説明

遠隔操作方式搬送車両

【課題】 荷役ユニットを取り替え可能とし、災害現場等において多様な荷役を可能とした遠隔操作による遠隔操作方式搬送車両の提供。
【解決手段】 動力駆動装置を備えた車両と、その車両に着脱される荷役ユニット3を備えた遠隔操作方式搬送車両であって、車両には荷役ユニット3の格納スペース4が備えられ、荷役ユニット3を単位として取り替えて搬送可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔操作方式搬送車両に関し、特に、荷役ユニットを取り替え可能とし、災害現場等において多様な荷役を可能とした遠隔操作による遠隔操作方式搬送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
火山の噴火、豪雨による土砂崩れ、原子力事故による放射性物質の漏洩等の災害現場では、作業員が近寄ることができないため、無人の作業車両や機器が投入される。
この作業車両や機器は、位置検出センサや障害物検出センサ等を備え、遠隔操作により移動や作業を行う構成となっている。
そして、このような技術に関して特許文献1、2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−72924号公報
【特許文献2】特開平4−349082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の技術は災害地等を遠隔操作等により無人走行する車両についての技術であるが、物資を効率的に搬送する技術についての記載はない。
特に、災害の現場では想定外の事態に臨機応変に対応することが求められるが、一台の機器で運搬に加えて、多様荷役を行う点についての記載はない。
本発明は係る従来の問題点を解決するためになされたものであってその目的とするところは、荷役ユニットを取り替え可能とし、災害現場等において多様な荷役を可能とした遠隔操作による遠隔操作方式搬送車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の遠隔操作方式搬送車両では、動力駆動装置を備えた車両と、その車両に着脱される荷役ユニットを備えた遠隔操作方式搬送車両であって、 前記車両には荷役ユニットの格納スペースが備えられ、荷役ユニットを単位として取り替えて搬送可能としたことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の遠隔操作方式搬送車両では、請求項1記載の遠隔操作方式搬送車両において、左右の接地走行部に挟まれた機体の高さを路面から高く確保し、路面と機体の間に挟まれた部位に荷役ユニットの格納スペースを形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の遠隔操作方式搬送車両では、請求項2記載の遠隔操作方式搬送車両において、前記車両の機体は、上方に立ち上がった左右の側面と、その側面同士を連結する上面を有し、側面同士は上面によって連結されて並行して対面した状態とされ、左右の側面と上面に囲まれた部位に荷役ユニットの格納スペースが形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の遠隔操作方式搬送車両では、請求項1〜3いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両において、機体を昇降させることによって荷役ユニットの着脱を行う構成とした。
【0009】
請求項5記載の遠隔操作方式搬送車両では、請求項1〜4いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両において、左右の走行部を前後逆方向に駆動して車両の操舵を行う構成とした。
【0010】
請求項6記載の遠隔操作方式搬送車両では、請求項1〜5いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両において、電動による駆動装置を備え、機体の一画にバッテリーを着脱自在として収容したことを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の遠隔操作方式搬送車両では、請求項1〜6いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両において、車両の走行及び荷役ユニットの着脱及び荷役ユニットの作動は遠隔操作がなされることを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の遠隔操作方式搬送車両では、請求項1〜7記載の遠隔操作方式搬送車両において、前記荷役ユニットとして災害救助用の荷役ユニットを備えており、その荷役ユニットはコンベアを備えており、車高を降下させてコンベアを路面に接近させ、路上に倒れた被災者の救助を可能とした。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を採用したことにより、本発明では次の効果を有する。
請求項1記載の遠隔操作方式搬送車両においては、荷役ユニットを単位として取り替えて搬送可能としたので、災害現場の状況等に応じて多様な荷役作業を実現する。
【0014】
請求項2記載の遠隔操作方式搬送車両においては、左右の接地走行部に挟まれた機体の高さを路面から高く確保し、路面と機体の間に挟まれた部位に荷役ユニットの格納スペースを形成したので、地上から近い位置に荷役ユニットの搭載スペースが確保され、荷役ユニットの搭載と荷下ろしがスムーズに行われる。
【0015】
請求項3記載の遠隔操作方式搬送車両においては、車両の機体は、上方に立ち上がった左右の側面と、その側面同士を連結する上面を有し、側面同士は上面によって連結されて並行して対面した状態とされ、左右の側面と上面に囲まれた部位に荷役ユニットの格納スペースが形成されているので、荷役ユニットの搭載スペースを大きく確保できる。
【0016】
請求項4記載の遠隔操作方式搬送車両においては、機体を昇降させることによって荷役ユニットの着脱を行う構成としたので、荷役ユニットの搭載と荷下ろしが容易に行われる。
【0017】
請求項5記載の遠隔操作方式搬送車両においては、左右の走行部を前後逆方向に駆動して車両の操舵を行う構成としたので、狭いエリアでも容易に方向転換が行われる。
【0018】
請求項6記載の遠隔操作方式搬送車両では、電動による駆動装置を備え、機体の一画にバッテリーを着脱自在として収容したので、格納スペースを圧迫せずに、バッテリーの収容スペースが確保される。
【0019】
請求項7記載の遠隔操作方式搬送車両では、車両の走行及び荷役ユニットの着脱及び荷役ユニットの作動は遠隔操作がなされるので、災害現場でも安全に荷役作業を行うことができる。
【0020】
請求項8記載の遠隔操作方式搬送車両では、前記荷役ユニットとして災害救助用の荷役ユニットを備えており、その荷役ユニットはコンベアを備えており、車高を降下させてコンベアを路面に接近させ、路上に倒れた被災者の救助を可能としたので、物資の運搬に加えて救助作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】機体と荷役ユニットの斜視図である。
【図2】機体の正面図である。
【図3】機体の使用状態を示す側面図である。
【図4】貨物ユニットの斜視図である。
【図5】災害救助用の荷役ユニットの斜視図である。
【図6】貨物ユニットを搭載した状態の使用状態を示す斜視図である。
【図7】車輪の説明図である。
【図8】クローラの説明図である。
【図9】4輪の遠隔操作方式搬送車両の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて遠隔操作方式搬送車両を実現する最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の遠隔操作方式搬送車両は図1〜図7に示すように、車輪1による接地走行部を備えた機体2と、機体2に収容される荷役ユニット3を主要な構成とし、機体2には荷役ユニット3の格納スペース4が配置され、機体の一画にはバッテリー5が収容され、そのバッテリー5から電気の供給を受けてモータが車輪1を駆動する構成となっている。
本発明の遠隔操作方式搬送車両では機体2の走行及び荷役ユニット3の作動はオペレータによる遠隔操作により行われる。
【0024】
前記機体2(プラットフォーム)は、左右の接地走行部に支持されて路面から高く形成され、路面と機体2の間に挟まれた部位に荷役ユニット3の格納スペース4が配置されている。
機体2の全体形状は逆U字形、あるいはコの字の開口部分を伏せた形状とされ、左右側面6は垂直方向に延設されて互いに並行して対面し、上面7は側面上端部から内側へ水平に折れ曲がっている。
そのため、左右側面及び上面は閉塞されているが、前後面と底面が開口され、U字に折れ曲がった内側がトンネルのような空洞とされ、その空洞部が荷役ユニットを収容するスペース4とされている。
また、逆U字形に屈曲した機体の断面には所定の幅が確保されており、この幅の部分にバッテリー5が収容されている。
【0025】
本実施例では荷役ユニット3として、貨物ユニット3aと災害救助ユニット3bを採用するが、ユニットの種類については必要に応じて他の用途の荷役ユニットが使用される。
貨物ユニットは図4に示すように、水平な底面8と、底面の周囲を囲う垂直な側面9を有している。貨物ユニットの形状は箱状体とされ、上面は開放した状態とされているが、蓋等の閉塞体を設ける構成としても良い。
貨物ユニットの前方にはシリンダ10が備えられて、ピストンの進退により前方の側面が前へ倒れて扉11として機能する。
貨物ユニットの底部外縁の四方には突起12が外側へ突き出ており、一方、機体2側面の下側にはこの突起12に嵌合する凹部が配置されており、突起12が機体2の下端に嵌合して機体に着脱する着脱機構とされている。
【0026】
着脱機構を介して荷役ユニット3の搭載と荷下ろしは次の手順で行われる。
搭載した荷役ユニットを地上に降ろす場合は、目的地で停止して機体2を降下させると地上に荷役ユニット3が降ろされて接地した時点で機体2から分離する。
機体2から荷役ユニット3が分離した後に、機体を前進または後進させると、荷役ユニット3が目的地へ残される。
一方、荷役ユニット3を機体2に搭載する場合は、地上に置かれた荷役ユニットに機体を走行させて接近させ、荷役ユニット3の上へ機体の格納スペース4が被さる位置に停止する。ここで機体を降下させると荷役ユニットの着脱突起12が機体の凹部に嵌合して機体と荷役ユニットが接続される。この状態で、機体を上昇させると、機体に荷役ユニットが搭載されることとなる。
【0027】
本実施例では路面と機体の間に挟まれた部位にトンネル状に荷役ユニットの格納スペース4が形成されているので、遠隔操作であっても機体を昇降させるのみで容易に荷役ユニットの搭載と荷下ろしが行われる。
図6は格納スペース4に荷役ユニット3を搭載した状態の使用方法を示すが、図6に示すように、荷役ユニット3を降ろさずに、扉を開閉して内部の物資を放出、あるいは回収等を行うことも可能である。
【0028】
機体2の左右にはそれぞれ3輪、左右合計で6輪の車輪1(ホイール)が配置されている。
車輪1のそれぞれの回転軸には電動モータが配置され、バッテリー5から電気の供給を受けて、それぞれの車輪が駆動されるようになっている。
車輪1の駆動方法としては、左右それぞれに単一のモータを配置し、そのモータが複数の車輪を駆動する方法とすることも可能である。
左右の車輪1は前後方向に逆回転が可能とされており、車両の操舵は左右の車輪の回転速度、回転方向を制御することにより行う。左右の車輪1の回転を制御する方向転換方法を採用しているので、小さな半径で方向転換ができる。
【0029】
走行部には機体2の昇降を行う昇降機構13が配置され、油圧あるいはギアの歯合によるシリンダ機構13aが設けられている。
昇降機構13は機体2に取り付けられて、ピストンが上下することにより、機体2が車輪1に対して上昇と降下がなされる。
この昇降機構13は前述した着脱機構を構成するものであり、昇降機構13が機体を昇降させることにより、荷役ユニットの突起12と機体2の凹部の着脱がなされる。
この昇降機構13は6輪すべての車輪に備えられて、それぞれが独立して上下動できるようになっている。
独立して上下するので、機体2を前かがみ、あるいは後ろに反り返った状態にすることができ、搭載した荷役ユニットの性質に応じて、機体を制御して作業することができる(図3参照)。
また、傾斜地の走行においては、路面の傾斜に応じて左右、前後の車高を制御でき、それによって、荷役ユニットを水平に維持しながら運搬することができる。
【0030】
次に、災害救助用の荷役ユニット3bについて説明する。
災害救助ユニット3bは前記貨物ユニット3aと同様、格納スペース4に収容できる大きさ、形状を備えている。
この災害救助ユニット3bは底面がコンベア14とされ、独自のバッテリーまたは機体のバッテリー5から電気の供給を受けてコンベア14が作動する。
このコンベア14は入口方向から奥方向へ搬送作動するので、地上に横たわった被害者にコンベアを接触させて被害者を引き込み収容することができる。
被害者の引き込み収容に際しては、昇降機構13により機体を降下させて地上近くまでコンベア14の入口を接近させた状態で、機体を遠隔制御しながらコンベア14の入口を被害者に接触させると、コンベア14の搬送作用により引き込まれて収容される。
災害救助ユニットに収容した後はクッション性のある保持材15で上から圧迫のない程度に身体を保持し、機体を走行させる。
【0031】
次に、本発明の作用を説明する。
災害現場において物資を運搬する場合には、物資を収容した貨物ユニット3aを機体2に搭載し、目的地へ遠隔操作により走行する。
本実施例では、電気による駆動装置を備えているので、トランスミッション等の部品が省略され機体に対して大きな収容スペースが確保される。
目的地へ到達すると、昇降装置13を作動させて機体2を降下させると地上に貨物ユニット3aが降ろされて接地した時点で機体2から分離する。
機体2から貨物ユニット3aが分離した後に、機体2を前進または後進させると、貨物ユニット3aが目的地へ荷下ろしされる。
貨物ユニット3aの回収に際しては、機体2を走行して接近させ、貨物ユニット3aの上へ機体2が被さる位置に停止する。そして、機体2を降下させると荷役ユニットの着脱突起12が機体の凹部に嵌合して機体2と貨物ユニット3aが接続される。この状態で、機体2を上昇させると、機体2に貨物ユニット3aが搭載されることとなる。
【0032】
災害現場での被災者の救出に際しては、災害救助ユニット3bを搭載して、目的地へ遠隔操作により走行する。
目的地へ到達した後に、遠隔操作により昇降機構13を降下させてコンベア14を被災者の路面へ降下させる。機体及び災害救助ユニットを遠隔操作しながら、コンベア14の入口を被災者へ接触させると、コンベア14の搬送作用により奥へ引き込まれて収容される。
被災者を収容した後はクッション性のある保持材15で上から圧迫のない程度に身体を保持し、機体を走行させる。
【0033】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では6個の車輪を備えた機体2について説明したが、図9に示すように左右に合計4輪の機体であっても本発明に含まれる。
また、機体の左右車幅の広狭については使用目的等に応じて適宜設定される。
また、車輪の他に図8に示すクローラ式の走行部を採用することも可能であり、車輪の一部をクローラに置き換えても良い。
前記実施例で説明した着脱機構については、格納スペースに位置する荷役ユニットを遠隔操作により搭載と荷下ろしができる構成であれば他の機構を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 車輪
2 機体
3 荷役ユニット
3a 貨物ユニット
3b 災害救助ユニット
4 格納スペース
5 バッテリー
6 側面
7 上面
8 底面
9 側面
10 シリンダ
11 扉
12 突起
13 昇降機構
13a シリンダ
14 コンベア
15 保持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力駆動装置を備えた車両と、その車両に着脱される荷役ユニットを備えた遠隔操作方式搬送車両であって、
前記車両には荷役ユニットの格納スペースが備えられ、
荷役ユニットを単位として取り替えて搬送可能としたことを特徴とする遠隔操作方式搬送車両。
【請求項2】
左右の接地走行部に挟まれた機体の高さを路面から高く確保し、
路面と機体の間に挟まれた部位に荷役ユニットの格納スペースを形成したことを特徴とする請求項1記載の遠隔操作方式搬送車両。
【請求項3】
前記車両の機体は、上方に立ち上がった左右の側面と、その側面同士を連結する上面を有し、
側面同士は上面によって連結されて並行して対面した状態とされ、
左右の側面と上面に囲まれた部位に荷役ユニットの格納スペースが形成されていることを特徴とする請求項2記載の遠隔操作方式搬送車両。
【請求項4】
機体を昇降させることによって荷役ユニットの着脱を行う構成とした請求項1〜3いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両。
【請求項5】
左右の走行部を前後逆方向に駆動して車両の操舵を行う構成とした請求項1〜4いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両。
【請求項6】
電動による駆動装置を備え、機体の一画にバッテリーを着脱自在として収容したことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両。
【請求項7】
車両の走行及び荷役ユニットの着脱及び荷役ユニットの作動は遠隔操作がなされることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の遠隔操作方式搬送車両。
【請求項8】
前記荷役ユニットとして災害救助用の荷役ユニットを備えており、その荷役ユニットはコンベアを備えており、車高を降下させてコンベアを路面に接近させ、路上に倒れた被災者の救助を可能とした請求項1〜7記載の遠隔操作方式搬送車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86570(P2013−86570A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226410(P2011−226410)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(390005234)株式会社筑水キャニコム (21)
【出願人】(598132060)株式会社エス・アイ・エス (2)