説明

道路照明装置

【課題】樹木のような遮蔽物が隣接する場合であっても当該遮蔽物の影響を受け難くし、なおかつ、自動車運転者が感じる眩しさを抑制する。
【解決手段】道路100の走行方向P1に沿って道路100の端部に設けられた樹木(遮蔽物)J同士の間に、当該樹木Jの高さよりも低い位置に照明器具10が配置され、この配置状態において道路100の走行方向P1における最大光度鉛直角を60°±5°とし、最大光度の照射光が自動車運転者の視線の高さから逸れるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路の路面を照明する道路照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路照明装置の一つとして、照明器具がポールに支持されてなるポール照明装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなポール照明装置にあっては、約10M(メートル)長のポールが用いられ、当該ポール照明装置を道路に沿って所定の間隔で配置して路面を照明するといった事が行われている。
ところで、近年、都市部にあっては、ヒートアイランド対策の一環として幹線道路沿いに植樹が行われている。
【特許文献1】特開2000−222911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図8に示すように、植樹される樹木Jの高さがポール照明装置Kと同程度となると、樹木Jの枝や葉が生い茂った場合にポール照明装置Kの照明光が遮られてしまうといった問題がある。この結果、路面の明るさにムラが生じて路面の均斉度の低下を招き、自動車運転者の視界に悪影響を及ぼすことになる。この対策案としては、樹木Jにより照明光が遮られない程度にポールを低くすることが考えられるものの、ポールを低くすると照明器具が路面に近くなることから自動車運転者が感じる眩しさが強くなる、といった問題がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、樹木のような遮蔽物が隣接する場合であっても当該遮蔽物の影響を受け難くし、なおかつ、自動車運転者が感じる眩しさを抑制することのできる道路照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、道路の路面を照明する照明器具を備えた道路照明装置であって、前記道路の走行方向に沿って前記道路の端部に設けられた遮蔽物同士の間に、当該遮蔽物の高さよりも低い位置に前記照明器具が配置され、この配置状態において前記道路の走行方向における最大光度鉛直角を60°±5°とし、最大光度の照射光が自動車運転者の視線の高さから逸れるように構成したことを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記発明において、前記遮蔽物が前記道路の端部に植樹された樹木であり、かつ、前記照明器具の取り付け高さが5メートル乃至7メートルに設定されたことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記発明において、前記照明器具が、少なくとも前記道路の幅員方向全体を照射するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記発明において、前記照明器具の最大光度鉛直角以上の鉛直角範囲の光度を抑制するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記発明において、前記照明器具は、管状の光源と、前記光源の一端側に配置され、かつ、前記光源からの光を前記道路の幅員方向に反射する第1反射面を有する反射体とを備え、前記第1反射面を起こして前記第1反射面での光の反射角を小さくし、前記道路の幅員方向遠方の路面に照射光が照射されるように構成したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記発明において、前記反射体は、前記光源の周方向に沿って配置され、前記光源からの光を前記道路の走行方向に反射する第2反射面を有し、前記第2反射面のうち、前記照明器具の最大鉛直角に対応する箇所の反射面の反射率、または、最大鉛直角に対応する箇所の反射面積を小さく構成し、前記最大鉛直角の光度を抑制するように構成したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記発明において、前記照明器具の照射面にはカバーが配設され、前記カバーがフラット形状に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遮蔽物の高さよりも低い位置に照明器具が配置されるため、照明器具の照射光が遮蔽物に遮蔽されるのが防止される。さらに、この配置状態において道路の走行方向における最大光度鉛直角を60°±5°としたため、最大光度の照射光が自動車運転者の視線の高さから逸れることとなり、自動車運転者が感じる眩しさが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、道路照明装置の一態様たるポール照明装置に本発明を適用した場合を例示する。
図1は本実施の形態を示すポール照明装置の構成を示す模式図であり、図2および図3はポール照明装置の使用の態様を示す図である。
図1に示すように、ポール照明装置1は、照明器具10と、この照明器具10を頂上部12で支持するポール11とを有し、さらに、ポール11が下段ポール11Aおよび上段ポール11Bとを有した、いわゆる段付ポールとして構成され、このポール11が図2に示すように地面Gに立設されて道路わきに配置される。また、照明器具10としては、左右対称な配光特性を有するものが用いられている。なお、ポール11は段付ポールでなく1本のポールで構成されていても良い。
【0014】
以下の説明では、図3に示すように、3.5M(メートル)幅の上り車線101および下り車線102を有する道路100の片側(図示例では上り車線101側)に複数のポール照明装置1を所定間隔S(図示例では28M)で配置して路面100Aを照明する場合を説明する。
【0015】
本実施の形態では、ポール照明装置1のポール11は、前掲図1に示すように、地面Gに立設された場合に、地面Gからの頭頂部12までの高さ(すなわち、照明器具10の取り付け高さ)Hが約5M〜約7M(メートル)(図示例では6M)に構成され、従来の10Mよりも低く抑えられている。このようにポール11の高さHを従来よりも低くすることで、図2に示すように、ポール照明装置1の照明器具10が樹木Jの高さよりも低い位置に配置されることなり、当該ポール照明装置1に近接して植樹された樹木Jの枝葉が生い茂る枝葉部Jaの下方に、照明器具10の照明光を通すことが可能となる。これにより、路面100Aに樹木Jの影を生じさせなくすることができる。
【0016】
ところで、ポール照明装置1のポール11の高さHを低くした場合、照明器具10から路面100Aまでの距離が短縮されることからポール照明装置1の直下の照度だけが他の箇所よりも極端に高くなり、照度ムラが生じるといった問題がある。
そこで本実施の形態では、図4に示すように、照明器具10の最大光度鉛直角を60°±5°の角度範囲Rdに配置した配光特性として、最大光度鉛直角を従来のものよりも比較的小さくしている。これにより、ポール照明装置1の直下に比較的近い箇所に最大光度が配置されて、ポール照明装置1の直下の照度だけではなく、その周辺の照度も高められるため、路面100A上の照度ムラを抑え、総合輝度均斉度U0を約0.4以上とすることが可能となる。
さらに、最大光度鉛直角を小さくすることで、最大光度の照射光が車両運転者の目に直接届き難くなるため、TI値を15%以下とし、眩しさを抑制することが可能となる。
【0017】
また、ポール照明装置1のポール11の高さHを低くした場合には、図5に示すように、道路100の幅員方向P2における照明光Nの到達距離が短くなり、前掲図3に示すように、路面100Aにおいて、ポール照明装置1から幅員方向P2の遠方に位置する車線側(図示例では下り車線102)のエリアAでの照度の低下を招くという問題が生じる。
【0018】
この問題の対策案として、図6に示すように、照明器具10の照射面10Aが道路100側に向くように、当該照明器具10の取付角αを大きくすることが考えられる。しかしながら、取付角αを大きくした場合には、ポール照明装置1のデザイン性が損なわれ、また、ポール11の高さHを低くしていることから照射光が車両運転者の目に直接入り易くなり、運転者が眩しさを感じるという弊害を生じる。
【0019】
また別の対策案としては、照明器具10の照射面10Aにグローブガラスを取り付けることで照射光を拡散して幅員方向P2の方向遠方にまで到達させることが可能となるが、この場合にはグレアの増大を招くこととなる。
【0020】
そこで本実施の形態では、照明器具10の取付角αを約10°前後と小さく抑えつつ、幅員方向P2の遠方まで照射光を到達させるべく、照明器具10に内蔵された反射板(反射体)の配光を次のように制御することとしている。
【0021】
図7は本実施の形態に係る反射板20の構成を示す斜視図である。
この図に示すように、反射板20は、光源であるランプ30の光に対して所定の反射率を有する金属板(例えばアルミニウム板)がランプ30を囲うカップ状に形成され、この反射板20の開口20Aが、照明器具10の照射面10Aに嵌め込まれたフラット形状のカバーガラスである図示せぬフラットガラスを臨むように収納される。
【0022】
また、反射板20は、ランプ30の後方、つまり、ランプ30が接続されるソケット側に形成された反射面21Aと、ランプ30の周方向に沿って形成された反射面21Bと、ランプ30の縦軸先端方向、すなわち、反射面21Aとの対向面に形成された反射面21Cとが一体的に連接して形成されており、上記反射面21Aによって道路100の幅員方向P2に向けて光が反射され、また、反射面21Bによって道路100の走行方向P1に向けて光が反射される。
【0023】
ランプ30は略円筒状に構成され、ランプ30の縦軸32が反射板20の左右対称軸と重なるように配置される。これにより、照明器具10の照射光は、道路100の走行方向P1に、この照明器具10を中心として左右対称に照射される。
【0024】
ここで、道路100の幅員方向P2には反射面21Aで反射された光が、ポール照明装置1から遠方に位置する車線102(図3参照)に向けて照射される。そこで、本実施の形態では、この反射面21Aを起こすことで、ランプ20から反射面21Aへの光の入射角、すなわち、反射面21Aによる光の反射角(鉛直角Vθ)を小さくしている。これにより、前掲図4に示すように、鉛直角Vθが比較的小さなエリアRaの光度が高くなり、ポール照明装置1から幅員方向P2の遠方に位置する車線側を照明することが可能となる。
【0025】
また、本実施の形態では、道路100の幅員方向P2に向けて光を反射する補助反射面40を反射面21Bに形成することで、前掲図4に示すように、水平角Hφが比較的小さなエリアRbの光度、すなわち、幅員方向P2の遠方に位置する車線側への光量を増やし、路面100A全体の照度の均一化、すなわち、均斉度の向上を図ることとしている。
【0026】
さて、道路100の走行方向P1には反射面21Bで反射された光が照射されるのは上述した通りであり、この反射面21Bは、階段状に複数の反射部21B1・・・21Bnを連接した形状に形成され、各反射部21B1・・・21Bnがランプ30の光をそれぞれに固有の鉛直角Vθの方向に反射する。このとき、反射板20の底部23に位置する反射部21Bnよりも開口20A側に位置する反射部21B1の方がより大きな鉛直角Vθの方向に光を反射するように形成されており、反射部21B1が照明器具10の最大鉛直角方向の照射光を形成することとなる。
【0027】
一方、車両運転者に対しては、鉛直角Vθが大きい光ほど直接届き易くなる。したがって、最大鉛直角方向への照射光の光度を下げることで、眩しさを抑えることが可能となる。そこで、本実施の形態では、この最大鉛直角方向の照射光を形成する反射部21B1の表面を粗面に加工することで、当該反射部21B1の反射率を低下させ、これにより、最大鉛直角方向の照射光の光度、すなわち、図4に示すエリアRcの光度を下げることとしている。なお、反射部21B1の面積を小さくすることで、最大鉛直角方向の照射光の光度を抑制することも可能である。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、樹木Jの高さよりも低い位置、具体的には、5メートル〜7メートルの高さに照明器具10が配置されるようにしたため、照明器具10の照明光を樹木Jの下方に通すことが可能となり、樹木Jが隣接する場合であっても当該樹木Jの枝葉部Jaの影が路面100Aに生じることが防止される。
特に、ポール11の長さを従来のものよりも短縮可能であるため、ポール11のコストを抑え、設備費の低減が図られる。また、高所作業が軽減されるため、施工・維持作業の省力化が図れる。
さらに、照明器具10の取付高さHが従来のものよりも低くなるため、路面100Aの照度が高められる。換言すれば、低いワット数の光源により従来の照度を達成可能であるため、ポール照明装置1の電力費の低減が図られる。
【0029】
また、本実施の形態によれば、照明器具10を樹木Jの高さよりも低い位置に配置した状態において道路100の走行方向P1における最大光度鉛直角を60°±5°としたため、最大光度の照射光が自動車運転者の視線の高さから逸れるようになり、グレアが抑制される。さらに、照明器具10の取付高さHを低くした場合であっても、照明器具10の直下の照度だけが極端に高くなることを防止でき、路面の均斉度を高めることが可能となり、以って、良好な照明環境を実現することができる。
【0030】
また、本実施の形態によれば、照明器具10が、少なくとも道路100の幅員方向P2全体を照射するように構成されているため、照明器具10の取付高さHを低くした場合であっても、ポール照明装置1から遠くに位置する車線側が暗くなることがない。
【0031】
また、本実施の形態によれば、照明器具10の最大光度鉛直角以上の鉛直角範囲の光度を抑制するように構成したため、照明器具10の取付高さHを低くした場合であっても、車両運転者の目に届く光量が抑制され、眩しさを抑えることができる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、照明器具10の照射面に配設されるカバーガラスをフラット形状のフラットガラスとしたため、グレアの増大を抑制することができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態はあくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、ポール照明装置1の設置間隔Sが28Mの場合を例示したが、これに限らない。但し、設置間隔を例えば28Mまたは35Mとすることで、既設のポール照明装置の基礎部分を再利用することが可能となる。
また例えば、上述した実施の形態では、道路照明装置の一態様としてポール照明装置1について例示したが、これに限らず、照明器具10が例えば電柱に設けられてなる道路照明装置や、道路を照明するように構成しても良い。
また、本発明の道路照明装置によれば、照明器具10が低い位置に配置されて路面を照明することが可能となるため、例えば、道路照明装置の高さが制限されるような箇所の照明に応用が可能である。このような応用としては、例えば高架下に設けられた道路の照明が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るポール照明装置の構成を示す図である。
【図2】ポール照明装置の設置の態様を示す図である。
【図3】ポール照明装置の設置の態様を示す上面図である。
【図4】ポール照明装置の配光を説明するための図である。
【図5】ポール照明装置による道路の幅員方向の照明を説明するための図である。
【図6】照明器具の取付角を示す図である。
【図7】照明器具に内蔵された反射板の構成を示す斜視図である。
【図8】従来のポール照明装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ポール照明装置(道路照明装置)
10 照明器具
10A 照射面
11 ポール
20 反射板
21A、21B、21C 反射面
30 ランプ
100 道路
Hφ 水平角
Vθ 鉛直角
P1 走行方向
P2 幅員方向
J 樹木(遮蔽物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面を照明する照明器具を備えた道路照明装置であって、
前記道路の走行方向に沿って前記道路の端部に設けられた遮蔽物同士の間に、当該遮蔽物の高さよりも低い位置に前記照明器具が配置され、この配置状態において前記道路の走行方向における最大光度鉛直角を60°±5°とし、最大光度の照射光が自動車運転者の視線の高さから逸れるように構成した
ことを特徴とする道路照明装置。
【請求項2】
前記遮蔽物が前記道路の端部に植樹された樹木であり、かつ、前記照明器具の取り付け高さを5メートル乃至7メートルに設定されたことを特徴とする請求項1に記載の道路照明装置。
【請求項3】
前記照明器具が、少なくとも前記道路の幅員方向全体を照射するように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の道路照明装置。
【請求項4】
前記照明器具の最大光度鉛直角以上の鉛直角範囲の光度を抑制するように構成された
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の道路照明装置。
【請求項5】
前記照明器具は、管状の光源と、前記光源の一端側に配置され、かつ、前記光源からの光を前記道路の幅員方向に反射する第1反射面を有する反射体とを備え、
前記第1反射面を起こして前記第1反射面での光の反射角を小さくし、前記道路の幅員方向遠方の路面に照射光が照射されるように構成した
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の道路照明装置。
【請求項6】
前記反射体は、前記光源の周方向に沿って配置され、前記光源からの光を前記道路の走行方向に反射する第2反射面を有し、
前記第2反射面のうち、前記照明器具の最大鉛直角に対応する箇所の反射面の反射率、または、最大鉛直角に対応する箇所の反射面積を小さく構成し、前記最大鉛直角の光度を抑制するように構成した
ことを特徴とする請求項5に記載の道路照明装置。
【請求項7】
前記照明器具の照射面にはカバーが配設され、前記カバーがフラット形状に構成された
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の道路照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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