説明

選択弁の駆動装置及びそれを備えた消火システム、並びに選択弁の駆動方法

【課題】省スペースで簡便で信頼性の高い粉末消火剤用の選択弁の駆動装置、消火システム、及び選択弁の駆動方法を提供する。
【解決手段】選択弁の駆動装置40は、粉末消火剤貯蔵タンク10から、複数の区画内に選択的にその粉末消火剤を放出させる選択弁30の駆動装置である。加えて、この選択弁30の駆動装置は、先端に突入部が設けられたピストンを、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力によって押し出すシリンダーと、少量の高圧ガスが封入されたボンベ41とを備えている。さらに、この選択弁の駆動装置40は、前述の突入部がボンベ41の封止部材に突入することによって、流路を通じて前述の高圧ガスを前述の選択弁30に送り込むことにより、その高圧ガスが選択弁30を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択弁の駆動装置及びそれを備えた消火システム、並びに選択弁の駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス系消火剤には、その分類上、二酸化炭素に代表される不活性ガスに加えて、粉末消火剤も含まれている。従って、これまでは、粉末消火剤を用いた消火システムにおいても、二酸化炭素等の不活性ガスを用いた消火システムと同様の装置構成が採用されてきた。従来の代表的なガス系消火剤を用いた消火システム(以下、従来システムともいう。)を図5に示し、そのシステムを構成する装置のうち、選択弁及びその駆動装置を図6及び図7に示す。
【0003】
図5に示すように、従来システム900は、大きく分類すると、複数の区画内に設けられた火災を感知する感知装置60,・・・,60と、そのうちの1つ又は複数の感知装置60から出された感知信号を受け、粉末消火剤の放出を制御する制御部970と、粉末消火剤を収容する貯蔵容器又は貯蔵タンク(以下、総称して「消火剤貯蔵タンク」という)10を中心とする設備群と、前述の複数の区画の感知装置60,・・・,60に対応して設けられた噴射ヘッド90,・・・,90とに分けられる。
【0004】
上述の設備群について具体的に見ると、消火剤貯蔵タンク10の上流側には、加圧用ガス容器20及びその容器内の高圧ガス(代表的には、14.7MPa)の圧力を調整する圧力調整器22が配置される。この高圧ガスが上流側配管24を通じて消火剤貯蔵タンク10内に送給されることにより、消火剤貯蔵タンク10内の圧力が上昇する。その結果、ある設定圧力に達した場合に、自動的に作動する公知の定圧作動装置14が放出弁15を開放し、この放出弁15を介して消火剤貯蔵タンク10内に収容されていた粉末消火剤が中流側配管12に向けて押し出される。
【0005】
一方、制御部970は、感知装置60から出された感知信号を受けたとき、粉末消火剤を噴射する対象となる区画に対応した電磁式弁開放器941に対して開放するように指示(代表的には、電気信号)を送る結果、選択弁30が開放される。図6に示すように、電磁式弁開放器941は、コイル943に電流が流れることにより係止部945が外されると、付勢されたバネ944を駆動源として、軸体942の先端に設けられた切り刃946を容器弁948内の封止部材を突入させる。その結果、起動用ガス容器940内の高圧ガス(代表的には、5〜6MPa)が放出し、選択弁用配管936を介して選択弁30に送られることにより、粉末消火剤を噴射する対象となる区画に対応した選択弁30が開放される。
【0006】
選択弁30が開放されると、中流側配管12及び選択弁30を通過した粉末消火剤は、下流側配管16を経由して、粉末消火剤を噴射する対象となる区画に対応した噴射ヘッド90から噴射される。また、圧力スイッチ18は、粉末消火剤の通過による下流側配管16内の圧力上昇を検出して、例えば、粉末消火剤が消火対象となる区画内に充満していることを表示して周囲に危険を促すための信号を発する役割を担う。
【0007】
また、従来システム900では、選択弁30に送られる高圧ガスは、逆止弁980を介して加圧用ガス容器20の弁を開放するためにも用いられる。すなわち、図7に示すように、起動用ガス容器940内の高圧ガスが、選択弁用配管936から分岐された加圧用ガス容器用配管960を経由して加圧用ガス容器20の弁を開放する。従って、その高圧ガスの逆流を防止するために逆止弁980が設けられる。
【0008】
なお、本願出願人は、粉末消火システムに関する幾つかの技術を開示している(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−236724号公報
【特許文献2】特開2003−245370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のとおり、従来システム900は、特に選択弁30を駆動するための設備として、起動用ガス容器940、容器弁948を開放する電磁式弁開放器941、及びリリーフ弁949を備えている。ここで、これまで、起動用ガス容器940としては、600g程度のガス量を収容する大型の容器が採用されてきたため、図7に示すように、起動用ガス容器940や電磁式弁開放器941等を含む起動用ガス容器システム950を収めるためには比較的大型の収容庫51が必要であった。代表的な収容庫51の大きさは、(幅)250mm、(奥行き)150mm、(高さ)500mmである。そして、粉末消火剤を噴射する対象となる区画が多ければ多いほど、その収容庫51の設置面積の確保が困難となるともに、上述の電磁式弁開放器941に代表される各部品にかかるコストが上昇することになる。
【0011】
加えて、従来システム900の選択弁30の駆動に際しては、前述のバネ944や係止部945といった機械構造を利用して起動用ガス容器940内の高圧ガスを選択弁30に送り込むため、振動や外部からの衝撃によって高圧ガスが誤って放出され、選択弁30の誤作動を生じさせる可能性がある。また、高圧ガスによる不測の選択弁用配管36内の圧力上昇を防止するために、従来システム900は、起動用ガス容器940と選択弁30との間にリリーフ弁949を備える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の技術課題を解決することにより、選択弁の駆動装置及びそれを備えた消火システム、並びに選択弁の駆動方法の省スペース化、コストの低減、及び信頼性の向上に大きく貢献するものである。
【0013】
本願発明者は、ガス系消火システムとしてこれまでに採用されてきた装置並びに構成のうち、特に粉末消火システムの特殊性について鋭意検討を行った。その結果、従来の選択弁の駆動装置として用いられてきた構成の固定概念を排除するとともに、新たな着想に基づいてその構成を一新することにより、格段に省スペース化とコストの低減が実現できることを見出した。さらにその新たな構成は、選択弁を含むシステム全体の構成の簡素化、及びその信頼性の向上に寄与することも明らかとなった。
【0014】
本発明の1つ選択弁の駆動装置は、粉末消火剤の貯蔵容器から、複数の区画内に選択的にその粉末消火剤を放出させる選択弁の駆動装置である。加えて、この選択弁の駆動装置は、先端に突入部が設けられたピストンを、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力によって押し出すシリンダーと、少量の高圧ガスが封入されたボンベとを備えている。さらに、この選択弁の駆動装置は、前述の突入部が前述のボンベの封止部材に突入することによって、流路を通じて前述の高圧ガスを前述の選択弁に送り込むことにより、その高圧ガスがその選択弁を開く。
【0015】
この選択弁の駆動装置によれば、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力と先端に突入部が設けられたピストンとを利用して選択弁を開くための高圧ガスを供給するため、従来システムで用いられていた機械構造を備えた電磁式弁開放器を要しない。従って、振動や外部からの衝撃によって選択弁に高圧ガスが送られることは皆無となる。その結果、選択弁の誤作動が防がれるため、選択弁のみならず、その選択弁を備える消火システム全体の信頼性が向上する。また、この選択弁の駆動装置は上述のような電磁式弁開放器や容器弁を要しないため、コストの低減や省スペース化が図られる。
【0016】
本発明の1つ消火システムは、粉末消火剤の貯蔵容器から、複数の区画内に選択的にその粉末消火剤を放出させる選択弁の駆動装置を備えた消火システムである。加えて、この消火システムは、前述のそれぞれの区画内に設けた感知装置と、その感知装置による火災の感知信号を、その感知装置が設けられた前述の区画に対応する前述の駆動装置に伝達する伝達経路とを備えている。さらに、前述の駆動装置は、先端に突入部が設けられたピストンを、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力によって押し出すシリンダーと、少量の高圧ガスが封入されたボンベとを備え、その突入部がそのボンベの封止部材に突入することによって、流路を通じて前述の高圧ガスを前述の選択弁に送り込むことにより、その高圧ガスがその選択弁を開く。
【0017】
この消火システムによれば、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力と先端に突入部が設けられたピストンとを利用して選択弁を開くための高圧ガスを供給するため、従来システムで用いられていた機械構造を備えた電磁式弁開放器を要しない。従って、振動や外部からの衝撃によって選択弁に高圧ガスが送られることは皆無となる。その結果、選択弁の誤作動が防がれるため、選択弁のみならず、その選択弁を備える消火システム全体の信頼性が向上する。また、この選択弁の駆動装置は上述のような電磁式弁開放器や容器弁を要しないため、コストの低減や省スペース化が図られる。また、この消火システムは、選択弁を開くガスを、加圧用ガス容器を開くガスとして利用しなくてよいため、選択弁から加圧用ガス容器に至る流路中の逆止弁を要しない。
【0018】
本発明の1つ選択弁の駆動方法は、粉末消火剤の貯蔵容器から、複数の区画内に選択的に前記粉末消火剤を放出させる駆動方法である。加えて、この選択弁の駆動方法は、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力によって、先端に突入部が設けられたシリンダー内のピストンを押し出す工程と、押し出された前述の突入部が、少量の高圧ガスが封入されたボンベの封止部材に突入することによって、流路を通じて前述の高圧ガスを前述の選択弁に送り込む工程と、その高圧ガスがその選択弁を開く工程とを含む。
【0019】
この選択弁の駆動方法によれば、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力と先端に突入部が設けられたピストンとを利用して選択弁を開くための高圧ガスを供給するため、従来システムで用いられていた機械構造を備えた電磁式弁開放器を要しない。従って、振動や外部からの衝撃によって選択弁に高圧ガスが送られることは皆無となる。その結果、選択弁の誤作動が防がれるため、選択弁のみならず、その選択弁を備える消火システム全体の信頼性が向上する。また、この選択弁の駆動装置は上述のような電磁式弁開放器や容器弁を要しないため、コストの低減や省スペース化が図られる。
【0020】
なお、上記の各発明において、「少量の」とは、特に数値を限定するものではなく、従来より採用されてきた起動用ガス容器940内の高圧ガスの量である600g程度と比較して格段に低減された量を意味する。敢えて言及すれば、「少量の」の想定する通常の範囲は、12.4g以上66g以下である。また、上記の各発明において、「高圧」とは、特に数値を限定するものではなく、従来より採用されてきた起動用ガス容器940内の高圧ガスと同程度の圧力を意味する。敢えて言及すれば、「高圧」の想定する通常の範囲は、選択弁を開放する通常の圧力5MPa以上である。また、その上限を特に限定するものではないが、現在市場で入手しうる上限の圧力である14.7MPaが、「高圧」の想定する上限値である。また、上述の各発明における「先端に突入部が設けられたピストン」とは、ピストンがその先端部にピストン自身とは異なる部材を突入部として備えている場合のみならず、ピストン自身の先端部が突入部である場合も含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の1つの選択弁の駆動装置及び本発明の1つの選択弁の駆動方法によれば、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力と先端に突入部が設けられたピストンとを利用して選択弁を開くための高圧ガスを供給するため、従来システムで用いられていた機械構造を備えた電磁式弁開放器を要しない。従って、振動や外部からの衝撃によって選択弁に高圧ガスが送られることは皆無となる。その結果、選択弁の誤作動が防がれるため、選択弁のみならず、その選択弁を備える消火システム全体の信頼性が向上する。また、この選択弁の駆動装置は上述のような電磁式弁開放器や容器弁を要しないため、コストの低減や省スペース化が図られる。また、本発明の1つの消火システムによれば、上述の各効果に加え、選択弁から加圧用ガス容器に至る流路中に逆止弁を設ける必要がないため、全体としての構成の簡素化も実現される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態における消火システムの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における選択弁及び選択弁の駆動装置の構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における選択弁の駆動装置の主要部の(a)外観図、(b)未作動時の一部断面図、(c)作動時の一部断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における選択弁の駆動装置の主要部の未作動時を示す一部断面図である。
【図5】従来の消火システムの構成図である。
【図6】従来の選択弁及び選択弁の駆動装置の構成図である。
【図7】従来の選択弁及び選択弁の駆動装置が複数配置されたときの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の消火システム100の構成図である。また、図2は、本実施形態の消火システム100の選択弁30及び選択弁の駆動装置40の構成図である。さらに、図3(a)は、本実施形態の消火システム100の選択弁の駆動装置40の主要部の外観図であり、図3(b)は、その駆動装置の未作動時の一部断面図であり、図3(c)は、その駆動装置の作動時の一部断面図である。
【0025】
本実施形態の消火システム100は、大きく分類すると、複数の区画内に設けられた火災を感知する感知装置60,・・・,60と、そのうちの1つ又は複数の感知装置60から出された感知信号を受け、粉末消火剤の放出を制御する制御部70と、粉末消火剤を収容する消火剤貯蔵タンク10を中心とする設備群と、前述の複数の区画の感知装置60,・・・,60に対応して設けられた噴射ヘッド90・・・90とに分けられる。なお、本実施形態の感知装置60としては、公知の煙感知装置や赤外線波長式感知装置、又は熱感知器が適用され得る。
【0026】
上述の設備群について具体的に見ると、消火剤貯蔵タンク10の上流側には、制御部70からの指示(代表的には、電気信号)を受けて起動用ガス容器28を開放する、電磁式弁開放器26が設置されている。また、電磁式弁開放器26が開放した起動用ガス容器28内のガスによって開放される加圧用ガス容器20、及び加圧用ガス容器20からの高圧ガスの圧力を調整する圧力調整器22も、消火剤貯蔵タンク10の上流側に配置されている。ここで、加圧用ガス容器20内の高圧ガスは、代表的には、14.7MPaである。従って、本実施形態では、制御部70からの指示に基づいて加圧用ガス容器20内の高圧ガスが上流側配管24を通じて消火剤貯蔵タンク10内に送給されることにより、消火剤貯蔵タンク10内の圧力が上昇する。その結果、ある設定圧力に達した場合に自動的に開放する公知の定圧作動装置14を介して消火剤貯蔵タンク10内に収容されていた粉末消火剤が中流側配管12に向けて押し出される。
【0027】
一方、制御部70は、感知装置60から出された感知信号を受けたとき、粉末消火剤を噴射する対象となる区画に対応した選択弁の駆動装置40に対しても、選択弁30を開放するように指示(代表的には、電気信号)を送る。図2及び図3(a)〜(c)に示すように、制御部70からの信号を受けた選択弁の駆動装置40は、ガス発生器44内の薬剤(例えば、アジカソーダ)に対して公知の図示しない点火装置(例えば、着火材が付いたニクロム線)を用いて熱エネルギーを与えることにより、その薬剤に着火する。そうすると、薬剤の化学反応が生じるため、ガス(本実施形態では、窒素)が発生する。そのガスによってシリンダー45内の圧力が急速に上昇する結果、ピストン46が勢い良く押し出される。なお、図2に示すように、万一、制御部70からの指示によって選択弁の駆動装置40が作動しなかった場合に備えて、着脱可能な非常用手動弁開放レバー32が設けられている。
【0028】
本実施形態のピストン46は、その先端部に、ボンベ41を封止する蓋体42に突入する突入部としての切り刃46aを備えている。この切り刃46aが、急速に圧力が上昇したガスを駆動源として蓋体42に突入し、それを破断又は窄孔することにより、ボンベ41内の高圧ガスを放出させる。このように、本実施形態の消火システム100では、従来システム900のように、加圧用ガス容器を開放するための高圧ガスが、選択弁30を開くためのガスとして利用されることは無い。従って、選択弁30から加圧用ガス容器20に至る流路中の、高圧ガスの逆流を防止するための逆止弁は不要となる。なお、本実施形態のピストン46の材質は、真鍮であり、切り刃46aの材質は、SUS303である。
【0029】
なお、本実施形態のボンベ41を封止するのは、ボンベ41の開口部と溶接された厚みが0.27mm程度の金属(例えば、鉄)製の蓋体42であるが、封止部材はこれに限定されない。例えば、溶接されて一体化された蓋体42に代えて、ボンベの開口部と螺合する封止部材であっても、切り刃46aによって破断又は窄孔できるものであれば本実施形態の効果と同等の効果が奏される。
【0030】
また、本実施形態のボンベ41としては、いわゆるパイロットボンベが採用されている。このパイロットボンベは、耐圧性が高く非常に小型の金属製ボンベである。具体的には、本実施形態のボンベ41の内容積は、20.4mlであり、封入されているガスの量は12.4gしかない。但し、封入されているガスの圧力は、5〜6MPaである。従って、本実施形態の選択弁30及び選択弁の駆動装置40を収容する収容庫50は、0.01m以下で足りることになる。すなわち、一例として、0.01mの内容積という非常に小さい収容庫内に、本実施形態の選択弁30及び選択弁の駆動装置40が収容され得る。なお、本実施形態のように、選択弁の駆動装置40及び選択弁30の両方が0.01mという容積内に収められるほどにコンパクトである点は特筆に値する。加えて、本実施形態の選択弁の駆動装置40のみを収容するためには、例えば、0.004mで足りることになる。従って、選択弁の駆動装置40のみを収容する収容庫を、選択弁30に据え付ける態様で配置することも、他の好ましい一態様である。また、選択弁30を開くガスを、加圧用ガス容器20を開くガスとして利用しなくてよいため、加圧用ガス容器20開放するための配管の付設の自由度が格段に高まることになる。加えて、本実施形態では、開口部を除いて継ぎ目がない金属製のパイロットボンベを使用しているため、封入された高圧ガスの漏れがない。従って、選択弁の駆動装置40としての信頼性が高まるのみならず、消火システム100としての信頼性も向上する。また、本実施形態では、上述のパイロットボンベを使用しているため、従来の選択弁を駆動するための設備のようにリリーフ弁を必要としない。
【0031】
その後、ボンベ41内の高圧ガスが、継ぎ手48及び流路となる選択弁用配管36を経由して選択弁30内に送り込まれると、粉末消火剤を噴射する対象となる区画に対応した選択弁30が開く。その結果、その選択弁30の開放によって、下流側配管16を通過した粉末消火剤が、感知信号を発信した感知装置60に対応して設けられた噴射ヘッド90から噴射される。なお、本実施形態では、選択弁の駆動装置40が非常にコンパクトになるため、選択弁30の近傍に配置することが容易になることから、その駆動装置40(本実施形態では、継ぎ手48)から選択弁30までの選択弁用配管36の長さが0.2m以上0.5m以下に抑えられるという大きな利点が生まれる。また、圧力スイッチ18は、従来システムと同様、粉末消火剤の通過による下流側配管16内の圧力上昇を検出して、例えば、粉末消火剤が消火対象となる区画内に充満していることを表示して周囲に危険を促すための信号を発する役割を担う。
【0032】
ところで、本実施形態では、ボンベ41の内容積が20.4mlであり、封入されているガスの量は12.4gであったが、本実施形態はこの容積及びこの量に限定されない。例えば、ボンベ41の内容積が20.4ml以上100ml以下であり、封入されているガスの量が、12.4g以上66g以下であれば、本実施形態と同様の効果が奏され得る。従って、前述のように従来と比較して非常に小さい高圧ガスボンベが選択弁の駆動装置の一部として採用されても、駆動装置として十分に機能し得ることから、選択弁及び選択弁の駆動装置を収容する収容庫50が極めてコンパクトなもので足りることになる。
【0033】
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態の選択弁の駆動装置40の一部が変更された点を除き、第1の実施形態の消火システム100及びその消火方法と同様である。より具体的には、本実施形態の選択弁の駆動装置240に採用されているピストン246が、第1の実施形態のピストン46と異なっている。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。なお、本実施形態の消火システムで用いられている消火剤も粉末状消火剤である。
【0034】
図4は、本実施形態の消火システム200に採用されている選択弁の駆動装置240の主要部の未作動時を示す一部断面図である。
【0035】
図4に示すように、本実施形態の選択弁の駆動装置240は、第1の実施形態のピストン46における突入部としての切り刃46aの代わりに、尖った刃となっている先端部246aを備えている。なお、本実施形態の先端部246aは、第1の実施形態と同様に、ピストン246と一体化されている。しかしながら、先端部246aとピストン46とが同一材料によって一体的に形成されている点で、第1の実施形態の切り刃46a及びピストン46とは異なる。なお、本実施形態のピストン246及びその先端部246aの材質は、SUS303である。
【0036】
ここで、第1の実施形態と同様に、制御部70が感知装置60から出された感知信号を受けたとき、制御部70からの信号を受けた選択弁の駆動装置240は、ガス発生器44内の薬剤を昇温させ、化学反応を生じさせることにより、ガスを発生させる。このガスによってシリンダー45内の圧力が急速に上昇するため、ピストン246が勢い良く押し出される。そうすると、ピストン246の先端部246aがボンベ41を封止する蓋体42に突入し、蓋体42が破断又は窄孔されるため、ボンベ41内の高圧ガスが放出することになる。
【0037】
その後は、第1の実施形態と同様に、ボンベ41内の高圧ガスが粉末消火剤を噴射する対象となる区画に対応した選択弁30を開くことになるため、その選択弁30の開放によって、感知信号を発信した感知装置60に対応して設けられた噴射ヘッド90から粉末消火剤が噴射される。
【0038】
上述のとおり、本実施形態の選択弁の駆動装置240が備えるピストン246が採用された場合であっても、第1の実施形態と同様の効果が奏され得る。従って、ボンベ41を封止する部材が破断又は窄孔されることによって封入されていた高圧ガスが適切に選択弁30に送り込まれるのであれば、ピストンの先端に設けられた突入部の材質、形状は特に限定されない。すなわち、ピストンがその先端部にピストン自身とは異なる部材を突入部として備えている場合のみならず、ピストン自身の先端部が突入部である場合も第1の実施形態と同様の効果が奏され得る。
【0039】
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の選択弁の駆動装置、消火システム、及び選択弁の駆動方法は、省スペースと簡便に加え、信頼性の向上が実現されるため、現在及び将来の消火器産業において極めて有用である。
【符号の説明】
【0041】
10 消火剤貯蔵タンク
100,200 消火システム
12 中流側配管
14 定圧作動装置
15 放出弁
16 下流側配管
18 圧力スイッチ
20 加圧用ガス容器
22 圧力調整器
24 上流側配管
26 起動用ガス容器
28 電磁式弁開放器
30 選択弁
32 非常用手動弁開放レバー
36 選択弁用配管
40,240 選択弁の駆動装置、
41 ボンベ
42 蓋体
44 ガス発生器
45 シリンダー
46,246 ピストン
46a 切り刃
246a 先端部
48 継ぎ手
50,51 収容庫
60 感知装置
70 制御部
80 区画
90 噴射ヘッド
900 従来システム
936 選択弁用配管
940 起動用ガス容器
941 電磁式弁開放器
942 軸体
943 コイル
944 バネ
945 係止部
946 切り刃
948 容器弁
949 リリーフ弁
950 起動用ガス容器システム
970 制御部
980 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末消火剤の貯蔵容器から、複数の区画内に選択的に前記粉末消火剤を放出させる選択弁の駆動装置であって、
先端に突入部が設けられたピストンを、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力によって押し出すシリンダーと、少量の高圧ガスが封入されたボンベとを備え、かつ
前記突入部が前記ボンベの封止部材に突入することによって、流路を通じて前記高圧ガスを前記選択弁に送り込むことにより、前記高圧ガスが前記選択弁を開く、
選択弁の駆動装置。
【請求項2】
前記ボンベの内容積が20.4ml以上100ml以下であり、前記高圧ガスの量が、12.4g以上66g以下である、
請求項1に記載の選択弁の駆動装置。
【請求項3】
前記流路が、0.2m以上0.5m以下である、
請求項1又は請求項2に記載の選択弁の駆動装置。
【請求項4】
内容積が、0.01m以下の収容庫内に、前記選択弁及び前記駆動装置が収められ得る、
請求項1又は請求項2に記載の選択弁の駆動装置。
【請求項5】
粉末消火剤の貯蔵容器から、複数の区画内に選択的に前記粉末消火剤を放出させる選択弁の駆動装置を備えた消火システムであって、
前記それぞれの区画内に設けた感知装置と、
前記感知装置による火災の感知信号を、前記感知装置が設けられた前記区画に対応する前記駆動装置に伝達する伝達経路とを備え、かつ
前記駆動装置は、先端に突入部が設けられたピストンを、薬剤に点火することにより発生する気体の圧力によって押し出すシリンダーと、少量の高圧ガスが封入されたボンベとを備え、前記突入部が前記ボンベの封止部材に突入することによって、流路を通じて前記高圧ガスを前記選択弁に送り込むことにより、前記高圧ガスが前記選択弁を開く、
消火システム。
【請求項6】
前記ボンベの内容積が20.4ml以上100ml以下であり、前記高圧ガスの量が、12.4g以上66g以下である、
請求項5に記載の消火システム。
【請求項7】
前記流路が、0.2m以上0.5m以下である、
請求項5又は請求項6に記載の消火システム。
【請求項8】
粉末消火剤の貯蔵容器から、複数の区画内に選択的に前記粉末消火剤を放出させる選択弁の駆動方法であって、
薬剤に点火することにより発生する気体の圧力によって、先端に突入部が設けられたシリンダー内のピストンを押し出す工程と、
押し出された前記突入部が、少量の高圧ガスが封入されたボンベの封止部材に突入することによって、流路を通じて前記高圧ガスを前記選択弁に送り込む工程と、
前記高圧ガスが前記選択弁を開く工程とを含む、
選択弁の駆動方法。
【請求項9】
前記ボンベの内容積が20.4ml以上100ml以下であり、前記高圧ガスの量が、12.4g以上66g以下である、
請求項8に記載の選択弁の駆動方法。
【請求項10】
前記流路が、0.2m以上0.5m以下である、
請求項8又は請求項9に記載の選択弁の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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