説明

遮蔽体開閉装置

【課題】 光を遮る遮蔽体の開閉動作状態を適切に設定して、光をそのまま通す最大開放状態における開口率を大きくしつつ、光を一部通す部分的開放状態を遮蔽体の傾動で細かく制御でき、採光に係る調整性能を高めた遮蔽体開閉装置を提供する。
【解決手段】 光を遮る遮蔽体30を、上フレーム10に対し横方向へ移動可能として複数配設し、移動用軸41の螺旋状の溝を遮蔽体30の上端部分と係合させ、移動用軸41の回動に伴う溝の案内で、遮蔽体30を横方向へ移動させられることから、移動用軸41の回動のみで、上フレーム10下側の領域60を最大限に開放した遮蔽体30の集合配置状態と、遮蔽体30の向きを変えて光の通過を調整可能となる遮蔽体30の分散配置状態との間で、遮蔽体30を速やかに移動させつつ、この遮蔽体30の移動機構を簡略化でき、遮蔽体30の横方向移動に係る機構部分全体の小型化、低コスト化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日光等の光を一部又は全部遮る複数の遮蔽体を開閉して、通過する光量を調整可能とする遮蔽体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木製で格子状の枠に、和紙等を貼って構成される障子は、外からの光を適度に透過させ拡散させる性質を有していることで、近年では、和室用の建具として用いられるだけでなく、和室以外の部屋の間仕切りや、サッシ窓の内障子等として利用される例が増えている。
【0003】
従来の障子の場合は、部屋の出入口や窓等の開口部に障子二つが引違いになるよう配設されて用いられるのが一般的である。このような従来の障子構造の一例として、特開平10−102934号公報に開示されるものがある。
この他、引違いでなく折畳みにより開閉可能な障子も提案されており、こうした障子構造の例として、実開平6−35581号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−102934号公報
【特許文献2】実開平6−35581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の障子構造は、前記各特許文献に示される構成とされているが、障子紙を通じた採光は直接光を室内に通す場合に比べ光の量が小さくなることから、光量を確保したい状況では、状況に応じて障子を少しずつ開放して、光の直接通す量を調整しながら、光を取入れることとなる。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたような一般的な引違い型の障子の場合、最大開放状態としても二つあるうちの一方の障子が他方の障子に重なる状態に移行するのみであることから、最大開放時の開口率が、出入口や窓等の開口部の50%以下と低く、確実に採光を行うと共に十分な開放感を得ることは難しいという課題を有していた。
【0007】
一方、前記特許文献2に記載されたような折畳み型の場合、引違い型に対し最大開放状態での開口率を大幅に高めることができ、採光効率と共に開放感を大きく向上させることができる。ただし、前記いずれの特許文献に記載のものも、開放に際しては、障子を側方に寄せるものとなっているため、最大開放と完全閉塞との中間の調整状態とする場合には、開放部分が出入口や窓等の開口部における側部や中間部の限られた部位となって、採光位置が偏ることとなり、障子を設けた出入口や窓等の開口部全域で、中間の調整状態として均等な採光を行うことはできないという課題を有していた。
【0008】
出入口や窓等の開口部の全域にわたって、最大開放と完全閉塞の中間の調整状態を均等に得るためには、多数の羽根の角度を変化させるだけで最大開放から完全閉塞まで光の通過状態を変化させられる、ブラインドのような構造が考えられる。しかしながら、障子の場合、木枠に紙を貼る構造上、小さく形成したとしても障子はある程度の厚みと重量を有するものとなり、多数並べた薄く軽い羽根を一斉に開閉動作させる、一般的なブラインドの開閉構造を採用することは極めて難しかった。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、光を遮る遮蔽体の開閉動作状態を適切に設定して、光をそのまま通す最大開放状態における開口率を大きくしつつ、光を一部通す部分的開放状態を遮蔽体の傾動で細かく制御でき、採光に係る調整性能を高めた遮蔽体開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る遮蔽体開閉装置は、横方向に延伸配設される上フレームと、遮光性又は一部透光性を有する矩形の略板状体で形成され、長辺方向端部に軸部を有し、長辺方向を上フレームと直交する向きとされつつ前記軸部を介して前記上フレームに横方向へ移動可能に支持されると共に、前記軸部を中心に所定角度範囲で傾動可能とされる複数の遮蔽体と、当該遮蔽体を上フレームに対し横方向に移動させ、各遮蔽体を近接させて上フレーム下側の領域における左右の領域端部のいずれか一方又は両方に寄せて配置した集合配置状態、及び、各遮蔽体を上フレーム下側の領域で横方向へ所定間隔を空けてそれぞれ配置した分散配置状態、のいずれかに切替える遮蔽体移動機構と、遮蔽体の前記分散配置状態で、各遮蔽体を、遮蔽体短辺方向が上フレームと略直交する向きから上フレームと略平行をなす向きまでの角度範囲で傾動させる、遮蔽体傾動機構とを備え、前記遮蔽体移動機構が、軸方向を上フレームと平行をなす向きとして各遮蔽体の上側に回動自在に支持される移動用軸と、当該移動用軸を回動させる駆動部とを有し、前記移動用軸が、遮蔽体を横方向に移動させる範囲で、螺旋状に連続する一又は複数の溝を、外周に穿設され、前記移動用軸の溝における螺旋のピッチが、前記遮蔽体の集合配置状態で領域端部に寄せた複数の遮蔽体の存在する範囲に相当する、移動用軸の軸端部所定寸法部分では、集合配置状態での遮蔽体同士の配置間隔を所定の自然数で割った大きさに対応するピッチとされ、且つ、移動用軸の前記軸端部所定寸法部分を除く他部分では、遮蔽体の分散配置状態での前記所定間隔を前記所定の自然数で割った大きさに対応するピッチとされてなり、前記遮蔽体が、軸部の上端部分を前記遮蔽体移動機構の移動用軸における溝と係合させた状態で上フレームに支持され、軸部の上端部分と溝との係合を維持しつつ、移動用軸の回動に伴って上フレームに対し横方向へ移動するものである。
【0011】
このように本発明によれば、光を少なくとも一部遮る略板状の遮蔽体を、上フレームに対し横方向へ移動可能として複数配設し、遮蔽体移動機構をなす移動用軸の螺旋状の溝を遮蔽体の上端部分と係合させ、移動用軸の回動に伴う溝の案内で、上フレーム下側の領域における側端部とそれ以外の部分での移動の進行度合を異ならせつつ、遮蔽体を横方向へ移動させられることにより、移動用軸の回動のみで、遮蔽体を領域端部に寄せて上フレーム下側の領域を最大限に開放した遮蔽体の集合配置状態と、遮蔽体の向きを変えて光の通過を調整可能となる遮蔽体の分散配置状態との間で、遮蔽体を速やかに移動させることができ、こうして遮蔽体を適切な位置へスムーズ且つ確実に移動させられる状態を確保しつつ、この遮蔽体の移動機構を簡略化でき、遮蔽体の横方向移動に係る機構部分全体の小型化、低コスト化が図れると共に、移動用軸の溝と遮蔽体との係合状態を常に維持して、遮蔽体の横方向移動動作の安定度や信頼性を高められる。
【0012】
また、本発明に係る遮蔽体開閉装置は必要に応じて、前記遮蔽体傾動機構が、前記遮蔽体の軸部で、遮蔽体と一体に取付けられる傾動用歯車と、上フレームと平行に配設され、各遮蔽体における傾動用歯車と噛合する傾動用ラックとを有してなり、前記傾動用歯車が、前記集合配置状態で寄せられた左又は右の領域端部で、領域中央により近い位置にある遮蔽体に取付けられるものほど、歯車外形を小さく形成され、前記傾動用ラックが、前記分散配置状態での各遮蔽体位置ごとに歯形部分を分けて配置されると共に、各歯形部分に対応する遮蔽体の、集合配置状態から分散配置状態に至るまでの横方向移動量が大きいほど、対応する歯形部分の遮蔽体軸部側への突出量を大きくして形成されるものである。
【0013】
このように本発明によれば、遮蔽体にこれと一体の傾動用歯車を設けると共に、上フレームと平行をなして各遮蔽体の傾動用歯車と噛合する傾動用ラックを設け、この傾動用ラックの歯形部分が、分散配置状態での各遮蔽体の位置ごとに分けて配置され、且つ、遮蔽体の集合配置状態から分散配置状態に至るまでの横方向移動量が大きいほど、遮蔽体の傾動用歯車の外形が小さく形成されるのに対応させて、歯形部分の遮蔽体軸部側への突出量をそれぞれ設定することにより、遮蔽体の傾動用歯車と傾動用ラックの歯形部分は、分散配置状態での位置が対応するもの同士のみで噛合する以外、遮蔽体の横方向への移動に際して互いに接触することはなく、遮蔽体を無理なく横方向に移動させられる状態が得られる。また、各遮蔽体が分散配置状態に至って、傾動用歯車が対応する歯形部分と噛合った状態で、遮蔽体移動機構により遮蔽体をさらに横方向へ移動させると、傾動用歯車とラック歯形部分との噛合いに基づいて、傾動用歯車が移動しながら回動し、これと一体の遮蔽体を傾動させられることとなり、遮蔽体移動機構を利用して遮蔽体の傾動機構を動作させられ、遮蔽体の移動機構と傾動機構とを独立に配置せずに済み、遮蔽体の移動と傾動の機構を組合わせた形として機構全体を大幅に簡略化でき、且つ、協調動作する移動と傾動の機構同士が相互に悪影響を及すこともなく、安定に動作させられる。
【0014】
また、本発明に係る遮蔽体開閉装置は必要に応じて、前記上フレームの下方に上フレームと平行に配設される下フレームを備え、前記遮蔽体の下端部が、前記下フレームに対し摺動又は転動して横方向に移動可能とされつつ下フレームで支持されるものである。
【0015】
このように本発明によれば、上フレームと平行な下フレームを設け、上フレームと下フレームで各遮蔽体を支持しつつ、上フレームと下フレームとの間の領域で遮蔽体を横方向へ移動及び傾動させて、この領域を開放した状態と閉塞した状態とを得ることにより、遮蔽体が上下で安定的に支持され、遮蔽体の横方向への移動や傾動も、確実な支持の下でスムーズ且つ安定した動作として実行されることとなり、上フレームと下フレームとの間の領域における光の通過状態を遮蔽体を用いて適切に調整できる。
【0016】
また、本発明に係る遮蔽体開閉装置は必要に応じて、前記遮蔽体の上下端部で、それぞれ遮蔽体の軸部と中心を一致させつつ遮蔽体に対し回動可能に取付けられ、上下で互いに同調して回動可能とされる二つの同調用歯車と、上フレームに沿って固定配設され、各遮蔽体における上側の同調用歯車と噛合する同調用上ラックと、下フレームに沿って固定配設され、各遮蔽体における下側の同調用歯車と噛合する同調用下ラックとを備えるものである。
【0017】
このように本発明によれば、遮蔽体の上下に、一体に回動する同調用歯車を設けると共に、上下のフレームにそれぞれ同調用歯車に対応する同調用のラックを配設し、遮蔽体の横方向への移動に際し、上下の同調用歯車をそれぞれラックと噛合させ、この噛合いを維持する状態に遮蔽体を拘束することにより、上下のフレームに対する遮蔽体の横方向移動に係る進行度合が、遮蔽体の上下で一致することとなり、遮蔽体は上下のフレームに対しそれぞれ直交する状態を、フレームに対する位置に関わりなく維持でき、遮蔽体の軸部が各フレームに対し傾くことがなく、軸部を中心とする遮蔽体の傾動動作をスムーズに実行できる。
【0018】
また、本発明に係る遮蔽体開閉装置は必要に応じて、前記遮蔽体移動機構の移動用軸が、前記軸端部所定寸法部分を、所定軸径の小径部とされる一方、前記軸端部所定寸法部分を除く他部分を、前記小径部より軸径の大きい大径部とされ、前記移動用軸の溝が、少なくとも軸中心に対する溝底位置を、前記小径部と大径部で同じ位置として穿設されると共に、軸外周部における溝幅を小径部より大径部で大きくされてなり、前記遮蔽体の軸部上端部が、移動用軸における小径部と大径部の溝に係合する先端部分に対し、より下側の、大径部の溝のみに係合する部分を、大径部の溝幅に対応させて、より太く形成されるものである。
【0019】
このように本発明によれば、移動用軸の溝の螺旋ピッチが小さい軸端部所定寸法部分を小径部とする一方、溝の螺旋ピッチをより大きくした移動用軸の他部分を大径部とし、また、移動用軸外周の溝のうち、大径部における溝幅を大きくすると共に、遮蔽体の軸部上端部のうち、大径部のみに係合する部分を溝幅に対応させて太くして、大径部から力を受ける部位の強度を高めることにより、螺旋ピッチの大きい大径部から遮蔽体側に加わる横方向の力に十分に対応でき、移動用軸から遮蔽体へ力を無理なく確実に伝えて、遮蔽体の横方向への移動をスムーズ且つ安定したものとすることができる。
【0020】
また、本発明に係る遮蔽体開閉装置は必要に応じて、前記遮蔽体が、上下左右の各辺を有して中央を開口部とされる矩形状の枠部と、当該枠部の開口部を塞ぐ透光性の紙シートとからなる障子構造を有し、前記軸部が、枠部における長辺となる左右の辺のいずれか一方の側に位置するものである。
【0021】
このように本発明によれば、遮蔽体を枠部と紙シートとを組合わせた障子構造とすると共に、遮蔽体の軸部を枠部の側辺に位置させ、軸部が枠部の開口部を縦断しない構造とすることにより、遮蔽体で上フレーム下側の領域を閉塞した状態でも光を一部透過させて採光状態を維持できると共に、遮蔽体の紙シートで塞がれた開口部の全域で所定の透光性を発揮させることができ、遮蔽体を通じて一般的な障子と同様の透光状態が得られ、遮蔽体での閉塞状態では、光が紙シート部分を通るのみとなることで、一般的な障子のような柔らかく落着いた趣きの光が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の全開状態の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の閉塞状態の正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体の集合配置状態説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の左半分における遮蔽体の分散配置状態説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の左半分における遮蔽体による閉塞状態説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体移動機構及び遮蔽体の要部拡大正面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の一部省略縦断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体の集合配置状態での遮蔽体の要部平面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体下部と下フレームとの配置関係説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体の横移動状態説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体傾動機構による閉塞動作時の遮蔽体の傾動開始状態説明図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体傾動機構による閉塞動作時の遮蔽体の最大傾動状態説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の全開状態の正面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の閉塞状態の正面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置の遮蔽体による閉塞状態における遮蔽体移動機構と遮蔽体の位置関係説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る遮蔽体開閉装置を前記図1ないし図12に基づいて説明する。本実施形態においては、部屋の外に面する窓の内側近傍に窓全体を遮蔽可能となる大きさとして配設され、窓から入射する外光の通過状態を調整する装置の例について説明する。
【0024】
前記各図において本実施形態に係る遮蔽体開閉装置1は、部屋の窓71近傍で窓71に沿って横方向に延伸させて配設される上フレーム10と、この上フレーム10の下方の床に上フレーム10と平行に配設される下フレーム20と、一部透光性を有する矩形の略板状体で形成され、上下フレーム間の領域60に横方向へ移動可能に配設されると共に、軸部33を中心に傾動可能とされる複数の遮蔽体30と、この遮蔽体30を上下フレームに対し横方向に移動させる遮蔽体移動機構40と、各遮蔽体30を所定角度範囲で傾動させる遮蔽体傾動機構50とを備える構成である。
【0025】
前記上フレーム10は、窓71の上枠71a近傍の壁面70に上枠71aに沿って取付けられる略コ字状断面形状の長尺部材であり、遮蔽体30の軸部33と係合して遮蔽体30を長手方向、すなわち横方向へ移動可能に支持するものである。この上フレーム10にはこれと平行に同調用上ラック11が配設されると共に、遮蔽体傾動機構50の一部をなす傾動用ラック52も、同様の平行な向きで配設される構成である。
【0026】
また、上フレーム10にはこれに沿って蓋部12が取付けられ、この蓋部12と上フレーム10の間には、遮蔽体30の上部や、前記同調用上ラック11、傾動用ラック52、さらに遮蔽体移動機構40の要部などを収める中空部分が生じている。
【0027】
前記下フレーム20は、上フレーム10の直下となる、窓の近傍の床面80に一部埋込まれる状態で上フレーム10と平行に取付けられる長尺の部材であり、遮蔽体30の下部を載置されて遮蔽体30を下から支えるものである。この下フレーム20にはこれと平行に同調用下ラック21が配設される。
【0028】
前記遮蔽体30は、上下左右の各辺を有して中央を開口部とされる矩形状の枠部31と、この枠部31の開口部を塞ぐ透光性の紙シート32とからなる矩形の略板状体で形成され、長辺方向端部に軸部33を有し、長辺方向を上フレーム10と直交する向きとされつつ、軸部33を介して上フレーム10に横方向へ移動可能に支持されると共に、軸部33を中心に所定角度範囲、例えば、少なくとも遮蔽体短辺方向が上フレーム10と略直交する向きから上フレーム10と略平行をなす向きまでの角度範囲で、傾動可能とされる構成である。
【0029】
また、遮蔽体30は、その下部に、下フレーム20の長手方向に連続する溝部22に対し摺動可能に載置係合されて、この溝部22に沿って移動可能な摺動片34と、この摺動片34に一端を固定されると共に、他端を枠部31の下辺に固定されて、巻線中心を軸部33中心と一致させて配設されるつる巻きばねである回転規制ばね35とを有しており、この遮蔽体30下部は、下フレーム20に対し摺動しつつ、下フレーム20長手方向、すなわち、横方向へ移動可能に支持される。
【0030】
こうした遮蔽体30下部の下フレーム20と接する部位や、上部の上フレーム10と接する部位、あるいは、上フレーム10や下フレーム20における遮蔽体30との接触部位については、遮蔽体30の横方向への移動を容易にするために、摺動抵抗の小さい材質(フッ素樹脂やポリアセタール樹脂など)で構成するのが好ましい。
【0031】
遮蔽体30の上部では、軸部33の上フレーム10に係合して支持される部分より上側となる上端部分で、遮蔽体移動機構40をなす移動用軸41と係合することで、遮蔽体30は遮蔽体移動機構40から横方向に向う力を受け、上フレーム10及び下フレーム20に対し移動可能とされる。
【0032】
遮蔽体30の軸部33は、遮蔽体30の長辺方向の一方の端部から他方の端部まで連続したものとなっており、枠部31における長辺の一方の側に位置し、遮蔽体30はこの長辺の一方を中心に傾動する状態となる。こうして軸部33が枠部31と重複して開口部を縦断しない状態となっていることで、障子構造をなす遮蔽体30の紙シート32で塞がれた開口部の全域で透光性を発揮させることができ、遮蔽体30を通じて一般的な障子と同様の透光状態が得られることとなる。
【0033】
この軸部33は、より具体的には、枠部31と一体化された中空の外軸36と、この外軸36の中空部分に通されて外軸36に対し回動可能とされる内軸37とを有している。さらに、各遮蔽体30の軸部33における、上フレーム10に支持される部分と軸部上端部分との間の部位で露出している内軸37に、同調用上歯車15が一体に取付けられる一方、下フレーム20に接触する部分の直上部位で露出している内軸37に、同調用下歯車25が一体に取付けられる(図7参照)。
【0034】
これら同調用上歯車15と同調用下歯車25がそれぞれ内軸37に一体に取付けられることで、遮蔽体30の他部分に対し同調用の上下の歯車15、25が軸部33と中心を一致させつつ上下で一体に同調して回動できることとなる。なお、同調用上歯車15が、上フレーム10に固定配設される同調用上ラック11と噛合し、同調用下歯車25が、下フレーム20に固定配設される同調用下ラック21と噛合することで、上下のフレーム10、20に対する遮蔽体30の横方向移動に係る進行度合が上下で一致する状態に拘束されることとなり、遮蔽体30は上下のフレーム10、20に対しそれぞれ直交して垂直に起立した状態を、移動に関わりなく維持できる。
【0035】
さらに、遮蔽体30の下部では、下フレーム20の溝部22に係合して回転しない摺動片34を設けると共に、この摺動片34と遮蔽体30の枠部31下辺との間に回転規制ばね35を配設し、且つ、遮蔽体短辺方向が上フレーム10や下フレーム20と直交する向きとなっている場合が、回転規制ばね35のねじれ方向について力が加わっていない初期状態にあたるように、回転規制ばね35を配置設定している。これにより、遮蔽体短辺方向が上フレーム10や下フレーム20と直交する向きからずれるように遮蔽体30が回転しようとすると、回転規制ばね35の付勢力による抵抗が加わることとなり、遮蔽体30の横方向移動の際に、遮蔽体傾動機構50がまだ動作しない段階でこれによる拘束がない状態でも、遮蔽体30が回転せずその向きを維持できる仕組みである。
【0036】
特に、遮蔽体30の横方向移動に際して、同調用の上下の歯車15、25と共に内軸37が回転しても、その外側の外軸36や枠部31が内軸37の回転につれて共に回転してしまうようなことはなく、横方向移動の間、遮蔽体30の向きを維持して、遮蔽体傾動機構50により遮蔽体30を適切な向きで傾動動作させられることとなる。
【0037】
前記遮蔽体移動機構40は、遮蔽体30を上下フレーム10、20に対し横方向に移動させ、各遮蔽体30同士を近接させて上下フレーム間の領域60における左右の領域端部のそれぞれに遮蔽体30を半数ずつ寄せて配置した集合配置状態、及び、各遮蔽体30を上下フレーム間の領域60の左半分と右半分のそれぞれで横方向へ略等間隔に配置した分散配置状態のいずれかに切替えるものである。
【0038】
具体的には、遮蔽体移動機構40は、軸方向を上フレーム10及び下フレーム20と平行をなす向きとし、各遮蔽体30の上側で軸心周りに回動自在として支持される移動用軸41と、この移動用軸41を回動させる前記駆動部としてのスプロケット42及びチェーン49とを有する構成である。
【0039】
前記移動用軸41は、遮蔽体30を横方向に移動させる範囲、すなわち左右の軸端部から軸中央部分までの範囲で、螺旋状に連続する左右の溝41a、41b、41c、41dを、左右で互いに対称をなす形状としつつ、外周に穿設される構成である。この移動用軸41の溝41a、41b、41c、41dにおける螺旋のピッチは、前記集合配置状態で領域60の左右端部に寄せた遮蔽体30の存在する横方向範囲に相当する、移動用軸41の軸端部所定寸法部分の溝41a、41dについては、集合配置状態での遮蔽体30同士の配置間隔を所定の自然数で割った大きさに対応するピッチとされる(図3、図6参照)。
【0040】
また、移動用軸41の前記軸端部所定寸法部分を除く他部分の溝41b、41cでは、各遮蔽体30を上下フレーム間の領域60のうち、窓71に重なる範囲における左半分と右半分のそれぞれで横方向へ等間隔に並べた場合の、遮蔽体同士の間隔を、前記溝41a、41dの場合と同じ所定の自然数で割った大きさに対応するピッチとされる(図4、図5参照)。この溝41b、41cにおける螺旋のピッチは、ちょうど遮蔽体30の分散配置状態で、各遮蔽体30が上フレーム10と略平行をなすか、隣合う遮蔽体30と接する向きまで最大限傾動して、それ以上傾動しない状態に至った際の、等間隔をなす遮蔽体30の軸部33同士の間隔を前記自然数で割った大きさに相当している。
【0041】
加えて、移動用軸41は、外周の溝41a、41dが前記集合配置状態での遮蔽体30同士の配置間隔に対応する螺旋ピッチとされている、前記軸端部所定寸法部分を、所定軸径の小径部43とされる一方、この軸端部所定寸法部分の小径部43を除いた他部分を、小径部43より軸径の大きい大径部44とされる構成である(図3ないし図6参照)。そして、移動用軸41の溝41a、41b、41c、41dは、軸中心に対する溝底位置を、小径部43と大径部44で同じ位置として穿設されると共に、軸外周部における溝幅を小径部43より大径部44で大きくされる構成である。
【0042】
なお、この移動用軸41の溝形状に対応させて、遮蔽体30の軸部33上端部は、移動用軸41における小径部43と大径部44のいずれでも溝41a、41b、41c、41dに係合する先端部分に対し、より下側の、大径部44の溝41b、41cのみに係合する部分を、大径部44の溝幅に対応させて、より太く形成される構成である(図4ないし図6、図10参照)。こうして、小径部43より溝41b、41cの螺旋のピッチの大きい移動用軸41の大径部44において、ピッチ増加による横方向への進行量の増大に伴って、遮蔽体30の軸部33側へ加わる横方向の力が大きくなるのに対して、軸部33における大径部44から力を受ける部位を大きくしその強度を高めていることで、移動用軸41から遮蔽体30へ力を無理なく確実に伝えて、遮蔽体30の横方向への移動をスムーズ且つ安定したものとすることができる。
【0043】
前記スプロケット42は、移動用軸41と一体に形成され、チェーン49を巻き掛けられてなり、チェーン49からの駆動力を受けて回動可能とされるものであり、チェーン49の形状に対応した複数の歯を有してチェーン49と噛合う公知の構成であり、詳細な説明を省略する。また、チェーン49は、所定長さの無端状態としてスプロケット42に巻き掛けられ、スプロケット42の下方に垂下がった状態として配設されるものである。このチェーン49のスプロケット42前後に位置する二つの部分のいずれかを使用者が下に引く操作により、これを巻き掛けられたスプロケット42が回動する公知の仕組みで、移動用軸41の駆動を行っている。
【0044】
前記遮蔽体傾動機構50は、前記遮蔽体30上部の軸部33で、遮蔽体30をなす枠部31と一体に取付けられる傾動用歯車51と、上フレーム10にこれと平行に配設され、各遮蔽体30における傾動用歯車51と噛合する傾動用ラック52とを有する構成であり、装置の左右で互いに対称をなす状態で設けられ、遮蔽体30の前記分散配置状態で、各遮蔽体30を、遮蔽体短辺方向が上フレーム10と略直交する向きから上フレーム10と略平行をなす向きまでの角度範囲で傾動させるものである。
【0045】
前記傾動用歯車51は、遮蔽体30の軸部33における外軸36に固定されて、枠部31と一体に回動可能とされてなり(図7参照)、前記集合配置状態で寄せられた左又は右の領域端部で、領域60の中央により近い位置にある遮蔽体30に取付けられるものほど、歯車外形を小さく形成される構成である(図8参照)。
【0046】
この傾動用歯車51の各遮蔽体30の軸部33への取付位置は二通りあって、一方の位置に対し他方の位置が上又は下にわずかにずれた位置関係となっており、集合配置状態で隣合う遮蔽体30同士で、それぞれの傾動用歯車51の軸部取付位置が上下にずれて重複しないように設定される(図6ないし図8参照)。これにより、傾動用歯車51が、領域60の側端部により近い位置にある遮蔽体30に取付けられるものほど、歯車外形を大きくされて、遮蔽体30の厚さを超えるような外形となっている場合でも、集合配置状態において隣合う遮蔽体30間で傾動用歯車51同士が接触するようなことはなく、集合配置状態で隣合う遮蔽体同士を無理なく接近させて、密に並べた状態とすることができる(図6参照)。
【0047】
前記傾動用ラック52は、前記分散配置状態での各遮蔽体30の位置ごとに歯形部分52aを分けて配置されると共に、各歯形部分に対応する遮蔽体30の、集合配置状態から分散配置状態に至るまでの横方向移動量が大きいほど、すなわち、分散配置状態での遮蔽体位置が領域60の中央に近いほど、対応する歯形部分52aの遮蔽体軸部側への突出量を大きくして形成される構成である(図11、図12参照)。すなわち、傾動用ラック52の各遮蔽体位置ごとの歯形部分52aは、それぞれ該当する遮蔽体30に設けられた傾動用歯車51の外形の大きさに対応した突出量とされ、傾動用歯車51とラック52の歯形部分52aは、対応するもの同士のみで噛合することとなる。
【0048】
このように、各遮蔽体30における傾動用歯車52の外形が、分散配置状態での遮蔽体位置が領域60の中央に近いほど小さく、傾動用ラック52の各歯形部分52aの突出量は領域60の中央に近いほど大きくなっていることから、遮蔽体30が分散配置状態での対応位置にある場合を除き、遮蔽体30の傾動用歯車51は傾動用ラック52各部と接触することなく横方向へ移動可能である。
【0049】
傾動用歯車51と傾動用ラック52が噛合った状態で、遮蔽体移動機構40の移動用軸41が回転して遮蔽体30の横方向移動が生じると、固定の傾動用ラック52の歯形部分52aに対して噛合っている傾動用歯車51が、遮蔽体30と共に横移動しながら回転することから、この傾動用歯車51と一体の軸部33の外軸36や枠部31といった遮蔽体要部も回転し、こうして遮蔽体30が上下フレーム10、20に対し傾動する状態が得られることとなる。
【0050】
ここで、遮蔽体短辺方向が上フレーム10や下フレーム20と直交する向きからずれるように遮蔽体30が回転しようとすると、下部の回転規制ばね35のねじりの付勢力による抵抗が加わるものの、遮蔽体30の横方向移動並びに傾動用歯車51と傾動用ラック52との噛合いによる遮蔽体30の傾動駆動力は、回転規制ばね35による抵抗を大きく上回ることから、遮蔽体30を上下フレーム10、20に対し問題なく傾動させることができる。
【0051】
なお、傾動用ラック52の各歯形部分52aの長手方向寸法は、遮蔽体30を傾動させるにあたって回動させる傾動用歯車51の回動角度に応じた噛合期間を与えるものとされる。遮蔽体30における傾動用歯車51の大きさは領域60の側端部に近いほど大きくなっているため、同じ回動角度を与えるためには、側端部に近い位置ほど噛合期間を長くする必要があり、傾動用ラック52の歯形部分52aは、領域60の側端部に近い位置ほど、長手方向により長く形成される構成である。
【0052】
次に、本実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体の開閉動作について説明する。まず、遮蔽体30の集合配置状態、すなわち、上下フレーム10、20間の領域60における左右の領域端部のそれぞれに、遮蔽体30を半数ずつ寄せて互いに近接させて配置した状態とし、上下フレーム間の領域60の略全域を開放して、窓71から光が直接部屋に達する状況(図1参照)から、上下フレーム間の領域60に均等に配置した遮蔽体30で窓71を覆って、窓71からの入射光が遮蔽体30を通じてのみ部屋に達する状況(図2参照)まで変化させる、遮蔽体30の閉塞動作の場合を説明する。
【0053】
遮蔽体30の集合配置状態では、上下フレーム10、20間の領域60における左右の端部において、遮蔽体30は短辺方向を上下フレーム10、20に対し直交する向きとし、且つ遮蔽体相互間に遮蔽体30の厚さより小さいわずかな隙間を生じさせた状態で並列している。この集合配置状態で領域60の左右端部に寄せた遮蔽体30の存在する横方向範囲に相当する、移動用軸41の軸端部所定寸法部分は、それぞれ小径部43とされており、その外周の溝41a、41dは、この集合配置状態での遮蔽体30同士の配置間隔を所定の自然数で割った寸法、例えば配置間隔の1/5の寸法(図6参照)、に対応する螺旋ピッチとなっている。
【0054】
この遮蔽体30の集合配置状態では、上下フレーム間の領域60のうち、左右端部以外のほとんどの部分は遮蔽体30の存在しない全開状態となっており、窓側からの光を遮るものはなく、光をそのまま損失無く部屋内へ通すことができる。
【0055】
この遮蔽体30が集合配置状態にあり、上下フレーム間の領域60の略全域を開放している状況から、遮蔽体移動機構40のチェーン49を使用者が操作してスプロケット42を動かし、移動用軸41をその外周の溝の螺旋が軸端部から中央へ進行するようになる向きへ回転させると、回転により動く小径部43外周の螺旋状の溝41a、41dによる案内で、この溝に係合する遮蔽体30の軸部上端部が横方向に向う力を受け、遮蔽体全体が上下のフレーム10、20に対し、移動用軸41の回転数と小径部43の溝ピッチに応じた速さで移動を開始する(図10(A)参照)。
【0056】
遮蔽体が横方向に移動すると、上フレーム10の同調用上ラック11と噛合する同調用上歯車15と、下フレーム20の同調用下ラック21と噛合する同調用下歯車25とが上下で一体に同調して回転し、遮蔽体上下の横方向への進行度合を一致する状態に拘束して、遮蔽体30が上下のフレーム10、20に対しそれぞれ直交して垂直に起立した状態を保持することとなる。
【0057】
遮蔽体の横方向移動で、最も中央寄りの遮蔽体30が、移動用軸41の溝との係合位置を、小径部43の溝41a、41dから大径部の溝41b、41cに変えると、移動用軸41の回転数と大径部44の溝ピッチに応じた、小径部43の場合より速い速度で、遮蔽体30は移動することとなる。
【0058】
大径部44の溝41b、41cに係合する遮蔽体と、小径部43の溝41a、41dに係合する遮蔽体とは、横方向への移動速度が異なるため、大径部44側の遮蔽体と小径部43側の遮蔽体との間隔は広がっていき(図10(B)参照)、ちょうどこの間隔が分散配置状態での遮蔽体同士の間隔に達すると(図10(C)参照)、次の中央寄りの遮蔽体が、移動用軸41の溝との係合位置を、小径部43の溝41a、41dから大径部44の溝41b、41cに変えて、速い速度での横方向移動状態に移行する。これが順次繰返されて、大径部側に移行した遮蔽体間には所定間隔が生じた状態となる。
【0059】
各遮蔽体30の移動に伴い、領域60の左右端部寄りの遮蔽体30以外の遮蔽体が移動用軸41の大径部44側に移行し、遮蔽体30同士が離隔して、各遮蔽体30が上下フレーム間の領域60の左半分と右半分のそれぞれで、横方向へ略等間隔に配置された分散配置状態に達すると(図4参照)、各遮蔽体30の軸部33に取付けられた遮蔽体傾動機構50の傾動用歯車51が、傾動用ラック52の対応する歯形部分52aとそれぞれ噛合う(図11参照)。そして、移動用軸41の回転による遮蔽体30のさらなる横方向移動に伴って、上フレーム10に固定の傾動用ラック52の各歯形部分52aに対して、噛合う傾動用歯車51が遮蔽体30と共に横移動しながら回転する。この傾動用歯車51の回転で、これと一体の軸部33の外軸36や枠部31といった遮蔽体要部も回転し、遮蔽体30が上下フレーム10、20に対し傾動する状態となる。
【0060】
こうして遮蔽体30が、その短辺方向が上フレーム10や下フレーム20と直交する向きから傾動する際、下部の回転規制ばね35の付勢力による抵抗が加わるが、遮蔽体30の横方向移動並びに傾動用歯車51と傾動用ラック52の歯形部分52aとの噛合いによる遮蔽体30の傾動駆動力は、回転規制ばね35による抵抗を大きく上回るため、遮蔽体30はそのまま傾動できる。
【0061】
この傾動の際、遮蔽体30の傾動角度に応じて、遮蔽体30間の開放部分が狭まり、窓側から直接入射する光と遮蔽体30の紙シート32を通過した光との割合が変化することとなる。よって、必要に応じてチェーン49の操作を中断して移動用軸41の回転を止め、遮蔽体30の横方向移動及び傾動を停止して、遮蔽体30の傾動角度を適宜設定することで、好みの採光状態を得ることができる。
【0062】
全ての遮蔽体30が、上フレーム10と略平行をなすか、隣合う遮蔽体30と接する向きまで傾動して、それ以上傾動しない状態に至ったら(図5、図12参照)、使用者はチェーン49の操作を止め、移動用軸41の回転を停止させる。移動用軸41の回転が停止すると、遮蔽体30の横方向移動が停止すると共に、遮蔽体30の傾動も停止する。この時、全ての遮蔽体30は移動用軸41の大径部44側に移行しており、遮蔽体30の軸部33は等間隔で配置された状態にある。また、全遮蔽体で領域60を閉塞しており、遮蔽体30で窓71が覆われ、窓71からの入射光が遮蔽体30の紙シート32を通じてのみ部屋に達する状況にある(図2参照)。
【0063】
遮蔽体で領域60を閉塞した状態では、窓側からの光が遮蔽体30の紙シート32部分を通してのみ達することで、紙シートを通して強度を落した、柔らかく落着いた趣きの光が得られる、障子を通したような採光状態とすることができる。
【0064】
続いて、上記と逆に、上下フレーム間の領域60に均等に配置した遮蔽体30で窓71を覆って、窓71からの入射光が遮蔽体を通じてのみ部屋に達する状況(図2参照)から、遮蔽体30を集合配置状態とし、上下フレーム間の領域60の略全域を開放して窓71から光が直接部屋に達する状況(図1参照)まで変化させる、遮蔽体30の開放動作の場合を説明する。
【0065】
遮蔽体で領域60を閉塞した状態から、遮蔽体移動機構40のチェーン49を使用者が操作してスプロケット42を動かし、上記の場合とは逆に、移動用軸41をその外周の溝の螺旋が軸中央から軸端部へ進行するようになる向きへ回転させると、回転により動く大径部44外周の螺旋状の溝41b、41cによる案内で、この溝41b、41cに係合する遮蔽体30の軸部33上端部が横方向に向う力を受け、遮蔽体全体が上下のフレーム10、20に対し、移動用軸41の回転数と大径部44の溝ピッチに応じた速さで領域の中央側から端部側へ向う方向へ移動を開始する。
【0066】
この遮蔽体30の横方向移動と同時に、傾動用ラック52の歯形部分52aと噛合う傾動用歯車51が、固定状態の傾動用ラック52に対し、遮蔽体30と共に横移動しながら回転する。この傾動用歯車51の回転で、これと一体の軸部33の外軸36や枠部31といった遮蔽体要部も回転し、遮蔽体30が上下フレーム10、20に対し上記と逆方向、すなわち遮蔽体間に開放部分を生じさせ、且つこの開放部分を広げる向きに傾動する状態となる。
【0067】
この傾動の際、遮蔽体30の傾動角度に応じて、遮蔽体30間の開放部分が広がり、前記同様に、窓側から直接入射する光と遮蔽体30の紙シート32を通過した光との割合が変化することから、必要に応じてチェーン49の操作を中断して移動用軸41の回転を止め、遮蔽体30の横方向移動及び傾動を停止して、遮蔽体30の傾動角度を適宜設定すれば、好みの採光状態を得ることができる。
【0068】
全ての遮蔽体30が、遮蔽体短辺部分が上下フレームと直交する向きとなるまで傾動して、遮蔽体30の傾動用歯車51と傾動用ラック52の歯形部分との噛合いが解除されると、移動用軸41の回転による遮蔽体30のさらなる横方向移動に伴って、分散配置状態にあった各遮蔽体30のうち、最も領域60の側端部寄りの遮蔽体以外の各遮蔽体30が、移動用軸41の溝との係合位置を、大径部44の溝41b、41cから小径部43の溝41a、41dに変えながら、遮蔽体同士の間隔を狭めていく。
【0069】
すなわち、大径部44から小径部43側に移行した遮蔽体30は、移動用軸41の回転数と小径部43の溝ピッチに応じた、大径部44の場合より遅い速度で、横方向に移動する。この小径部43の溝41a、41dに係合する遮蔽体と、大径部44の溝41b、41cに係合する遮蔽体とは、横方向への移動速度が異なることから、遮蔽体同士の間隔は移動につれて狭まることとなる。
【0070】
そして、この間隔が集合配置状態での遮蔽体同士の間隔に達すると、次に側端部に近い遮蔽体30が、移動用軸41の溝との係合位置を、大径部44の溝41b、41cから小径部43の溝41a、41dに変えて、より遅い速度での横方向移動状態に移行する。これが順次繰返されて、小径部43側に全ての遮蔽体30が移行すると、遮蔽体30は、隣合う他の遮蔽体との間にその厚さより小さいわずかな隙間を生じさせつつ並列した集合配置状態となる。
【0071】
この集合配置状態で領域60の左右端部に寄った遮蔽体30のうち、最も領域端部寄りの遮蔽体が、移動用軸41との関係でそれ以上横方向に移動させられない位置まで達したら、使用者はチェーン49の操作を止め、移動用軸41の回転を停止させる。移動用軸41の回転の停止に伴い、遮蔽体30の横方向移動が停止する。この時、上下フレーム間の領域60のうち、左右端部以外のほとんどの部分は遮蔽体30の存在しない全開状態(図1参照)となり、あらためて窓71から光が直接部屋に達する状況にある。
【0072】
このように、本実施形態に係る遮蔽体開閉装置は、光を一部遮る略板状の遮蔽体30を、上フレーム10及び下フレーム20に対し横方向へ移動可能として複数配設し、遮蔽体移動機構40をなす移動用軸41の螺旋状の溝を遮蔽体30の上端部分と係合させ、移動用軸41の回動に伴う溝の案内で、上下フレーム間の領域における側端部とそれ以外の部分での移動の進行度合を異ならせつつ、遮蔽体30を横方向へ移動させられることから、移動用軸41の回動のみで、遮蔽体30を上下フレーム間の領域60の左右端部に寄せて領域60を大きく開放した遮蔽体30の集合配置状態と、遮蔽体30を上下フレーム間の領域60全体に広く配置し、遮蔽体30の向きを変えて光の通過を調整できるようにした遮蔽体30の分散配置状態との間で、各遮蔽体30を速やかに移動させることができ、こうして各遮蔽体30を適切な位置へスムーズ且つ確実に移動させられる状態を確保しつつ、遮蔽体移動機構40を簡略化でき、遮蔽体30の横方向移動に係る機構部分全体の小型化、低コスト化が図れると共に、移動用軸41の溝と遮蔽体30との係合状態を常に維持して、遮蔽体30の横方向移動動作の安定度や信頼性を高められる。
【0073】
また、遮蔽体傾動機構50として、遮蔽体30にこれと一体の傾動用歯車51を設けると共に、上フレーム10と平行をなして各遮蔽体30の傾動用歯車51と噛合する傾動用ラック52を設け、各遮蔽体30が分散配置状態に至って、傾動用歯車51が対応する歯形部分52aと噛合った状態で、遮蔽体移動機構40により遮蔽体30をさらに横方向へ移動させると、傾動用歯車51とラックの歯形部分52aとの噛合いに基づいて、傾動用歯車51が移動しながら回動し、これと一体の遮蔽体30を傾動させられることで、遮蔽体移動機構40を利用して遮蔽体傾動機構50を動作させられ、遮蔽体の移動機構と傾動機構とを独立に配置せずに済み、遮蔽体30の移動と傾動の機構を組合わせた形として機構全体を大幅に簡略化でき、且つ、協調動作する移動と傾動の機構同士が相互に悪影響を及すこともなく、安定に動作させられる。
【0074】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置を前記図13ないし図15に基づいて説明する。本実施形態においても、前記第1の実施形態同様、部屋の外に面する窓の内側近傍に窓全体を遮蔽可能となる大きさとして配設され、窓から入射する外光の通過状態を調整する装置の例について説明する。
【0075】
前記各図において本実施形態に係る遮蔽体開閉装置2は、前記第1の実施形態同様、上フレーム10と、下フレーム20と、遮蔽体30と、遮蔽体移動機構40と、遮蔽体傾動機構50とを備える一方、異なる点として、遮蔽体移動機構が、遮蔽体30の集合配置状態として、上下フレーム間の領域60における左側の端部のみに各遮蔽体30を寄せて近接させた状態とし、この集合配置状態から、各遮蔽体30を領域60の左側から右側へ向かう横方向にのみ移動させて、各遮蔽体30を上下フレーム間の領域60の横方向全体にわたり所定間隔で配置した分散配置状態に移行させ、逆に分散配置状態から集合配置状態への移行の際には、各遮蔽体30を領域60の右側から左側へ向かう横方向にのみ移動させる構成を有するものである。
なお、上フレーム10、下フレーム20、及び遮蔽体30については、前記第1の実施形態の場合と同様の構成であり、説明を省略する。
【0076】
前記遮蔽体移動機構40は、前記第1の実施形態同様、移動用軸46と、スプロケット42と、チェーン49とを有する構成である。ただし、異なる点として、前記移動用軸46は、遮蔽体30を横方向に移動させる範囲、すなわち一方の軸端部から他方の軸端部までの範囲で、螺旋状に連続する溝46a、46bを外周に穿設される構成であり、前記第1の実施形態の場合の装置左半分の部分のみに相当するものとなっている。
【0077】
この移動用軸46の溝46a、46bにおける螺旋のピッチのうち、前記集合配置状態で領域60の左側端部に寄せた遮蔽体30の存在する横方向範囲に相当する、移動用軸46の軸端部所定寸法部分の溝46aについては、集合配置状態での遮蔽体30同士の配置間隔を所定の自然数で割った寸法に対応するピッチとされる。また、移動用軸46の前記軸端部所定寸法部分を除く他部分の溝46bでは、各遮蔽体30を上下フレーム間の領域60のうち窓71に重なる範囲で横方向へ等間隔に並べた場合の、遮蔽体同士の間隔を、前記溝46aの場合と同じ所定の自然数で割った寸法に相当するピッチとされる。
【0078】
加えて、移動用軸46は、小さい螺旋ピッチの溝46aのある前記軸端部所定寸法部分を、所定軸径の小径部47とされる一方、この小径部47を除いた他部分を、小径部47より軸径の大きい大径部48とされる構成である。なお、移動用軸46の溝46a、46bは、前記第1の実施形態同様、軸中心に対する溝底位置を、小径部47と大径部48で同じ位置として穿設されると共に、軸外周部における溝幅を小径部47より大径部48で大きくされる構成である。
【0079】
前記遮蔽体傾動機構50は、前記第1の実施形態同様、傾動用歯車51と、傾動用ラック52とを有する構成である。ただし、異なる点として、前記第1の実施形態の場合の装置左半分の部分のみに相当するものとなっており、前記傾動用歯車51は、前記集合配置状態で寄せられた領域60の左側端部で、領域60の中央により近い位置にある遮蔽体30に取付けられるものほど、すなわち、分散配置状態で領域60の右側端部により近い位置の遮蔽体30に取付けられるものほど、歯車外形を小さく形成される構成である。また、前記傾動用ラック52は、各歯形部分(図示を省略)に対応する遮蔽体30の、集合配置状態から分散配置状態に至るまでの横方向移動量が大きいほど、すなわち、分散配置状態での遮蔽体位置が領域60の右側端部に近いほど、対応する歯形部分の遮蔽体軸部側への突出量を大きくして形成される構成である。
【0080】
なお、傾動用歯車51は、前記第1の実施形態同様、集合配置状態で隣合う遮蔽体30同士で、それぞれの傾動用歯車51の軸部取付位置が上下にずれて重複しないように設定されており、集合配置状態で隣合う遮蔽体30間で傾動用歯車51同士が接触するようなことはなく、隣合う遮蔽体30同士を無理なく接近させて、密に並べた状態とすることができる。
【0081】
こうして、各遮蔽体30における傾動用歯車51の外形が、分散配置状態での遮蔽体位置が領域60の右側端部に近いほど小さく、傾動用ラック52の各歯形部分の突出量は領域60の右側端部に近いほど大きくなっていることから、前記第1の実施形態同様、遮蔽体30が分散配置状態での対応位置にある場合を除き、遮蔽体30の傾動用歯車51は傾動用ラック52各部と接触することなく横方向へ移動可能である。
【0082】
次に、本実施形態に係る遮蔽体開閉装置における遮蔽体の開閉動作について説明する。まず、遮蔽体30を集合配置状態とし、上下フレーム間の領域60の略全域を開放して、窓72から光が直接部屋に達する状況(図13参照)から、上下フレーム間の領域60に均等に配置した遮蔽体30で窓72を覆って、窓72からの入射光が遮蔽体30を通じてのみ部屋に達する状況(図14参照)まで変化させる、遮蔽体の閉塞動作の場合を説明する。
【0083】
遮蔽体30が、上下フレーム10、20間の領域60における左側端部に寄せて近接配置された集合配置状態にあり、上下フレーム間の領域60の略全域を開放している状況から、遮蔽体移動機構40のチェーン49を使用者が操作してスプロケット42を動かし、移動用軸46をその外周の溝46a、46bの螺旋が左側の軸端部から右側の軸端部へ進行するようになる向きへ回転させると、回転により動く小径部47外周の螺旋状の溝46aによる案内で、この溝46aに係合する遮蔽体30の軸部上端部が横方向に向う力を受け、遮蔽体全体が上下のフレーム10、20に対し、移動用軸46の回転数と小径部47の溝ピッチに応じた速さで移動を開始する。
【0084】
遮蔽体30の横方向移動で、最も領域60右側端部寄りの遮蔽体30が、移動用軸46の溝との係合位置を、小径部47の溝46aから大径部48の溝46bに変えると、移動用軸46の回転数と大径部48の溝ピッチに応じた、小径部47の場合より速い速度で、遮蔽体30は移動することとなる。
【0085】
この大径部48の溝46bに係合する遮蔽体と、小径部47の溝46aに係合する遮蔽体とは、横方向への移動速度が異なるため、遮蔽体同士の間隔は移動につれて広がっていき、ちょうどこの間隔が分散配置状態での遮蔽体同士の間隔に達すると、次の領域60右側端部寄りの遮蔽体30が、移動用軸46の溝との係合位置を、小径部47の溝46aから大径部48の溝46bに変えて、速い速度での横方向移動状態に移行する。これが順次繰返されて、大径部48側に移行した遮蔽体は、それぞれ所定の等間隔を空けて配置された状態となる。
【0086】
各遮蔽体30の移動に伴い、領域60の左側端部寄りの遮蔽体30以外の遮蔽体30が移動用軸46の大径部48側に移行し、遮蔽体30同士が離隔して、各遮蔽体30が上下フレーム間の領域60の全体で、横方向へ略等間隔に配置された分散配置状態に達すると、前記第1の実施形態同様、各遮蔽体30の軸部33に取付けられた遮蔽体傾動機構50の傾動用歯車51が、傾動用ラック52の対応する歯形部分とそれぞれ噛合う。そして、移動用軸46の回転による遮蔽体30のさらなる横方向移動に伴って、上フレーム10に固定の傾動用ラック52の各歯形部分に対して、噛合う傾動用歯車51が遮蔽体30と共に横移動しながら回転する。この傾動用歯車51の回転で、これと一体の軸部33の外軸36や枠部31といった遮蔽体要部も回転し、遮蔽体30が上下フレーム10、20に対し傾動する状態となる。
【0087】
この傾動の際、遮蔽体30の傾動角度に応じて、遮蔽体30間の開放部分が狭まり、窓側から直接入射する光と遮蔽体30の紙シート32を通過した光との割合が変化する。
【0088】
全ての遮蔽体30が上フレーム10と略平行をなすか、隣合う遮蔽体30と接する向きまで傾動して、それ以上傾動しない状態に至ったら、使用者はチェーン49の操作を止め、移動用軸46の回転を停止させる。移動用軸46の回転停止に伴い、遮蔽体30の横方向移動が停止すると共に、遮蔽体30の傾動も停止する。この時、全遮蔽体で領域60を閉塞した状態(図14参照)となっており、遮蔽体30で窓72が覆われ、窓72からの入射光は、遮蔽体30の紙シート32を通じてのみ部屋に達する。
【0089】
続いて、上記と逆に、上下フレーム間の領域60全体に均等に配置した遮蔽体30で窓72を覆って、窓72からの入射光が遮蔽体を通じてのみ部屋に達する状況(図14参照)から、遮蔽体30を集合配置状態とし、上下フレーム間の領域60の略全域を開放して窓72から光が直接部屋に達する状況(図13参照)まで変化させる、遮蔽体30の開放動作の場合を説明する。
【0090】
遮蔽体で領域60を閉塞した状態から、遮蔽体移動機構40のチェーン49を使用者が操作してスプロケット42を動かし、上記の場合とは逆に、移動用軸46をその外周の溝の螺旋が右側の軸端部から左側の軸端部へ進行するようになる向きへ回転させると、回転により動く大径部48外周の螺旋状の溝46bによる案内で、この溝46bに係合する遮蔽体30の軸部33上端部が横方向に向う力を受け、遮蔽体全体が上下のフレーム10、20に対し、移動用軸46の回転数と大径部48の溝ピッチに応じた速さで、領域60の右側から左側へ向う横方向への移動を開始する。
【0091】
この遮蔽体30の横方向移動と同時に、傾動用ラック52の歯形部分と噛合う傾動用歯車51が、固定状態の傾動用ラック52に対し、遮蔽体30と共に移動しながら回転する。この傾動用歯車51の回転で、これと一体の軸部33の外軸36や枠部31といった遮蔽体要部も回転し、遮蔽体30が上下フレーム10、20に対し上記と逆方向、すなわち遮蔽体間に開放部分を生じさせ、且つこの開放部分を広げる向きに傾動する状態となる。
【0092】
この傾動の際、遮蔽体30の傾動角度に応じて、遮蔽体30間の開放部分が広がり、前記同様に、窓側から直接入射する光と遮蔽体30の紙シート32を通過した光との割合が変化する。
【0093】
全ての遮蔽体30が、遮蔽体短辺部分が上下フレームと直交する向きとなるまで傾動して、遮蔽体30の傾動用歯車51と傾動用ラック52の歯形部分との噛合いが解除されると、移動用軸46の回転による遮蔽体30のさらなる横方向移動に伴って、分散配置状態にあった各遮蔽体30のうち、最も領域60の左側端部寄りの遮蔽体30以外の各遮蔽体が、移動用軸46の溝との係合位置を、大径部48の溝46bから小径部47の溝46aに変えながら、遮蔽体同士の間隔を狭めていく。
【0094】
すなわち、大径部48から小径部47側に移行した遮蔽体30は、移動用軸46の回転数と小径部47の溝ピッチに応じた速度で横方向に移動する。この小径部47の溝46aに係合する遮蔽体と、大径部48の溝46bに係合する遮蔽体とは、横方向への移動速度が異なることから、小径部47側の遮蔽体と大径部48側の遮蔽体との間隔は移動につれて狭まることとなる。
【0095】
そして、この間隔が集合配置状態での遮蔽体同士の間隔に達すると、次に左側端部に近い遮蔽体30が、移動用軸46の溝との係合位置を、大径部48の溝46bから小径部47の溝46aに変えて、より遅い速度での横方向移動状態に移行することとなる。これが順次繰返されて、小径部47側に全ての遮蔽体30が移行すると、遮蔽体30は、隣合う他の遮蔽体との間にその厚さより小さいわずかな隙間を生じさせつつ並列した集合配置状態となる。
【0096】
この集合配置状態で領域60の左側端部に寄った遮蔽体30のうち、最も領域端部寄りの遮蔽体が、移動用軸46との関係でそれ以上横方向に移動させられない位置まで達したら、使用者はチェーン49の操作を止め、移動用軸46の回転を停止させる。移動用軸46の回転の停止に伴い、遮蔽体30の横方向移動が停止する。この時、上下フレーム間の領域60のうち、左側端部以外のほとんどの部分は遮蔽体30の存在しない全開状態(図13参照)となり、あらためて窓72から光が直接部屋に達する状況にある。
【0097】
このように、本実施形態に係る遮蔽体開閉装置は、遮蔽体30を上フレーム10及び下フレーム20に対し横方向へ移動可能且つ傾動可能として複数配設し、移動用軸46の連続する螺旋状溝を遮蔽体30の上端部分と係合させ、移動用軸46の回動で、上下フレーム間の領域60における左側端部とそれ以外の部分での移動の進行度合を異ならせつつ、遮蔽体30を横方向へ移動させ、さらに傾動用歯車51と傾動用ラック52との噛合いに基づいて、遮蔽体30を傾動させることから、前記第1の実施形態同様、移動用軸46の回動のみで、遮蔽体30の集合配置状態と分散配置状態との間で、各遮蔽体30を速やかに移動させられると共に、傾動用歯車51を回動させて遮蔽体30を傾動させることができ、遮蔽体30の移動と傾動の機構を組合わせて機構全体の簡略化が図れる。これに加えて、遮蔽体移動機構40をなす移動用軸46の螺旋状溝を軸全体で連続したものとして、各遮蔽体30の移動方向や傾動の向きをそれぞれの動作状態で一様にすることで、遮蔽体移動機構40と遮蔽体傾動機構50の各部構造をさらに簡略で信頼性の高いものとすることができる。
【0098】
なお、前記第1及び第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置においては、遮蔽体30を上フレーム10と下フレーム20の両方で上下から支持する構成としているが、これに限らず、上フレームが十分な強度を有する場合、上フレームのみで遮蔽体を支持する構成とすることもでき、上フレーム下方の床面等の構造を変更せずに済み、装置をより容易に導入可能となる。
【0099】
また、前記第1及び第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置においては、装置を窓71、72近傍に設けて、必要に応じて遮蔽体30で窓71、72を遮蔽し、窓側からの光を遮る、一種のブラインドのような用途に用いる構成としているが、これに限らず、部屋等の空間内部に配設して、空間を分ける間仕切りとして用いる構成とすることもでき、間仕切りとして使用しない場合は、遮蔽体を端に寄せた集合配置状態として装置中央を開放状態とすれば、人の通行にも容易且つ速やかに対応でき、使い勝手の面でも優れる。こうした間仕切りとして用いる場合、天井に上フレーム、床に下フレームを設け、その間に遮蔽体を配置して、部屋の上下方向全体にわたって仕切る構成とする他、上下左右の各辺を有し、中央を開口部とされる方形状又は矩形状の枠体を、部屋に収る所定の大きさで形成し、この枠体の上辺部と下辺部をそれぞれ上フレームと下フレームとして用い、枠体の開口部に遮蔽体を設ける構成とすることもでき、天井より低い高さの間仕切りとしても問題なく使用することができる。
【0100】
また、前記第1及び第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置においては、遮蔽体傾動機構50における傾動用歯車51を遮蔽体30と共に横方向に移動させ、固定状態の傾動用ラック52の歯形部分と噛合わせ、さらなる遮蔽体30の横方向への移動に伴う傾動用歯車51の移動で、傾動用歯車51を噛合いに基づく回動状態として、一体の遮蔽体30を傾動させる構成としているが、これに限らず、傾動用歯車側を横方向へ移動させる代わりに、遮蔽体が分散配置状態に至ったら移動用軸による横方向の移動を停止した上で、傾動用ラックを横方向に動かして各歯形部分を傾動用歯車と噛合させ、さらに傾動用ラックを横方向に動かすことで傾動用歯車を回転させて、遮蔽体を傾動させる構成とすることもでき、遮蔽体の傾動の際に、横方向については遮蔽体の移動を伴わず停止させた状態で傾動させられ、遮蔽体の傾動動作をより安定した状態で実行でき、傾動動作の信頼性を向上させられる。
【0101】
また、前記第1及び第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置においては、遮蔽体30の下部を下フレーム20上で摺動可能に支持する構成としているが、これに限らず、遮蔽体の下部における下フレーム近傍部分に、ボールやローラ等の転動体を設けて下フレームに当接させ、遮蔽体下部を下フレームに対し転動可能な構成とすることもでき、遮蔽体下部を下フレームに対しスムーズに横方向移動可能とすることで、遮蔽体全体を移動に関わりなく、上下フレームに対し直交して起立した状態で安定的に支持することができる。
【0102】
また、前記第1及び第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置において、遮蔽体30は、枠部31の開口部を塞ぐように紙シート32を配設した障子構造として、一部の光を紙シート32を介し透過させる構成としているが、これに限らず、用途によっては、遮蔽体を完全に光を通さない遮光構造とすることもでき、遮蔽体で上下フレーム間の領域を閉塞した状態では、光の通過を確実に阻止して、光が当らない状況を確保することができる。
【0103】
さらに、前記第1及び第2の実施形態に係る遮蔽体開閉装置においては、チェーン49とスプロケット42を用い、チェーン49からスプロケット42を介して回動力を無理なく移動用軸41、46に伝えられる構成としているが、この他、滑り無く力を移動用軸に伝えられるものであれば、移動用軸と一体のプーリに対し人の操作可能な紐やワイヤを巻き掛けて駆動部とする構成とすることもできる。また、こうしたチェーン等を人の手で操作して移動用軸41、46を回動させる、手動開閉式の構成に限られるものではなく、駆動部として、移動用軸に回動の駆動力を与える電動機等の駆動源とその制御装置とを用い、自動的に開閉を行う構成とすることもでき、開閉が人の力を伴わずにスムーズに実行されることとなり、使い勝手がより優れたものとなる。この場合、使用者のスイッチ操作に基づいて移動用軸を回動させる他、遮蔽体が横方向の移動可能範囲の終端に達した場合や、移動又は傾動する遮蔽体間に異物が挟まった場合など、移動用軸がそれ以上回動できないことで駆動トルクが上昇するなどの事象を検出して、異常状態に至る前に移動用軸の回動を自動停止させる制御を行う、といった機能を付加することもできる。
【符号の説明】
【0104】
1、2 遮蔽体開閉装置
10 上フレーム
11 同調用上ラック
12 蓋部
15 同調用上歯車
20 下フレーム
21 同調用下ラック
22 溝部
25 同調用下歯車
30 遮蔽体
31 枠部
32 紙シート
33 軸部
34 摺動片
35 回転規制ばね
36 内軸
37 外軸
40 遮蔽体移動機構
41、46 移動用軸
41a、41d 溝
41b、41c 溝
42 スプロケット
43、47 小径部
44、48 大径部
46a、46b 溝
49 チェーン
50 遮蔽体傾動機構
51 傾動用歯車
52 傾動用ラック
52a 歯形部分
60 領域
70 壁面
71、72 窓
80 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延伸配設される上フレームと、
遮光性又は一部透光性を有する矩形の略板状体で形成され、長辺方向端部に軸部を有し、長辺方向を上フレームと直交する向きとされつつ前記軸部を介して前記上フレームに横方向へ移動可能に支持されると共に、前記軸部を中心に所定角度範囲で傾動可能とされる複数の遮蔽体と、
当該遮蔽体を上フレームに対し横方向に移動させ、各遮蔽体を近接させて上フレーム下側の領域における左右の領域端部のいずれか一方又は両方に寄せて配置した集合配置状態、及び、各遮蔽体を上フレーム下側の領域で横方向へ所定間隔を空けてそれぞれ配置した分散配置状態、のいずれかに切替える遮蔽体移動機構と、
遮蔽体の前記分散配置状態で、各遮蔽体を、遮蔽体短辺方向が上フレームと略直交する向きから上フレームと略平行をなす向きまでの角度範囲で傾動させる、遮蔽体傾動機構とを備え、
前記遮蔽体移動機構が、軸方向を上フレームと平行をなす向きとして各遮蔽体の上側に回動自在に支持される移動用軸と、当該移動用軸を回動させる駆動部とを有し、
前記移動用軸が、遮蔽体を横方向に移動させる範囲で、螺旋状に連続する一又は複数の溝を、外周に穿設され、
前記移動用軸の溝における螺旋のピッチが、前記遮蔽体の集合配置状態で領域端部に寄せた複数の遮蔽体の存在する範囲に相当する、移動用軸の軸端部所定寸法部分では、集合配置状態での遮蔽体同士の配置間隔を所定の自然数で割った大きさに対応するピッチとされ、且つ、移動用軸の前記軸端部所定寸法部分を除く他部分では、遮蔽体の分散配置状態での前記所定間隔を前記所定の自然数で割った大きさに対応するピッチとされてなり、
前記遮蔽体が、軸部の上端部分を前記遮蔽体移動機構の移動用軸における溝と係合させた状態で上フレームに支持され、軸部の上端部分と溝との係合を維持しつつ、移動用軸の回動に伴って上フレームに対し横方向へ移動することを
特徴とする遮蔽体開閉装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の遮蔽体開閉装置において、
前記遮蔽体傾動機構が、前記遮蔽体の軸部で、遮蔽体と一体に取付けられる傾動用歯車と、上フレームと平行に配設され、各遮蔽体における傾動用歯車と噛合する傾動用ラックとを有してなり、
前記傾動用歯車が、前記集合配置状態で寄せられた左又は右の領域端部で、領域中央により近い位置にある遮蔽体に取付けられるものほど、歯車外形を小さく形成され、
前記傾動用ラックが、前記分散配置状態での各遮蔽体位置ごとに歯形部分を分けて配置されると共に、各歯形部分に対応する遮蔽体の、集合配置状態から分散配置状態に至るまでの横方向移動量が大きいほど、対応する歯形部分の遮蔽体軸部側への突出量を大きくして形成されることを
特徴とする遮蔽体開閉装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の遮蔽体開閉装置において、
前記上フレームの下方に上フレームと平行に配設される下フレームを備え、
前記遮蔽体の下端部が、前記下フレームに対し摺動又は転動して横方向に移動可能とされつつ下フレームで支持されることを
特徴とする遮蔽体開閉装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載の遮蔽体開閉装置において、
前記遮蔽体の上下端部で、それぞれ遮蔽体の軸部と中心を一致させつつ遮蔽体に対し回動可能に取付けられ、上下で互いに同調して回動可能とされる二つの同調用歯車と、
上フレームに沿って固定配設され、各遮蔽体における上側の同調用歯車と噛合する同調用上ラックと、
下フレームに沿って固定配設され、各遮蔽体における下側の同調用歯車と噛合する同調用下ラックとを備えることを
特徴とする遮蔽体開閉装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の遮蔽体開閉装置において、
前記遮蔽体移動機構の移動用軸が、前記軸端部所定寸法部分を、所定軸径の小径部とされる一方、前記軸端部所定寸法部分を除く他部分を、前記小径部より軸径の大きい大径部とされ、
前記移動用軸の溝が、少なくとも軸中心に対する溝底位置を、前記小径部と大径部で同じ位置として穿設されると共に、軸外周部における溝幅を小径部より大径部で大きくされてなり、
前記遮蔽体の軸部上端部が、移動用軸における小径部と大径部の溝に係合する先端部分に対し、より下側の、大径部の溝のみに係合する部分を、大径部の溝幅に対応させて、より太く形成されることを
特徴とする遮蔽体開閉装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載の遮蔽体開閉装置において、
前記遮蔽体が、上下左右の各辺を有して中央を開口部とされる矩形状の枠部と、当該枠部の開口部を塞ぐ透光性の紙シートとからなる障子構造を有し、前記軸部が、枠部における長辺となる左右の辺のいずれか一方の側に位置することを
特徴とする遮蔽体開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−241388(P2012−241388A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111402(P2011−111402)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(303022330)株式会社イシモク (1)