説明

遮光ネット

【課題】耐久性に優れ、比較的安価に作製可能な金属層を蒸着したフラットヤーンで構成された遮光ネットを提供すること。
【解決手段】金属蒸着層(22)を中間層に有する積層材料(2)をスリットしたテープ状の糸条(1)をネット状に形成した遮光ネット(10)において、 テープ状の糸条(1)のスリット端面がエポキシ樹脂系の耐候性保護膜(25)により覆われている。耐候性保護膜(25)は積層材料をスリットする際にスリット作業と同時に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の農業、園芸などの分野で主としてハウス被覆体として使用される遮光ネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果物や花卉などの栽培において、促成栽培や防霜を目的として,ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニール共重合体などの合成樹脂シートを外側に被覆した所謂ビニールハウス内栽培が行われている。
【0003】
しかし、この種の合成樹脂シートを被覆したハウスは、昼間の温度上昇が大き過ぎる傾向にあり、たとえ低温期であっても農作物の生育適温を超えることがあり、また、ハウス内が密閉されることで外気との交換が少なく炭酸ガスの過不足や多湿状態になり易く農作業の生育を阻害することがあるので、通気のためにシートの裾を巻き上げるなどの開放作業が必要となる。
【0004】
一方、通気性を有して開放作業の必要のない被覆資材として、モノフィラメントやフラットヤーンからなる編織布など粗目のネット状物が使用されている。これらは、シート内を農作業の生育に適した温度と湿度環境を保つことができ、しかも、ネット状物が直射日光を遮断して適当な光量にすると同時に、ネット状物の目隙部から適度に採光することができるので、温度コントロールの必要な茶樹、椎茸、果樹などの高温期における過熱、乾燥を防ぐ目的にまで拡大して多くの農作物の栽培に使用されている。
【0005】
遮光ネットは、高密度ポリエチレンなどの合成樹脂製糸条を用いて、通気間隔を有するように比較的粗目に編成または織成されたものであるが、光を散らして木漏れ日の様な状態を再現させる目的で、アルミニウムなどの金属層を蒸着したフラットヤーンで構成される遮光ネットがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】実公昭54−43177号公報。
【0007】
しかし、アルミニウムを蒸着したフラットヤーンは、その蒸着膜の物理的化学的強度が弱く、つまり、蒸着層が空気と接触すると酸化被膜が張って金属光沢が損なわれたり、水分が付着すると水酸化アルミニウムに変成して透明になるなど、耐久性に問題がある。
【0008】
また、アルミニウムなどの金属層を蒸着したフィルムを糸条にスリットしてあるので、スリットされた端面から金属層が腐食してしまうという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、金属層を蒸着したフラットヤーンで構成された遮光ネットに関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、耐久性に優れ、比較的安価に作製可能な金属層を蒸着したフラットヤーンで構成された遮光ネットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明は、金属蒸着層を中間層に有する積層材料をスリットした糸条をネット状に形成した遮光ネットにおいて、前記糸条の端面が耐候性保護膜により覆われ
ていることを特徴とする、遮光ネットである。
【0011】
このように請求項1記載の発明によれば、糸条の端面が耐候性保護膜により覆われているので、長期間経過しても糸条の金属蒸着層の端面から腐食が進行するといった問題はなくなる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の遮光ネットは、糸条の端面が樹脂液により保護されているので、長期間経過しても金属蒸着層の端面が腐食することがなく、また、黒色ポリエチレンの影響により光吸収率が少なく、蓄熱する程度も低く、耐久性、遮光性に優れた遮光ネットを得る。
また、スリット作業と同時に樹脂液を塗布することにより、特別の塗布工程を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明の遮光ネットは、例えば、図1、図2、図3に示すように、金属蒸着層(22)を中間層に有する積層材料(2)をスリットしたテープ状の糸条(1)をネット状に形成した遮光ネット(10)である。
【0015】
そして、スリットした糸条(1)の端面が耐候性保護膜(25)により覆われていることを特徴としている。
【0016】
積層材料(2)は、例えば、つぎのようにして作製される。
すなわち、基材(21)となる厚さ25μm程度の一軸延伸高密度ポリエチレン樹脂フィルムの片面にアルミニウム等の金属蒸着層(22)を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により20〜60nm程度の厚さに形成させる。
【0017】
ついで、カーボンブラック等の黒色顔料を適量添加した低密度ポリエチレン樹脂を溶融ポリエチレン樹脂押し出し法により、金属蒸着層(22)を形成させた基材(21)の金属蒸着層(22)面にコロナ放電処理を施しつつ30μm程度の厚さに積層する。このようにして、基材(21)・金属蒸着層(22)/黒色低密度ポリエチレンの層構成からなる積層材料(2)を作製することができる。
【0018】
この積層材料(2)を、幅20mm程度のテープ状の糸条(1)にスリットする。スリットする際には、スリット端面に耐候性保護膜(25)が覆われるように、例えば、エポキシ樹脂系の樹脂液をフェルトで供給するなどして、スリットと同時に端面に樹脂液を塗布させ、耐候性保護膜(25)を形成する。
【0019】
このようにして作製された端面に耐候性保護膜(25)が形成されたテープ状の糸条(1)を網目状に交差させて、本発明の遮光ネット(10)とした。
【0020】
こうして作製した本発明の遮光ネット(10)は、テープ状の糸条(1)の端面に耐候性保護膜(25)が形成されているため、耐候性が格段に改良された遮光ネットである。
【実施例1】
【0021】
本発明の遮光ネットをより具体的に説明する。
まず、基材(21)として厚さ25μmの一軸延伸高密度ポリエチレン樹脂フィルムであるSMKU5フィルム(三井化学プラテック株式会社製)を準備した。
【0022】
このSMKU5フィルムの片面にアルミニウムの薄膜を蒸着法により20〜60nmの厚さに形成させ、金属蒸着層(22)とした。
【0023】
別に、黒色顔料であるカーボンブラックを適量添加した低密度ポリエチレン樹脂であるミラソン14P(三井化学株式会社製)を溶融ポリエチレン樹脂押し出し法により、金属蒸着層(22)を形成させたSMKU5フィルムの金属蒸着層面に30μmの厚さに積層し、実施例1の積層材料(2)とした。
【0024】
この積層材料(2)を、幅20mmのテープ状の糸条(1)にスリットする。スリットする際には、スリット端面に耐候性保護膜(25)が覆われるように、エポキシ樹脂系の樹脂液であるリカボンドEx−1(中央理化株式会社製、固形分;30〜50%、溶媒;酢酸エチル等)をフェルトで供給して、スリットと同時に端面に樹脂液を含浸、塗布させる。樹脂液は時間の経過とともに耐候性保護膜(25)を形成する。
【0025】
このようにして作製された端面に耐候性保護膜(25)が形成されたテープ状の糸条(1)を網目状に交差させて、実施例1の遮光ネット(10)とした。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の遮光ネットの一実施例を示す、説明図である。
【図2】本発明の遮光ネットに使用する積層材料の一実施例を示す、断面説明図である。
【図3】本発明の遮光ネットに使用する糸条の一実施例を示す、模式説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1‥‥糸条
2‥‥積層材料
10‥‥遮光ネット
21‥‥基材、高密度ポリエチレン
22‥‥中間層、金属蒸着層
23‥‥黒色ポリエチレン
25‥‥耐候性保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属蒸着層を中間層に有する積層材料をスリットした糸条をネット状に形成した遮光ネットにおいて、
前記糸条の端面が耐候性保護膜により覆われていることを特徴とする、遮光ネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−6115(P2006−6115A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183419(P2004−183419)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】