説明

遺伝子導入剤及び核酸複合体

【課題】遺伝子導入効率が高い遺伝子導入剤を提供する。
【解決手段】複数の分岐鎖を有するポリマー材料よりなる遺伝子導入剤において、該分岐鎖は、基端側がカチオン性ポリマーブロックよりなり、先端側が疎水性ポリマーブロックよりなるブロックコポリマー鎖である遺伝子導入剤。分岐鎖のカチオン性ポリマーブロックによってアニオン性のDNAとイオン複合体を形成して、これを運搬する。先端側の疎水性ポリマーブロック同士が互いの親和性により近接ないし結合し、一方で、分岐鎖の基端側のカチオン性ポリマーブロック部分は静電気的に互いに反発し合い、これにより、複数の分岐鎖が、鳥篭のようにカチオン性ポリマーブロックとイオン複合体を形成しているDNAを包蔵して一分子ミセルを形成することで、高い遺伝子導入活性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子導入剤と、この遺伝子導入剤を用いた核酸複合体とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒト疾患の分子遺伝学的要因が明らかになるにつれ、遺伝子治療研究がますます重要視されている。遺伝子治療法は標的とする部位でのDNAの発現を目的としており、いかにDNAを標的部位に到達させるか、いかにDNAを標的部位に効率的に導入し、当該部位で機能的に発現させるかということが重要となる。外来DNAの導入のためのベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス又はヘルペスウイルスを含む多くのウイルスが、治療用遺伝子を運搬するように改変されて、遺伝子治療のヒトの臨床試験に使用されている。しかし感染及び免疫反応の危険性は依然として残されている。
【0003】
本出願人らは、合成高分子ベクターとしてベンゼンなどの芳香環を核としてカチオン性ポリマー鎖が放射状に伸延する分岐構造のベクターが、DNAを高密度で凝縮させて小さな核酸複合体微粒子を形成させ、効率良く細胞へ遺伝子導入できることを見出し、この合成高分子ベクターを用いた遺伝子導入剤について、先に特許出願した(下記特許文献1,2)。この遺伝子導入剤を用いた複合体微粒子が細胞膜を透過するメカニズムとしては、カチオン性ポリマー鎖による陽電荷が細胞膜表面の陰電荷と静電的に結合し、エンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれる作用に大きく依存していると考えられる。
【特許文献1】WO2004/092388
【特許文献2】特開2007−70579
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、遺伝子導入効率が高い遺伝子導入剤と、この遺伝子導入剤を用いた核酸複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(請求項1)の遺伝子導入剤は、複数の分岐鎖を有するポリマー材料よりなる遺伝子導入剤において、該分岐鎖は、基端側がカチオン性ポリマーブロックよりなり、先端側が疎水性ポリマーブロックよりなるブロックコポリマー鎖であることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の遺伝子導入剤は、請求項1において、ポリマー材料中のカチオン性ポリマーブロックの分子量が5,000〜150,000であり、疎水性ポリマーブロックの分子量が5,000〜50,000であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の遺伝子導入剤は、請求項1又は2において、前記分岐鎖のカチオン性ポリマーブロックを構成するカチオン性モノマー由来の単位成分の数が、該分岐鎖の疎水性ポリマーブロックを構成する疎水性モノマー由来の単位成分の数よりも多いことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の遺伝子導入剤は、請求項1ないし3のいずれか1項において、該ポリマー材料の分子量が3,000〜600,000であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の遺伝子導入剤は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ポリマー材料は、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これに少なくともカチオン性モノマーと疎水性モノマーとを光照射リビング重合させた分岐型重合体であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6の遺伝子導入剤は、請求項5において、前記イニファターが、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上のN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基が結合したものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7の遺伝子導入剤は、請求項3ないし6のいずれか1項において、前記疎水性モノマーが、側鎖に炭素数5以上の非極性基を有する疎水性モノマーであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項8の遺伝子導入剤は、請求項7において、前記疎水性モノマーは、9−ビニルカルバゾール、スチレン、4−アセチルアミノスチレン、4−ビニル安息香酸メチル、4−アミノスチレン、及び4−ビニル安息香酸からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項9の遺伝子導入剤は、請求項7又は8において、前記疎水性モノマーが4−ビニル安息香酸メチルであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項10の遺伝子導入剤は、請求項3ないし9のいずれか1項において、前記カチオン性モノマーがアクリル系モノマーであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項11の遺伝子導入剤は、請求項10において、前記アクリル系モノマーが3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及び/又は2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートであることを特徴とするものである。
【0016】
本発明(請求項12)の核酸複合体は、請求項1ないし11のいずれか1項の遺伝子導入剤と核酸との複合体よりなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の遺伝子導入剤は、基端側がカチオン性ポリマーブロックで、先端側が疎水性ポリマーブロックのブロックコポリマー鎖よりなる分岐鎖を有する。
本発明の遺伝子導入剤では、この分岐鎖のカチオン性ポリマーブロックによってアニオン性のDNAとイオン複合体を形成して、これを運搬する。
この際、分岐鎖の先端側の疎水性ポリマーブロックは、おそらくは水溶液中において、水にはじかれて先端側の疎水性ポリマーブロック同士が互いの親和性により近接ないし結合し、一方で、分岐鎖の基端側のカチオン性ポリマーブロック部分は静電気的に互いに反発し合い、これにより、複数の分岐鎖が、鳥篭のようにカチオン性ポリマーブロックとイオン複合体を形成しているDNAを包蔵して一分子ミセルを形成し(以下、この現象を「自己環化現象」と称す場合がある。)、高い遺伝子導入活性を示すようになる。
【0018】
なお、細胞の細胞膜やエンドソーム膜は二重リン脂質を主成分に形成されており、疎水性物質は細胞膜を溶解するようにして膜を透過する性質がある。本発明の遺伝子導入剤は、疎水性ポリマーブロックを有しているので、細胞の細胞膜と融合するようにして細胞膜を透過し、細胞内へ遺伝子を運搬する効果が期待できる。
【0019】
本発明において、DNAとのイオン複合体の形成と上記自己環化現象を共に有効に発揮させて、高い遺伝子導入効率を得る上で、カチオン性ポリマーブロックの分子量が5,000〜150,000、疎水性ポリマーブロックの分子量が5,000〜50,000で(請求項2)で、分岐鎖のカチオン性ポリマーブロックを構成するカチオン性モノマー由来の単位成分の数が、該分岐鎖の疎水性ポリマーブロックを構成する疎水性モノマー由来の単位成分の数よりも多いこと(請求項3)が好ましい。また、ポリマー材料の分子量は3,000〜600,000であることが好ましい(請求項4)。
【0020】
本発明に係るポリマー材料は、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これに少なくともカチオン性モノマーと疎水性モノマーとを光照射リビング重合させた分岐型重合体であることが好ましく(請求項5)、特に、このイニファターは、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上の前記N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基が結合したものであることが好ましい(請求項6)。
【0021】
また、イニファターに光照射リビング重合させる疎水性モノマーとしては、側鎖に炭素数5以上の非極性基を有する疎水性モノマー(請求項7)、具体的には、9−ビニルカルバゾール、スチレン、4−アセチルアミノスチレン、4−ビニル安息香酸メチル、4−アミノスチレン、4−ビニル安息香酸からなる群より選択される少なくとも1種(請求項8)、特に4−ビニル安息香酸メチルであることが好ましい(請求項9)。
【0022】
一方、カチオン性モノマーとしては、アクリル系モノマー(請求項10)、特に3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及び/又は2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましい(請求項11)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明の遺伝子導入剤は、複数の分岐鎖を有するポリマー材料よりなり、該分岐鎖が、基端側がカチオン性ポリマーブロックよりなり、先端側が疎水性ポリマーブロックよりなるブロックコポリマー鎖であることを特徴とする。
【0025】
上記のポリマー材料としては、N,N−ジ置換−ジチオカルバミルメチル基、好ましくはN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これに少なくともカチオン性モノマーと疎水性モノマーとを光照射リビング重合させて、カチオン性モノマーと疎水性モノマーのブロックコポリマーよりなる分岐鎖を形成した分岐型重合体が好適である。
【0026】
なお、本明細書において、イニファターとは、光照射によりラジカルを発生させる重合開始剤、連鎖移動剤としての機能と共に、成長末端と結合して成長を停止する機能、さらに光照射が停止すると重合を停止させる重合開始・重合停止剤として機能する分子のことである。
【0027】
イニファターとなるN、N−ジ置換−ジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物としては、ベンゼン環に該N,N−ジ置換−ジチオカルバミルメチル基、好ましくはN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基が3個以上分岐鎖として結合しているものが好適であり、具体的には次が例示される。即ち、3分岐鎖化合物としては、1,3,5−トリ(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジアルキルジチオカルバミン酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジアルキルジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られる1,3,5−トリ(N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、4分岐鎖化合物としては、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジアルキルジチオカルバミン酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジアルキルジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られる1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル)ベンゼンであり、6分岐鎖化合物としては、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼンとN,N−ジアルキルジチオカルバミン酸ナトリウム(ナトリウムN,N−ジアルキルジチオカルバメート)とをエタノール中で付加反応させて得られるヘキサキス(N,N−ジアルキルジチオカルバミルメチル)ベンゼンが挙げられる。なお、ここで、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基に含まれるジアルキル部分のアルキル基としては、エチル基等の炭素数2〜18個のアルキル基が好ましいが、アルキル基に限らず、フェニル基など芳香族系の炭化水素基であっても構わない。即ち、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基に限らず、N,N−ジアリールジチオカルバミルメチル基等を含む、脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基で置換されたN,N−ジ置換ジチオカルバミルメチル基であれば目的を達成することができる。
【0028】
上記のイニファターは、アルコール等の極性溶媒に対しては殆ど不溶であるが、非極性溶媒には易溶である。この非極性溶媒としては炭化水素、ハロゲン化炭化水素が好適であり、特に、ベンゼン、トルエン、クロロホルム又は塩化メチレン、中でも特にトルエンが好適である。
【0029】
このイニファターに重合させるカチオン性モノマーとしては、アクリル酸誘導体、スチレン誘導体等のビニル系モノマーが好適であり、特に、耐加水分解性に優れることから、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドCH=CHCONHCN(CH、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートといったアクリル系モノマーが好ましい。カチオン性モノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
一方、疎水性モノマーとしては、特に、カチオン性ポリマーブロックとの共存下でポリマー全体が水に親和しつつ疎水性ポリマー鎖が水溶液中で凝集する性質が必須であることから、側鎖に炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜20の非極性基、例えば、フェニル基、アルキル基、フラン環、ピリジン環等を有するものが好ましく、このような疎水性モノマーとしては、4−ビニル安息香酸メチル、9−ビニルカルバゾール、スチレン、4−アセチルアミノスチレン等が挙げられるが、特に4−ビニル安息香酸メチルが好ましい。
なお、疎水性モノマーは、中性の水溶液で疎水性のものであれば良い。従って、酸又はアルカリ性で親水性の4−アミノスチレンや4−ビニル安息香酸であっても良い。
これらの疎水性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明の遺伝子導入剤を製造するには、イニファターに対し、まずカチオン性モノマーを光照射リビング重合させてカチオン性ホモポリマーを得、これに疎水性モノマーを光照射リビング共重合させる。
【0032】
イニファターと上記カチオン性モノマーとを反応させるには、イニファター及びカチオン性モノマーを含んでなる原料溶液を調製し、これに光照射することによって、イニファターに対しカチオン性モノマーが結合した反応生成物を生成させる。この溶液の溶媒としては、アルカン、アルケン、アロマチック、ハロゲン化炭化水素が好適であり、具体的にはベンゼン、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素又は塩化メチレンが挙げられ、中でもトルエン又はクロロホルムが好適である。
【0033】
この原料溶液中のカチオン性モノマー濃度は0.5M以上、例えば0.5〜2.5Mが好適である。イニファターの濃度は0.1〜100mM程度が好適である。
【0034】
照射する光の波長は300〜400nmが好適である。光の照射時間は照射強度にも依存するが、1〜60分程度が好適であり、1μW/cm〜10mW/cm程度の低い照射強度で1分〜30分程度が特に好適である。
【0035】
この光照射により、反応液中に目的とする分岐型重合体が生成するので、必要に応じ精製して分岐型重合体よりなるカチオン性ホモポリマーを得る。
【0036】
このようにして生成した分岐型重合体よりなるカチオン性ホモポリマーに対し、疎水性モノマーを光照射リビング重合によりブロック共重合させて目的とするポリマー材料とする。
【0037】
疎水性モノマーを光照射リビング重合によりブロック共重合させるには、上記のようにして合成したカチオン性分岐型重合体(ホモポリマー)をメタノール等の溶媒に溶解させ、これに疎水性モノマーを混合し、光を照射して重合させればよい。この重合反応を開始する際の溶液中におけるカチオン性ホモポリマーの濃度は0.01〜10重量%程度が好適であり、疎水性モノマーの濃度は0.3〜30重量%程度が好適である。光の照射条件は、光波長250〜400nm、照射時間1〜150分、照射強度100〜10,000μW/cm程度が好適である。
【0038】
このようにして、イニファターに対してまずカチオン性モノマーを光照射リビング重合させ、次いで疎水性モノマーを光照射リビングブロック共重合させることにより、基端側がカチオン性ポリマーブロック、先端側が疎水性ポリマーブロックで構成されたブロックコポリマー鎖よりなる分岐鎖を有する分岐型共重合体(ブロックコポリマー)を得ることができる。
【0039】
本発明において、このブロックコポリマーよりなるポリマー材料の分子量は、これを構成するイニファター、カチオン性モノマー、及び疎水性モノマーの種類等によっても異なり、一概には言えないが、3,000〜600,000、特に3,000〜150,000であることが好ましい。ポリマー材料の分子量が小さ過ぎると、本発明に好適な分岐型コポリマーの分子設計を十分に行うことができず、ポリマー材料の分子量が大き過ぎると、代謝性、生分解性などが劣る傾向にあり、好ましくない。
【0040】
また、ポリマー材料中のカチオン性ポリマーブロックの分子量は、カチオン性ポリマーブロックを構成するカチオン性モノマーの種類等によっても異なり、一概には言えないが、5,000〜150,000、特に10,000〜50,000であることが好ましい。このカチオン性ポリマーブロックの分子量が小さ過ぎると、遺伝子とのイオン凝集力が不足し、ポリプレックス微粒子の粒子径が大きく、不安定となり、遺伝子導入活性が劣る傾向にあり、大き過ぎると、ポリマー材料の分子量が徒に大きくなり、代謝、排泄などの生体内投与で望まれる性質が劣るようになり、また細胞毒性が強くなる傾向があり、好ましくない。
【0041】
また、ポリマー材料中の疎水性ポリマーブロックの分子量は、疎水性ポリマーブロックを構成する疎水性モノマーの種類等によっても異なり、一概には言えないが、5,000〜50,000、特に10,000〜20,000であることが好ましい。この疎水性ポリマーブロックの分子量が小さ過ぎると、分岐鎖が水溶液中で安定に分散し、前述の自己環化現象が起こらず、大き過ぎると、ポリマー材料が乳化してマクロ粒子を形成してしまい、好ましくない。
【0042】
なお、本明細書において、分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量をさす。
【0043】
また、ポリマー材料中のカチオン性ポリマーブロックを構成するカチオン性モノマー由来の単位成分の数(以下、「カチオンユニット数」と称す場合がある。)は50〜1,000であり、疎水性ポリマーブロックを構成する疎水性モノマー由来の単位成分の数(以下、「疎水ユニット数」と称す場合がある。)は5〜500であり、カチオンユニット数が疎水ユニット数の5〜100倍、特に10〜100倍であることが、十分に高い遺伝子導入活性を維持した上で、前述の自己環化現象を起こすために好ましい。
【0044】
なお、前述のカチオン性分岐型重合体を光架橋することにより、遺伝子導入活性が高められることが本発明者らにより先に報告されているが、このものは、淡黄褐色の着色がみられる。これに対して、本発明の遺伝子導入剤(ポリマー材料)は、光架橋体でみられる淡黄褐色への着色などがなく、無色である。これは、光架橋によるカチオン性ポリマーブロックの側鎖のアミノ基等へのダメージが少ない又は無いためと考えられる。遺伝子導入剤として遺伝子や細胞へ作用させる遺伝子導入剤水溶液は、着色しているよりも無色であることの方が、利用者への心象が良いことから、本発明の遺伝子導入剤は、このように着色がない点においても優れている。
【0045】
このようにして得られる本発明の遺伝子導入剤(ベクター)が核酸を核酸含有複合体として包囲することによって、生体内の酵素による核酸の失活、分解を抑制することができる。
【0046】
本発明の遺伝子導入剤(ベクター)と核酸とを複合させるには、このベクターの濃度1〜1000μg/mL程度の分散液に対し、常温にて核酸を添加し、混合すればよい。核酸に対してベクターを過剰量添加し、ベクターを核酸に対し飽和状態に核酸含有複合体として複合化させるのが好ましい。
【0047】
核酸の好ましい例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV1−TK遺伝子),p53癌抑制遺伝子及びBRCA1癌抑制遺伝子やサイトカイン遺伝子としてTNF−α遺伝子,IL−2遺伝子,IL−4遺伝子,HLA−B7/IL−2遺伝子,HLA−B7/B2M遺伝子,IL−7遺伝子,GM−CSF遺伝子,IFN−γ遺伝子及びIL−12遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにgp−100,MART−1及びMAGE−1などの癌抗原ペプチド遺伝子が癌治療に利用できる。
【0048】
また、VEGF遺伝子,HGF遺伝子及びFGF遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにc−mycアンチセンス,c−mybアンチセンス,cdc2キナーゼアンチセンス,PCNAアンチセンス,E2Fデコイやp21(sdi−1)遺伝子が血管治療に利用できる。また、上記のようなDNAの導入、遺伝子発現のみならず、細胞内のmRNAを破壊するRNA干渉をsiRNAの導入で行うことも可能である。かかる一連の遺伝子は当業者には良く知られたものである。
【0049】
核酸含有複合体の粒径は50〜400nm程度が好適である。これよりも小さいと、核酸含有複合体内部の核酸にまで酵素の作用が及ぶおそれ、あるいは腎臓にて濾過排出されるおそれがある。また、これよりも大きいと、細胞に導入されにくくなるおそれがある。
【0050】
核酸は、細胞に導入されることによりその細胞内で機能を発現することができるような形態で用いる。例えばDNAの場合、導入された細胞内で当該DNAが転写され、それにコードされるポリペプチドの産生を経て機能発現されるように当該DNAが配置されたプラスミドとして用いる。好ましくは、プロモーター領域、開始コドン、所望の機能を有する蛋白質をコードするDNA、終止コドン及びターミネーター領域が連続的に配列されている。
【0051】
所望により2種以上の核酸をひとつのプラスミドに含めることも可能である。
【0052】
本発明において、核酸を導入する対象として望ましい「細胞」としては、当該核酸の機能発現が求められるものであり、このような細胞としては、例えば使用する核酸(すなわちその機能)に応じて種々選択され、例えば心筋細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、骨格筋細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞、骨細胞、血球幹細胞、血球細胞等が挙げられる。また、単球、樹状細胞、マクロファージ、組織球、クッパー細胞、破骨細胞、滑膜A細胞、小膠細胞、ランゲルハンス細胞、類上皮細胞、多核巨細胞等、消化管上皮細胞・尿細管上皮細胞などである。
【0053】
本発明の遺伝子導入剤を用いた核酸含有複合体は任意の方法で生体に投与することができる。
【0054】
当該投与方法としては静脈内又は動脈内への注入が特に好ましいが、筋肉内、脂肪組織内、皮下、皮内、リンパ管内、リンパ節内、体腔(心膜腔、胸腔、腹腔、脳脊髄腔等)内、骨髄内への投与の他に病変組織内に直接投与することも可能である。
【0055】
この核酸含有複合体を有効成分とする医薬は、更に必要に応じて製剤上許容し得る担体(浸透圧調整剤,安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)と混合することが可能である。これら担体は公知のものが使用できる。
【0056】
また、この核酸含有複合体を有効成分とする医薬は、含まれる核酸の種類が異なる2種以上の核酸含有複合体を含めたものも包含される。このような複数の治療目的を併せ持つ医薬は、多様化する遺伝子治療の分野で特に有用である。
【0057】
投与量としては、動物、特にヒトに投与される用量は目的の核酸、投与方法及び治療される特定部位等、種々の要因によって変化する。しかしながら、その投与量は治療的応答をもたらすに十分であるべきである。
【0058】
この核酸含有複合体は、好ましくは遺伝子治療に適用される。適用可能な疾患としては、当該複合体に含められる核酸の種類によって異なるが、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、動脈拡張術後再狭窄等の病変を生じる循環器領域での疾患に加え、癌(悪性黒色腫、脳腫瘍、転移性悪性腫瘍、乳癌等)、感染症(HIV等)、単一遺伝病(嚢胞性線維症、慢性肉芽腫、α1−アンチトリプシン欠損症、Gaucher病等)等が挙げられる。
【0059】
また、この核酸を複合した遺伝子導入剤の水溶液を基材に塗布などにより付着させ、必要に応じ乾燥させることにより、核酸を担持したポリマーのコーティング等が形成される。
【0060】
上記の核酸複合遺伝子導入剤を基材に付着させる場合、基材としてはシート状のものが好適である。このシート状基材の厚さは0.05〜10mm程度であることが好ましく、シート面の大きさは、方形の場合、一辺が1〜20mmであり他辺が1〜20mmであり、円形又は楕円形の場合、径は1〜20mm程度が好ましい。基材の材料としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、シリコン樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂が好適である。この基材は多孔質であってもよい。
【0061】
この基材に対する核酸複合遺伝子導入剤の付着量は、基材表面1cm当り0.001〜10mg程度が好ましい。
【0062】
核酸複合遺伝子導入剤を担持させた基材よりなる遺伝子導入材料は、皮下組織、心筋組織、病変組織、病変血管を包囲するようにシート状基材を配置したり、カバードステントのフィルムへ塗布することによって生体内に配置したり、生体外面に粘着テープを用いて貼り付けたりするようにして用いられる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0064】
[実施例1]
i)イニファターの合成
イニファターとしての1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンを次のようにして合成した。
1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチルベンゼン)5.0gとN,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム34.0gをエタノール100mL中へ加え、遮光下で室温にて4日間攪拌した。沈殿物を濾過し、3リットルのメタノールへ投入して30分間攪拌して濾過した。この操作を繰り返して合計4回行った。沈殿物をトルエン200mLへ溶解した後、100mLのメタノールを加えて50℃に加温し、冷蔵庫中で15時間保管して再結晶させ、結晶を濾別後に大量のメタノールで洗浄した。結晶を室温で減圧乾燥して、白色の1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼンの針状結晶を得た(収率90%)。
高速液体クロマトグラフィーにより、原料ピークが消失し、精製物が単一物質であることを確認した。
【0065】
H NMR(in CDCl)の測定結果は、δ1.26−1.31ppm(t,24H,CHCH),δ3.69−3.77ppm(q,8H,N(CHCH),δ3.99−4.07ppm(q,8H,N(CHCH),δ4.57ppm(s,8H,Ar−CH),δ7.49ppm(s,2H,Ar−H)となった。
【0066】
【化1】

【0067】
ii)4分岐型スター型重合体よりなるカチオン性ホモポリマーの光重合による合成
3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドをカチオン性モノマーとして用い、1,2,4,5−テトラキス[(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ポリ(3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)−メチル]ベンゼン(以下、pDMAPAAmと記載することがある。)よりなるカチオン性ホモポリマーの合成を行った。
即ち、上記i)により合成した1,2,4,5−テトラキス(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)ベンゼン45.6mgを20mLのトルエンへ溶解し、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(3−N,N−DMAPAAm)7.9gを加えて混合し、全量をトルエンで50mLに調整した。3mm厚軟質ガラスセル中で激しく攪拌しながら高純度窒素ガスで5分間パージした後に、300Wショートアークキセノンランプ(朝日分光社製、MAX−301)で波長250nm〜400nmの混合紫外線を40分間照射した。照射強度はウシオ電機社のUIT−150へUVD−C405(検出波長範囲320nm〜470nm)を装着して2.5mW/cmに調整した。重合溶液をエバポレーターで濃縮し、ジエチルエーテルで重合物を再沈殿させ、クロロホルム/ジエチルエーテル系で3回再沈殿を繰り返して精製し、エーテルを蒸散させた後に少量の水へ溶解し、0.2μmフィルターで濾過してから凍結乾燥させて4分岐型スター型ホモポリマーpDMAPAAmよりなるカチオン性ホモポリマーを得た(重合率32%)。このカチオン性ホモポリマーの分子量はGPCにより、58,000(Mw/Mn=1.31)と測定された。
【0068】
H NMR(in DO)の測定結果は、δ1.5−1.8ppm(br,2H,−CHCHCH−),δ2.1−2.2ppm(br,6H,N−CH),δ2.2−2.4ppm(br,2H,CH−N),δ3.0−3.4ppm(br,2H,NH−CH),δ7.4−7.8ppm(br,1H,−NH−)となった。
【0069】
【化2】

【0070】
iii)カチオン性ホモポリマーへの疎水性モノマーのブロック共重合
上記ii)で合成した分子量58,000のカチオン性ホモポリマー3.0g及び4−ビニル安息香酸メチル1.0gを約30mLのクロロホルムへ溶解した。ガラス容器中で激しく攪拌しながら高純度窒素ガスで5分間パージした後に、光照射時間を10分とした以外はii)と同様の手法で光照射重合を行い、クロロホルム/ジエチルエーテル系で3回再沈殿処理を行い、テトラキス{N,N−ジエチルジチオカルバミル−ポリ(4−ビニル安息香酸メチル)−ブロック−ポリ(3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)−メチル}ベンゼンを得た(重合率28%)。
このものの分子量はGPCにより69,000(Mw/Mn=1.86)と測定された。
【0071】
【化3】

【0072】
以上より、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのポリマーブロック(分子量58,000)と、4−ビニル安息香酸メチルのポリマーブロック(分子量11,000)が導入された4分岐型ブロックコポリマーが合成されたことが確認された。
このポリマー材料中のカチオンユニット数は約370個、疎水ユニット数は約68個である。
【0073】
iv)ブロックコポリマーの解析
iii)で合成した4分岐型スター型カチオン性/疎水性ブロックコポリマーのH NMRを重水中で測定すると、重クロロホルム中では観察された4−ビニル安息香酸メチルに由来する芳香環水素、メチル基水素のNMRシグナルが観察されず、疎水性ポリマーブロック全体がカチオン性ポリマーブロックへ遮蔽されていることが示唆された。すなわち、ポリマーミセルが形成されていると考えられた。
静的光散乱装置(MALVERN ZETA-SIZER NANO)による粒子径の測定結果は、ii)で合成されたカチオン性ホモポリマーの粒子径が5.9nmで、iii)で合成されたカチオン性/疎水性ブロックコポリマーの粒子径が7.2nmと測定された。
ここで、カチオン性/疎水性ブロックコポリマーの分子量(粒子径)がGPCによる計算値と大きな差がないだけでなく、2倍、数倍となるような大きな変化は確認されていないため、カチオン性/疎水性ブロックコポリマーは水中で複数の分子が会合することなく、同一分子内でミセルを形成するような、つまり、ポリマーの分岐鎖の先端側が会合した自己環化現象が起きていると考えられる。
【0074】
v) 遺伝子導入活性
インビトロでの細胞遺伝子導入実験を行った。細胞にはCOS-1細胞とEC(血管内皮細胞)を使用し、DNAにはpGL3コントロールベクターを使用した。いずれも24Well培養皿へ播種し、培養24時間後に遺伝子導入を行った。
上記iii)で合成した4分岐型スター型カチオン性/疎水性ブロックコポリマーを遺伝子導入剤として使用した。遺伝子導入剤中の単位重量あたりの陽電荷数は、GPCによるカチオン性ポリマーブロック及び疎水性ポリマーブロックの各分子量とカチオン性ポリマーブロックを構成するカチオン性モノマー単位の分子量156から計算して求めた。DNA中の単位重量あたりの陰電荷数は配列マップによる塩基対数と核酸塩基の平均的分子量660とから計算した。
この遺伝子導入剤をDNAと150μLのOPTI−MEM中で30分間インキュベートした。混合比は電荷数の関係が陽電荷数が陰電荷数の20倍となるように調整し、0.5μgのDNAが各Wellへ投与されるように溶液を調整し、培養細胞へ加えた。トランスフェクションの48時間後にルシフェラーゼアッセにより遺伝子導入活性の評価を行った(プロメガ社、アッセイキット試薬)。補正はタンパク濃度で行い、タンパク定量はBioRad社のBradford試薬で行った。結果を図1,2に示す。
【0075】
[比較例1]
実施例1のii)で合成した4分岐型スター型重合体よりなるカチオン性ホモポリマーを遺伝子導入剤として使用したこと以外は、実施例1のv)に準拠して遺伝子導入活性を調べ、結果を図1,2に示した。
【0076】
[参考例1,2]
実施例1のiii)の操作において、光照射時間を5分(参考例1)又は30分(参考例2)として4分岐型スター型カチオン性/疎水性ブロックコポリマーを合成した。
精製後にiii)と同様に分子量を評価すると、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのカチオン性ポリマーブロックの分子量は58,000で、4−ビニル安息香酸メチルの疎水性ポリマーブロックの分子量は1,000(光照射時間5分の場合)及び22,000(光照射時間30分の場合)の2種類の4分岐型ブロックコポリマーが得られたことが確認された。
4−ビニル安息香酸メチルの疎水性ポリマーブロックを分子量22,000で導入したブロックコポリマー(参考例2)は水に対して懸濁し、実質的に不溶であった。一方、4−ビニル安息香酸メチルの疎水性ポリマーブロックを分子量1,000で導入したブロックコポリマー(参考例1)は水に溶解したので、実施例1のv)と同様に遺伝子導入活性の評価を行った。結果を図1,2に示す。
【0077】
図1,2より、本発明の遺伝子導入剤は、遺伝子導入活性に優れることが分かる。
本発明の遺伝子導入剤によるこのような優れた遺伝子導入活性は、分岐鎖先端側に疎水性ポリマーブロックが導入されたことによる構造的な優位性によるものと考えられる。
なお、参考例1のコポリマーでは、実施例1のコポリマーで確認された立体的な優位性が発現されておらず、自己環化現象により1分子ミセルを形成するには疎水性ポリマーブロックの分子量は1,000程度では小さすぎることが分かる。
【0078】
また、血管内皮細胞の場合には、COS細胞での遺伝子導入活性と比較して、本発明の効果はより顕著に現れた。細胞との相性、選択性が発現される理由は不明であるが、本発明は、通常遺伝子導入が行いにくい内皮系細胞、樹状細胞、幹細胞への応用に期待できる技術であると推定される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1、比較例1及び参考例1のコポリマーによるCOS細胞への遺伝子導入活性の評価結果を示すグラフである。
【図2】実施例1、比較例1及び参考例1のコポリマーによる血管内皮細胞への遺伝子導入活性の評価結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分岐鎖を有するポリマー材料よりなる遺伝子導入剤において、
該分岐鎖は、基端側がカチオン性ポリマーブロックよりなり、先端側が疎水性ポリマーブロックよりなるブロックコポリマー鎖であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項2】
請求項1において、ポリマー材料中のカチオン性ポリマーブロックの分子量が5,000〜150,000であり、疎水性ポリマーブロックの分子量が5,000〜50,000であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記分岐鎖のカチオン性ポリマーブロックを構成するカチオン性モノマー由来の単位成分の数が、該分岐鎖の疎水性ポリマーブロックを構成する疎水性モノマー由来の単位成分の数よりも多いことを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該ポリマー材料の分子量が3,000〜600,000であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ポリマー材料は、N,N−ジ置換−ジチオカルバミルメチル基を同一分子内に3個以上有する化合物をイニファターとし、これに少なくともカチオン性モノマーと疎水性モノマーとを光照射リビング重合させた分岐型重合体であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項6】
請求項5において、前記イニファターが、ベンゼン環を核とし、この核に分岐鎖として3個以上のN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル基が結合したものであることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1項において、前記疎水性モノマーが、側鎖に炭素数5以上の非極性基を有する疎水性モノマーであることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項8】
請求項7において、前記疎水性モノマーは、9−ビニルカルバゾール、スチレン、4−アセチルアミノスチレン、4−ビニル安息香酸メチル、4−アミノスチレン、及び4−ビニル安息香酸からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記疎水性モノマーが4−ビニル安息香酸メチルであることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項10】
請求項3ないし9のいずれか1項において、前記カチオン性モノマーがアクリル系モノマーであることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項11】
請求項10において、前記アクリル系モノマーが3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及び/又は2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートであることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項の遺伝子導入剤と核酸との複合体よりなることを特徴とする核酸複合体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−274996(P2009−274996A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128564(P2008−128564)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】