説明

遠心分離装置

【課題】個々の遠心分離容器の重量が未知であっても、ロータの重量のインバランスを簡易に検出および補正する。
【解決手段】水平方向に延びる水平軸体2aを備え鉛直軸線回りに回転させられる回転軸体2と、該回転軸体2を半径方向に挟んで2つの遠心分離容器6a,6bを支持するとともに、水平軸体2a回りに揺動可能に支持された支持アーム3と、該支持アーム3を回転軸体2に対して固定する固定機構3cと、支持アーム3に固定され、内部に気泡4aおよび液体が封入された水準器4と、該水準器4内における気泡4aの位置を検出する検出部5と、該検出部5により検出された気泡4aの位置情報に基づいて、支持アーム3の重量バランスを調節する調節手段7とを備える遠心分離装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の遠心分離装置は、ロータがインバランスの状態で回転して懸濁液が正常に遠心分離されなかったり振動により装置が破損したりするのを未然に防ぐために、各遠心分離容器の重量が等しくなるように予め内容量を調節し、回転軸体を中心に対称に遠心分離容器を装着して使用される。
【0003】
また、血液や生体試料などの滅菌性の維持が必要な懸濁液(例えば、各種の細胞等を含む、細胞懸濁液など)を遠心分離するときは、上清の排出や処理液の供給を円滑に行うために、あらかじめ給排用のチューブが挿入された遠心分離容器が使用される。チューブは遠心分離装置の外部の送液ポンプや他の容器に接続され、遠心分離容器を遠心分離装置に装着した状態で、遠心分離容器内に給排液が可能になっている。
【0004】
一方、装置の傾きや振動の大きさを検出する手段として装置に水準器を設け、気泡の位置を電気的に検出して装置の動作を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002―355493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チューブにより外部に接続された遠心分離容器の場合、その重量を正確に測定するのは困難である。したがって、ロータのインバランスが生じているか否かは、一度ロータを回転させてそのときの振動から判断する以外に検出する手段がない。また、各遠心分離容器の重量が異なりインバランスが検出されても、どの遠心分離容器がどの程度軽いのかを正確に知ることができない。そのため、バランサにより重量の偏りを調節しようとしても、調節すべき遠心分離容器と用いるべきバランサの重量とが分からないという問題がある。
【0007】
したがって、インバランスが生じているときは、ロータを一度停止させ、一の遠心分離容器に一定の量の液体を供給し、再度ロータを回転させてインバランスの状態を確認するという手順を繰り返しながらインバランスの補正が行われている。しかし、このような作業は時間と人の労力を要し、非常に効率が悪いという課題がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、個々の遠心分離容器の重量が未知であっても、ロータの重量のインバランスを簡易に検出および補正することができる遠心分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、水平方向に延びる水平軸体を備え鉛直軸線回りに回転させられる回転軸体と、該回転軸体を半径方向に挟んで2つの遠心分離容器を支持するとともに、前記水平軸体回りに揺動可能に支持された支持アームと、該支持アームを前記回転軸体に対して固定する固定機構と、前記支持アームに固定され、内部に気泡および液体が封入された水準器と、該水準器内における前記気泡の位置を検出する検出部と、該検出部により検出された前記気泡の位置情報に基づいて、前記支持アームの重量バランスを調節する調節手段とを備える遠心分離装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、遠心分離容器を支持アームに支持させて、固定機構により支持アームが回転軸体に固定された状態で回転軸体が回転させられると、支持アームおよび遠心分離容器も回転軸体を中心に回転させられて半径方向外方の遠心力が作用する。したがって、遠心分離容器内に懸濁液を収容することで、懸濁液内の各成分にその比重に応じた大きさの遠心力を作用させて、成分を比重の差により分離することができる。
【0011】
この場合に、支持アームは、固定機構により固定されていないときは、水平軸体を支点としてその両側が上下方向に揺動可能になっている。したがって、支持アームの重量バランスが回転軸体を中心に偏っていると、重量の大きい方が下がるように支持アームが揺動させられる。
【0012】
このときに、水準器も支持アームと一体で傾けられて気泡の位置が水準器内を上方、つまり、軽い方の遠心分離容器側へ移動し、その変位が検出部により検出される。そして、調節手段が、気泡の位置を、支持アームが水平なときに配置される位置(水平位置)に戻すように支持アームの重量バランスを調節する。
【0013】
すなわち、本発明によれば、2つの遠心分離容器の重量がインバランスのときに、そのインバランスによって支持アームが傾くようにすることで、回転が停止していても遠心分離容器の重量のインバランスを容易に検出できる。さらに、支持アームの傾きの方向および角度の大きさから、目視でも容易に重量の偏っている方向およびその程度を認識することができる。
【0014】
また、水準器を設けることにより、支持アームの傾き、つまり、インバランスがより高い精度で検出される。これにより、気泡の位置が水平位置に戻るように重量バランスを調節することで、重量の偏りの大きさが未知であっても、遠心分離容器の重量を簡易にかつ精度良く調節することができる。
【0015】
また、支持アームを回転軸体に固定する固定機構を設けることにより、回転時には支持アームが揺動して振動するのを防止して安全に回転させることができる。
【0016】
上記発明においては、前記調節手段が、前記遠心分離容器内または前記支持アームに設けられた収容部内に重量バランサを供給する供給機構を備えることとしてもよい。
このようにすることで、支持アームがインバランスにより傾いて気泡が移動すると、その移動方向に配置される遠心分離容器内または収容部内に重量バランサが供給され、ロータのインバランスを補正することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記支持アームが、前記水平軸体に直交する方向に移動可能に設けられ、前記調節手段が、前記支持アームを前記水平軸体に直交する方向に移動させる移動機構を備えることとしてもよい。
【0018】
このようにすることで、支持アームの重量が水平軸体を中心に偏ると、支持アームの重心位置が水平軸体から、該水平軸体に直交する方向へ移動する。したがって、移動した新しい重心位置へ水平軸体を移動させることにより、水平軸体の両側の支持アームの回転モーメントが等しくなり、支持アームのインバランスを補正することができる。
また、支持アームを水平軸体に対して直交する方向に移動させるだけでよいので、バランサによる重量の調節のための複雑な機構が不要となり、構成を簡易にすることができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記支持アームが、前記回転軸体に向かって開口した溝部を有し、前記水平軸体が、前記回転軸体の外面から半径方向外方に突出して前記溝部内に挿入され、該溝部の上側の側壁に密着させられ、前記固定機構が、前記水平軸体の下部から鉛直方向に移動可能に設けられた磁性材料からなる可動部材と、該可動部材に磁力を作用させて鉛直軸方向に移動させ、鉛直下方に移動させることで前記溝部の下側の側壁に前記可動部材を密着させる磁力発生手段とを備えることとしてもよい。
【0020】
このようにすることで、支持アームを水平軸体に直交する方向に容易に移動させ、溝部内において水平軸体の位置を容易に調節することができる。
また、磁力発生手段により可動部材に磁力が作用させられると、可動部材が下方または上方へ移動させられる。
【0021】
すなわち、可動部材が下方へ引っ張られるように磁力を発生させると、可動部材が溝部の下側に内壁に密着して、支持アームが回転軸体に固定される。また、可動部材が上方へ引っ張られるように磁力を発生する、あるいは、磁力の発生を停止すると、水平軸体と溝部の内壁との固定が解除されて、支持アームが揺動可能になる。これにより、支持アームの揺動可能な状態と、回転軸体に固定された状態とを容易に切り替えることができる。
【0022】
また、上記発明においては、前記磁力発生手段が、前記可動部材を鉛直上方に移動させるように磁力を作用させ、前記固定機構が、前記水平軸体に対して前記可動部材を鉛直下方に付勢する付勢部材を備えることとしてもよい。
【0023】
このようにすることで、可動部材は、付勢部材により溝部の下側の内壁に密着させられ、支持アームと回転軸体とが固定される。また、磁力発生手段が、付勢部材の付勢に抗して可動部材を上方へ移動させるように磁力を作用させると、可動部材による固定が解除されて、支持アームが揺動可能になる。これにより、支持アームが回転軸体に対して固定された状態と、揺動可能な状態とを容易に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、個々の遠心分離容器の重量が未知であっても、ロータの重量のインバランスを簡易に検出および補正することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施形態について、図1を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る遠心分離装置1は、図1に示されるように、鉛直軸線回りに回転させられる回転軸体2と、該回転軸体2に交差して支持されたアーム(支持アーム)3と、該アーム3に固定された水準器4と、該水準器4内の気泡4aの位置を検出する光センサ(検出部)5と、該光センサ5の出力に基づいて遠心分離容器6a,6b内に洗浄液(重量バランサ)Aを送液する送液ポンプ(調節手段、供給機構)7とを備えている。
【0026】
回転軸体2は、直立した円柱状で、外面の中心軸対象な位置から半径方向外方に水平に突出した2本の水平軸体2aを備えている。回転軸体2は、モータ2bにより鉛直軸線回りに回転させられる。
【0027】
アーム3は、回転軸体2を径方向に挟んで対向して設けられ、両端には遠心分離容器6a,6bを収納するホルダ3aが揺動可能に支持されている。アーム3の回転軸体2と対向する面の略中心位置には円状の溝3bが設けられ、該溝3bの内周面との間にベアリング3cを介して水平軸体2aが挿入されている。これにより、アーム3の略中心位置を回転軸体2に固定しながら、アーム3が水平軸体2aを支点として上下方向に揺動可能になっている。
【0028】
回転軸体2が回転させられると、アーム3およびホルダ3aも回転させられる。ホルダ3aは、回転軸体2を中心とした半径方向外方の遠心力により、底部が回転軸体2から離間する方向へ揺動させられ、図1の2点鎖線で示されるように、その長手方向を水平方向に保持したまま回転させられる。
【0029】
水準器4は、アーム3と平行に、アーム3の上方の面に設けられ、アーム3が水平に保持されているときは、気泡4aの位置が水準器4内の中心に配置されるようになっている。ホルダ3a内に収納された各遠心分離容器6a,6bの重量が異なりアーム3が傾くと、気泡4aが水準器内において軽い方の遠心分離容器6a側へ移動させられる。
【0030】
光センサ5は、水準器4の上方に配置されている。光センサ5は、水準器4の各位置に検出光Lを照射し、各位置からの反射光の強度により、気泡4aの位置を検出するようになっている。検出された気泡4aの位置の情報(水平方向の変位情報)は送液ポンプ7へ出力される。
【0031】
遠心分離容器6a,6bは、内部に細胞懸濁液Bが収容され、開口が栓により塞がれている。また、洗浄液Aを供給するチューブ8の一端が栓から挿入され、チューブ8の他端はそれぞれ送液ポンプ7に接続されている。また、チューブ8の途中位置には図示しない回転継手が設けられ、チューブ8の捩じれを防止しながら各遠心分離容器6a,6bが回転軸体2回りを回転するようになっている。
【0032】
送液ポンプ7は、気泡4aが中心位置から移動すると、その移動した方向の遠心分離容器6a,6bに接続されたチューブ8に経路を切り替えて洗浄液Aを送液し、光センサ5から順次入力される気泡4aの位置が中心位置になったときに送液を停止するようになっている。
【0033】
このように構成された遠心分離装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る遠心分離装置1を用いて細胞懸濁液Bを遠心分離するには、遠心分離容器6a,6bを各ホルダ3a内に収納する。各遠心分離容器6a,6bの重量が等しいときは、そのまま回転軸体2が回転を開始させられる。各遠心分離容器6a,6bの重量が異なるときは、軽い方の遠心分離容器6a内へ洗浄液Aが供給され、他方の遠心分離容器6bと重量が等しくなったときに洗浄液Aの供給が停止して回転軸体2が回転を開始させられる。そして所定時間遠心分離容器6a,6bが回転させられて、細胞懸濁液Bが細胞塊と上清とに遠心分離される。
【0034】
このように、本実施形態によれば、各遠心分離容器6a,6bの重量が異なるときにアーム3が傾けられるようにすることで、回転軸体2が回転していなくても、各遠心分離容器6a,6bの重量のインバランスを容易に検出することができるという利点がある。
【0035】
また、インバランスの補正は、回転軸体2を停止させた状態でアーム3の傾きが水平になるように洗浄液Aを供給すればよいので、各遠心分離容器6a,6bの重量およびその差が分からなくても、容易に行うことができるという利点がある。
さらに、アーム3の傾きの検出および調節を水準器4の気泡4aの位置に基づいて行うことで、インバランスの検出および補正をより高い精度で行うことができるという利点がある。
【0036】
上記実施形態においては、重量バランサとして洗浄液を用い、遠心分離容器内に供給することとした。これに代えて、アームが、重量バランサを収容する収容部、例えば、内部に設けられた空洞を備え、収容部内に重量バランサを供給することとしてもよい。また、重量バランサとして、他の液体や粉体、固体を用いることとしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、送液ポンプにより洗浄液を供給して各遠心分離容器の重量を調節することとしたが、これに代えて、操作者が水準器の気泡の位置を確認しながら重量バランサを供給することとしてもよい。
水準器4により、操作者がインバランスを正確に視認することができ、さらに、回転軸体2を停止させた状態で遠心分離容器6a,6bの重量を調節するので、操作者が重量を調節しても容易にかつ正確に調節することができる。
【0038】
本発明の第2の実施形態について、図2および図3を参照して以下に説明する。
なお、第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
本実施形態に係る遠心分離装置1は、図2に示されるように、回転軸体2と、アーム3と、水準器4と、光センサ5と、アーム3を水平軸体2aに交差する方向に移動させるアクチュエータ9と、ソレノイドコイル(磁力発生手段)10とを備え、また、水平軸体2aには、図3(a)に示されるように、バネ(付勢部材)11により接続されたステンレス鋼(SUS)リング(可動部材)12が設けられている。
【0040】
アーム3に設けられた溝3bはアーム3の長手方向に沿って延びて形成され、水平軸体2aは溝3b内においてにアーム3の長手方向に移動可能になっている。これにより、アーム3が水平軸体2aを支点として揺動可能に支持され、また、アーム3が水平軸体2aに直交する方向に移動可能になっている。
【0041】
アクチュエータ9は、アーム3の両端の長手方向の延長線上に配置されている。アクチュエータ9は、光センサ5から気泡4aの位置の情報が入力されると、気泡4aの中心位置からの移動方向と反対方向に配置されたホルダ3aを回転軸体2の方向へ押圧し、気泡4aが中心位置へ戻るまでアーム3を移動させるようになっている。
【0042】
各ホルダ3aに収納された遠心分離容器6a,6bの重量が異なりアーム3が傾けられると、アクチュエータ9によりアーム3が軽い方の遠心分離容器6a側へ移動させられる。これにより、アーム3の支点の位置が、重い方の遠心分離容器6b側へ移動してアーム3の両端に作用する回転モーメントが等しくなり、アーム3の水平軸体2aを中心とした重量バランスが調節されるようになっている。
【0043】
アーム3の溝3b内において、SUSリング12は、水平軸体2aと溝3bの下側の側壁との間に配置され、回転軸体2の外周を覆っている。バネ11は、水平軸体2aの下側の面に設けられた溝3d内に収納され、溝3dの底壁とSUSリング12とに両端が接続されてSUSリング12を上方に付勢している。
ソレノイドコイル10は、その内部に回転軸体2が挿入され、アーム3の下方に配置されている。ソレノイドコイル10は、電流が印加されると、SUSリング12に下方の磁力を作用させる磁場を発生するようになっている。
【0044】
ソレノイドコイル10に電流が印加されていないときは、図3(a)に示されるように、バネ11によりSUSリング12が上方に付勢され、水平軸体2aを支点としてアーム3が揺動可能に支持される。ソレノイドコイル10に電流が印加されると、図3(b)に示されるように、SUSリング12は、磁力により下方に引っ張られてバネ11を延伸させて下方に移動させられる。そして、SUSリング12が溝3bの下側の側壁と密着することにより、アーム3が回転軸体2に固定されるようになっている。
【0045】
このように構成された遠心分離装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る遠心分離装置1を用いて細部懸濁液Bを遠心分離するには、第1の実施形態と同様に遠心分離容器6a,6bを各ホルダ3a内に収納する。2つの遠心分離容器6a,6bの重量が等しいときには、続けてソレノイドコイル10に電流が印加されて回転軸体2が回転を開始する。
【0046】
2つの遠心分離容器6a,6bの重量が異なるときは、重い方の遠心分離容器6b側に配置されたアクチュエータ9が作動してアーム3が移動させられ、アーム3の傾きが水平に調節される。その後、ソレノイドコイル10に電流が印加されて回転軸体2が回転を開始し、細胞懸濁液Bが細胞塊と上清とに分離される。
【0047】
このように、本実施形態によれば、アーム3を水平軸体2aに対して直交する方向へ移動可能にすることで、アーム3の支点位置が可変になる。これにより、遠心分離容器6a,6bの重量がインバランスであっても、アーム3の両端に作用する回転モーメントが等しくなる位置に支点を調節することでその重量バランスを調節することができる。
【0048】
また、アーム3を回転軸体2に固定する機構を設けることにより、遠心分離装置1を安全に動作させることができる。また、その機構として、ソレノイドコイル10と磁性材料を用いることで、電流の印加と停止のみで容易に、アーム3が回転軸体2に固定された状態と揺動可能な状態とを切り替えることができる。
【0049】
上記実施形態においては、SUSリングが、バネにより上方に付勢され、磁力により下方に引っ張られることとしたが、これに代えて、バネにより下方に付勢され、磁力により上方に引っ張られることとしもよい。
この場合、ソレノイドコイル10に電流が印加されていないときは、SUSリング12が溝3bの下側の側壁と密着してアーム3が回転軸体2に固定される。また、電流が印加されると、SUSリング12が磁力によりバネ11の付勢に抗して上方へ引っ張られ、アーム3が揺動可能な状態になる。
【0050】
上記実施形態において、遠心分離する細胞懸濁液としては、特に制限はないが、例えば、脂肪に由来する細胞を含む、脂肪由来細胞懸濁液などが好適である。ここで、脂肪由来細胞としては、血管内皮細胞、線維芽細胞、造血幹細胞、血球系の細胞、脂肪由来の幹細胞などが挙げられる。この幹細胞は、細胞治療などの目的で、脂肪組織から採取される細胞であり、多分化能、自己再生能を有る細胞を指す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る遠心分離装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る遠心分離装置の全体構成図である。
【図3】図2の遠心分離装置の水平軸体近傍の詳細な構成を示し、(a)アームを揺動可能にするとき、および、(b)アームを固定するときのSUSリングの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1 遠心分離装置
2 回転軸体
2a 水平軸体
2b モータ
3 アーム(支持アーム)
3a ホルダ
3b 溝
3c ベアリング(固定機構)
3d 溝
4 水準器
4a 気泡
5 光センサ(検出部)
6a,6b 遠心分離容器
7 送液ポンプ(調節手段、供給機構)
8 チューブ
9 アクチュエータ(調節手段、移動機構)
10 ソレノイドコイル(固定機構、磁場発生手段)
11 バネ(固定機構)
12 SUSリング(固定機構、可動部材)
A 洗浄液
B 細胞懸濁液
L 検出光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる水平軸体を備え鉛直軸線回りに回転させられる回転軸体と、
該回転軸体を半径方向に挟んで2つの遠心分離容器を支持するとともに、前記水平軸体回りに揺動可能に支持された支持アームと、
該支持アームを前記回転軸体に対して固定する固定機構と、
前記支持アームに固定され、内部に気泡および液体が封入された水準器と、
該水準器内における前記気泡の位置を検出する検出部と、
該検出部により検出された前記気泡の位置情報に基づいて、前記支持アームの重量バランスを調節する調節手段とを備える遠心分離装置。
【請求項2】
前記調節手段が、前記遠心分離容器内または前記支持アームに設けられた収容部内に重量バランサを供給する供給機構を備える請求項1に記載の遠心分離装置。
【請求項3】
前記支持アームが、前記水平軸体に直交する方向に移動可能に設けられ、
前記調節手段が、前記支持アームを前記水平軸体に直交する方向に移動させる移動機構を備える請求項1に記載の遠心分離装置。
【請求項4】
前記支持アームが、前記回転軸体に向かって開口した溝部を有し、
前記水平軸体が、前記回転軸体の外面から半径方向外方に突出して前記溝部内に挿入され、該溝部の上側の側壁に密着させられ、
前記固定機構が、前記水平軸体の下部から鉛直方向に移動可能に設けられた磁性材料からなる可動部材と、該可動部材に磁力を作用させて鉛直軸方向に移動させ、鉛直下方に移動させることで前記溝部の下側の側壁に前記可動部材を密着させる磁力発生手段とを備える請求項3に記載の遠心分離装置。
【請求項5】
前記磁力発生手段が、前記可動部材を鉛直上方に移動させるように磁力を作用させ、
前記固定機構が、前記水平軸体に対して前記可動部材を鉛直下方に付勢する付勢部材を備える請求項4に記載の遠心分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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