説明

遠心力基盤の微細流動装置及びこれを用いた流体試料内の分析対象物質検出方法

本発明は、チャンバー、上記チャンバーを連結する通路を含む少なくとも1つの微細流動構造物、及び検出部を含む微細流動装置であって、上記チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように標識接合体が流体試料の分析対象物質と結合する反応チャンバーと上記反応チャンバーの下流に位置する分析チャンバーを含み、上記分析チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体がある検出領域を含み、上記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア構造体、またはマイクロピラーのうちの1つを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体試料内の分析対象物質検出用遠心力基盤の微細流動装置及びこれを用いた流体試料内の分析対象物質検出方法に関し、より詳しくは、毛細管力−遠心力が対をなす流体試料の反復流れを通じて反応効率を上げて敏感性を向上させた流体試料内の分析対象物質検出用遠心力基盤の微細流動装置及びこれを用いた流体試料内の分析対象物質検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、微細流動装置を構成する微細流動構造物内で流体を移送するためには駆動圧力が必要であるが、駆動圧力として毛細管圧が用いられるか、別途のポンプによる圧力が用いられることがある。最近、このような流体内の少量の標的物質検出を低廉で、かつ誰でも容易に扱うことができるように設計された臨床診断分析装置として、円形のディスク形状の回転可能なプラットフォームに微細流動構造物を配置して遠心力を用いる微細流動装置、即ちラボオンディスク(lab−on−a disk)あるいはラボCD(Lab CD)が提案されている。
【0003】
‘ディスク(disc)の上の実験室’という意味のラボオンディスク(Lab−on−a−Disc)は実験室で遂行される多様な実験過程、例えば、試料の分離、精製、混合、標識化(labeling)、分析、及び洗浄などを小さいサイズのチップの上で具現するものであって、生物分子の分析に必要な実験室の各種装備をCD形態の装置に集積させた装置である。ディスクの上に設けられた微細流動構造物に血液などの生体試料を注入すれば、流体を移送するために駆動圧力などの別途の駆動システム無しで遠心力のみを用いて試料、試薬などの流体を移動させることができる長所がある。
【0004】
最近、ラボオンチップを血液分析に用いて、臨床で採血した血液から速かに多様な情報を得ようとする研究がなされたし、その結果、ラピッドチップ(rapid−chip)またはラピッド−キット(rapid−kit)が開発された。このようなラピッドチップまたはラピッド−キットは反応部で分析対象物質が標識接合体と結合し、標識接合体と分析対象物質の結合体と捕獲接合体との結合及び洗浄過程が全て遂行されている。しかしながら、分析対象物質が標識試薬と先に結合するため、多量の標識試薬が要求されるが、現実的に満たすことが困難であり、また分析対象物質が全て標識試薬と反応できなければ、標識接合体と結合しない分析対象物質がテストラインの捕獲接合体と結合して分析対象物質−標識接合体の結合体がコントロールラインやテストラインに結合することが競争的に阻害される問題点がある。また、分析対象物質と試薬との結合が一側方向の1回の流体試料の流れ内で全て終結されて充分の結合がなされず、敏感度が落ちて、定量分析が難しいという問題点がある。また、標識接合体の再溶解速度を調節する能動的な手段が欠如されて一定体積で流入する流体試料により再溶解される接合体が初期には多過ぎて接合体の浪費が発生し、後半部には急激に減少して分析対象物質の敏感な検出を困難にする短所があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、毛細管力−遠心力が対をなす流体試料の反復流れを通じて反応効率を上げて敏感性を向上させた遠心力基盤の流体試料内の分析対象物質検出用微細流動装置及びこれを用いて流体試料内の分析対象物質を検出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、チャンバー、上記複数のチャンバーを連結する少なくとも1つの通路を含む少なくとも1つの微細流動構造物、及び検出部を含む微細流動装置であって、上記チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように標識接合体が流体試料の分析対象物質と結合する反応チャンバーと上記反応チャンバーの下流に位置する分析チャンバーとを含み、上記分析チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体がある検出領域を含み、上記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア構造体、またはマイクロピラーのうちの1つを含む遠心力基盤の微細流動装置を提供する。
【0007】
本発明の他の態様によれば、回転体、チャンバー、上記チャンバーを連結する少なくとも1つの通路、及び上記通路のうちの少なくとも1つの開閉のための少なくとも1つのバルブを含む1つ以上の微細流動構造物、並びに検出部を含む微細流動装置であって、上記チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように標識接合体が流体試料の分析対象物と結合する反応チャンバーと上記反応チャンバーの下流に位置する分析チャンバーとを含み、上記分析チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体がある検出領域を含み、上記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア構造体、またはマイクロピラーのうちの1つを含む遠心力基盤の微細流動装置を提供する。
【0008】
本発明の他の態様によれば、チャンバー、上記チャンバーを連結する少なくとも1つの通路、及び上記通路のうちの少なくとも1つの開閉のための少なくとも1つのバルブを含む1つ以上の微細流動構造物及び検出部を含む微細流動装置であって、上記チャンバーは、標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように標識接合体が流体試料の分析対象物質と結合する反応チャンバーと、上記反応チャンバーの下流に位置する分析チャンバーとを含み、上記分析チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体がある検出領域を含み、上記少なくとも1つのバルブは上記反応チャンバーと上記分析チャンバーとの間の流体移送を調節し、上記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア構造体、またはマイクロピラーのうちの1つを含む遠心力基盤の微細流動装置を提供する。
【0009】
以下、本発明において、上記捕獲接合体及び標識接合体は、DNA、オリゴヌクレオチド、RNA、アプタマー(Aptamer)、PNA、リガンド、レセプター、ハプテン(Hapten)、抗原、抗体のうちから選択して使用できるが、これに限定されるものではない。
【0010】
分析チャンバーは反応チャンバーから供給された流体を受容するホルダーをさらに含むことができる。
【0011】
検出領域はホルダーに一端が接触状態で形成される。
【0012】
また、検出領域は上記捕獲接合体が固定されているテスト領域及びテスト領域と間隔をおいて毛細管力が適用される方向を基準にテスト領域の下流に位置する照合領域を含むことができる。
【0013】
または、テスト領域及び照合領域を含む検出領域の一部が毛細管力が作用する方向に対して傾斜をなすことができる。
【0014】
遠心力基盤の微細流動装置において、微細流動駆動物は遠心力が作用する方向を基準に分析チャンバーの下流に位置して分析チャンバー内の流体試料を受容する停止チャンバーをさらに含むことができる。
【0015】
標識接合体は分析対象物質特異的結合群と標識接合体群とから構成される。
【0016】
標識接合体は液体状態または乾燥した固体状態で上記反応チャンバーに受容されている。
【0017】
また、標識接合体の標識は、ポリメリックビーズ(Polymeric bead)、金属コロイド(Metal colloid)、酵素(Enzyme)、蛍光物質、夜光物質、超常磁性物質(super paramagnetic material)、ランタン族(III)キレートを含む物質、ポリメリックナノパーティクル、または放射能同位元素でありうる。
【0018】
検出部は捕獲接合体と結合した標識接合体及び分析対象物質の結合体を検出及び分析することができる。
【0019】
また、検出部は光源部及び光源部に対応するように設けられて分析チャンバーを透過した光を受光する受光部を含むことができる。
【0020】
本発明の更に他の態様によれば、流体試料内の分析対象物質の分析方法であって、上記流体試料を上記微細流動装置に注入し、上清液を得るために流体試料を遠心分離し、上記上清液を標識接合体が受容された微細流動構造物の反応チャンバーに移送し、標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように上記上清液内の上記分析対象物質に上記標識接合体を結合させ、上記微細流動装置を遠心分離させ、上記標識接合体−分析対象物質結合体を上記微細流動構造物の分析チャンバーに移送し、かつ上記分析チャンバーは上記反応チャンバーの下流に位置し、捕獲接合体が固定された検出領域を含み、上記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア(micro−pore)、またはマイクロピラー(micro−pillar)で形成され、上記標識接合体−分析対象物質結合体を毛細管力により上記分析チャンバー末端まで移動させ、上記上清液内の標識接合体−分析対象物質結合体と上記分析チャンバー内の捕獲接合体とを結合させ、上記微細流動装置に遠心力を加えて上記分析チャンバーの末端まで移動した上清液を上記分析チャンバーの他の末端に移動させながら、また上記上清液内の標識接合体−分析対象物質結合体と上記分析チャンバー内の捕獲接合体を結合させ、上記捕獲接合体と結合された上記標識接合体及び上記分析対象物質の結合体を検出する流体試料内の分析対象物質の分析方法を提供する。
【0021】
上清液の分析チャンバー末端から他の末端までの移動は2回以上でありうる。
【0022】
分析チャンバーは、反応チャンバーから供給された流体を受容するホルダーをさらに含むことができる。
【0023】
検出領域はホルダーに一端が接触状態で形成される。
【0024】
微細流動構造物は遠心力が作用する方向を基準に分析チャンバーの下流に位置して分析チャンバー内の流体試料を受容する停止チャンバーをさらに含むことができる。
【0025】
標識接合体は液体状態または乾燥された固体状態で上記反応チャンバーに受容されている。
【0026】
標識接合体の標識は、ポリメリックビーズ(Polymeric bead)、金属コロイド(Metal colloid)、酵素(Enzyme)、蛍光物質、夜光物質、超常磁性物質(super paramagnetic material)、ランタン族(III)キレートを含む物質、ポリメリックナノパーティクル、または放射能同位元素でありうる。
【0027】
捕獲接合体が結合された分析対象物質結合体の検出の以前に、上記分析チャンバー内の流体試料を停止チャンバーに移送して標識接合体−分析対象物質結合体と捕獲接合体との間の反応を停止させることをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、毛細管力−遠心力が対をなす流体試料の反復流れを通じて反応効率を上げて敏感性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に従う微細流動装置の構造を概略的に示す概略図である。
【図2】図1の微細流動装置を構成する微細流動構造物の構造を概略的に示す概略図である。
【図3】試料チャンバーの詳細を示す図である。
【図4】試料分離部の詳細を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に従う検出領域を構成するマイクロ−ピラー(micro−pillar)の拡大図である。
【図6】本発明の他の実施形態に従う分析チャンバーの側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に従う検査システムのブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態に従う微細流動装置を用いた流体試料内の分析対象物質検出方法を説明する順序図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の利点と特徴及びこれを遂行する方法が以下の好ましい例示的具体例に対する詳細な説明及び添付した図面を参照することによって、一層容易に理解できる。しかしながら、本発明の1つ以上の例示的具体例は多様な形態に実施することができ、ここで言及した例示的具体例のみに限定して構成されるものではない。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、回転体、多数のチャンバー、チャンバーを連結する通路、及び通路の開閉のためのバルブを含む1つ以上の微細流動構造物、及び検出部を含む微細流動装置であって、流体試料内の分析対象物質と結合する標識接合体を受容する反応チャンバー及び反応チャンバーの下流に位置し、標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体が固定された検出領域を含む分析チャンバーを含み、検出領域は多孔性メンブレン、マイクロポア(micro−pore)、またはマイクロピラー(micro−pillar)で形成される遠心力基盤の流体試料内の分析対象物質検出用微細流動装置を提供する。
【0032】
試料は、DNA、オリゴヌクレオチド、RNA、PNA、リガンド、レセプター、抗原、抗体、牛乳、小便、唾液、髪の毛、農作物サンプル、肉類サンプル、藻類サンプル、家畜サンプル、加工食品サンプル、口腔細胞、組織サンプル、精液、蛋白質、またはその他の生体物質を含むことができるが、これに限定されるものではない。このような試料をバッファ溶液で希釈化する等、流体化して用いることができる。また、分析対象物質は、蛋白質、抗原、抗体、DNAまたはRNA、オリゴヌクレオチド、レセプターなどを含むことができるが、これに限定されるものではない。小便を試料として用いる場合、分析対象物質の例として、血液、グルコース、アスコルビン酸、ケトン、蛋白質、糖、ウロビリノーゲン(Urobilinogen)、ビリルビン(bilirubin)などが挙げられる。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に従う微細流動装置の構造を概略的に示す概略図である。また、図2は、本発明の一実施形態に従う微細流動構造物の構造を概略的に示す概略図である。
【0034】
本発明の一具体例で使われた回転体10は円形のディスク形状のプラットフォーム(platform)20を含むことができる(図1参照)。しかしながら、プラットフォーム20はディスク形状を有するものに限定されるものではない。プラットフォームは成形が容易であり、その表面が生物学的に不活性のアクリルなどのプラスチック素材で作られることができる。但し、これに限定されるものではなく、化学的、生物学的安全性と光学的透明性、そして機械的加工性を有する素材であればよい。
【0035】
プラットフォームには1つまたは多数の微細流動構造物30が設けられることができる。例えば、プラットフォーム20を数個の領域30、40に分けて、各領域30、40毎に互いに独立的に作動する微細流動構造物31、41が設けられることができる。図1では、プラットフォーム20に2つの微細流動構造物31、41が設けられている。
【0036】
また、本明細書において‘微細流動構造物’とは、特定の形態の構造物を指称するものでなく、多数のチャンバー、チャンネル、そしてバルブからなって、流体流動を伴う構造物を包括的に指称する。したがって、‘微細流動構造物’はチャンバーとチャンネル及びバルブの配置上の特徴及びその内部に受容されている物質の種類によってそれぞれ異なる機能を遂行するユニットを構成することができる。
【0037】
したがって、微細流動装置は多様な化学化合物の検出及びこれを通じた環境有害物質の検出、血液分析、小便検査、抗原−抗体反応を通じた免疫検査、リガンド−レセプター結合を通じた新規な薬物候補物質の探索、DNA/RNA分析など、多様な分野に幅広く利用できる。また、2つ以上の分析対象物質を同時に検出及び分析することができる。
【0038】
プラットフォームは、プラスチック、PMMA(Polymethylmethacrylate)、ガラス、雲母、シリカ、シリコンウエハの材料、プラスチックなどの多様な材料から選択できる。経済性、加工の容易性のため、プラスチックを使用することができる。使用可能なプラスチック材料の例として、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニールアルコール、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0039】
回転体10が回転されて遠心力により、流体試料、バッファ液、反応液などが各チャンバーに移動できる。このような回転体10は、回転駆動部Dを含んで高速回転することができる(図7参照)。回転駆動部Dの回転により発生する遠心力の作用により試料の移動、混合などがなされる。
【0040】
図2に、試料チャンバー100、試料分離部200、反応チャンバー300、及び分析チャンバー400が図示されている。
【0041】
試料チャンバー100は、血液などの流体状態の試料を受容するための空間を提供する。試料分離部200は、試料を上清液(例えば、血清、血漿等)と沈降物(例えば、血球など)に遠心分離するためのものである。反応チャンバー300及び分析チャンバー400は、抗原−抗体反応、リガンド−レセプター結合などを用いて、上清液に含まれた特定蛋白質、葡萄糖、コレステロール、尿酸、クレアチニン、アルコールなどを検出するための構造物である。
【0042】
図3に試料チャンバー100が詳細に図示されている。図3に示すように、試料チャンバー100は試料を注入するための注入口110と、試料が受容される受容部120を備える。受容部120には試料分離部200と連結される排出口130が設けられている。図面に図示してはいないが、排出口130は後述するように、遠心力が作用しない時には流体試料が試料分離部200に移動しないように毛細管圧力を形成できる形態を有することができる。または、排出口130に流体試料の流れを統制するためのバルブが設置されることもできる。また、注入口110から排出口130側に行くほどチャンバー100の断面サイズが徐々に増加するように形成して、遠心力により受容部120に受容された試料が試料分離部200に容易に流入できるようにすることができる。注入口110と受容部120との間には注入口110を通じて注入される試料の注入圧力により受容部120に試料が流れるようにする一方、受容部120に到達した試料がまた注入口110側に逆流しないようにするために、毛細管圧力を形成できる構造物が注入口110と受容部120との間に位置する。即ち、所定サイズ以上の圧力が作用する場合のみに試料を試料チャンバー100を通じて通過させる毛細管バルブの役割をする構造物が設置できる。
【0043】
受容部120には注入口110から排出口130側に流れる試料の流れ方向と交差する方向に少なくとも1つの逆止部140が設置されることができる。逆止部140はリブ形態でありうる。逆止部140は、試料に流れ抵抗を与えて試料が受容部120から注入口110によく流れないようにするためのものである。
【0044】
試料チャンバー100から試料分離部200に試料を移送させるには回転体10の回転による遠心力が用いられるので、試料分離部200は試料チャンバー100より外側に位置する。試料の遠心分離のための試料分離部200は多様な形態に構成され、その一例が図4に詳細に図示されている。図4に図示したように、試料分離部200は試料チャンバー100から外側に延びたチャンネル形状の上清液収集部210と、上清液収集部210の末端に位置して比重の大きい沈降物を収集する空間である沈降物収集部220を含むことができる。上清液収集部210には遠心分離された上清液を反応チャンバー300に分配するための試料分配チャンネル230が設けられている。バルブ231は試料分配チャンネル230を介した試料の流れを制御する。バルブ240は多様な形態の微細流動バルブが採用できる。例として、バルブ231は外部から動力の伝達を受けて開放される前には流体が流れることができないようにチャンネルを閉鎖している、いわゆる閉鎖されたバルブ(normally closed valve)である。
【0045】
図2に示すように、試料分離部200と反応チャンバー300との間には上清液の量を計量するための上清液計量チャンバー250が設置されることができる。上清液計量チャンバー250は検査に必要な量の上清液を受容することができる容積を有する。上清液計量チャンバー250の出口には流体の流れを制御するためのバルブ251が設けられている。バルブ251は、バルブ231のように、いわゆる閉鎖されたバルブである。上清液計量チャンバー250は、チャンネル252を介して反応チャンバー300と連結される。図面に図示してはいないが、試料分配チャンネル230と上清液計量チャンバー250との間には計量後に残る過量の液状試料を受容するためのチャンバー及び流路がさらに形成される。
【0046】
第1及び第2バッファチャンバー310、320には、抗原−抗体反応、生化学反応(例えば、リガンド−レセプター結合)などに必要な反応液が受容される。
【0047】
第1バッファチャンバー310に第1バッファが受容される。例えば、第1バッファはサンドウィッチ免疫検査のためのコンジュゲート(conjugate)バッファ、競争免疫検査のための競争蛋白質(competitive protein)を含むバッファまたはDNA増幅のためのポリマラーゼ(polymerase)及びプライマー(primer)を始めとする各種酵素を含んだバッファなどでありうる。
【0048】
第1バッファチャンバー310は、第1ベントチャンバー313と連結される。第1ベントチャンバー313は第1バッファチャンバー310に受容された第1バッファが容易に排出されるように第1バッファチャンバー310を外気と連通させるベントパスを形成する。第1バッファチャンバー310と第1ベントチャンバー313との間にはバルブ314が設けられている。第1バッファチャンバー310の出口にはバルブ311が設けられている。バルブ311、314は前述した閉鎖されたバルブ(normally closed valve)である。第1バッファチャンバー310に第1バッファを注入し、バルブ311、314を設置することによって、第1バッファチャンバー310はバルブ311、314を開放する前までは封入した状態に維持される。他の実施形態によれば、第1バッファチャンバー310の出口に計量チャンバー(図示せず)を設置して検査に必要な定量の第1バッファを反応チャンバー300に供給することができる。計量チャンバー(図示せず)の出口にもバルブ(図示せず)を設置して第1バッファの流れを制御することができる。計量チャンバーのない場合には、第1バッファチャンバー310の出口に形成されたバルブ311を開放して第1バッファチャンバー310から第1バッファを反応チャンバー300に直接供給することができる。
【0049】
また、第2バッファチャンバー320には第2バッファが受容される。第2バッファの例として、コンジュゲート反応または競争反応の結果物と基質反応によって所定の色相を発色させる基質バッファ(substrate buffer)またはDNA混成化(hybrization)工程に必要な各種酵素が含まれたバッファが受容できる。第2バッファチャンバー320に第1バッファと異なる第2バッファが受容されている点を除いては、バッファチャンバー310と同一であるので、第2バッファチャンバー320に関してはその説明を省略する。
【0050】
本実施形態では、微細流動構造物が2つのバッファチャンバー310、320を有することと説明したが、反応チャンバー300で起こる反応の種類によって1つまたは3個以上のバッファチャンバーを含むこともできる。
【0051】
本発明の他の一実施形態によれば、洗浄液チャンバー330には反応チャンバー300での反応後の残留物(residual)を洗浄するための洗浄液(washing buffer)が受容されることができる。洗浄液チャンバー330は、第3ベントチャンバー333と連結される。ベントチャンバー333は、洗浄液チャンバー330に受容された洗浄液が容易に排出されるように洗浄液チャンバー330を外気と連通させるベントパスを形成する。洗浄液チャンバー330と第3ベントチャンバー333との間にはバルブ334が設けられている。洗浄液チャンバー330は、バルブ331を介して反応チャンバー300と連結される。バルブ331、334は前述した閉鎖されたバルブ(normally closed valve)である。
【0052】
反応チャンバー300は、チャンネル252を介して上清液計量チャンバー250から上清液の供給を受ける。反応チャンバー300の内には標識接合体が液体状または固体状で存在することができる。
【0053】
標識接合体が固体状で反応チャンバー300に存在する場合、標識接合体は反応チャンバー300の内壁に、または多孔性パッドなどに臨時固定されている。即ち、反応チャンバー300に固定されている標識接合体が上清液の侵入により溶解されて標識接合体と上清液の内の分析対象物質とが結合される。結合された標識接合体−分析対象物質は移動可能な状態となる。この場合、上清液が反応チャンバー300に流入すれば、上清液流入初期には再溶解される標識接合体の量が多過ぎて、後半には標識接合体の再溶解が急激に減少する。従来技術は、毛細管力が作用する部分と標識接合体が含まれている部分が物理的に1空間内に存在して、標識接合体の再溶解及び流出速度の変移によって検査結果の再現性及び分析物の濃度−応答シグナル特性が悪くなる問題点があった。また、従来技術では、標識接合体は常に固体状に固定されていなければならないという制限があった。しかしながら、本実施形態は従来技術と異なり、標識接合体が存在する部分を反応チャンバー300に、毛細管力が作用する部分を後述する分析チャンバー400に、物理的に分離させて、前述した標識接合体の再溶解及び流出速度が毛細管力に影響を及ぼすことを排除した。また、物理的に分離された空間で標識接合体と分析対象物質との結合が終了した以後に、流体試料が分析チャンバー400に供給されるため、標識接合体が液体状で、または固体状で存在しても構わない。
【0054】
標識接合体は一般的な方法により反応チャンバー300に存在する、分析対象物質と特異的に反応する物質を意味する。標識接合体は、分析対象物質によって多様である。例えば、分析対象物質が抗体Aの場合、標識接合体は蛍光物質などの標識物質と予め連結された抗原または抗体などのようなコンジュゲート(conjugate)であることがあり、抗体Aと標識接合体は反応チャンバー300で結合(binding)された後、後述する分析チャンバー400に固定された抗体Aの抗原により抗体Aと蛍光物質のコンジュゲートが固定されて検出に用いられる。
【0055】
標識接合体の標識は標識物質として、例えば、ポリメリックビーズ(Polymeric bead)、ゴールドコロイド、シルバーコロイドなどの金属コロイド(Metal colloid)、過酸化酵素などの酵素(Enzyme)、蛍光物質、夜光物質、超常磁性物質(super paramagnetic material)、ランタン族(III)キレートを含む物質、ポリメリックナノパーティクル、または放射能同位元素などが挙げられるが、標識接合体の標識はこれに制限されるものではない。
【0056】
反応チャンバー300は洗浄液チャンバー330の洗浄液により洗浄された反応後の残留物、廃棄される不純物を受容するウェーストチャンバー360を含むことができる。ウェーストチャンバー360に結合できなかった標識接合体及び分析対象物質などを含む不純物を移動させて、特に特異的抗体検出などの非競争的分析の場合、反応チャンバー300で結合されていない標識接合体や分析対象物質が分析チャンバー400に移動して後述するテスト領域及び照合領域に永久固定されている捕獲接合体に結合して標識接合体−分析対象物質結合体がテスト領域や照合領域に結合することを競争的に阻害することがない。また、標識接合体と結合しない分析対象物質がウェーストチャンバー360に除去されるので、高濃度の分析対象物質によるフック効果(High−dose Hook effect)が生じない。ウェーストチャンバー360は、チャンネル362を介して反応チャンバー300と連結される。チャンネル362にはバルブ361が設けられており、バルブ361は前述した閉鎖されたバルブ(normally closed valve)である。
【0057】
分析チャンバー400は、バルブ305を介して反応チャンバー300と連結され、反応チャンバー300から反応が終了した流体の供給を受ける。
【0058】
分析チャンバー400は、抗原−抗体反応またはバイオ物質間の特異的生化学反応がなされるチャンバーである。
【0059】
分析チャンバー400は、反応チャンバー300で反応が終了した流体の供給を受けるホルダー410、多孔性メンブレン(membrane)、マイクロポア、またはマイクロピラーで形成されているので、毛細管力が作用する検出領域420を含む。検出領域420は分析対象物質を分析するための捕獲接合体が直間接的に固定化されているテスト領域430を含む。また、分析チャンバー400は、テスト領域430に永久固定されている捕獲接合体と異なる捕獲接合体が永久固定されている照合領域440をさらに含むことができる。
【0060】
検出領域420の一端はホルダー410に延びてホルダー410に反応チャンバー300から供給された流体が詰められれば、検出領域420の一端が流体に浸るように形成されている。ホルダー410に流体が詰められれば、分析対象物質−標識接合体の結合体が図2のA方向の毛細管力が適用されて検出領域420に沿って図2のA方向に移動しながらテスト領域430及び照合領域440に永久固定されている捕獲接合体と抗原−抗体反応、またはバイオ物質間の特異的生化学反応により結合する。その結果、分析対象物質−標識接合体の結合体はテスト領域430及び照合領域440に捕集される。毛細管力により流体が全てテスト領域430及び照合領域440に移動した後、微細流動装置を回転させれば、図2のB方向の遠心力の作用により流体がまたホルダー410に移動する。遠心力の方向であるB方向は、毛細管力の方向であるA方向と反対である。したがって、一方向の毛細管力のみ作用して固定された試薬と反応する従来の技術に比べて反応時間が2倍増加して反応の敏感度が増加する。
【0061】
また、毛細管力(A方向)−遠心力(B方向)の対がただ1回に限定されず、遠心力が作用してホルダー410に流体を全て移動させた後、回転を止めれば、また流体はA方向の毛細管力が作用して捕獲接合体と結合しない分析対象物質−標識接合体の結合体がまたテスト領域430及び照合領域440に永久固定された捕獲接合体と結合できるようになる。2回次の毛細管現象により流体が全てテスト領域430及び照合領域440に移動した後、また微細流動装置を回転させれば、2回次の毛細管現象の遠心力により流体がまたホルダー410に移動しながら2回次の毛細管現象でも結合しない分析対象物質−1次試薬結合体がまた反応に参加できるようになる。このようなサイクル(cycle)を一定回数だけ繰り返して充分の反応を遂行することができるため、分析対象物質の検出敏感度が格段に向上することができる。
【0062】
分析チャンバー400は、反応後、テスト領域430及び照合領域440の内の捕獲接合体と結合しない流体を受容する停止チャンバー460を含む。チャンネル462を介して停止チャンバー460は分析チャンバー400と連結される。チャンネル462にはバルブ461が設けられており、バルブ461は前述した閉鎖されたバルブ(normally closed valve)である。充分の反応がなされたと判断されれば、バルブ461を開いて、微細流動装置を回転させて遠心力により分析チャンバー400の流体を全て停止チャンバー460に移送させて反応を終了させる。
【0063】
捕獲接合体は分析対象物質を分析するための捕獲プローブであって、抗原、抗体、酵素、DNAまたはRNAなど、その分析対象物質によって多様である。例えば、分析対象物質がカーバメート系殺虫剤の場合、捕獲接合体はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)であり、分析対象物質が抗原である場合、捕獲接合体は捕獲抗体でありうる。
【0064】
毛細管力が適用される検出領域420は光学的に透明でなければならず、断面は円形または四角形でありうる。検出領域420の断面が円形の場合、毛細管の内部直径は略数マイクロメートルから略1ミリメートルサイズに製作されることができ、これは赤血球の容積率、ヘマトクリットを測定することに一般的に使われるサイズを選択することができる。また、検出領域420は空洞(cavity)が占める体積が小さく、非常に小さい孔隙(pore)からなって、容積密度(bulk density)が高いので、毛細管力が適用できるものであれば、検出領域420を形成することができる。その例として、多孔性メンブレン(membrane)、マイクロポア(micro−pore)、またはマイクロピラー(micro pillar)などが挙げられる。図5に検出領域420を形成するマイクロピラー502を図示している。
【0065】
また、図6に他の実施形態の分析チャンバー400’を図示している。図6から見るように、検出領域420’のうち、テスト領域430’及び照合領域440’を含む一部が、毛細管力が作用するA方向に対して傾斜をなしている。ホルダー410と接触状態にある検出領域420’の一端から上方に向けて傾斜部をなして、この傾斜部470の内にテスト領域430’及び照合領域440’を含み、残りの検出領域420’部分は直線部480をなす。これは、ホルダー410と接触状態にある検出領域420’の一端490がテスト領域430’及び照合領域440’より低い部位に位置して重力の作用により毛細管力を超える流体の流れ過ぎが発生しないようにするためである。
【0066】
本発明の他の実施形態によれば、多数のチャンバー、上記チャンバーを連結する少なくとも1つの通路、及び上記少なくとも1つの通路の開閉のための少なくとも1つのバルブを含む1つ以上の微細流動構造物及び検出部を含む微細流動装置であって、流体試料内の分析対象物質と結合する標識接合体を受容する反応チャンバー及び上記反応チャンバーの下流に位置し、上記標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体が固定された検出領域を含む分析チャンバーを含み、上記反応チャンバーと上記分析チャンバーとの間の流体移送が上記少なくとも1つのバルブにより調節され、上記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア(micro−pore)、またはマイクロピラー(micro−pillar)で形成される流体試料内の分析対象物質検出用微細流動装置を提供する。
【0067】
本実施形態は、遠心力基盤の微細流動装置に微細流動構造物が取り付けられていることを除いて、前述した実施形態と同一である。以下、前述した実施形態と異なる点を中心として説明し、同一な点はその説明を省略する。
【0068】
反応チャンバー300で流体試料内の分析対象物質が標識接合体との結合が完了した後、反応チャンバー300と分析チャンバー400との間に位置したバルブ305が開く。すると、標識接合体−分析対象物質結合体を含む流体試料が分析チャンバー400のホルダー410に移動する。ホルダー410に流体試料が詰められれば、ホルダー410に一端が接触されている検出領域420に沿って流体試料が毛細管移動をする。検出領域420に沿って図2のA方向に移動しながら標識接合体−分析対象物質結合体がテスト領域430及び照合領域440に永久固定されている捕獲接合体と抗原−抗体反応、またはバイオ物質間の特異的生化学反応により結合する。
【0069】
前述したように、反応チャンバー300の内には標識接合体が液体状または固体状で存在することができる。標識接合体が固体状で存在する場合、反応チャンバー300に固定されている標識接合体が上清液の侵入により溶解されて標識接合体と上清液の内の分析対象物質が結合する。結合された標識接合体−分析対象物質は移動可能な状態となる。
【0070】
前述したように、標識接合体が存在する部分を反応チャンバー300に、毛細管力が作用する部分を分析チャンバー400に、物理的に分離させて、前述した標識接合体の再溶解及び流出速度が毛細管力に影響を及ぼすことを排除する。また、物理的に分離された空間で標識接合体と分析対象物質との結合が完了した以後に、流体試料が分析チャンバー400に供給されるため、標識接合体が液体状で、または固体状で存在しても構わない。反応チャンバー300から分析チャンバー400への標識接合体−分析対象物質結合体を含む流体試料の移送は、バルブ305の開閉動作により制御されなければならない。
【0071】
図7は、本発明の一実施形態に従う微細流動装置を用いた検査システムのブロック図である。
【0072】
一実施形態に従う検査システムは、ディスク型微細流動装置1を回転させる回転駆動部Dと、バルブ開閉装置E、検出部30、出力部40、診断DB50、及び上記各構成を制御する制御部60を含んでなされる。
【0073】
回転駆動部Dは、ディスク型微細流動装置1を回転させることによって、試料の遠心分離と流体の移動のための遠心力を提供し、分析チャンバー400が特定位置に到達するようにディスク型微細流動装置を停止または回転させることができる。
【0074】
回転駆動部Dは、たとえ図示してはいないが、ディスク型微細流動装置1の各位置(angular position)を制御できるモータドライブ装置を含むことができる。例えば、モータドライブ装置はステップモータを用いたものであることがあり、直流モータを用いたものであることもある。
【0075】
バルブ開閉装置Eはディスク型微細流動装置1のバルブを開閉したものであって、外部エネルギー源E1と、外部エネルギー源E1を開放が要求されるバルブに移送させる移動ユニットE2を含んでなされることができる。
【0076】
外部エネルギー源E1はレーザービームを照射するレーザー光源、可視光線または赤外線を照射する発光素子(light emitting diode)、またはキセノンランプ(Xenon)であることがあり、特にレーザー光源の場合、少なくとも1つのレーザーダイオード(laser diode)を含むことができる。
【0077】
移動ユニットE2は、駆動モータ(図示せず)及び外部エネルギー源E1が取り付けられて駆動モータの回転によって外部エネルギー源E1を開放が要求されるバルブの上側に移動させるためのギア部(図示せず)を含んでなされることができる。
【0078】
検出部30は、反応チャンバーの吸光度を測定するために複数で設けられることができ、少なくとも1つ以上の光源部31と、光源部31に対応するように設けられて微細流動装置1の分析チャンバー400の検出領域420を透過した光を受光する受光部32を含んでなされる。
【0079】
光源部31は所定周波数で点滅する光源であって、採用可能な光源にはLED(light emitting diode)、LD(laser diode)などの半導体発光素子とハロゲンランプやキセノン(Xenon)ランプのようなガス放電ランプ(gas dischare lamp)が含まれる。
【0080】
また、光源部31は光源部31から放出された光が分析チャンバー400の検出領域420を経て受光部32に到達できる位置に位置する。
【0081】
受光部32は、入射光の強さに従う電気的信号を発生させるものであって、例えば、空乏層フォトダイオード(depletionlayer photo diode)やエバランシェフォトダイオード(APD:avalanche photo diode)、または光電子増倍管(PMT:photo multiplier tubes)などが採用できる。
【0082】
本実施形態では、光源部31がディスク型微細流動装置1の上側に配置され、受光部32は光源部31に対応してディスク型微細流動装置1の下側に配置されているが、光源部31と受光部32とは相互反対の位置に位置することもあり、反射鏡または導光部材(light guide member)(図示せず)などを用いて光経路を調整することができることは勿論である。
【0083】
制御部60は、回転駆動部D、バルブ開閉装置E、検出部30などを制御して検査システムの動作を円滑に遂行し、診断DB50を検索して検出部30から検出された吸光度と診断DB50に格納された標準曲線を用いてディスク型微細流動装置1の上の分析チャンバー400に受容された上清液のうち、分析対象物質の濃度を測定することができる。
【0084】
出力部40は、診断内容及び完了したか否かを外部に出力するためのものであって、出力部40は、LCD(Liquid Crystal Display)などの視覚的出力手段、またはスピーカー(Speaker)などの聴覚的出力手段、または視聴覚的出力手段で構成される。
【0085】
以下、上記した微細流動装置を用いた流体試料内の分析対象物質検出方法を説明する。図8は、本発明の一実施形態に従う微細流動装置を用いた流体試料内の分析対象物質検出方法を説明する順序図である。本実施形態では、一例として血液を分析する過程を説明する。
【0086】
一例として、試料チャンバー100に被検者から採取した全血(whole blood)を注入し(S101)、微細流動装置1を回転駆動部Dに取り付ける。
【0087】
次に、微細流動装置1を低速で回転させて、血液を試料チャンバー100から試料分離部200に移送させる。低速とは、流体を移動させることに適切な遠心力を発生させる回転速度を意味する。例えば、微細流動装置1を約1800rpm/1minの加速度で11秒間回転させることができる。試料は遠心力により試料チャンバー100から試料分離部200に移動する。試料は遠心力により試料チャンバー100から試料分離部200に移動する。
【0088】
以後、遠心分離過程を遂行する(S102)。回転駆動部Dは微細流動装置1を高速回転させる。ここで、高速とは、血液を上清液である血清または血漿と、沈降物である血球に分離できる回転速度をいう。例えば、微細流動装置1を3600rpm/1minの加速度で約160秒間回転させることができる。すると、重い血球などは沈降物収集部220に移動し、上清液が上清液収集部210に残る。
【0089】
バルブ開閉装置Eを用いて閉鎖されたバルブ231を開く。回転駆動部Dは微細流動装置1を回転させて遠心力を発生させる。すると、遠心力により上清液は上清液収集部210からチャンネル230を介して上清液計量チャンバー250に移動する。上清液計量チャンバー250の出口に位置したバルブ251が閉鎖されたバルブであるので、上清液は上清液計量チャンバー250を詰める。したがって、上清液の量が充分であれば、上清液計量チャンバー250の容積だけの上清液が上清液計量チャンバー250に受容される。
【0090】
次に、バルブ開閉装置Eを用いてバルブ251を開放し、微細流動装置1を回転させれば、上清液は上清液計量チャンバー250から反応チャンバー300に移動する。回転駆動部Dは、標識接合体と上清液の内の分析対象物質と結合させるために、微細流動装置1を左右(時計方向と時計反回り方向)に数回振る動作を遂行することができる。これによって、反応チャンバー300で標識接合体と分析対象物質の結合体を含む流体試料を形成する(S103)。
【0091】
次に、バルブ305を開放し、微細流動装置が回転すれば、流体試料は分析チャンバー400のホルダー410を詰める。ホルダー410に流体試料が詰められれば、検出領域420の一端がホルダー410に詰められた流体試料に接触されて、多孔性メンブレン、マイクロポア(micro−pore)、またはマイクロピラー(micro−pillar)などで形成された検出領域420または420’で流体試料が毛細管移動をする。標識接合体−分析対象物質結合体を含む流体試料が検出領域420または420’に沿って移動してからテスト領域430または430’に永久固定されている捕獲接合体と標識接合体−分析対象物質結合体が結合する(S104)。流体試料が検出領域420または420’を全て通過すれば、回転駆動部Dを駆動させて微細流動装置を回転させて遠心力により流体試料がまた検出領域420または420’を通過するようにする。この際、毛細管力により捕獲接合体と結合しない標識接合体−分析対象物質結合体が捕獲接合体と結合することができる(S105)。したがって、一方向に発生する1回流体の流れにより抗原−抗体反応及び/または生化学反応が終結される従来技術と異なり、反応時間を延長して反応敏感度が向上することができる。また、前述したように、毛細管力(A)−遠心力(B)の対を1回に限定せず、サイクルを一定回数だけ繰り返して充分の反応を遂行することができる。即ち、遠心力により流体試料をまたホルダー410に全て移動させ、回転を止めれば、流体試料はまた毛細管現象により検出領域420に沿って流れるようになる(S104)。流体試料が検出領域420に沿って全て移動すれば、また微細流動装置を回転させて遠心力により流体試料をホルダー410に移動させることができる(S105)。
【0092】
充分な反応が遂行されたと判断された場合(S106のYES)、分析チャンバー400のホルダー410に連結されたバルブ461を開いて微細流動装置を回転させて流体試料をチャンネル462を介して停止チャンバー460に移送する。流体試料が停止チャンバー460に移送されれば、これ以上捕獲接合体と標識接合体−分析対象物質結合体の反応が終結され、これ以上起こらなくなる(S107)。次に、検出部30を用いて分析チャンバー400の検出領域420の吸光度を測定する(S108)。エンドポイントを測定する分析項目の場合には、一定時間間隔で吸光度を反復測定して反応が飽和された状態での吸光度を確認する。診断DB50に収録された吸光度と濃度との関係を用いて分析項目別濃度を算出する。
【0093】
添付した図面に図示及び説明された特定の実施形態は単に本発明の例として理解されるべきであり、本発明の範囲を限定するものでなく、本発明が属する技術分野で本発明に記述された技術的事象の範囲でも多様な他の変更が発生可能であるので、本発明は示され、又は記述された特定の構成及び配列に制限されないことは自明である。
【符号の説明】
【0094】
10 回転部
20 微細流動構造物
100 試料チャンバー
200 試料分離部
300 反応チャンバー
400 分析チャンバー
410 ホルダー
420、420’ 検出領域
430、430’ テスト領域
440、440’ 照合領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー、前記チャンバーを連結する通路を含む少なくとも1つの微細流動構造物、及び検出部を含む微細流動装置であって、
前記チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように標識接合体が流体試料の分析対象物質と結合する反応チャンバーと前記反応チャンバーの下流に位置する分析チャンバーを含み、
前記分析チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体がある検出領域を含み、
前記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア構造体、またはマイクロピラーのうちの1つを含むことを特徴とする、遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項2】
前記分析チャンバーは、前記反応チャンバーから供給された流体を受容するホルダーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項3】
前記検出領域は、前記ホルダーに一端が接触状態で形成されることを特徴とする、請求項2に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項4】
前記検出領域は、前記捕獲接合体が固定されているテスト領域及び前記テスト領域と間隔をおいて前記毛細管力が適用される方向を基準に前記テスト領域の下流に位置する照合領域を含むことを特徴とする、請求項2に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項5】
前記テスト領域及び前記照合領域を含む前記検出領域の一部が前記毛細管力が作用する方向に対して傾斜をなすことを特徴とする、請求項4に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項6】
前記チャンバーは前記分析チャンバーから前記流体試料を受容する停止チャンバーをさらに含み、
前記停止チャンバーは前記遠心力が作用する方向を基準に前記分析チャンバーの下流に位置することを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項7】
前記標識接合体は分析対象物質特異的結合群と標識接合体群とから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項8】
前記標識接合体は液体状態または乾燥された固体状態で前記反応チャンバーに受容されていることを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項9】
前記標識接合体は、ポリメリックビーズ(Polymeric bead)、金属コロイド(Metal colloid)、酵素(Enzyme)、蛍光物質、夜光物質、超常磁性物質(super paramagnetic material)、ランタン族(III)キレートを含む物質、ポリメリックナノパーティクル、または放射能同位元素であることを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項10】
前記検出部は前記捕獲接合体と結合した前記標識接合体及び分析対象物質の結合体を検出及び分析することを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項11】
前記検出部は光源部及び前記光源部に対応するように設けられて前記分析チャンバーを透過した光を受光する受光部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項12】
回転体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項13】
回転体、
チャンバー、前記チャンバーを連結する少なくとも1つの通路、及び前記通路のうちの少なくとも1つの開閉のための少なくとも1つのバルブを含む1つ以上の微細流動構造物、及び検出部を含む微細流動装置であって、
前記チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように標識接合体が流体試料の分析対象物と結合する反応チャンバーと前記反応チャンバーの下流に位置する分析チャンバーを含み、
前記分析チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体がある検出領域を含み、
前記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア構造体、またはマイクロピラーのうちの1つを含む遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項14】
前記分析チャンバーは、前記反応チャンバーから供給された流体を受容するホルダーをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項15】
前記検出領域は前記ホルダーに一端が接触状態で形成されることを特徴とする、請求項14に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項16】
前記検出領域は前記捕獲接合体が固定されているテスト領域及び前記テスト領域と間隔をおいて分離されて前記毛細管力が適用される方向を基準に前記テスト領域の下流に位置する照合領域を含むことを特徴とする、請求項14に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項17】
前記テスト領域及び前記照合領域を含む前記検出領域の一部が前記毛細管力が作用する方向に対して傾斜をなすことを特徴とする、請求項16に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項18】
前記チャンバーは前記分析チャンバーから前記流体試料を受容する停止チャンバーをさらに含み、
前記停止チャンバーは前記遠心力が作用する方向を基準に前記分析チャンバーの下流に位置することを特徴とする、請求項13に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項19】
前記標識接合体は分析対象物質特異的結合群と標識接合体群とから構成されることを特徴とする、請求項13に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項20】
前記標識接合体は液体状態または乾燥された固体状態で前記反応チャンバーに受容されていることを特徴とする、請求項13に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項21】
前記標識接合体は、ポリメリックビーズ(Polymeric bead)、金属コロイド(Metal colloid)、酵素(Enzyme)、蛍光物質、夜光物質、超常磁性物質(super paramagnetic material)、ランタン族(III)キレートを含む物質、ポリメリックナノパーティクル、または放射能同位元素であることを特徴とする、請求項13に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項22】
前記検出部は前記捕獲接合体と結合した前記標識接合体及び分析対象物質の結合体を検出及び分析することを特徴とする、請求項13に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項23】
前記検出部は光源部及び前記光源部に対応するように設けられて前記分析チャンバーを透過した光を受光する受光部を含むことを特徴とする、請求項13に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項24】
チャンバー、前記チャンバーを連結する少なくとも1つの通路、及び前記通路のうちの少なくとも1つの開閉のための少なくとも1つのバルブを含む1つ以上の微細流動構造物、及び検出部を含む微細流動装置であって、
前記チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように標識接合体が流体試料の分析対象物質と結合する反応チャンバーと前記反応チャンバーの下流に位置する分析チャンバーを含み、
前記分析チャンバーは標識接合体−分析対象物質結合体と結合する捕獲接合体がある検出領域を含み、
前記少なくとも1つのバルブは前記反応チャンバーと前記分析チャンバーとの間の流体移送を調節し、
前記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア構造体、またはマイクロピラーのうちの1つを含む遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項25】
前記分析チャンバーは前記反応チャンバーから供給された流体を受容するホルダーをさらに含むことを特徴とする、請求項24に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項26】
前記検出領域は前記ホルダーに一端が接触状態で形成されることを特徴とする、請求項25に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項27】
前記検出領域は前記捕獲接合体が固定されているテスト領域及び前記テスト領域と間隔をおいて分離されて前記毛細管力が適用される方向を基準に前記テスト領域の下流に位置する照合領域を含むことを特徴とする、請求項25に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項28】
前記テスト領域及び前記照合領域を含む前記検出領域の一部が前記毛細管力が作用する方向に対して傾斜をなすことを特徴とする、請求項27に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項29】
前記標識接合体は分析対象物質特異的結合群と標識接合体群とから構成されることを特徴とする、請求項24に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項30】
前記標識接合体は液体状態または乾燥された固体状態で前記反応チャンバーに受容されていることを特徴とする、請求項24に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項31】
前記標識接合体は、ポリメリックビーズ(Polymeric bead)、金属コロイド(Metal colloid)、酵素(Enzyme)、蛍光物質、夜光物質、超常磁性物質(super paramagnetic material)、ランタン族(III)キレートを含む物質、ポリメリックナノパーティクル、または放射能同位元素であることを特徴とする、請求項24に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項32】
前記検出部は前記捕獲接合体と結合した前記標識接合体及び分析対象物質の結合体を検出及び分析することを特徴とする、請求項24に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項33】
前記検出部は光源部及び前記光源部に対応するように設けられて前記分析チャンバーを透過した光を受光する受光部を含むことを特徴とする、請求項24に記載の遠心力基盤の微細流動装置。
【請求項34】
流体試料内の分析対象物質の分析方法であって、
前記流体試料を前記微細流動装置に注入し、
上清液を得るために流体試料を遠心分離し、
前記上清液を標識接合体が受容された微細流動構造物の反応チャンバーに移送し、
標識接合体−分析対象物質結合体を生成するように前記上清液の内の前記分析対象物質に前記標識接合体を結合させ、
前記微細流動装置を遠心分離させ、
前記標識接合体−分析対象物質結合体を前記微細流動構造物の分析チャンバーに移送し、かつ前記分析チャンバーは前記反応チャンバーの下流に位置し、捕獲接合体が固定された検出領域を含み、前記検出領域は、多孔性メンブレン、マイクロポア(micro−pore)、またはマイクロピラー(micro−pillar)で形成され、
前記標識接合体−分析対象物質結合体を毛細管力により前記分析チャンバー末端まで移動させ、
前記上清液の内の標識接合体−分析対象物質結合体と前記分析チャンバー内の捕獲接合体を結合させ、
前記微細流動装置に遠心力を加えて前記分析チャンバーの末端まで移動した上清液を前記分析チャンバーの他の末端に移動させながら、また前記上清液の内の標識接合体−分析対象物質結合体と前記分析チャンバー内の捕獲接合体を結合させ、
前記捕獲接合体と結合された前記標識接合体及び前記分析対象物質の結合体を検出することを特徴とする、流体試料内の分析対象物質の分析方法。
【請求項35】
前記上清液の前記分析チャンバー末端から他の末端までの移動は2回以上であることを特徴とする、請求項34に記載の流体試料内の分析対象物質の分析方法。
【請求項36】
前記分析チャンバーは、前記反応チャンバーから供給された流体を受容するホルダーをさらに含むことを特徴とする、請求項34に記載の流体試料内の分析対象物質の分析方法。
【請求項37】
前記検出領域は前記ホルダーに一端が接触状態で形成されることを特徴とする、請求項34に記載の流体試料内の分析対象物質の分析方法。
【請求項38】
前記微細流動構造物は前記遠心力が作用する方向を基準に前記分析チャンバーの下流に位置して前記分析チャンバー内の流体試料を受容する停止チャンバーをさらに含むことを特徴とする、請求項34に記載の流体試料内の分析対象物質の分析方法。
【請求項39】
前記標識接合体は液体状態または乾燥された固体状態で前記反応チャンバーに受容されていることを特徴とする、請求項34に記載の流体試料内の分析対象物質の分析方法。
【請求項40】
前記標識接合体は、ポリメリックビーズ(Polymeric bead)、金属コロイド(Metal colloid)、酵素(Enzyme)、蛍光物質、夜光物質、超常磁性物質(super paramagnetic material)、ランタン族(III)キレートを含む物質、ポリメリックナノパーティクル、または放射能同位元素であることを特徴とする、請求項34に記載の流体試料内の分析対象物質の分析方法。
【請求項41】
前記捕獲接合体が結合された分析対象物質結合体の検出の以前に、前記分析チャンバー内の流体試料を停止チャンバーに移送して標識接合体−分析対象物質結合体と捕獲接合体との間の反応を停止させることをさらに含むことを特徴とする、請求項34に記載の流体試料内の分析対象物質の分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2013−518276(P2013−518276A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551077(P2012−551077)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000192
【国際公開番号】WO2011/093602
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(503447036)サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド (2,221)
【Fターム(参考)】