説明

遺伝子工学的ボツリヌス神経毒

本発明は、新規の改変BoNT/E触媒ドメイン、及び、その製造方法を提供する。一実施形態において、改変BoNT/E触媒ドメインの軽鎖残基224又は、残基224に相当する残基が改変されて、アスパラギン酸又はグルタミン酸となる。その改変触媒ドメインは、SNAP25を切断するが、SNAP29又はSNAP47は切断しない。また、本発明は、喘息、CF、慢性閉塞性肺疾患、胃酸流出、炎症、サイトカイン成分に関係する免疫疾患、又は、サイトカイン成分に関係するガンを含むが、それらに制限されない疾患を治療するための新規の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年4月14日付けで提出された米国仮出願61/169,031号に基づく優先権を主張し、その米国仮出願の記載内容は参考までに本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、抗血清交差血清中和(anti-serum cross serotype neutralization)の欠如により、血清学的に分化した7つの異なる神経毒(BoNTs)を生成する。BoNTsは、人間に知られている最も強力な毒素であり、ボツリヌス症(disease botulism)(1)の原因物質である。BoNTsは弛緩性麻痺(flaccid paralysis)の状態につながる、神経筋接合部における神経伝達物質、アセチルコリンの放出を阻害することによって、その作用を発揮する。 BoNTsは、神経細胞を標的とし、ニューロン特異的SNAREタンパク質を切断することによって神経細胞特異的な弛緩性麻痺を誘発する。
【0003】
SNAREタンパク質(可溶性NSFの付着タンパク質受容体)は、タンパク質の大きなスーパーファミリーである。SNARE蛋白質の主な機能は、ポストシナプス接合部(post-synaptic junction)への神経伝達物質分子のエキソサイトーシス(exocytosis)を仲介することである。 SNAREは小さく、豊富な、小胞及びプラズマの両方の膜結合タンパク質である。
【0004】
BoNTsは、ジスルフィド結合によって連結された50kDaの軽鎖、及び、100kDaの重鎖から成る150kDaポリペプチド鎖である。 BoNTsは、 N末端の亜鉛メタロプロテアーゼ軽鎖(LC)、転座ドメイン(HCT)とC末端の受容体結合ドメイン(HCR)(1,2)といった3つの機能ドメインに編成される。BoNTs(神経intoxification)の毒性効果は、3つの主要なイベントの相互作用を介して行われる。一つは、重鎖のカルボキシ半分(carboxy half)は、神経細胞膜におけるコリン作動性神経細胞への受容体特異的な結合に必要とされる。結合後、BoNTの別の部分が、より小さい触媒ドメイン(catalytic domain)をその細胞の中へ移動させて(ここで、触媒ドメインは、神経SNAREたんぱく質に結合して、それを切断する。)、神経細胞を「酔わせ(intoxicating)」、その結果、(ニューロン)が興奮すること(fire)、又は、信号を送ることを不可能にする。「触媒ドメイン」とは、基質の切断を誘発する分子の一部を意味する。毒素は、受容体を介したエンドサイトーシス(receptor-mediated endocytosis)を介してエンドソーム(endosome)に取り込まれ、そして、毒素は、細胞膜とシナプス小胞の融合の際に、シナプス小胞関連タンパク質(synaptic vesicle-associated protein)の閾のドメイン(liminal domain)を結合させる。一言で言えば、BoNTsはエンドソームに取り込まれ(即ち、エンドソームに内在化され)、そして、酸性化によって、LCは、SNAREタンパク質が切断される細胞質内へ転座される(1、2)。
【0005】
哺乳類ニューロンエキソサイトーシス(neuronal exocytosis)は、小胞SNARE、VAMP2、および、プラズマ員(plasma member)と、SNAREs、SNAP25、及びシンタキシン(syntaxin)1A間のタンパク質複合体の形成によって行われる(6)。3つのSNAREたんぱく質のうちいずれか上の残基を特異的に切断する7つの血清型のBoNTs(A〜G)が存在する。血清型B、D、F、およびGはVAMP−2を切断し、血清型A及びEは、SNAP−25を切断し、そして、血清型Cは、SNAP25及びシンタクシス1aを切断する(1)。したがって、神経特異性(neuronal specificity)は、ニューロンに結合して、SNAREたんぱく質の神経イソフォーム(neuronal isoform)を切断するBoNTに基づく。例えば、BoNT/Aは、ヒトSNAP25を切断するが、ヒト非神経イソフォームSNAP23は切断しない(7、8)。非神経SNAREイソフォームは、細胞増殖、細胞膜の修復、細胞質分裂、及び、シナプス伝達における融合反応(fusion reaction)を含めた分岐細胞プロセス(divergent cellular process)に関与する。
【0006】
新しい神経と毒素の影響を受けた神経を置き換えるBoNTs中毒(intoxication)後の筋機能の可逆性(10、11)は、BoNTsを致命的な試薬から神経筋の(病的)状態に対する新しい治療法に変えた。1989年初、BoNT/Aは、斜視(strabismus)、眼瞼痙攣(blepharospasm)、および片側顔面けいれん(hemifacial spasm)の治療薬としてFDAによって承認され、その後、頸部ジストニア(cervical dystonia)、化粧用途、眉間の顔のしわの線(glabellar facial lines)、及び、腋窩多汗症(axillary hyperhidrosis)に対して承認された(12)。ジストニア(dystonia)、不随意骨格筋の活動に関連するその他の(即ち、ジストニア以外の)疾患におけるBoNT/Aの有効性は、十分な安全性プロファイルと結合し、様々な分泌及び痛み及び化粧疾患(cosmetic disorder)における経験的/承認適応症以外使用(empirical/off-label use)を促した(13)。
【0007】
BoNTsの臨床使用が神経筋活動を(12、13)に影響を与える苦痛(infliction)をターゲットにすることに限られている。BoNTsの構造機能相関の解明によって、ユニークなニューロン及び非神経細胞(非ニューロン細胞)にBoNTを再標的化する新規の治療法の設計が可能になった。神経成長因子、エリスリナ属cristagalli(Erythrina cristagalli)からのレクチン(lectin)、又は、表皮成長因子とBoNT HCRドメインの置換は、侵害受容性求心性神経(nociceptive afferent)及び気道上皮細胞のような神経または非神経細胞へのBoNT/Aの再標的化を可能にする(14-16)。しかし、BoNTによる神経特異的SNAREタンパク質の選択的開裂(selective cleavage)は、これらの非神経系における新規治療法の開発を制限してきた。新しい治療法を開発するための前提条件として、非神経細胞SNAREのアイソフォーム(isoform)にBoNTsの触媒活性の再標的化が必要となる。
【0008】
したがって、必要性は、非ニューロン性SNAREタンパク質を切断する遺伝子工学的BoNT、及び、その使用方法に対するニーズが存在していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、非ニューロン性SNAREタンパク質を切断する遺伝子工学的BoNT、及び、その使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、本発明は、軽鎖残基224又は、残基224に相当する残基が改変された改変BoNT/E触媒ドメインを提供する。一実施形態において、残基224、又は、残基224に相当する残基が、アスパラギン酸又はグルタミン酸に改変されている。改変触媒ドメインは、SNAP25を切断するが、SNAP29又はSNAP47は切断しない。
【0011】
一実施形態において、改変触媒ドメインは、たんぱく質送達システムに有用な標的分子を更に含む。
【0012】
一実施形態において、本発明は、遺伝子工学的ボツリヌス神経毒E又は、ボツリヌス神経毒軽鎖、又は、ボツリヌス毒素触媒ドメイン(改変BoNT/E触媒ドメインを含む)を提供する。ここで、軽鎖残基224は改変された。
【0013】
一実施形態において、本発明は、治療に有効な量の請求項1に記載の改変触媒ドメインを前記被験者に投与するステップを含む、ボツリヌス毒素治療を必要とする被験者を治療する方法を提供する。ここで、ボツリヌス毒素治療を必要とする被験者は、喘息、CF、慢性閉塞性肺疾患、胃酸流出、炎症、サイトカイン成分に関係する免疫疾患、又は、サイトカイン成分に関係するガンを患うことを特徴とする。
【0014】
様々な実施形態が記載されているが、本発明のその他の実施形態は、次の発明の詳細な説明から当業者にとって明らかであろう。本発明は、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な点について変更することができることも明らかであろう。したがって、発明の詳細な説明は、本発明を説明するために設けたものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法は、喘息、CF、慢性閉塞性肺疾患、胃酸流出、炎症、サイトカイン成分に関係する免疫疾患、又は、サイトカイン成分に関係するガン等の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヒトSNAP23のK185は、BoNT/Eによる基質認識に寄与する。(a)LC/Eによる基質認識。SNAP25における2つのサブサイトは、基質結合「B」(Km)及び触媒反応「AS」(kcat)に寄与する。ここで、P3、P2、及び、PI’残基は、LC/Eによる認識に寄与する。(b)ヒトSNAP25(SN25)及びヒトSNAP23(SN23)の配列アラインメント(sequence alignment)。(c)(上側パネル)LC/ESNAP25のモデル化複合構造(modeled complex structure)は、LC/EによるSNAP25のP部位残基の認識を予想する。(下側パネル)LC/E(K224D)-SNAP23のモデル化複合構造は、LC/E(K224D)によるSNAP23のP部位残基の認識を予想する。モデルは、スイスモデル(SWISS-MODEL)によって作製した(LC/E結晶構造(PDB:3d3x)を用いる)。また、画像は、PyMolにおいて生成した。
【図2】LC/E(K224D)によるSNAP23の切断。(a)5μmのSNAP23を指示量のLC/E(K224D)とともにインキュベートし、SDS-PAGEにかけ(インサートにおいて染色ゲルが見られ、SNAP23(152-211)と称する)、そして、その切断産物をSNAP23(152-186)と称する*。%SNAP23切断は、密度測定によって決定した。(b)SNAP25を切断するLC/Eの動力学的定数(常数)及びSNAP23を切断するLC/E(K224D)の動力学的定数(常数)。
【図3】LC/E(K224D)によるSNAP23の切断部位。(a)5μmのSNAP23を2μmのLC/E(K224D)とともにインキュベートし、MALDI-TOF質量分析を行った。y軸上の強度(100%)は2812.5バンドにセットされ、かつ、x軸は、質量対チャージユニット(mass-to-charge unit)(m/zw)を表す。(b)SNAP23(I187D)を指示量のLC/E(K224D)とともにインキュベートし、SDS-PAGEにかけた。クーマシィー(Coomassie)染色ゲルにおいて、左側に表示されたLC/E(K224D and SNAP23(I187D)の移動が確認された。
【図4】SNAP25イソフォームにおけるLC/E(K224D)及びWt-LC/Eの基質特異性及び配列アランメント(sequence alignment)。(a)LC/Eの結合領域及び活性部位領域と相互作用するSNAREたんぱく質に相当する領域におけるSNAP23a,b, SNAP25a,b, SNAP29、およびSNAP47 の配列(ClustaIW2)の配列。SNAP25イソフォームの中で保存残基は(*)として、かつ、類似した残基(同様の残基)は(:, .)として表す。LC/EによるSNAP25の切断部位を矢印で表し、そして、P部位を表す。指示されたSNAP25のイソフォームを用いたLC/E(K224D)の線形速度分析(b)、及び、Wt-LC/Eの線形速度分析(c)。5μmのSNAP25イソフォームを指示量のLCとともにインキュベートし、SDS-PAGEにかけ、ゲルをクーマシィーで染色した。SNAP25イソフォームの切断量を密度分析によって決定した。
【図5】LC/E(K224D)は、SNAP23を切断し、TGF−α刺激HeLa細胞においてムチン及びIL−8分泌を阻害する。(A)GFP-LC/E(K224D)又はGFP-Wt-LC/EをHeLa細胞へトランスフェクトさせた。24時間後、細胞溶解物を作製し、SDS−PAGEによって分離し、そして、抗SNAP−23マウス単クローン抗体を用いるウエスタンブロット3によってSNAP23の切断を測定した。(B,C)HeLa細胞を、GFP-LC/E(K224D)又はGFP-Wt-LC/EをコードするDNAでトランスフェクトした。24時間後、細胞を無血清MEM培地で2回洗浄し、20ng/mlのTNF-αを補充した無血清MEM培地を加えることによって、分泌を引き起こした。36時間後、上清を収集して、ムチン及びIL−8分泌に対して分析した(ELISAフォマット利用)。対照群細胞において分泌されたムチン及びIL−8の量を、1.0に調整し、TNF−αで処理した細胞の基準として用いた。
【図6】組換えLC/E(K224D)はSNAP23を切断し、TGF−α刺激HeLa細胞においてムチン及びIL−8分泌を阻害する。HeLa細胞をジギトニンで処理し、その後、His-LC/E(K224D)又はHis-Wt-LC/E(3-Xflagタグたんぱく質)とともにインキュベートした。一晩インキュベートしてから、砂防を洗浄し、20ng/m1のTNF-(を補充した無血清MEM培地でインキュベートし(36時間)。細胞上清を収集して、細胞溶解物を作製した。(a)細胞溶解物をSDS-PAGEにかけ、LC/E発現及びSNAP23切断をウエスタンブロット(それぞれ(-3Xflag抗体及び(-SNAP23抗体を用いる。)によって測定した。ここで、*はSNAP23切断産物の移動を表す。IL−8(b)及びムチン(c)分泌に対して培養上清を分析した(ELISA、組換えLC/Eで処理した細胞を基準(1.0)として用いる。)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[I.一般論]
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「含む」は、「〜を含むが、それに制限されない」という意味を持つ。また、この用語は、「実質的に〜で構成された(必須成分として〜を有する)」及び、「〜からなる」の多少限定的な表現をも含む。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲に記載された単数形は、文脈が明らかでない限り、複数形をも含む。同様に、「単数形」、「1以上の〜」は本明細書を通して互換的に使用することができる。また、「〜を含む」、「〜を有する」、「〜を特徴とする」などの表現は、本明細書を通して交換的に使用することができる。
【0019】
特に規定がない場合、本明細書に記載された全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に言及された全ての刊行物及び特許は、化学薬品、器具、統計分析、及び、発明と関連して用いられる刊行物に報告された方法の記載及び開示を含む全ての目的から、参考までに、それら全体として本明細書の一部をなす。本明細書に記載された全ての参考文献は、当業者の技術レベルを示すものとして取り扱うべきである。
【0020】
[II.本発明]
本発明は、非神経(非ニューロン)SNAREタンパク質を切断(開裂)する(cleave)新規の遺伝子工学的ボツリヌス毒素(engineered botulinum neurotoxins(BoNTs))、及び、その使用方法を提供する。
【0021】
BoNTsは、ニューロンに対する(その毒素の)親和性(tropism)、及び、神経SNAREたんぱく質の特異的な切断に基づいて、斜視(strabismus)、眼瞼痙攣(blepharospasm)、顔面半側の痙攣(hemificial spasm)、および頸部ジストニア(cervical dystonia)などの様々な神経学的障害(neurological disorder)に対する有効な治療剤である。BoNTsを改質(改変)して非神経細胞を結合させることは、非ニューロン性SNAREイソフォームのほうにBoNTsの触媒活性を再標的化させて、有効な非ニューロン治療を提供することを必要とする。
【0022】
ここで、我々は、ヒトの非神経性分泌疾患を治療する新規の方法のためのプラットフォームとして、非神経性SNAREタンパク質、SNAP23を切断する触媒誘導体を操作することによって、BoNT/Eの基質特異性を伸ばす。「ヒトの非神経性分泌疾患(non-neuronal human secretory disease)」は、例えば、過度の気道粘液の分泌(excessive airway mucus secretion)、粘液の過剰分泌(mucus hypersecretion)が、喘息、及び、吸器疾患の一因となる慢性閉塞性肺疾患のようなヒト慢性疾患に関係する粘液貯留(mucus accumulation)を引き起こし得る疾病または状態を意味する。具体的には、我々は、今までなかった、SNAP23、非紳径SNAREたんぱく質を切断するBoNT/Eを操作することを見出した。
【0023】
SNAP23は、気道粘液、抗体、インスリン、胃酸、及び、イオンの分泌を含む、小胞−原形質膜(vesicle-plasma membrane)の融合プロセスを仲介する。本発明の変異BoNT/Eの軽鎖LC/E(K224D)は、SNAP23、及び、天然基質、SNAP25を切断する拡張基質特異性(extended substrate specificity)を示したが、SNAP29及びSNAP47に対しては、特異性を示さず、それらを切断することもない。培養ヒト上皮細胞への直接的なタンパク質送達の際に、LC/E(K224D)は、ムチン及びIL−8の分泌を阻害する内因性SNAP23を切断した。これらの研究は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患などの人間の分泌過多(hypersecretion)を治療する新規の方法のために、BoNTsの遺伝子操作を通じて非神経細胞SNAREタンパク質を標的化することの実現可能性を始めて実証した。
【0024】
一実施形態において、本発明は、SNAP23を特異的に切断できるボツリヌス神経毒Eの遺伝子工学的触媒ドメインの作製である。好ましくは、その毒素は、SNAP25を切断するが、SNAP29またはSNAP47は切断しない。LC/E(K224D)は、SNAP25及びSNAP23の両方を切断するが、Wt−LC/EがSNAP25を切断するよりは、〜10倍少ない。
【0025】
好ましい実施態様において、本発明の改変ボツリヌス神経毒Eは、軽鎖残基224または残基224に相当する残基における変異を有している。「残基224」は、配列番号7の224の位置のリジンを意味する。配列番号7は、第1のメチオニン残基のない配列番号1のDNA配列をたんぱく質に変換したものである。「残基224に相当する残基(residue corresponding to residue 224)」は、配列番号7の残基210〜240のモチーフ内のリジンを意味する。具体的には、残基MHELIHSLHGLYGAKGITTKYTITQKQNPLI(配列番号8)内の強調表示されたリジンを意味する。番号(numbering)はサブタイプ間で同一ではないかもしれないが、他のボツリヌスE型(サブタイプ)は、同様の相当する残基及びモチーフを有する。しかしながら、そのモチーフ残基は少なくとも90%が配列番号8のモチーフに相当する。
【0026】
GeneBank受託番号X62089(配列番号1)のボツリヌス毒素Eサブタイプベルーガ(Beluga)軽鎖の典型的な配列を挙げることができる。我々は、血清型Eのそれ以外のサブタイプが、SNAP23を切断できるLCを操作するテンプレート(template)として使用できると予想する。本発明と同様に、任意のボツリヌス毒素Eサブタイプの残基224を改変(操作)することもできるだろう。
【0027】
好ましい実施態様において、本発明は、軽鎖残基224に変異を有する組換えボツリヌス毒素Eの作製である。本発明の別の実施形態は、軽鎖残基224に変異を有するボツリヌス神経毒E軽鎖の作製である。本発明の別の実施形態は、軽鎖残基224に変異を有するボツリヌス神経毒触媒ドメイン(残基1〜400)の作製である。本発明の更なる別の実施態様は、改変残基(組換え残基)224を含んだ、少なくとも残基1〜390を含む、触媒ドメインの切断された断片(truncated fragment)である。「改変触媒ドメイン(modified catalytic domain)」は、残基224に変異を有するL/CBoNTの触媒ドメインの、ヒト化形態(humanized form)を含めて全ての形態を含むものを意味する。
【0028】
別の好ましい実施態様は、後述するように、適切な治療方法のため、別のペプチドに融合された改変触媒ドメイン(modified catalytic domain)又は変異(mutated)ボツリヌス神経毒E軽鎖である。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、ここに記載された改変触媒ドメイン又は遺伝子工学的ボツリヌス神経毒をコードするDNA配列である。
【0030】
SNAP23、SNAP25、SNAP29、及び、SNAP47の配列については、GeneBank受託番号CR457212(配列番号2)、NM_130811(配列番号3)、CR456582(配列番号4)及びBC011145(配列番号5)などを参照されたい。
【0031】
本発明の他の実施形態において、残基224の他の変異も適している。保護されるLC/E内の突然変異は、K224Dであるが、それは、SNAP23のP2残基、リジンを認識する。我々は、K224におけるグルタミン酸の変異が、SNAP23を切断できる官能性(functional)LC/Eをもたらし得ると考える。我々は、SNAP23及びSNAP25の両方を切断する能力(しかし、K224Dよりは性能(効率)に劣る)を有するK224A突然変異を作製した。それは、R基の電荷及びサイズが切断性能に影響を及ぼすことを示す。そこで、我々は、配列番号7の残基224におけるリジンをグルタミン酸に置き換える等のその他の残基置換によっても、SNAP23を切断する能力を有する変異LC/Eを作製しうると考えた。
【0032】
方法及び処置
他の実施形態において、本発明は、ボツリヌス毒素による治療を必要とする被験者を治療する新規の方法を提供する。一実施形態において、本発明は、前述のように、改変触媒ドメインの治療有効量を投与することによる、ヒト分泌疾患を患う被験者を治療する方法を提供する。
【0033】
「被験者(subject)」とは、ボツリヌス毒素による治療を必要とする者をいう。「治療する」または「治療」は、疾患(disease)、状態(condition)、または障害(disorder)と闘うために被験者を管理及びケアすることを意味する。その用語は、防止的(preventative)、すなわち予防的(prophylactic)治療、及び、緩和(palliative)治療の両方を含む。治療は、症状若しくは合併症の発症の防止(予防)し、症状若しくは合併症を軽減し、又は、疾患、状態、若しくは、障害を除去(排除)するための、本発明の化合物の投与を含む。一実施形態において、我々は、少なくとも20〜50%まで症状を減少させる本発明の方法を提案する。症状が反転されるまで、我々は、定期的に治療を行うことを提案する。例えば、一実施形態では、治療は、必要に応じて、毎日(daily)、週1回(weekly)、又は、月1回(monthly)行うことができる。
【0034】
「治療的有効量(therapeutically effective amount)」とは、疾病を治療するために被験者に投与するときに、かかる疾病を治療するのに十分な化合物の量を意味する。「治療的有効量」は、化合物、治療すべき疾病(状態)、治療される疾病の重症度、被験者の年齢及び相対的な健康状態、投与経路及び剤形、治療に携わる医師又は獣医師の判断、並びに、当業者に知られたその他の要因によって、異なり得る(40)。この方法は、被験者に本発明の遺伝子工学的ボツリヌス毒素Eの改変触媒ドメインを投与することを含み得る。用語「投与」とは、被験者に本発明の遺伝子工学的BoNTを伝達(宗達)することを意味する。触媒ドメインの好ましい形態は、ボツリヌス毒素E軽鎖であるが、その触媒ドメインは、残基~1-390までの触媒ドメインのC−末端切断型変異体(C-terminal truncation mutant)のような軽鎖よりも短い形態(41)、及び、HCRドメインのN−末端を含む残基〜F1200までの転座ドメイン(translocation domain)の断片又は転座ドメインを含み、かつ、前記軽鎖よりも大きい形態を含み得る。一実施形態では、我々は、良好な溶解性および活性を有する100〜400を操作した。
【0035】
一実施形態では、触媒ドメインが、共有結合を介して、または、それ以外の方法(例えば、架橋)による付着(attachment)によって、標的化分子(targeting molecule)(即ち、標的化システム)に複合体化されうる。その標的化分子は、目的とする細胞表面受容体に毒素を標的化するようになっている。
【0036】
上述のように、我々は、K224D突然変異のための効果的な伝達(送達)プラットフォームとしていくつかの形の触媒ドメインを提案する。例えば、タンパク質の溶解性は、操作されたキメラ及び適用(用途)によって異なり得るため、特定の適用(用途)には、大きさの異なる触媒ドメインのほうが一層有用となり得る。我々は、効果的な伝達プラットフォームの量が臨床治療に使用されたBoNTの量に似ていて、そして、効果的な伝達量がLC/EK224Dの触媒性質に基づいて小部分(fractional)であり得ると考える。
【0037】
他の実施形態では、適切な伝達システムは、一実施形態において、内在化された細胞表面受容体又は特定の細胞タイプを標的化し、そして、抗体または成長因子のように、細胞質(内)へLC/Eを伝達する。標的化され得る(潜在的な)細胞表面受容体は組織特異的増殖因子受容体を含むが、前記受容体は標的とされた病気によって異なり得る。例えば、当業者は、その通常の知識に基づいて、有毛細胞白血病(hairy cell leukemia)(42)におけるCD22の標的化方法について熟知しているのであろう。
【0038】
その代案として、脂質系たんぱく質(lipid-based directed protein)伝達システムは、LC/Eを直接ホストシトソルへ伝達するために用いられる。例えば、標的化−リポゾム伝達(LC/EK224D たんぱく質(39)をコードするDNA又は触媒ドメインたんぱく質(直接)を伝達する。)は、様々な疾病を治療するために本発明の遺伝子工学的BoNT/Eを伝達する有効な方法である。例えば、有効な伝達及び低減された免疫原性のためにナノ粒子を集合する脂質系伝達システムは、標的化小胞として有用であることが証明された(43)。異なる伝達方法は、標的化しようとする疾病に基づいて異なる利点をもたらし得るが、伝達システムの特異性は、特異的伝達システムを選択するにあたり、重要な要因になる。
【0039】
その効能(potency)を最適化するために、当業者に知られた幾つかの手法を用いて、改変触媒ドメインをヒト化することを提案する(34、35)。
【0040】
いくつかの伝達システムは、LC/E(K224D)、又は、その他の適当な毒素を、例えば、非分泌性又は過剰分泌性疾患の治療を必要とする被験者に治療的に伝達するために採用される。かかる伝達システムの例を挙げると、DNAレベルにおいて、又は、たんぱく質−受容体架橋(36)によって、改変触媒ドメイン、好ましくは、LC/E(K224D)が融合された単一鎖たんぱく質キメラ(single chain protein chimera)(36)、又は、改変触媒ドメイン、好ましくは、LC/E(K224D)が、ジプロテイン伝達システム(di-protein delivery system)で構成された融合(fusion)に結合しているバイパータートたんぱく質伝達システム(bipartate protein delivery systems)(37、38)などがある。例えば、非小細胞肺癌(non-small-cell lung cancer)を標的化するために、LC/E(K224D)をコードする遺伝子は、上皮成長因子をコードする遺伝子に遺伝学的に融合され得る。
【0041】
次の表(表1:受容体/疾病)は、本発明の遺伝子工学的毒素の適切な使用、及びお、標的化ドメインのための適切な標的を部分的に説明したものである。
【0042】
【表1】

【0043】
キット
本発明の一実施形態では、本発明の改変触媒ドメインで被験者を治療するためのキットが提供される。一実施形態において、そのキットは、本発明の遺伝子工学的BoNTの形態、及び、その使用のための指示書を含む。一実施形態において、本発明の改変触媒ドメインは、生理学的な状態において使用するために、製造され、伝達され、保管される。好ましい実施形態において、そのキットは、標的化システムを含み得る。その改変触媒ドメインは、その標的化システムに既に結合しているか、又は、そのキットは結合のための指示書とともに標的化システムを含む。その代案として、キットは、融合たんぱく質を特定組織特異的な標的化分子に操作するために用いられるLC/E(K224D)をコードするDNAを含む。
【0044】
「使用説明書(instructions for use)」は、刊行物、録音物、ダイヤグラム、または、本発明の有用性を伝達するのに用いられる任意の手段または媒体を意味する。キットの使用説明資料(instructional material)は、例えば、本発明を含む容器とともに包装され、又は、本発明を含む容器に揃えられ得る。その代案として、使用説明資料は、その容器から分離され、又は、本発明に関するインターネットウェブサイトから電子的に接近可能な形態として設けられ得る。生体適合性ハイドロゲルと強調的にに(受容者によって)使用され得る。
【0045】
[III.実施例]
以下の実施例は、本発明を説明するために設けたものであり、本発明の範囲を何らかの形で制限するものではない。ここに示したもの以外の本発明の様々な変更は、発明の詳細な説明及び実施例の記載から当業者にとって明らかであり、添付された特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0046】
A.方法及び材料
分子モデリング
分子モデリングは、スイス−モデル(SWISS-MODEL)を用いて行った。LC/E-SNAP25(146-202)複合体の構造は、参考文献(19)に記載されたように、LC/E (PDB:3d3x)の結晶構造を用いて得られた。LC/E(K224D)-SNAP23の構造葉、テンプレートとしてLC/E-SNAP25複合体構造を用いて、PyMolTMを用いてモデル化した。示したデータは、3回以上実施した実験の平均(値)である。
【0047】
プラスミド作製(構成)及びたんぱく質発現
Clostridium botulinum serotype E Beluga (配列番号: 1)のLC/E(1~400)をコードするDNAを増幅して、pET-15bへサブクローンすることで、BoNT LC/E発現ベクターを作製した。トランスフェクション実験のために、LC/E(1-400)をpEGFPベクターへサブクローンして、CMVプロモーター下で発現されたEGFP-LC/E (1-400)融合たんぱく質を産生した。SNAP25(145-206)のたんぱく質同等物(相当物)、SNAP23(152-211), SNAP29(202-259)、及び、SNAP47(406-464)の発現ベクターは、cDNA鋳型:SNAP23 (ATCC 2900640, 配列番号:2), SNAP29(ATCC 10700609, 配列番号: 4)、及び、SNAP47(ATCC 10468826, 配列番号: 5)をPCR増幅し、pGEX-2Tへサブクローンすることによって、作製された。 部位特異的突然変異は、QuickChange (Stratagene)を用いて行った。たんぱく質の発現及び精製は、前述のとおり(32)、実施した。
【0048】
LC/E及びLC/E(K224D)によるSNAREたんぱく質の切断
SNAREたんぱく質の切断は前述のように行った。
【0049】
直線速度反応(Linear velocity reaction)
含まれた反応物(10 μ1): 5 μMのヒトSNARE たんぱく質、10mMのTris-HC1 (ph 7.6、20 mM NaC1を有する)、並びに、指示量のLC/E及びLC/E(K224D)。反応物を37℃で10分間インキュベートし、SDS-PAGEにかけ、ゲルをクーマシィー(Coomassie)で染色した。SNAREたんぱく質切断量(amount of SNARE protein cleavage)を密度(濃度)測定(densitometry)によって決定した。
【0050】
動力学的パラメーター(Kinetic parameters)
SNAP25イソフォームを用いて、Wt-LC/E and LC/E誘導体に対するKm及びkcatを決定した。LCの濃度を調整して、幾つかの基質濃度(1.5~18μMのSNAREたんぱく質)において<10%(の)基質を切断した。反応を37℃で10分間行い、SDS-PAGEにかけ、切断生成物の量(amount of cleaved product)を密度(濃度)測定によって計算した。Lineweaver-Burkプロット、SigmaPlot IX (Chicago, IL)を用いて、反応速度対基質濃度をミカエリス・メンテン式にあてはめた。
【0051】
ヒト培養上皮細胞におけるLC/E及びLC/E(K224D)の活性
HeLa細胞を、10%子牛血清(newborn calf serum)を加えたMEM中6ウェルプレートにおいて培養した。準融合細胞(sub-confluent cells)を、Lipofectamine LTX (GIBCO/BRL)を用いて、0.5又は1.0 μgの指示プラスミドでトランスフェクトさせた。
【0052】
タンパク質伝達
たんぱく質伝達は、参考文献(33)の手法に変更を加えて行った。HeLa細胞を、30 μMのジギトニンを含む透過性バッファー1ml/ウェルで7分間透過処理し、指示LCを有する、及び、有しない透過性バッファーにおいてインキュベートした。
【0053】
たんぱく質分泌分析
一晩インキュベートした後、トランスフェクトされ、たんぱく質伝達された細胞を、20ng/mlのTNF-αを含んだ2mlの無血清MEMにおいてインキュベートした。36時間後、1.5 mlの上清を収集し、13,000 g(1分)の遠心分離にかけ、そして、ELISAを用いて、分泌されたムチン及びIL−8について分析した。上清(150 μl)を50 μlの0.2 M Na2CO3 (pH 9.6)と混合し、96-ウェルプレートに加え、そして、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄して、1%(w/v)BSAを含んだ50 mM Na2CO3(pH 9.6)バッファーでロックした(固定した)。プレートを洗浄して、RTにおいて100μlのα-ムチンIgG(1/200希釈、 Abcam)又はα-IL-8 IgG (1/200希釈, Abcam)とともに1時間インキュベートした。プレートを洗浄して、RTにおいてα-mouse Horse Radish Peroxidase-接合抗体(conjugate antibody)(1:10,000希釈、Pierce) とともに1時間インキュベートした。プレートを洗浄して、RTにおいて100μlのUltra-TMB (Pierce)を用いて20分間現像し、100μlの1M H2SO4. で急冷させた。対照上清において分泌されたムチン及びIL−8に対する(相対的な)部分(画分)としてA450を表した。
【0054】
SNAP23の切断
TNF-αとともにインキュベートされた(36時間)細胞からの溶解物を、ウエスタンブロット法(19)に基づいて、α-SNAP23マウスIgG(Abcam, Cambridge, MA)を用いて、LC/E及びLC/E(K224D)仲介(介在)の内因性SNAP223の切断について分析した。
【0055】
伝達システム(伝達系)
次の伝達方法に基づいて、変異BoNTを被験者に投与した。
【0056】
標的特異的細胞受容体
分子生物学分野における通常の知識を有する者は、PCR等のプロトコールに基づいて、標的化分子に融合されたLC/E(K224D)のキメラを操作することができるであろう。
【0057】
脂質系:
脂質系伝達システムの使用の分野における通常の知識を有する者は、脂質対たんぱく質マトリックス(lipid to protein matrix)を用いて、LCの有効な内在化のために脂質LC/E(K224D)比率を適合させることができるであろう。
【0058】
方法及び治療
本発明の遺伝子工学的BoNTは、一実施形態において、過剰分泌(hyper−secretory)及び非分泌性(non-secretory)疾病を治療するために、被験者に投与された。当業者は、有毛細胞白血病における抗毒素療法(immunotoxin therapy)の開発に用いられた戦略に従って、遺伝子工学的BoNTを用いた治療に対し被験者を識別(確認)し、その治療を行い(投与し)、その結果をモニターし、そして、その治療の有効性を決定することができるだろう。
【0059】
B.結果
以前の研究では、インビトロ切断(19)においてLC/Eに対する206アミノ酸たんぱく質、SNAP25の最小の最適なペプチドとして残基167〜186を同定した。SNAP25 (167-186)は、基質結合「B」領域、及び、活性部位「AS」領域を含む2つのサブサイト(sub−site)を含む(図1a)。LC/Eは、P3残基を認識して、SNAP25のP2及びP1’残基の配列(alignment)を促す。LC/EのS1’ポケットは、LC/EのF191とSNAP25(20)のP1’残基I181間の疎水性相互作用とともに、F191、T159、及び、T208 によって形成される。ベーシック(basic)S2ポケットは、K224を含むが、それ(K224)が、(予想)塩橋(salt bridge)を通じて、P2残基D179を認識する。LC/Eの活性部位ポケットへのSNAP25のP2及びP1’残基をドックさせる(dock)ことによって、切断のために切ることができる結合がそろえられる(19、20)。
【0060】
BoNT/Eは、ヒトSNAP23を切断しないで(8)、BoNTのSNAPイソフォーム特異性を定めるフレームワークを提供するものと知られていた。SNAP25のLC/E認識に寄与する多くの残基は、ヒトSNAP23において保存されていた(T173/A179、D179/K185、M182/T188、及び、E183/D189それぞれを除く。)(図1b)。SNAP25におけるT173は、LC/E基質認識(20)に限られた役割のみを果たし、かつ、M182-D186の主な鎖相互作用(main chain interaction)だけがLC/E基質認識に寄与した。したがって、SNAP25及びSNAP23間のT173/A179, D179/K185, M182/T188及びE183/D189相違が、cleのSNAP23を切断する力がないことの一因となるものとは見られなかった。対照的に、SNAP25のP2残基、D179は、cle基質認識に貢献する塩基性残基、K224を介してcleの塩基性S2ポケットによって認識される(図1c、上側パネル)。したがって、本発明者は、SNAP25のD179とLC/EのK224間の塩橋が、cleのSNAP25を切断する力に貢献するか否か、及び、cleのK224とSNAP23のS2残基、K185間の電荷斥力が、cleにSNAP23を切断する力がないことに貢献するか否かを調べた。この仮説を検証するために、点突然変異(point mutation)K224DをLC/Eに導入し、ヒトSNAP23を切断する力に対してテスト「した(図1c、下側パネル)。
【0061】
LC/E(K224D)は、ヒトSNAP23を切断した(ここで、Kmは~3μMであり、kcatは~17S-1である(図2)。これらの値は、ヒトSNAP25の切断に対するLC/EのKmの2倍、及び、kcatの5倍に相当する。)。LC/E(K224D)によるSNAP23切断の特異的活性は、BoNTのB血清型によるVAMP-2の切断に匹敵し、破傷風毒素によるVAMP−2の切断よりも〜10倍速い。LC/E(K224D)がSNAP23を切断する部位は、MALDI-TOF MSによって同定され、そして、SNAP23及びLC/E(K224D)を含む反応混合物中でm/z値2812.5の主要(主な)ピークが同定されたが(図3)、それは、ヒトSNAP23のC−末端の25アミノ酸、IKRITDKADTNRDRIDIANARAKKLIDS(配列番号6)に相当する。これは、LC/E(K224D)が186R-I187間においてSNAP23を切断することを指示した。LC/E(K224D)がSNAP23(I187D)を切断しなかった(図3b)という判断は、LC/E(K224D)が残基186R-I187間においてSANP23を切断したことを支持した。
【0062】
SNAP25イソフォームは、SNAP25a、SNAP25b、SNAP23a、SNAP23b、SNAP29、及び、SNAP47を含む(23, 24)。SNAP23及びNAP25は、それぞれ非神経及び神経細胞においてシナプス膜型(synaptic membrane fashion)を仲介するが、SNAP29及びSNAP47は膜型イベント(membrane fashion event)にかかわるものではない。SNAP29はSNARE分解を阻害して、シナプス伝達に関与した(25)。SNAP47の機能は明確ではないが、SNAP47はSNARE複合体の形成及びプロテオリポソーム(proteoliposome)型においてSNAP25の代わりとなり得る。SNAP23a, SNAP25b, SNAP29及びSNAP47を含むspan25イソフォーム上におけるLC/E(K224D) の基質特異性をテストした。SNAP23b及びSNAP25aはテストしなかったが、それは、SNAP23及びSNAP25のa-bイソフォームがLC/E基質認識領域において同じだからである(図4a)。LC/E(K224D)はSNAP23及びSNAP25の両方に対して同様の活性を示したが(図4b)、SNAP29及びSNAP47を切断しなかった。Wt-LC/EはSNAP25を切断したが(図4c)、その他のSNAP25イソフォームを切断しなかった。SNAP23及びSNAP25に対する別のLC/E K224突然変異(K224A)の特異性がまた確認された。LC/E(K224A)は、SNAP23及びSNAP25を切断したが(両方に対して同程度の有効性を有する。)、LC/E(K224D)(データ示さず)よりも(速度が)遅かった。
【0063】
次に、HeLa細胞における内因性SNAP23を切断するLC/E(K224D)の力(能力)をテストした。構成的なエキソシトシス(constitutive exocytosis)におけるSNAP23の役割は明確ではないが(26)、SNAP23は調節されたエキソシトシス(regulated exocytosis)に貢献する(27)。~60%のHeLa細胞集団をLC/E(K224D)でトランスフェクトした結果、SNAP23の〜45%が切断されたが、HeLa細胞がWt-LC/E又は非プラスミド対照群(no plasmid control)でトランスフェクトされたとき、SNAP23切断は検出されなかった(図5)。これは、Wt-LC/Eではなく、LC/E(K224D)が培養細胞において内因性SNAP23を切断することを指示する。HeLa細胞分泌に対するSNAP23切断の効果は、LC/E(K224D)によってトランスフェクトされたHeLa細胞において、TNF-α仲介(媒介)ムチン及びIL−8分泌を分析することによって、テストされた。対照群HeLa細胞は、TNF-αを加えるとムチン及びIL−8を分泌したが、LC/E(K224D)によってトランスフェクトされたHeLa細胞では、ムチン及びIL−8の分泌が減少した(図5b及び5c)。阻害は特異的であるが、それは、Wt-LC/EによってトランスフェクトされたHeLa 細胞が対照群と同量のムチン及びIL−8を分泌し、そして、内因性SNAP23を切断しなかったからである(図5)。
【0064】
たんぱく質治療にLC/E(K224D)を用いる実現可能性をテストするために、ジギトニンを用いて、組換えLC/E(K224D)をHeLa細胞へ伝達した。組換えLC/E(K224D)は、内因性SNAP23を切断したが(図6)、それは、TNF-αを介してのムチン及びIL−8の分泌を阻害した(図6b及び図6c)。また、ジギトニン処理は、Wt-LC/EをHeLa細胞へ伝達したが、Wt-LC/E処理されたHeLa細胞は、ムチン及びIL−8分泌の検出可能な阻害を示さず、かつ、内因性SNAP23を切断しなかった(図6)。これは、上皮細胞の調節されたエキソシトシス経路におけるSNAP23の役割を支持し、かつ、SNAP23によって調節されたエキソシトシスを研究するリサーチツールとしてのLC/E(K224D)の有用性を指示する(27)。
【0065】
C.結論
ボツリヌス神経毒の基質特異性の理解によって、拡張された基質特異性を有するBONT/Eの新規の軽鎖誘導体の操作が可能となり、神経学的適用以外にBONTの臨床治療を広げられる証拠を提供する。気道粘液は、 繊毛運動によって気道からの外部の破片(即ち、異種の破片)、細菌、及び、ウイルスを捕まえて除去することで上皮層を保護するが、粘膜毛様体クリアランス(mucociliary clearance)(17、18)と呼ばれるプロセス、過剰な気道粘液の分泌、粘液の過剰分泌は、粘液の蓄積が呼吸器疾患の一因となる慢性閉塞性肺疾患及び喘息のようなヒトの臨床症状(病態)にかかわる粘液の蓄積を引き起こし得る。粘液の分泌は、エキソシトシス(17,18)のために分泌細胞原形質膜とムチン含有小胞のドッキング(docking)を調整する(統合する)Muncタンパク質、SNARタンパク質、及び、ミリストイル化アラニン豊かなCキナーゼ基質(myristoylated alanine-rich C kinase substrate:MARCKS)を含んだいくつかの分子が連係された、制御されたプロセスである。基質改変されたBoNTによるSNAP23の標的化は、過剰分泌症候群の分泌プロセスを減らすことができる。また、SNAP23特異的BoNTは、分泌過多の要素(成分)(28、29)を含む免疫疾患、炎症性疾患、及び、糖尿病を含むそれ以外の治療的適用の標的とされ得る。
【0066】
配置(alignment)及び生化学的分析によって、SNAP25イソフォームに対するWt-LC/E及びLC/E(K224D)の触媒活性のメカニズムを予想できるようになる。SNAP25に対するSNAP29及びSNAP47の活性部位領域(内)における低い全盤的な相同性、及び、P1’部位におけるイソロイシンの欠如によって、Wt-LC/E及び LC/E(K224D)がSNAP29及びSNAP47を切断しないことが説明できる。対照的に、SNAP23及びSNAP25間の全盤的な相同性は高い(P2, P2’及P3’残基を除く(SANP25がアスパラギン酸(塩)を含み、そして、SNAP23がリジンを含むP2残基において最も変化が激しい。))。したがって、Wt- LC/EがSNAP23を切断できない理由の一つに、LC/EのK224によるSNAP23内のP2残基リジンの静電反発力があり得る。これは、S2ポケットの安定性を損ない、S1’ポケットへのP1’残基の配置(alignment)に影響を及ぼし得る。SNAP23を切断するLC/E(K224D)の力は、SNAP23のP2残基リジンと、突然変異S2ポケット残基D22間の塩橋の導入によるものであり得る。また、LC/E(K224D)は、(その速度は)Wt-LC/Eより〜10倍遅いものの、SNAP25を切断する能力を保持する。これは、SNAP25のP2残基、アスパラギン酸(塩)と変異S2ポケット残基D224間の反発力が、LC/E(K224D)による固着結合切断(sessile bond cleavage)を阻害するのに十分でないことを示唆する。
【0067】
LC/E(K224A)はSNAP25及びSNAP23を切断するが、その速度は、LC/K224Dに比べて遅いため、残基224におけるR基の電荷及びサイズの両方が、最適な固着結合切断に寄与する。全体として、LC/E及びLC/E-K224誘導体の生化学的性質は、固着結合切断の有効性(効率性)に寄与するP2残基−S2ポケット残基の相互作用と一致する。対照的に、SNAP23及びSNAP25間の全盤的な相同性は高い(P2、P2’及P3’残基を除く(SANP25がアスパラギン酸(塩)を含み、そして、SNAP23がリジンを含むP2残基において最も変化が激しい。))。したがって、Wt-LC/EがSNAP23を切断できない理由の一つに、LC/EのK224によるSNAP23内のP2残基リジンの静電反発力が挙げられる。これは、S2ポケットの安定性を損ない、S1’ポケットへのP1’残基の配置(alignment)に影響を及ぼし得る。
【0068】
SNAP23を切断するLC/E(K224D)の力(能力)は、SNAP23のP2残基リジンと、突然変異S2ポケット残基D22間の塩橋(salt bridge)の導入によるものであり得る。また、LC/E(K224D)は、(その速度は)Wt-LC/Eより〜10倍遅いものの、SNAP25を切断する能力を保持する。これは、SNAP25のP2残基、アスパラギン酸(塩)と変異S2ポケット残基D224間の反発力が、LC/E(K224D)による固着結合切断(sessile bond cleavage)を阻害するのに十分でないことを示唆する。LC/E(K224A)はSNAP25及びSNAP23を切断するが、その速度は、LC/EK224Dに比べて遅いので、残基224におけるR基の電荷及びサイズの両方が、最適な固着結合切断に寄与する。全体として、LC/E及びLC/E-K224誘導体の生化学的性質は、固着結合切断の有効性(効率性)に寄与するP2残基−S2ポケット残基の相互作用と一致する。SNAP23に結合する天然のLC/Eの能力は測定(決定)されていないが、LC/E及びSNAP25、並びに、LC/E(K224D)及びSNAP23の動力学的(数)値が2倍内(within 2-fold)であることから、類似した(同様の)結合親和性が指示される。
【0069】
LC/E結合部位におけるSNAP25及びSNAP23の配置(図1)において、7又は8残基がほぼ同一であり、同一でない残基対はT:Aである;保存された置換対(conserved substitution pair)は、SNAP25及びSNAP23に対するLC/Eの同程度の結合親和性を支持する。SNAREたんぱく質は、神経分泌経路(9)内の膜融合及びトラフィッキング(trafficking)における重要なたんぱく質である。BoNTの使用は、神経細胞における小胞融合及び神経伝達物質の放出メカニズムを理解するのに役立つ。非神経性SNAREを切断するBoNT誘導体の能力は、非神経性系における膜融合メカニズム、及び、細胞内小胞トラフィッキングを調べるための有用なツールを提供する。
【0070】
BoNT/Aは、その広範囲な臨床適用に基づいて、理論上の血清型が新規の用途(適用)のために操作されると考えられるが、SNAP25認識メカニズムの分析結果から、LC/Aが、LC/E(20)よりも、多くの残基相互作用を有する最適なSNAP25用の、より長い基質を必要とすることが指示された。より複雑でない(less complex)SNAP25-LC/E相互作用によって、BoNT/Eが、基質認識を改質(改変)するために操作されやすくなる。また、ヒトSNAP25及びSNAP23の配置(配列)は、これらのたんぱく質が、LC/EによるSNAP25認識に関与するP3及びPI’部位において高度な相同性を有することを示した。したがって、BoNT/Eは、SNAREたんぱく質認識をもたらす突然変異を操作する有用なプラットフォームである。IL−8及びムチン分泌を阻害するための細胞へのLC/E(K224D)の成功した伝達は、リサーチツールとしてのLC/E(K224D)の役割を支持するとともに、喘息及び炎症性疾患のようなヒト分泌過多疾患(human hypersecretion disease)を制御(調節)する治療の可能性を示す。LC/EK224Dの治療的特異性は、受容体結合成分(receptor binding component)に基づくであろう(例えば、ジフテリア毒素A断片―IL2(30)、及び、外毒素A断片−IgG可変領域断片(31)のような毒素キメラ参照)。結論として、現在の研究から、変えられた(改質された)基質特異性が、神経学的苦痛を越えてBoNTの適用を拡張できる、という原則の証拠が示される。
【0071】
前述した説明、添付した図面は、あくまでも本発明を説明するために設けたものであり、本発明を制限するものではない。そこに記載された内容から、当業者はその変更及び変形を実施できるだろう。そうした本発明の変形及び変更全ては、本発明の範囲に含まれる。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖残基224又は、残基224に相当する残基が改変された改変BoNT/E触媒ドメイン。
【請求項2】
請求項1に記載の改変触媒ドメインを含むボツリヌス毒素触媒ドメイン、若しくは、遺伝子工学的ボツリヌス神経毒E、又は、ボツリヌス神経素軽鎖。
【請求項3】
前記触媒ドメインがSNAP23を切断する、請求項1に記載の改変触媒ドメイン。
【請求項4】
前記触媒ドメインが、SNAP25を切断するが、SNAP29又はSNAP47を切断しない、請求項1に記載の改変触媒ドメイン。
【請求項5】
残基224、又は、残基224に相当する残基が、アスパラギン酸又はグルタミン酸に改変された、請求項1に記載の改変触媒ドメイン。
【請求項6】
たんぱく質伝達システムに有用な標的分子を更に含む、請求項1に記載の改変触媒ドメイン。
【請求項7】
ボツリヌス毒素治療を必要とする被験者を治療する方法であって、治療に有効な量の請求項1に記載の改変触媒ドメインを前記被験者に投与するステップを含む、方法。
【請求項8】
前記被験者が、喘息、CF、慢性閉塞性肺疾患、胃酸流出及び炎症、サイトカイン成分にかかわる免疫疾患、又は、サイトカイン成分にかかわる癌を患う、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524093(P2012−524093A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506125(P2012−506125)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030875
【国際公開番号】WO2010/120766
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(500345401)エムシーダブリユー リサーチ フオンデーシヨン インコーポレーテツド (6)
【Fターム(参考)】