定・管理方法。
【請求項3】
前記移動車に緯度と経度を測定するGPS受信機を備え、定点の観測位置から予め定められた間隔の位置を、前記緯度と経度から距離に換算されることを特徴とする請求項1又は2記載の道路上の温度測定・管理方法。
【請求項4】
前記請求項1,2又は3記載の道路上の温度測定・管理方法で求めた前記各地点における相関係数rのr値を予め決められた設定値rと比較し、r≧rの位置からr<rとなった区間の所望の位置を、新たな定点の観測位置とし、この新たな定点の観測位置に別の第1温度計を備えた支柱を立設せしめることを特徴とする道路上の観測機器の設置方法。
【請求項5】
前記請求項1,2又は3記載の道路上の温度測定・管理方法で求めた前記各地点における相関式y=a・x+bの傾きa,切片bを基にして、定点の観測位置において測定された定点温度(t)に対する各地点における推定温度(T)を相関式T=a・t+bにより求めて推定することを特徴とする道路上の温度推定方法。
【請求項6】
前記定点の観測位置が、所望の間隔で離れた位置に複数箇所(A,B,C,・・・n)に設けられ、前記各定点の観測位置(A,B,C,・・・n)に各第1温度計を備えた支柱を立設し、前記各第1温度計と移動車に備えた第2温度計でもって、前記各定点の観測位置(A,B,C,・・・n)に対応する道路上の各地点における相関係数rのr値を求め、道路上の各地点においては予めどの定点の観測位置に対応する相関係数rのr値を用いるかの優先順位を定めておき、この優先順位に基づいて道路上の各地点における前記推定温度(T)を求めることを特徴とする請求項5記載の道路上の温度推定方法。
【請求項7】
前記請求項5又は6記載の道路上の温度推定方法による相関式T=a・t+bを利用し、予測された時刻の温度(t’)を基にして各地点における予測温度(T’)を相関式T’=a・t’+bにより求めて予測することを特徴とする道路上の温度予測方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−17197(P2007−17197A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196607(P2005−196607)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(598021605)社団法人 雪センター (5)