説明

選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な熱可塑性材料

選択された昇温速度を有するように設計された、マイクロ波加熱可能熱可塑性組成物を配合する方法。前記方法は、マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、熱可塑性ポリマー組成物、マイクロ波電力、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、前記熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および前記熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することと、前記少なくとも1つを選択することと前記少なくとも2つを選択することとに基づいて、マイクロ波受容性添加剤を熱可塑性ポリマーと混合して、選択された昇温速度を有する前記マイクロ波加熱可能熱可塑性組成物を形成することとを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した実施形態は、一般に、マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物(microwave−heatable thermoplastic compositions)に関する。より具体的には、本明細書に開示した実施形態は、一般に、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能熱可塑性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーペレットは、商品価値のあるパーツを作るために、通常、押出成形または射出成形などの一次加工プロセス(primary conversion process)で溶融し、再造形し、かつ冷却しなければならない。場合により、商品価値のあるパーツを得るためには、さらなる加熱、再造形、および冷却を必要とする熱成形などの二次加工プロセスが必要である。一次プロセスにおいても二次プロセスにおいても、熱エネルギーを熱可塑性材料に加え、再造形を行った後これを次に除去する。
【0003】
熱可塑性ポリマー系のための従来の加熱メカニズムは、多くの場合、接触または放射熱源に基づくものである。一般に赤外線と呼ばれる放射エネルギーは、1〜10マイクロメートルの範囲の波長を有し、吸収材料の約1〜2マイクロメートルの深さまで浸透したときには、利用可能なエネルギーの半分が熱として放散されてしまう。熱伝達のプロセスは、(固体材料の場合は)伝導プロセスを介して、あるいは溶融材料の場合は伝導、対流および機械混合の組合せを介して進行する。同様に、接触加熱は、高温接触表面からの伝導(または伝導、対流および混合の組合せ)に基づいて、材料の「バルク(bulk)」を加熱する。
【0004】
伝導性熱伝達プロセスに付随する伝熱速度(RHT)は、一般に以下の関係式によって記述することができる:RHT=f(A,Ct,デルタT)。式中、Aは熱伝達に利用可能な面積であり、Ctはこの材料の熱拡散率であり、デルタTは利用可能な温度駆動力であり、これは、加熱される材料の温度が上昇するにつれて時間と共に低下する。未変性の熱可塑性材料の熱拡散率Ctは本質的に低い。これにより、通常の放射または接触加熱系における熱伝達は遅くなる。さらに、放射または接触加熱は、望ましくない温度勾配をもたらす恐れがあり、加熱する材料の表皮を過熱させるかこれを焦がす可能性がある。
【0005】
対比すると、マイクロ波の波長は約12.2cmであり、赤外線の波長より長い。マイクロ波は、赤外線または放射エネルギーと比較して、はるかに深く、通常数センチメートルまで吸収材料に浸透した後に、その利用可能なエネルギーが熱として放散される。マイクロ波吸収材料では、マイクロ波エネルギーは、その材料内へのマイクロ波の浸透の結果として、その材料を「体積(volumetrically)」加熱するために利用される。しかし、材料が良好なマイクロ波吸収体でない場合は、この材料は、マイクロ波エネルギーに実質的に「透過性」である。
【0006】
マイクロ波加熱に付随する若干の潜在的問題としては、不均一加熱および熱暴走が挙げられる。不均一加熱は、パーツを通るマイクロ波エネルギーの不均一な分布に起因することが多く、通常の家庭用電子レンジなどでは、回転台を用いて被加熱物を支持することによってある程度克服することができる。熱暴走は、上に略述した不均一加熱と温度の関数として誘電損率が変化することとの組合せに起因すると考えることができる。
【0007】
マイクロ波エネルギーは、例えば、濡れた生地などの平面構造体を乾燥させるために使用されている。水は、マイクロ波感受性であり、十分な時間十分なマイクロ波エネルギーに暴露されると蒸発する。しかし、生地は、一般にマイクロ波透過性であり、その結果、実質的にこの材料の唯一のマイクロ波感受性成分である水にマイクロ波が集中する。マイクロ波エネルギーは、以下の参照文献にあるように、他の材料を加熱するためにも使用されている。
【0008】
米国特許第5,519,196号には、酸化鉄、炭酸カルシウム、水、ケイ酸アルミニウム、エチレングリコール、およびミネラルスピリットを含有するポリマーコーティングが開示されている。このポリマーコーティングは、食品容器において内層として使用される。このコーティング層をマイクロ波エネルギーで加熱することにより、容器内の食品をきつね色にする、すなわちその表面を焼くことができる。
【0009】
米国特許第5,070,223号には、マイクロ波感受性材料および玩具における蓄熱体としてのその使用が開示されている。開示されているマイクロ波感受性材料には、フェライトおよびフェライト合金、炭素、ポリエステル、アルミニウム、および金属塩が含まれている。米国特許第5,338,611号には、熱可塑性基体を接合するために使用される、カーボンブラックを含有するストリップ状のポリマーが開示されている。
【0010】
WO2004048463A1には、電磁放射線の影響を受けて急速に加熱することができるポリマー組成物、ならびに関連用途および加工方法が開示されている。
【0011】
ポリマー材料を加熱するためにマイクロ波を使用する際の基本的制約は、多くの有用なポリマーのマイクロ波受容性が低いことである。したがって、ポリマーのマイクロ波受容性が低いことにより、こうしたポリマー系を加熱するために高電力または長い照射時間が必要になる。マイクロ波吸収用に特別に設計されたポリマーでは、多くの場合そのマイクロ波特性と機械的特性または熱的特性とがトレードオフの関係にある。すなわち、機械的特性と熱的特性は多くの場合望ましいものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、マイクロ波エネルギーを使用してポリマーの急速な体積加熱を容易にするプロセスおよびポリマー材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様では、本明細書に開示した実施形態は、選択された昇温速度(selected heating rate)を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を配合する方法に関する。前記方法は、マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、熱可塑性ポリマー組成物、マイクロ波電力、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、前記熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および前記熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することと、前記少なくとも1つを選択することと前記少なくとも2つを選択することとに基づいて、マイクロ波受容性添加剤を熱可塑性ポリマーと混合して、選択された昇温速度を有する前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を形成することとを含むことができる。
【0014】
別の態様では、本明細書に開示した実施形態は、選択された昇温速度を有するように設計された組成物の製造方法であって、熱可塑性ポリマー組成物、マイクロ波電力、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、前記熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および前記熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することと、マイクロ波受容性添加剤、前記マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物の昇温速度を決定することと、前記マイクロ波受容性添加剤、前記マイクロ波受容性添加剤の前記粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の前記濃度の少なくとも1つを変化させることと、選択された昇温速度の収束基準(convergence criteria)が満たされるまで、前記選択すること、前記昇温速度を決定すること、および前記変化させることを繰り返すこととを含む方法に関する。
【0015】
別の態様では、本明細書に開示した実施形態は、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能多層熱可塑性複合体の製造方法であって、マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、熱可塑性ポリマー組成物、マイクロ波電力、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、前記熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および前記熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することと、前記少なくとも1つを選択することと前記少なくとも2つを選択することとに基づいて、マイクロ波受容性添加剤を熱可塑性ポリマーと混合して、選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を形成することと、選択された昇温速度を有する前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を、多層複合体の一層として配置することとを含む方法に関する。
【0016】
別の態様では、本明細書に開示した実施形態は、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物であって、熱可塑性ポリマー組成物と、選択された粒径および選択された濃度を有するマイクロ波受容性添加剤とを含むマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物に関する。
【0017】
別の態様では、本明細書に開示した実施形態は、マイクロ波加熱可能な多層複合体であって、熱可塑性ポリマー組成物と、選択された粒径および選択された濃度を有するマイクロ波受容性添加剤とを含む少なくとも1つの層を含み、選択された全昇温速度を有する、マイクロ波加熱可能な多層複合体に関する。
【0018】
他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本明細書に記載した実施形態において有用なマイクロ波加熱装置を示す。
【図2】マイクロ波加熱可能な組成物層が組み込まれている多層シートの一実施形態を示す。
【図3】本明細書に開示した実施形態による選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な組成物の製造に有用な計算結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示した実施形態は、一般に、マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物に関する。より具体的には、本明細書に開示した実施形態は、一般に、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物に関する。
【0021】
放射、対流、または接触加熱などの代替の加熱方法と比較して、マイクロ波エネルギーを使用すると非常に急速な体積加熱を得ることができる。マイクロ波エネルギーの使用により、従来の加熱システムの2つの基本的制約、すなわち、パーツ表面からの熱エネルギーの移動がポリマーの熱伝導率に依存していること、ならびにポリマー表面の最高許容温度(これがひいては最大利用可能温度駆動力を決める)を克服することができる。
【0022】
ポリマーは、その化学組成に基づき本質的にマイクロ波受容性にすることができる。ポリマーが本質的にマイクロ波受容性でない場合は、この非受容性ポリマーとマイクロ波受容性添加剤および/またはマイクロ波受容性ポリマーとを組み合わせることによりマイクロ波加熱可能なポリマー組成物を形成することができる。本発明の実施形態において有用な、好適なベースポリマー、マイクロ波受容性ポリマー、およびマイクロ波受容性添加剤を以下に説明する。
【0023】
得られるマイクロ波加熱可能なポリマー組成物は、マイクロ波エネルギーを、放射、対流または接触加熱の代わりに用いることにより、またはこれらと併用することにより、加熱することができる。次いで、この加熱されたポリマーを、一次加工プロセスまたは二次加工プロセスなどにおいて、混合、トランスファー成形、造形、スタンピング、射出成形、フォーミング、金型成形、押出成形、または別の方法でさらに加工することができる。
【0024】
別の実施形態においては、得られたマイクロ波加熱可能なポリマー組成物を、多層構造体において、多層複合体個別層の一層(または複数層)として配置することができる。この方法により、この個別層(または複数層)は、その後の成形加工前に選択的に加熱することができる。次いで、熱エネルギーは、これらの層から実質的にマイクロ波エネルギーに「透過性の」ポリマーからなる隣接層に伝導され、これにより、全ポリマー構造体が従来の加熱システムを用いる場合よりも急速に必要な成形加工温度に到達することができる。次いで、この多層複合体を、一次加工プロセスまたは二次加工プロセスなどにおいて、混合、トランスファー成形、造形、スタンピング、射出成形、フォーミング、金型成形、押出成形、または別の方法でさらに加工することができる。
【0025】
本明細書に開示した実施形態は、熱可塑性材料の体積の一部分(その後の成形技術においてこの材料を加工可能にするために十分な部分)を選択的に加熱することによる、電磁エネルギーを使用した熱可塑性材料の効率的な加工に関する。本明細書において用いる場合、加工可能とは、プラスチック全体を混合、トランスファー成形、造形、スタンピング、射出成形、押出成形などして製品を形成するために、熱可塑性材料の少なくとも一部分を十分に溶融状態にするか軟化させることを意味する。熱可塑性基体の加熱は、この熱可塑性基体を電磁エネルギー(マイクロ波など)に暴露することによって達成することができる。電磁エネルギーは、基体の全体積に浸透してマイクロ波感受性領域に選択的に吸収される能力を有する。
【0026】
マイクロ波放射線を作用させることにより、ポリマー試験片の体積、バルク、または一部分の所定領域で局部的に熱を発生させることができる。したがって、他の領域は使用する放射線を透過させる非吸収性材料から構成することができるので、作用させるエネルギーの量を注意深く制御し、かつ集中させることができる。例えば、未処理のポリプロピレンおよびポリエチレンは、マイクロ波放射線透過性である。基体のマイクロ波受容性部分を加熱することによって、組成物全体を加熱するために使用されるエネルギーを低減することができ、サイクル時間を短縮することができ、かつ、最終材料の機械的特性および他の特性を種々の要求性能および用途に適応させ最適化することができる。
【0027】
マイクロ波加熱可能なポリマーおよび複合体内の部位は、電磁エネルギーの吸収に好都合であることもあり好都合でないこともある。好都合に吸収する部位は、電磁エネルギーの影響を受けて容易に、かつ急速に昇温する。言い換えれば、この基体の体積の指定部分だけが、この材料の他の領域と比べて電磁エネルギーによる影響を強く受ける。
【0028】
このように、電磁エネルギーは、基体の一定領域だけと相互作用する。この領域は、電磁エネルギーが存在すると温度が上昇する。その後、熱伝導などのメカニズムにより、このバルク材料内の隣接領域が昇温する。バルク材料は体積加熱されるので、この材料を、従来の加熱技術と比較してより急速に加工可能な状態に変換することができる。さらに、この材料が含む熱エネルギーは、バルク材料全体が表面伝導により加熱(赤外線加熱)された場合に通常存在する熱エネルギーより低いと思われるので、エネルギーを相当節約することができる。例えば、赤外線加熱は大気への著しいエネルギー損失をもたらす。また赤外線加熱では、許容できる速度でパーツの表面からパーツのコアへの伝熱を行い、コア温度を加工に必要な温度まで上昇させるために、パーツの表面温度を所望のバルク温度より著しく高くする必要がある。対照的に、マイクロ波による選択的加熱は、マイクロ波感受性ポリマーの温度を急速な体積加熱で加工温度へ上昇させるものであり、特にマイクロ波透過性の表面層を含むような場合には、ポリマーの表面温度を著しく低くすることができる。マイクロ波加熱では、また、エネルギーが系から失われる傾向が低く、エネルギーを、それを必要とする場所、すなわちマイクロ波感受性ポリマーに主として伝達することができる。マイクロ波加熱は、結果的に、加工プロセスのサイクル時間も相当節約することができる。加熱時間を短縮することができるのは、マイクロ波加熱メカニズムが(熱伝導とは対照的に)バルク全体にわたって急速に起るだけでなく、パーツの総エネルギー量が少ないためでもある。材料の非加熱領域が、隣接する加熱領域の熱を抜き取るヒートシンクとしての役割を効果的に果たして、バルク材料の全冷却速度を高めるので、冷却サイクルも短縮することができる。
【0029】
本明細書に記載したマイクロ波加熱可能なポリマーおよび複合体は、一次加工プロセスまたは二次加工プロセスにおいて使用することができる。例えば、一部の実施形態においては、このマイクロ波加熱可能なポリマーおよび複合体は、ポリマー製品の二次加工において使用することができる。ポリマー製品としては、フィルム、発泡体、異形材、コンパウンドペレット、繊維、織布および不織布、成形品、複合材、積層体、あるいは1つまたは複数のポリマー材料から作られるその他の物品を挙げることができる。別の実施形態では、このマイクロ波加熱可能なポリマーおよび複合体は、加工プロセスにおいて、とりわけ、シート押出成形、共押出成形、発泡押出成形、射出成形、発泡成形、ブロー成形、射出延伸ブロー成形、および熱成形などにおいて使用することができる。
【0030】
熱成形、射出成形などの上記プロセスはプロセスに付随したサイクル時間を有するが、このサイクル時間は、このプロセスの要素のそれぞれ(例えば、加熱、射出、フォーミング、冷却、パーツ排出など)のための時間の合計に等しい。サイクル時間としては、例えば、最小サイクル時間、経済的に実現可能なサイクル時間、最大サイクル時間、およびサイクル時間範囲を挙げることができる。こうしたサイクル時間は、それぞれのプロセスに特有であり、主として、材料に熱を伝達することができ、またはその材料から熱を伝達することができる速度の関数である。こうしたサイクル時間は、経済的側面および当業者に知られているその他の要因に直接の影響を有する。
【0031】
マイクロ波加熱可能な組成物は、加熱中のマイクロ波エネルギーの不均一分布などによる不均一加熱、ならびに、温度の関数として材料の誘電損率が変化することなどによる熱暴走を引き起こす恐れがある。上述のマイクロ波受容性添加剤は、得られるポリマーの物性に悪影響を及ぼす恐れがあり、したがって限定された量でしか使用することができないので、バルク材料へのマイクロ波エネルギーの強い影響は限定される。1つまたは複数の非受容性層を有する多層複合体は、物性へのマイクロ波受容性添加剤の強い影響を軽減することができるが、非受容性部分への熱伝導を可能にして材料を加工可能にするために、追加の時間およびマイクロ波暴露が必要になることがある。不均一加熱、熱暴走、伝導、および物性の問題は、それぞれ、マイクロ波エネルギーによって加熱し、かつ、上記のプロセス、とりわけ熱成形および射出成形などでポリマーを加工する能力に影響を与える。
【0032】
上記のマイクロ波加熱可能な組成物の使用に付随した欠陥を克服するために、本明細書に記載したマイクロ波加熱可能なポリマー組成物および複合体を、選択された昇温速度を有するように設計することができる。本明細書において用いる場合、「昇温速度」とは、マイクロ波加熱可能な組成物がマイクロ波エネルギーに暴露されて温度が上昇する全速度を指す。マイクロ波受容性粒子の温度は、マイクロ波に暴露されると、一部の実施形態では、ほとんど瞬間的に上昇することがある。これに対して、マイクロ波加熱可能な組成物の昇温速度は、組成物全体(bulk composition)の温度が上昇する速度である。選択された昇温速度は、マイクロ波加熱可能なポリマーおよび複合体が、サイクル時間要件、物性要件、および様々なプロセス上の要件を満たすように課されたその他の制約、とりわけ、融解粘度、得られるパーツの厚み、ドロー−ダウン比、冷却速度、および成形性などを満たすことを可能にする。
【0033】
選択された昇温速度を有するように組成物を設計する一例として、組成物が球形かつ一様な形状のマイクロ波受容性粒子を含むものとして近似することができる。さらに、これらの球状粒子が非受容性ポリマーマトリックス中に均一に分散していることを仮定することもできる。これを単純立方格子と見なすことができる。この立方格子のサイズ「a」(長さ、幅、および高さ)は、この粒子の半径rの2倍より小さくなることはない。そうでなければ、この粒子は格子に入らない(すなわち、a≧2r)。したがって、この格子立方体の中心に置いた球状粒子の最小体積分率はゼロである。また、立方体の中心に置いた球体の最大体積分率は、百分率で、約52.36%(f=パイ/6)である。マイクロ波受容性添加剤が所与の電界において所定の温度まで昇温する速度は、マイクロ波受容性添加剤からバルクポリマーマトリックスへの伝熱と比べて速い。したがって、マイクロ波受容性添加剤粒子の温度は、単に電界強度(マイクロ波電力)の関数と見なすことができる。これらの仮定を用いて、マイクロ波受容性添加剤粒子から格子内のポリマーマトリックスへの伝熱速度を計算することができる。例えば、マイクロ波受容性添加剤の温度は一定の境界条件と見なすことができる。また、格子の境界は、室温またはマイクロ波加熱装置への供給温度の初期条件を有する。次いで、この一定の境界条件からマイクロ波受容性添加剤を取り囲むポリマーマトリックスへの動的熱伝達を、ポリマーの熱拡散率に基づいて計算することができる。次いで、格子境界が所定温度に達する時間を昇温速度と見なすことができる。隣接する格子は、構成された仮定に基づいて、同様の速度で昇温するはずである。また、温度のわずかな差異が格子内に存在することもあるが、昇温した部分は平衡していると見なしてよい。
【実施例】
【0034】
選択された昇温速度を有するように組成物を設計する一例として、上記の昇温速度の計算からの結果を図3に示す。この結果は、本明細書に開示された実施形態による選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な組成物を製造するために使用することができる。マイクロ波受容性粒子の粒径rは、5nmから65マイクロメートルまで変えた。格子サイズaは、粒径に応じて変化させた。ここで、粒子/ポリマー体積分率は、ほぼ0から52%(格子サイズaとほぼ等しい粒径)まで変化させた。昇温速度限界(heating rate envelope)は、粒子の直径rが格子サイズaと等しいところで限定される。図示の計算結果では、粒子温度は165℃に設定した。これは、非受容性ポリマーマトリックスであるポリプロピレンの融解温度をわずかに超える温度である。計算には必要ないが、こうした粒子温度は、適切なマイクロ波受容性添加剤および電界強度の選択に基づいて得ることができる。
【0035】
図3に示した昇温速度の計算は、立方格子のコーナーが164.9度で「平衡」に達するように計算した時間量に基づくものである。図示のように、昇温速度には幅があり、例えば格子サイズと比べて粒径が小さい場合には非常に遅く、例えば粒径が格子サイズとほぼ等しい場合には非常に速い。図示のように、得られたポリマーの昇温速度は、毎分数10度から毎分1×10度の範囲である。
【0036】
所与のポリマー系のサイクル時間および/または物性の要件を満たすような選択された昇温速度は、例えば、図3に示した三角形内に位置し得る。最大昇温速度は、バルクポリマーが劣化していない状態のままでなければならないという制約によって限定される。この上限はポリマー次第である。下限は熱成形プロセスの経済的側面によって決まる。粒径、昇温速度などのこうした上下限およびその範囲(例えば図3の系の三角形内に位置する)は、性能限界(performance envelope)と呼ぶことができる。
【0037】
図3に示した結果を得るために用いた仮定の1つは、マイクロ波受容性添加剤粒子の温度である。昇温限界(heating envelope)の位置は、選ばれたマイクロ波受容性添加剤およびこのマイクロ波受容性添加剤が暴露される電界の強度を含めて、多数の要因に左右されることがある。例えば、より強い電界は、所与のマイクロ波受容性添加剤のより高い粒子温度をもたらすことができる。あるいは、様々なマイクロ波受容性添加剤は、同様の電界強度から、より高いまたはより低い粒子温度をもたらすことがある。多数の他の変数も、所与の系の昇温速度限界の位置に影響を与えることがある。したがって、図示していないが、当業者は、上記の計算に基づいて、上記のような任意の所与のポリマー−マイクロ波受容性添加剤系について3次元グラフを生成することができることを理解するであろう。この3次元グラフでは、第三の軸が、例えば電界強度またはポリマー熱伝導率を表わすことがある。本明細書に開示した実施形態に従って、選択された昇温速度を有するようにマイクロ波加熱可能な複合体を設計する場合には、こうしたチャートは有用なツールになるであろう。(昇温速度限界または個々の粒径「リブ(ribs)」の範囲について)得られるチャートの表面は数学的に定義することができる。ここで得られた昇温速度または昇温速度限界の式は、選択された昇温速度を有するように複合体を設計するためのツールをさらに提供することができる。
【0038】
簡単に上記したように、選択された昇温速度を有するように複合体を設計するには、系内の多数の変数の詳細を説明しなければならない。例えば、組成物の昇温速度に影響を与える可能性がある変数としては、とりわけ、マイクロ波受容性添加剤の種類、粒径および濃度、熱可塑性ポリマー組成物、組成物を加熱するために用いられる電界の強度、ならびに熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率を挙げることができる。
【0039】
選択された昇温速度を有するように組成物を設計するには、上に挙げた変数の1つまたは複数を、適宜、入力として計算ループに提供することにより始めることができる。次いで、組成物の昇温速度を計算することができる。所与のポリマー−マイクロ波受容性添加剤の組合せについて計算した昇温速度が選択された昇温速度からの一定の差異または収束基準内にない場合は、上述の変数を変化させて、選択された昇温速度の収束基準が満たされるまで昇温速度を再計算することができる。例えば、所与のポリマー系および電界強度について、選択された昇温速度の収束基準が満たされるまで、マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、およびマイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを変化させることができる。
【0040】
上記の計算に基づいて、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を製造することができる。例えば、マイクロ波加熱可能な組成物は、上記計算ループの結果に基づいて、熱可塑性組成物とマイクロ波受容性添加剤とを混合することにより形成することができる。
【0041】
他の変数も、上記計算ループに基づいてマイクロ波加熱可能な組成物を製造する要望に強い影響を与える可能性がある。例えば、マイクロ波受容性添加剤が著しく大きな粒径および濃度を有する場合、選択された昇温速度の収束基準は満たされるかもしれないが、この結果マイクロ波加熱可能な組成物の物性は受け入れられないものになる恐れがある。したがって、上記の計算ループには、さらに、マイクロ波受容性添加剤粒径、濃度、電界強度などの変数の最大および/または最小値を限定する様々な制約を含めることができる。同様に、制約を用いてこれらの選択を限定し、熱可塑性組成物の最高温度を超えないようにすることができる。適切な制約を加工温度に適用することもできる。例えば、加工温度は、熱成形などの一部の実施形態においてはポリマーの融解温度未満とすることができ、射出成形などの別の実施形態においては融解温度より高くすることができる。当業者は、上記の可能性のある制約は限定的ではないこと、および、他の制約を用いることもできることを理解するであろう。
【0042】
一実施形態では、上記の計算ループはコンピューター上で行うことができる。適切な変数の入力は、ユーザーインターフェースを使用して行うことができる。さらに、結果を再検討することができるように、計算の結果をグラフで示すことができる。
【0043】
一部の実施形態では、行われる計算に、選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な組成物を多層複合体に使用するための設計面の配慮をさらに含めることができる。例えば、マイクロ波加熱可能な組成物を含む層から加熱不可能な層への熱伝達を予測する計算を含めることができる。このようにして、バルク複合体を加工可能にするのに必要とされる昇温速度を推定することができ、順に、1つまたは複数のマイクロ波加熱可能層の昇温速度を適切に選択することができる。
【0044】
一部の実施形態では、本明細書に記載した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能なポリマーおよび複合体は、a)マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、およびマイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、b)熱可塑性ポリマー組成物、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することとにより形成することができる。a)およびb)に基づいて、マイクロ波受容性添加剤を熱可塑性ポリマーと混合して、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を形成することができる。
【0045】
マイクロ波受容性添加剤に関しては、多数のマイクロ波受容性添加剤を本明細書に開示した様々な実施形態の中で用いることができる(「マイクロ波受容性添加剤」と表題を付けたセクションを参照)。これらの添加剤の特性を変数b)と連携して使用および/または調節することにより、選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な組成物が得られる。
【0046】
例えば、マイクロ波受容性添加剤は、様々なマイクロ波振動数に応答することができる。もちろん、これは、選択された添加剤または受容性部分の誘電損特性、誘電率、および/または透磁率に左右される。例えば、1つのマイクロ波受容性添加剤は2450MHzの周波数で加熱することができるが、他の受容性添加剤は、1MHz〜300GHzの範囲の異なる周波数に応答することができる。
【0047】
マイクロ波に暴露されると、組成物のマイクロ波受容性部分の温度は、印加された電界の強度の影響を受けることになる。例えば、所与の電界強度に対して、第1のマイクロ波受容性添加剤の温度は160℃まで急速に上昇する可能性があるが、一方、第2のマイクロ波受容性添加剤の温度は220℃まで上昇する可能性がある。より強い電界では、この第1マイクロ波受容性添加剤の温度は180℃以上まで急速に上昇する可能性がある。
【0048】
これらのマイクロ波受容性添加剤は、様々な形状および寸法のものがあり、マイクロ波加熱可能組成物に対して0〜25容量パーセントの範囲またはそれ以上の濃度で用いることができる。受容性粒子の寸法は、ポリマーマトリックス中の粒子の濃度と組み合わせて、組成物の昇温速度に影響を及ぼす可能性がある。例えば、同一の受容性添加剤の同等の寸法の粒子では、この添加剤をより高い濃度で使用すると、粒子1個当たりの加熱する必要のある非受容性熱可塑性ポリマーの量は少なくなる。したがって、マイクロ波受容性添加剤をより高い濃度で用いると、マイクロ波加熱可能な組成物はより速い昇温速度を有することができる。
【0049】
粒径に加えて、粒径分布も興味のある変数である。例えば、同等の平均粒径を有する添加剤は様々な粒径分布を有することができ、第1の添加剤は、第2の添加剤より、より小さなおよび/またはより大きな多数の粒子を有することができる。このことは、粒径だけの場合と同様に、概して、粒子1個当たりの加熱する必要のある非受容性熱可塑性ポリマーの量に影響を与える可能性がある。さらに、マイクロ波エネルギーに暴露された場合、粒径分布の違いにより生じる熱エネルギーの分布は、組成物の全体的な昇温に影響を与える可能性がある。一般に、狭い粒径分布は、熱エネルギーの均一な分布をもたらす可能性がある。しかし、狭い粒径分布は、コストまたは得られる組成物の物性に影響する可能性のために、好ましいオプションではないかもしれない。言い換えれば、本明細書に開示された一部の実施形態については狭い粒径分布が好まれることがあるが、別の実施形態では広い粒径分布が好まれることがある。
【0050】
マイクロ波添加剤の組成も、組成物を選択された昇温速度に適応させる能力において重要な役割を果たすことがある。例えば、ゼオライトはマイクロ波エネルギー受容性である可能性がある。ゼオライトはさらに水を吸収することがあるが、水もマイクロ波エネルギー受容性である。したがって、吸着水を有するゼオライトは、乾燥したゼオライトとは異なる昇温速度をもたらす可能性がある。様々な量の吸着水を有するゼオライトは、さらに様々な昇温速度をもたらす可能性がある。
【0051】
マイクロ波加熱可能な組成物の全昇温速度は、組成物中で用いられる非受容性熱可塑性材料の熱拡散率によっても影響を受ける可能性がある。より高い熱拡散率を有するポリマーは、より低い熱拡散率を有するポリマーより高速でマイクロ波受容性添加剤からバルク組成物へ熱を伝播することができる。
【0052】
マイクロ波受容性添加剤、粒径、粒径分布、および濃度に加えて、電界強度、ポリマーの熱拡散率を含めた上記の要因は、マイクロ波加熱可能なバルクの組成物が加熱される速度に影響を及ぼす可能性がある。マイクロ波加熱可能な組成物を特定のプロセスに使用するために選択した昇温速度は、さらに、マイクロ波加熱可能な組成物の加工温度、熱可塑性ポリマー組成物の融解温度、および熱可塑性ポリマー組成物の最高温度などの要因に左右される可能性もある。
【0053】
加工温度または融解温度に関しては、例えば、より高い加工温度を有するポリマーは、より低い加工温度を有するポリマーと比較して、より長い加熱時間またはより高い昇温速度を必要とする可能性がある。熱可塑性組成物の最高温度に関しては、一部のポリマーは、所定温度を超えると分解または解重合を開始する恐れがある。さらに、より低い分子量のポリマー、ワックス、残存モノマー、またはポリマー系中で用いられる他の添加剤は、所定温度を超えると揮発する可能性があり、これらはそれぞれ、得られる製品の物性または外観の変化をもたらす可能性がある。例えば、分解するポリマーは物理強度(衝撃、ダート、引張り強度または曲げ強度など)を失う恐れがあり、成分の揮発はパーツに泡または割れ目の形成をもたらす恐れがある。したがって、熱可塑性組成物の加工温度および/または最高温度は、マイクロ波受容性添加剤の選択、および本明細書に開示したマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を加熱するのに用いられる電界の強度に影響を及ぼす可能性がある。
【0054】
上記の簡単な議論で示したように、上記および他の変数は組成物の昇温速度に影響を及ぼす可能性がある。ある組成物について選択した昇温速度は、とりわけ、これらの要因に左右される可能性がある。ある組成物の選択された昇温速度を、例えば所望のサイクル時間を得るために、この組成物の温度をこの組成物の加工温度以上の温度まで上昇させるように選択することができる。別の実施形態では、この組成物の昇温速度は、サイクル時間範囲を満たすように選択することができる。上述のように、選択された昇温速度は、マイクロ波加熱可能なポリマーおよび複合体が、サイクル時間要件、物性要件、および様々なプロセス上の要件を満たすように課されたその他の制約、とりわけ、融解粘度、得られるパーツの厚み、ドロー−ダウン比、冷却速度、および成形性などを満たすことを可能にする。
【0055】
上に示したように、多くの変数を使用して選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な組成物または多層複合体を設計し製造することができる。本明細書に記載した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性ポリマー、および非受容性ポリマー(ベースポリマー)を含むことができる。これらの各々を以下に論じる。
【0056】
マイクロ波受容性添加剤
マイクロ波の吸収によって多くの材料を加熱することができる。これは、双極子加熱メカニズムによって達成することができ、永久双極子および/または電荷の誘導運動(stimulated movement)を伴う。これらは、この材料を通って移動する振動電磁波に共振して振動しようとするからである。したがって、この材料は、分子の振動によって加熱され、その後隣接する原子および分子への熱の粘性伝達(viscous transfer)によって加熱される。他の材料は、電磁波の電界がその材料内の電流の流れを刺激することにより、オーム(抵抗)加熱によって昇温することができる。さらに他のマイクロ波加熱メカニズムとしては、マクスウェル−ワグナーメカニズムおよび磁気加熱メカニズムが挙げられる。任意の材料がマイクロ波電界の存在下で昇温する程度は、その誘電損率(誘電正接または複素誘電率とも呼ばれる)によって定義され、これは、実質上、その材料と電磁波との相互作用の強さの尺度である。この加熱がバルク効果であること、すなわちこの材料が効果的に「体積」加熱されることは極めて重要である。したがって、適切なパーツ設計によりパーツにおける所望の温度分布を実現することができる。例えば、熱成形用に設計された共押出シートの場合、マイクロ波感受性のコア層が、このシートを内側から外側へ加熱することができ、その結果、より低温の、より望ましいシート表面温度を得ることができる。
【0057】
マイクロ波吸収剤を添加剤として材料に使用して、この材料を電磁放射線(通常はマイクロ波またはレーダー)で加熱可能にすることもできる。一定の特性を変化させるため、またはこれを改善するためにポリマー材料に添加される他の薬剤が、このポリマーに改善された加熱可能性を付与する場合もある。こうした添加剤をポリマーに添加して、ポリマーのマイクロ波加熱を容易にすることができる。
【0058】
マイクロ波受容体、すなわち、熱可塑性ベースポリマーとブレンドしてマイクロ波感受性ポリマーを形成することができる添加剤としては、導電性または磁性材料、とりわけ、金属、金属塩、金属酸化物、ゼオライト、炭素、水和鉱物、金属化合物の水和塩、ポリマー受容性材料、粘土、有機変性粘土、ケイ酸塩、セラミックス、硫化物、チタン酸塩、炭化物、および硫黄などを挙げることができる。マイクロ波受容性添加剤としては、次のものを挙げることができる。
a)元素、例えば、C、Co、Ni、Fe、Zn、Al、Cu、Ag、Au、Cr、Mo、およびW;
b)重金属塩、例えば、CuX、ZnX、またはSnX(ただし、Xはハロゲンであり、nは1〜6の整数である);
c)塩水和物、例えば、NiCl・6HO、Al(SO・18HO;
d)複合水和物、例えば、エトリンジャイト;
e)他の単純水和物、例えば、エプソム塩;
f)金属酸化物、例えば、CuO、CuO、NiO、Fe、Fe、FeO Co
g)複合酸化物、例えば、BaTiO
h)金属硫化物、例えば、AgS、CuS、MoS、PbS、ZnS、FeS 黄鉄鉱(FeS)、および他の硫化金属鉱;
i)金属炭化物および窒化物、例えば、WC、SiC、BC、およびTiN;
j)半導体、例えば、Si、Ge、Se、GaP、GaAs、InP、InAs、CdS、CdSe、およびZnSe;
k)イオン導体、例えば、固体酸、ベータアルミナ、ポリマー酸、およびイオン交換樹脂;
l)含水材料、例えば、水和形態のゼオライト、シリカ、アルミナ、アルミノホスフェート、アルミノシリケート、マグネシア、チアニア、粘土、マイカ、ゲル、バーミキュライト、アタパルジャイト、セピオライト、その他の無機ゲル、高吸収性ポリマー(SAP)、Methocel、およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)などの有機ヒドロゲル、カルボキシメチルセルロース、ならびにマイクロカプセル化水;
m)永久双極子を有する低分子、オリゴマー、またはポリマー材料、例えば、ヒドロキシル、アミン、アミド、カルボニル、エステル、カーボネート、カルバメート、ウレア、チオウレア、ニトリル、ニトロ、ニトレート、ニトロシル、ヒドロキシルアミン、アンモニウム、スルホンアミド、スルフヒドリル、スルフィド、スルホン、スルホキシド、ホスフェート、ホスホネート、ホスホンアミド、ハライド、オキシハライドで一置換または多置換された官能基を有する低分子、オリゴマー、またはポリマー材料を挙げることができ、さらに、糖、アミノ酸、ラクタム、エチレン一酸化炭素(ECO)コポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、アクリレートコポリマー、アクリレート変性ポリマー、デンプン、ケラチン、ゼラチン、他の副生成物、ホルムアミド、n−メチルホルムアミド、n−メチルアセトアミド、およびこれらの組合せを挙げることができる;
n)ケージ化双極子(caged dipoles)、例えば、上(m)に挙げた双極子が、ゼオライトまたは粘土の中に、あるいはシリカゲルまたは他の無機もしくは有機吸収剤上に吸収された、またはカプセル化されたもの;
o)金属および半導体以外の有機導体、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、および他の有機導体;
p)磁性物質、例えば、硬質または軟質フェライト、SrまたはBaチタネート、CoZn、NiZn、またはMnZn。
【0059】
一部の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤としては、例えば、銅、アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化鉄またはフェライト;マンガン、アルミニウムおよび銅の合金;酸化マンガン;コバルトまたはアルミニウムの酸化物;SiC、NaTiO、Al、MnO、TIO、およびMgTiOを挙げることができる。他の実施形態では、マイクロ波受容性炭素としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、およびカーボンナノチューブを挙げることができる。特定の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤としては、ケイ酸アルミニウム、Feなどの鉄フェライト、ゼオライトAなどのゼオライト、炭素、またはこれらの組合せを挙げることができる。
【0060】
上記のマイクロ波受容性添加剤に加えて、一定の他の結晶質添加剤がマイクロ波受容体として有効であり得ることが見出された。これには、無機固体酸もしくは塩などのイオン導体、ポリマー酸もしくは塩、または無機もしくはポリマーイオン交換樹脂が挙げられる。1つの特定の実施形態では、イオン交換添加剤は合成ゼオライト4Aである。
【0061】
マイクロ波受容体として有効であり得る他の化合物としては、含水材料が挙げられる。この添加剤は受容性を高める所定量の水を含有する。この水和添加剤は、無機物質、低分子物質、またはポリマー物質の何れに基づくものであってもよい。例えば、水和無機添加剤は、水和ゼオライト13Xとすることができる。このゼオライトは、その重量の30%まで水として吸収することができる。
【0062】
マイクロ波受容体として有効であり得る他の化合物としては、低分子またはポリマーマイクロ波受容体を含有する無機物質またはポリマー物質が挙げられる。この受容体化学種は、無機物質もしくはポリマー物質内にあっても、無機物質もしくはポリマー物質の粒子上にコーティングとして存在しても、または無機物質もしくはポリマー物質の細孔内のゲストであってもよい。例えば、エチレングリコールをゼオライトNaYの3次元ケージ中に吸着させることができる。
【0063】
セピオライト粘土もマイクロ波受容性添加剤として使用することができる。セピオライトは、強力に保持された水を含有する天然粘土鉱物である。この強力に保持された水は、この粘土をマイクロ波受容性にすることができると同時に、加熱中に水の存在に起因した気泡の形成が実質的にないか極めてわずかであるような加熱をも可能にする。
【0064】
アンモニウムイオン塩または水素イオン塩から形成されたモレキュラーシーブまたはゼオライトも、マイクロ波受容性添加剤として使用することができる。例えば、モレキュラーシーブYのアンモニウム形を使用することができる。
【0065】
ゼオライト様合成材料もマイクロ波受容性添加剤として使用することができる。例えば、アルミノホスフェート、シリコアルミノホスフェート、およびシリコチタネートなどの合成材料、ならびにゼオライト材料の構造および水和挙動に類似した構造および水和挙動を有する軽金属からなるその他の添加剤を使用することができる。
【0066】
別の実施形態では、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウムイオン塩、および水素イオン塩から形成されたゼオライトを含む上記のモレキュラーシーブは、ゼオライトケージ内に吸着した有機材料を含むことができる。例えば、エチレングリコールおよび他のマイクロ波受容性有機材料をゼオライトまたはモレキュラーシーブ内に吸着させて、このモレキュラーシーブのマイクロ波受容性を高めることができる。
【0067】
マイクロ波受容体として有効であり得るその他の化合物としては、パーツの所望の部分に受容性および選択的加熱を付与することができる材料が挙げられる。これらとしては、ポリアニリンなどの有機導体を挙げることができる。
【0068】
上記添加剤に加えて、マイクロ波受容性ポリマー材料は、マイクロ波感受性層の主成分として使用することもでき、または他のマイクロ波低受容性またはマイクロ波非受容性ポリマーとブレンドしてマイクロ波感受性層を形成する副成分とすることもできる。ポリマー受容性材料としては、例えば、エチレンビニルアルコールポリマー、ポリケトン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、エチレン一酸化炭素コポリマー、ポリアニリンなどを挙げることができる。例えば、CO、OH、NH、メタクリレート、二酸化炭素、アクリル酸、酢酸ビニル、アルコール、およびビニルまたはポリビニルアルコールなどの一定の基がポリマー構造に組み込まれているマイクロ波受容性ポリマーを形成することができる。こうしたマイクロ波受容性部分は、ポリマー鎖の骨格に組み込んでもよいし、またはポリマー鎖にぶら下げてもよい。
【0069】
上記のように、ゼオライトおよび粘土などのマイクロ波添加剤は、しっかり結合した水を含有することができる。これらの材料は吸着水を含む場合もあるが、この吸着水は加熱して添加剤から放出することができる。一部の実施形態では、ポリマーと混ぜる前にマイクロ波感受性添加剤を乾燥することができる。一部の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤は、例えばベント式押出装置を使用することにより、ポリマーと混ぜてからこの水を除去することができる。別の実施形態では、結合水を有するマイクロ波受容性添加剤を含有するポリマーのパーツまたはシートを、マイクロ波装置でこのシートを加工する前に乾燥させることができる。このようにして、過剰な水に起因する望ましくない気泡形成を最小にするまたは回避することができる。
【0070】
一部の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤は、粉末、フレーク、球体、ペレット、顆粒、液体、またはゲルの形態とすることができる。マイクロ波受容性添加剤の好ましい形態は、重合プロセス中、ポリマーの精製もしくは造粒中、または配合プロセス中など、この添加剤をブレンドする段階に応じて決めることができる。別の実施形態では、この添加剤は、一次加工または二次加工プロセスの直前またはこれらの加工プロセス中に、例えば押出成形、射出成形、またはポリマーを用いた他のプロセス中に配合することができる。一部の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤を混合することにより、ポリマーマトリックスの特性に著しい影響を及ぼすことなく、改善されたマイクロ波受容性を付与することができる。
【0071】
上記添加剤のどれを別個に使用しても、またはこれらのどれを併用しても、所望の選択的加熱効果をもたらすことができる。例えば、様々なゼオライトを併用した場合、相乗効果を実現することができる。相乗効果により、1つの形態のゼオライトだけより、および固体(すなわち、水和ゼオライト)のみを配合物に添加した場合より、はるかに高い受容性が得られる。この例などにおける添加剤は固体粉末のままであり、難なくポリマーに配合することができる。使用するマイクロ波受容性添加剤の寸法は、この添加剤を分散させるポリマーマトリックスの寸法に応じて決めることができ、マトリックスの厚みが大きくなれば、より大きな粒子を受け入れることができる。一部の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤の平均粒径は、10nm〜50マイクロメートル、一部の実施形態では100nm〜40マイクロメートル、別の実施形態では0.1マイクロメートル〜25マイクロメートル、別の実施形態では1マイクロメートル〜15マイクロメートル、さらに別の実施形態では5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲とすることができる。使用する粒子の粒径としては、(粒径範囲が狭い)単分散粒子でもよく、または(粒径範囲が広い)多分散粒子でもよい。
【0072】
一部の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤は、電磁エネルギーに対して狭い帯域応答を示すことがある。別の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤は、広い周波数帯域にわたる照射によって加熱することができる。一実施形態では、この添加剤は、1MHz〜300GHzまたはそれ以上の周波数範囲にわたって受容性を有すると見なすことができる。別の実施形態では、この添加剤は、0.1〜30GHzまたはそれ以上、別の実施形態では400MHz〜3GHz、および別の実施形態では1MHz〜13GHzまたはそれ以上の周波数範囲で加熱することができる。さらに別の実施形態では、この添加剤は、1〜5GHzの周波数範囲で加熱することができる。
【0073】
一部の実施形態では、マイクロ波感受性ポリマーは、ベースポリマーとマイクロ波受容性添加剤のドライブレンディングによって形成することができる。別の実施形態では、マイクロ波感受性ポリマーは、この添加剤とこのポリマー材料を配合することによって、またはこの添加剤をこのポリマー材料でコーティングすることによって形成ことができる。さらに別の実施形態では、マイクロ波感受性ポリマーは、マイクロ波受容性添加剤と湿潤ポリマー分散物をブレンドし、その後、この分散物を乾燥させて水を除去することによって形成することができる。
【0074】
ベースポリマー
1種または複数種のマイクロ波受容性添加剤と組み合わせてマイクロ波加熱可能な組成物を形成することができるポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ乳酸およびポリラクチドポリマー、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、ポリイミド、スチレン無水マレイン酸(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK、PEK、およびPEKK)、エチレンビニルアルコールコポリマー、ならびにこれらのコポリマーまたは混合物から選択される樹脂が挙げられる。一定の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤と組み合わせることができるポリオレフィンおよび他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、スチレンコポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。別の実施形態では、マイクロ波受容体と組み合わせることができるポリマーとしては、アクリロニトリル系ポリマー、水酸基含有ポリマー、アクリル系またはアクリレート系ポリマー、無水マレイン酸含有または無水マレイン酸変性ポリマー、アセテート系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリケトン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ならびにポリウレタン系ポリマーが挙げられる。
【0075】
マイクロ波加熱可能な組成物
一定の実施形態では、マイクロ波加熱可能な組成物は、ベースポリマー100部当たり、マイクロ波受容性添加剤0.1〜200重量部を組み合わせることによって形成することができる。別の実施形態では、マイクロ波感受性ポリマーは、ベースポリマー100部当たり、1〜100重量部、さらに別の実施形態では2〜50部、およびさらに別の実施形態では3〜30部のマイクロ波受容性添加剤を組み合わせることによって形成ことができる。
【0076】
一定の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤の含有量は、マイクロ波感受性ポリマーの0.1〜25容量パーセントを構成することができる。別の実施形態では、マイクロ波受容性添加剤の含有量は、マイクロ波加熱可能なポリマー組成物の1〜20容量パーセント、およびさらに別の実施形態では2〜15容量パーセントを構成することができる。
【0077】
一部の実施形態では、マイクロ波加熱可能なポリマー組成物は、粉末、顆粒、ペレット、不揃いな削り屑、液体、シート、またはゲルの形態とすることができる。マイクロ波加熱可能なポリマー組成物は、結晶質、半結晶質、または非晶質とすることができる。一部の実施形態では、マイクロ波加熱可能なポリマー組成物は、着色剤、補強用または増量用フィラー、および他の機能性添加剤、例えば難燃剤またはナノコンポジットを含むことができる。
【0078】
本明細書に記載したマイクロ波加熱可能なポリマー組成物および多層複合体の選択された昇温速度は、一部の実施形態では少なくとも毎秒5℃、別の実施形態では少なくとも毎秒10℃、別の実施形態では少なくとも毎秒20℃、別の実施形態では少なくとも毎秒30℃、別の実施形態では少なくとも毎秒50℃、別の実施形態では毎秒100℃まで、別の実施形態では毎秒120℃まで、さらに別の実施形態では毎秒150℃までとすることができる。
【0079】
本明細書に記載したマイクロ波加熱可能なポリマー組成物および多層複合体は、これをマイクロ波エネルギーに暴露した場合、均一加熱をもたらすことができる。本明細書で使用した場合、均一加熱とは、組成物、複合体、パーツ、シート、または少なくともシートの特定部分を加熱した場合、加熱された部分の最高温度の差異が一部の実施形態では10℃以下であることを指す。別の実施形態では、マイクロ波加熱で得られる温度差異を、別の実施形態では7.5℃以下、別の実施形態では5℃以下、別の実施形態では4℃以下、さらに別の実施形態では3℃以下とすることができる。上記のこうした温度差異には、例えば、シートの幅、深さ、および厚みの各々が含まれている。
【0080】
マイクロ波加熱装置
上記のように選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、次の加工のためにマイクロ波加熱装置を使用して加熱することができる。こうした装置は、例えば、PCT出願PCT/US2007/012821に記載されており、この特許の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0081】
ここで図1を参照すると、本明細書に開示したマイクロ波感受性ポリマーの実施形態に従って使用することができるマイクロ波加熱装置10を示す。マイクロ波加熱装置10の構成要素としては、チューニングピストン11、EHチューナー12、整合用絞り板(matching iris plates)13、導波管14、ホーン15、マイクロ波チョーク17および下側可動ピストン18が挙げられる。ポリマーシートは、サンプル送りスロット19を介してサンプルを送ることにより、マイクロ波加熱装置10によって加工することができる。
【0082】
一部の実施形態では、マイクロ波加熱装置10は、マイクロ波加熱可能な組成物を急速かつ均一に加熱することができ、このマイクロ波加熱可能な組成物の性質(受容体タイプ、受容体濃度、熱可塑性マトリックスタイプなど)および加工する材料の形態(厚み、形状など)に合わせることができる。従来の赤外線加熱と比較すると、本明細書に開示したマイクロ波加熱装置の様々な実施形態が提供する昇温速度および温度差異は、サイクル時間の利点をもたらすことができ、過剰な熱暴露に起因するポリマーへの有害な影響を最小にすることができ、ならびに、加工の改善をもたらすことができる。
【0083】
装置10は可変電源(図示せず)を含むことができ、ホーン15は均一なエネルギー密度の広がりをもたらすことができ、絞り板13とEHチューナー12は放射される波長の微調整を可能にする。このように、このマイクロ波放射装置は、特定のマイクロ波加熱可能な組成物を効率的に加熱するように調整することができる。数ある変数の中でも、加工する材料の温度を監視するために、分析測定装置(図示せず)を設けることもできる。シートの加熱に関して説明したが、他のマイクロ波加熱装置およびプロセスを、本明細書に記載したマイクロ波加熱可能な組成物および複合体にも使用することができる。
【0084】
使用するマイクロ波放射装置の電力定格は、加熱するポリマー試験片の組成、寸法または厚み、ならびに所望の温度に応じて決められる。電力定格は、最高許容ポリマー温度などの変数に基づいて、ならびに、加熱段階の上流または下流で行われる操作のサイクル時間に基づいて選択することもできる。一定の実施形態では、可変電源を使用することができ、これにより、プロセスの自由度、例えば、パーツ寸法または組成(マイクロ波受容性添加剤の量または種類)を変える機能が得られる。
【0085】
用途
上記のように、本明細書に開示した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、この後の加工、例えば、混合、トランスファー成形、造形、スタンピング、射出成形、フォーミング、金型成形、押出成形、または別の方法でさらに加工するために加熱することができる。一部の実施形態では、選択された昇温速度を有するマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、例えば冷蔵庫ライナーを成形するためなどの、厚手シート熱成形プロセスにおいて有用であり得る。別の実施形態では、本明細書に開示した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、例えば、エアレイドバインダー繊維(air laid binder fibers)の加工のために有用であり得る。別の実施形態では、本明細書に開示した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、例えばブロー成形ボトルを形成するためなど、ブロー成形プロセスにおいて有用であり得る。別の実施形態では、本明細書に開示した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、発泡体、押出発泡体、および発泡体または発泡層を含む他の構造において有用であり得る。
【0086】
別の実施形態では、本明細書に開示した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、加工するポリマーを完全に溶融しない用途において有用であり得る。例えば、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は選択的に加熱することができる。すなわち、装置内を通過するポリマーの選択部分のみが加熱され、これによって、フォーミング、金型成形、またはスタンピングプロセスなどによりさらに加工する部分のみに熱エネルギーを集中させることができる。これにより、加工中に処理する材料の構造的完全性を高めることができ、サイクル時間を短縮することができ、かつ、この材料を所望の形状に加工するために必要なエネルギーを低減することができる。
【0087】
別の実施形態では、本明細書に開示した選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、エンボスシートにおいて有用であり得る。従来の赤外線熱成形では、投入した熱は、シートの表面を通過しなければならず、多くの場合、そのエンボス構造または表面細部の保持力を低下させる。上記の加熱サイクルの短縮に加えて、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、シートに付与されるエネルギーフットプリント(energy footprint)の削減により、加工中のエンボス構造の保持力を高めることができる。
【0088】
上述のように、マイクロ波加熱不可能層が散在したマイクロ波加熱可能層を含む複合体を形成することができる。こうした複合体により以下のことが可能になる:最適な温度プロファイリング;複合体加工時にパルスマイクロ波エネルギーを使用すること;パーツの特定領域を加熱するためにマイクロ波放射装置を選択的に配置すること;ならびに、1つまたは複数のマイクロ波加熱可能層のマイクロ波感受性によって優先的または選択的加熱を可能にするその他の表示。
【0089】
シート押出成形の一例として、マイクロ波感受性層を多層シートに組み込むことができる。例えば、図2は、マイクロ波感受性層が組み込まれている多層シートの一実施形態を示す。マイクロ波感受性層Bはシートのコアを形成することができ、これに、マイクロ波加熱に対して感受性でない外層Aが接している。マイクロ波感受性コア層を組み込むことにより、シート熱成形などのシートのその後の加工を容易にすることができる。一部の実施形態では、マイクロ波選択性ポリマーの使用により、厚手シートの熱成形、選択的延伸性、およびシートの急速、均一な加熱を可能にすることによって、シート熱成形を容易にすることができる。
【0090】
本明細書に開示した積層シートは、2つ以上の層を含むことができ、その1つまたは複数の層は、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体を含むことができるか、これらから形成することができる。例えば、積層シートは、3層、4層、5層、6層、...1000層またはそれ以上の層を含むことができる。一部の実施形態では、個々の層は0.1マイクロメートル〜25mmの平均厚みを有することができ、シートの総厚みは100マイクロメートル〜25mmの範囲とすることができる。一部の実施形態では、シートは、多数のマイクロメートル厚みの層を有する、ミクロ積層シートを含むことができる。
【0091】
図2には3層シートとして示したが、別の実施形態では、選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な組成物および複合体は、ポリマー構造内の1つまたは複数の領域を形成することができる。例えば、マイクロ波加熱可能な組成物は、2つ以上の層を有するシートにおいて個別の層を形成することができる。別の実施形態では、マイクロ波加熱可能な組成物は、より大きな構造の特定領域を形成することができ、さらなる加工のためにこの領域を選択的に加熱することができる。さらに別の実施形態では、マイクロ波加熱可能な組成物は、サイドバイサイド繊維構造の1方を形成することができる。さらに別の実施形態では、マイクロ波加熱可能な組成物は、コア/シース繊維構造のコアまたはシースを形成することができる。
【0092】
発泡押出プロセスでは、例えば、マイクロ波加熱可能組成物を組み込むことにより、発泡体コアと中実非感受性外皮の選択的加熱が可能になり、発泡体構造の崩壊を防止しつつより短い加熱サイクルが可能になる。別の実施形態では、複数のマイクロ波加熱可能組成物層のそれぞれに異なる濃度のマイクロ波吸収性添加剤を組み込むことにより、これらの層のそれぞれを差別的に加熱できるので、熱成形などの任意の後続の二次加工工程の最適化が可能になる。別の実施形態では、マイクロ波加熱可能な組成物層の組み込みにより、ポストフォームシートの選択的発泡が可能になる。
【0093】
射出成形または射出延伸ブロー成形などの別の実施形態では、マイクロ波加熱可能な組成物層の組み込みは、ポリマーの内部冷却に起因したより短いサイクルを可能にする。この場合、パーツの非感受性部分がヒートシンクとしての役割を果たし、これにより冷却時間が短縮される。射出成形は、パルスマイクロ波エネルギーの使用によっても容易化することができ、これにより射出成形できる溶融および半溶融材料の混合物が得られる。この半溶融材料は、その後のパーツの冷却中にヒートシンクとしての役割を果たす。射出延伸ブロー成形は、マイクロ波選択的加熱の結果として生ずる最適化された熱勾配の恩恵も受けることができ、最終製品の機械的特性を改善することができる。
【0094】
一部の実施形態では、マイクロ波加熱可能層およびマイクロ波加熱不可能層を含む積層熱可塑性シートを熱成形前に選択的に加熱することができる。別の実施形態では、熱可塑性材料の積層または共押出ペレットを、後続の加工、例えば射出成形プロセスの前に選択的に加熱することができる。これにより、上記の積層シートの場合と同様に、「内部ヒートシンク」の存在によって冷却を加速することができるので、サイクル時間を短縮することができる。
【0095】
別の実施形態では、後続の加工前にパルスマイクロ波エネルギーを使用して、非溶融ポリマー層が間に散在している溶融ポリマーの「スライス」すなわち個別領域を作ることができる。これもまた、上記の積層シートの場合と同様に、冷却を加速することができるので、サイクル時間を短縮することができる。
【0096】
別の実施形態では、1つまたは複数のマイクロ波放射装置の選択的配置により、後続の加工前にシートまたは他の熱可塑性パーツの特定領域を選択的に加熱することができる。これは、シートの特定領域を深絞りしなければならない熱成形プロセスにおいて特に有用であり得る。
【0097】
別の実施形態のプロセスでは、衛生用品で使用されるような吸収性コアの選択的加熱およびその一体化を利用することができる。衛生用品は、マイクロ波感受性成分を含む二成分バインダー繊維(特に、無水マレイン酸グラフトもしくは他の極性化学種などのマイクロ波加熱可能な組成物を含むポリプロピレン繊維などの繊維)とセルロース系繊維とを含む。例えば、繊維形成プロセスにおいて、この平面材料をマイクロ波加熱装置に通すことができる。このマイクロ波加熱装置は、ポリマー繊維の部分的溶融およびセルロース繊維の加熱を、これらの繊維に固有の水分含有量によって行うための十分なエネルギーを有する。その後、これらの繊維を、ポリマー繊維とセルロースの一体化網目構造を有する吸収性コアとして一体化することができる。あるいは、この構造物を工業用布とすることができる。この場合、マイクロ波感受性繊維は、カバードヤーンとしての織構造または不織構造を互いに結合させるために使用することができる。
【0098】
別の実施形態では、マイクロ波加熱可能な組成物は、中実外皮および発泡体コアを含む3層(以上)の発泡体構造(例えばシート)の外皮および/またはコアに使用することができる。マイクロ波受容性添加剤の濃度はそれぞれの層で変えることができ、かつ、マイクロ波電力は、それぞれの層の急速な加熱と後続の加工直前の構造全体にわたる所望の温度分布との両方を実現するように選択することができる。これにより、赤外線加熱プロセスで必要とされる非常に緩やかな加熱の必要性がなく、早すぎる気泡の崩壊なしに所望の熱成形温度プロフィルを実現することができる。
【0099】
上記のように、本明細書に記載した実施形態は、選択された昇温速度を有するように設計されたポリマー組成物および複合体を可能にする。こうした組成物および複合体は、熱可塑性材料の急速な体積加熱を可能にする。
【0100】
本明細書に開示した実施形態は、熱可塑性ポリマー材料の選択的マイクロ波加熱に利用することができる。ポリマー加工に関しては、この技術は、設計者および加工者に多くの利点を提供する。これらの利点としては、次のものが挙げられる:選択的で急速な加熱;加熱/冷却サイクル時間の短縮(高速);高いエネルギー効率および他の環境的利点、例えば放出物低減(有毒ガスの排出がない乾式プロセスであるため)およびリサイクル可能性の上昇(自己強化単一材料成分のより広範な使用を可能にすることによる);自己強化パーツにおける特性の維持(解重合リスクの低減);生産性の向上;パーツ品質および強度の改善;ならびに、熱プロセスにおける滞留時間の短縮に起因する熱劣化の最小化。したがって、ポリマー形成の際に熱安定化添加剤を減少させることができる。
【0101】
本明細書に開示した実施形態では、有利なことに、加熱時間を短縮することができるので、総二次加工サイクル時間が短縮され、したがってピースパーツコストを低減させることができる。本明細書に開示した実施形態では、選択的加熱を使用して加工される材料内に「ヒートシンク」を導入することにより、冷却時間を短縮することもできる。さらに、体積加熱により「表面」または「接触」加熱の必要がなくなり、したがって、ポリマー表面温度が高くなることによる有害な影響の可能性をなくすことができる。体積加熱により、シート厚み全体にわたる望ましくない温度勾配もなくなる。
【0102】
本明細書に開示した実施形態は、有利なことに、全サイクル時間の短縮およびシステムエネルギー必要量の低減により、生産性の向上をもたらすこともできる。本明細書に開示した実施形態は、すべての熱可塑性材料に最適な熱成形条件を提供し、特に、普通なら許容できないほどの狭い加工領域を有する厚手の熱可塑性ポリオレフィンシートが熱成形できるように調整された温度プロファイリングを提供することもできる。
【0103】
マイクロ波加熱によって提供される、従来の放射加熱と比べた利点に加えて、本明細書に開示した実施形態による選択された昇温速度を有する組成物および複合体は、例えば熱成形および射出成形などの様々なプロセスにおけるマイクロ波加熱可能材料の実現可能な使用を可能にする。複合体および組成物は、選択された昇温速度を有するように、かつ、物性要件、サイクル時間要件、および経済的および工業的に実現可能なプロセスを実現するために必要になりうる他の要求を満たすように設計することができる。
【0104】
本開示に含まれる実施形態の数は限られているが、本開示の恩恵に浴する当業者は、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するであろう。したがって、本範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0105】
10 マイクロ波加熱装置
11 チューニングピストン
12 EHチューナー
13 整合用絞り板
14 導波管
15 ホーン
17 マイクロ波チョーク
18 下側可動ピストン
19 サンプル送りスロット
A 外層
B マイクロ波感受性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された昇温速度を有するように設計されたマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物の配合方法であって、
マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、
熱可塑性ポリマー組成物、マイクロ波電力、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、前記熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および前記熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することと、
マイクロ波受容性添加剤を熱可塑性ポリマーと混合して、前記少なくとも1つを選択することと前記少なくとも2つを選択することとに基づいて選択された昇温速度を有する前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を形成することを含む方法。
【請求項2】
前記選択された昇温速度が、毎秒5℃〜毎秒150℃の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された昇温速度が、最小サイクル時間、所望のサイクル時間、経済的に実現可能なサイクル時間、最大サイクル時間、およびサイクル時間範囲の少なくとも1つをもたらすように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択されたマイクロ波受容性添加剤の粒径が、10ナノメートル〜60マイクロメートルの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選択されたマイクロ波受容性添加剤の濃度が、前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物の全容積に対して0〜25容量パーセントの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
選択された昇温速度を有するように設計された、マイクロ波加熱可能な組成物の製造方法であって、
熱可塑性ポリマー組成物、マイクロ波電力、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、前記熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および前記熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することと、
マイクロ波受容性添加剤、前記マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、
前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物の昇温速度を決定することと、
前記マイクロ波受容性添加剤、前記マイクロ波受容性添加剤の前記粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の前記濃度の少なくとも1つを変化させることと、
選択された昇温速度の収束基準が満たされるまで、前記選択すること、前記昇温速度を決定すること、および前記変化させることを繰り返すことを含む方法。
【請求項7】
前記マイクロ波受容性添加剤、前記マイクロ波受容性添加剤の前記粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の前記濃度の少なくとも1つを制約することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
マイクロ波エネルギー場に暴露された場合に、マイクロ波受容性添加剤の熱応答を決定することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記選択された粒径および前記選択された濃度に基づいて格子定数を決定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記決定した昇温速度が、前記決定した格子定数、前記決定した熱応答、および前記熱可塑性ポリマー組成物の前記熱拡散率の関数である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電界強度、前記マイクロ波電力、および前記マイクロ波振動数の少なくとも1つに基づいてマイクロ波受容性添加剤の最高温度を決定することをさらに含み、
前記選択されたマイクロ波受容性添加剤が、前記熱可塑性ポリマー組成物の前記最高許容温度以下の最高温度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロ波加熱可能な組成物の性能限界を決定することをさらに含み、前記選択された昇温速度の収束基準が前記決定した性能限界の関数である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度を決定することの結果をグラフで示すことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つを選択し、少なくとも1つを選択し、決定し、変化させ、繰り返すことの結果に基づいてマイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を製造することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
選択された昇温速度を有するように設計された、マイクロ波加熱可能な多層熱可塑性複合体の製造方法であって、
マイクロ波受容性添加剤、マイクロ波受容性添加剤の粒径、および前記マイクロ波受容性添加剤の濃度の少なくとも1つを選択することと、
熱可塑性ポリマー組成物、マイクロ波電力、電界強度、前記熱可塑性ポリマー組成物の最高許容温度、前記熱可塑性ポリマー組成物の加工温度、および前記熱可塑性ポリマー組成物の熱拡散率からなる群から選択される少なくとも2つの入力を選択することと、
マイクロ波受容性添加剤を熱可塑性ポリマーと混合して、前記少なくとも1つを選択することと前記少なくとも2つを選択することとに基づいて選択された昇温速度を有する前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を形成することと、
選択された昇温速度を有する前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物を、多層複合体の一層として配置することを含む方法。
【請求項16】
選択された昇温速度を有するように設計された、マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物であって、
熱可塑性ポリマー組成物と、
選択された粒径および選択された濃度を有するマイクロ波受容性添加剤と
を含む、マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物。
【請求項17】
前記選択された粒径および選択された濃度により、前記マイクロ波加熱可能な組成物の前記昇温速度が、前記マイクロ波加熱可能な熱可塑性ポリマー組成物の性能限界内となる、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
熱可塑性ポリマー組成物と、
選択された粒径および選択された濃度を有するマイクロ波受容性添加剤と
を含む少なくとも1つの層を含み、選択された全昇温速度を有する、マイクロ波加熱可能な多層複合体。
【請求項19】
熱可塑性ポリマーと、
マイクロ波受容性添加剤と
を含み、所定の性能限界内の昇温速度を有する、マイクロ波加熱可能な熱可塑性組成物。
【請求項20】
前記所定の性能限界が、マイクロ波受容性添加剤の粒径の上限と、マイクロ波受容性添加剤の粒径の下限と、選択された電界強度に暴露したときのマイクロ波受容性添加剤粒子の最高温度と、最小昇温速度と、最大昇温速度との1つまたは複数によって限定されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記マイクロ波受容性添加剤の粒径の上限が、約1ミクロン〜約60ミクロンの範囲内にある、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記最小昇温速度が、少なくとも毎分10℃である、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記最大昇温速度が、毎秒150℃未満である、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記マイクロ波受容性添加剤粒子の最高温度が、前記熱可塑性ポリマーの分解温度の関数である、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
前記所定の性能限界が、熱成形プロセスの経済的側面、プロセスサイクル時間、および前記熱可塑性ポリマーの物性要件の少なくとも1つに基づく、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−505460(P2011−505460A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536060(P2010−536060)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/083760
【国際公開番号】WO2009/073349
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】