説明

遠心分離機

【課題】
サンプルハイトを設定する際に、回転速度設定値か遠心加速度設定値のいずれかを再計算するかユーザが選択できるようにして使い勝手の良い遠心分離機を提供する。
【解決手段】
遠心分離機において、運転条件には、ロータ回転速度、遠心加速度、サンプルハイトを含み、操作部を用いてサンプルハイトを設定する際に、サンプルハイトとロータ回転速度から遠心加速度を算出するか(回転速度選択アイコン203)、またはサンプルハイトと遠心加速度からロータ回転速度を算出するか(遠心加速度選択アイコン204)の、いずれかの算出モードを選択可能とした。また、選択されているロータによって定まるサンプルハイトの入力範囲209を表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転条件入力の操作性を改善した遠心分離機に関し、特に運転条件の一つであるサンプルハイトを用いて、回転速度又は遠心加速度のいずれか一方から他方の運転条件を計算によって算出する遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機を用いたサンプル(試料)の分離においては、ユーザ(操作者)は、ロータの回転速度、遠心分離の運転時間、ロータ室の温度、遠心加速度、サンプルハイト等の遠心分離に必要な運転条件を決定し、操作部からこれらの運転条件を入力し、サンプル個々の特性に適した遠心分離を行う。これらの運転条件(パラメータ)は、すべてを手入力で入力しても良いが、使用するロータの種類がわかっている場合は、いくつかのパラメータから他のパラメータを計算により算出することが可能である。例えば、遠心加速度RCF(g)は、回転半径r(mm)と回転速度N(rpm)から、数1により算出できる。
【0003】
【数1】

【0004】
この数1を変形すれば、数2のように表すことができる。
【0005】
【数2】

【0006】
さらに数2を変形すれば、数3のように表すことができる。
【0007】
【数3】

【0008】
以上に示した数1から数3の関係から、RCF、r、Nの3つのパラメータのうち2つが決まれば、残りのパラメータは数1、数2、数3のいずれかの式を用いて算出できる。
【0009】
例えば、上記で用いた回転半径rは特許文献1で記載されているとおり、サンプルを入れロータに挿入するためのチューブの底からチューブ内の高さ方向に任意の点までの距離を基に制御部内の演算機能で算出できる。サンプルハイトの設定方法を図7を用いて説明する。図7は、サンプルを入れた状態のチューブ31の側面図である。通常、ユーザはサンプルハイトとしてサンプルの液面からチューブ底までの任意の点を用いることができる。一例として、サンプルの液面とチューブ底までの距離の中心点の高さをサンプルハイトとすることができる。これを図示したのが図7である。図7に示すようにチューブ31を垂直に立てた状態でチューブ底から任意の点(サンプルの液面高さの半分)までの距離がサンプルハイトとなる。このサンプルハイト値を用いて、制御部はあらかじめ選択されたロータに固有のチューブ底の回転半径とチューブ31の設置角度のデータを用いて、数1または数2で用いる回転半径rを計算によって求めることができる。尚、サンプルハイトの範囲は、チューブ31に入れることできる許容サンプル容量によって、その上限値が決まってくる。このように、遠心分離機にサンプルハイトが入力されると、制御部は回転半径rを即座に計算によって算出することが可能となる。
【0010】
次に図1を用いて従来の遠心分離機における表示画面を説明する。表示画面100には、遠心分離機の運転条件の設定値や運転状態など多くの情報を表示する表示部であり、タッチパネル式の液晶表示装置にて実現される。そのため、表示画面を指でタッチすることにより運転条件の入力等の必要な情報を入力することができる入力部としても機能する。表示画面100には、回転速度表示領域101、遠心分離時間表示領域104、ロータ室又はロータ温度表示領域107、遠心加速度表示領域110、サンプルハイト表示領域113が割り当てられる。ユーザがそれぞれの領域のいずれかに指でタッチすると、図示しないテンキー画面が表示され、数値を入力することにより選択された領域に対する設定値を入力することができる。
【0011】
回転速度表示領域101には、設定回転速度103として15,800rpmが設定され、図では現在の回転速度状態値102が0(ロータの停止中)であることを示している。遠心分離時間表示領域104には、運転時間設定値106として6時間00分が設定され、運転時間状態値105は、直前の運転において運転時間が設定値に達するまで問題なく満了し、残り時間が0時間00分となって終了したことを示している。よって、スタートキー117が押されると同時に運転分離時間表示領域105の表示が、6:00と表示され、即座にカウトダウンするか、ロータの回転速度が、設定回転速度に達してから、運転分離時間表示領域105の表示のカウントダウンが開始される。ロータ室又はロータ温度表示領域107には、設定温度109が20.0℃と設定され、ロータ室又はロータの現在温度値108が25.0℃であることを示している。遠心加速度表示領域110には、遠心加速度設定値112が23,000gと設定され、現在の回転数の遠心加速度111が0(ロータ停止中の為)であることを示している。サンプルハイト表示領域113には、10mmと設定された状態を示している。
【0012】
表示画面100には、ロータ名表示領域115が設けられ、ユーザが入力したロータの形式、または、遠心分離機が自動認識したロータの型式が表示される。図1の例では“R26A−0001”という型式のロータがセットされていることを示している。ユーザが、このロータ名表示領域115にタッチすると、適用可能ロータ(図示せず)が一覧表示され、ユーザは一覧表示から装着されたロータを選択することができる。表示画面100の左下には、遠心分離機を操作するユーザ名がアイコンと共に表示されるユーザ名表示領域116が設けられる。ユーザ名は個別に登録することができるが、本実施例ではデフォルト値の“USER”のままであることを示す。表示画面100の右下には、遠心分離運転の開始を指示するスタートキー117と、遠心分離中に強制的に運転を停止させるためのストップキー118がアイコンまたはボタン形式で表示される。
【0013】
従来の技術では、回転速度設定値103を設定した後にサンプルハイト設定値114を設定すると、回転速度設定値103とサンプルハイト設定値114の値からまだ入力されていない遠心加速度設定値112が数1を用いて自動的に算出され、遠心加速度表示領域110の遠心加速度設定値112として計算結果(ここでは23,000g)が表示される。また、遠心加速度設定値112を設定した後にサンプルハイト設定値114を設定すると、まだ入力されていない回転速度設定値103(ここでは、15,800rpm)が数2を用いて自動的に算出され、回転速度表示領域101に計算結果が表示されるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−281146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の技術において表示画面100の遠心加速度設定値112又は回転速度表示領域101が計算にて算出されたものである場合、サンプルハイトを設定したときに適用される計算式は、それ以前に回転速度と遠心加速度のどちらが最後に設定されていたかによって選択されるようになっていた。しかしながら、一端サンプルハイトが設定された後に、サンプルハイト値を変えるために回転速度と遠心加速度のいずれかの設定値を変更しようとする場合、従来の技術では、最後に設定された項目がどちらであるかを知る手段がなく、ユーザが最後に設定された項目を意識していなかった場合或いは忘れた場合は、再設定を誤ってしまう恐れがあった。また、サンプルハイトの再設定の際に適用される計算式(上記式1か式2)を、ユーザが容易に選択することができなかった。
【0016】
さらに、例えば遠心分離機を運転しているとき、ユーザが運転状態を変えることなく任意のサンプルハイトにおける遠心加速度を知ろうとしてサンプルハイト値を変更することがある。このとき遠心分離機の運転条件として最後に回転速度が設定されていれば(数1)が適用され、再計算された遠心加速度の値が表示される。ところが遠心加速度を設定して運転していながらユーザがこのことを忘れてサンプルハイト値を変更すると、(数2)が適用されて回転速度が再計算され、運転中の回転速度がユーザの意図しない変化をしてしまうという不都合がある恐れがあった。
【0017】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、使い勝手の良い遠心分離機を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、サンプルハイトを設定する際に、回転速度設定値か遠心加速度設定値のいずれかを再計算するかユーザが選択できるようにした遠心分離機を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、表示画面において回転速度と遠心加速度のどちらが計算によって算出された設定値であるかをユーザが知ることができるようにした遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0021】
本発明の一つの特徴によれば、試料を保持するロータと、ロータを回転駆動する駆動部と、ロータの運転条件の入力を行う操作部(入力手段)と、ロータの運転状態の表示を行う表示部(表示手段)と、これらの制御をおこなう制御部を備えた遠心分離機において、運転条件には、ロータ回転速度、遠心加速度、サンプルハイトを含み、操作部を用いてサンプルハイトを設定する際に、サンプルハイトとロータ回転速度から遠心加速度を算出するか、またはサンプルハイトと遠心加速度からロータ回転速度を算出するかの、いずれかの算出モードを選択可能とした。また、操作部に、サンプルハイトの入力時にいずれの算出モードを用いるかを選択させる選択キーを設けた。このように、サンプルハイトを入力した時、回転速度と遠心加速度のどちらを算出するのかをユーザが任意に選択できる手段を設けた。
【0022】
本発明の他の特徴によれば、選択キーはサンプルハイトを修正する際に入力され、制御部はユーザによって選択された選択キーに基づいて算出を行う。操作部及び表示部は、表示画面と入力キーにより実現できるが、タッチ式の液晶表示パネルを用いて一体に構成するようにしても良い。サンプルハイトが修正された際には、修正されたサンプルハイトから遠心加速度又は回転速度のいずれかが算出されたかを識別できるように、算出値の表示形態を変えて表示部に表示するようにすると好ましい。また、操作部からサンプルハイトを入力する時に、制御部はあらかじめ選択されたロータの固有情報からサンプルハイトの入力設定範囲を表示部に表示すると良い。
【0023】
本発明のさらに他の特徴によれば、試料を保持するロータと、ロータを回転駆動する駆動部と、ロータの運転条件の入力を行う操作部と、ロータの運転状態の表示を行う表示部と、これらの制御をおこなう制御部を備えた遠心分離機において、運転条件には、ロータ回転速度、遠心加速度、サンプルハイトを含み、サンプルハイトと、ロータ回転速度又は遠心加速度の一方を入力することによって、ロータ回転速度又は遠心加速度の他方を計算によって算出し、計算によって算出された運転条件を、入力された他の運転条件と表示形態を変更させて同一の画面上に表示するようにした。表示形態の変更は、表示の色、形状、付随する修飾表示、又はこれらの組み合わせを変更することによって実現する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、遠心分離機において、操作部を用いてサンプルハイトを設定する際に、サンプルハイトとロータ回転速度から遠心加速度を算出するか、またはサンプルハイトと遠心加速度からロータ回転速度を算出するかの、いずれかの算出モードを選択可能としたので、サンプルハイトの入力に伴いユーザが意図する運転条件の再計算を選択できる。
【0025】
請求項2の発明によれば、サンプルハイトの入力時にいずれの算出モードを用いるかを選択させる選択キーを操作部に設けたので、この選択キーを選ぶことによってユーザはサンプルハイトとロータ回転速度から遠心加速度を算出するか、またはサンプルハイトと遠心加速度からロータ回転速度を算出するかを容易に選択することができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、選択キーは、サンプルハイトを修正する際に入力されるので、ユーザはサンプルハイトの入力時に、回転速度または遠心加速度のどちらが算出されるのかを知ることができるので、ユーザに便宜を与え使い勝手の良い遠心分離機を提供できる。
【0027】
請求項4の発明によれば、操作部及び表示部は、タッチ式の液晶表示パネルを用いて一体に構成されるので、操作部及び表示部を少ないスペースに設置できると共に、GUI(グラフィックユーザインターフェース)を用いた使いやすい遠心分離機を実現できる。
【0028】
請求項5の発明によれば、サンプルハイトが修正された際に、修正されたサンプルハイトから遠心加速度又は回転速度のいずれかが算出されたかをユーザが識別できるように、算出値の表示形態を変えて表示部に表示するので、ユーザはサンプルハイトの修正後にどの部分が計算によって変更されたかを一目で認識することができる。
【0029】
請求項6の発明によれば、操作部からサンプルハイトを入力する時に、制御部はあらかじめ選択されたロータの固有情報からサンプルハイトの入力設定範囲を表示部に表示するので、ユーザは入力しようとする値が適切であるか否かを事前に知ることができ、操作性の良い遠心分離機を実現できる。
【0030】
請求項7の発明によれば運転条件の一部が計算によって算出される遠心分離機において、計算によって算出された運転条件を、入力された他の運転条件と表示形態を変更させて同一の画面上に表示するので、ユーザはどの値が計算値であるかを一目で識別することができる。
【0031】
請求項8の発明によれば、表示形態の変更は、表示の色、形状、付随する表示、又はこれらの組み合わせを変更することであるので、表示部への表示形態の変更により簡単に計算箇所の識別表示を実現できる。
【0032】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来例及び本発明に係る遠心分離機の運転条件を入力し運転状態を表示する表示画面を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る遠心分離機1の全体構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る遠心分離機1のサンプルハイト設定画面200を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る遠心分離機1の運転条件の入力手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る遠心分離機1のサンプルハイトの再設定手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施例に係る遠心分離機1の表示画面300を示す図である。
【図7】従来例及び本発明に係る遠心分離機に用いられるチューブ31の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0034】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0035】
図2は、本発明の実施例に係る遠心分離機1の全体構成を示す図である。図ではドア7を閉じた状態を示す。筐体8の上部には表示・操作部2が設けられ、表示・操作部2は多種の機能を付加させるためタッチパネル機能付きの液晶表示装置で構成され、表示部の機能と操作部(入力部)の機能を同時に実現するものである。筐体8の内部にはロータ3を収容するための回転室5が設けられる。回転室5は、その上面の開口部が筐体8から外側に向くように配置され、開口部はドア7によって開閉される。ドア7はスプリングヒンジ10にて開閉可能に保持され、ドア7を開けた時にはスプリングヒンジ10で常時開き側に付勢される。回転室5の内部には、遠心分離機するサンプルを保持するロータ3が収納され、ロータ3は回転室5の内部に延びる駆動部4の回転軸にセットされる。駆動部4は、例えば電気モータであって、制御部6によってその回転の駆動が制御され、ロータ3を所定の回転速度にて回転させる。冷却部9は、回転室5の内部を冷却するための冷却装置であって、制御部6によって制御される。
【0036】
制御部6は、遠心分離機1の全体の制御を行うものであって、演算機能を有するマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。制御部6は、表示・操作部2から入力される回転速度、運転時間、設定温度、運転ロータ、遠心加速度、サンプルハイトなどの運転条件に基づいて駆動部4や冷却部9を制御する。制御部6内の図示しない記憶装置には、ユーザによって入力される運転条件、ロータ室にセットされるロータ情報等が記憶される。また、温度センサ12の出力や、図示されていないドアロック機構に設けられているドア開閉検出センサ11の出力が制御部に入力される。
【0037】
図1は、図2の遠心分離機の表示・操作部2の画面であり、表示される画面上で見る限り、上述した従来例の遠心分離機における表示画面と全く同一である。表示画面100には回転速度表示領域101、遠心分離時間表示領域104、ロータ室又はロータ温度表示領域107、遠心加速度表示領域110、サンプルハイト表示領域113、ロータ名領域115があり、回転速度表示領域101の上段にある大きい文字は回転速度状態値102、下段の小さい文字は回転速度設定値103で、回転速度表示領域101の枠内をタッチすると図示しないテンキーの画面が表示し回転速度が設定できる。
【0038】
同様に遠心分離時間表示領域104の上段は運転時間状態値105、下段は運転時間設定値106、ロータ室又はロータ温度表示領域107の上段が回転室内の現在温度値108で下段が温度設定値109の表示欄、また、遠心加速度表示領域110の上段は遠心加速度状態値111で下段は遠心加速度設定値112である。回転速度と同様に該当する枠内をタッチすると図示しないテンキーの画面が表示され運転条件を設定できる。
【0039】
ユーザ名表示領域116にタッチすると図示しないユーザリストが表示され、遠心分離機を使用するユーザを選択でき、選択したユーザ名がユーザ名表示領域116に表示される。ロータ名領域115にタッチすると適用可能なロータ名一覧が表示され、ユーザが使用するロータ3を選択するとロータ名領域115にロータ名が表示される。
【0040】
サンプルハイト表示領域113にはサンプルハイト設定値114が表示される。サンプルハイト表示領域113にタッチすると図3のサンプルハイト設定画面200に切り替わる。図3において、サンプルハイト設定画面200は、サンプルハイト表示欄201、サンプルハイト表示欄201に数値を入力するための0〜9までの数字キーを含むテンキー210が表示される。また、サンプルハイト表示欄201の右側には、2つの選択キーがアイコン形式で表示される。選択キーの一つは回転速度選択アイコン203であり、これを選択することにより入力されたサンプルハイトと遠心加速度から回転速度を算出する算出モードが選択される。選択キーのもう一つは遠心加速度選択アイコン204であり、これを選択することにより入力されたサンプルハイトと回転速度から遠心加速度を算出する算出モードが選択される。
【0041】
回転速度選択アイコン203、遠心加速度選択アイコン204の下方には、回転速度206と遠心加速度207が表示される。これらのうちのいずれかは入力されたサンプルハイト設定値202に基づいて計算されたものである。サンプルハイト表示欄201の下方には、あらかじめ選択されているロータ名208、ロータ名208で定まるサンプルハイトの入力設定範囲209が表示される。サンプルハイト設定画面200の下部には、テンキー210が表示され、右上には図1の画面に戻るための戻るボタン205が表示される。テンキー210の内部にはエンターキー211と、テンキー210を閉じるための閉じるボタン212が表示される。
【0042】
ここで、回転速度選択アイコン203と遠心加速度選択アイコン204は、選択されている方が太い黒枠で囲まれるようなボタン構成とする。また、黒枠でなく黒文字で背景色が白色のボタン構成としても良い。尚、図3では白黒表示であるが、実際の遠心分離機では、カラー表示の液晶表示パネルを用いることがあり、その場合は、カラー表示を用いて様々な表示形態を実現することができ、選択されている方を一目で認識できるように表示できる。図3において、遠心加速度選択アイコン204が選択されている場合を示している。アイコンの内部には、どちらの運転条件を用いて何を算出するかが文字と矢印で表示されており、遠心加速度選択アイコン204には矢印で示すように、入力されている回転速度(図1の回転速度設定値103)から遠心加速度を算出することを表示している。同様に、回転速度選択アイコン203には矢印で示すように、入力されている遠心加速度(図1の遠心加速度設定値112)から回転速度Nを算出することを表示している。
【0043】
ユーザはテンキー210を使ってサンプルハイトを変更する前に、必要に応じて回転速度選択アイコン203または遠心加速度選択アイコン204をいずれかをタッチすることにより選択する。ここで選択されたアイコンは制御部6内の記憶装置に記憶され、サンプルハイト設定画面200を再び表示したときには、制御部6内の記憶装置に記憶された状態をもとに図3の回転速度選択アイコン203と遠心加速度選択アイコン204の表示状態が設定される。
【0044】
サンプルハイト表示欄201の枠内をタッチするとテンキー210が表示されサンプルハイトを入力し、テンキー210内のエンターキー211をタッチするとサンプルハイト設定値202が確定する。この時、図3の例では遠心加速度選択アイコン204が選択されているため、入力された新たなサンプルハイト設定値202と回転速度206(この値は図1の回転速度設定値103を表示したものである)から、新たに遠心加速度を再計算して遠心加速度207の値が更新される。また、このようにサンプルハイト設定値202を入力したあとに戻るボタン205を選択すると、図1の表示画面100に戻るが、その際の遠心加速度設定値112には、再計算された遠心加速度207の値が自動的にセットされる。
【0045】
一方、図3のサンプルハイト設定画面200において回転速度選択アイコン203が選択されている場合(図示せず)は、入力された新たなサンプルハイト設定値202と遠心加速度207(この値は図1の遠心加速度設定値112を表示したものである)から回転速度が再計算され、回転速度206の値が更新される。このサンプルハイト設定値202を入力後に戻るボタン205を選択すると、図1の表示画面100に戻るが、その際の回転速度設定値103には、再計算された回転速度206がセットされる。
【0046】
さらに、サンプルハイト設定画面200には、サンプルハイトの入力設定範囲209が表示される。これは、ロータの形状の違いにより回転半径rはロータ毎に異なるので、制御部6内の記憶装置にロータ3に対応したサンプルハイトの入力設定範囲データをあらかじめ登録しておき、サンプルハイト設定画面200を表示する際に、記憶装置から該当するロータのサンプルハイトの入力設定範囲を読み込んで表示するようにした。このため、ユーザは適切なサンプルハイトの入力設定範囲を即座に知ることができ、自分が入力しようとするサンプルハイト値の妥当性を確認することができる。尚、サンプルハイトの入力設定範囲209を外れたサンプルハイトが入力された場合は、何らかの手段によって入力値が不適切である旨のメッセージを表示することが望ましい。
【0047】
次に、図4のフローチャートを用いて本実施例に係る遠心分離機1の運転条件の入力手順を説明する。遠心分離運転に先立ち、ユーザはサンプル(試料)のセットされたロータ3を遠心分離機1の回転室5にセットする。次に、図1の表示画面100において、回転速度表示領域101をタッチして回転速度を入力し、遠心分離時間表示領域104をタッチして遠心分離時間を入力し、ロータ室又はロータ温度表示領域107をタッチしてロータ室温度を入力し、必要に応じてその他の運転条件や設定事項を入力する(ステップ41)。ここで、セットされたロータ3が遠心分離機に識別されていない状態の場合は、ユーザはロータ名領域115をタッチしてロータ名を選択すると良い。
【0048】
次に、ユーザはサンプルハイト表示領域113をタッチして、表示されたテンキーによりサンプルハイトを入力する(ステップ42)。サンプルハイトが入力されると、制御部はロータ情報に基づいて回転半径rを算出し、回転半径rと入力された回転速度により前述した式1を用いて遠心加速度RCFを算出し(ステップ43)、その計算結果を表示画面100の遠心加速度設定値112(図1参照)に表示する(ステップ44)。
【0049】
次に、制御部6はユーザがスタートキー117をタッチして、遠心分離運転の開始を指示したか否かを検出し、タッチされた場合は、設定された条件に従って遠心分離運転が行われる(ステップ46)。遠心分離運転の制御手順は、公知の方法で行えばよいのでここでの説明は省略する。スタートキー117がタッチされない場合は、ユーザは必要に応じて設定条件の修正を行う(ステップ47)。
【0050】
設定条件の修正には、回転速度、遠心分離時間、ロータ室温度、サンプルハイト等の修正があるが、図5のフローチャートを用いて遠心分離機1のサンプルハイトの再設定する場合の手順を説明する。まず、図4のステップ44にて表示されている状態(図1の表示画面100)において、ユーザはサンプルハイト表示領域113をタッチすることにより図3に示したサンプルハイト設定画面200を表示する(ステップ51)。この場面がいわゆる修正画面となる。次に、ユーザは修正されるサンプルハイトを元に、ロータ回転速度又は遠心加速度のいずれかの算出値を計算するかを選択するために、回転速度選択アイコン203又は遠心加速度選択アイコン204のいずれかを選択する(ステップ52)。尚、図3のサンプルハイト設定画面200が表示されるときには、現在表示されている算出モードがどちらであるかわかるように選択されている方の枠が太枠のボタン構成で表示される。現在選択中の算出モードで変更が必要ない場合は、算出モードの選択完了として次のステップに進む。
【0051】
その後、テンキー210を用いて修正すべきサンプルハイトを入力する(ステップ51)。ここで、ユーザは入力設定範囲209に設定された、サンプルハイトの最小設定値、最大設定値を参考にして適切な値を入力することができる。サンプルハイトが入力されると、制御部6はロータ3の情報や上述した式1又は式2を用いて遠心加速度RCF又は回転速度Nを算出する(ステップ54)。計算された値は、回転速度206又は遠心加速度207としてサンプルハイト設定画面200中に表示される。ユーザはそれらの値を見ながら修正したサンプルハイト値の妥当性を確認して、戻るボタン205を選択して、図4のステップ45に戻る。修正したサンプルハイト値を更に変更する場合は、戻るボタン205を押すことなくステップ52に戻りステップ52〜55の手順を繰り返す。
【0052】
以上、本実施例によれば、サンプルハイトと回転速度から遠心加速度を算出するのか、またはサンプルハイトと遠心加速度から回転速度を算出するのか、ユーザの都合に合わせた選択ができ、さらにサンプルハイトの入力設定範囲を画面に表示することで、サンプルハイトの誤入力を低減する使い勝手の良い遠心分離機を提供できる。また、図3の画面上で、算出モードとして現在どちらが選択されているかが一目瞭然となるように、回転速度選択アイコン203、遠心加速度選択アイコン204が表示色、表示形態を変えて表示されるので、設定ミスを少なくすることができユーザにとって使いやすい遠心分離機を実現できる。
【0053】
以上の実施例では、表示・操作部2をタッチパネル式の液晶表示手段で実現したが、本発明はこれに限るものではなく、非タッチ式の液晶表示パネル又はその他の表示装置による表示部と、物理的な入力ボタン或いは任意の入力装置を有する操作部を別々に設けても良い。また、表示部には、たとえばLEDの組み合わせによる簡易的な表示部で実現しても良い。
【実施例2】
【0054】
次に図6を用いて本発明の第二の実施例を説明する。第二の実施例は、図1に示した表示画面100の表示形態を変更したものである。図6において図1と同じ構成の部分には同じ参照符号を付しており、繰り返しの説明は省略する。第2の実施例において第1の実施例と異なる点は、2つの運転条件から計算によって算出された設定値を、他の表示と形態を変えて表示することである。図6の状態では、サンプルハイト表示領域113に表示されたサンプルハイト設定値114と設定回転速度303から、遠心加速度設定値312が計算によって算出されたことを示している。
【0055】
まず、サンプルハイト設定値114が入力されると、ロータ3の形式とサンプルハイトから、回転半径rが算出できる。この回転半径rと入力された回転速度Nを用いると、前述した式1を用いて遠心加速度RCFが算出できる。算出された遠心加速度RCFは、遠心加速度設定値312の欄に“白抜き表示”で表示される。つまり、遠心加速度設定値312の欄を他の設定値の欄(303、106、109等)の表示形態と異なるように表示する。表示形態を変える方法としては、遠心加速度設定値312の点滅させる、文字フォントを変える、文字を太字、斜体等で表示する、文字の大きさを変える、付加文字やマークを合わせて表示する等、任意の表示形態を用いることができる。また、図6では、表示画面300が白黒の液晶表示パネルの例を示しているが、カラーの液晶表示パネルを用いる場合は、遠心加速度設定値312の文字の表示色を変える、任意の色の反転文字を使う等の色彩を用いた表示方法が採用できる。このように、遠心加速度設定値312が計算によって求められたことをユーザによって容易に識別できるような形態で表示されるので、ユーザはどの値が計算値であるかを一目で識別することができる。
【0056】
尚、図3において回転速度選択アイコン203を選択したような場合(図示せず)は、サンプルハイト設定値114が入力されると、前述した式2を用いて回転速度Nが算出されることになる。その場合は、算出された回転速度Nは、設定回転速度303の欄に“白抜き表示”で表示されことになり、遠心加速度設定値312は通常の形態で表示されることになる。この表示画面を見ることにより、ユーザは設定回転速度303が計算値であるかを一目で識別することができる。
【0057】
以上、第2の実施例によれば、運転条件の一部が計算によって算出される遠心分離機において、計算によって算出された運転条件を、入力された他の運転条件と表示形態を変更させて同一の画面上に表示するので、ユーザはどの値が計算値であるかを一目で識別することができ、意図しない回転速度の変化を招くといったような不都合を避けることができ、ユーザに便宜を与え使い勝手の良い遠心分離機を提供できる。
【0058】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では、サンプルハイトの入力画面に、前記サンプルハイトとロータ回転速度から遠心加速度を算出するか、またはサンプルハイトと遠心加速度からロータ回転速度を算出するかの選択用のアイコンを表示するようにしたが、サンプルハイトの入力画面だけに限らずに、その他の運転条件の入力時に、計算によって算出するモードを選択する選択キーを表示しても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 遠心分離機 2 表示・操作部 3 ロータ 4 駆動部
5 回転室 6 制御部 7 ドア 8 筐体
9 冷却部 10 スプリングヒンジ 11 ドア開閉検出センサ
12 温度センサ 31 チューブ 100 表示画面
101 回転速度表示領域 102 回転速度状態値
103 回転速度設定値 104 遠心分離時間表示領域
105 運転時間状態値 106 運転時間設定値
107 ロータ室又はロータ温度表示領域 108 現在温度値
109 温度設定値 110 遠心加速度表示領域
111 遠心加速度状態値 112 遠心加速度設定値
113 サンプルハイト表示領域 114 サンプルハイト設定値
115 ロータ名領域 116 ユーザ名表示領域
117 スタートキー 118 ストップキー
200 サンプルハイト設定画面 201 サンプルハイト表示欄
202 サンプルハイト設定値 203 回転速度選択アイコン
204 遠心加速度選択アイコン 205 戻るボタン
206 回転速度 207 遠心加速度 208 ロータ名
209 入力設定範囲 210 テンキー 211 エンターキー
212 閉じるボタン 300 表示画面 303 設定回転速度
312 遠心加速度設定値 RCF 遠心加速度(g)
N 回転速度(rpm) r 回転半径(mm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するロータと、
前記ロータを回転駆動する駆動部と、
前記ロータの運転条件の入力を行う操作部と、
前記ロータの運転状態の表示を行う表示部と、
前記駆動部、前記操作部、前記表示部の制御をおこなう制御部を備えた遠心分離機において、
前記運転条件には、ロータ回転速度、遠心加速度、サンプルハイトを含み、
前記操作部を用いて前記サンプルハイトを設定する際に、前記サンプルハイトとロータ回転速度から遠心加速度を算出するか、またはサンプルハイトと遠心加速度からロータ回転速度を算出するかの、いずれかの算出モードを選択可能としたことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記操作部に、前記サンプルハイトの入力時にいずれの前記算出モードを用いるかを選択させる選択キーを設けたことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機
【請求項3】
前記選択キーは、前記サンプルハイトを修正する際に入力され、
前記制御部はユーザによって選択された選択キーに基づいて算出を行うことを特徴とする請求項2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記操作部及び前記表示部は、タッチ式の液晶表示パネルを用いて一体に構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記サンプルハイトが修正された際に、修正されたサンプルハイトから遠心加速度又は回転速度のいずれかが算出されたかを識別できるように、算出値の表示形態を変えて前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記操作部からサンプルハイトを入力する時に、制御部はあらかじめ選択されたロータの固有情報からサンプルハイトの入力設定範囲を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項7】
試料を保持するロータと、
前記ロータを回転駆動する駆動部と、
前記ロータの運転条件の入力を行う操作部と、
前記ロータの運転状態の表示を行う表示部と、
前記駆動部、前記操作部、前記表示部の制御をおこなう制御部を備えた遠心分離機において、
前記運転条件には、ロータ回転速度、遠心加速度、サンプルハイトを含み、
前記サンプルハイトと、ロータ回転速度又は遠心加速度に一方を入力することによって、ロータ回転速度又は遠心加速度の他方を計算によって算出し、
前記計算によって算出された運転条件を、入力された他の運転条件と表示形態を変更させて同一の画面上に表示することを特徴とする遠心分離機。
【請求項8】
前記表示形態の変更は、表示の色、形状、付随する表示、又はこれらの組み合わせを変更することであることを特徴とする請求項7に記載の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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