説明

遮断棒折損通報システムおよび遮断棒折損通報方法

【課題】遮断棒の折損が発生してから、保安所の係員が遮断棒の折損を認識するまでの時間を短縮することができる遮断棒折損通報システムおよび遮断棒折損通報方法を得る。
【解決手段】遮断機10の遮断棒1が折損したことを、保安所20に通報する遮断棒折損通報システムであって、遮断機10は、遮断棒1の状態を監視し、遮断棒1の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する監視部11と、障害情報信号を、電磁波として保安所に向けて送信する送信部12と、を備え、保安所20は、送信部12から電磁波として送信された障害情報信号を受信する受信部21と、障害情報信号に応じて警報を発する警報部23と、を備え、送信部12と受信部21とは、アドホックネットワーク30を用いた無線通信により障害情報信号を送受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮断機の遮断棒が何らかの事故や災害等により折損した場合に、保安所に遮断棒の折損を通報する遮断棒折損通報システムおよび遮断棒折損通報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、遮断機の遮断棒が折損する事故が発生しており、列車の徐行運転によってダイヤが乱れ、大多数の乗客に影響を及ぼしている。また、列車乗務員が、遮断棒の折損した状態を知らないまま列車を運行すると、人身事故につながる恐れがある。
【0003】
なお、近年では、遮断棒折損の復旧作業は、最寄りの保安所の係員が仮修復キットを用いて遮断棒を修復することにより、従来よりも時間短縮されている。しかしながら、係員が遮断棒の折損を認識するのは、遮断棒の折損に気付いた人が保安所に通報するタイミングとなるので、係員が折損を認識するまでに時間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、上記の問題を解決するために、遮断棒の一方端に設けられて2個の接点搭載片を有するスイッチと、接点搭載片間に挟まれて正常状態を保持する保持部材と、一端および他端がそれぞれ保持部材および遮断棒の他方端に接続され、衝撃により保持部材をスイッチの2個の接点搭載片間から外すように引っ張る線材とを備え、遮断棒が折られたことを管理者(係員)に伝える遮断棒折れ検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−191924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に示された遮断棒折れ検出装置では、遮断棒が折られると、線材が引っ張られ、保持部材が接点搭載片から外れて、接点同士が接触することにより、警報回路に電流が流れて警報が出力される。ところが、特許文献1には、警報回路に電流が流れて警報が出力される具体的な構成が何等開示されていないという問題がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、遮断棒の折損が発生してから、保安所の係員が遮断棒の折損を認識するまでの時間を短縮することができる遮断棒折損通報システムおよび遮断棒折損通報方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る遮断棒折損通報システムは、遮断機の遮断棒が折損したことを、保安所に通報する遮断棒折損通報システムであって、遮断機は、遮断棒の状態を監視し、遮断棒の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する監視部と、障害情報信号を、電磁波として保安所に向けて送信する送信部と、を備え、保安所は、送信部から電磁波として送信された障害情報信号を受信する受信部と、障害情報信号に応じて警報を発する警報部と、を備え、送信部と受信部とは、アドホックネットワークを用いた無線通信により障害情報信号を送受信するものである。
【0009】
また、この発明に係る遮断棒折損通報方法は、遮断機の遮断棒が折損したことを、保安所に通報する遮断棒折損通報方法であって、遮断棒の状態を監視し、遮断棒の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する監視ステップと、障害情報信号を、電磁波として保安所に向けて、アドホックネットワークを用いた無線通信により送信する送信ステップと、送信ステップで電磁波として送信された障害情報信号を、アドホックネットワークを用いた無線通信により受信する受信ステップと、障害情報信号に応じて警報を発する警報ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る遮断棒折損通報システムおよび遮断棒折損通報方法によれば、遮断棒の折損を検出した監視部(ステップ)が出力する障害情報信号を電磁波として送信する送信部(ステップ)と、送信部から電磁波として送信された障害情報信号を受信する受信部(ステップ)とは、アドホックネットワークを用いた無線通信により障害情報信号を送受信している。
そのため、遮断棒の折損が発生してから、保安所の係員が遮断棒の折損を認識するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)、(b)は、この発明の実施の形態1に係る遮断棒折損通報システムを示すブロック構成図である。
【図2】図1に示した監視部を詳細に示す構成図である。
【図3】(a)、(b)は、この発明の実施の形態2に係る遮断棒折損通報システムを示すブロック構成図である。
【図4】図3に示した監視部を詳細に示す構成図である。
【図5】(a)、(b)は、この発明の実施の形態3に係る遮断棒折損通報システムを示すブロック構成図である。
【図6】図5に示した監視部を詳細に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係る遮断棒折損通報システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、この遮断棒折損通報システムは、遮断機の遮断棒が折損したことを、例えば最寄りの保安所に通報するものである。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る遮断棒折損通報システムを示すブロック構成図であり、図1(a)は、遮断棒折損通報システムの遮断機10側(遮断機10およびアドホックネットワーク30)の構成を示し、図1(b)は、遮断棒折損通報システムの保安所20側(保安所20およびアドホックネットワーク30)の構成を示している。
【0014】
図1(a)、(b)において、遮断機10は、監視部11および送信部12を備えている。保安所20は、受信部21、信号変換部22および表示・警報器(警報部)23を備えている。また、アドホックネットワーク30は、第1通信機31、第2通信機32および第n通信機33を備えている。
【0015】
ここで、送信部12と受信部21とは、アドホックネットワーク30を用いた無線通信(バケツリレー方式)により障害情報信号(後述する)を送受信する。また、監視部11と表示・警報器23との間で、正常動作をしているかポーリングを行う。
【0016】
監視部11は、遮断棒1の状態を常時監視し、遮断棒1の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する。以下、図2を参照しながら、監視部11の構成について詳細に説明する。図2において、監視部11は、導体111、導体保護カバー112および電流検知部113を有している。
【0017】
導体111は、遮断棒1と同等以下の硬さを有し、遮断棒1の外周に沿って設けられている。導体保護カバー112は、導体111を覆って取り付けられている。また、電流検知部113は、導体111に電流を流すとともに、その電流を監視し、電流を検知できない場合に遮断棒1の折損を検出する。
【0018】
図1に戻って、送信部12は、監視部11からの障害情報信号を変調し、電磁波としてアドホックネットワーク30内の最寄りの第1通信機31に送信する。第1通信機31は、電磁波として送信された障害情報信号を受信し、バケツリレー方式で、次の第2通信機32に送信する。第2通信機32は、電磁波として送信された障害情報信号を受信し、バケツリレー方式で、次の通信機(図示せず)に送信する。
【0019】
続いて、前の通信機から電磁波として送信された障害情報信号を受信した第n通信機33は、保安所20の受信部21に、障害情報信号を電磁波として送信する。受信部21は、電磁波として送信された障害情報信号を受信して復調し、障害情報信号を信号変換部22に出力する。
【0020】
信号変換部22は、受信部21からの障害情報信号を表示・警報器23インタフェース用の信号に変換し、表示・警報器23に出力する。表示・警報器23は、信号変換部22からの障害情報信号に応じて、障害表示および鳴動音を発し、保安所20の係員に遮断棒1の折損を通報する。
【0021】
これにより、遮断棒1が折損した場合であっても、それに気付いた人が通報する必要がなく、迅速に遮断棒1の折損を検出して最寄りの保安所20の係員に知らせることができる。また、それに伴って、列車の遅延時間を短縮することができる。
また、この遮断棒折損通報システム内の無線区間は、アドホックネットワークを利用しているので、大きな設備投資をすることなく、少ない電力で運用が可能である。
【0022】
以上のように、実施の形態1によれば、遮断棒の折損を検出した監視部が出力する障害情報信号を電磁波として送信する送信部と、送信部から電磁波として送信された障害情報信号を受信する受信部とは、アドホックネットワークを用いた無線通信により障害情報信号を送受信している。
そのため、遮断棒の折損が発生してから、保安所の係員が遮断棒の折損を認識するまでの時間を短縮することができる。
【0023】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係る遮断棒折損通報システムを示すブロック構成図であり、図3(a)は、遮断棒折損通報システムの遮断機10A側の構成を示し、図3(b)は、遮断棒折損通報システムの保安所20側の構成を示している。
【0024】
図3において、遮断機10Aは、図1に示した監視部11に代えて、監視部11Aを備えている。監視部11Aは、遮断棒1の状態を常時監視し、遮断棒1の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する。以下、図4を参照しながら、監視部11Aの構成について詳細に説明する。図4において、監視部11Aは、管114、管保護カバー115および圧力検知部116を有している。
【0025】
管114は、遮断棒1と同等以下の硬さを有し、遮断棒1の外周に沿って設けられている。管保護カバー115は、管114を覆って取り付けられている。また、圧力検知部116は、管114に圧力をかけるとともに、その圧力を監視し、圧力を検知できない場合に遮断棒1の折損を検出する。なお、その他の構成は、上述した実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0026】
以上のように、実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0027】
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3に係る遮断棒折損通報システムを示すブロック構成図であり、図5(a)は、遮断棒折損通報システムの遮断機10B側の構成を示し、図5(b)は、遮断棒折損通報システムの保安所20側の構成を示している。
【0028】
図5において、遮断機10Bは、図1に示した監視部11に代えて、監視部11Bを備えている。監視部11Bは、遮断棒1の状態を常時監視し、遮断棒1の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する。以下、図6を参照しながら、監視部11Bの構成について詳細に説明する。図6において、監視部11Bは、管114、管保護カバー115および音検知部117を有している。
【0029】
管114は、遮断棒1と同等以下の硬さを有し、遮断棒1の外周に沿って設けられている。管保護カバー115は、管114を覆って取り付けられている。また、音検知部117は、管114に音を出力するとともに、その音を監視し、音を検知できない場合に遮断棒1の折損を検出する。なお、その他の構成は、上述した実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0030】
以上のように、実施の形態3によれば、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 遮断棒、10、10A、10B 遮断機、11、11A、11B 監視部、12 送信部、20 保安所、21 受信部、22 信号変換部、23 表示・警報器(警報部)、30 アドホックネットワーク、31 第1通信機、32 第2通信機、33 第n通信機、111 導体、112 導体保護カバー、113 電流検知部、114 管、115 管保護カバー、116 圧力検知部、117 音検知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断機の遮断棒が折損したことを、保安所に通報する遮断棒折損通報システムであって、
前記遮断機は、
前記遮断棒の状態を監視し、前記遮断棒の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する監視部と、
前記障害情報信号を、電磁波として前記保安所に向けて送信する送信部と、を備え、
前記保安所は、
前記送信部から電磁波として送信された前記障害情報信号を受信する受信部と、
前記障害情報信号に応じて警報を発する警報部と、を備え、
前記送信部と前記受信部とは、アドホックネットワークを用いた無線通信により前記障害情報信号を送受信する
ことを特徴とする遮断棒折損通報システム。
【請求項2】
前記監視部は、
前記遮断棒と同等以下の硬さを有し、前記遮断棒の外周に沿って設けられた導体と、
前記導体を覆って取り付けられた導体保護カバーと、
前記導体に電流を流すとともに、その電流を監視し、電流を検知できない場合に前記遮断棒の折損を検出する電流検知部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の遮断棒折損通報システム。
【請求項3】
前記監視部は、
前記遮断棒と同等以下の硬さを有し、前記遮断棒の外周に沿って設けられた管と、
前記管を覆って取り付けられた管保護カバーと、
前記管に圧力をかけるとともに、その圧力を監視し、圧力を検知できない場合に前記遮断棒の折損を検出する圧力検知部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の遮断棒折損通報システム。
【請求項4】
前記監視部は、
前記遮断棒と同等以下の硬さを有し、前記遮断棒の外周に沿って設けられた管と、
前記管を覆って取り付けられた管保護カバーと、
前記管に音を出力するとともに、その音を監視し、音を検知できない場合に前記遮断棒の折損を検出する音検知部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の遮断棒折損通報システム。
【請求項5】
遮断機の遮断棒が折損したことを、保安所に通報する遮断棒折損通報方法であって、
前記遮断棒の状態を監視し、前記遮断棒の折損を検出した場合に、障害情報信号を出力する監視ステップと、
前記障害情報信号を、電磁波として前記保安所に向けて、アドホックネットワークを用いた無線通信により送信する送信ステップと、
前記送信ステップで電磁波として送信された前記障害情報信号を、アドホックネットワークを用いた無線通信により受信する受信ステップと、
前記障害情報信号に応じて警報を発する警報ステップと、
を備えたことを特徴とする遮断棒折損通報方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−6467(P2013−6467A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139284(P2011−139284)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】