説明

遮光膜形成用チタンブラック分散組成物及びその製造方法、黒色感放射線性組成物、黒色硬化膜、固体撮像素子、及び黒色硬化膜の製造方法

【課題】経時安定性に優れた固体撮像素子用チタンブラック分散組成物及びその製造方法、経時安定性に優れ、且つ、遮光膜等の黒色硬化膜形成に用いた際に、該硬化膜の形成領域外における感放射線性組成物由来の残渣の発生が抑制された固体撮像素子用黒色感放射線性組成物の提供。
【解決手段】(A)チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、(B)分散剤、及び(C)有機溶媒を含有し、前記被分散体の90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有し、且つ、前記被分散体におけるSi原子とTi原子との含有質量比(Si/Ti比)が0.20〜0.50である固体撮像素子用チタンブラック分散組成物及びその製造方法、及び該分散組成物を含む感放射線性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光膜形成用チタンブラック分散組成物及びその製造方法、黒色感放射線性組成物、黒色硬化膜、ウエハレベルレンズ、固体撮像素子、及び黒色硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等には、高解像度の撮像ユニットが搭載されている。このような撮像ユニットは、一般に、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子を備えている。固体撮像素子(以下、「イメージセンサ」とも言う。)では、多くの光電変換素子が配列された受光部の周縁に、オプティカルブラック領域(暗電流計測領域)周辺回路が配置されており、電荷の転送、暗電流の計測、信号の増幅などが行われている。この部位に光が入射するとノイズが発生し、イメージセンサの画質が低下する。これらの問題を防止するためにこの領域の光入射側には遮光部(ブラックマトリクス)が設けられている。
【0003】
ブラックマトリクスは、遮光性の黒色色材を分散させた分散組成物と、重合性化合物、光重合開始剤、その他の成分とを含有する感放射線性組成物とし、これを用いてフォトリソ法などによりパターン形成することで製造されている。
固体撮像素子用のブラックマトリクスを形成するための組成物としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色色材を含有する感放射線性組成物が知られている。
【0004】
従来、遮光性のブラックマトリクスとしては、専らカーボンブラックが多用されてきたが、カーボンブラックで遮光性を高めようとすると、カーボンブラックの充填量を高めることが必要となる。このため遮光材であるカーボンブラックの濃度の高い分散組成物、あるいは感放射線性組成物が遮光層のパターン成形に必要となる。しかしながら、高い遮光性を得るためにカーボンブラックの含有量を増やすと、カーボンブラックの分散性が困難になり、またパターン成形性が悪化するといったような問題も発生していた。
【0005】
高い遮光性が得られ、薄膜でも高い遮光性を得られる黒色色材としてチタンブラックを用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、固体撮像素子の周辺遮光材料として、チタンブラックを使用した遮光膜形成用組成物が開示されている。また、チタンブラックが有する高い遮光性を得るため、チタンブラックを表面処理することも種々提案されている。例えば、特許文献2には、二酸化珪素微粒子により被覆してなるチタンブラック粒子を含む黒色樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−115921号公報
【特許文献2】特開2002−285007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、チタンブラックは比重が大きいため、分散することが難しく、分散しても時間が経つとチタンブラックが沈降してしまうなどの問題があり、前記特許文献1、2に記載される組成物についても、経時安定性は不充分である。
また、チタンブラックを含有する感放射線性組成物は遮光性であるため、該組成物をフォトリソ法によりパターン状の遮光膜形成に用いた場合には、露光光が組成物層を透過し難いことから、遮光膜周辺部に感放射線性組成物に由来する残留物(以下、本明細書では、適宜「残渣」と称する。)が発生し易いという問題がある
【0008】
本発明は、前記状況に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、経時安定性に優れた固体撮像素子用チタンブラック分散組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、経時安定性に優れ、且つ、遮光膜等の黒色硬化膜形成に用いた際に、該硬化膜の形成領域外における感放射線性組成物由来の残渣の発生が抑制された固体撮像素子用黒色感放射線性組成物、該黒色感放射線性組成物を用いて形成された黒色硬化膜及びその製造方法、並びに、該黒色硬化膜を備えた高画質の固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記に示す手段により、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
<1> (A)チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、(B)分散剤、及び(C)有機溶媒を含有し、前記被分散体の90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有し、且つ、前記被分散体におけるSi原子とTi原子との含有質量比(Si/Ti比)が0.20〜0.50である固体撮像素子用チタンブラック分散組成物。
<2> 前記<1>に記載のチタンブラック分散組成物、(D)光重合性化合物、及び(E)光重合開始剤を含有する固体撮像素子用黒色感放射線性組成物。
<3> 前記(D)光重合性化合物が、オキシム化合物である前記<2>に記載の固体撮像素子用黒色感放射線性組成物。
<4> 更に、フッ素系界面活性剤を含有する前記<2>又は<3>に記載の固体撮像素子用黒色感放射線性組成物
<5> 前記<2>〜<4>のいずれか1項に記載の黒色感放射線性組成物を硬化して得られた黒色硬化膜。
<6> 前記<5>に記載の黒色硬化膜を備えた固体撮像素子。
<7> 前記2>〜<4>のいずれか1項に記載の黒色感放射線性組成物をシリコン基板上に塗布して黒色感放射線性組成物層を形成する工程と、前記黒色感放射線性組成物層をパターン状に露光する工程と、露光後の前記黒色感放射線性組成物層を現像してパターンを形成する工程と、を有する黒色硬化膜の製造方法。
<8> 前記<1>に記載の固体撮像素子用チタンブラック分散組成物の製造方法であって、酸化チタン、シリカ粒子、及び分散剤を含む混合液を、酸素雰囲気下で、750℃〜1100℃の温度で加熱した後、還元処理することにより、チタンブラック及びSi原子を含む被分散体を得る工程と、前記チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、分散剤、及び有機溶媒を含む混合液を分散処理する工程と、を有する固体撮像素子用チタンブラック分散組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、経時安定性に優れた固体撮像素子用チタンブラック分散組成物及びその製造方法を提供することができる。
本発明によれば、経時安定性に優れ、且つ、遮光膜形成に用いた際に遮光膜の形成領域外における感放射線性組成物由来の残渣の発生が抑制された固体撮像素子用黒色感放射線性組成物、該黒色感放射線性組成物を用いて形成された遮光性に優れた遮光膜及びその製造方法、並びに、該遮光膜を備えた高画質の固体撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の固体撮像素子用チタンブラック分散組成物及びその製造方法、固体撮像素子用黒色感放射線性組成物について詳細に説明する。
【0013】
[固体撮像素子用チタンブラック分散組成物及びその製造方法、及び、固体撮像素子用黒色感放射線性組成物]
本発明の固体撮像素子用チタンブラック分散組成物(以下、単に「分散組成物」とも称する。)は、(A)チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、(B)分散剤、及び(C)有機溶媒を含有し、前記被分散体の90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有し、且つ、前記被分散体におけるSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti比)が質量基準で0.20〜0.50である固体撮像素子の遮光膜形成用チタンブラック分散組成物である。
【0014】
また、本発明の固体撮像素子用黒色感放射線性組成物(以下、単に「感放射線性組成物」とも称する。)は、本発明のチタンブラック分散組成物、(D)光重合性化合物、及び(E)光重合開始剤を含有する感放射線性組成物である。
即ち、本発明の感放射線性組成物は、本発明のチタンブラック分散組成物に含有される、(A)チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、(B)分散剤、及び(C)有機溶媒と共に、(D)光重合性化合物、及び(E)光重合開始剤を含有し、前記被分散体の90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有し、且つ、前記被分散体におけるSi原子とTi原子との含有質量比(Si/Ti比)が0.20〜0.50であるものである。
【0015】
本発明のチタンブラック分散組成物及び感放射線性組成物は、固体撮像素子におけるシリコン基板上に設けられる遮光膜、反射防止膜、固体撮像素子の有効画素領域(撮像部)の周縁に配置される遮光膜、その他の膜の形成に好適に用いられる。
【0016】
また、本発明のチタンブラック分散組成物は、これ以外にも所謂MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と総称される、機械要素部品、センサー、アクアクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイスにおける遮光用途にも用いることができる。
特に限定されるものではないが、例えばインクジェットプリンターのヘッド、圧力センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ、プロジェクターなどの製品や、他にも例えば圧電アクチュエータのような光反射ユニットと素子とが一体となったものの遮光用途にも使用することができる。
【0017】
以下、本発明のチタンブラック分散組成物又は感放射線性組成物に含有される各成分について順次説明する。
【0018】
〔(A)チタンブラック及びSi原子を含む被分散体〕
本発明のチタンブラック分散組成物及び感放射線性組成物は、(A)チタンブラック及びSi原子を含む被分散体(以下、単に「被分散体」とも称する。)を含有する。
【0019】
本発明の分散組成物においては、被分散体の90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有する粒子であり、且つ、該被分散体中のSi原子とTi原子との含有質量比(Si/Ti)が0.20〜0.50であることを要する。
【0020】
本発明の感放射線性組成物は、本発明の分散組成物に由来する被分散体を含有する。該感放射線性組成物及びこれを硬化して得られた硬化膜(遮光膜)中に含有される被分散体についても、その90%以上が30nm以下の粒径を有する粒子であり、且つ、該被分散体中のSi原子とTi原子との含有質量比(Si/Ti比)は、0.20〜0.50である。
【0021】
本発明における被分散体の粒径とは、被分散体の粒子直径を意味し、粒子直径とは、粒子の外表面の投影面積と等しい面積をもつ円の直径である。粒子の投影面積は、電子顕微鏡写真での撮影により得られた面積を測定し、撮影倍率を補正することにより得られる。
【0022】
ここで、本発明における被分散体は、一次粒子の状態であるもの、凝集体(二次粒子)の状態であるものの双方を包含する。
【0023】
本発明における被分散体は、90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有する粒子であり、該粒径は、17nm〜27nmの範囲であることが好ましく、17nm〜23nmの範囲であることがより好ましい。
また、本発明における被分散体中のSi原子とTi原子と含有質量比(Si/Ti比)は、0.20〜0.50の範囲であり、0.25〜0.47の範囲であることが好ましく、0.30〜0.45の範囲であることがより好ましい。
被分散体の粒径及びSi/Ti比が、上記の範囲であると、被分散体を含むチタンブラック分散組成物の製造が容易であり、経時安定性についても向上する。また、該チタンブラック分散組成を含む感放射線性組成物を用いてフォトリソ法で遮光膜を形成した際には、残渣の発生が低減される。
【0024】
本発明における被分散体の製造方法としては、酸化チタン、シリカ粒子、及び分散剤を含む混合液を、酸素雰囲気下で、高温(750℃〜1100℃)の温度で加熱した後、還元処理する方法が挙げられる。
より詳細には、例えば、原料となる酸化チタン、シリカ粒子、及び分散剤を含む混合液を調製し、該混合液を、酸素雰囲気下、750℃〜1100℃(好ましくは850℃〜1000℃)の温度で加熱した後、窒素置換し、更にアンモニアガスにより還元処理する方法により、本発明における被分散体を好適に得ることができる。
上記の方法において用いるシリカ粒子の量を適宜選択することで、最終的に得られる被分散体の粒径を16nm〜30nmの範囲に制御することができる。
【0025】
被分散体におけるSi/Ti比を、0.20〜0.50の範囲とするためには、以下のような手段を用いることができる。
例えば、前記した酸化チタンとシリカ粒子との混合物を、分散することにより分散組成物を得て、この分散組成物を高温にて還元処理することにより得る方法においては、酸化チタンとシリカ粒子との混合比を変更することにより得ることができる。
更に、例えば、特開2008−266045公報の段落番号〔0005〕(6)及び同公報の段落番号〔0016〕〜〔0021〕に記載の方法に準拠した方法によっても、被分散体におけるSi/Ti比を調整することができる。
【0026】
本発明の感放射線性組成物を硬化して得られた硬化膜(遮光膜)中に含有される被分散体についても、その90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有する粒子であり、また、被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti比)が0.20〜0.50の範囲である。粒径及びSi/Ti比の好ましい範囲についても、前述の範囲と同様である。
【0027】
本発明においては、チタンブラック及びSi原子を含む被分散体の90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有し、且つ、該被分散体におけるSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti比)が0.20〜0.50の範囲であることで、この被分散体を含む本発明の分散組成物及び感放射線性組成物の経時安定性が良好となり、該感放射線性組成物を用いて遮光膜を形成した際には、遮光膜の形成領域外における感放射線性組成物由来の残渣の発生が低減される。なお、残渣は、チタンブラック、樹脂成分等の感放射線性組成物に由来する成分を含むものである。
本発明の分散組成物及び感放射線性組成物の経時安定性が良好な理由としては、詳細なメカニズムは不明であるが、被分散体にSi原子が所定の比率で存在することにより、組成物に含有される分散剤と被分散体に含まれるチタンブラックとの吸着が最適な状態になるためであると推測している。
また、本発明の感放射線性組成物を用いることで、硬化膜を形成する際に残渣が低減される理由は未だ明確ではないが、本発明における被分散体は、その90%以上が16nm〜30nmの小粒径を有しており、更に、前述のごとく、分散剤と被分散体に含まれるチタンブラックとの吸着が最適な状態であることから、感放射線性組成物における被分散体の凝集が効果的に低減されるため、本発明の感放射線性組成物を硬化膜の形成に用いた際には、微細な被分散体が均一に分散された状態の膜形成が可能となり、結果として被分散体の凝集体に起因する残渣が低減するためであるためと推測している。
【0028】
また、チタンブラックは、紫外から赤外までの広範囲に亘る波長領域の光に対する遮光性に優れることから、本発明の分散組成物又は感放射線性組成物を用いて形成された遮光膜は優れた遮光性を発揮する。
【0029】
本発明のチタンブラック分散物又は感光性樹脂組成物に含有される被分散体について、その90%が16nm〜30nmの粒径を有するか否かを判断するには、下記に示す方法(A−1)を用いる。
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜(遮光膜)に含有される被分散体について、その90%が16nm〜30nmの粒径を有するか否かを判断するには、下記に示す方法(A−2)を用いる。
【0030】
<方法(A−1)>
チタンブラック分散物又は感光性樹脂組成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAとも略称する。)により100倍に希釈した試料液を調製する。得られた試料液を、カーボンフォイル上に滴下、乾燥させて、透過型電子顕微鏡を用いて形態観察写真を撮影する。得られた写真から、粒子400個について外表面の投影面積を求め、この面積に相当する円の直径を算出し、度数分布を評価する。
【0031】
<方法(A−2)>
遮光膜が形成された基板から硬化膜を削り取り、これを石英ボード上に載せて、電気炉を使用して100mL/minの酸素フロー下にて、500℃で60分間加熱処理して粉体を得る。加熱処理により得られた粉体を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて100倍に希釈して試料液を調製する。得られた試料液を、カーボンフォイル上に滴下、乾燥させて、透過型電子顕微鏡を用いて形態観察写真を撮影する。得られた写真から、粒子400個について外表面の投影面積を求め、この面積に相当する円の直径を算出し、度数分布を評価する。
【0032】
本発明のチタンブラック分散組成物又は感放射線性組成物に含有される被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が0.20〜0.50の範囲であるか否かを判断するには、下記に示す方法(B−1)又は方法(1−2)を用いる。
【0033】
<方法(B−1)>
チタンブラック分散組成物又は感放射線性組成物を、酸素雰囲気中で加熱処理し、チタンブラック粒子を含む被分散体を取り出す。
チタンブラック分散組成物又は感放射線性組成物を、20mg秤量し、ここに、HF 0.1mL、HNO(10%aq.) 1mL、HSO(5%aq.) 1mL、及びHCL(3%aq.) 1mLを添加し、マイクロウェーブ溶解を液温180℃で行う。
その後、この混合液に、HOを100mLになるまで加え、これをICP−OES(Attom、商品名:SII社製)に供し、元素分析を行う。得られた結果より、Si/Tiの質量比を算出する。
【0034】
<方法(B−2)>
チタンブラック分散組成物又は感放射線性組成物を、小型ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて酸素雰囲気中で700℃に加熱し、30分間保持した後に冷却し、粉体を2g得て、得られた粉体を厚さ0.2mmのタングステン板上にのせ、これを、電子線加熱機構を具備した真空チャンバ内に設置し、真空度を10−5Torr以下として電子線加熱により1000℃で30秒加熱処理する。加熱処理した粉体について、電界放出型走査電子顕微鏡S−4800(商品名、日立テクノロジーズ社製)及び、エネルギー分散型蛍光X線検出器 INCA Energy PentaFETx3(商品名、Oxford社製)を用いて、Si原子量、Ti原子量を求め、Si/Ti比を算出する。
【0035】
また、本発明の感放射線性組成物を硬化して得られた硬化膜(遮光膜)に含有される被分散体について、その被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が0.20〜0.50であるか否かを判断するには、下記に示す方法(C)を用いる。
【0036】
<方法(C)>
遮光膜が形成された基板を割ることで、遮光膜の断面を作製し、この断面についてエネルギー分散型蛍光X線分析装置により、遮光膜表面におけるSi原子量とTi原子量を得ることができる。これらの量比を、遮光膜中のSi/Tiとして評価する。
この際のエネルギー分散型蛍光X線分析としては、前記の走査型電子顕微鏡として日立ハイテクノロジー社製S−4800(商品名)、及び、エネルギー分散型蛍光X線検出器としてOxford社製INCA Energy PentaFETx3(商品名)を同様に用いることができる。
【0037】
以下、チタンブラックについて、更に詳細に説明する。
本発明においてチタンブラックとは、チタン原子を有する黒色粒子であり、好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等の黒色粒子である。
【0038】
チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、粒子表面を修飾することが可能である。粒子表面の修飾としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等で被覆処理が可能であり、また、特開2007−302836号公報に示されるような撥水性物質での処理も可能である。
【0039】
チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M−C、13R、13R−N、13M−T(商品名:以上、三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)、MT−01、MT−10EX、MT−05、MT−100TV、MT−100Z、MT−150EX、MT−150W、MT−150A(商品名:テイカ製)などが挙げられる。
【0040】
チタンブラックの製造方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気で加熱し還元する方法(特開昭49−5432号公報に記載の方法)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを、水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57−205322号公報に記載の方法)、二酸化チタン又は水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60−65069号公報、特開昭61−201610号公報に記載の方法)、二酸化チタン又は水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61−201610号公報に記載の方法)などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明に適用されるチタンブラックとしては、個々の粒子の一次粒径及び平均一次粒径のいずれもが小さいものであることが好ましい。
【0041】
本発明のチタンブラック分散組成物及び感放射線性組成物は、チタンブラックを1種のみを含有するものであってもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0042】
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、チタンブラックと共に、分散性、着色性等を調整する目的で、Cu、Fe、Mn、V、Ni等の複合酸化物、酸化コバルト、酸化鉄、カーボンブラック、アニリンブラック等からなる黒色顔料を、1種又は2種以上を組み合わせて、被分散体として併用してもよい。
この場合、全被分散体中の50質量%以上をチタンブラック粒子からなる被分散体が占めることが好ましい。
【0043】
また、後述するように、遮光性の調整等を目的として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、チタンブラック及びSi原子を含む被分散体(粒子)と共に、他の着色剤(有機顔料や染料など)を所望により併用してもよい。
【0044】
チタンブラック分散組成物中の被分散体の含有量は、分散組成物の全固形分に対し、5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることが更に好ましい。
また、感放射線性組成物中の被分散体の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し、2.5質量%〜30質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
ここで分散組成物中の全固形分、及び感放射線性組成物中の全固形分とは、それぞれ分散物または感放射線性組成物に含まれる全質量から有機溶媒を除いた質量のことをいう。
【0045】
本発明においては、被分散体中のSi原子とTi原子との質量換算による含有質量比(Si/Ti)が質量換算で0.20〜0.50の範囲であることを要する。
以下、被分散体にSi原子を導入する際に用いられる材料について述べる。
被分散体にSi原子を導入する際には、シリカなどのSi含有物質を用いればよい。
本発明に用いうるシリカとしては、沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、合成シリカなどを挙げることができ、これらを適宜選択して使用すればよい。
【0046】
シリカは市販品としても入手可能であり、例えば、新日鉄マテリアルズ製、HS−101、HS−102、HS−103、HS−104、HS−105、HS−106、HS−107、HS−201、HS−202、HS−203、HS−204、HS−205、HS−301、HS−302、HS−303、HS−304、HS−305(商品名);宇部日東化成製、ハイプレシカSS、ハイプレシカTS、ハイプレシカBS、ハイプレシカSP、ハイプレシカFQ(商品名);キャボット製、CAB−O−SIL(登録商標)LM−150、CAB−O−SIL(登録商標)LM−150、CAB−O−SIL(登録商標)S−17Dなどを用いることができる。
【0047】
さらに、シリカ粒子の粒径が本発明による遮光膜を形成した際に膜厚と同程度の粒径であると遮光性の低下を引き起こすため、シリカ粒子として微粒子タイプのシリカを用いることが好ましい。微粒子タイプのシリカの例としては、例えば、AEROSIL(登録商標)90、AEROSIL(登録商標)130、AEROSIL(登録商標)150、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)300、AEROSIL(登録商標)380、AEROSIL(登録商標)OX 50、AEROSIL(登録商標)EG 50、AEROSIL(登録商標)TT 600、AEROSIL(登録商標)200 SP、AEROSIL(登録商標)300 SP、AEROPERL(登録商標)300/30、AEROSIL(登録商標)R 972、AEROSIL(登録商標)R 974、AEROSIL(登録商標)R 104、AEROSIL(登録商標)R 106、AEROSIL(登録商標)R 202、AEROSIL(登録商標)R 805、AEROSIL(登録商標)R 812、AEROSIL(登録商標)R 812 S、AEROSIL(登録商標)R 816、AEROSIL(登録商標)R 7200、AEROSIL(登録商標)R 8200、AEROSIL(登録商標)R 9200、AEROSIL(登録商標)MOX 80、AEROSIL(登録商標)MOX 170、AEROSIL(登録商標)COK 84、AEROSIL(登録商標)RY 50、AEROSIL(登録商標)NY 50、AEROSIL(登録商標)RY 200、AEROSIL(登録商標)RY 200、AEROSIL(登録商標)RX 50、AEROSIL(登録商標)NAX 50、AEROSIL(登録商標)RX 200、AEROSIL(登録商標)RX 300、AEROSIL(登録商標)R 504、AEROPERL(登録商標)300/30、VP AEROPERL(登録商標)P 25/20M05;触媒化成製S6、MA1004(商品名、以下同様)、MA1006、MA1010、MA1013、MX030W、MX050W、MX100W、KE−E30、KE−E40、KE−E50、KE−E70、KE−E150、KE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100、KE−P150、KE−P250;新日鉄マテリアルズ製HS−101(商品名、以下同様)、HS−102、HS−103、HS−104、HS−105、HS−106、HS−107、HS−201、HS−202、HS−203、HS−204、HS−205、HS−301、HS−302、HS−303、HS−304、及びHS−305;宇部日東化成製、ハイプレシカSS(商品名、以下同様)、ハイプレシカTS、ハイプレシカBS、ハイプレシカSP、及びハイプレシカFQ;キャボット製、CAB−O−SIL(登録商標、以下同様)LM−150、CAB−O−SIL LM−150、及びCAB−O−SIL S−17Dなどを用いることができるがこれらに限定されない。
【0048】
〔(B)分散剤〕
本発明のチタンブラック分散組成物及び感放射線性組成物は、(B)分散剤を含有する。
【0049】
本発明における(B)分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、及び顔料誘導体等を挙げることができる。
【0050】
本発明における(B)分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、及びブロック型高分子に分類することができる。
【0051】
本発明における(B)分散剤は、チタンブラック及び所望により併用する顔料等の被分散体の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、本発明における(B)分散剤は被分散体の表面を改質することで、分散樹脂の吸着を促進させる効果を有する。
【0052】
本発明に用いうる(B)分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(商品名、ポリアミドアミン燐酸塩)、107(商品名、カルボン酸エステル)、110(商品名、酸基を含む共重合物)、130(商品名、ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170、180、190(商品名、高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(商品名、高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(商品名、ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(商品名、ブロック共重合体)、4400、4402(商品名、変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(商品名、高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(商品名、脂肪酸ポリエステル)、6745(商品名、フタロシアニン誘導体)、6750(商品名、アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ(株)製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学(株)製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(商品名、アクリル系共重合体)」、楠本化成(株)製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(商品名、脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王(株)製「デモールRN、N(商品名、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、デモールMS、C、SN−B(商品名、芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(商品名、高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(商品名、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(商品名、アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(商品名、末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(商品名、ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。また、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000Eなどの両性分散剤も挙げられる。
これらの(B)分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
(グラフト共重合体:特定樹脂A)
本発明においては、(B)分散剤として、グラフト共重合体(以下、「特定樹脂A」ともいう)を用いることも好ましい。(B)分散剤としてグラフト共重合体を用いることで、分散性及び保存安定性をより向上させることができる。
【0054】
特定樹脂Aの酸価は、5.0mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の範囲であり、更に好ましくは60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の範囲である。
特定樹脂Aの酸価が200mgKOH/g以下であれば、遮光膜を形成する際の現像時におけるパターン剥離がより効果的に抑えられる。また、特定樹脂Aの酸価が5.0mgKOH/g以上であればアルカリ現像性がより良好となる。また、特定樹脂Aの酸価が60mgKOH/g以上であれば、チタンブラックの沈降をより抑制でき、粗大粒子数をより少なくすることができ、チタンブラック分散組成物又は感放射線性組成物の経時安定性をより向上できる。
【0055】
本発明において、特定樹脂Aの酸価は、例えば、分散剤中における酸基の平均含有量から算出することができる。また、特定樹脂Aの構成成分として含まれうる酸基を含有するモノマー単位の含有量を変化させることで所望の酸価を有する樹脂を得ることができる。
【0056】
本発明における特定樹脂Aの重量平均分子量は、遮光膜を形成する際において、現像時のパターン剥離抑制と現像性の観点から、10,000以上300,000以下であることが好ましく、15,000以上200,000以下であることがより好ましく、20,000以上100,000以下であることが更に好ましく、25,000以上50,000以下であることが特に好ましい。
なお、特定樹脂Aの重量平均分子量は、例えば、GPCによって測定することができる。
【0057】
グラフト共重合体としては、水素原子を除いた原子数が40〜10000の範囲であるグラフト鎖を有するものが好ましい。この場合のグラフト鎖とは、共重合体の主鎖の根元から、主鎖から枝分かれしている基の末端までを示す。
この特定樹脂Aは、チタンブラック粒子に分散性を付与しうる分散樹脂であり、優れた分散性と、グラフト鎖による溶媒との親和性を有するために、チタンブラック粒子の分散性、及び経時後の分散安定性に優れる。また、感放射線性組成物としたとき、グラフト鎖の存在により重合性化合物又はその他の併用可能な樹脂などとの親和性を有するので、アルカリ現像で残渣を生じにくくなる。
【0058】
また、この特定樹脂Aに、更に、カルボン酸基などのアルカリ可溶性の部分構造を導入することで、アルカリ現像によるパターン形成のために現像性を付与する樹脂としての機能をも付与することができる。
従って、前記グラフト共重合体に、アルカリ可溶性の部分構造を導入することで、本発明のチタンブラック分散組成物は、チタンブラック粒子の分散に不可欠の分散樹脂自体がアルカリ可溶性を有することになる。このようなチタンブラック分散物を含有する感放射線性組成物は、露光部の遮光性に優れたものとなり、且つ、未露光部のアルカリ現像性が向上される。
【0059】
グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり分散性は向上するが、一方グラフト鎖が長すぎるとチタンブラックへの吸着力が低下して分散性は低下してしまう。このため、本発明で使用されるグラフト共重合体としては、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が40〜10000であることが好ましく、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が50〜2000であることがより好ましく、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が60〜500であることが更に好ましい。
【0060】
グラフト鎖のポリマー構造の例としては、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエーテルなどが挙げられる。グラフト鎖としては、グラフト部位と溶媒との相互作用性を向上させ、それにより分散性を高めるために、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることが好ましく、ポリエステル又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることがより好ましい。
【0061】
このようなポリマー構造をグラフト鎖として有するマクロモノマーの構造としては、ポリマー主鎖部と反応可能な置換基を有し、且つ本発明の要件を満たしていれば、特に限定されないが、好ましくは、反応性二重結合性基を有するマクロモノマーを好適に使用することができる。
【0062】
特定樹脂Aの合成に好適に用いられる市販のマクロモノマーとしては、AA−6(商品名、(商品名、東亜合成(株))、AA−10(商品名、東亜合成(株)製)、AB−6(商品名、東亜合成(株)製)、AS−6(東亜合成(株))、AN−6(商品名、東亜合成(株)製)、AW−6(商品名、東亜合成(株)製)、AA−714(商品名、東亜合成(株)製)、AY−707(商品名、東亜合成(株)製)、AY−714(商品名、東亜合成(株)製)、AK−5(商品名、東亜合成(株)製)、AK−30(商品名、東亜合成(株)製)、AK−32(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPP−100(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−500(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−800(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−1000(商品名、日油(株)製)、ブレンマー55−PET−800(日油(株)製)、ブレンマーPME−4000(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE−400(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE−1300(商品名、日油(株)製)、ブレンマー43PAPE−600B(商品名、日油(株)製)、などが用いられる。このなかでも、好ましくは、AA−6(東亜合成(株)製)、AA−10(商品名、東亜合成(株))、AB−6(商品名、東亜合成(株)製)、AS−6商品名、東亜合成(株))、AN−6(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPME−4000(商品名、日油(株)製)などが用いられる。
【0063】
特定樹脂Aにおけるグラフト部位としては、少なくとも下記式(1)〜式(4)のいずれかで表される構造単位を含むことが好ましい。
【0064】
【化1】

【0065】
式(1)〜式(4)において、W、W、W及びWは、それぞれ独立に、酸素原子或いはNHを表し、特に酸素原子が好ましい。X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X、X、X、X、及びXとしては、合成上の制約の観点からは、好ましくはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1から12のアルキル基であり、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0066】
式(1)〜式(4)において、Y、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、該連結基は特に構造上制約されない。Y、Y、Y、又はYで表される2価の連結基として、具体的には、下記の(Y−1)〜(Y−21)の連結基などが例として挙げられる。下記に示した構造において、A、Bはそれぞれ、式(1)〜式(4)における左末端基及び右末端基との結合部位を意味する。下記に示した構造のうち、合成の簡便性から、(Y−2)又は(Y−13)であることがより好ましい。
【0067】
【化2】

【0068】
式(1)〜式(4)において、Z、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に1価の有機基を表す。該有機基の構造は、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及びアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、Z、Z、Z、及びZで表される有機基としては、特に分散性向上の観点から、立体反発効果を有するものが好ましく、Z〜Zで表される有機基としては、それぞれ独立に炭素数5から24のアルキル基又は炭素数5から24のアルコキシ基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5から24の分岐アルキル基を有するアルコキシ基或いは炭素数5から24の環状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。また、Zで表される有機基としては、各々独立に炭素数5から24のアルキル基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5から24の分岐アルキル基或いは炭素数5から24の環状アルキル基が好ましい。
【0069】
式(1)〜式(4)において、n、m、p、及びqは、それぞれ1から500の整数である。
式(3)において、pが2〜500のとき、グラフト共重合体中に複数存在するRは互いに同じであっても異なっていてもよい。式(4)において、qが2〜500のとき、グラフト共重合体中に複数存在するX及びRは互いに同じであっても異なっていてもよい。
また、式(1)及び式(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2〜8の整数を表す。式(1)及び式(2)におけるj及びkは、分散安定性、現像性の観点から、4〜6の整数が好ましく、5が最も好ましい。
【0070】
式(3)中、Rは分岐若しくは直鎖のアルキレン基を表し、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましい。
式(4)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、この1価の有機基としては特に構造上限定はされない。Rとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられ、更に好ましくは、水素原子、又はアルキル基である。該Rがアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐状アルキル基、又は炭素数5〜20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0071】
特定樹脂Aにおいて、式(1)〜式(4)で表される構造単位は、質量換算で、特定樹脂Aの総質量に対し10%〜90%の範囲で含まれることが好ましく、30%〜70%の範囲で含まれることがより好ましい。式(1)〜式(4)で表される構造単位が、この範囲内で含まれるとチタンブラック粒子の分散性が高く、遮光膜を形成する際の現像性が良好である。
【0072】
また、特定樹脂Aにおいては、2種以上の構造が異なるグラフト部位を含有することができる。
【0073】
前記式(1)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(1A)で表される構造単位であることがより好ましい。
また、前記式(2)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(2A)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0074】
【化3】

【0075】
式(1A)中、X、Y、Z及びnは、前記式(1)におけるX、Y、Z及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(2A)中、X、Y、Z及びmは、前記式(2)におけるX、Y、Z及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、前記式(3)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(3A)又は式(3B)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0076】
【化4】

【0077】
式(3A)又は(3B)中、X、Y、Z及びpは、前記式(3)におけるX、Y、Z及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0078】
特定樹脂Aとしては、前記式(1A)で表される構造単位を有するものであることがより好ましい。
【0079】
特定樹脂Aには、グラフト部位以外にチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基を導入することができる。
このチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基としては、例えば、酸基、塩基性基、配位性基、反応性を有する官能基等があげられ、特定樹脂Aには、酸基を有する構造単位、塩基性基を有する構造単位、配位性基を有する構造単位、反応性を有する構造単位を用いて導入される。
【0080】
チタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基である酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基などがあり、特に好ましいものは、チタンブラック粒子への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高いカルボン酸基である。特定樹脂Aには、これらの酸基を1種或いは2種以上有してもよい。
また、このような酸基を導入することで、特定樹脂Aのアルカリ現像性を向上させるという利点をも有する。
特定樹脂Aに共重合成分として導入されうる酸基を有する構造単位の好適な含有量は、0.1モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、アルカリ現像による画像強度のダメージ抑制という観点から、1モル%以上30モル%以下である。
【0081】
チタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基である塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含むヘテロ環、アミド基などがあり、特に好ましいものは、顔料への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高い第3級アミノ基である。特定樹脂Aには、これらの塩基性基を1種或いは1種以上導入することができる。
特定樹脂Aに共重合成分として導入される場合、塩基性基を有する構造単位の好適な含有量は、特定樹脂Aにおける全構造単位に対し、0.01モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、0.01モル%以上30モル%以下である。
【0082】
チタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基である配位性基、及び反応性を有する官能基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物、酸塩化物などが挙げられる。特に好ましいものは、顔料への吸着力が良好で分散性が高いアセチルアセトキシ基である。特定樹脂Aには、これらの基を1種あるいは1種以上有してもよい。
特定樹脂Aの共重合成分として導入されうる配位性基を有する構造単位又は反応性を有する構造単位の好適な含有量は、特定樹脂Aの全構造単位に対し、0.5モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、1モル%以上30モル%以下である。
【0083】
本発明における特定樹脂Aが、グラフト部位以外に、チタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基を有する場合、上述したような、各種のチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基を含有していればよく、これらの官能基がどのように導入されているかは特に限定はされないが、下記一般式(i)〜一般式(iii)のいずれかで表される単量体から得られる構造単位の少なくとも1種を用いて導入されていることが好ましい。
【0084】
【化5】

【0085】
一般式(i)〜一般式(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、又は炭素原子数が1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
、R、及びRは、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、最も好ましくは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。R及びRは、それぞれ水素原子であることが特に好ましい。
【0086】
一般式(i)中のXは、酸素原子(−O−)又はイミノ基(−NH−)を表し、酸素原子であることが好ましい。
また、一般式(ii)中のYは、メチン基又は窒素原子を表す。
【0087】
また、一般式(i)〜一般式(ii)中のLは、単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基の例としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、及び置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、及び置換アリーレン基)、2価の複素環基及びそれらと酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ基(−NH−)、置換イミノ結合(−NR31−、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)又はカルボニル結合(−CO−)のうちの一つ以上との組合せ等が挙げられる。
【0088】
前記2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。前記脂肪族基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が更に好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基及び複素環基が挙げられる。
【0089】
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6〜20が好ましく、6〜15が更に好ましく、6〜10が最も好ましい。また、前記芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を挙げられる。
【0090】
前記2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環のうち1つ以上が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を挙げられる。
【0091】
Lは、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造であることがより好ましい。また、Lはオキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としてはポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、−(OCHCH−で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2〜10の整数であることがより好ましい。
【0092】
一般式(i)〜一般式(iii)中、Zは、グラフト部位以外にチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基を表し、カルボン酸基、第三級アミノ基であることが好ましく、カルボン酸基であることがより好ましい。
【0093】
一般式(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、炭素原子数が1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、−Z、又は−L−Zを表す。ここでL及びZは、上記におけるL及びZと同義であり、好ましい例も同様である。
、R、及びRとしては、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数が1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0094】
本発明においては、一般式(i)で表される単量体として、R、R、及びRがそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
また、一般式(ii)で表される単量体として、Rが水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zがカルボン酸基であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。
更に、一般式(iii)で表される単量体として、R、R、及びRがそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Lが単結合又はアルキレン基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
【0095】
以下に、一般式(i)〜一般式(iii)で表される単量体(化合物)の代表的な例を示す。
該単量体の例としては、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)とコハク酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とフタル酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とテトラヒドロキシフタル酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物と無水トリメリット酸の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とピロメリット酸無水物の反応物、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、アクリル酸オリゴマー、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、4−ビニル安息香酸、ビニルフェノール、4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0096】
特定樹脂A中における酸性基を有する単量体などのチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基の含有量は、チタンブラック粒子との相互作用、分散安定性、及び現像液への浸透性の観点から、特定樹脂Aに対して0.05質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%がより好ましく、10質量%〜70質量%が更に好ましい。
【0097】
更に、本発明のチタンブラック分散組成物に含まれる特定樹脂Aは、画像強度などの諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記グラフト部位(グラフト鎖を有する構造単位)及びチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基を有する構造単位に加えて、更に種々の機能を有する他の構造単位、例えば、分散組成物に用いられる(C)有機溶媒との親和性を有する官能基などを有する構造単位を共重合成分として含むことができる。
【0098】
特定樹脂Aに共重合可能な共重合成分としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0099】
これらを1種或いは2種以上用いることができ、特定樹脂A中、これら共重合成分の好適に使用される含有量は、0モル%以上90モル%以下であり、特に好ましくは、0モル%以上60モル%以下である。含有量が前記の範囲において十分なパターン形成性が維持される。
【0100】
特定樹脂Aを合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0101】
このような特定樹脂Aの具体例としては、以下の例示化合物1〜例示化合物56が挙げられる。なお、各構成単位(主鎖部分)の添数字は質量%である。
【0102】
【化6】

【0103】
【化7】

【0104】
【化8】

【0105】
【化9】

【0106】
【化10】

【0107】
【化11】

【0108】
【化12】

【0109】
【化13】

【0110】
【化14】

【0111】
【化15】

【0112】
【化16】

【0113】
【化17】

【0114】
【化18】

【0115】
【化19】

【0116】
【化20】

【0117】
【化21】

【0118】
(両性共重合体:特定樹脂B)
また、本発明における(B)分散剤としては、下記に示す両性の共重合体も好ましい態様である。即ち、(b−1)アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有するモノマー、(b−2)カルボキシル基を有するモノマー、及び(b−3)重量平均分子量が1,000以上50,000以下のマクロモノマーの共重合体(以下、適宜「特定樹脂B」と称する。)も好ましい態様として挙げられる。
以下に、特定樹脂Bを詳述する。
【0119】
特定樹脂Bは、原料物質として、(b−1)アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有するモノマー、(b−2)カルボン酸基を有するモノマー、(b−3)重量平均分子量が1,000以上50,000以下のマクロモノマー、及び必要に応じて任意の他のモノマーを用い、これらを共重合することにより製造されるものである。
【0120】
以下、特定樹脂Bを得るための原料物質である、(b−1)アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有するモノマー、(b−2)カルボキシル基を有するモノマー、及び(b−3)重量平均分子量が1,000以上50,000以下のマクロモノマーについて説明する。
【0121】
<(b−1)アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有するモノマー>
(b−1)アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有するモノマー(以下、適宜、「モノマー(b−1)」と称する。)は、アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有し、且つ分子量が50以上1,000以下のモノマーである。
【0122】
モノマー(b−1)が有するアミノ基としては、1級、2級及び3級のアミノ基が挙げられ、分散安定性の観点からは、2級又は3級のアミノ基であることが好ましく、3級のアミノ基であることがより好ましい。該アミノ基としては、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を有するアミノ基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐状のアルキル基を有するアミノ基が最も好ましい。該アミノ基の具体例としては、−NHMe、−NHEt、−NHPr、−NHiPr、−NHBu、−NH(tert-Bu)、−NMe、−NEt、−NPr、−NPh、モルホリノ基等が挙げられる。(ここで、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。)
【0123】
モノマー(b−1)が有する含窒素へテロ環基は、環構造内に少なくとも一つの窒素原子を有する環状置換基であり、該環構造は、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよく、無置換であっても置換基を有していてもよい。また、モノマー(b−1)に由来する含窒素へテロ環基は、特定樹脂Bにおいて、側鎖構造中に含まれていても、主鎖構造中に含まれていてもよいが、分散性及び分散安定性の観点からは、側鎖構造中に含まれることがより好ましい。
【0124】
含窒素へテロ環基の具体例としては、例えば、ピロリジン、ピロリン、テトラヒドロピリジン、ピペラジン、ホモピペラジン、ピペリジン、トリアジン、モルホリン、ヘキサメチレンテトラミン、ジアザビシクロウンデセン、デカヒドロキノリン、ジアザビシクロオクタン、ピロリジノン、δ−バレロラクタム、スクシンイミド、グルタルイミド、イミダゾリドン、テトラヒドロピリミドン、ウラゾール、ジヒドロウラシル、バルビツール酸、インドール、カルバゾール、ジュロリジン、フェノキサジン、フェノチアジン、オキシンドール、フェナンスリジノン、イサチン、フタルイミド、ジイミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、ジイミノベンズイソインドリン、ナフタルイミド、キナゾリンジオン、ピロール、ポルフィリン、ポルフィリン金属錯体、フタロシアニン、フタロシアニン金属錯体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニン金属錯体、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、イソキサゾール、オキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、チアジアゾール、チアトリアゾール、イミノスチルベン、アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、アザベンズイミダゾール、アンスラニル、ベンズイソキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ベンゾチアジアゾール、トリアゾールピリミジン、トリアゾールピリジン、プリン、キサンチン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピリミドン、ウラシル、ピラジン、キノリン、アクリジン、シンノリン、ベンゾシンノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノキサリン、フェナジン、フェナンスロリン、ペリミジン、アクリドン等の含窒素ヘテロ環基を挙げることができ、これらは無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0125】
含窒素へテロ環基のより好ましい例としては、インドール、カルバゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、オキシンドール、フェナンスリジノン、イサチン、フタルイミド、ジイミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、ジイミノベンズイソインドリン、ナフタルイミド、キナゾリンジオン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、イソキサゾール、オキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、チアジアゾール、チアトリアゾール、イミノスチルベン、アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、アザベンズイミダゾール、アンスラニル、ベンズイソキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ベンゾチアジアゾール、トリアゾールピリミジン、トリアゾールピリジン、プリン、キサンチン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピリミドン、ウラシル、ピラジン、キノリン、アクリジン、シンノリン、ベンゾシンノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノキサリン、フェナジン、フェナンスロリン、アクリドンが挙げられる。
【0126】
モノマー(b−1)が有する含窒素へテロ環基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などが挙げられる。
【0127】
含窒素へテロ環基が有してもよい置換基について、以下にさらに詳細に説明する。
該置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖又は分岐の置換もしくは無置換のアルキル基で、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチルが挙げられ、多環構造のシクロアルキル基、例えば、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基で、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)やトリシクロアルキル基等の多環構造の基が挙げられる。好ましくは単環のシクロアルキル基、ビシクロアルキル基であり、単環のシクロアルキル基が特に好ましい。)、
【0128】
アルケニル基(直鎖又は分岐の置換もしくは無置換のアルケニル基で、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基で、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルが挙げられ、多環構造のシクロアルケニル基、例えば、ビシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基で、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)やトリシクロアルケニル基であり、単環のシクロアルケニル基が特に好ましい。)アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0129】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基で、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくは非芳香族、単環もしくは縮環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子及び硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有するヘテロ環基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、
【0130】
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
【0131】
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基であり、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基で、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0132】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、炭素数0〜30のヘテロ環アミノ基であり、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ、N−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、
【0133】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基で、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基であり、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、
【0134】
アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基で、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基で、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、
【0135】
アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基であり、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基であり、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であり、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
【0136】
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基(ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましい)、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のイミド基で、例えばN−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基で、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
【0137】
ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基で、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基で、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0138】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記のいずれかの基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられ、具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0139】
モノマー(b−1)としては、分散安定性、現像性及び耐光性の観点から、アミノ基、ピリジニル基、イミダゾイル基、フタルイミド基、ナフタルイミド基、ベンズイミダゾール基、又はアクリドン基を有するモノマーであることが好ましく、アミノ基又はナフタルイミド基を有するモノマーであることが更に好ましい。
【0140】
モノマー(b−1)としては、アミノ基及び含窒素へテロ環基から選択された少なくとも一つの基を有し、且つ分子量が50以上1,000以下の公知のモノマーを使用することができる。該モノマーとしては、重合性の観点からは、アクリル系モノマー又はスチレン系モノマーであることが好ましく、下記一般式(K)で表されるアクリル系エステルモノマー、又は下記一般式(L)で表されるスチレン系モノマーであることが最も好ましい。このようなモノマーを用いることにより、特定樹脂Bは、側鎖部分にハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と強く相互作用することができるアミノ基又は含窒素へテロ環基を有することができるため、顔料分散液及び着色硬化性組成物の分散安定性及び耐光性が向上する。
【0141】
【化22】

【0142】
一般式(K)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、フッ素原子、又は塩素原子を表す。Bは、酸素原子、−N(R)−を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。Cは、二価の連結基を表す。Aは、アミノ基又は含窒素へテロ環基を表す。
【0143】
一般式(K)におけるRとしては、特に水素原子及びメチル基が好ましい。
Cで表される二価の連結基としては、炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキレンアミノカルボニル基、炭素数5〜10のシクロアルキレン基、及び炭素数6〜10のアリーレン基が好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基、及び炭素数2〜10のアルキレンアミノカルボニル基が最も好ましい。
で表されるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキルが挙げられ、特に炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。Aで表されるアミノ基又は含窒素ヘテロ環基としては、モノマー(b−1)が有するアミノ基又はヘテロ環基として前記したものと同義であり、好ましい範囲も同一である。
【0144】
【化23】

【0145】
一般式(L)中、Aは、アミノ基又は含窒素へテロ環基を表す。Aで表されるアミノ基又はヘテロ環基は、モノマー(b−1)が有するアミノ基又はヘテロ環基として前記したものと同義であり、好ましい範囲も同一である。
【0146】
モノマー(b−1)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0147】
以下、モノマー(b−1)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、具体例(M−1)〜(M−23)、(M−31)〜(M−50)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、フッ素原子、又は塩素原子を表す。
【0148】
【化24】

【0149】
【化25】

【0150】
具体例(M−1)〜(M−23)、(M−31)〜(M−50)のうちでも、Rが水素原子又はメチル基である具体例(M−1)〜(M−6)、(M−9)〜(M−16)、(M−21)〜(M−23)、(M−37)、(M−40)、(M−47)、(M−48)、(M−49)が好ましく、特に具体例(M−1)、(M−2)、(M−11)、(M−12)、(M−37)、(M−47)、又は(M−48)が、分散組成物の分散安定性、及び分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像性の観点から特に好ましい。
【0151】
<(b−2)カルボキシル基を有するモノマー>
(b−2)カルボキシル基を有するモノマーは、(以下、適宜、「モノマー(b−2)」と称する。)は、少なくとも1つのカルボキシル基を有し、且つ分子量が50以上500以下のモノマーである。
【0152】
モノマー(b−2)としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有し、且つ分子量が50以上500以下の公知のモノマーを使用することができるが、重合性の観点からは、アクリル系モノマー又はスチレン系モノマーであることが好ましく、(メタ)アクリル系エステルモノマー及び(メタ)アクリル系アミドモノマーが最も好ましい。
【0153】
モノマー(b−2)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0154】
以下、モノマー(b−2)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、具体例(M−24)〜(M−30)、(M−51)及び(M−52)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、フッ素原子、又は塩素原子を表す。
【0155】
【化26】

【0156】
【化27】

【0157】
具体例(M−24)〜(M−30)、(M−51)、(M−52)のうちでも、Rが水素原子又はメチル基である具体例(M−24)及び(M−29)が、分散組成物の分散安定性、及び分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像性の観点から特に好ましく、特にRが水素原子又はメチル基である(M−24)が最も好ましい。
【0158】
<(b−3)重量平均分子量が1,000以上50,000以下のマクロモノマー>
(b−3)重量平均分子量が1,000以上50,000以下のマクロモノマー(以下、適宜、「マクロモノマー(b−3)」と称する。)は、当該重量平均分子量を有し、且つ末端に重合性基を有するオリゴマー又はポリマーである。
【0159】
マクロモノマー(b−3)の重量平均分子量は、1,000以上50,000以下であり、1,000以上20,000以下であることが好ましく、2,000以上10,000以下であることがさらに好ましく、2,000以上5,000以下であることが最も好ましい。マクロモノマー(b−3)の重量平均分子量がこの範囲にあることにより、分散組成物の分散性、分散安定性、及び分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像が向上する。
【0160】
なお、本明細書おける重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定されたポリスチレン換算値である。
【0161】
マクロモノマー(b−3)としては、公知のマクロモノマーを用いることできる。
マクロモノマー(b−3)の例としては、東亜合成(株)製のマクロモノマーAA−6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS−6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN−6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB−6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマーが挙げられる。これらの中でも、特に柔軟性且つ親溶剤性に優れるポリエステル系マクロモノマーが、分散組成物の分散性、分散安定性、及び分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像性、耐光性の観点から特に好ましく、更に、下記一般式(M)で表されるポリエステル系マクロモノマーが最も好ましい。
【0162】
【化28】

【0163】
一般式(M)中、R1Aは水素原子又はメチル基を表す。R2Aはアルキレン基を表す。R3Aはアルキル基を表す。nは5〜100の整数を表す。
【0164】
2Aとしては、特に炭素数5〜20の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましく、−(CH−が最も好ましい。R3Aとしては、炭素数5〜20の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。nとしては、5〜30の整数が好ましく、10〜20の整数が最も好ましい。
【0165】
マクロモノマー(b−3)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0166】
特定樹脂Bは、モノマー(b−1)に由来する繰り返し単位を、特定樹脂Bの全質量に対して、10〜50質量%含有することが好ましく、15〜45質量%含有することがさらに好ましく、20〜40質量%含有することが最も好ましい。モノマー(b−1)に由来する繰り返し単位の含有量がこの範囲にあることにより、分散組成物の分散性及び分散安定性と、分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像液耐性とがさらに向上する。
【0167】
特定樹脂Bが有するモノマー(b−1)に由来する繰り返し単位は、アミノ基を必須に含有することが、分散性及び分散安定性の観点から好ましい。
特定樹脂Bが有するモノマー(b−1)に由来する繰り返し単位は、分散性及び分散安定性の更なる向上に観点からは、アミノ基及び含窒素へテロ環基の双方を含有することがより好ましく、該含窒素へテロ環基を特定樹脂Bの側鎖構造中に含有することがさらに好ましい。
特定樹脂Bが有するモノマー(b−1)に由来する繰り返し単位におけるアミノ基と含窒素へテロ環基との含有比率(アミノ基:含窒素ヘテロ環基、質量比)は、100:0〜5:95が好ましく、100:0〜10:90がさらに好ましく、100:0〜15:85が最も好ましい。
【0168】
特定樹脂Bの酸価は、10mgKOH/g〜200mgKOH/gであることが好ましく、20mgKOH/g〜150mgKOH/gであることがさらに好ましく、40mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが最も好ましい。特定樹脂Bの酸価がこの範囲にあることにより、分散組成液の分散性及び分散安定性と、分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像性が向上する。特定樹脂Bの酸価は、塩基滴定により測定することができる。
【0169】
モノマー(b−2)に由来する繰り返し単位は、特定樹脂Bの酸価が、上記の範囲となるように、特定樹脂B中に含まれることが好ましい。
【0170】
特定樹脂Bは、マクロモノマー(b−3)に由来する繰り返し単位を、特定樹脂Bの全質量に対して、15〜90質量%含有することが好ましく、25〜80質量%含有することがさらに好ましく、35〜60質量%含有することが最も好ましい。マクロモノマー(b−3)に由来する繰り返し単位の含有量がこの範囲にあることにより、分散組成物の分散性及び分散安定性と、分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像性とがさらに向上する。
【0171】
特定樹脂Bの具体例としては、後述する実施例において、合成例と共に示した樹脂(J−1)〜(J−9)、(J−12)〜(J−20)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
特定樹脂Bは、GPC法によるポリスチレン換算値として、重量平均分子量が5,000以上30,000以下であることが好ましく、7,000以上25,000以下であることがさらに好ましく、10,000以上20,000以下であることが最も好ましい。特定樹脂Bの重量平均分子量がこの範囲により、分散組成液の分散性及び分散安定性と、分散組成物を用いた感放射線性組成物が示す現像性とがさらに向上する。
【0173】
特定樹脂Bにおけるモノマー(b−1)に由来する繰り返し単位、モノマー(b−2)に由来する繰り返し単位、及びマクロモノマー(b−3)に由来する繰り返し単位の含有比(b−1:b−2:b−3、質量比)としては、10〜50:2〜30:30〜80が好ましく、20〜50:5〜20:40〜70がより好ましく、20〜40:8〜20:40〜60が更に好ましい。
【0174】
特定樹脂Bは、硬化性を示すものであってもよい。
特定樹脂Bの硬化性を向上させるためには、更に重合性基を導入してもよい。重合性基の導入方法としては、例えば、特定樹脂Bが有するカルボキシル基とエポキシ基を含有する(メタ)アクリレート(例えば、メタクリル酸グリシジル等)を反応させる方法、特定樹脂Bが有するヒドロキシル基とイソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート又は重合性基を含有する環状酸無水物とを反応させる方法、等の公知の方法を用いることができる。
【0175】
特定樹脂Bが重合性を有する場合、重合性基を有する繰り返し単位は、特定樹脂Bの全質量に対し、5〜50質量%含有されることが好ましく、10〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0176】
特定樹脂Bは、溶剤への溶解性や塗布性を向上させるため、前記以外の繰り返し単位を含有してもよい。そのような繰り返し単位の例としては、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸アラルキル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレン等に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0177】
特定樹脂Bは、原料物質として、モノマー(b−1)、モノマー(b−2)、マクロモノマー(b−3)、及び必要に応じて任意の他のモノマーを用い、ラジカル重合で製造することが好ましい。ラジカル重合法で特定樹脂Bを製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、常法と同様である。
本発明の分散組成物は、特定樹脂Bの含有により分散性及び分散安定性に優れるため、チタンブラック粒子を含む被分散体を高濃度に含有させることが可能である。
【0178】
(側鎖にアルキレンオキサイドを有する繰り返し単位を有する樹脂:特定樹脂C)
本発明における(B)分散剤の好ましい態様の一つとしては、上述した各分散剤の他、側鎖にアルキレンオキサイドを有する繰り返し単位を有する樹脂(以下、「特定樹脂C」ともいう)も挙げられる。
【0179】
側鎖にアルキレンオキサイドを有する繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、例えば、側鎖にエチレンオキサイドを含有するモノマーが挙げられる。該側鎖にエチレンオキサイドを含有するモノマーの例としては、下記一般式(N)で表されるモノマーが挙げられる。
【0180】
【化29】

【0181】
一般式(N)中、Aは、水素原子又はメチル基を表す。Bは、水素原子、置換又は未置換のアリール基、置換又は未置換の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。Bとして好ましくは炭素数12以下のアルキル基又は水素原子であり、さらに好ましくは炭素数4以下のアルキル基又は水素原子であり、最も好ましくはメチル基である。nは1〜100であり、より好ましくは3〜30、さらに好ましくは7〜11、最も好ましくは8〜10である。
【0182】
側鎖にアルキレンオキサイドを有する繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、例えば、日油株式会社製のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートである以下に示すものが挙げられるが、これらの限定されるものではない。
ブレンマーPMEシリーズ(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、例えば、ブレンマーPME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000)、ブレンマーAMEシリーズ(メトキシポリエチレングリコールモノアタクリレート、例えば、ブレンマーAME−400)、ブレンマーPLEシリーズ(ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマーALEシリーズ(ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーPSEシリーズ(ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマーANEシリーズ(ノニルブェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーPEシリーズ(ポリエチレングリコールモノメタクリレート、例えば、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350)、ブレンマーAEシリーズ(ポリエチレングリコールモノアクリレート、例えば、ブレンマーAE−90、AE−200、AE−400)。
【0183】
特定樹脂Cは、アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)を含むことが好ましい。該酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられ、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。特定樹脂Cに含まれる酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0184】
特定樹脂Cに酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマー及び/又は重合後に酸基を付与しうるモノマーを、特定樹脂Cを重合するためのモノマー成分として用いればよい。これらのモノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。特定樹脂Cに、重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。なお、重合後に酸基を付与しうるモノマーを用いて、特定樹脂Cに酸基を導入する場合には、重合後に例えば次に述べるような酸基を付与するための処理をすればよい。重合後に酸基を付与する処理は、モノマーの種類によって異なり、例えば、次の処理が挙げられる。水酸基を有するモノマーを用いる場合であれば、例えば、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させる処理が挙げられる。エポキシ基を有するモノマーを用いる場合であれば、例えば、N−メチルアミノ安息香酸、N−メチルアミノフェノール等のアミノ基と酸基を有する化合物を付加させか、又は、例えば(メタ)アクリル酸のような酸を付加させた後に生じた水酸基に、例えば、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させる処理が挙げられる。イソシアネート基を有するモノマーを用いる場合であれば、例えば、2−ヒドロキシ酪酸等の水酸基と酸基を有する化合物を付加させる処理が挙げられる。
【0185】
上記モノマーの他、特定樹脂Cを形成しうるモノマーの具体例としては、特に制限はないが、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物、N位置換マレイミドモノマーなどのモノマーが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーとして、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。なお、これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0186】
特定樹脂Cとしては、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、及びベンジルメタクリレートを少なくとも含む3元系以上ポリマーがより好ましく、最も好ましいものは、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、及びベンジルメタクリレートを少なくとも含む4元系以上ポリマーである。
【0187】
特定樹脂Cは、GPC法によるポリスチレン換算値として、重量平均分子量が5000以上700000以下であることが好ましく、8000以上30000以下であることがさらに好ましく、9000以上11000以下であることが最も好ましい。
【0188】
以下に、特定樹脂Cの具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各構成単位(主鎖部分)の添数字はモル%である。また、iBuは、イソブチル基を表す。
【0189】
【化30】

【0190】
本発明の分散組成物における(B)分散剤の含有量は、被分散体の総質量に対して、20〜80質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましく、20〜45質量%が更に好ましい。(B)分散剤の含有量がこの範囲にあることにより、分散組成物における被分散体の高濃度化を十分に達成できる。このため、例えば、本発明の分散組成物を含有する感放射線性組成物を固体撮像素子の遮光膜形成用途に用いた場合に薄膜化による解像力向上が可能となる。(B)分散剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0191】
本発明のチタンブラック分散物における(B)分散剤の含有量としては、被分散体(チタンブラック粒子からなる被分散体及び他の着色剤等からなる被分散体を含む)の全固形分に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、3質量%〜70質量%がより好ましい。
また、本発明の感放射線性組成物における(B)分散剤の含有量としては、被分散体(チタンブラック粒子を含む被分散体及び他の着色剤等からなる被分散体を含む)の全固形分に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、3質量%〜70質量%がより好ましい。
〔(C)有機溶媒〕
本発明のチタンブラック分散組成物及び感放射線性組成物は、(C)有機溶媒を含有する。
(C)有機溶媒の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキル(例えば、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル及び2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等、並びに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0192】
有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒を2種以上組みあわせて用いる場合、特に好ましくは、上記の3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0193】
チタンブラック分散組成物に含まれる(C)有機溶媒の量としては、該分散組成物の全量に対し、10質量%〜80質量%であることが好ましく、20質量%〜70質量%であることがより好ましく、30質量%〜65質量%であることが更に好ましい。
また、感放射線性組成物に含まれる(C)有機溶媒の量としては、感放射線性組成物の全量に対し、10質量%〜90質量%であることが好ましく、20質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜75質量%であることが更に好ましい。
【0194】
〔(D)重合性化合物〕
本発明の感放射線性組成物は、(D)重合性化合物を含有する。
重合性化合物としては、具体的には、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。中でも、4官能以上の多官能重合性化合物が好ましく、5官能以上の多官能重合性化合物がさらに好ましい。
このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0195】
より具体的には、モノマー及びそのプレポリマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類、並びにこれらの多量体が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類、並びにこれらの多量体である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
これらの具体的な化合物としては、特開2009−288705号公報の段落番号〔0095〕〜〔0108〕に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。他にも市販品としては、例えばNKエステル CB−1、SA、A−SA(新中村化学工業株式会社製)などの単官能(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0196】
また、前記重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。
多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させ得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
また、その他の好ましい重合性化合物として、特開2010-160418、特開2010-129825、特許4364216各公報等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和基を2官能以上有する化合物、カルド樹脂も使用することが可能である。
【0197】
また、常圧下で100℃以上の沸点を有し、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を持つ化合物としては、特開2008−292970号公報の段落番号[0254]〜[0257]に記載の化合物も好適である。
【0198】
上記のほか、下記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーも好適に用いることができる。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0199】
【化31】

【0200】
【化32】

【0201】
前記一般式において、nは0〜14であり、mは1〜8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
前記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される重合性化合物の各々において、複数存在するRの少なくとも1つは、−OC(=O)CH=CH、又は、−OC(=O)C(CH)=CHで表される基を表す。
前記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される重合性化合物の具体例としては、特開2007−269779号公報の段落番号0248〜段落番号0251に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0202】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、重合性化合物として用いることができる。
【0203】
中でも、重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬株式会社製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。以下に好ましい重合性化合物の態様を示す。
【0204】
重合性化合物としては、多官能モノマーであって、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。エチレン性化合物が、上記のように混合物である場合のように未反応のカルボキシル基を有するものであれば、これをそのまま利用することができるが、必要において、上述のエチレン性化合物のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を導入してもよい。この場合、使用される非芳香族カルボン酸無水物の具体例としては、無水テトラヒドロフタル酸、アルキル化無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、アルキル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸が挙げられる。
【0205】
本発明において、酸基を有するモノマーとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、 特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M−510、M−520などが挙げられる。
【0206】
これらのモノマーは1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を用いることは難しいことから、2種以上を混合して用いてもよい。また、必要に応じてモノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用してもよい。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1〜40mg−KOH/gであり、特に好ましくは5〜30mg−KOH/gである。多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が落ち、高すぎると製造や取扱いが困難になり光重合性能が落ち、画素の表面平滑性等の硬化性が劣るものとなる。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
【0207】
また、重合性モノマーとして、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体を含有することも好ましい態様である。
カプロラクトン構造を有する多官能性単量体としては、その分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも下記一般式(Z−1)で表されるカプロラクトン構造を有する多官能性単量体が好ましい。
【0208】
【化33】

【0209】
一般式(Z−1)中、6個のRは全てが下記一般式(Z−2)で表される基であるか、または6個のRのうち1〜5個が下記一般式(Z−2)で表される基であり、残余が下記一般式(Z−3)で表される基である。
【0210】
【化34】

【0211】
一般式(Z−2)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、mは1または2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。
【0212】
【化35】

【0213】
一般式(Z−3)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0214】
このようなカプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20(上記式(1)〜(3)においてm=1、式(2)で表される基の数=2、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA−30(同式、m=1、式(2)で表される基の数=3、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA−60(同式、m=1、式(2)で表される基の数=6、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA−120(同式においてm=2、式(2)で表される基の数=6、R1が全て水素原子である化合物)等を挙げることができる。
本発明において、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0215】
また、本発明における特定モノマーとしては、下記一般式(Z−4)又は(Z−5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0216】
【化36】

【0217】
前記一般式(Z−4)及び(Z−5)中、Eは、各々独立に、−((CH)yCHO)−、又は−((CH)yCH(CH)O)−を表し、yは、各々独立に0〜10の整数を表し、Xは、各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子、又はカルボキシル基を表す。
前記一般式(Z−4)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは各々独立に0〜10の整数を表し、各mの合計は0〜40の整数である。但し、各mの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
前記一般式(ii)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは各々独立に0〜10の整数を表し、各nの合計は0〜60の整数である。但し、各nの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
【0218】
前記一般式(Z−4)中、mは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。
また、各mの合計は、2〜40の整数が好ましく、2〜16の整数がより好ましく、4〜8の整数が特に好ましい。
前記一般式(Z−5)中、nは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。
また、各nの合計は、3〜60の整数が好ましく、3〜24の整数がより好ましく、6〜12の整数が特に好ましい。
また、一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)中の−((CH)yCHO)−又は−((CH)yCH(CH)O)−は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0219】
前記一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、一般式(ii)において、6個のX全てがアクリロイル基である形態が好ましい。
【0220】
また、一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物の重合性化合物中における全含有量としては、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0221】
前記一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物は、従来公知の工程である、ペンタエリスリト−ル又はジペンタエリスリト−ルにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合する工程と、開環骨格の末端水酸基に、例えば(メタ)アクリロイルクロライドを反応させて(メタ)アクリロイル基を導入する工程と、から合成することができる。各工程は良く知られた工程であり、当業者は容易に一般式(i)又は(ii)で表される化合物を合成することができる。
【0222】
前記一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体及び/又はジペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。
具体的には、下記式(a)〜(f)で表される化合物(以下、「例示化合物(a)〜(f)」ともいう。)が挙げられ、中でも、例示化合物(a)、(b)、(e)、(f)が好ましい。
【0223】
【化37】

【0224】
【化38】

【0225】
一般式(Z−4)、(Z−5)で表される重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
【0226】
また、重合性化合物としては、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、重合性化合物として、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に感光スピードに優れた硬化性組成物を得ることができる。
重合性化合物の市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200」(新中村化学社製、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
【0227】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、感放射線性組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、感度の観点では、1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合は2官能以上が好ましい。また、感放射線性組成物膜の強度を高める観点では、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能基数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。さらに、3官能以上のものでエチレンオキサイド鎖長の異なる重合性化合物を併用することが、感放射線性組成物の現像性を調節することができ、優れたパターン形成能が得られるという点で好ましい。
また、感放射線性組成物に含有される他の成分(例えば、光重合開始剤、被分散体、アルカリ可溶性樹脂等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体などの硬質表面との密着性を向上させる観点で特定の構造を選択することもあり得る。
【0228】
本発明の感放射線性組成物中における重合性化合物の含有量は、感放射線性組成物中の固形分に対して0.1質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜50質量%がさらに好ましく、2.0質量%〜30質量%が特に好ましい。
【0229】
〔(E)光重合開始剤〕
本発明の感放射線性組成物は、(E)光重合開始剤を含有する。
本発明における(E)光重合開始剤(以下、単に「重合開始剤」ということがある。)としては、以下に述べる光重合開始剤として知られているものを用いることができる。
本発明における光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、光重合開始剤は、約300nm〜800nm(330nm〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0230】
本発明における(E)光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。これらの中でも、オキシム化合物が好ましい。
【0231】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0232】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0233】
また、上記以外の重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンなど)、N−フェニルグリシンなど、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトンなど)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフラノイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5−19475号公報、特開平7−271028号公報、特開2002−363206号公報、特開2002−363207号公報、特開2002−363208号公報、特開2002−363209号公報などに記載のクマリン化合物など)、アシルホスフィンオキサイド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、LucirinTPOなど)、メタロセン類(例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフロロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフロロホスフェート(1−)など)、特開昭53−133428号公報、特公昭57−1819号公報、同57−6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる。
【0234】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロル−チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドンなどが挙げられる。
【0235】
重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤も用いることができる。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959,IRGACURE−127(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤として、365nmまたは405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009−191179公報に記載の化合物も用いることができる。また、アシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。
【0236】
重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、特開2001−233842号記載の化合物、特開2000−80068号記載の化合物、特開2006−342166号記載の化合物を用いることができる。
【0237】
本発明で重合開始剤として好適に用いられるオキシム誘導体等のオキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0238】
オキシム化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報の各公報に記載の化合物等が挙げられる。
市販品ではIRGACURE OXE−01(BASF社製)、IRGACURE OXE−02(BASF社製)も好適に用いられる。
【0239】
また上記記載以外のオキシム化合物として、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009−519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010−15025号公報および米国特許公開2009−292039号記載の化合物、国際公開特許2009−131189号公報に記載のケトオキシム系化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009−221114号公報記載の化合物などを用いてもよい。
【0240】
好ましくはさらに、特開2007−231000号公報、及び、特開2007−322744号公報に記載される環状オキシム化合物に対しても好適に用いることができる。環状オキシム化合物の中でも、特に特開2010−32985号公報、特開2010−185072号公報に記載されるカルバゾール色素に縮環した環状オキシム化合物は、高い光吸収性を有し高感度化の観点から好ましい。
また、オキシム化合物の特定部位に不飽和結合を有する特開2009−242469号公報に記載の化合物も、重合不活性ラジカルから活性ラジカルを再生することで高感度化を達成でき好適に使用することができる。
【0241】
最も好ましくは、特開2007−269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009−191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX−1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0242】
【化39】

【0243】
式(OX−1)中、R及びBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
式(OX−1)中、Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。
前記一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0244】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、及び、3−ニトロフェナシル基が例示できる。
【0245】
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、o−クメニル基、m−クメニル基及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、並びに、オバレニル基が例示できる。
【0246】
置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、及び、4−メトキシベンゾイル基が例示できる。
【0247】
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、及び、トリフルオロメチルオキシカルボニル基が例示できる。
【0248】
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基として具体的には、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基が例示できる。
【0249】
置換基を有していてもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子若しくはリン原子を含む、芳香族又は脂肪族の複素環が好ましい。
具体的には、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及び、チオキサントリル基が例示できる。
【0250】
置換基を有していてもよいアルキルチオカルボニル基として具体的には、メチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、ブチルチオカルボニル基、ヘキシルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、デシルチオカルボニル基、オクタデシルチオカルボニル基、及び、トリフルオロメチルチオカルボニル基が例示できる。
【0251】
置換基を有していてもよいアリールチオカルボニル基として具体的には、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルチオカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルチオカルボニル基、2−クロロフェニルチオカルボニル基、2−メチルフェニルチオカルボニル基、2−メトキシフェニルチオカルボニル基、2−ブトキシフェニルチオカルボニル基、3−クロロフェニルチオカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルチオカルボニル基、3−シアノフェニルチオカルボニル基、3−ニトロフェニルチオカルボニル基、4−フルオロフェニルチオカルボニル基、4−シアノフェニルチオカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルチオカルボニル基が挙げられる。
【0252】
前記式(OX−1)中、Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基を表す。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0253】
なかでも、特に好ましくは以下に示す構造である。
下記の構造中、Y、X、及び、nは、それぞれ、後述する式(OX−2)におけるY、X、及び、nと同義であり、好ましい例も同様である。
【0254】
【化40】

【0255】
前記式(OX−1)中、Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アルキニレン基が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
中でも、式(OX−1)におけるAとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0256】
前記式(OX−1)中、Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、また、置換基を有していてもよい。置換基としては、先に置換基を有していてもよいアリール基の具体例として挙げた置換アリール基に導入された置換基と同様のものが例示できる。
なかでも、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。
【0257】
式(OX−1)においては、前記式(OX−1)中のArとそれに隣接するSとで形成される「SAr」の構造が、以下に示す構造であることが感度の点で好ましい。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0258】
【化41】

【0259】
オキシム化合物は、下記式(OX−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0260】
【化42】

【0261】
(式(OX−2)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、A及びYは各々独立に二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(OX−2)におけるR、A、及びArは、前記式(OX−1)におけるR、A、及びArと同義であり、好ましい例も同様である。
【0262】
前記式(OX−2)中、Xで表される一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0263】
これらの中でも、式(OX−2)におけるXとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、アルキル基が好ましい。
また、式(2)におけるnは、0〜5の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0264】
前記式(OX−2)中、Yで表される二価の有機基としては、以下に示す構造が挙げられる。なお、以下に示される基において、「*」は、前記式(OX−2)において、Yと隣接する炭素原子との結合位置を示す。
【0265】
【化43】

【0266】
中でも、高感度化の観点から、下記に示す構造が好ましい。
【0267】
【化44】

【0268】
さらにオキシム化合物は、下記式(OX−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0269】
【化45】

【0270】
(式(OX−3)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(OX−3)におけるR、X、A、Ar、及び、nは、前記式(OX−2)におけるR、X、A、Ar、及び、nとそれぞれ同義であり、好ましい例も同様である。
【0271】
以下、好適に用いられるオキシム化合物の具体例(C−4)〜(C−13)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0272】
【化46】

【0273】
【化47】

【0274】
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものであり、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものであることが好ましく、365nm及び455nmの吸光度が高いものが特に好ましい。
【0275】
オキシム化合物は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0276】
本発明に用いられる重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0277】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる(E)重合開始剤としては、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0278】
さらに好ましくは、トリハロメチルトリアジン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α−アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が最も好ましい。
【0279】
特に、本発明の感光性樹脂組成物を固体撮像素子の遮光膜の作製に使用する場合には、微細なパターンをシャープな形状で形成する必要があるために、硬化性とともに未露光部に残渣がなく現像されることが重要である。このような観点からは、重合開始剤としてはオキシム化合物を使用することが特に好ましい。特に、固体撮像素子において微細なパターンを形成する場合、硬化用露光にステッパー露光を用いるが、この露光機はハロゲンにより損傷される場合があり、重合開始剤の添加量も低く抑える必要があるため、これらの点を考慮すれば、固体撮像素子の如き微細パターンを形成するには(E)重合開始剤としては、オキシム化合物を用いるのが最も好ましい。
【0280】
本発明の感放射線性組成物に含有される(E)重合開始剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上30質量%以下、更に好ましくは1質量%以上20質量%以下である。この範囲で、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0281】
〔(F)その他の添加剤〕
本発明の感放射線性組成物には、本発明のチタンブラック分散組成物、(D)光重合性化合物、及び(E)光重合開始剤に加え、目的に応じて、種々の添加剤を使用することができる。
【0282】
(F−1)アルカリ可溶性樹脂
本発明の感放射線性組成物は、さらに(F−1)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、現像性・パターン形成性が向上する。
【0283】
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。アルカリ可溶性バインダーに酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または重合後に酸基を付与しうるモノマー(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合するようにすればよい。なお、重合後に酸基を付与しうるモノマーを単量体成分として酸基を導入する場合には、重合後に例えば後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0284】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0285】
アルカリ可溶性樹脂として用いられる線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーとして、N―フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0286】
アルカリ可溶性樹脂としては、下記一般式(ED)で示される化合物(以下「エーテルダイマー」と称することもある。)を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー(a)を、必須成分であるポリマー成分(A)として含むことも好ましい。これにより、本発明の感放射線性組成物は、耐熱性とともに透明性にも極めて優れた硬化塗膜を形成しうる。
【0287】
【化48】

【0288】
一般式(ED)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)
【0289】
前記エーテルダイマーを示す前記一般式(ED)中、RおよびRで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0290】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。前記一般式(ED)で示される化合物由来の構造体は、その他の単量体を共重合させてもよい。
【0291】
また、本発明における感放射線性組成物の架橋効率を向上させるために、重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂としては、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有したアルカリ可溶性樹脂等が有用である。上述の重合性基を含有するポリマーの例としては、ダイヤナ-ルNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer. Diamond Shamrock Co.Ltd.,製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業株式会社製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)などが挙げられる。これら重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂としては、予めイソシアネート基とOH基を反応させ、未反応のイソシアネート基を1つ残し、かつ(メタ)アクリロイル基を含む化合物とカルボキシル基を含むアクリル樹脂との反応によって得られるウレタン変性した重合性二重結合含有アクリル樹脂、カルボキシル基を含むアクリル樹脂と分子内にエポキシ基及び重合性二重結合を共に有する化合物との反応によって得られる不飽和基含有アクリル樹脂、酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂、OH基を含むアクリル樹脂と重合性二重結合を有する2塩基酸無水物を反応させた重合性二重結合含有アクリル樹脂、OH基を含むアクリル樹脂とイソシアネートと重合性基を有する化合物を反応させた樹脂、特開2002-229207号公報及び特開2003-335814号公報に記載されるα位又はβ位にハロゲン原子或いはスルホネート基などの脱離基を有するエステル基を側鎖に有する樹脂を塩基性処理を行うことで得られる樹脂などが好ましい。
【0292】
アルカリ可溶性樹脂としては、特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他ノモノマーからなる多元共重合体が好適である。この他、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。市販品としては、例えばアクリル化アクリレートACA Z300、Z320、Z250、Z251、200M、230AA(ダイセルサイテック社製)などが挙げられる。
【0293】
アルカリ可溶性樹脂としては、上記したアルカリ可溶性樹脂の中でも側鎖に重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂が好ましい。
【0294】
アルカリ可溶性樹脂の酸価としては好ましくは10mgKOH/g〜200mgKOH/g、より好ましくは10mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、15〜80mgKOH/gであることが最も好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、5,000〜20,000が好ましく、8,000 〜18,000がさらに好ましく、10,000〜15,000が最も好ましい。
【0295】
本発明の感放射線性組成物におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、組成物の全固形分中に対して、0.1質量%〜40.0質量%であることが好ましく、遮光膜等の硬化膜の剥がれ抑制と現像残渣抑制の両立の観点からは、1.0質量%〜40.0質量%であることがより好ましく、5.0〜30.0質量%であることがさらに好ましい。
【0296】
(F−2)着色剤
本発明の感放射線性組成物には、所望の遮光性を発現させるべく、公知の有機顔料や染料などの無機顔料以外の(F−2)着色剤を併用することが可能である。
【0297】
併用することができる(F−2)着色剤としては、有機顔料では、例えば、特開2008−224982号公報段落番号〔0030〕〜〔0044〕に記載の顔料や、C.I.Pigment Green 58、C.I.Pigment Blue 79のCl置換基をOHに変更したものなどが挙げられ、これらの中でも、好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し、本発明に適用しうる(F−2)着色剤は、これらに限定されるものではない。
【0298】
C.I.Pigment Yellow 11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185、
C.I.Pigment Orange 36,38,62,64、
C.I.Pigment Red 122,150,171,175,177,209,224,242,254、255、
C.I.Pigment Violet 19,23,29,32、
C.I.Pigment Blue 15:1,15:3,15:6,16,22,60,66、
C.I.Pigment Green 7,36,37,58、
C.I.Pigment Black 1,7
【0299】
また、(F−2)着色剤として使用可能な染料の例としては、特に制限はなく、公知の染料を適宜選択して使用できる。例えば、特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許第4,808,501号明細書、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報、特開平8−211599号公報、特開平4−249549号公報、特開平10−123316号公報、特開平11−302283号公報、特開平7−286107号公報、特開2001−4823号公報、特開平8−15522号公報、特開平8−29771号公報、特開平8−146215号公報、特開平11−343437号公報、特開平8−62416号公報、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、特開平8−302224号公報、特開平8−73758号公報、特開平8−179120号公報、特開平8−151531号公報等に記載の色素が挙げられる。
【0300】
染料が有する化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の化学構造が挙げられる。
【0301】
本発明の感放射線性組成物における(F−2)着色剤としては、該組成物が必須に含有する(A)被分散体と組み合わせた場合に、硬化性と遮光性を両立しうるという観点から、オレンジ顔料、赤色顔料、及び、バイオレット顔料からなる群より選択される1種以上の有機顔料が好ましく、最も好ましくは赤色顔料との組み合わせである。
【0302】
本発明における被分散体と組み合わせて用いられるオレンジ顔料、赤色顔料、及びバイオレット顔料としては、例えば、前記で例示した「C.I.Pigment Orange」、「C.I.Pigment Red」、「C.I.Pigment Violet」に属する各種顔料を、目的とする遮光性に応じて適宜選択すればよい。遮光性向上の観点からは、C.I.Pigment Violet 29、C.I.Pigment Orange 36,38,62,64、C.I.Pigment Red 177,254、255などが好ましい。
【0303】
(F−3)増感剤
本発明の感放射線性組成物には、(E)光重合開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、(F−3)増感剤を含有していてもよい。
(F−3)増感剤としては、用いられる(E)光重合開始剤を、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
(F−3)増感剤の好ましい例としては、特開2008−214395号公報の段落番号〔0085〕〜〔0098〕に記載された化合物を挙げることができる。
(F−3)増感剤の含有量は、感度と保存安定性の観点から、感放射線性組成物の全固形分に対し、0.1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、1〜20質量%の範囲内であることがより好ましく、2〜15質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0304】
(F−4)重合禁止剤
本発明の感放射線性組成物には、該組成物の製造中或いは保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の(F−4)重合禁止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる(F−4)重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。中でも、p−メトキシフェノールが好ましい。
重合禁止剤の添加量は、感放射線性組成物の全固形分に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
【0305】
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で塗布膜の表面に高級脂肪酸誘導体等を偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0306】
(F−5)密着向上剤
本発明の感放射線性組成物には、支持体などの硬質表面との密着性を向上させるために、(F−5)密着向上剤を添加することができる。
(F−5)密着向上剤としては、シラン系カップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
【0307】
シラン系カップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく挙げられ、市販品としては例えば、KBM−502、KBM−503、KBM−903、KBE−903、KBM−603、KBE−502、KBE−503(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
【0308】
(F−5)密着向上剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分中0.5質量%30質量%であることが好ましく、0.7質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0309】
(F−6)界面活性剤
本発明の感放射線性組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。これらの中でもフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0310】
特に、本発明の感放射線性組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する感放射線性組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0311】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、感放射線性組成物中における溶解性も良好である。
【0312】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0313】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。
【0314】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0315】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0316】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
【0317】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の感放射線性組成物への添加量は、感放射線性組成物の全質量に対して、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜1.0質量%である。
【0318】
(F−7)その他の添加剤
更に、感放射線性組成物は、増感色素や開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による光重合性化合物の重合阻害を抑制する等の目的で共増感剤を含有してもよい。また、硬化皮膜の物性を改良するために、希釈剤、可塑剤、感脂化剤等の公知の添加剤を必要に応じて加えてもよい。
【0319】
〔チタンブラック分散組成物の製造方法〕
本発明のチタンブラック分散組成物の製造方法は、特に制限されないが、例えば、既述の方法によりチタンブラック及びSi原子を含む被分散体を得る工程と、前記チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、分散剤、及び有機溶媒を含む混合液を分散処理する工程と、を有する方法であることが好ましい。分散処理は、例えば、攪拌機、ホモジナイザー、高圧乳化装置、湿式粉砕機、湿式分散機、等を用いて行うことができる。
また、分散処理は、2回以上の分散処理(多段分散)により行ってもよい。
【0320】
〔黒色感放射線性組成物の製造方法〕
本発明の黒色感放射線性組成物の製造方法については、特に特に制限されないが、例えば、本発明のチタンブラック分散組成物、(D)重合性化合物、(E)光重合開始剤、及び、所望により併用される各種の添加剤を混合する方法が挙げられる。
上記のようにして得られた黒色感放射線性組成物は、好ましくは孔径0.01〜3.0μm、より好ましくは孔径0.05〜0.5μm程度のフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することもできる。
【0321】
〔黒色硬化膜及びその製造方法〕
次に、本発明の黒色硬化膜及びその製造方法について説明する。
本発明の黒色硬化膜は、固体撮像素子が備える黒色硬化膜であり、本発明の感放射線性組成物を硬化させて得られる。
本発明の黒色硬化膜は、固体撮像素子が備える遮光膜、反射防止膜、その他の膜として適用しうる。
【0322】
本発明の黒色硬化膜は、固体撮像素子が有するシリコン基板上に、本発明の黒色感放射線性組成物を用いて形成することができる。
シリコン基板は、予め一方の面に撮像素子を形成したものでも、黒色硬化膜形成後に撮像素子を形成してもよい。
また、黒色硬化膜形成後に着色画素を形成してもよいし、黒色硬化膜の形成前に着色画素を形成してもよい。
【0323】
黒色硬化膜の膜厚としては特に限定はないが、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、乾燥後の膜厚で、0.5μm〜8.0μmの範囲が好ましく、1.0μm〜7.0μmの範囲がより好ましく、2.0μm〜5.0μmの範囲が更に好ましい。
パターン形成後の黒色硬化膜のサイズ(一辺の長さ)としては、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、10μm〜400μmの範囲が好ましく、50μm〜300μmの範囲がより好ましく、200μm〜300μmの範囲が更に好ましい。
【0324】
本発明における黒色硬化膜の好ましい製造方法は、本発明の感放射線性組成物を、シリコン基板上に塗布して黒色感放射線性組成物層を形成する工程(以下、適宜「感放射線性組成物層形成工程」と略称する。)と、前記黒色感放射線性組成物層をパターン状に露光する工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の前記黒色感放射線性組成物層を現像してパターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)と、を有することを特徴とする。
以下、本発明における黒色硬化膜の製造方法における各工程について説明する。
【0325】
〔黒色感放射線性組成物層形成工程〕
まず、感放射線性組成物層形成工程で用いられる基板について説明する。
カラーフィルタに用いられる基板としては、例えば、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えば、シリコン基板や、プラスチック基板が挙げられる。
また、プラスチック基板は、その表面に、ガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
【0326】
感放射線性組成物層形成工程において、感放射線性組成物を基板に形成する方法としては、特に限定されるものではないが、スピン塗布法、スリット・アンド・スピン法、スピンレス塗布法等のスリットノズルを用いる方法が好ましい。
【0327】
基板上に感放射線性組成物による塗布膜を形成する際、固体撮像素子用の遮光膜では、塗布膜の厚み(プリベーク処理後)は、0.5μm〜8.0μmの範囲が好ましく、1.0μm〜7.0μmの範囲がより好ましく、2.0μm〜5.0μmの範囲が更に好ましい。
【0328】
感放射線性組成物層形成工程において、通常は、塗布後にプリベーク処理を施す。必要によっては、プリベーク前に真空処理を施すこともできる。
真空乾燥の条件は、真空度が、通常、0.1torr〜1.0torr、好ましくは0.2torr〜0.5torr程度である。
また、プリベーク処理は、ホットプレート、オーブン等を用いて50℃〜140℃の温度範囲で、好ましくは70℃〜110℃程度であり、10秒〜300秒の条件にて行うことができる。なお、プリベーク処理には、高周波処理などを併用してもよい。高周波処理は単独でも使用可能である。
【0329】
〔露光工程〕
露光工程では、前述のようにして形成された感放射線性組成物からなる感放射線性組成物層に対し、所定のマスクパターンを介して露光を行う。露光の際に使用される放射線としては、g線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましい。
特に、固体撮像素子用の遮光膜を製造する際には、ステッパー露光機にて、主として、i線を使用することが好ましい。
【0330】
〔現像工程〕
現像工程では、露光後の感放射線性組成物層の未露光部(未硬化部)を現像液に溶出させ、硬化分のみを基板上に残存させる。現像温度としては、通常20℃〜30℃であり、現像時間としては20秒〜90秒である。現像液としては、未硬化部における感放射線性組成物の塗布膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶媒の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0331】
現像に用いられる有機溶媒としては、本発明における感放射線性組成物を調製する際に使用できる既述の(C)有機溶媒が挙げられる。
また、アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。
好ましくは有機アルカリ性の水溶液である。アルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0332】
現像方式は、パドル方式、デイップ方式、シャワー方式、スプレー方式などいずれでもよく、これにスウィング方式、スピン方式、超音波方式などを組み合わせてもよい。現像液に触れる前に、被現像面を予め水等で湿しておいて、現像ムラを防ぐこともできる。また、基板を傾斜させて現像することもできる。
【0333】
〔後硬化工程〕
上記した現像によりパターンを形成する工程の後に、さらに、得られたパターンをより硬化させる後硬化工程を実施することが好ましい。後硬化工程は、加熱及び/又は露光(紫外線照射)によって行うが、得られたパターンをさらに硬化させ、着色画素形成のパターン形成工程でのパターンの溶解等を防止したり、パターン形成された遮光膜の画素の耐溶剤性を向上したりすることができる。後硬化工程は、紫外線照射によることが好ましい。
【0334】
加熱処理(後加熱、ポストベーク)による後硬化工程は、余剰の現像液を洗浄除去するリンス処理を経て、乾燥を施した後に施される。リンス処理は、通常は純水で行うが、省液のために、最終洗浄で純水を用い、洗浄初期は使用済の純水を使用したり、また、基板を傾斜させて洗浄したり、超音波照射を併用したりする方法を用いてもよい。
【0335】
リンス処理後、水切り、乾燥をした後に、通常、約200℃〜250℃の加熱処理を行う。この加熱処理(ポストベーク)は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式或いはバッチ式で行うことができる。加熱処理時間は、30秒〜30000秒が好ましく、更に好ましくは、60秒〜1000秒である。
【0336】
露光(後露光)による後硬化工程(紫外線照射工程)は、g線、h線、i線、KrF、ArF、紫外光、電子線、X線等により行うことができるが、g線、h線、i線、UV光が好ましく、特に、紫外光が好ましい。現像工程後のパターンに、前期露光工程における露光量の10倍以上の照射光量の紫外光を照射することが望ましい。紫外光の照射光量は、前期露光工程の露光量の12倍以上200倍以下が好ましく、15倍以上100倍以下がより好ましい。光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ等を使用することができる。
【0337】
後硬化工程においては、後露光と後加熱は、併用してもよく、この場合はどちらを先に行ってもよいが、後加熱に先立って、後露光を実施することが好ましい。後露光で硬化を促進させることにより、後加熱過程で見られるパターンの熱ダレやすそ引きによる形状の変形を抑止するためである。
【0338】
このようにして得られた遮光膜を有するシリコン基板上に色分解用の着色画素が形成され、固体撮像素子として用いられる。着色画素は、複数の色相の画素で構成されるが、前記パターン形成工程(及び必要に応じて後硬化工程)を所望の色数に合わせて繰り返すことにより、所望数の色相に構成された色分解用のカラーフィルタを作製することができる。
【0339】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、既述の黒色硬化膜を備えることを特徴とする。
本発明の固体撮像素子としては、例えば、本発明の黒色硬化膜からなる遮光膜(ブラックマトリクス)と、必要により他の色(3色あるいは4色)の画素からなるパターン状皮膜と、を有するカラーフィルタを備えて構成することができる。
【0340】
本発明における固体撮像素子は、周辺部における遮光能の低下が抑制され、しかも得られたパターンの残渣が低減され、しかもパターンの直線性が良好なので、ノイズを低減でき、色再現性を向上させることができる。
本発明における固体撮像素子の構成としては、前述の遮光膜(ブラックマトリクス)などの黒色硬化膜が備えられた構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、基板上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる受光素子を有し、基板の受光素子形成面の反対側の面に本発明に係るブラックマトリックスが備えられた構成等が挙げられる。
【実施例】
【0341】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。また、室温は25℃を指す。
【0342】
(チタンブラックの作製)
粒径15nmの酸化チタンMT−150A(商品名:テイカ(株)製)を100g、BET表面積300m/gのシリカ粒子AEROPERL(登録商標)300/30(エボニック製)を25g、及び、Disperbyk190(商品名:ビックケミー社製)を100g秤量し、イオン電気交換水71gを加えてKURABO製MAZERSTAR KK−400Wを使用して、公転回転数1360rpm、自転回転数1047rpmにて20分間処理することにより均一な混合物水溶液を得た。この水溶液を石英容器に充填し、小型ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて酸素雰囲気中で920℃に加熱した後、窒素で雰囲気を置換し、同温度でアンモニアガスを100mL/minで5時間流すことにより窒化還元処理を実施した。終了後回収した粉末を乳鉢で粉砕し、粉末状の比表面積73m/gのチタンブラックA(被分散体)を得た。
また、チタンブラックAの作製にて使用したシリカ粒子AEROPERLを、それぞれ38g、10g、5g、48gとすることにより、それぞれチタンブラックB、チタンブラックC、チタンブラックX、及びチタンブラックYを得た。
【0343】
(分散剤1の合成)
500mL三口フラスコに、ε−カプロラクトン600.0g、2−エチル−1−ヘキサノール22.8gを導入し、窒素を吹き込みながら、攪拌溶解した。モノブチル錫オキシド0.1gを加え、100℃に加熱した。8時間後、ガスクロマトグラフィーにて原料が消失したのを確認後、80℃まで冷却した。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1gを添加した後、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート27.2gを添加した。5時間後、H−NMRにて原料が消失したのを確認後、室温まで冷却し、固体状の前駆体M1〔下記構造〕を200g得た。M1であることは、H−NMR、IR、質量分析により確認した。
【0344】
【化49】

【0345】
前記前駆体M1を30.0gと、NKエステル CB−1(2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、新中村化学工業(株)製)を70.0gと、ドデシルメルカプタン2.3gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート233.3gとを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温した。これに、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル(和光純薬(株)製の「V−601」)0.2gを加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行なった。2時間後、更にV−601を0.2g加えて3時間、加熱攪拌の後、下記分散剤1の30質量%溶液を得た。
【0346】
【化50】

【0347】
分散剤1の組成比、酸価、及び重量平均分子量(Mw)は、以下の通りである。なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した値である。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムをTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製)として測定した。
・組成比: x=35(質量%)、y=65(質量%)
・酸価 : 80mgKOH/g
・Mw : 30,000
【0348】
(分散剤2の合成)
1,000mL三口フラスコに1−メトキシ−2−プロパノール210gを入れ、窒素気流下、85℃まで加熱した。これに、ベンジルメタクリレート63.4g、イソブチルメタクリレート64.7g、メタクリル酸29.0g、ブレンマーPME−400(商品名、日油株式会社製、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)24.0g、V−601(和光純薬製)4.15gを1−メトキシ−2−プロパノール212gに添加して調製した溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間加熱して反応させた。
次いで、加熱を止め、以下の構造及びモノマー比率を有する4元系共重合体(分散剤2)を含む溶液を得た。分散剤2の固形分濃度は30質量%、重量平均分子量は11000、酸価は43.0mgKOH/gであった。
【0349】
【化51】

【0350】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
1.チタンブラック分散組成物の調製
<チタンブラック分散組成物Aの調製>
下記組成1に示す成分を、攪拌機(IKA社製EUROSTAR)を使用して、15分間混合し、分散物aを得た。
【0351】
(組成1)
・(A)被分散体:前記にて作製されたチタンブラックA 25部
・(B)分散剤:前記にて得られた分散剤1の30質量%溶液 25部
・(C)有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 50部
【0352】
得られた分散物aに対し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM015を使用して下記条件にて分散処理を行い、実施例1のチタンブラック分散組成物Aを得た。
【0353】
(分散条件)
・ビーズ径:φ0.05mm
・ビーズ充填率:75体積%
・ミル周速:8m/sec
・分散処理する混合液量:500g
・循環流量(ポンプ供給量):13kg/hour
・処理液温度:25〜30℃
・冷却水:水道水
・ビーズミル環状通路内容積:0.15L
・パス回数:90パス
【0354】
<チタンブラック分散組成物B、C、X、Y、Zの調製>
実施例1のチタンブラック分散組成物Aの調製において使用したチタンブラックAを、チタンブラックB、C、X、Y、三菱マテリアル製のチタンブラック「13M−T(商品名)」とした以外は、チタンブラック分散組成物Aと同様にして、実施例2、3及び比較例1〜3のチタンブラック分散組成物B、C、X、Y、Zを得た。
【0355】
<チタンブラック分散組成物Hの調製>
実施例2のチタンブラック分散組成物Bの調製において用いた分散剤1の30質量%溶液を、前記にて得られた分散剤2の30質量%溶液に変更した以外は、チタンブラック分散組成物Bと同様にして、チタンブラック分散組成物Hを得た。
【0356】
−チタンブラック分散組成物の評価−
上記にて得られた各チタンブラック分散組成物について、被分散体のSi/Ti比、及び、被分散体の粒径を測定した。
【0357】
<Si/Ti比>
得られたチタンブラック分散組成物A、B、C、H、X、Y、及び、Zの各々から分取した測定用試料を、市販の石英ボート上にのせて、電気炉を使用して100mL/minの酸素フロー下にて500℃で60分間加熱処理した。加熱処理により得られた粉体について、S−4800(商品名、(株)日立テクノロジーズ製)、及び、INCA EnergyPentaFETx3(Oxford社製)を用いて、Si原子量、Ti原子量を求め、Si/Ti比を算出した。結果を表1に示す。
【0358】
<被分散体の粒径>
チタンブラック分散組成物A、B、C、H、X、Y、及び、Zを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて100倍に希釈し、これをカーボンフォイル上に滴下、乾燥し、これをTEMにより観察することにより、被分散体の平均粒径、及び20nm以下の粒径を有する被分散体の比率(%)を評価した。なお、評価では粒径を円換算により評価し、サンプリング数を400とした。
その結果、チタンブラック分散組成物A、B、C、H、X、Y、及び、Zに含有される被分散体の平均粒径は、それぞれ、20nm、21nm、21nm、21nm、32nm、15nm、75nmであった。
また、20nm以下の粒径を有する被分散体の比率(%)は表1に示す通りであった。
【0359】
<経時安定性の評価>
チタンブラック分散組成物A、B、C、X、Y、及び、Zから分取した評価用試料100gを、ガラス瓶に入れ、室温下に4ヶ月間静置し、上澄み液を5g採取した。採取した液をガラスウェハー上にスピンコーターを使用して塗布し、(株)島津製作所製分光器「UV−3600(商品名)」により、波長500nmにおける吸光度(OD1)を測定した。
静置前のチタンブラック分散組成物についても、静置後のものと同様にして吸光度(OD0)を測定した。
静置保管前後の吸光度の比を下記式により算出し、経時安定性を評価した。
経時安定性(%)=(静置後の550nmにおける吸光度OD0/静置前の550nmにおける吸光度OD1)×100
【0360】
【表1】

【0361】
表1に示されるように、実施例のチタンブラック分散組成物A、B、C、及びHは、比較例のチタンブラック分散組成物X、Y、及びZとの対比において、いずれも優れた経時安定性を示すことが分かる。
【0362】
2.黒色感放射線性組成物の調製
(バインダー溶液1の調製)
1,000mL三口フラスコに1−メトキシ−2−プロパノール159gを入れ、窒素気流下、85℃まで加熱した。これに、ベンジルメタクリレート63.4g、メタクリル酸72.3g、V−601(和光純薬製)4.15gを1−メトキシ−2−プロパノール159gに添加して調製した溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間加熱して反応させた。
次いで、加熱を止め、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(30/70mol比)の共重合体を含む溶液得た。
次に、得られた共重合体溶液の内、120.0gを、300mL三口フラスコに移し、グリシジルメタクリレート16.6g、p−メトキシフェノール0.16gを加え、撹拌し溶解させた。溶解後、トリフェニルホスフィン3.0gを加え、100℃に加熱し、付加反応を行った。グリシジルメタクリレートが消失したことを、ガスクロマトグラフィーで確認し、加熱を止めた。反応液に、1−メトキシ−2−プロパノール184gを加え、重量平均分子量12,000(GPC法により求めたポリスチレン換算値)、酸価35mgKOH/g、固形分30質量%のバインダー溶液1を調製した。
【0363】
(バインダー溶液2の調製)
ダイセル化学工業(株)「サイクロマーP ACA230A(商品名、固形分55%、重量平均分子量14000、酸価20mgKOH/g)」に、1−メトキシ−2−プロパノールを追加して、固形分を30質量%としたバインダー溶液2を調製した。
【0364】
(黒色感放射線性組成物Aの調製)
下記組成2の成分を攪拌機で混合して、実施例1の黒色感放射線性組成物Aを調製した。
【0365】
(組成2)
・チタンブラック分散組成物A 50部
・(F−1)アルカリ可溶性樹脂:バインダー溶液1 17.0部
・(D)光重合性化合物:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製) 5.0部
・(E)光重合開始剤:IRGACURE OXE02(下記構造、BASF社製) 2.5部
【0366】
【化52】

【0367】
・(F−4)重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.003部
・(F−6)界面活性剤:メガファックF781(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製) 0.01部
・(C)有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10部
・(C)有機溶媒:シクロヘキサノン 10部
【0368】
(黒色感放射線性組成物B、C、H、X、Y、及びZの調製)
黒色感放射線性組成物Aの調製において、組成2に示される成分のうち、チタンブラック分散物Aを、チタンブラック分散物B、C、H、X、Y、及びZに、それぞれ変更した以外は、黒色感放射線性組成物Aと同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜3の黒色硬化性組成物B、C、H、X、Y、及びZを調製した。
【0369】
−黒色感放射線性組成物の評価−
上記にて得られた各黒色感放射線性組成物について、被分散体のSi/Ti比、被分散体の粒径、及び、経時安定性について評価した。
【0370】
<Si/Ti比>
得られた黒色感放射線性組成物A、B、C、H、X、Y、及び、Zの各々から分取した測定用試料を、市販の石英ボート上にのせ電気炉を使用して100mL/minの酸素フロー下にて500℃で60分間加熱処理した。加熱処理により得られた粉体について、S−4800(商品名、(株)日立テクノロジーズ製)、及び、INCA EnergyPentaFETx3(Oxford社製)を用いて、Si原子量、Ti原子量を求め、Si/Ti比を算出した。
その結果、各黒色感放射線性組成物中の被分散体におけるSi/Ti比は、チタンブラック分散組成物A、B、C、H、X、Y、及び、Zに含まれる被分散体におけるSi/Ti比と同じ結果であった。
結果を表2に示す。
【0371】
<被分散体の粒径>
黒色感放射線性組成物A、B、C、H、X、Y、及び、Zを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて100倍に希釈し、これをカーボンフォイル上に滴下、乾燥し、これをTEMにより観察することにより被分散体の平均粒径を測定した。
その結果、各黒色感放射線性組成物に含まれる被分散体の粒径は、チタンブラック分散組成物A、B、C、X、Y、及び、Zに含まれる被分散体の粒径と同じ結果であった。
結果を表2に示す。
【0372】
<経時安定性の評価>
黒色感放射線性組成物A、B、C、X、Y、及び、Zから分取した評価用試料100gを、ガラス瓶に入れ、室温下に4ヶ月間静置し、上澄み液を5g採取した。採取した液をガラスウェハー上にスピンコーターを使用して塗布し、(株)島津製作所製分光器「UV−3600(商品名)」により、波長500nmにおける吸光度(OD1)を測定した。
静置前黒色感放射線性組成物についても、静置後のものと同様にして吸光度(OD0)を測定した。
静置保管前後の吸光度の比を下記式により算出し、経時安定性を評価した。
経時安定性(%)=(静置後の550nmにおける吸光度/静置前の550nmにおける吸光度)×100
結果を表2に示す。
【0373】
3.遮光膜(黒色硬化膜)の形成
上記で得られた黒色感放射線性組成物A、B、C、X、Y、及び、Zを、それぞれ基板であるシリコンウェハーにスピンコート法で塗布し、その後、ホットプレートにて120℃で2分加熱して、黒色感放射線性組成物塗布層を形成した。次いで、得られた塗布層を、i線ステッパーを用い、10μm/10μmのラインアンドスペースパターンを有するフォトマスクを介して、露光量100mJ/cmから100mJ/cmずつ変更させて、露光した。露光後の塗布層に対し、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド0.3%水溶液を用い、23℃60秒間パドル現像を行った。その後、純水を使用してスピンシャワーにてリンスを行い、更に純水にて水洗し、実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3のパターン状の遮光膜を得た。
【0374】
−遮光膜の評価−
上記にて得られた各パターン状の各遮光膜(硬化膜)ついて、膜中に含まれる被分散体のSi/Ti比、被分散体の粒径、及び、残渣について評価した。
【0375】
<Si/Ti比>
各遮光膜が形成されている基板を割り、遮光膜の断面を作製した。
得られた断面について、(株)日立ハイテクノロジーズ製「S−4800」及びOxford社製「INCA EnergyPentaFETx3」により、Si原子量、Ti原子量を求め、Si/Ti比を算出した。
その結果、各遮光膜に含まれる被分散体のSi/Ti比は、チタンブラック分散組成物A、B、C、X、Y、及び、Zに含まれる被分散体におけるSi/Ti比と同じ結果(表1に示す結果)であった。
【0376】
<被分散体の粒径>
各遮光膜の各々についてスパチュラを用いて削り取った測定用試料を、市販の石英ボート上にのせ電気炉を使用して100mL/minの酸素フロー下にて500℃で60分間加熱処理した。加熱処理により得られた粉体について、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて100倍溶液を作製し、これをカーボンフォイル上に滴下、乾燥し、これをTEMにより観察することにより被分散体の平均粒径を測定した。
その結果、各遮光膜に含まれる被分散体の粒径は、チタンブラック分散組成物A、B、C、X、Y、及び、Zに含まれる被分散体の粒径と同じ結果(表1に示す結果)であった。
【0377】
<残渣の評価>
各パターン状の各遮光膜の現像部について、走査型電子顕微鏡(商品名:S−4800、(株)日立ハイテクノロジー製)により観察し、基板上における現像残渣の有無を評価した。
基板上に10nm以上の残渣が観察されないことが、遮光膜として良好であることを示す。結果を表2に示す。
【0378】
【表2】

【0379】
表2に示されるように、実施例の黒色感放射線性組成物A、B、C、及びHは、比較例の黒色感放射線性組成物X、Y、Zとの対比において、いずれも優れた経時安定性を示し、且つ、これを用いた遮光膜の形成においては、現像部(遮光膜の形成領域外)に現像残渣が観察されなかった。
【0380】
[実施例5]
実施例2の黒色感放射線性組成物Bの調製において、バインダー溶液1をバインダー溶液2に変更した以外は、実施例2と同様にして黒色感放射線性組成物Dを作製した。
【0381】
[実施例6]
実施例4の黒色感放射線性組成物Dの調製において、重合性化合物を下記に示す重合性化合物に変更した以外は、実施例4と同様にして黒色感放射線性組成物Eを作製しした。
・KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製) 2.5部
・ATM−35E(下記構造、新中村化学工業(株)製) 2.5部
【0382】
【化53】

【0383】
[実施例7]
実施例2の黒色感放射線性組成物Bの調製において、重合性化合物を下記に示す重合性化合物に変更した以外は、実施例2と同様にして、同様にして黒色硬化組成物Fを作製した。
・KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製) 2.5部
・A−TMMT(下記構造、新中村化学工業(株)製) 2.5部
【0384】
【化54】

【0385】
[実施例8]
実施例6の黒色感放射線性組成物Fの調製において、光重合開始剤を下記に示す光重合開始剤に変更した以外は、実施例6と同様にして黒色硬化組成物Gを作製した。
・IRGACURE OXE1(下記構造、BASF社製) 2.5部
【0386】
【化55】

【0387】
実施例5〜8にて調製した各黒色感放射線性組成物について、実施例1と同様にして評価した。結果を下記表3に示す。
【0388】
【表3】

【0389】
表3に示されるように、実施例5〜8の黒色感放射線性組成物についても、いずれも優れた経時安定性を示し、且つ、これを用いた遮光膜の形成においては、現像部(遮光膜の形成領域外)には現像残渣が観察されなかった。
【0390】
また本発明の黒色の感放射線性組成物A、B、C、および実施例5〜8の感放射線性組成物を、MEMSにおける遮光用途に用いたところ、良好なデバイスが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、(B)分散剤、及び(C)有機溶媒を含有し、前記被分散体の90%以上が16nm〜30nmの範囲の粒径を有し、且つ、前記被分散体におけるSi原子とTi原子との含有質量比(Si/Ti比)が0.20〜0.50である固体撮像素子用チタンブラック分散組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のチタンブラック分散組成物、(D)光重合性化合物、及び(E)光重合開始剤を含有する固体撮像素子用黒色感放射線性組成物。
【請求項3】
前記(D)光重合性化合物が、オキシム化合物である請求項2に記載の固体撮像素子用黒色感放射線性組成物。
【請求項4】
更に、フッ素系界面活性剤を含有する請求項2又は請求項3に記載の固体撮像素子用黒色感放射線性組成物
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の黒色感放射線性組成物を硬化して得られた黒色硬化膜。
【請求項6】
請求項5に記載の黒色硬化膜を備えた固体撮像素子。
【請求項7】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の黒色感放射線性組成物をシリコン基板上に塗布して黒色感放射線性組成物層を形成する工程と、前記黒色感放射線性組成物層をパターン状に露光する工程と、露光後の前記黒色感放射線性組成物層を現像してパターンを形成する工程と、を有する黒色硬化膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の固体撮像素子用チタンブラック分散組成物の製造方法であって、酸化チタン、シリカ粒子、及び分散剤を含む混合液を、酸素雰囲気下、750℃〜1100℃の温度で加熱した後、還元処理することにより、チタンブラック及びSi原子を含む被分散体を得る工程と、前記チタンブラック及びSi原子を含む被分散体、分散剤、及び有機溶媒を含む混合液を分散処理する工程と、を有する固体撮像素子用チタンブラック分散組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−149249(P2012−149249A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286689(P2011−286689)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】