説明

遮蔽ケーブル用のケーブルグランド

遮蔽ケーブル(2)用のケーブルグランド(1)は、通常、ねじ込みスリーブ(9)と、ねじ込みスリーブ(9)の内側に係合するクランプインサート(4)と、クランプインサート(4)の、ねじ込みスリーブ(9)から突出する部分にわたって軸方向および半径方向に荷重を掛けて、クランプインサート(4)のクランプ部分またはクランプフィンガ(6)を半径方向に変形するためのキャップナット(7)または押圧ねじとを備えている。前記ねじ込みスリーブ(9)は、使用位置でケーブル(2)の遮蔽部に接触する接触フィンガ(11)を有する接触装置(10)を備えている。接触装置(10)は、1つまたは複数の弾性的な接触フィンガ(11)を有する、使用位置でねじ込みスリーブ(9)内に配置された支持体またはリング(13)を備えており、接触フィンガ(11)は、軸方向に支持体またはリング(13)に隣接して、出発位置で長手方向断面でみて凸状の湾曲または角張った形状を有する変形可能な段部(14)を備えていて、かつ段部(14)に続いて、相応にカーブしたあとで、大体において前記ケーブル(2)の設置方向、つまり相対的な差込方向に延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽ケーブル用のケーブルグランドであって、ねじ込みスリーブを備え、ねじ込みスリーブの内側に係合するクランプインサートを備え、クランプインサートに軸方向および半径方向に荷重を掛けて、クランプインサートのクランプ部分またはクランプフィンガを半径方向に変形するためのキャップナットまたは押圧ねじを備え、ねじ込みスリーブ内に、周に沿って分配された少なくとも1つまたは複数の接触フィンガを有する接触装置が設けられており、接触フィンガは、使用位置で、接触フィンガの長手方向延伸部分の少なくとも一部で、ケーブルの遮蔽部に接触するものに関する。
【0002】
このようなケーブルグランドは、欧州特許出願公開第1783876号明細書において公知である。そこに設けられた接触フィンガの、出発位置における形状付与および配置構造により、接触フィンガは、弛緩状態で、ケーブルを導入するまえにケーブルの一部に突入するので、接触フィンガは、ケーブルの差込により、戻し力に抗して半径方向外向きに旋回されて、曲げられる。この戻し力により、接触フィンガは、ケーブルの外側に、ひいてはそこに存在する金属製の遮蔽部に接触して、コンタクトを形成する。この接触力は、ケーブルの直径に依存しており、つまり、比較的細いケーブルは、比較的太いケーブルよりも弱い力で接触する。さらに必然的にケーブルが接触フィンガの一部を擦過しながら貫通するかまたはその逆に、接触フィンガがケーブルに沿って摺動するので、組立が困難であり、破損が生じることがある。さらに接触フィンガが場合によっては逆鉤状にケーブル表面およびそこに存在する多くの場合編組状の遮蔽部に作用するので、組立は困難であり、しかもケーブルを引き抜く際に破損する恐れがある。
【0003】
別のケーブルグランドは、欧州特許出願公開第1526620号明細書において開示されている。この特許文献において提供された構成では、接触フィンガが、キャップナットを締め付ける際に、クランプインサートの軸方向の変位により変形され、ケーブルの外面に押し付けられる。このためにねじ込みスリーブの内側に、支持要素としての追加的な構成要素が要求され、追加的な構成要素は、接触フィンガのための受け部として用いられ、接触フィンガは、ホルダと共に、支持要素に対して相対的に移動させる必要があり、これによりとりわけ細いケーブルでは、クランプインサートのための比較的大きな移動距離が要求される。
【0004】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたようなケーブルグランドを改良して、ケーブルの締め付けに際して、1つまたは複数の接触フィンガの十分な程度に大きい変形および押圧力を形成するのにクランプインサートを通常のように軸方向に移動させるだけで十分であるものを提供することであり、接触フィンガは、クランプインサートが弛緩した状態では、戻し力に基づいてケーブルに対して間隔を有するか、再び間隔が得られる。
【0005】
この課題を解決するために、本発明によるケーブルグランドでは、接触装置は、ねじ込みスリーブ内に配置される少なくとも1つの支持体またはリングと、支持体またはリングから延びる少なくとも1つまたは複数の弾性的な接触フィンガとを備えており、接触フィンガは、軸方向に支持体またはリングに隣接して、出発位置で長手方向断面でみて凸状の湾曲または角張った形状を有する変形可能な段部を備えていて、かつ段部に続いて大体においてケーブルの差込方向に延在しており、段部の付近に、1つまたは複数の接触フィンガの段部のための、半径方向内向きで、ケーブルの相対的な差込方向に対して角度を成すかまたは斜めに延在するストッパ面が設けられており、ストッパ面は、キャップナットまたは押圧ねじの作用方向とは逆向きに段部に下側から係合するかまたは後側から係合し、クランプインサートまたは、クランプインサートにより荷重を掛けられる押圧リングは、接触フィンガの段部寄りの端面に、ケーブルグランドの長手方向中心軸線に対して斜めに配置された押圧面を備えており、押圧面により、クランプインサートに軸方向に荷重を掛けてクランプインサートを押し込む際に、接触フィンガの、湾曲しているかまたは角張って成形された段部に、ストッパ面とは反対側で荷重を掛けて、段部を変形することができ、それも、段部が斜めのストッパ面または押圧面に接近可能であるかまたは押圧可能であるように変形することができ、これにより接触フィンガの、段部に続く自由な部分は、半径方向内向きに、ケーブルグランドの長手方向中心軸線に向かって旋回可能であり、かつ導入されたケーブルもしくはケーブルの遮蔽部に押圧可能である。
【0006】
両方の傾斜面、つまり一方ではねじ込みスリーブの内側に設けられたストッパ面と、他方ではクランプインサートと協働するかまたはクランプインサートに設けられた傾斜面とは、出発位置で、キャップナットまたはねじ込みスリーブを締め付ける際に縮小する相互間隔を有している。キャップナットまたはねじ込みスリーブの締め付けは、次のように利用され、つまり、両方の傾斜面の間に位置する、接触装置の変形可能な段部を変形し、この段部から延びる接触フィンガがケーブルに当接され、ケーブルに押し付けられるようにするために、利用される。この運動は、段部が、ねじ込みスリーブに付属のストッパ面に対して湾曲していることにより行われ、その際、間隔は、大体において斜めのストッパ面の中央で、段部の湾曲または角張った形状付与により最大であるので、クランプインサートによる押圧により、斜めのストッパ面の端部に載設している接触フィンガは強制的に半径方向内向きに旋回される。
【0007】
ケーブルに向かう1つまたは複数の接触フィンガの所望の旋回を実現するためには、クランプインサートとストッパ面との間の変位距離が比較的短くて十分であり、接触フィンガを備えた接触装置自体を軸方向に変位させる必要はない。所望の変位のために、変形可能な段部が相応に形状付与されていると、既に1ミリメートルだけまたは数ミリメートルである変形部分の僅かな寸法によるクランプインサートの軸方向変位で十分である。
【0008】
斜めのストッパ面は、ねじ込みスリーブの内側のリングおよび/または突起またはカラーに設けてよく、リングおよび/または突起またはカラーは、ケーブルの少なくとも軸方向の差込方向にねじ込みスリーブと固定されているか、または一体的に結合されている。したがって斜めのストッパ面のたわみまたは軸方向変位が回避される。ねじ込みスリーブの内側面における一体的な構成では、追加的に、場合によっては紛失し得る追加的な構成要素をケーブルグランドに配置する必要性が回避される。
【0009】
湾曲しているかまたは角張って成形された段部に荷重を掛けるための斜めの押圧面は、クランプインサートの端面に直接に成形することができる。上述のように、押圧リングをクランプインサートと段部との間に挿入してもよいが、クランプインサートの端面に対する斜めの押圧面の直接の取り付けにより、追加的な構成要素が回避される。
【0010】
斜めのストッパ面および/または斜めの押圧面は、長手方向断面でみて真っ直ぐであるかまたは湾曲していてよい。その際、直線的な構成は最も簡単に製作可能であるが、凸状または凹状の湾曲は、両方の傾斜面のどれに丸みまたは凹みを設けるかに関する選択に応じて、段部を変形する効率を高めることができ、その際、長手方向断面でみた斜めの面の湾曲している部分は、多角形状に形成してもよい。
【0011】
好適な態様によれば、斜めのストッパ面および斜めの押圧面は、周方向にリング状に延びていて、相互に平行に配置されていてよい。これにより斜めの面の間に周に沿って一定の間隔(この間隔はキャップナットの締め付けにより減少され1つまたは複数の接触フィンガをケーブルに向かって旋回させる)が形成される。その際、両方の傾斜面の接近の程度により、旋回距離の大きさが変化するので、簡単に、異なる太さのケーブルに対する適合が実現される。ケーブルが細いほど、両方の傾斜面がより相互に接近し、このことは、所望のクランプ作用を得るために、より細いケーブルではキャップナットがより大きな軸方向の延伸部分に沿って締め付けられるという事実に適合する。ケーブルの太さに応じて、1つまたは複数の接触フィンガの旋回が自動的に適合される。その際、場合によってはねじ込みスリーブに係合するクランプインサートの段部と、ねじ込みスリーブの、キャップナットの側に位置する端面との間に、出発位置で存在する間隔が場合によっては減少され、その際、クランプインサートとねじ込みスリーブとは、クランプ装置の段部の変形を制限しようとする場合には、キャップナットを強く締め付けると相互に接触するようになっている。好適には、ねじ込みスリーブの端面とクランプインサートの段部との間の間隔は、段部の最大の変形が実現可能なまま維持されるような大きさである。
【0012】
好適には、接触フィンガは、出発位置で、湾曲しているかまたは角張って成形された段部に続いて真っ直ぐに、特にケーブルグランドの長手中心軸線に対して平行に延在している。接触フィンガは、好適な態様では、出発位置で、大体において仮想の円筒上に、しかも相互に平行に配置することができ、その際、仮想の円筒の内寸は、ケーブルの外寸と同じまたは好適にはこれより大きいので、接触フィンガは、先ず問題なく導入することができ、もしくはケーブルグランドは、このケーブルに被せ嵌めることができ、その際、ケーブル外側と接触フィンガとの間に摩擦または比較的大きな摩擦が生じることはない。
【0013】
接触フィンガの自由端部は、ケーブルグランドの長手方向中心から離れる方向に変形されるか、折り曲げられるかまたは湾曲されていてよい。したがって1つまたは複数の接触フィンガがケーブルの表面に向かって旋回する際にも、1つまたは複数の接触フィンガの良好な接触が得られ、その際、接触フィンガの端部の自由な端面は、ケーブル表面に押し付けられることはない。
【0014】
接触フィンガを備えた支持体またはリングは、ストラップまたは接触フィンガを相互に結合するスリーブとして構成されており、ストラップまたはスリーブは、クランプインサートの、ストラップまたはスリーブ寄りの部分に、ケーブルの差込方向にみて斜めのストッパ面および斜めの押圧面の前方に取り付けられているかまたは支承されている。また、接触フィンガを備えるリングまたはスリーブは、たとえばクランプインサートの、斜めの押圧面を備える端面に隣接する端部部分に被せ嵌めてもよい。これにより、クランプインサートは接触フィンガの支持体またはリングと共にねじ込みスリーブに挿入することができるので、組立が簡単になる。
【0015】
接触フィンガを備えたリングまたは支持体は、クランプ結合および/または係止結合および/またはスナップ結合または接着によりクランプインサートと結合することができる。したがってクランプインサートは、クランプインサートをねじ込みスリーブに導入する際に、クランプインサートの差込動作により自動的に使用位置に到達するために十分に固く保持される。
【0016】
変化態様によれば、クランプインサートは、接触フィンガの支持体またはリング寄りの端部部分で、同軸的または同心的な溝を備えてよく、溝は、接触フィンガを備えた支持体またはリングを、特にクランプしながら、または係止しながら、またはスナップ結合により収容する。これにより接触装置のさらに良好な前付けが得られる。
【0017】
接触フィンガを備えた支持体またはリングは、組立前に、平らに形成されていて、組立時に、リング状にしてケーブルグランドに使用することができる。したがって、支持体またはリングは、平らな展開部分を成し、組立によりリング形状となる打ち抜き部分である。
【0018】
とりわけ記載の個々のまたは複数の特徴の組み合わせにより、好適には非導電性の材料から成るクランプインサートならびに導電性の材料から成る接触フィンガを備えたケーブルグランドが得られ、接触フィンガは、ケーブルグランドのキャップナットまたは押圧ねじの締め付けにより前もって導入されるケーブルおよびケーブルの遮蔽部に押し付けられ、その際、追加的にケーブルグランドの内側で運動可能なリング要素または支持要素が必要とされない。
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ケーブルが挿入された状態で、本発明によるケーブルグランドを、一部で長手方向断面図で示し、一部で側面図で示す図であり、キャップナットを締め付けてクランプインサートのクランプ部分を押し込んで、遮蔽部に接触フィンガを押し付けるまえに、遮蔽部が露出するように、ケーブルの一部において絶縁体が剥ぎ取られている。
【図2】ケーブルグランドのねじ込みスリーブの、図1において一点鎖線で囲んだ円Kで表す部分の拡大図であり、ケーブルグランドは、ねじ込みスリーブに配置された斜めのストッパ面と、クランプ部分の、同様に角度付けされた端面と、ストッパ面と端面との間に位置する、接触装置に付属の変形可能な段部とを備えており、段部は、出発位置で、長手方向断面でみて凸状の湾曲形状を有していて、出発位置で、湾曲形状により斜めのストッパ面から間隔を有している。
【図3】図1に対応する、本発明によるケーブルグランドの変化態様を示す図である。
【図4】図2に対応する、変化態様の拡大図であり、変形可能な段部は、長手方向断面でみて角張った形状を有していて、この変化態様においても同様に当初は斜めのストッパ面から間隔を有している。
【図5】キャップナットを締め付けて、締め付けによりもたらされるクランプインサートとねじ込みスリーブとの間の軸方向の相対的な変位が行われたあとの状態で、図1および図3に対応する、本発明によるケーブルグランドを示す図であり、クランプインサートとねじ込みスリーブとの間の相対的な変位により、接触装置の変形可能な段部の凸状の湾曲または角張った形状が真っ直ぐになり、斜めのストッパ面に当接するか、もしくはストッパ面に押し付けられて、ケーブルがクランプされる。
【図6】図2および図4に対応する、変形可能な段部の変形および曲げならびにこれに伴う接触フィンガの半径方向内向きのケーブルの遮蔽部分への曲げ旋回をクランプされた位置で示す図である。
【図7】組み合わせて接合するまえの状態で本発明によるケーブルグランドの個々の構成要素を示す図であり、接触フィンガを備えた導電性の接触装置は、非導電性のクランプインサートに装着され、結合されている。
【図8】図7に対応する図であり、接触フィンガを備えた接触装置は、ケーブルグランドを組み立てる際に装着可能な個別の構成要素である。
【0021】
以下の、種々の態様の説明において、機能に関して一致する構成要素には、その形状が異なる場合でも、同一の符号を付している。
【0022】
全体に符号1を設けたケーブルグランドは、遮蔽ケーブル2をクランプして固定するために用いられ、図1では、遮蔽部(遮蔽編組)を有する部分3が露出しており、この部分3は、クランプ部分およびクランプインサート4ならびにクランプインサート4と協働するシール5の軸方向の延長部分に配置されている。
【0023】
クランプインサート4に軸方向および半径方向に荷重を掛けるため、かつ、クランプインサート4の、遮蔽部を有する部分3とは反対側のクランプ部分またはクランプフィンガ6を半径方向に変形するために、キャップナット7が設けられており、キャップナット7は、ケーブル2の貫通部分に配置された内側円錐形の面8でもって、軸方向に変位する際に、クランプ部分またはクランプフィンガ6およびシール5を、半径方向にケーブル2に押圧して、ケーブル2をクランプする。その際、キャップナット7は、公知のように、雌ねじ山でもって、ねじ込みスリーブ9の雄ねじ山に対して回動可能であり、これにより、同時に要求される相対的な軸方向の移動が行われる。
【0024】
ねじ込みスリーブ9内に、図7および図8において個別に示す、全体に符号10を設けた接触装置が設けられており、接触装置10は、その周に沿って、使用位置でケーブル2もしくはケーブル2の遮蔽部を有する部分3の周に沿って分配された複数の接触フィンガ11を備えており、接触フィンガ11は、図5および図6に示すように、使用位置では、長手方向延伸部分の一部、つまり折り曲げられたもしくは屈曲された接触端部12でもって、ケーブル2の遮蔽部を有する部分3に接触する。
【0025】
特に図7および図8、また図2および図4から看取されるように、接触装置10は、ねじ込みスリーブ9内に配置された支持体またはリング13と、支持体またはリング13から延びる弾性的な接触フィンガ11とを備えており、接触フィンガ11は、軸方向に支持体またはリング13に隣接する変形可能な段部14を備えており、接触フィンガ11の各段部14は、出発位置で、図2の長手方向断面図に示すように凸状の膨らみを有しているまたは図4に示すように角張った形状を有している。それに続いて、大体においてケーブル2の差込方向に、接触フィンガ11は、大体において真っ直ぐに、先ずケーブル2および遮蔽部を有する部分3に対して略平行に延びている。
【0026】
変形可能な段部14が使用位置でねじ込みスリーブ9の内側に位置する範囲または箇所で、ねじ込みスリーブ9に、半径方向内向きに延び、ケーブルの差込方向にケーブルに対して角度を成してまたは傾斜して延びる、接触フィンガ11の段部14のためのストッパ面15が配置されており、ストッパ面15は、図1〜図6において全般的に明確に看取される。さらに看取されるように、ストッパ面15は、キャップナット7の作用方向とは逆向きに、キャップナット7とは反対側で、段部14に下側または後側から係合する。
【0027】
さらに図1〜図6から、特に図2、図4、図6から良好に看取されるように、クランプインサート4は、段部14寄りの側で段部14に荷重を掛ける端面でもって、ケーブルグランド1全体の長手方向中心軸線に対して斜めに配置された押圧面16を備えており、その際、出発位置で、ケーブル2をクランプするまえに、押圧面16とストッパ面15との間に変形可能な段部14が位置する間隔が形成される。
【0028】
キャップナット7を用いて軸方向にクランプインサート4に荷重を掛けるまたはクランプインサート4を押し込む際に、クランプフィンガ11の、湾曲しているまたは角張った段部14は、ストッパ面15とは反対側で荷重が掛けられ、ストッパ面15と押圧面16との間で変形され、それも、段部14が斜めのストッパ面15に接近するかまたは押し付けられるように変形され、これにより接触フィンガ11の、段部14に続く自由な部分が、半径方向内向きに、ケーブルグランド1の長手方向中心軸線に向かって旋回され、挿入されたケーブル2もしくはその遮蔽部3に押圧されるようになる(図5および図6)。
【0029】
その際、図2および図4に示す態様において湾曲しているまたは角張った部分14は、大体において中央部分で押圧面16に接触するかまたは押圧面16の傍に配置され、ストッパ面15に対して中間室または間隔17を有している。また逆の湾曲および形状付与も実現可能であり、その際、接触フィンガ11は、段部14に対して追加的に自由端部12に向かう曲げ戻し部分を必要とする。
【0030】
キャップナット7は、ねじ込みスリーブ9に対して締め付けられ、つまり軸方向にも変位され、その際、クランプインサート4も軸方向に変位される。これによりストッパ面15と押圧面16とは相互に接近し、したがって変形可能な部分14は、漸次間隔17を縮小するように、真っ直ぐに伸ばされる。これにより強制的に接触フィンガ11およびその端部12は半径方向に、ケーブル2の、遮蔽部を有する部分3に向かって旋回される。
【0031】
図示の態様では、接触フィンガ11の変形可能な部分14は、出発位置で、ストッパ面15から間隔17を有していて、ストッパ面15の縁部に接触し、変形可能な部分14は、キャップナット7または押圧ねじを締め付ける際に、先ず押圧面16が当接するかまたは荷重を掛けることができる。上述のように、変形可能な部分14は、逆向きに湾曲しているまたは角張って成形してもよく、変形可能な部分14は、出発位置で、押圧面16から間隔17を有し、キャップナット7または押圧ねじを締め付ける際に、先ずストッパ面15が当接するかまたは荷重を掛けることになる。
【0032】
斜めのストッパ面15は、図示の態様では、ねじ込みスリーブ9の内側の段部18またはリングまたは突起またはカラーに配置されており、内側の端部18またはリングまたは突起またはカラーは、本態様では、ねじ込みスリーブ9と一体的に結合されていて、半径方向内向きに突出している。したがって接触フィンガ11の段部14を変形するための良好な受け(支承部)が形成される。斜めの押圧面16は、本態様では、直接、クランプインサート4の、クランプインサート4のクランプフィンガ6とは反対側の端面に成形されている。したがって簡単な構成が得られ、そこでは、キャップナット7を締め付ける際に必然的に得られるクランプインサート4の軸方向の荷重が利用され、クランプインサート4が僅かに軸方向に変位される。これにより変形可能な段部14が真っ直ぐにされ、接触フィンガ11が半径方向内向きに旋回される。
【0033】
本態様では、斜めのストッパ面15および斜めの押圧面16は、長手方向断面でみて真っ直ぐに延びるように形成されているが、直線とは異なる長手方向断面または経過を有してもよい。両方の傾斜面の、たとえば先ず変形可能な段部14に接触する方は、より効果的な変形を及ぼすために幾分か湾曲していてもよい。第2の傾斜面は、接触フィンガ11の比較的大きな旋回距離を得るために、場合によっては凹状に形成してもよい。本態様における真っ直ぐな構成は、効率と比較的簡単な製造との間の良好な歩み寄りであり、その際、斜めのストッパ面15および斜めの押圧面16は、周方向にリング状に延在して、相互に平行に配置されている。
【0034】
図1、図3、図7および図8から看取されるように、接触フィンガ11は、出発位置で、湾曲しているまたは角張った段部14に続いて真っ直ぐにかつケーブルグランドの長手方向中心軸線に対して平行に延在している。また接触フィンガ11は、既に僅かに斜めの、ケーブルの延伸に一致する出発位置を有することも考えられる。
【0035】
接触フィンガ11の自由端部12は、図6に示すように、遮蔽部を有する部分3の遮蔽部(遮蔽編組)と良好に接触するために、ケーブルグランド1の長手方向中心から離れる方向に成形されるか、折り曲げられるまたは湾曲されている。
【0036】
支持体またはリング13は、接触フィンガ11を相互に結合するスリーブとして形成されており、スリーブは、クランプインサート4の、スリーブ寄りの部分に、ケーブル2の相対的な差込方向にみて、斜めのストッパ面15および斜めの押圧面16の前方に取り付けられているまたは支承されている。その際、このリングまたは支持体13は、図7に示すように、クランプ結合および/または係止結合および/またはスナップ結合により、もしくは接着または別の適切な手段により、定位置に固く結合してよいが、リングまたは支持体13は、図8に示すように、ルーズな差込要素として形成してもよく、差込要素は組立に際して、図8から看取される順序で、ねじ込みスリーブ9の段部18とクランプインサート4との間でねじ込みスリーブ9に挿入可能である。図7または図8に示すこのような構成により、非導電性材料から成るクランプインサート4は、導電性材料から成る接触フィンガ11およびその支持体13と組み合わせることができるので、使用位置において所望の接触が行われる。
【0037】
図1および図3において、ねじ込みスリーブ9の、キャップナット7寄りの端面と、クランプインサート4の、内側に位置する段部19との間に、間隔20が看取される。間隔20は、クランプインサート4とねじ込みスリーブ9との間の所望の相対運動を実現し、図5に示すように、キャップナット7を締め付けたあとでゼロになる。この箇所は、軸方向のストッパとしても機能する。その際、間隔20は、軸方向に、傾斜面15,16の要求される接近が満足できる程度に行われる、またはこれらの面の間に真っ直ぐに変形可能な段部14しか存在せず、そこに元来存在する間隔17がゼロになるように行われるような大きさの寸法を有している。
【0038】
遮蔽ケーブル2用のケーブルグランド1は、一般的に、ねじ込みスリーブ9、ねじ込みスリーブ9の内側に係合するクランプインサート4ならびにキャップナット7または押圧ねじを備えており、キャップナット7または押圧ねじは、クランプインサート4の、ねじ込みスリーブ9から突出する部分に、軸方向および半径方向に荷重を掛け、クランプ部分またはクランプフィンガ6を半径方向に変形する。その際、ねじ込みスリーブ9は、1つまたは複数の接触フィンガ11を有する接触装置10を収容し、接触フィンガ11は、使用位置で、ケーブルの遮蔽部に接触する。接触装置10は、使用位置で、ねじ込みスリーブ9内に配置される、弾性的な1つまたは複数の接触フィンガ11を有する支持体またはリング13を備えており、接触フィンガ11は、軸方向に支持体またはリング13に隣接して、それぞれ出発位置で長手方向断面でみて凸状の湾曲または角張った形状を有する変形可能な段部14を備えていて、段部14に続いて、相応に湾曲したあとで、大体においてケーブル2の設置方向、つまりその差込方向に延在している。段部14の付近には、段部14に下側から係合するための、角度を成してまたは斜めに延びるストッパ面15が設けられており、直接または非直接にクランプインサート4に、使用位置で段部14寄りの側に位置し、段部14に荷重を掛ける押圧面16が設けられており、その際、ストッパ面15および押圧面16からの間隔の減少により、湾曲しているまたは角張って成形された段部14は、真っ直ぐに変形可能であり、これにより接触フィンガ11は、段部18の縁に支持されることに起因して、半径方向にケーブル2に向かって旋回される。
【図1−2】

【図3−4】

【図5−6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽ケーブル(2)用のケーブルグランド(1)であって、
ねじ込みスリーブ(9)を備え、該ねじ込みスリーブ(9)の内側に係合するクランプインサート(4)を備え、該クランプインサート(4)に軸方向および半径方向に荷重を掛けて、該クランプインサート(4)のクランプ部分またはクランプフィンガ(6)を半径方向に変形するためのキャップナット(7)または押圧ねじを備え、前記ねじ込みスリーブ(9)内に、周に沿って分配された少なくとも1つまたは複数の接触フィンガ(11)を有する接触装置(10)が設けられており、該接触フィンガ(11)は、使用位置で、該接触フィンガ(11)の長手方向延伸部分の少なくとも一部で、前記ケーブル(2)の遮蔽部に接触するものにおいて、
前記接触装置(10)は、前記ねじ込みスリーブ(9)内に配置される少なくとも1つの支持体またはリング(13)と、該支持体またはリング(13)から延びる少なくとも1つまたは複数の弾性的な接触フィンガ(11)とを備えており、該接触フィンガ(11)は、軸方向に前記支持体またはリング(13)に隣接して、出発位置で長手方向断面でみて凸状の湾曲または角張った形状を有する変形可能な段部(14)を備えていて、かつ該段部(14)に続いて大体において前記ケーブル(2)の差込方向に延在しており、該段部(14)の付近に、1つまたは複数の前記接触フィンガ(11)の該段部(14)のための、半径方向内向きで、前記ケーブル(2)の相対的な差込方向に対して角度を成すかまたは斜めに延在するストッパ面(15)が設けられており、該ストッパ面(15)は、前記キャップナット(7)または押圧ねじの作用方向とは逆向きに前記段部(14)に下側から係合するかまたは後側から係合し、前記クランプインサート(4)または、該クランプインサート(4)により荷重を掛けられる押圧リングは、前記接触フィンガ(11)の前記段部(14)寄りの端面に、当該ケーブルグランド(1)の長手方向中心軸線に対して斜めに配置された押圧面(16)を備えており、該押圧面(16)により、前記クランプインサート(4)に軸方向に荷重を掛けて該クランプインサート(4)を押し込む際に、前記接触フィンガ(11)の、湾曲しているかまたは角張って成形された前記段部(14)に、前記ストッパ面(15)とは反対側で荷重を掛けて、該段部(14)を変形することができ、それも、該段部(14)が斜めの前記ストッパ面(15)または前記押圧面(16)に接近可能であるかまたは押圧可能であるように変形することができ、これにより前記接触フィンガ(11)の、前記段部(14)に続く自由な部分は、半径方向内向きに、当該ケーブルグランド(1)の長手方向中心軸線に向かって旋回可能であり、かつ導入された前記ケーブル(2)もしくは該ケーブル(2)の遮蔽部(3)に押圧可能であることを特徴とする、遮蔽ケーブル用のケーブルグランド。
【請求項2】
前記接触フィンガ(11)の変形可能な部分(14)は、出発位置で、前記ストッパ面(15)または前記押圧面(16)から間隔(17)を有しており、前記キャップナット(7)または押圧ねじを締め付ける際に、先ず前記押圧面(16)または前記ストッパ面(15)により接触するかまたは荷重を掛けることができる、請求項1記載のケーブルグランド。
【請求項3】
斜めの前記ストッパ面(15)は、前記ねじ込みスリーブ(9)の内側の段部(18)、リングおよび/または突起またはカラーに設けられており、該段部(18)、リングおよび/または突起またはカラーは、前記ケーブル(2)の少なくとも相対的な軸方向の差込方向に前記ねじ込みスリーブ(9)と固定されているか、または一体的に結合されている、請求項1または2記載のケーブルグランド。
【請求項4】
斜めの前記押圧面(16)は、前記クランプインサート(4)の端面に直接に成形されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項5】
斜めの前記ストッパ面(15)および/または斜めの前記押圧面(16)は、長手方向断面でみて真っ直ぐであるかまたは湾曲している、請求項1から4までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項6】
斜めの前記ストッパ面(15)および斜めの前記押圧面(16)は、周方向にリング状に延びていて、相互に平行に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項7】
前記接触フィンガ(11)は、出発位置で、湾曲しているかまたは角張って成形された段部(14)に続いて真っ直ぐに、特に当該ケーブルグランド(1)の長手方向中心軸線に対して平行に延在している、請求項1から6までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項8】
前記接触フィンガ(11)の自由端部(12)は、当該ケーブルグランド(1)の長手方向中心から離れる方向に変形されるか、折り曲げられるかまたは湾曲されるようになっている、請求項1から7までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項9】
前記接触フィンガ(11)を備えた前記支持体またはリング(13)は、ストラップまたは前記接触フィンガ(11)を相互に結合するスリーブとして構成されており、該ストラップまたはスリーブは、前記クランプインサート(4)の、該ストラップまたはスリーブ寄りの部分に、前記ケーブル(2)の差込方向にみて斜めの前記ストッパ面(15)および斜めの前記押圧面(16)の前方に取り付けられているかまたは支承されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項10】
前記接触フィンガ(11)を備えたリングまたは支持体(13)は、クランプ結合および/または係止結合および/またはスナップ結合または接着により前記クランプインサート(4)と結合されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項11】
前記クランプインサート(4)は、前記接触フィンガ(11)の前記支持体またはリング(13)寄りの端部部分で、同軸的または同心的な溝を備えており、該溝は、前記接触フィンガ(11)を備えた前記支持体またはリング(13)を、特にクランプしながら、または係止しながら、またはスナップ結合により収容する、請求項1から10までのいずれか1項記載のケーブルグランド。
【請求項12】
前記接触フィンガ(11)を備えた前記支持体またはリング(13)は、組立前に、平らに形成されていて、組立時に、リング状にして当該ケーブルグランド(1)に使用されるようになっている、請求項1から11までのいずれか1項記載のケーブルグランド。

【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−507892(P2013−507892A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532470(P2012−532470)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004525
【国際公開番号】WO2011/042078
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512092634)フンメル アクチエンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】HUMMEL AG
【住所又は居所原語表記】Lise−Meitner−Str. 2, D−79211 Denzlingen, Germany
【Fターム(参考)】