説明

選ばれた重合禁止剤を使用してビニル芳香族モノマーを安定化する方法

【課題】 ビニル芳香族モノマーの改良された安定化方法を提供する。
【解決方法】 ビニル芳香族モノマーが重合するのを防止するのに十分な濃度で7−アリール−キノンメチドが存在しているビニル芳香族モノマーと7−アリール−キノンメチドの混合物を加熱し、ビニル芳香族モノマーと7−アリール−キノンメチドを分離して塔頂ビニル芳香族モノマー留出物と塔底物質を生成させ、そしてビニル芳香族モノマーが重合するのを防止するのに十分な濃度で4−tert−ブチルカテコールを留出物に導入し、その際4−tert−ブチルカテコールが本質的に塔底物質中に入らないように4−tert−ブチルカテコールを留出物中に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は選ばれた重合禁止剤を使用してビニル芳香族モノマーを安定化する方法及びそれにより製造されたポリマーに関する。本発明は特にスチレンモノマーを安定化する方法及びそれにより製造されたポリスチレンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
モノマースチレン、α−メチルスチレン等の如きビニル芳香族化合物は容易に重合すること及びこのような重合の速度は温度の増加と共に増加することは周知である。これらの及び他のビニル芳香族化合物の現代の製造方法は、分離及び精製プロセスを含む。このような分離及び精製はしばしば蒸留により達成される。
【0003】
種々のタイプの重合禁止剤がビニル芳香族化合物の製造及び貯蔵期間中の重合を防止するのに使用されてきた。例えば、Watson等への特許文献1は、ビニル芳香族化合物の重合を禁止するための有用な禁止剤が4−tert−ブチルカテコール(TBC)、フェノチアジン及び2,6−ジニトロ−p−クレゾールを包含することを開示している。特にTBCは、早すぎる重合を防止するのに良好な有効性を有しそして廃棄物処理において特別な注意を必要とすることがある窒素及び/又はハロゲン化物を含んでいない貯蔵用途のための好ましい重合禁止剤である。ビニル芳香族モノマーの重合を防止するためのこのような重合禁止剤の使用はしはしば安定化と言われ、そして存在する有効量の重合禁止剤を有するモノマーは安定化されていると言われる。
【0004】
ある重合禁止剤は酸素の不存在下によく働く。2,6−ジニトロ−p−クレゾールは酸素のないプロセスにおいてビニル芳香族モノマー中の重合禁止剤としてよく働く。他のものは働かない。ビニル芳香族モノマーの製造における重合禁止剤として有用な他の種類の化合物はフェニレンジアミン類である。フェニレンジアミン及びTBCの如きある種の重合禁止剤はビニル芳香族モノマーの重合を禁止するのに酸素の存在を必要とする。
【0005】
7−置換されたキノンメチドとして記載されたもっと最近の種類の禁止剤はNesvadba等への特許文献2及びArhancet等への特許文献3に開示されている。Nesvadbaにおいては、これらの重合禁止剤は前記したメチド類よりも活性であることが開示されている。Arhancetにおいては、7−置換されたキノンメチド類は、N,N−ビス(ヒドロキシプロピル)ヒドロキシルアミンと組み合わせて使用されるとき特に有用であると開示されている。
【0006】
一般にこのような重合禁止剤、特にTBCの使用は、問題がない訳ではない。例えば、多くの用途について、TBCはビニル芳香族モノマーの重合の前に除去されなければならない。ビニル芳香族モノマーからTBCを除去するための1つの方法はアルミナを通すろ過である。ビニル芳香族モノマーからTBCを除去するための他の方法は、ビニル芳香族モノマーを水性水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで洗浄することにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,466,904号
【特許文献2】米国特許第5,750,765号
【特許文献3】米国特許第6,024,894号
【特許文献4】米国特許第4,032,547号
【特許文献5】米国特許第6.348,598号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの観点においては、本発明はビニル芳香族モノマーを製造する方法である。この方法は、ビニル芳香族モノマーが重合するのを防止するのに十分な濃度で7−アリール−キノンメチドが存在しているビニル芳香族モノマーと7−アリール−キノンメチドの混合物を加熱し、ビニル芳香族モノマーと7−アリール−キノンメチドを分離して塔頂ビニル芳香族モノマー留出物(overhead vinyl aromatic monomer distilate)と塔底物質(bottoms material)を生成させ、そしてビニル芳香族モノマーが重合するのを防止するのに十分な濃度で4−tert−ブチルカテコールを該留出物に導入し、その際4−tert−ブチルカテコールが本質的に該塔底物質中に入らないように4−tert−ブチルカテコールを該留出物中に導入することを含む。
【0009】
他の観点では、本発明は、重合禁止剤として7−アリール−キノンメチドを使用してビニル芳香族モノマーを製造する方法においてビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物を再処理する(reworking)方法である。この方法は、ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物が7−アリール−キノンメチドを使用して安定化されたビニル芳香族モノマーと接触する前に、ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物から4−tert−ブチルカテコールの実質的にすべてを除去することを含む。
【0010】
本発明の他の観点は、ビニル芳香族モノマー中の選ばれた重合禁止剤をその場で不活性化する方法である。この方法は、(A)ビニル芳香族モノマーと、4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる重合禁止剤との混合物及び(B)4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる化合物を混合することを含み、その際(A)の重合禁止剤は(B)の化合物と同じではなく、そして(A)の重合禁止剤と(B)の化合物との比はビニル芳香族モノマーの重合が実質的に禁止されないような比である。
【0011】
更に他の観点では、本発明はビニル芳香族モノマーを製造する方法である。この方法は、7−アリール−キノンメチド重合禁止剤及び4−tert−ブチルカテコール重合禁止剤の存在下にビニル芳香族モノマーを加熱することを含み、そして更に、ビニル芳香族モノマーの重合を防止するのに有効な量で存在しておりそしてヒドロキシルアミンではない少なくとも1種の他の重合禁止剤を使用することも含む。
【0012】
本発明の他の観点は、安定化されていないビニル芳香族モノマー、4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドを含む配合物から製造されたビニル芳香族ポリマーである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つの観点では、本発明は、ビニル芳香族モノマーを製造する方法における工程の改良であって、ビニル芳香族モノマーの重合を禁止するのに有効な量の7−アリール−キノンメチドを該方法において使用する工程改良である。本発明の目的には、7−アリール−キノンメチドは一般式
【0014】
【化1】

【0015】
式中、R1及びR2は独立にH、C4〜C18アルキル、C5〜C12シクロアルキル又はC7〜C15フェニルアルキルである、
を有するこれらの化合物として定義される。好ましくは、R1及びR2はtert−ブチル、tert−アミル、tert−オクチル、シクロヘキシル、α−メチルベンジル又はα,α−ジメチルベンジルである。R3は好ましくはアリール、又はC1〜C6アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、カルボキシもしくはそれらの混合物で置換されたアリールである。これらの化合物を製造するための方法は特許文献4に見いだされうる。この特許は引用により本明細書に組み込まれる。最も好ましくは、7−アリール−キノンメチドは2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンである。
【0016】
本発明の重要な観点は、2つの重合禁止剤、7−アリール−キノンメチドとTBCは、組み合わせて使用されるとき、各々が別々に使用される場合と同じ程度には重合を禁止しないということの発見である。換言すれば、これらの2つの化合物を一緒に使用すると、それらはビニル芳香族モノマーにおける重合をかなりの程度お互いに禁止できなくすることができるという現象が観察された。
【0017】
ビニル芳香族モノマーを製造する方法において、該方法で重合禁止剤を使用して製造されたままにモノマーを安定化することは通常よく行われている。この方法の或る決定的に重要な部分においては、モノマー、汚染物及び重合禁止剤を含んでなる中間物質を加熱して比較的低い沸点のモノマーを蒸留して、主としてモノマーである留出物と、モノマー、重合したモノマー及び副生汚染物を含む塔底物質を生成させる。この方法においてこの点で、典型的には蒸留装置における或る場所で、モノマー留出物にTBCを加えてポリマーの生成を防止することは一般的である。
【0018】
比較的少量のTBCが重合禁止するのに無駄な比較的多量の7−アリール−キノンメチドを減少させることができる。ビニル芳香族モノマー製造方法が該方法の禁止剤として7−アリール−キノンメチドを使用しておりそしてTBCのいくらかが該方法に再び入りそして塔底物質中に集まることを許容するような位置でTBCがその方法の蒸留装置に加えられるならば、塔底物質は重合を開始し、そして急速に粘度が増加することができる。これらの塔底物質はしばしば燃焼させることにより通常捨てられる。これらの塔底物質が凝固点まで又はそれが容易にポンプで送ることができなくなるかもしくは捨てるために除去することができなくなる丁度その点まで粘度が増加すると、プロセス中断又は装置の運転停止が起こり得る。このような問題による製造設備の予想外の運転停止のコストは、洗浄コスト及び製品損失において1,000,000.00ドルを容易に越えることがある。
【0019】
7−アリール−キノンメチドとTBCとの望まれない相互作用による費用のかかる運転停止を回避することはビニル芳香族モノマーを製造する技術分野において望ましいであろう。それ故、1つの観点では、本発明は、加熱されたビニル芳香族モノマーが重合するの
を防止するのに有効な量で7−アリール−キノンメチドを本方法において使用し、そしてビニル芳香族モノマー留出物の重合を防止するのに有効な量でTBCをビニル芳香族モノマー留出物に加える、ビニル芳香族モノマーを製造するための方法におけるプロセス改良であって、ビニル芳香族モノマーが7−アリール−キノンメチドにより安定化されるいかなる点においてもTBCが該プロセスに入るのを防止することを含んでなる改良である。本発明の方法の加熱工程及び蒸留工程は本方法の同じ部分又は異なる部分において起こりうることに留意されたい。
【0020】
ビニル芳香族モノマーを製造する方法が蒸留塔を含む本発明の1つの態様では、TBCはビニル芳香族モノマー溜出物が蒸留塔を出るまでビニル芳香族モノマー溜出物に加えられないであろう。この態様の利点は、TBCを本方法の残りから実質的に排除することができるということであるが、本方法においてこの点までTBCを加えるのを遅らせることは過剰のポリマー生成をもたらすことがある。
【0021】
ビニル芳香族モノマーを製造するための方法が蒸留塔を含む本発明の他の態様においては、TBCは塔内で加えられるが、しかしTBCのすべてが実質的に蒸留塔塔底に到達するのを防止する別の再循環システムから下流で加えられる。この態様の利点はより低いポリマー生成である。何故ならば、モノマーは重合禁止剤と混合されない時間をより少なく費やすからである。このようなシステムの欠点は投資コストがより大きいことであろう。
【0022】
TBCが実質的に蒸留塔塔底に入らないようにTBCをビニル芳香族溜出物に導入する本発明の方法では、蒸留塔塔底中のTBC濃度は10ppm未満、好ましくは5ppm未満、最も好ましくは1ppm未満である。望ましくない量のポリマー生成の前にしかもTBCを蒸留塔塔底に入らせることもなく有効量のTBCを芳香族モノマー溜出物に加えるためのビニル芳香族モノマーを製造する当業者に有用であることが知られているいかなる方法も本発明の方法と共に使用することができる。
【0023】
TBCは貯蔵されるべきビニル芳香族モノマーと共に使用するための好ましい重合禁止剤である。ときには、貯蔵中のビニル芳香族モノマーは規格(specification)を満足しないか又はある他の理由で販売される状態にないであろう。このような規格はずれの材料を「再処理する」(“rework”)ことはビニル芳香族モノマーを製造する分野においては一般的である。本発明の目的には、物質を再処理することは、物質が精製されるかさもなければ所望の規格に戻されるように、製造工程にそれを再循環することを意味する。明らかに、重合禁止剤として7−アリール−キノンメチドを使用する方法にTBC重合禁止剤を含む物質を再処理することは望ましくないことがある。それ故、本発明の他の観点は、ビニル芳香族モノマーが重合するのを防止するための有効量において7−アリール−キノンメチドが使用される方法において有効量のTBCを使用して安定化されたビニル芳香族モノマーを再処理する方法において、再処理されるべきビニル芳香族モノマーが7−アリール−キノンメチドを使用して安定化されたビニル芳香族モノマーと接触する前に、TBCを再処理されるべきビニル芳香族モノマーから除去することを含む改良である。
【0024】
このようなビニル芳香族モノマーを製造する当業者に知られたビニル芳香族モノマーからTBCを除去するのに有用ないかなる方法も本発明と共に使用することができる。例えば、水性塩基による洗浄を、アルミナを通すろ過を使用することができると同じく使用することができる。
【0025】
TBCと7−アリール−キノンメチドとの望ましくない相互作用によりビニル芳香族モノマー製造プラントの運転停止を回避するのに使用すことができる他の方法は、塔底物質の急速な重合を防止するのに有効な量で追加の禁止剤が蒸留塔塔底中に存在するような濃
度で少なくとも1種の追加の重合禁止剤を該方法において使用することである。このような解決法は、運転停止を引き起こすことがある塔底物の粘度の急速な増加及びモノー中のポリマー生成を防止するであろうが、しかし7−アリール−キノンメチドを単独で使用することの利点の少なくともいくらかを犠牲にすることも要求するであろう。
【0026】
好ましい7−アリール−キノンメチド中の窒素及びハロゲンの如きヘテロ原子の不存在又は低い存在は塔底物質の廃棄の点から望ましいことがありえよう。特に望まれる廃棄の方法が燃料として燃やすことである場合には、NOx等の如き化合物の排出を減少させる必要はこのような廃棄実施コストを著しく増加させることがある。低窒素及びハロゲン又は窒素及びハロゲン不含有重合禁止剤の使用はこれらのコストを減少させるか又はなくする。
【0027】
本発明の方法で使用することができる追加の重合禁止剤は、フェノチアジン、2,6−ジニトロ−p−クレゾール、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノール及び他のフェノール類及びポリヒドロキシ芳香族化合物、例えば、ヒドロキノン及びヒドロキノンモノメチルエーテル;芳香族アミン、例えば、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン及びN,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミンを包含する。例えば特許文献5に開示されているN−オキシル化合物の如きN−オキシル化合物も有用である。この特許は引用により本明細書に組み込まれる。本明細書で別に述べられたとおり以外に、ビニル芳香族モノマーと共に使用するための重合禁止剤として適当ないかなる組成物も本発明の方法と共に使用することができる。
【0028】
本発明はいかなるビニル芳香族モノマーの製造及び貯蔵においても使用することができることを意図する。このようなモノマーの例はモノマースチレン及びα−メチルスチレンである。本発明は特にスチレンの製造及び貯蔵を指向する。
【0029】
本発明の他の態様は、(A)ビニル芳香族モノマーと、TBC及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる重合禁止剤との混合物、及び(B)TBC及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる化合物を混合することを含んでなり、その際(A)の重合禁止剤は(B)の化合物と同じではない、ビニル芳香族モノマー中の選ばれた重合禁止剤をその場で不活性化する方法である。重合の前に、ビニル芳香族モノマーから重合禁止剤を除去することがしばしば望ましい。上記した先行技術の方法、即ち、蒸留、苛性洗浄及びろ過を使用するよりはむしろ、1つの重合禁止剤の効果を有効量の他の重合禁止剤の添加により打ち消すことができる。換言すれば、モノマーがTBCで安定化されるならば、7−アリール−キノンメチドの添加はTBCの安定化効果に打ち勝つのに使用することができる。
【0030】
TBC及び7−アリール−キノンメチドの内、TBCは7−アリール−キノンメチドのビニル芳香族モノマーの重合を禁止する能力を無効にすることにおいて重量でより有効である。例えば、TBC15〜30ppm及び7−アリール−キノンメチド100ppmを含むスチレンモノマーは、重合禁止剤が存在しない同じモノマーとほぼ同じ速度でポリマーを生成するであろう。重合安定化に対するTBCの有効性は周知でありそして7−アリール−キノンメチドは例えば、2,6−ジニトロ−p−クレゾールとほぼ同じ効果がある。2つの物質のビニル芳香族モノマーを安定化する能力を実質的に除去するのに必要な7−アリール−キノンメチド対TBCの割合は約3:1〜約40:1、好ましくは約4:1〜25:1、最も好ましくは約5:1〜6:1である。
【0031】
他の態様では、本発明は、7−アリール−キノンメチド重合禁止剤と4−tert−ブチルカテコール重合禁止剤の存在下ビニル芳香族モノマーを加熱することを含んでなり、
そして更にビニル芳香族モノマーの重合を抑制するのに有効な量で存在しておりそしてヒドロキシルアミンではない少なくとも1種の他の重合禁止剤を使用することも含んでなる、ビニル芳香族モノマーを製造する方法である。本発明の重合禁止剤の組み合わせから排除されたヒドロキシルアミンは一般式
【0032】
【化2】

【0033】
式中、R1及びR2は同一であるか又は相異なりそして水素、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル又はヒドロキシアルキル基であり、そして好ましくは約3〜約20個の炭素原子を有する、
を有する。7−アリール−キノンメチドと他の重合禁止剤とのいかなる他の組み合わせも本発明の範囲内にあることを意図する。重合禁止剤は、ビニル芳香族モノマー又はポリマーを製造する当業者にこのような物質を混合するのに有用であることが知られているいかなる方法も使用して安定化されたモノマーと混合することができる。
【0034】
本発明の他の態様は、安定化されていないビニル芳香族モノマー、TBC及び7−アリール−キノンメチドを含む配合物から製造されたビニル芳香族ポリマーである。好ましくは、TBCは約10〜約30ppmのポリマー中の濃度で存在する。やはり好ましくは、7−アリール−キノンメチドは既に開示された割合の範囲内でそしてTBCを重合を禁止するのに有効ならしめるのに十分な量で又は約30ppm〜約240ppmの濃度で存在する。
【実施例】
【0035】
下記の実施例は本発明を説明するために与えられる。これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、それらはそのように解釈されるべきではない。量は特記しない限り重量部又は重量百分率で示される。
【0036】
実施例1
酸素の不存在下に約122℃の温度で2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノン100重量ppmをスチレンモノマーと混合することにより、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクヘキサロ−2,5−ジエノンの有効性のフラスコ試験を行う。90分の後、スチレンモノマーのサンプルをメタノール沈殿を使用してポリマー含有率について試験する。ポリマー含有率は2.5%であることが決定される。
【0037】
実施例2
2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンとスチレンモノマーの混合物が15ppmの4−tert−ブチルカテコールを更に含むことを除いては、実施例1を繰り返しそして実質的に同じく試験した。ポリマー含有率は10%であることが決定される。
【0038】
実施例3
100ppmのフェニレンジアミンを更にモノマーと混合することを除いては、実施例1を繰り返しそして実質的に同じく試験をする。酸素の欠如はフェニレンジアミンが重合
禁止剤として作用するのを防止することに留意されたい。ポリマー含有率は2%であることが決定される。
【0039】
実施例4
100ppmのフェニレンジアミン及び100ppmの2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノールと混合される15ppmの4−tert−ブチルカテコールを含有するスチレンモノマーを使用してフラスコ試験を行う。モノマー混合物を酸素の不存在下に2時間122℃で加熱する。混合物のサンプルを採取しそしてポリマー含有率について分析する。酸素の欠如はフェニレンジアミンが重合禁止剤として作用するのを防止することに留意されたい。ポリマー含有率は2%であることが決定される。
【0040】
実施例5
フラスコ試験を行いそして2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノールの代わりに2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノン使用することを除いては実施例4と実質的に同じくして試験する。ポリマー含有率は約6%であることが決定される。
【0041】
実施例6
フラスコ試験を行いそして重合禁止剤を使用しないことを除いては実施例4と実質的に同じく試験する。ポリマー含有率は約13%であることが決定される。
【0042】
実施例1は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンで禁止されたモノマー中のポリマー生成の程度を示す。実施例2は、同じモノマーへの4−tert−ブチルカテコールの添加はポリマー生成を増加させることを示す。実施例3は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンで禁止されたモノマーにフェニレンジアミンを加えることは重合禁止剤として作用するためにフェニレンジアミンにより必要とされる酸素の不存在下においてすらポリマー生成の増加を引き起こさないことを示す。実施例4は両方とも重合禁止剤として作用するのに酸素を必要とする4−tert−ブチルカテコール及びフェニレンジアミンの両方を2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノールに加えることの効果がポリマー生成を増加させないことを示す。実施例5は、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノールの代わりに2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンを使用して実施例4を繰り返すことはポリマー生成を増加させることを示す。実施例6は禁止されていなシステムのポリマー生成の程度を示す。
【0043】
本発明の主なる特徴及び態様は以下のとおりである。
【0044】
1.ビニル芳香族モノマーが重合するのを防止するのに十分な濃度で7−アリール−キノンメチドが存在しているビニル芳香族モノマーと7−アリール−キノンメチドの混合物を加熱し、ビニル芳香族モノマーと7−アリール−キノンメチドを分離して塔頂ビニル芳香族モノマー留出物と塔底物質を生成させ、そしてビニル芳香族モノマーが重合するのを防止するのに十分な濃度で4−tert−ブチルカテコールを留出物に導入し、その際4−tert−ブチルカテコールが本質的に塔底物質中に入らないように4−tert−ブチルカテコールを留出物に導入する、ことを含んでなるビニル芳香族モノマーを製造する方法。
【0045】
2.ビニル芳香族モノマーがスチレンである上記1に記載の方法。
【0046】
3.7−アリール−キノンメチドが2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンである上記2に記載の方法。
【0047】
4.スチレンモノマー溜出物及び蒸留塔塔底物を生成する蒸留塔を使用する蒸留により分離を行う上記3に記載の方法。
【0048】
5.ビニル芳香族モノマー溜出物が蒸留塔を出た後の点で4−tert−ブチルカテコールをビニル芳香族モノマー溜出物中に導入する上記4に記載の方法。
【0049】
6.蒸留塔が、蒸留塔塔底に戻る物質の実質的にすべてを集める塔再循環システムを有する上記4に記載の方法。
【0050】
7.塔再循環システムから下流の点で4−tert−ブチルカテコールをビニル芳香族モノマー溜出物に導入する上記6に記載の方法。
【0051】
8.蒸留塔塔底物が10ppm未満の4−tert−ブチルカテコール含有率を有する上記4に記載の方法。
【0052】
9.蒸留塔塔底物が1ppm未満の4−tert−ブチルカテコール含有率を有する上記4に記載の方法。
【0053】
10.重合禁止剤として7−アリール−キノンメチドを使用してビニル芳香族モノマーを製造する方法においてビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物を再処理する方法であって、ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物が7−アリール−キノンメチドを使用して安定化されたビニル芳香族モノマーと接触する前に、ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物から4−tert−ブチルカテコールの実質的にすべてを除去することを含んでなる方法。
【0054】
11.ビニル芳香族モノマーがスチレンでありそして7−アリール−キノンメチドが2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンである上記10に記載の方法。
【0055】
12.4−tert−ブチルカテコールの実質的にすべての除去を蒸留、水性塩基による洗浄及びアルミナを通すろ過よりなる群から選ばれる方法により行う上記11に記載の方法。
【0056】
13.上記12の生成物が1ppm未満の4−tert−ブチルカテコール濃度を有する上記12に記載の方法。
【0057】
14.(A)ビニル芳香族モノマーと、4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる重合禁止剤との混合物、及び
(B)4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる化合物を混合することを含んでなり、
その際(A)の重合禁止剤は(B)の化合物と同じではなく、そして(A)の重合禁止剤と(B)の化合物との比はビニル芳香族モノマーの重合が実質的に禁止されないような比である、ビニル芳香族モノマー中の選ばれた重合禁止剤をその場で不活性化する方法。
【0058】
15.ビニル芳香族モノマーがスチレンでありそして7−アリール−キノンメチドが2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンである上記14に記載の方法。
【0059】
16.2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジ
エノン対4−tert−ブチルカテコールの比が約3:1〜約40:1である上記15に記載の方法。
【0060】
17.2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノン対4−tert−ブチルカテコールの比が約4:1〜25:1である上記16に記載の方法。
【0061】
18.2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノン対4−tert−ブチルカテコールの比が約5:1〜6:1である上記17に記載の方法。
【0062】
19.7−アリール−キノンメチド重合禁止剤及び4−tert−ブチルカテコール重合禁止剤の存在下にビニル芳香族モノマーを加熱することを含んでなり、そして更に、ビニル芳香族モノマーの重合を防止するのに有効な量で存在しておりそしてヒドロキシルアミンではない少なくとも1種の他の重合禁止剤を使用することも含んでなる、ビニル芳香族モノマーを製造する方法。
【0063】
20.ビニル芳香族モノマーがスチレンでありそして7−アリール−キノンメチドが2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンである上記19に記載の方法。
【0064】
21.少なくとも1種の他の重合禁止剤がフェノチアジン、2,6−ジニトロ−p−クレゾール、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン及びN,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミンよりなる群から選ばれる上記20に記載の方法。
【0065】
22.安定化されていないビニル芳香族モノマー、4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドを含む配合物から製造されたビニル芳香族ポリマー
【0066】
23.ビニル芳香族ポリマーがポリスチレンでありそして7−アリール−キノンメチドが2,6−ジ−tert−ブチル−4−ベンジリデン−シクロヘキサ−2,5−ジエノンである上記22に記載のビニル芳香族ポリマー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー製造時重合禁止剤として7−アリール−キノンメチドを使用し、モノマー貯蔵時重合禁止剤として4−tert−ブチルカテコールを使用してスチレンとα−メチルスチレンから選択されるビニル芳香族モノマーを製造する方法であって、該ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物と7−アリール−キノンメチドを使用して安定化された該ビニル芳香族モノマーを接触させる該ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物の再処理において、該ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物が7−アリール−キノンメチドを使用して安定化された該ビニル芳香族モノマーと接触する前に、該ビニル芳香族モノマーと4−tert−ブチルカテコールの混合物から4−tert−ブチルカテコールのすべてを除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
モノマー製造時重合禁止剤として7−アリール−キノンメチドを使用し、モノマー貯蔵時重合禁止剤として4−tert−ブチルカテコールを使用してスチレンとα−メチルスチレンから選択されるビニル芳香族モノマーを製造する方法であって、
(A)該ビニル芳香族モノマーと、4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる重合禁止剤との混合物、並びに
(B)4−tert−ブチルカテコール及び7−アリール−キノンメチドよりなる群から選ばれる化合物、を混合することを含んでなり、
その際(A)の重合禁止剤は(B)の化合物と同じではなく、そして(A)の重合禁止剤と(B)の化合物との比は該ビニル芳香族モノマーの重合が禁止されないような比である、
該ビニル芳香族モノマー中の選ばれた重合禁止剤をその場で不活性化することを特徴とする方法。
【請求項3】
モノマー製造時重合禁止剤として7−アリール−キノンメチドを使用し、モノマー貯蔵時重合禁止剤として4−tert−ブチルカテコールを使用してスチレンとα−メチルスチレンから選択されるビニル芳香族モノマーを製造する方法であって、
7−アリール−キノンメチド重合禁止剤及び4−tert−ブチルカテコール重合禁止剤の存在下に該ビニル芳香族モノマーを加熱することを含んでなり、そして更に、該ビニル芳香族モノマーの重合を防止するのに有効な量で存在しておりそしてヒドロキシルアミンではない少なくとも1種の他の重合禁止剤を使用することも含んでなることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−13483(P2010−13483A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240496(P2009−240496)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2003−123487(P2003−123487)の分割
【原出願日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】