説明

道路情報管理装置

【課題】従来の道路保全及び点検作業による保全箇所及び点検箇所に対する位置測定手順を基本的に変えることなく、保全箇所及び点検箇所の位置を地球座標系の座標点として得る。
【解決手段】位置変換装置190は、区間198内における損傷212のKP値を判断し、この損傷212のKP値を道路中心204の変極点214を表すKP値と比較することにより、損傷212が含まれる平面線形の形状(直線、円曲線、クロソイド曲線のいずれか)を特定する。次いで、KP値と一致する道路中心204の緯度及び経度を算出した後、縦断線形情報208に基づいて損傷の標高を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の点検及び保全業務で発見した保全箇所や点検箇所の位置を地球座標系の座標位置に変換する手段を備えた道路情報管理装置に関するものであり、例えば、道路供用段階における道路管理業務の分野において適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
図19には、道路及びこの道路の保全作業を行う作業員が模式的に示されている。保全を行う作業員220が道路222に何らかの損傷224を発見した場合、作業員220は、例えば、損傷の種類を判断すると共に、損傷の位置を測定する。このとき、損傷224が路肩226や中央分離帯228等の作業員220が安全に立ち入ることが可能な領域内にあれば、損傷224の位置を正確に測定することが可能である。ところが、損傷224が走行車線230A〜230Cや追越車線230D内にあるときには、道路222の一部又は全部を通行止めにしなければ、交通量が多い高速道路等では損傷224の位置を直接的に測定することは実質的に不可能である。
【0003】
損傷224の位置は、例えば、道路222の縦断方向(矢印L方向)に沿って一定の距離毎に設置された距離標の一種であるキロポスト232から損傷224までの距離(縦断距離)を測定した後、道路222の横断方向(矢印T方向)に沿った片側の路端から損傷224までの距離(横断距離)を測定することにより行われる。これにより、損傷224が含まれる道路区間内における損傷224の相対位置が得られる。
【0004】
また特許文献1には、図20に示すように、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)対応の携帯端末240を持った作業員220が縦断方向に沿って損傷224と一致する位置まで移動し、その位置の緯度及び経度を携帯端末240により計測することにより、この計測地点に近い道路222とキロポスト232を割り出し、それを損傷位置として道路地図上に表示する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術(システム)では、図21(A)に示すように、道路222を複数のリンク242がノード244により鎖状に連結されたものと見做しているので、損傷224の位置を道路222の中心線223上の点としてしか表現できず、すなわち損傷224の位置を道幅や車線を考慮して正確に表現することができない。
【0005】
特許文献1の技術では、損傷224の高さ(標高)を測定できないので、立体交差している区間(例えば、橋梁の上と下の道路上)の損傷を数値データにより特定することができない。また、GPS対応の携帯端末240で損傷224箇所の写真を撮った上、この携帯端末240を用いて損傷224に関する必要情報を入力するのは手間がかかり、実際の運用には不向きである点も多い。
【特許文献1】特開2006−112127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
道路に対する保全作業及び点検作業(以下、「保全・点検作業」という。)により得られた保全箇所及び点検箇所の位置については、従来の作業方法(図19参照)では道路構造を表現するために必要な最小単位である道路区間内における相対位置として特定されていた。
しかし、道路に対する保全・点検作業の結果をデータベース化し、その結果を道路地図に表示しようとした場合には、保全・点検作業の結果を地球座標系の座標点(数値データ)として表し、それをデータベースとした方が既存の道路地図のデータベースに容易に重畳することが可能になる。
【0007】
また、近年、都市部等では複数本の道路が立体交差し、あるいは上下に重なり合った状態で平行に延在する道路の立体区間が増加している。従って、このような立体区間では、緯度及び経度からなる二次元座標系のみで保全箇所及び点検箇所の位置を表すと、保全箇所又は点検箇所が存在する1本の道路を特定できない。このような問題は、保全箇所及び点検箇所の位置を緯度、経度及び標高からなる地球座標系の三次元座標点により表すことで解決できる。
本発明の目的は、上記事実を考慮し、従来の保全・点検作業による保全箇所及び点検箇所に対する位置測定手順を基本的に変えることなく、保全箇所及び点検箇所の位置を地球座標系の座標点として得ることができる道路情報管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る道路情報管理装置は、道路構造を表現するために必要な最小の道路区間単位で構成された道路に関するデータを道路構造モデルとして記憶する道路構造モデル記憶手段と、道路供用段階において発生する道路の保全箇所及び点検箇所にそれぞれ対応する保全情報及び点検情報を記憶する業務データモデル記憶手段と、前記保全情報及び点検情報に含まれる位置データに基づいて、前記保全箇所及び点検箇所を含む道路区間を特定すると共に、該道路区間における前記保全箇所又は点検箇所の相対位置を特定する位置特定手段と、前記位置特定手段により特定された前記道路区間上における前記保全箇所又は前記点検箇所の相対位置を、前記位置データを用いて緯度、経度及び標高により規定される地球座標系の座標位置に変換する位置変換手段と、を備え、前記位置データには、道路縦断方向に沿った前記保全箇所又は点検箇所から距離標までの路長、上下線区分、ルート区分、車線名及び、道路横断方向に沿った車線内相対位置が含まれることを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に係る道路情報管理装置では、位置変換手段が位置特定手段により特定された道路区間上における保全箇所又は前記点検箇所の相対位置を、保全箇所又は点検箇所の位置データを用いて緯度、経度及び標高により規定される地球座標系の座標位置に変換する。
ここで、保全箇所及び点検箇所の位置データには、道路縦断方向に沿った保全箇所又は点検箇所から距離標までの路長、上下線区分、ルート区分、車線名及び、道路横断方向に沿った車線内相対位置が含まれており、これらは基本的に道路区間上における保全箇所又は前記点検箇所の相対位置を特定するためにも必要な情報であるので、請求項1に係る道路情報管理装置によれば、従来の道路保全及び点検作業による保全箇所及び点検箇所に対する位置測定手順を基本的に変えることなく、保全箇所及び点検箇所の位置を地球座標系の三次元座標点として得ることができる。
【0010】
また本発明の請求項2記載の道路情報管理装置は、請求項1記載の道路情報管理装置において、前記位置変換手段により得られた三次元座標位置に基づいて前記保全箇所又は点検箇所を道路地図上に表示する表示手段を備えることを特徴とする。
上記請求項2に係る道路情報管理装置では、表示手段が、位置変換手段により得られた緯度、軽度及び標高からなる三次元座標位置に基づいて保全箇所又は点検箇所を道路地図上に表示する。これにより、保全箇所又は点検箇所を道路地図上で容易に視認することが可能になり、更に、保全箇所及び点検箇所が標高を含む三次元座標により特定されているので、保全箇所又は点検箇所が複数本の道路が存在する立体構造区間にあった場合でも、標高により保全箇所又は点検箇所が存在する1本の道路を道路地図上で特定できる。
【0011】
また本発明の請求項3に係る道路情報管理装置は、請求項1又は2記載の道路情報管理装置において、前記位置変換手段は、前記道路構造モデルの平面線形データ及び、道路に沿って一定間隔毎に設置された距離標から前記保全箇所又は点検箇所までの路長に基づいて、前記道路縦断方向に沿って前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の緯度及び経度を算出することを特徴とする。
【0012】
上記請求項3に係る道路情報管理装置では、位置変換手段が、道路構造モデルの平面線形データ及び、道路に沿って一定間隔毎に設置された距離標から保全箇所又は点検箇所までの路長に基づいて、道路縦断方向に沿って保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の緯度及び経度を算出することにより、測定値として距離標から保全箇所又は点検箇所までの路長のみが得られれば、道路縦断方向に沿って保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の緯度及び経度を簡単に算出できるので、例えば、単車線、2車線道路等の道幅が狭く、立体構造になっていない道路に存在する保全箇所又は点検箇所を緯度及び経度からなる座標点により十分に高い精度で特定できる。
【0013】
また本発明の請求項4に係る道路情報管理装置は、請求項3記載の道路情報管理装置において、前記平面線形データには、平面上における道路区間の線形形状を表すための関数及び設備定数が含まれ、前記位置変換手段は、前記保全箇所又は点検箇所が含まれる道路区間の前記関数及び設備定数に基づいて、前記道路縦断方向に沿って前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の始点及び終点の緯度及び経度をそれぞれ算出すると共に、前記始点から前記終点までの路長を算出することを特徴とする。
【0014】
上記請求項4に係る道路情報管理装置では、位置変換手段が、保全箇所又は点検箇所が含まれる道路区間を表す関数及び設備定数に基づいて、道路縦断方向に沿って保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の始点及び終点の緯度及び経度をそれぞれ算出すると共に、前記始点から前記終点までの路長を算出することにより、保全箇所及び点検箇所が道路の縦断方向に沿って一定以上の長さを有している場合にも、道路区間に存在する保全箇所又は点検箇所が存在する範囲を道路の縦断方向に沿って延在する線分として明確に特定できる。
【0015】
また本発明の請求項5に係る道路情報管理装置は、請求項4記載の道路情報管理装置において、前記位置変換手段は、前記保全箇所又は点検箇所と一致する始点から終点までの線分の緯度方向又は経度方向に対する傾き量を算出すると共に、前記保全箇所又は点検箇所から道路中心までの垂線の前記緯度方向及び経度方向に沿ったX軸及びY軸に対する投影成分をそれぞれ算出し、前記傾き量及び2個の前記投影成分を用いて道路中心から前記保全箇所又は点検箇所までの前記X軸及びY軸に沿った線分長をそれぞれ算出することを特徴とする。
【0016】
上記請求項5に係る道路情報管理装置では、位置変換手段が、保全箇所又は点検箇所と一致する始点から終点までの線分(直線)の緯度方向又は経度方向に対する傾き量を算出すると共に、保全箇所又は点検箇所から道路中心までの垂線の緯度方向及び経度方向に沿ったX軸及びY軸に対する投影成分をそれぞれ算出し、傾き量及び2個の投影成分を用いて道路中心から保全箇所又は点検箇所までのX軸及びY軸に沿った線分長(X軸成分及びY軸成分)をそれぞれ算出する。
【0017】
これにより、保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心から実際の保全箇所又は点検箇所までの緯度方向に沿った距離(X軸成分のスカラー量)及び経度方向に沿った距離(Y軸成分のスカラー量)をそれぞれ算出できるので、これらの距離(スカラー量)を公知の変換式に基づいて緯度及び経度の変化量に変換すれば、保全箇所又は点検箇所の実際の位置を緯度及び経度からなる座標点により精度良く特定できる。
【0018】
また本発明の請求項6に係る道路情報管理装置は、請求項5記載の道路情報管理装置において、前記位置変換手段は、道路中心から前記保全箇所又は点検箇所までの前記X軸及びY軸に沿った線分長を緯度及び経度の変化量にそれぞれ変換し、これらの緯度の変化量及び経度の変化量を前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の緯度及び経度に加算して、前記保全箇所又は点検箇所の緯度及び経度を算出することを特徴とする。
【0019】
また本発明の請求項7に係る道路情報管理装置は、請求項6記載の道路情報管理装置において、前記道路構造モデルには、道路区間における前記道路縦断方向に沿った標高変化に対応する標高データ及び前記道路横断方向に沿った路面の傾斜角に対応する勾配データが含まれ、前記位置変換手段は、前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心及び前記標高データに基づいて、該道路中心の標高を算出すると共に、前記保全箇所又は点検箇所から前記道路中心まで距離及び前記勾配データに基づいて、前記道路中心の標高に対する前記保全箇所又は点検箇所の標高の変化を算出することを特徴とする。
【0020】
上記請求項7に係る道路情報管理装置では、位置変換手段が、保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心及び道路区間における標高データに基づいて、この道路中心の標高を算出すると共に、保全箇所又は点検箇所から道路中心まで距離及び勾配データに基づいて、道路中心の標高に対する保全箇所又は点検箇所の標高の変化を算出する。これにより、保全箇所又は点検箇所の標高を精度良く算出できるので、保全箇所又は点検箇所の位置を緯度、経度及び標高からなる地球座標系の三次元座標点の座標点として特定できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の道路情報管理装置によれば、従来の保全・点検作業による保全箇所及び点検箇所に対する位置測定手順を基本的に変えることなく、保全箇所及び点検箇所の位置を地球座標系の座標点として得ることができる道路情報管理装置を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る道路情報管理装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る道路情報管理装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、道路情報管理装置には、道路を構成する要素ごとに分類された道路情報の登録と記憶を行う道路情報格納装置110、道路情報格納装置110に格納された道路情報に基づいて表示情報の出力制御を行う制御装置120、制御装置120の出力結果に基づいて路線図131を表示する路線図表示装置130、制御装置120の出力結果に基づいて構造図141を表示する構造図表示装置140が設けられている。
【0023】
ここで、道路情報格納装置110には、区間情報登録装置111、施設情報登録装置112、管理情報登録装置113、区間情報記憶装置114、施設情報記憶装置115、管理情報記憶装置116及び接続情報記憶装置117が設けられている。そして、区間情報登録装置111は、道路構成要素を表現する区間情報を登録することができる。
施設情報登録装置112は、道路付帯設備を表現する施設情報を登録することができる。管理情報登録装置113は、道路供用段階で発生する管理情報を登録することができる。区間情報記憶装置114は、区間情報登録装置111にて登録された区間情報を記憶することができる。施設情報記憶装置115は、施設情報登録装置112にて登録された施設情報を記憶することができる。管理情報記憶装置116は、管理情報登録装置113にて登録された管理情報を記憶することができる。接続情報記憶装置117は、区間情報や施設情報の相互関係を表す接続情報を記憶することができる。
【0024】
また、制御装置120には、路線図出力装置121、表示範囲選択装置122、構造図出力装置123、表示項目切替装置124及び表示項目編集装置125が設けられている。そして、路線図出力装置121は、道路情報格納装置110に格納された道路情報を抽出し、路線図表示装置130にて表示可能な形式で出力することができる。
表示範囲選択装置122は、路線図表示装置130にて表示された路線図131から、構造図141の出力範囲の選択を行うことができる。構造図出力装置123は、道路情報格納装置110に格納された道路情報から、表示範囲選択装置122及び表示項目切替装置124にて指定された内容を抽出し、構造図表示装置140にて表示可能な形式で出力することができる。表示項目切替装置124は、構造図表示装置140にて表示される内容の切り替えを行うことができる。表示項目編集装置125は、構造図表示装置140にて表示される内容の編集を行うことができる。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る道路の幾何構造を定義する幾何構造情報と、道路供用過程において行われる業務情報との関係を示すブロック図である。図2において、道路情報管理では、道路の幾何構造1aを定義する幾何構造情報(道路構造モデル)1bと、道路供用過程において行われる管理業務(例えば、保全業務2aと点検業務3a)を定義する管理情報(保全業務2aと点検業務3a)との関係を、UML/ユースケース図で表現することができる。
【0026】
なお、道路構造モデルでは、道路構造を表現するために必要な最小区間単位で構成された道路に関するデータを扱うことができる。この表現手法では、道路の幾何構造1aが保全業務2a及び点検業務3aにおいてどのように利用されるかを整理することができ、道路構造を表現する道路構造モデルと、点検業務や保全業務を表現する管理業務モデルを定義するための基礎とすることができる。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係る道路構造を表現する道路構造モデルと、点検業務や保全業務を表現する管理業務モデルのクラスを示すブロック図である。図3において、道路構造データモデル10には、道路線形情報11、道路構成情報12、付属物情報13、土木情報14、舗装情報15及び橋梁情報16が含まれている。ここで、道路線形情報11は、道路構成情報12を区間情報の集合体として管理するクラスから構成することができる。また道路線形情報11には、道路区間における道路の平面線形情報、縦断線形情報及び横断線形情報が含まれている。
【0028】
道路構成情報12は、道路構造を表現するクラスから構成することができ、道路構造を表現するために必要な最小区間単位(道路区間)で構成される。付属物情報13は、道路に配置されるガードレールや照明等の道路付属物を表現するクラスから構成することができる。土木情報14は、トンネルなどの土木部分を表現するクラスから構成することができる。舗装情報15は、道路の舗装部分を表現するクラスから構成することができる。橋梁情報16は、道路の橋梁部分を表現するクラスから構成することができる。
【0029】
また、点検業務データモデル20には、定期点検情報21、詳細点検情報22、土木点検情報23及び舗装点検情報24が含まれている。ここで、定期点検情報21は、定期的に行われる点検に関する業務を表現するクラスから構成することができる。詳細点検情報22は、定期点検では確認されない詳細な点検に関する業務を表現するクラスから構成することができる。土木点検情報23は、定期点検又は詳細点検で確認された土木に関する損傷等を表現するクラスから構成することができる。舗装点検情報24は、定期点検又は詳細点検で確認された舗装に関する損傷等を表現するクラスから構成することができる。
【0030】
また、保全業務データモデル30には、定期保全情報31、緊急保全情報32、土木保全情報33および舗装保全情報34が含まれている。ここで、定期保全情報31は、定期的に行われる保全に関する業務を表現するクラスから構成することができる。緊急保全情報32は、突発的な損傷等により緊急に行われる保全に関する業務を表現するクラスから構成することができる。土木保全情報33は、定期保全又は緊急保全で行われた土木に関する工事等を表現するクラスから構成することができる。舗装保全情報34は、定期保全又は緊急保全で行われた舗装に関する工事等を表現するクラスから構成することができる。
【0031】
また、各モデルはクラス間で継承され、これらの点検情報21〜24又は保全情報31〜34が点検業務データモデル20又は保全業務データモデル30上で発生した位置を特定して、道路構造データモデル10と関連付けることができる。また、これらの点検情報21〜24又は保全情報31〜34が点検業務データモデル20又は保全業務データモデル30上で発生した時期と、その時期に対応する道路構造データモデル10の版数を特定し、各モデルの整合をとることができる。
【0032】
図4は、本発明の実施形態に係る区間情報及び施設情報の一例を示す図である。図4において、道路地図151上の道路は、道路構造を表現するために必要な最小区間単位に分割され、区間ごとに区間情報152が付与される。ここで、区間情報152には、道路構造を表現するために必要な最小区間単位の構成要素を持たせることができる。そして、起点を原点として方向性(区分と終点)を持ったベクトル形式で表現することができ、道路構造を表現するために必要な属性情報(道路構造や路肩構造)を付与することができる。また、区間情報152ごとに固有のIDを定義することで、個々の区間情報152を識別することができる。
【0033】
施設情報153には、サービスエリアやガソリンスタンドなどの道路付帯設備を表現するために必要な構成要素を持たせることができる。そして、分流地点を原点として範囲(合流地点)を持った線分又は点形式で表現することができ、施設構造を表現するために必要な属性情報(施設構造)を付与することができる。また、施設情報153ごとに固有のIDを定義することで、個々の施設情報153を識別することができる。
【0034】
図5は、本発明の実施形態に係る管理情報表示の一例を示す図である。図5において、管理情報154には、例えば、点検業務において、KP82.000〜KP82.200区間の第1走行車線左部の路面に20mmの轍掘れが発見されたことを示すことができる。なお、KP値=82.000〜KP82.200は、道路の縦断方向に沿って一定の距離毎に設置された距離標の一種であるキロポストを基準として測定された路面損傷(点検箇所)の位置(始点〜終点)を表している。
【0035】
図6は、本発明の実施形態に係る接続情報の一例を示す図である。図6において、接続情報161では、KP値で特定される道路の位置ごとに固有のIDが付与されるとともに、区間情報152及び施設情報153にそれぞれ固有のIDが要素ごとに登録される。また、保全情報及び点検情報が含まれる管理情報154には、管理情報154ごとに固有のIDが付与されるとともに、該当区間に対応する区間情報152に固有のIDが登録されている。
【0036】
そして、区間情報152が区間情報登録装置111を介して区間情報記憶装置114に記憶されるとともに、施設情報153が施設情報登録装置112を介して施設情報記憶装置115に記憶される時に、区間情報152と施設情報153との関連付けが定義され、接続情報161として接続情報記憶装置117に記憶される。また、管理情報154が管理情報登録装置113を介して管理情報記憶装置116に記憶される時に、管理情報154ごとに固有のIDと、該当区間に対応する区間情報152に固有のIDとの関連付けが定義される。これにより、道路構造を表現するために必要な最小区間単位で構成された区間情報152と施設情報153との相互関係を明確化することが可能となり、道路構造を計算機上で再現することが可能となるとともに、該当箇所に関連付けられた個々の管理情報154を容易に特定することができる。
【0037】
図7は、本発明の実施形態に係るユーザーインターフェースの一例を示す図である。図7において、表示画面170には、路線図171及び構造図172が表示されている。ここで、路線図171上では、構造図172の表示範囲を選択することができる。また、構造図172は、路線図171上で選択された範囲に対応して表示されるとともに、構造図172上では、管理情報154の表示や編集操作を行うことができる。なお、路線図171及び構造図172の表現形式としては、例えば、SVG(Scalable Vector Graphics)を用いることができる。
【0038】
図8は、本発明の実施形態に係る道路構造図に重ね合わせされた管理情報の切り替え方法の一例を示す図である。図8において、構造図181で示される路面上には、例えば、図1の管理情報記憶装置116に記憶されたアスファルト舗装の損傷情報を重ね合わせて表示することができる。また、構造図181上には、表示項目を選択するための表示項目選択画面183を合わせて表示することができる。なお、アスファルト舗装の損傷情報としては、例えば、路面の汚れ、ポットホール陥没、段差、轍、罅割れ、縦段凹凸、舗装の剥離、濡水、ポンピングなどを挙げることができる。そして、これらのアスファルト舗装の損傷情報を記号化し、その損傷のアスファルト舗装上での発生位置に対応させて表示画面上に表記することができる。
【0039】
ここで、轍によるアスファルト舗装の損傷状態のみを確認する場合、表示項目選択画面183にて轍の項目のみを選択することで、轍によるアスファルト舗装の損傷状態のみが重ね合わせられた構造図182を切替表示することができる。
図9は、本発明の実施形態に係る道路構造図に重ね合わせされた管理情報(点検情報)の編集方法の一例を示す図である。図9において、構造図181には、アスファルト舗装の損傷情報が重ね合わせて表示されるとともに、表示項目選択画面183が合わせて表示されている。そして、アスファルト舗装の損傷情報において、例えば、オンマウス操作等によって特定の項目のみが選択されると、管理情報表示画面184が起動され、その項目についての詳細情報が表示される。
【0040】
また、マウスクリック操作等によって管理情報編集画面185を起動し、変更項目の入力を行うことで、図1の管理情報登録装置113を介して管理情報記憶装置116の管理情報を更新することができる。
なお、損傷箇所の補修等を行った際の記録である保全情報についても、点検情報と同様に、専用の管理情報表示画面(図示省略)が設定されており、保全情報の情報表示画面をマウスクリック操作等によって起動すると、その項目についての保全情報についての詳細情報が表示されるので、変更項目の入力を行うことで、管理情報登録装置113を介して管理情報記憶装置116の管理情報(保全情報)を更新することができる。
【0041】
図1に示すように、制御装置120は、位置変換装置190及び地図表示装置192を備えている。位置変換装置190は、管理情報登録装置113により管理情報154の一部として登録された損傷等の管理箇所の位置データ及び、路面修理等の保全箇所の位置データをそれぞれ緯度、経度及び標高により規定される地球座標系(三次元座標系)の座標位置(緯度、経度、標高)に変換する。
また地図表示装置192は、位置変換装置190により得られた座標位置(緯度、経度、標高)に基づいて既存の道路地図データベースにアクセスし、座標位置(緯度、経度、標高)に対応する箇所(点検箇所又は保全箇所)をポインタ等により道路地図151上に表示する。このような操作は、例えば、制御装置120にアクセスする権限を有するクライアント端末等から実行可能となっている。
【0042】
なお、保全箇所又は点検箇所の位置データには、道路の縦断方向に沿った保全箇所又は点検箇所からキロポスト194までの路長、上下線区分、ルート区分、車線名及び、道路の横断方向に沿った車線内相対位置(具体的には、横断方向に沿った道路中心から保全箇所又は点検箇所までの距離)が含まれる。このとき、道路縦断方向にそった相対位置は、キロポスト194を基準とするKP値に変換される。また保全箇所又は点検箇所の標高については、座標位置(緯度、経度)が複数本の道路が上下方向に沿って重なり合った立体区間を示す場合にのみ表示データの一部として取り扱われる。この場合、地図表示装置192は、標高と一致する1本の道路を特定し、例えば、道路地図上で該当する1本の道路のみを太い実線で示し、他の道路を細線や破線等により示す。
【0043】
次に、道路情報管理装置における位置変換装置190が保全情報及び点検情報の位置データを三次元座標位置(緯度、経度、標高)に変換する方法について説明する。
図10は、道路の幾何構造情報(道路構造モデル)を模式的に示す構成図である。道路構造モデル196は、複数個の区間198が区間端点200により鎖状に連結されて構成されている。道路構造モデル196における区間198は、上下線区分、ルート区分(左ルート、右ルート、両ルート)車線数等の道路構成が変わると新しい他の区間198として定義され、互いに隣接する区間198の間(境界)が区間端点200となる。
【0044】
道路構造モデル196には、各区間198毎における道路構造の平面線形データおよび縦断線形データを保持する道路線形情報と、道幅(幅員)データや横断方向の勾配率データを保持する横断構成情報とが含まれる。
道路線形情報の平面線形データは、緯度方向及び経度方向に沿った平面上における道路中心線を構成する線形状を情報として保持しており、直線、円曲線、クロソイド曲線の3種類の線種の組合せで道路を表現している。それらの曲線又は直線からなる道路構造は、曲線又は直線を表す関数及び設備定数により表すことができ、これらの関数及び設備定数に基づいて、道路中心線上における線分の長さ、線分上の点の座標をそれぞれ算出することができる。
【0045】
図11には、道路構造モデルの具体的な一例として、(A)に道路構成情報、(B)平面線形情報、(C)に縦断線形情報、(D)に路面横断情報をそれぞれ示す。これらは、旧日本道路公団が作成したJHDM(Japan Highway Data Model)と呼ばれる高速道路のデータ仕様であり、道路情報管理装置はJHDMの仕様に基づいたデータにアクセスし、必要な情報を得ることができるとする。
【0046】
平面線形情報206は、緯度及び経度に沿った平面上における道路中心204の線形を示し、道路中心204上の座標位置(緯度、経度)を求めるために利用する。縦断線形情報208は、道路中心204に対する縦断方向の情報で、道路中心204上の座標位置(標高)を求めるために利用する。路面横断情報210は、ある道路区間又は地点の、路面の横断方向の情報を保持しており、道幅(幅員)、横断勾配率を保持している。路面横断情報210によれば、縦断線形情報で求めた標高に対して、横断勾配、幅員をもとに、道路中心204から一定距離だけ離れた路面上の位置の標高を求める(補正する)ことが出来る。
【0047】
次に、道路に対する保全又は点検により発見された保全箇所及び点検箇所の座標位置(緯度、経度)を算出する方法について説明する。ここでは、保全箇所及び点検箇所の一例として損傷212(図13参照)の座標位置を算出する場合について説明する。
先ず、位置変換装置190は、区間198内における損傷212のKP値を判断し、この損傷212のKP値を道路中心204の変極点214(図11(B)参照)を表すKP値と比較することにより、損傷212が含まれる平面線形の形状(直線、円曲線、クロソイド曲線のいずれか)を特定する。変極点214は平面線形の形状の変化する箇所であり、それぞれの平面線形の始点あるいは終点である。
【0048】
次いで、位置変換装置190は、KP値と一致する道路中心204の範囲(点又は線分)の緯度及び経度を算出する。ここで、図11(B)に示すように、道路構造モデル196の平面線形情報は、各変極点214間の平面線形を定義するための設備定数(パラメータ)を有している。平面線形が直線である場合には、パラメータとして始点及び終点が設定されている。また平面線形が円曲線である場合には、パラメータとして始点、終点、回転方向及び極率半径が設定されている。また平面線形がクロソイド曲線である場合には、パラメータとして始点、終点、回転方向、始点の極率半径、終点の極率半径及び、クロソイドパラメータが設定されている。
【0049】
位置変換装置190には、直線、円曲線及びクロソイド曲線をそれぞれ定義する直線関数、円関数及びクロソイド関数がプログラムとしてインストールされており、このプログラムに上記パラメータを設定すると共に、変数として損傷212のKP値を代入することにより、区間198の始点Aからの緯度及び経度に沿った変化量が算出できる。例えば、図12に示すように、区間198の始点AのKP値を“0”とし、この始点Aの座標位置(緯度、経度)が既知であるとする。
【0050】
そして、道路縦断方向に沿って損傷212と一致するP点のKP値が“65”である場合には、変極点A−変極点B間は直線関数で表され、この直線関数に変数として“20”を代入することにより、変極点Bの緯度及び経度の変化量が算出できるので、この変移量を始点Aの座標位置(Xa、Ya)に差分として加算すれば、変極点Bの座標点が求められる。同様に、変極点C、D、Eの座標点を順次求めることができ、E−P間を表す直線関数に変数として“13”を代入し、この結果(緯度及び経度の変化量)を変極点Eの座標位置に加算すれば、位置Pの座標位置(Xp、Yp)を求めることができる。
【0051】
なお、平面線形情報206は、変極点214の始点・終点のKP値情報として保持しているが、予め各座標位置を保持していても構わない。この場合、P点の最寄りの変極点の座標位置は分かるので、該当する変局点からの差分計算だけで位置Pの座標位置(Xp、Yp)を求めることができる。
ここで、位置Pの座標位置(Xp、Yp)は、道路縦断方向に沿って損傷212と一致する道路中心204の二次元座標であり、単車線道路等の幅員が十分に狭い道路では、位置Pの座標位置(Xp、Yp)を近似的に損傷212の座標位置と見做すこともできる。また損傷212が道路縦断方向に沿って一定の長さを有する場合には、後述するように、位置Pは2個の座標位置(Xp、Yp)及び(Xp、Yp)により始点及び終点を特定して範囲を限定する必要がある。
【0052】
一方、幅員が広い道路では、図13に示すように道路202には車線が複数あり、位置Pに対する損傷212の緯度及び経度の変化量を座標位置(Xp、Yp)に加算し、実際の損傷212の位置Qを示す座標位置(Xq、Yq)を算出する必要がある。この場合には、先ず線分P−Qの長さrを求め、このrをX成分、Y成分に分解し、位置Qの示す座標位置を導出する。
道路中心204上の位置Pにおいて、道路中心204における位置Pの接線CLを特定する。接線CLは、位置Pの長さが小さく実質的に道路中心204上の点と見做せる場合には、位置Pで接線CLを引けば良く、また位置Pが一定の長さを有した線分と見做す必要がある場合には、2個の座標位置(Xp、Yp)及び(Xp、Yp)でそれぞれ接線CL1及びCL2を引く必要がある。
【0053】
ここでは、説明を簡単にするため位置Pが道路中心204上の点と見做せる場合を一例として説明を行う。図13に示すように、位置Pと損傷212とを通過する接線CLに対する垂線VLを考えると、位置Pに対する位置Qの緯度方向及び軽度方向の変移量が下記(1)及び(2)式により求まる。
ΔX=r×sinα ・・・ (1)
ΔY=r×cosα ・・・ (2)
(1)及び(2)式で、rは位置Pから位置Qの線分長、αは東西方向(緯度方向)に対する接線CLの傾きである。ここで、線分長rについて、次のように求めることができる。
【0054】
図22、図23及び図24は、それぞれ損傷212の線分長rを求める方法を説明したものである。損傷212の位置データの一つとして、道路202の横断方向に沿った損傷箇所の車線内相対位置(車線内の何処に損傷があるかのデータ)の情報がある。例えば、車線内の中央、左端、或いは車線左端から80cm等である。図22の例では、車線内(第一走行車線202A)の左端から長さJに損傷212があることを示す。ここで、説明の為に車線内の右端からは長さJ’とすると、J+J’は第1走行車線202Aの幅に相当する。
【0055】
線分長rは、損傷212のある車線内の部分(第一走行車線202A内の部分)と、損傷212のある車線以外の部分(第二走行車線202B内の部分)とに分けられる。前者は車線の幅から長さJを引いたもの(即ちJ’)、後者は長さKから長さSを引いたものとなる。長さSとは、道路中心204から道路端までの距離で、全車線の総和の半分になる。長さKとは、損傷212のある車線202Aに対する道路202の端からの距離になる。損傷212の車線の位置により長さKの求め方が異なり、図22のように損傷212のある車線202Aが道路中心204より左にある場合は道路右端からの距離となる。
【0056】
また図23のように損傷212のある車線202Cが道路中心204より右にある場合は道路左端からの距離となる。この図23から明らかなように、長さKから長さSを引くと、道路中心204から損傷212のある車線202Cまでの距離になる。
ここで、道路202の左端から順に、車線を自然数で1、2、3、…、nとナンバリングする。そして、各車線の長さの総和をΣで表すものとし、Σ(n)は、車線1〜車線nまでの長さの総和になる。今、車線数がn、損傷212が車線番号pにあるとすると、以下のように定式化される。
【0057】
・損傷が道路中心より左側の場合:
r=J’+(K−S) ・・・ (3)
K=Σ(n)−Σ(p) ・・・ (4)
S=Σ(n)/2 ・・・ (5)
・損傷が道路中心より右側の場合:
r=J+(K−S) ・・・ (6)
K=Σ(p−1) ・・・ (7)
S=Σ(n)/2 ・・・ (8)
【0058】
なお、図24に示すように、損傷212のある車線が道路中心204のある車線と同じ場合、K−Sの値は負になるが考え方は変わらず、上記(3)式〜(8)も成り立つ。
次いで、位置変換装置190は、上記のようにして求めたΔX及びΔYを緯度及び経度の変化量に換算する。
図14は地球における位置Pと位置Qとの幾何学的な関係を示す模式図、図15は道路上における位置Pと位置Qとの幾何学的な関係を拡大して示す平面図、図16は地球における位置Pに対する位置Qの緯度変化量を説明するための模式図、図17は地球における位置Pに対する位置Qの経度変化量を説明するための模式図である。
【0059】
ここで、Rは地球216の赤道半径(=6378137(m))、Rは位置Pの緯度線で地球216を切断した場合の切断面の半径、πは円周率(=3.14)とする。また位置Pに対する位置Qの緯度の変化量をΔK、経度の変化量をΔIとすると、これらは下記(9)及び(10)式により表される。
ΔK=Xq−Xp ・・・ (9)
ΔI=Yq−Yp ・・・ (10)
【0060】
図16に示すように、地球216の中心から位置Pに引いた線分と位置Qに引いた線分との交差角をΔI、ΔIの円弧をΔYとする。
ΔY=R× ΔI ・・ (11)
従って、(9)及び(10)式により
Yq×(π÷180)=ΔI+Yp×(π÷180)
=(ΔY÷R)+Yp×(π÷180)・・・(12)
よって、
Yq={(ΔY÷R)+Yp×(π÷180)}×(180 ÷π)・・・(13)
【0061】
位置Pの半径Rは赤道半径Rよりも小さく、Rは下記(14)式により求まる。
=R×Cos(Yp×(π÷180)) ・・・ (14)
経度の変化量については、図17に示すように、位置Pと位置Qとの地球断面中心における交差角をΔK、ΔKの円弧をΔXとすると、
ΔX=RP× ΔK×(π÷180) ・・・ (15)
ここで、(15)式に(9)及び(14)式を代入すると、
ΔX={R×cos(Yp×(π÷180))}×(Xq−Xq)×(π×180))
・・・ (16)
よって、
Xq={Xp×(π÷180)+ΔX÷{R×Cos(Yp×(π÷180))}}×180÷π ・・・ (17)
【0062】
上記のようにして損傷212の位置Qの(Xq、Yq)が求まったらならば、最後に、位置変換装置190は位置Qの標高を算出する。
先ず、位置変換装置190は、図11(C)の道路構造モデルの縦断線形情報208に基づいて位置Pの標高(Zp)を求める。縦断線形情報は、勾配の変移点218間の線形を定義するための設備定数(パラメータ)を有している。このパラメータとしては、例えば、標高及び勾配の種類(前勾配又は後勾配)が設定されている。
位置変換装置190は、直線関数に基づいて(Xp、Yp)を算出する場合と同様に、KP値を変数として道路中心204での標高の変化量を算出でき、区間端末の座標位置(標高)に変化量を加算することにより、位置Zpの標高を求めることができる。
【0063】
次いで、位置変換装置190は、位置Zp及び図18の路面横断情報に基づいて損傷212の標高Zqを算出する。路面横断情報210には、路面の横断方向に沿った勾配、各路線の幅員、路端標高(始点標高又は、終点標高)がパラメータとして設定されており、基本的に線分長rを変数とし、上記パラメータが設定された直線関数に変数を代入することにより、位置Qの標高(Zq)が求まる。
【0064】
なお、以上の説明では、損傷212の道路縦断方向に沿った長さが十分に短く、損傷212と一致する道路中心204の領域が近似的に点であると見做せる場合について説明したが、損傷212が道路縦断方向に沿って一定以上の長さを有しており、損傷212と一致する道路中心204の領域が線分である場合には、上記の場合と同様な方法で、線分両端の2個の座標位置(Xp、Yp)及び(Xp、Yp)についてそれぞれ三次元座標(Xq、Yq、Zq)及び(Xq、Yq、Zq)を算出することにより、一定の長さを有する損傷212の位置及び範囲を三次元座標(数値データ)として特定でき、それを道路地図上に表示することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る道路情報管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る道路の幾何構造を定義する幾何構造情報と、道路供用過程において行われる業務情報との関係を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る道路構造を表現する幾何構造モデルと、点検業務や保全業務を表現する管理業務モデルのクラス(データ集合)を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る区間情報および施設情報の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る管理情報の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る接続情報の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るユーザーインターフェースの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る道路構造図に重ね合わせされた管理情報の切り替え方法の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る道路構造図に重ね合わせされた管理情報の編集方法の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る道路の幾何構造情報(道路構造モデル)を模式的に示す構成図である。
【図11】本発明の実施形態に係る道路構造モデルにおける道路構成情報、平面線形情報、縦断線形情報及び路面横断情報をそれぞれ示す構成図である。
【図12】本発明の実施形態に係る道路構造モデルにおける平面線形情報の具体的な一例を示す構成図である。
【図13】本発明の実施形態に係る道路中心に対する損傷の緯度及び経度の変化量の算出方法を説明するための平面図である。
【図14】地球における道路中心位置と損傷位置との幾何学的な関係を示す模式図である。
【図15】道路上における道路中心位置と損傷位置との幾何学的な関係を拡大して示す平面図である。
【図16】地球における道路中心位置に対する損傷位置の緯度変化量を説明するための模式図である。
【図17】地球における道路中心位置に対する損傷位置の経度変化量を説明するための模式図である。
【図18】本発明の実施形態に係る道路中心に対する損傷の標高の変化量の算出方法を説明するための道路の横断面図である。
【図19】道路及びこの道路の保全作業を行う作業員を模式的に示す斜視図である。
【図20】道路及びこの道路における損傷位置をGPS対応の携帯端末により測定する作業員を模式的に示す斜視図である。
【図21】GPS対応の携帯端末による損傷位置の特定方法を模式的に示す構成図である。
【図22】道路中心から損傷までの線分長を求める方法を説明するための道路の模式図である。
【図23】道路中心から損傷までの線分長を求める方法を説明するための道路の模式図である。
【図24】道路中心から損傷までの線分長を求める方法を説明するための道路の模式図である。
【符号の説明】
【0066】
10 道路構造データモデル
11 道路線形情報
12 道路構成情報
20 点検業務データモデル
30 保全業務データモデル
110 道路情報格納装置
111 区間情報登録装置
112 施設情報登録装置
113 管理情報登録装置
114 区間情報記憶装置(道路構造モデル記憶手段)
115 施設情報記憶装置
116 管理情報記憶装置(業務データモデル記憶手段)
117 接続情報記憶装置(位置特定手段)
120 制御装置
123 構造図出力装置
124 表示項目切替装置
130 路線図表示装置
151 道路地図
152 区間情報
161 接続情報
170 表示画面
183 表示項目選択画面
184 管理情報表示画面
185 管理情報編集画面
190 位置変換装置(位置変換手段)
192 地図表示装置(表示手段)
194 キロポスト
196 道路構造モデル
198 区間
202 道路
204 道路中心
206 平面線形情報
208 縦断線形情報
210 路面横断情報
212 損傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路構造を表現するために必要な最小の道路区間単位で構成された道路に関するデータを道路構造モデルとして記憶する道路構造モデル記憶手段と、
道路供用段階において発生する道路の保全箇所及び点検箇所にそれぞれ対応する保全情報及び点検情報を記憶する業務データモデル記憶手段と、
前記保全情報及び点検情報に含まれる位置データに基づいて、前記保全箇所及び点検箇所を含む道路区間を特定すると共に、該道路区間における前記保全箇所又は点検箇所の相対位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段により特定された前記道路区間上における前記保全箇所又は前記点検箇所の相対位置を、前記位置データを用いて緯度、経度及び標高により規定される地球座標系の座標位置に変換する位置変換手段と、を備え、
前記位置データには、道路縦断方向に沿った前記保全箇所又は点検箇所から距離標までの路長、上下線区分、ルート区分、車線名及び、道路横断方向に沿った車線内相対位置が含まれることを特徴とする道路情報管理装置。
【請求項2】
前記位置変換手段により得られた三次元座標位置に基づいて前記保全箇所又は点検箇所を道路地図上に表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1記載の道路情報管理装置。
【請求項3】
前記位置変換手段は、前記道路構造モデルの平面線形データ及び、道路に沿って一定間隔毎に設置された距離標から前記保全箇所又は点検箇所までの路長に基づいて、前記道路縦断方向に沿って前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の緯度及び経度を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の道路情報管理装置。
【請求項4】
前記平面線形データには、平面上における道路区間の線形形状を表すための関数及び設備定数が含まれ、
前記位置変換手段は、前記保全箇所又は点検箇所が含まれる道路区間の前記関数及び設備定数に基づいて、前記道路縦断方向に沿って前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の始点及び終点の緯度及び経度をそれぞれ算出すると共に、前記始点から前記終点までの路長を算出することを特徴とする請求項3記載の道路情報管理装置。
【請求項5】
前記位置変換手段は、前記保全箇所又は点検箇所と一致する始点から終点までの線分の緯度方向又は経度方向に対する傾き量を算出すると共に、前記保全箇所又は点検箇所から道路中心までの垂線の前記緯度方向及び経度方向に沿ったX軸及びY軸に対する投影成分をそれぞれ算出し、前記傾き量及び2個の前記投影成分を用いて道路中心から前記保全箇所又は点検箇所までの前記X軸及びY軸に沿った線分長をそれぞれ算出することを特徴とする請求項4記載の道路情報管理装置。
【請求項6】
前記位置変換手段は、道路中心から前記保全箇所又は点検箇所までの前記X軸及びY軸に沿った線分長を緯度及び経度の変化量にそれぞれ変換し、これらの緯度の変化量及び経度の変化量を、前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心の緯度及び経度に加算して、前記保全箇所又は点検箇所の緯度及び経度を算出することを特徴とする請求項5記載の道路情報管理装置。
【請求項7】
前記道路構造モデルには、道路区間における前記道路縦断方向に沿った標高変化に対応する標高データ及び前記道路横断方向に沿った路面の傾斜角に対応する勾配データが含まれ、
前記位置変換手段は、前記保全箇所又は点検箇所と一致する道路中心及び前記標高データに基づいて、該道路中心の標高を算出すると共に、前記保全箇所又は点検箇所から前記道路中心まで距離及び前記勾配データに基づいて、前記道路中心の標高に対する前記保全箇所又は点検箇所の標高の変化を算出することを特徴とする請求項6記載の道路情報管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−179997(P2009−179997A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19526(P2008−19526)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】