説明

遺伝子指向性プロドラッグ療法における酵素の表面発現

【課題】プロドラッグを用いて、患者の腫瘍細胞を特異的に攻撃する治療法を提供する。
【解決手段】腫瘍の治療に有効な、(a)細胞の表面上に酵素を発現可能な(ウイルス)ベクター;及び(b)(活性低下の原因となる)糖鎖を欠いたカルボキシペプチダーゼによって、活性のある薬剤に転換可能なプロドラッグを含む、互いに関連して使用するための2つの成分システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の紹介および背景
本発明は、遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法[gene directed enzyme prodrug therapy (GDEPT)]、および腫瘍を含む疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
”ウイルス−指向性酵素プロドラッグ療法[virus-directed enzyme prodrug therapy (VDEPT)]”と称される治療アプローチが、プロドラッグを用いて患者の腫瘍細胞を処置する方法として提唱されている。腫瘍細胞は、プロドラッグを活性化し得る酵素をコードする遺伝子を有するウイルスベクターによって標的化される。該遺伝子は、組織特異的なプロモーターまたはエンハンサー配列によって、転写的に調節され得る。ウイルスベクターは、腫瘍細胞に入り酵素を発現し、この結果、プロドラッグは腫瘍細胞内で活性薬物に変換される(ヒューバー(Huber)ら、プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスイズ(Proc. Natl. Acad. Sci.)、USA (1991) 88, 8039)。別の方法として、遺伝子運搬(delivery)のために非ウイルス的方法が使用されてきている。そのような方法には、リン酸カルシウム共沈殿法、マイクロインジェクション法、リポソーム法、直接的DNA取り込み法、およびレセプター介在性DNA転移法(receptor-mediated DNA transfer)が含まれる。これらは、モーガン・アンド・フレンチアンダーソン(Morgan & French Anderson)、アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Annu. Rev. Biochem.)、1993, 62; 191 に概説されている。用語”GDEPT”(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法(gene-directed enzyme prodrug therapy))は、ウイルスおよび非ウイルスの両方の運搬システムを包含するために用いられる。
【0003】
GDEPTシステムの成功は、2つの制限因子(limiting factor)に依存する。該システムには、感染されるべきベクターによって標的化されることが必要な細胞が要求される。細胞が感染しなければ、細胞内で活性薬物は産生されないので、殺傷するためには、他の感染細胞内で産生された活性薬物をバイスタンダー・エフェクト(bystander effect)によって細胞に導入する必要がある。細胞内で製造されたすべての活性薬物が、細胞にこれをせしめ得るわけではない。さらに、プロドラッグが細胞に入ることが求められる。プロドラッグの中には細胞膜を通過できないものもある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の開示
これらの問題を解決するために、本発明は:
(a)細胞表面で酵素を発現し得るベクター;および
(b)該酵素によって活性薬物に変換し得るプロドラッグ
を含む、相互に関連して用いられる2成分システムを提供するものである。
該ベクターはRNA若しくはDNAベクターであってもよい。それはウイルスベクターに由来するものであってもよく、腫瘍細胞の標的化に、当業界で入手し得るあらゆる好適なベクターが含まれる。
【0005】
本発明はまた、患者の治療法に使用するための本発明のシステム、および治療が必要な患者の腫瘍を処置する方法を提供するものであり、該処置は、細胞表面で発現可能な、酵素をコードするベクター、及び該酵素によって活性薬物に変わることができるプロドラッグの有効量を患者に投与することを包含するものである。
【0006】
発明の詳細な説明
A.ベクターシステム
好適なベクターシステムの例には、公知の、モロニーマウス白血病ウイルスに基づくベクターが含まれる(ラム、ゼット(Ram, Z)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research) (1993) 53; 83-88; ダルトン・アンド・トレイスマン(Dalton & Treisman), セル(Cell) (1992) 68; 597-612)。これらのベクターは、β−グロビン最少プロモーターで上流をクローンされたマウス白血病ウイルス(MLV)エンハンサーを有している。開始ATGまでのβ−グロビン5'非翻訳領域は、クローン化された蛋白質の効率よい翻訳をもたらすために供給される。イニシエーターATGは、NcoI制限部位にまたがっており、ベクターに蛋白質コーディング配列をクローン化するために使用され得る。このベクターは、更に、クローニングを促進するためのポリリンカー、それに続いて、β−グロビン3'−非翻訳領域およびポリアデニレーション部位を含んでいる。MLVエンハンサーは、強力なエンハンサーであり、かつ大抵のマウスおよびヒトの細胞株中で活性を有するため、特に有用である。
【0007】
好適なウイルスベクターは、更に、レトロウイルスに基づくベクターを包含する。そのようなベクターは、当業界で広く入手が可能である。ヒューバー(Huber)ら(同書)は、肝癌、胸、結腸または皮膚の細胞の形質転換に両種性レトロウイルスの使用を報告している。カルバー(Culver)ら(サイエンス(Science)(1992) 256; 1550-1552)は、またGDEPTにおけるレトロウイルスベクターの使用を述べている。そのようなベクターまたはそのようなベクターから派生したベクターも使用できる。他のレトロウイルスもまた、本発明での使用に適したベクターの調製に使用することができる。そのようなレトロウイルスには、ラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれる。そのようなウイルス由来のプロモーターは、MLVについて上述した方法と類似の方法で、ベクター中で用いられてもよい。
【0008】
イングレハード(Englehardt)ら(ネイチャー・ジェネティックス(Nature Genetics)(1993) 4;27-34)は、嚢胞性繊維症トランスメンブラン・コンダクタンス・プロダクト(cystic fibrosis transmembrane conductance product (CFTR))を細胞に運搬する際における、アデノウイルスに基づくベクターの使用を記載しており、そのようなアデノウイルスに基づくベクターもまた使用され得る。アデノウイルスプロモーターおよび他の制御配列を利用するベクターは、本発明のシステムを肺の中の細胞に運搬するのに役に立ち得るため、肺腫瘍の治療に有用である。
【0009】
一般的に、ベクターは、VDEPTまたはGDEPT療法で用いられる任意のDNA若しくはRNAベクターであってもよい。
【0010】
B.酵素
酵素は、特に哺乳類(とりわけヒト)細胞において、常態では細胞表面で発現せず、また血液循環中にも放出されない酵素であって、プロドラッグを活性薬物に変換し得る酵素である。酵素は、ヒトに天然には生じない哺乳類の酵素または常態ではプロドラッグに影響しないヒトの酵素であってもよい。これには、プロドラッグに対して選択的であるように改変された、他の種に由来する酵素および哺乳類の酵素が含まれる。換言すると、かかる改変(alteration)は、天然酵素がプロドラッグを活性薬物に変換する速度が、改変酵素が作動する速度よりも、一若しくはそれ以上の桁数遅いことを意味している。改変酵素は、標準的な組換えDNA技術、例えば酵素のクローニング,その遺伝子配列の決定,および部位特異的突然変異のような方法による遺伝子配列の改変、によって調製されてもよい。
【0011】
酵素は、通常、プロドラッグから保護基をはずすことにより、プロドラッグを活性薬物に変換する。大抵の場合、保護基はプロドラッグから全体として切断される。しかし、酵素は、保護基の一部を切断するか若しくは単純に改変することが可能であり、この結果として部分的に切断され若しくは改変された保護基が不安定となり、その結果残りの基の自発的な除去が生じる。そのようなプロドラッグは、以下に述べるニトロレダクターゼ酵素に関連して特に有用である。
【0012】
好ましくは、酵素は非哺乳類の酵素である。好適な非哺乳類の酵素には、細菌の酵素が含まれる。細菌酵素には、WO88/07378に開示されるカルボキシペプチダーゼG2(CPG2)のようなカルボキシペプチダーゼ、シュードモナス属(Pseudomonas)のγ−グルタミルヒドロラーゼ EC3.4.22.12(レビィ・シーシー・アンド・ゴールドステイン・ピー(Levy CC & Goldstein P) ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)242; p2933 (1967))、およびWO93/08288に開示される大腸菌(E.coli)ニトロレダクターゼのようなニトロレダクターゼが含まれる。他の好適な酵素の例には、チミジンキナーゼ(tk)、特にVZVまたはHSVtkのようなウイルスのtk;およびβ−ラクタマーゼおよびβ−グルコロニダーゼが含まれる。他の酵素には、ペニシリンV・アミダーゼ、ペニシリンG・アミダーゼおよびシトシン・デアミナーゼが含まれる。
【0013】
本発明のベクターシステムで発現された酵素は、一般にゴルジ装置および小胞体を通ってプロセッシングを受け、細胞表面に到達する。N−結合(linked)グリコシル化は、ゴルジ装置および小胞体中で、Asn−Xaa−Ser/Thr(Xaaは任意のアミノ酸である)の一次アミノ酸配列を有するモチーフで生じ、グリコシル化はそのAsn残基上で起こる。場合によっては、このグリコシル化は、グリコシル化されていないネイティブフォームと比較して、酵素活性の低下をもたらし得る。このため本発明のベクターは、1若しくはそれ以上のグリコシル化部位が置換、欠失または挿入により変更されるように、改変されることが望ましい。
【0014】
例えば、CPG2の一次アミノ酸配列内には、Asn222残基、Asn264残基およびAsn272残基に位置する3つの、このような共通のモチーフがある。これらの部位が1若しくはそれ以上改変されていることが、CPG2が本発明で用いられる場合には好ましい。好ましくは、改変は、ロイシンまたはグルタミンへの置換である。
【0015】
一般に、酵素に対する改変は、例えば、1個、2個、3個、4個、5個若しくはそれ以上のアミノ酸の欠失または挿入も可能であるが、特に好ましくは、少なくとも1個から全てのグリコシル化部位のアミノ酸の置換である。少なくとも、酵素が、プロドラッグを活性薬物に変換する能力を、非改変であってグリコシル化されていない酵素と実質的に同じ割合で保持するような改変である。これに関連して、”実質的に変わらない”とは、望ましくは1桁の範囲内であり、より好ましくは約2倍低いものから2倍、5倍若しくは10倍高いものである。
【0016】
特異的な変更に加えて、酵素は、上で定義するように酵素活性が実質的に変わらなければ、別の方法で、末端切断(truncation)、置換、欠失もしくは挿入によって改変されてもよい。例えば、N−および/またはC−末端配列での短い切断(truncation)は、ベクターを作成するために必要な操作の結果として生じ得るものであり、当該ベクター中では、酵素をコードする核酸配列が本明細書に記載される種々の他のシグナル配列と結合している。改変された酵素の活性は、実施例に記載されるようなモデルシステム中で測定することができる。
【0017】
切断された酵素の一例は、配列番号1のアミノ酸23から415を含むCPG2*である。
【0018】
本発明の更なる局面において、1乃至それ以上のグリコシル化部位が、置換、欠失または挿入によって改変されている細菌のカルボキシペプチダーゼを含むベクターが提供される。カルボキシペプチダーゼは、好ましくは、1若しくはそれ以上の置換、欠失または挿入を除いて、配列番号1のアミノ酸配列を有するCPG2である。更なる置換、欠失または挿入を含みながらも実質的に変わらないカルボキシペプチダーゼ活性を保持している、そのようなカルボキシペプチダーゼの変異体も、本発明のこの局面の更なる一部である。そのような変異体は、例えば上で論じるような末端切断(truncated)された酵素を含んでもよい。
【0019】
本発明はまた、カルボキシペプチダーゼ等をコードするRNA若しくはDNAであってもよい核酸、およびベクター(当該核酸を有するベクターを含む)を提供する。核酸は、好ましくは配列番号1(1若しくはそれ以上のグリコシル化部位を除去するために変更されたところを除く)で示されるもの、または前述するカルボキシペプチダーゼの変異体をコードするフラグメントである。ベクターは、発現ベクターであってもよく、その中で該核酸は、宿主細胞と適合性のあるプロモーターと作動可能となるように結合している。このように、本発明は本発明の発現ベクターを含む宿主細胞をも提供するものである。宿主細胞は、細菌(例えば、大腸菌(E. coli))、昆虫、酵母または哺乳類(例えば、ハムスターまたはヒト)のものであってもよい。
【0020】
本発明の宿主細胞は、前述のカルボキシペプチダーゼ酵素またはそのフラグメントの生産方法であって、宿主細胞を、該酵素またはフラグメントが発現する条件下で培養し、実質的に単離されたフォームで該酵素またはフラグメントを回収することを含む生産方法において、使用され得る。酵素またはフラグメントは、融合蛋白として発現されてもよい。
【0021】
C.他のベクター成分
本発明のシステムにおいて、酵素は、該酵素を哺乳類細胞の表面に導くシグナル配列に結合していてもよい。これは通常、細胞表面に酵素を導く能力を保持した哺乳類のシグナル配列若しくはその配列の誘導体である。これは、酵素がこのことを行う内在性のシグナル配列を有していない限り必要とされる。酵素がそのようなシグナル配列を有している場合でも、これは所望の若しくは適切な他のシグナル配列に置換し得る。好適なシグナル配列には、c−erbB2(HER2/neu)シグナル配列のようなトランスメンブラン・レセプター・チロシンキナーゼ中に見出されたもの、または細胞表面での酵素発現を指示(directed)する能力を保持するその変異体が含まれる。c−erbB2シグナル配列は、コウセンズ(Coussens)ら(1985) サイエンス(Science) 230; 1132-1139 を参照することによって得ることができる。
【0022】
本明細書の実施例に記載の実験は、この変異体または他のシグナル配列について、細胞表面での酵素発現の能力を測定するために用いられてもよい。変異体は、分子生物学の分野で公知の標準的な技術(例えばシグナル配列を含むベクターの部位特異的突然変異)を用いて生産されてもよい。
【0023】
更に好適なシグナル配列には、ヴォン・ヘイジン(von Heijne) (1985) ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.) 184; 99-105)による総説中に見いだされるものが含まれる。
【0024】
本発明のシステムの酵素は、細胞の表面で発現される。このことは、酵素をプロドラッグと相互作用させるように細胞外に露出させる様式で酵素は発現されるが、適する原形質膜・アンカー(plasma membrane anchor)によって、該酵素は原形質膜にまだ付着していることを意味する。適するアンカーは、該ベクターによって発現されるポリペプチドアンカーである。例えば、細胞膜中に酵素を固定化(anchor)するトランスメンブラン領域である配列に、酵素は連結(link)する。そのようなトランスメンブラン領域は、c−erbB2、EGFレセプターおよびCSF−1レセプターのようなトランスメンブラン・レセプター・キナーゼに由来し得るものである。c−erbB2トランスメンブラン領域は、下記の実施例において記載される。酵素の活性部位は細胞の外側にあるので、そのようなトランスメンブランの変異体もそれらが細胞膜中に酵素を固定化する能力を保持していることを条件に使用され得る。細胞表面では、例えばペプチドグリカン・アンカー等の他のアンカーは、脂質アンカーであり、これらもまた使用することが可能である。
【0025】
トランスメンブラン領域に由来するもののようなアンカーは、好適な分子生物学の技術によって、酵素遺伝子のオープン・リーディング・フレームに付着(attached)される。蛋白質が発現されると、酵素/アンカー融合蛋白質として付着したアンカーを有する蛋白質が調製される。次いで、アンカーは膜中に埋まり、そこに酵素を引きとめる。
【0026】
酵素をコードするベクターは、必要ならば、シグナル配列および/またはトランスメンブラン領域と共に、当業者に公知の組換えDNA技術を用いて、調製してもよい。酵素をコードする配列、シグナル配列およびトランスメンブラン領域は、合成または組換え核酸の配列を一緒にスプライシングするか、または部位特異的突然変異のような技術によって存在する配列を改変することによって構築される。標準組換えDNA技術の考察については、サムブロック(Sambrook)らによる”モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)”1989、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)が参考になるかもしれない。
【0027】
D.プロモーター
酵素は、細胞中で発現可能なようにプロモーターを用いたベクター中で発現される。該細胞にはベクターが標的化されている。プロモーターは、該酵素をコードする配列およびその付随配列と、作動可能なように連結(linked)される。例えば、c−erbB2プロト−オンコジーン(proto-oncogene)は、低レベルで乳房組織中、および組織限定的様式(in a tissue restricted manner)で発現する。しかしながら、腫瘍の状態により、転写活性を増すために、この蛋白質の発現が増大するものもある。この顕著な例は、乳房組織(腫瘍の約30%)、卵巣の腫瘍(約20%)および膵臓の腫瘍(約50−75%)である。転写または翻訳を高めるためにc−erbB2の発現が増大しているような腫瘍では、c−erbB2プロモーターが、細胞に特異的な方法で蛋白質の発現を指示(direct)するために用いられる。
【0028】
そのような腫瘍を標的にする、c−erbB2プロモーターを利用した本発明のGDEPTシステムを用いると、c−erbB2プロモーターを有するベクターによる正常細胞のトランスフェクションは、限定量の酵素レベルしか与えず、従ってプロドラッグの活性化は制限されるので、GDEPTの特異性が増強される。
【0029】
該c−erbB2プロモーターは、−1500までシークエンスされており、ハドソン(Hudson)ら、(1990)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.), 265; 4389-4393 を参考にすることにより取得されてもよい。転写の主な出発部位は、イシイ(Ishii)ら (1987) プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスイズ(Proc. Natl. Acad. Sci.), 84; 4374-4378、およびタル(Tal)ら (1987), モレキュラー・アンド・セルラー・バイオケミストリー(Mol. Cell Biol.) 7; 2597-2601 によって決定されている。この出発部位は、+1として称されており、この番号付けは本明細書に援用される。c−erbB−2の翻訳は、+178位で始まる。プロモーターは−75位にCAATボックスおよび−25位にTATAボックスを有している。
【0030】
ホリーウッド(Hollywood)およびフースト(Hurst) (1993) EMBO J. 12; 2369-2375 は、乳房細胞において、−100位および−213位のプロモーターの領域が、転写制御に重要であることを報告している。(また、サーカー(Sarkar)ら (1994) ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.) 269; 12285-12289も参照されたい。)
【0031】
c−erbB−2プロモーターを利用したベクターからの発現を成し遂げるためには、ホリーウッド(Hollywood)およびフースト(Hurst)(同書)によって乳房細胞に見出されたもののように、CAATボックス、好適にはTATAボックスからc−erbB−2プロモーター領域を使用し、上流には、特定の組織中での発現の特異性を担うエレメントの配列を含むことが望ましい。このようにプロモーターは、少なくともCAATボックスの上流(5')ヌクレオチドから約250番目までの全てを含むことが好ましく、例を挙げると、該5’ヌクレオチドから300番目、400番目、500番目、600番目、700番目、800番目、900番目まで、若しくは更に転写開始までである。それは、またTATAボックスを含むことが好ましい。必要に応じて、TATAボックスの下流のc−erbB−2配列から+178位の翻訳開始部位までを使用することもできる。
【0032】
ヒトc−erbB−2プロモーター配列が好ましいが、該ヒト配列に選択的にハイブリダイズ可能である改変(modified)プロモーター配列を用いてもよい。該ヒトプロモーター配列に選択的にハイブリダイズ可能なプロモーター配列は、少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個であり、例えば40個、60個若しくは100個またはより近接するヌクレオチドを有する領域に亘り、該ヒトプロモーター領域若しくはそのフラグメントに対して、通常、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80若しくは90%、より好ましくは少なくとも95%相同性である。
【0033】
通常、当業者であれば、−213位にあるようなある種のプロモーター領域は、ベクターに由来する発現の腫瘍特異性を確実化するために保持されることが必要であるが、一方、プロモーターの他の領域は、特異性に有意な喪失を与えることがないように、改変若しくは欠失されることができるということを認識するであろう。このように、ヒトc−erbB−2と実質的に同じ程度(degree)に、転写的に調節される改変プロモーターが好ましい。そのような候補対象となるプロモーターの調節程度は、ホリーウッドおよびフースト(同書)の記載に従って、例えばCATアッセイを使用して、当業者により試験し、評価され得る。
【0034】
”作動可能に連結(linked)された”とは、プロモーターと酵素コード化配列とが、プロモーターの制御下でコード化配列が発現されるような関係にある並列(juxtaposition)のことをいう。このように、いずれもネイティブではないプロモーターとコーディング領域との間に、5’非−コーディング領域のようなエレメントがあってもよい。そのような配列は、プロモーターによるコーディング配列の正しい制御が損なわなければ、ベクター中に含めることも可能である。
【0035】
他の適切なプロモーターには、哺乳類のレトロウイルスまたはDNAウイルスプロモーターのようなウイルスプロモーターが含まれる。適切なプロモーターには前述するベクターで使用されるもの、例えばMLV、CMV、RSV、およびアデノウイルスプロモーターが含まれる。好ましいアデノウイルスプロモーターは、アデノウイルス初期遺伝子プロモーターである。強力哺乳類プロモーターもまた適切であるかもしれない。そのようなプロモーターの例は、ミズシマおよびナガタ((1990), Nucl. Acids Res. 18; 5322)を参照することによって取得されるEF−1αプロモーターである。実質的に類似の転写活性を保持しているそのようなプロモーターの変異体を使用してよい。
【0036】
c−erbB−2プロモーターを有するベクターは、本発明の更なる新しい局面を形成するものであって、標的細胞中でプロドラッグを活性薬物に変換することのできる遺伝子をベクターが発現するシステムの中で用いられてもよい。このように、本発明は、プロドラッグを活性薬物に変換し得る酵素をコードする遺伝子に作動可能に連結したc−erbB−2プロモーターを有するウイルスベクターを提供するものである。本発明は、また、ベクターによりコード化された酵素によって活性薬物に変換可能なプロドラッグとともに、前記で定義されるベクターを含むキットを提供する。別の局面において、本発明は、ヒト若しくは動物体の治療方法、特にc−erbB−2プロトオンコジーンが過剰に発現される腫瘍を処置する方法において使用するための、上記定義のベクターまたは上記定義のキットを提供するものである。さらなる局面において、本発明は、腫瘍の処置方法、特にc−erbB−2プロトオンコジーンが過剰に発現される腫瘍を処置する方法を提供するものであり、該方法は、腫瘍を有する者に、(i) 上記定義のベクターの有効量、および(ii) 該ベクターによってコード化された酵素によって活性薬物に変換し得るプロドラッグの有効量を投与することを含む方法である。
【0037】
E.プロドラッグ
該システムで使用するためのプロドラッグは、酵素と適合し得るように選択される。言い換えれば、そうすることによって酵素はプロドラッグを活性薬物に変換することができる。プロドラッグの被治療患者に対する毒性は、活性薬物よりも少なくとも1桁低いものであることが望ましい。好ましくは、活性薬物が、数桁、例えば2桁、3桁、4桁またはそれ以上の桁数高い毒性を有していることである。適切なプロドラッグには、ナイトロジェン・マスタード・プロドラッグおよびWO88/07378、WO89/10140、WO90/02729、WO91/03460、EP−A−540 263、WO94/02450、WO95/02420、またはWO95/03830に記載されているような他の化合物が含まれ、それらは引用例としてここに援用される。
【0038】
E(i)−ナイトロジェン・マスタード・プロドラッグ
ナイトロジェン・マスタード・プロドラッグには、下式の化合物が含まれる:
M−Ar−CONH−R
式中、Arは、必要に応じて置換された環芳香族環系を示し、R−NHは、α−アミノ酸R−NHまたはオリゴペプチドR−NHの残基であって、少なくとも1個のカルボン酸基を含むものであり、およびMは、ナイトロジェン・マスタード基を示す。
【0039】
アミノ酸R−NH残基は、好ましくはグルタミン酸残基である。WO88/07378には、酵素カルボキシペプチダーゼG2が、上で示されたタイプの化合物からグルタミン酸部分を脱離されることができ、グルタミン酸部分の脱離によって活性のナイトロジェン・マスタード薬物が生成することが開示されている。
【0040】
本発明で用いられるこうしたナイトロジェン・マスタード・プロドラッグには、WO94/02450の一般式Iで示されるプロドラッグおよびそれらの塩、および特に式(I):
【0041】
【化1】

【0042】
〔式中、RおよびRはそれぞれ独立して塩素、臭素、ヨウ素、OSOMe、OSOフェニル(式中、フェニルは、必要に応じて、C1−4アルキル、ハロゲン、−CNまたはNOの中から独立して選択される1個,2個,3個,4個もしくは5個の置換基で置換されている。)を示し;
1aおよびR2aは、それぞれ独立して水素、C1−4アルキル、またはC1−4ハロアルキルを示し;
およびRは、それぞれ独立して水素、C1−4アルキルまたはC1−4ハロアルキルを示し;
nは、0から4の整数であり;
各Rは、それぞれ独立して、水素、必要に応じて1個の二重結合若しくは1個の三重結合を含むC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロゲン、シアノ、−NH、−CONR(式中、RおよびRは、独立して、水素、C1−6アルキルまたはC3−6シクロアルキルである。)を示し、或いは2つの隣接したR基は、共に次のものを示す
a)必要に応じて1個の二重結合を有するCアルキレン;
b)Cアルキレン;または
c)各々必要に応じて、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロゲン、シアノおよびニトロからなる群からそれぞれ独立して選択される1個、2個、3個若しくは4個の置換基で、置換された−CH=CH−CH=CH−、−CH−CH−CH−または−CH−CH=CH−;
Xは、基−C(O)−、−O−C(O)−、−NH−C(O)−または−CH−C(O)−であり;および
Zは、−CH−T−C(O)−OR基[式中、Tは、CH、−O−、−S−、−(SO)−または−(SO)−であり、Rは水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキルアミノ、モノ−,ジ−C1−6アルキルアミノまたはモノ若しくはジC3−6シクロアルキルアミノである。但し、Rが水素のとき、Tは−CH−である。]である。〕
で示されるもの、および式(I)の化合物の生理学的に許容される誘導体(塩を含む)が含まれる:
【0043】
ハロゲンには、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。R1a基およびR2a基は、好ましくはメチルおよび水素であり、特に水素が好ましい。R基およびR基の好適なものは、水素、メチルおよびトリフルオロメチル、特に水素である。R基およびR基の好適なものは、I、Br、Cl、OSOMeおよびOSOフェニル(式中、フェニルは、2位および/または4位が1個または2個の置換基で置換されている。)である。I、ClおよびOSOMeが特に好ましい。
【0044】
の好適なものは、nが1乃至4の整数であるとき、フッ素、塩素、メチル−CONHおよびシアノである。好ましくは、nは0、1または2である。nが1または2であるとき、Rは環の3位および/または5位においてフッ素であることが好ましい。X基は、好適には、−C(O)−、−O−C(O)−または−NH−C(O)−である。Zは、好ましくは−CHCH−COOH基である。
【0045】
好適な具体的な化合物には、以下のものが含まれる:
N−4−[(2−クロロエチル)(2−メシルオキシエチル(mesyloxyethyl))アミノ]ベンゾイル−L−グルタミン酸(以下、”CMDA”と称する。)およびその塩;
N−(4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−3−フルオロフェニルカルバモイル)−L−グルタミン酸およびその塩;
N−(4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニルカルバモイル)−L−グルタミン酸およびその塩;
N−(4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェノキシカルボニル)−L−グルタミン酸およびその塩;および
−(4−[ビス(2−ヨードエチル)アミノ]フェノキシカルボニル)−L−グルタミン酸(以下、”プロドラッグ2”と称する。)およびその塩。
【0046】
興味ある本発明の化合物の特定のサブグループ(sub-group)は、上述した、R−R、R、XまたはWの特定若しくは一般的な定義のうちのいずれか1つを採用することによって得られ得る。なお、それは、単独であっても、他の、R−R、R、XまたはWについての特定若しくは一般的な定義を組み合わせたものであってもよい。
【0047】
他のプロドラッグには、式(II):
【0048】
【化2】

【0049】
〔式中、R、R、R、nおよびZは上記の式(I)の化合物で定義したものと同じである:
mは0乃至4の整数であり、
およびZはそれぞれ独立して、−O−または−NH−であり;および
は水素、−ブチルまたはアリルである。〕
の化合物、および式(I)の化合物の生理学的に許容される誘導体が含まれる。
、R、R、nおよびZの好適なものは、式(I)の化合物について上で定義されたものと同じである。mの好適なものは、上記でnについて定義されたように0、1または2である。Rは好ましくは水素であるが、特に合成中は、アリルまたはt−ブチルのような基で保護され得る。
【0050】
これらのプロドラッグは、カルボキシペプチダーゼ酵素、例えばWO88/07378またはWO94/02450に開示されるようなCPG2によって、腫瘍部位で活性化される。
式(III):
【0051】
【化3】

【0052】
〔式中、R、R、R、Z、nおよびmは、式(II)の化合物について定義されたものと同じである。〕
のナイトロジェン・マスタード・プロドラッグ、およびその生理学的に許容される誘導体もまた本発明において用いられる。
【0053】
これらのプロドラッグは、例えばWO93/08288に開示されるようなニトロレダクターゼ酵素によって腫瘍部位で活性化され得る。
【0054】
通常、酵素活性を確実化するためには、ニコチン酸またはニコチンアミドのリボシド(riboside)またはリボチド(ribotide)のような補因子が要求され、それはプロドラッグとともに投与されてもよい。
【0055】
式(II)および(III)の化合物は、化学の分野における当業者に知られた反応および方法を用いて調製されてもよい。次の方法が特に有用である:
A:Zが−O−である式(II)の化合物:
が−O−である式(I)の化合物は、式(IV):
【0056】
【化4】

【0057】
[式中、R、RおよびRおよびnは上記定義の通りであり、Zは−O−である。]
のナイトロジェン・マスタードを式(V):
【0058】
【化5】

【0059】
[式中、R、m、Z、RおよびZは上記定義の通りであり、Qは水素または離脱基である。]
のリンカーと反応させることによって調製されてもよい。
この反応は、例えばDMFおよびトリエチルアミンといった、塩基の存在下での非プロトン性溶媒中で行われる。好適な離脱基Qには、スクシンイミジル基、4−ニトロフェニル・カーボネート基、ペンタフルオロフェニル・カーボネートおよびテトラクロロエチル基CH(Cl)CClが含まれる。
【0060】
(ii) 式(IV)の化合物は、必要に応じてR(n)基(上記の定義と同じ)で置換された4−ニトロフェノールから出発して調製されてもよい。フェノール基は、アダマンタニルオキシカルボニル−誘導体となるように保護されている(室温で、出発物質をTHF中のアダマンタニル−フルオロホルメートおよびトリエチルアミンと反応させることによって)。保護された4−ニトロフェニル・カーボネートは、室温下、ギ酸アンモニウムおよびPd/C 10%を触媒として用いたエタノール中での水素移動によって、対応するアミンに還元される。該アミンは、次いで、20℃下、AcOH中でエチレンオキシドを用いて、ヒドロキシエチル化され、更に所望のナイトロジェン・マスタードに反応される。適する条件については、EP−A−433 360またはEP−A−490970が参考になる。化合物は、カラムクロマトグラフィーによって精製されてもよい。アダマンチル基を除去する脱保護化は、トリフルオロ酢酸中で行われる。
【0061】
(iii) 代わりの方法として、式(IV)のナイトロジェン・マスタードは、非プロトン性溶媒およびトリエチルアミン中でホスゲンまたはトリホスゲンで処理しクロロホルメートとして活性化され、続いて式(VI):
【0062】
【化6】

【0063】
[式中、R、m、Z、RおよびZは、上記定義の通りである。]
の化合物と結合(coupling)してもよい。
これは、塩基(例えば、トリエチルアミンまたはピリジン)の存在下、THFまたは他の非プロトン性溶媒中行われる。
【0064】
(iv) Zが−O−である式(II)に記載される化合物の合成の更なる代替経路には、必要に応じてR(n)基(上記定義と同じ)で置換された4−ニトロフェノールと式(V)の化合物とを直接結合させるか(direct coupling)、または必要に応じて置換された上記4−ニトロフェノール化合物 クロロホルメートを式(V)の化合物と反応させて、該反応に続けて、それぞれのケースも、ニトロ基をアミンを経由してマスタード基に変換することが包含される。
【0065】
B:Zが−NH−である式(II)の化合物
(i) Zが−NH−である式(II)の化合物は、塩基の存在下、非プロトン性溶媒中で、Zが−NH−である式(IV)の化合物と式(V)のリンカーとを反応することによって調製されてもよい。Zが−NH−である式(IV)の化合物は、必要に応じてR(n)基(上記で定義の通り)で置換された1−ハロ−4−ニトロベンジル化合物から調製されてもよい。これは、加熱しながらジエタノールアミンで反応することによって、対応する1−ビス−ヒドロキシエチルアミノ−4−ニトロ−ベンジル化合物に変換され、得られた化合物はカラムクロマトグラフィーによって精製される。対応する4−ニトロ・ナイトロジェン・マスタードは、例えば、ピリジン中でメシルクロライドを用いてメシル化し、続いて、必要に応じて他のハロ・マスタード(例えば、ブロモ若しくはヨードマスタード)への反応によって調製されてもよい。4−ニトロ基は、20℃下で、ギ酸アンモニウムおよびPd/C 10%を触媒として用いたエタノール中での水素移動により、還元される。
【0066】
(ii) 代替法として、上述した1−ビス−ヒドロキシエチルアミノ−4−ニトロベンジル化合物は、20℃下、エタノール中で、ギ酸アンモニウムおよびPd/C 10%を触媒として用いて還元され、対応するフェニレン−ジアミノ誘導体を与える。この誘導体は、上のパラグラフに記載するように、例えば、最初にメシルクロライドでの反応によって、対応する4−アミノ・ナイトロジェン・マスタードに変換され得る。
【0067】
C:式(III)の化合物
(i) 式(III)の化合物は、上のセクションA(i)に記載されたナイトロジェン・マスタード・フェノール化合物を、必要に応じてR(m)基(上記定義と同じ)で置換された4−ニトロベンジル・クロロホルメートと、20℃、トリエチルアミンの存在下もしくは非存在下で結合することによって得られてもよい。
【0068】
(ii) 代わりに、セクションB(ii)に記載されるアニリン・ナイトロジェン・マスタードは、上のセクションC(i)に記載されるクロロホルメートとともに用いられてもよい。
【0069】
D:Zが−NH−である式(V)の化合物
(i) Zが−NH−である式(IV)の化合物は、必要に応じてR(n)基(上記で定義の通り)で置換された4−ニトロベンジルアルコールから調製されてもよい。ヒドロキシル官能基は、20℃下、非プロトン性溶媒中で3,4−2H−ジヒドロピランおよびピリジニウム−p−トルエンスルホネート(PPTS)で処理するか、またはジメチルホルムアミド(DMAC)中でTBDMSiクロライドおよびイミダゾールで処理することにより、それぞれピラニル−、または−ブチル−ジメチルシリル(TBDMSi)−エーテルとして保護される。このようにして得られた中間体は、20℃で、ギ酸アンモニウムおよびPd/C 10%を触媒として用いてエタノール中で水素移動することにより対応するアミンに還元される。このアミンは、式(VII):
【0070】
【化7】

【0071】
[式中、R、m、RおよびZは上記定義の通りであり、Zは−NH−およびPrはピラニル−、または−ブチル−ジメチルシリル(TBDMSi)−エーテル保護基である。]
のグルタミルエステル中間体に変換される。
【0072】
これは、60℃下、トルエン中、トリホスゲンおよびトリエチルアミンでアミンを処理することによって行われ、対応するイソシアネート(isocyante)が得られる。そしてこれは、R−C(O)−CH(NH)−Z(RおよびZは上記定義の通り)のグルタメート(glutamate)誘導体で処理される。代わりに、−78℃で、トルエン中でトリホスゲンおよびトリエチルアミンで処理することによって、対応するグルタメートから得られる、対応のグルタミル−イソシアネートは、ワン・ポット法でアミンと反応させてもよい。
【0073】
(ii) 式(VII)の化合物は、緩やかな酸性媒質を用いて(AcOH、THFおよびH2OまたはPPTS、EtOH、55℃)処理することにより、TBDMSi基またはピラニル基が除去され、脱保護化される。これは、Prが水素である式(VII)の化合物を生成する。Qが離脱基である式(V)の化合物は、当業界で公知の標準的な反応を用いて調製されてもよい。
【0074】
(iii) 例えば、Qがスクシンイミジル基であるとき、Prが水素である式(VII)の化合物はアセトニトリル中で、ジスクシンイミジル−カーボネートおよびトリエチルアミンで処理されてもよい。4−ニトロフェニルカーボネート基が望まれるところでは、THF中での4−ニトロフェニル・クロロホルメートおよびトリエチルアミンでの処理を用いてもよい。ペンタフルオロフェニル・カーボネートは、ペンタフルオロフェノールの現場ホスゲン化によって付加され、次いでPrが水素である式(VII)のリンカーに結合される。
【0075】
E:Zが−O−である式(V)の化合物
(i) カルバミン結合を有するリンカーのための出発物質は、非置換若しくは置換(R(n)基(上記定義の通り)で)の4−ヒドロキシ−ベンジルアルコールである。これらのリンカータイプは、1,4−脱離を受けるために芳香族の核上に余分な電子吸引性基を必要とする。4−ヒドロキシ基は、20℃でTHF中、アセチル−v−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン、1N NaOHで出発物質を処理することによって、特にアセテートとして保護される。アセテートのアルコール官能基は、更に上のセクションDに記載される方法で、ピラニル−またはTBDMSi−エーテルとして保護される。次いで、アセテート官能基を脱保護化して、20℃でNaHCOの水性MeOH溶液中で4−ヒドロキシ基に戻される。得られるフェノール化合物は、上記セクションD(i)に記載するようにワン・ポット法で保護化グルタミル−イソシアネートと反応させる。これによって、前述するZが−O−であり、Prがピラニル−または−ブチル−ジメチルシリル(TBDMSi)−エーテル保護基である式(VII)の化合物が得られる。
【0076】
(ii) この化合物の脱保護化は、Prが水素である式(VII)の化合物を生成する。これは、上記セクションD(ii) および(iii)に記載される方法と類似の方法によって式(V)の化合物に変換される。
【0077】
F:式(IV)の化合物の代替の合成
Qが水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、または−O−(N−スクシンイミド)である式(IV)の化合物は、またWO95/02420またはWO95/03830を参照することによっても得ることができる。
【0078】
E(ii). 他のプロドラッグ
プロドラッグとして使用される他の化合物には、細胞毒性の化合物であるp−ニトロ−ベンジルオキシカルボニル誘導体が含まれる。そのような化合物は、ニトロレダクターゼ酵素と共に使用され得る。ニトロレダクターゼ酵素はプロドラッグのニトロ基をヒドロキシルアミノ若しくはアミノ基に変換し、この結果、p−ニトロベンジルオキシカルボニル部は活性化し、次いで自己破壊する(self-immolating)と信じられている。これは活性薬物を放出する。これらの化合物は、次式の化合物を含む:
【0079】
【化8】

【0080】
WO93/08288のニトロレダクターゼ酵素は、NADHまたはNADPHのような補因子を必要とし、これは、必要に応じて、本発明のシステムに付加的な成分として供給される。
【0081】
上記参考文献に記載される他の化合物の例には、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ダウノマイシンおよびマイトマイシンCのプロドラッグが含まれる。先の参考文献のプロドラッグは、ニトロレダクターゼまたはCPG2のいずれかによって活性薬物に変換される。しかし、該プロドラッグは、他の酵素、例えばβ−ラクタマーゼまたはグルクロニダーゼによって切断されうる保護基を有するよう修飾されているかもしれない。
【0082】
更に、本発明の使用に適したプロドラッグには、一般式:
FTLi−(PRT)m’
[式中、FTLiは、ファルネシルトランスフェラーゼ(farnesyltransferase)・インヒビター化合物のようなrasインヒビターであり、PRTは酵素作用によってrasインヒビターから開裂され得るm’個の保護基を示す(m’は、1乃至5の整数である。)。]
の化合物またはその塩が含まれるそのような化合物は、WO95/03830に開示されている。
【0083】
好適なFTLiには、式(VIII)または(IX)で示される化合物が含まれる。
【0084】
【化9】

【0085】
〔式中、R3aおよびR4aは、天然に生じるアミノ酸の側鎖[例えば、−CH、−CH(CH)、−CHCH(CH)、−CH(CH)CHCH、−CHOH、−CHCHSCH、−CH(OH)CH]であり、それらの酸化形態も含まれる(例えば、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン)。或いは、R3aおよびR4aは、置換もしくは非置換の脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族基であり、好ましくはシクロヘキシル、フェニル、ピリジル、イミダゾリル、または必要に応じて芳香族若しくはヘテロ芳香族環で置換された飽和または不飽和の分岐状若しくは直鎖状の2〜8個の炭素原子であり;
1aは、CHCH、トランスCH=CHまたはCHNHであり;および
2aは、(CH[式中、nは0、1または2である。]である。好ましくは、R3aおよびR4aは、共にCH(CH)CHCHを示す。〕
【0086】
式(VIII)および式(IX)の化合物を含む好適なFLTi化合物は、WO95/03830を参照することによって取得されてもよい。
【0087】
本発明のシステムで用いられる他の好適なプロドラッグには、糖若しくはβ−ラクタム誘導体で誘導体化されたものが含まれる。例えば、前述したタイプの活性薬物に結合されてもよい好適なリンカーは下式のものである:
【0088】
【化10】

【0089】
式中、R’は水素またはアセチルであり、Y’はフェニル、ベンジルまたはトルリル(toluyl)といったアリールであり、これらは前述した他のプロドラッグと類似の方法で調製されてもよい。
【0090】
プロドラッグの更なるグループは、一般式:
PTKi−PRTm’
[式中、PTKiはPTK(プロテインチロシンキナーゼ)阻害活性を有する化合物であり、PRTは酵素作用によってPTKインヒビターから開裂され得る保護基であり、m’は1乃至5の整数である。]
で示されるチルホスチン(tyrphostin)化合物である。
【0091】
好適なPTKsには、チルホスチン(tyrphostin)が含まれる。チルホスチンは、プロテインチロシンキナーゼ・ドメインのサブサイトに結合可能なプロテインチロシンキナーゼの低分子量(例えば、2,000未満)のスチリル含有インヒビターである。好適なチルホスチンには、ガジット(Gazit)ら(ガジットら、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)(1989) 32, 2344)、およびガジットら(ガジットら、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)(1991) 43; 1896-1907)に記載されたもの、および特に一般式:
【0092】
【化11】

【0093】
〔式中、Xは炭素、窒素または基N→Oを示し;nは1乃至3の整数であり;R10基はそれぞれ、同一もしくは異なって、水素、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、ホルミル、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、カルボキシC1−4アルキル、カルボキシC2−4アルケニル、C1−4アルキルスルホキシ、ハロ(即ち、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、ニトロ、アミノ、C1−4アルキルアミノまたはC1−4ジアルキルアミノであり、或いはnが2または3のとき、2つのR10基は、共にメチレンジオキシ若しくはエチレンジオキシ基を形成していてもよい;R11は、水素、ヒドロキシ、C1−4アルキル、またはR10基(1個または複数)が、結合している環の2位とともに5または6員の脂肪族または複素環式の環を形成し、該5または6員環は、必要に応じてケトン基を含み;
およびR12はシアノ、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、C(O)HNCHCN基、C(NH)=(CN)基、アルファケト基C(O)R13[式中、R13は3,4−ジヒドロキシフェニルまたは2−チオフェニルである]、またはアルファアミド基C(O)NHR14[式中、R14はベンジル、フェニルまたは2,4−ジメトキシフェニルである。]である;但し、R10およびR11の少なくとも一方はメルカプト、ヒドロキシまたはアミノである。〕
のチルホスチンが含まれる。
【0094】
好ましい具体的態様では、XはCであり;nは1乃至3の整数であり;R10基のそれぞれは、同一若しくは異なって、水素、ヒドロキシ、カルボキシ、ホルミル、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C1−4アルコキシ、カルボキシC1−4アルキル、カルボキシC2−4アルケニル、ハロ(即ち、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ニトロ、アミノ、C1−4アルキルアミノまたはC1−4ジアルキルアミノであり、或いはnが2若しくは3のとき、2つのR10基が、共にメチレンジオキシまたはエチレンジオキシ基を形成してもよい;R11は、水素、ヒドロキシ、またはC1−4アルキルであり;およびR12はシアノ、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、C(O)HNCHCN基またはC(NH)=C(CN)である。最も好ましくは、X10は炭素を示し、nは1乃至3の整数であり;R10基はそれぞれ同一若しくは異なって、水素、ヒドロキシまたはアミノであり;R11は水素またはヒドロキシであり;およびR12はシアノ、C(O)HNCHCN基、C(NH)=C(CN)、アルファケト基 C(O)R13[式中、R13は、3,4−ジヒドロキシフェニルである。]、またはアルファアミド基C(O)NHR14[式中、R14はベンジルである。]である;但し、R10基、R11基およびR12基の少なくとも一つはヒドロキシまたはアミノである。好ましくは、R10はヒドロキシまたはアミノである。R11が、R10と共に5または6員環を形成するとき、好適な環には、環に一個の窒素原子および4若しくは5個の炭素原子を含む複素環が含まれる。原子の総数には、R10基(1個または複数)が結合している環の2個の炭素原子が含まれる。
【0095】
上述のような適切なチルホスチンは、WO95/02420、ガジットら(1989および1991)、同書、に開示された方法若しくはその類似方法により得ることができ、またそれらはここに引用例として援用される。
【0096】
チルホスチンは、酵素によって除去可能である、任意の適切な保護基と連結(linked)されてもよい。好適な保護基PRTは、WO95/03830またはWO95/02420を参照することによって見出されるものであってもよく、構造:
−(Z−CO.O−CH−Ph−NO)m’、または
−(Z−CO.O.CH−Ph−Z−NH−glu)m’
〔式中、Zは上述で定義したものまたはSであり、m’は1乃至5の整数であり、Phは、上記で定義したように、必要に応じて1乃至4個のR基(同一または異なっていてもよい)で置換されたフェニレン環であり、gluは−CHZ−C(O)−OR[ZおよびRは、上記で定義した通りである。]である。ニトロ基は、Ph環に対して望ましくは環の4位であるが、2位にあってもよい。〕
【0097】
E(iii).誘導体
プロドラッグの生理学的に許容される誘導体には、塩、アミド、エステルおよびエステルの塩が含まれる。エステルには、エステル原子団の非カルボニル部分(moiety)が直鎖状または分岐鎖状のC1−6アルキル、(メチル、n−プロピル、、n−ブチルまたはt−ブチル)から選択されるカルボン酸エステル;またはC3−6環状アルキル(例えば、シクロヘキシル)が含まれる。塩には、生理学的に許容される塩基塩、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびNR4”(式中、R”はC1−4アルキルである。)塩のような適切な塩基に由来するものが含まれる。他の塩には、塩酸塩および酢酸塩を含む、酸付加塩が含まれる。アミドには、非置換並びにモノ−およびジ−置換誘導体が含まれる。
【0098】
F.本発明の適用
本発明のシステムは、ヒト又は動物の身体の治療方法に使用することが可能である。そのような治療には、治療が必要な患者に本発明のシステムを投与することを包含する新生細胞の増殖を治療する方法が含まれる。本発明は、また、バクテリア、ウイルス又は寄生虫によるヒト又は動物の身体への感染を通じて疾病された細胞を治療するのに使用することも可能である。ウイルスの後期プロモーター(late promoters)は、感染の初期に作られるウイルスの蛋白質にしばしば依存する。感染された細胞の表面に発現されるウイルスの膜蛋白質(coat protein)を、細胞へ遺伝子を入り込ませるためのターゲットとして使用することが可能である。もし、その後、ウイルスの後期プロモーターを、GDEPT酵素の発現を指示するために使用すると、いかなる感染された細胞も、特に、しばらくの間感染されている細胞は、該蛋白質を発現するであろう。これは、感染された細胞を殺すには十分であろう。寄生虫においては、寄生虫プロモーター及び寄生虫表面蛋白質を、それぞれ発現を指示するため及び寄生虫を感染させるために使用することがある。
【0099】
バクテリアにおいては、特定のプロモーターは明確にするのはより容易であるべきだが、すべての運搬システムは、おそらく、バクテリアウイルスを使用するように変更する必要があろう。
【0100】
治療におけるベクターの使用において、ベクターは通常、例えば、ラムら(Ram et al)(上記)中に記載のように、ウイルスの粒子の中にパッケージされ、該粒子は腫瘍の部位に運ばれる。ウイルスの粒子を修飾して、腫瘍のターゲッティングを強化するために、抗体、そのフラグメント(1本鎖を含む)又は腫瘍−結合リガンドを含んでもよい。または、ベクターをリポソームの中にパッケージしてもよい。該リポソームは、特定の腫瘍にターゲットされる。これは、腫瘍−結合抗体をリポソームに付けることによって達成することが可能である。ウイルスの粒子は、また、リポソーム内に組み込まれてもよい。該粒子は、医師の意志で適当な手段によって腫瘍に運ばれる。好ましくは、ウイルスの粒子は、選択的に腫瘍細胞を感染させることが可能であろう。”選択的な感染”とは、ウイルスの粒子が、主に腫瘍細胞に感染し、感染された非−腫瘍細胞の割合は、プロドラッグの投与による非−腫瘍細胞の損傷が、治療された疾患の特徴を考慮すれば受容できるほど低い程度であろうことを意味する。最終的に、これは医師によって決定されるであろう。
【0101】
投与の適した経路の一つは、粒子を含む滅菌溶液の注射によるものである。プロドラッグにおいては、単独で投与されることは可能であるが、薬学的剤形を与えることが好ましい。剤形は、1又はそれ以上の許容できるその担体とともに該プロドラッグを含み、任意に他の治療成分を含む。1又は複数の担体は、例えばリポソームの様に、剤形の他の成分に影響を及ぼさない意味で”許容される”ものでなければならず、及びその受容体に有害でないものでなければならない。適当なリポソームとして、例えば、正に荷電した脂質、(N[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウム(DOTMA)を含むもの、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含むもの、3β[N-(n',N'-ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)を含むものが含まれる。
【0102】
例えば、細胞株をパッケージすることから単離されたウイルスを、また、局所灌流又は直接的な腫瘍内への使用、又は、例えば腹膜内注射のような身体の腔への直接的な注射(腔内投与)によって投与してもよい。
【0103】
また、筋肉細胞が、裸のDNAを取り込むことができることは知られており、よって、裸のDNAを肉腫に直接注射する本発明のベクターシステムを用いて、肉腫を治療してもよい。
【0104】
非経口又は筋肉内投与に適した剤形には、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、殺菌性の抗生物質及び剤形を特定の受容者の血液と等張にする溶質を含んでいてもよい、水性又は非水性の滅菌注射溶液;懸濁剤及び濃稠化剤を含んでいてもよい水性又は非水性の滅菌懸濁液、及び血液成分又は1もしくはそれ以上の器官への化合物を標的とするようにデザインされたリポソーム又は他の微粒子システムを包含する。剤形は、例えば、シールされたアンプルやバイアル等のように、1投与量又は多投与量の容器で提供されてもよいし、使用直前に注射のために水のような滅菌した液体担体の添加のみを要求する凍結乾燥の状態で保存されてもよい。注射溶液及び懸濁液は、上記に記載した種類の滅菌した粉末、顆粒及び錠剤から即座に調製されてもよい。
【0105】
上記に具体的に記載した成分に加えて、剤形は問題となる剤形の型を考慮する技術分野で伝統的な他の薬剤を含んでいてもよい。可能性のある剤形として、滅菌したパイロジェンを含まない水性又は非水性溶液が好ましい。
【0106】
投与量は、連続して、例えば、毎日、毎週又は毎月の間隔で、又は、患者が特別に必要する際に応じて投与してもよい。好ましい投与経路は、経口投与及び注射、典型的には、非経口又は筋肉内注射又は腫瘍内注射である。
【0107】
本発明のシステムを使用するにおいて、該プロドラッグは、酵素をコードするベクターの投与の後に通常投与される。典型的には、ベクターを患者に投与し、その後、トランスフェクションを受けた又は感染した(ウイルスベクターの場合)細胞によるベクターの取り込みを、例えば、標的とする組織の生検試料の回収及び分析によって、モニターする。
【0108】
正確な投与の型は、もちろん、個々の患者における個々の臨床医によって決定される必要があり、これは、順番に、プロドラッグの正確な特徴及びプロドラッグから放出される細胞毒性剤によってコントロールされるが、ある種の一般的な指示を得ることができる。この型の化学療法は、一般には、プロドラッグと修飾したウイルス共の非経口投与を含み、経静脈経路による投与は、しばしば、もっとも実際的なものとして見受けられる。神経膠芽細胞腫においては、その経路はしばしば腫瘍内である。プロドラッグの典型的な投与量の範囲は、一般には、1日あたり患者kg当たり約1〜150mgの範囲であって、単回又は複数回投与で投与される。好ましくは、投与量範囲は、1日あたり患者kg当たり約10〜75、例えば、約10〜40mgの範囲であろう。他の投与量については、患者の状態及び医師の裁量における他の因子に従って使用してもよい。
【0109】
本発明のシステムを使用して治療される腫瘍は、GDEPT又はVDEPTシステムによって治療できる又は治療されるいかなる腫瘍をも包含し、いかなるある特定のクラスの腫瘍に限定されない。特に適当な腫瘍のタイプとしては、胸部、結腸及び卵巣の癌、及び膵臓、メラノーマ、神経膠芽細胞腫、肝癌、小細胞肺、非小細胞肺、筋肉及び前立腺の癌を含む。
【0110】
本発明のシステムは、また、感染症疾患、及び、例えば、細胞の個体群の根絶を要求する他のあらゆる状態を治療するのに使用してもよい。
【0111】
腫瘍の治療に関する限り、治療には、患者における腫瘍の作用を緩和する、医師によって取られたいかなる処置も含まれる。このように、腫瘍の完全な緩解が所望の目的であるが、効果的な治療には、また、腫瘍の部分的な緩解を達成することが可能で、転移を含む腫瘍の増殖速度における減速のいかなる処置も含まれる。そのような処置は、生命の質を長くし及び/又は高め、疾患の症状を軽くするのに効果的である。
【実施例】
【0112】
以下の実施例において、本発明を例示する。
【0113】
製造例1
哺乳動物細胞の表面上でCPG2を発現するために、CPG2とc−erbB2の一部との融合を構築した。用いたc−erbB2の一部は:−
1.シグナルペプチドコーディング領域(コドン1−27):
【0114】
【数1】

【0115】
これは、コドン8において起こる、この位置におけるアミノ酸を変化しないサイレントな天然のCGCからCGTへの突然変異を除けば、クーセンスら(Coussens et al)、(1985),サイエンス(Science),230, 1132-1139によって公開された配列と同一である。
【0116】
2.トランスメンブレン領域(コドン636−686):
【0117】
【数2】

【0118】
これは、コドン655に保存されたVal(GTC)からIle(ATC)への置換がおこる、天然の突然変異を除けば、クーセンスら(Coussens et al)、(1985),サイエンス(Science),230, 1132-1139によって公開された配列と同一である。
【0119】
c−erbB2のシグナルペプチドのCPG2への結合を容易にするために、c−erbB2のコドン1−27及びBamH1(GGATCC)制限エンドヌクレアーゼ部位に変換するために変異を受けたコドン28及び29を含むPCRフラグメントを調製した。これはプライマー#4478:
【0120】
【数3】

【0121】
と、プライマー#4479:
【0122】
【数4】

【0123】
をともに用いて達成した。
【0124】
フラグメントを含むシグナルペプチドを、BamH1及びNcol(イニシエーターATG、すなわちCCATGGにまたがるc−erbB2中に起こる部位)での消化によってPCR断片から放出する。
【0125】
同様のアプローチによって、CPG2のコドン21及び22をBamH1部位に転換させる。同時に、EcoR1部位をCPG2のコドン416(天然の終止コドン)において作成した。これは、PCRプライマー#4476:
【0126】
【数5】

【0127】
と、プライマー#4477:
【0128】
【数6】

【0129】
をともに用いて行った。
【0130】
同様に、c−erbB2のコドン634及び635を、EcoR1部位に転換し、コドン687及び688をCla1部位に転換した。これは、プライマー#4480:
【0131】
【数7】

【0132】
と、プライマー#4481:
【0133】
【数8】

【0134】
をともに用いて達成した。
【0135】
c−erbB2のトランスメンブレン領域(コドン636−686)を、EcoR1及びCla1で消化したPCRフラグメントとして放出した。
【0136】
最後に、2種のオリゴヌクレオチドアダプターを用いて、c−erbB2のトランスメンブレン領域の5’末端に、9E10モノクローナル抗体認識部位(エヴァンら(Evan et al )(1985), Mol Cell Biol 5, 3610-3616参照)を作成した。これは、オリゴヌクレオチド#4513:
【0137】
【数9】

【0138】
及びオリゴヌクレオチド#4514:
【0139】
【数10】

【0140】
を用い、標準リンカークローニング技術を用いて達成した。種々のフラグメントを、設計された制限エンドヌクレアーゼ部位を通じてお互い結合し、以下の構造:
c−erbB2(アミノ酸1−27):GlySer:CPG2(アミノ酸23−415):GluPhe:c−erbB2(アミノ酸636−686):IleAsp:9E10エピトープ(GluGlnLysLeuIleSerGluGluAspLeu):Asn
を持つ蛋白質を産生するキメラ(chaemera)を生成した。
【0141】
融合の各々の部分間の余分のアミノ酸は、設計された制限酵素部位の結果である。この融合遺伝子を、”CPG2(表面)”という。この遺伝子の変化は、フレームシフト突然変異をc−erbB2シグナルペプチド及びCPG2部分間に導入することで作成された。これは、該キメラをBamH1で消化し、突出部を末端修復した後プラスミドを再結合させることによって達成された。これは、ずれたフレーム突然変異を産生し、遺伝子がCPG2(表面)を発現することができない結果となり、”CPG2(表面F/S)”という。CPG2(表面)及びCPG2(表面F/S)を、マウス細胞株中の遺伝子の発現を指示するモロニーマウス白血病ウイルスLTRを使用する、哺乳類の発現ベクターMLVβpリンクにクローン化した(ダルトン及びトレイスマン(Dalton and Treisman), (1992), Cell 68, 597-612)。これらプラスミドを、それぞれMLVCPG2(表面)及びMLVCPG2(表面F/S)という。
【0142】
比較例1
哺乳動物細胞でのCPG2(表面)の発現を評価する目的で、NIH3T3細胞の1皿を、MLVCPG2(表面)でのトランスフェクションを行い、ネガティブコントロールとして、細胞1皿をMLVβpリンクでトランスフェクションを行った。該トランスフェクションは、脂性のトランスフェクション試薬、リポフェクトアミン(lipofectAMINE)(ギブコビーアールエル(GibcoBRL))を用いて行った。トランスフェクションにおいて、1×10個の細胞を35mmの組織培養皿中にプレートし、37℃で一晩インキュベートした。次の日、リポフェクトアミン:DNAコンプレックスを、0.4μgのプラスミドと6μlのリポフェクトアミン試薬を計32μlのPBSA中で組み合わせることによって調製し、該コンプレックスを室温で15分間インキュベートした。細胞を2mlの血清を含まないDMEM培地で2回洗浄し、0.8mlの血清を含まないDMEM中に置いた。リポフェクトアミン:DNAコンプレックスを、0.2mlの血清を含まない培地で希釈し、細胞に添加した。該細胞を、リポフェクトアミン:DNAコンプレックスと共に37℃で6時間インキュベートし、10%牛胎児血清(FCS)を含むDMEM培地2mlで2回洗浄し、2.5mlの10%FCS/DMEM中に置いた。更に42時間のインキュベーションの後に、細胞を5mlのPBSAで2回洗浄し、組織培養皿上で50μlのバッファーA(250mM Tris.HCl、10%v/vグリセロール、1%v/v Triton X−100、pH7.5)中に抽出した。抽出物を1.5mlチューブに移し、マイクロ−フュージ中13,000rpmで遠心した。上清を集め、蛋白質の濃度をバイオ−ラッド蛋白アッセイキット(Bio-Rad protein assay kit)で、BSAを標準物質として測定した。
【0143】
蛋白質−イムノブロット分析として、各抽出物10μlを10μlのSDS試料バッファーと組み合わせ、該蛋白質を10%SDS−ポリアクリルアミドゲル(ラミリ(Laemmli)U.K. (1970),Nature 227; 680-685 )上で分離した。ゲル中の蛋白質をニトロセルロースに電気溶出によって移し、細胞抽出物を、Sf9昆虫細胞中に発現したCPG2に対して集められたCPG2特異的ウサギポリクローナル抗体を用いて、蛋白質−イムノブロッティング(ゲルショーニ(Gershoni) J.M. 及びパラード(Palade)G.E., (1983) Anal. Biochemistry 131; 1-15)で分析した。抗体は1:1000に希釈して用い、免疫コンプレックスは、ECLイムノブロッティングキット(アマシャム(Amersham))を用いて、製品の使用説明書に従って検出した。
【0144】
これら結果から、pMLVCPG2(表面)でトランスフェクションを受けた細胞からの抽出物中、分子量が〜50,000−60,000のスミアーとして移動する、抗体によって認識される蛋白質が存在することが分かる(図1、レーン2)。この蛋白質は、MLVβpリンクでトランスフェクションを受けた細胞中には存在せず(レーン1)、それゆえ、CPG2(表面)がこれら細胞中で高いレベルで発現されることを示している。
【0145】
CPG2酵素活性について、305nmで光の吸光度を測定することによって検出可能である、CMDAプロドラッグを薬剤に切断する能力を測定する(スプリンガーら(Springer et al), Eur J Cancer (1991) 27; 1361-1366)ことによって、抽出物を試験した。アッセイとして、バッファーA中に抽出された5μgのNIH3T3蛋白質を、50μMのCMDAプロドラッグを含む1mlのアッセイバッファー(20mM Tris.HCl,1mM MgCl2,60μM ZnCl2,pH7.4)中で37℃で15分間インキュベートした。インキュベーション後、EDTAを最終濃度10mMになるように添加し、得られた305nmにおける吸光度の変化を、出発溶液のそれと比較した。吸光度の減少は、プロドラッグの薬剤への転換を示し、それゆえ、推論によって、CPG2の存在を示している。このような条件下、MLVβpリンク又はMLVCPG2(表面)でトランスフェクションを受けた細胞からの抽出物中ではCPG2活性が検出されず、これは、発現された蛋白質が、不活性であることを示している。
【0146】
比較例2
CPG2(表面)は、ゴルジ装置及び小胞体を通じて処理され、細胞の表面に到達する(c−erbB2によって取られる経路)ようであるので、潜在的にグリコシル化され、酵素活性の欠如を説明できることが考慮された。N−結合グリコシル化はゴルジ装置及び小胞体中、一次アミノ酸配列がAsn−Xaa−Ser/Thr(Xaaはいかなるアミノ酸でもよい)であるモチーフで起こり;グリコシル化はAsn残基上で起こる。CPG2の一次アミノ酸配列内でそのように一致するモチーフが、Asn222、Asn264及びAsn272残基の3個所位置する。CPG2(表面)がグリコシル化されているかを確認するために、2セットのトランスフェクションを受けた細胞を用意した。各セットはMLVCPG2(表面)でトランスフェクションを受けた細胞の皿及び、ネガティブコントロールとしてのMLVCPG2(表面/FS)でトランスフェクションを受けた皿を含んでいた。トランスフェクションの後に、セット1を10%FCS/DMEM中で42時間インキュベートした。セット2も10%FCS/DMEM中で42時間インキュベートしたが、ツニカマイシン(最終濃度0.1mg/ml)をインキュベーションの残りの24時間に培地中に含めた。ツニカマイシンはヌクレオシド抗生物質でありN−結合グリコシル化を阻害する。細胞を、バッファーA中に集め、上述のような、蛋白質イムノブロット分析及びCPG2酵素活性アッセイにかけた。
【0147】
イムノブロットのデータより、CPG2(表面)が、ツニカマイシンの存在下インキュベートした哺乳動物細胞中で産生されるとき、SDS−ポリアクリルアミドゲル中でのその移動度が、ツニカマイシン非存在下でインキュベートした細胞と比較して増加することを示している(図2、レーン2及び4を比較して)。更に、該蛋白質は、グリコシル化に起こるブロックを暗示する’ラダーリング(laddering)’を受ける。ある種の蛋白質は、該ブロックを逃れるようだが、これはツニカマイシンを適用する前に合成された蛋白質を示しているようである。コントロールのレーンは、CPG2(表面)が、MLVCPG2(表面F/S)でトランスフェクションを受けた細胞中で産生されていないことを示す(図2、レーン1,3)。
【0148】
これら蛋白質抽出物を、上述したようなCPG2酵素活性について分析した。MLVCPG2(表面/FS)でトランスフェクションを受けた細胞からの抽出物は、ツニカマイシンで処理又は処理されていない細胞中、有意な酵素活性を含有していなかった(図2B、試料1,3)。MLVCPG2(表面)でトランスフェクションされ、ツニカマイシンで処理されていない細胞からの抽出物もまた、CPG2活性を含んでいなかった(図2B、試料2)。しかしながら、MLVCPG2(表面)でトランスフェクションされ、ツニカマイシンで処理された細胞からの抽出物は、このアッセイで検出することができるCPG2活性を高いレベルで含んでいた(図2B、試料4)。
【0149】
これらデータから、NIH3TS細胞中で発現したCPG2(表面)はグリコシル化され、このグリコシル化はその酵素活性を阻害することがわかる。しかしながら、グリコシル化をブロックすると酵素は活性を有している。
【0150】
実施例1
CPG2(表面)のグリコシル化を阻害するために、グリコシル化のモチーフを分裂させるようにデザインされた特定のコドン置換を含む一連の突然変異体遺伝子を構築した。第1のシリーズとして、アミノ酸Asn222、Asn264又はAsn272をロイシン残基に変換させた、個々の変異を作成した。これらは以下のプライマーを用いて、PCRによって産生した。
1)Asn222用 プライマー#538:
【0151】
【数11】

【0152】
これは、プライマー#4732:
【0153】
【数12】

【0154】
と共に使用される。
【0155】
2)Asn264用 プライマー#539:
【0156】
【数13】

【0157】
プライマー#540:
【0158】
【数14】

【0159】
これらは、プライマー#4733:
【0160】
【数15】

【0161】
及びプライマー#557:
【0162】
【数16】

【0163】
と共に使用される。
【0164】
3)Asn272用 プライマー#541:
【0165】
【数17】

【0166】
プライマー#542:
【0167】
【数18】

【0168】
これらは、プライマー#4733及び557と共に使用される。
【0169】
Asn222において、野生型配列を置換するのに使用したSma1/Sph1フラグメント上で変異された残基を含むPCRフラグメントを産生した。残基Asn264及びAsn272において、関連するPCRフラグメントを、Sph1/Not1フラグメントとして得、これらはCPG2遺伝子中野生型配列を置換するために用いられる。3種すべての変異体をMLVCPG2(表面)の枠組みの中にクローン化し、変異体Asn222LeuをMLVCPG2(表面)LNNと、変異体Asn264LeuをMLVCPG2(表面)NLNと、及び変異体Asn272LeuをMLVCPG2(表面)NNLという。
【0170】
潜在的な部位がグリコシル化されているか試験するために、2セットのNIH3T3細胞を用意した。各セットはMLVCPG2(表面)でトランスフェクションを受けた細胞の1皿、MLVCPG2(表面)LNNでトランスフェクションを受けた細胞の1皿、MLVCPG2(表面)NLNでトランスフェクションを受けた細胞の1皿及びMLVCPG2(表面)NNLでトランスフェクションを受けた細胞の1皿を含んでいた。上述したように、セット1をツニカマイシン非存在下でインキュベートし、セット2はツニカマイシン存在下でインキュベートした。細胞抽出物を、バッファーA中に集め、蛋白質イムノブロット分析及びCPG2酵素活性アッセイを行った。
【0171】
イムノブロットのデータは、個々の突然変異の各々は、SDS−ポリアクリルアミドゲル中CPG2(表面)の移動度において増加する結果を示している(図3A、レーン1−4)。ツニカマイシンの存在下、変異体グリコシル化されていない蛋白質の移動度は、CPG2(表面)のそれと同一である(図3、レーン5−8)。これらのデータは、ツニカマイシン非存在下で観察された増加した移動度が、SDS−ポリアクリルアミドゲル中でのCPG2(表面)の移動度における変異の効果によるものではないことを示し、3種の潜在的な部位のそれぞれがNIH3T3細胞中グリコシル化されていることを示している。
【0172】
該抽出物を、上述のCPG2酵素活性アッセイにかけた。3種の変異体すべての蛋白質は、ツニカマイシンで処理していないNIH3T3細胞中で産生したとき、変異していない蛋白質で観察されたように、非活性であることがわかった(図3B、試料1−4)。しかしながら、ツニカマイシンで処理したNIH3T3細胞中で産生すると、CPG2(表面)NLNは非活性であると判明したにもかかわらず、CPG2(表面)、CPG2(表面)LNN及びCPG2(表面)NNLは、すべて活性があることが判明した(図3B、試料5−8)。
【0173】
合わせると、これらデータは、それぞれの同定された潜在的なグリコシル化モチーフが、NIH3T3細胞中でグリコシル化され、該モチーフを分裂させる変異がグリコシル化を阻害することを示している。残基Asn222及びAsn272の個々の変異は酵素活性には何らの効果を有しないが、Asn264の変異は酵素活性をブロックする。
【0174】
それゆえ、Asn264でのグリコシル化モチーフにおける突然変異の変形を生産した。該モチーフ中の第3の位置のSer/Thrの変異によりグリコシル化をブロックすることが可能である。それゆえ、Thr266をプライマー#766:
【0175】
【数19】

【0176】
及びプライマー#767:
【0177】
【数20】

【0178】
を、プライマー#4733及び#577と共に用いロイシンに変異させ、続いて残基264及び272についての変異について同様な方法を行った。変異Thr266Leuを、変異Asn222Leu及びAsn272Leuの枠組みの中にクローン化し、CPG2(表面)LNLLという3ヶ所変異を受けた遺伝子を産生した。これを、MLVβpリンクにクローン化し、MLVCPG2(表面)LNLLと命名した。
【0179】
この蛋白質がグリコシル化されるか及び活性を有するか試験するために、2セットのNIH3T3細胞を用意し、各セットはMLVCPG2(表面)でトランスフェクションを受けた細胞の1皿及びMLVCPG2(表面)LNLLでトランスフェクションを受けた細胞の1皿を含んでいた。上述のように、セット1は、ツニカマイシン非存在下でインキュベートし、セット2はツニカマイシン存在下でインキュベートした。細胞抽出物を、バッファーA中に調製し、蛋白質イムノブロット分析及び酵素活性アッセイにかけた。イムノブロット分析の結果より、CPG2(表面)LNLLは、SDS−ポリアクリルアミドゲル上で見かけの分子量が〜47,000であるタイトなバンドとして移動することがわかる;これはCPG2(表面)の場合より相当小さい(図4A、レーン1,2)。CPG2(表面)LNLLがツニカマイシンと共にインキュベートした細胞中で産生されるとき、その見かけの分子量に変化はない(レーン2,4)、更に、CPG2(表面)LNLLは、もっとも速く移動する(それゆえおそらくグリコシル化されていない)、ツニカマイシンで処置されたNIH3T3細胞中で産生されるCPG2(表面)の形態と共に移動する(図4B、レーン2,3)。
【0180】
これらの抽出物の酵素活性を調べた。CPG2(表面)と異なり、CPG2(表面)LNLLは、ツニカマイシンで処理されていなかった細胞から取った抽出物中に活性が認められた(図4、試料1,2)。ツニカマイシンで処理した細胞由来のCPG2は、ツニカマイシンで処理した細胞由来のCPG2(表面)と対照的に、この活性に影響しなかった(試料1,3と2,4を比較して)。
【0181】
これらデータは、CPG2(表面)における3つのグリコシル化のモチーフのすべての変異が、NIH3T3細胞におけるそのグリコシル化を完全に阻害することを示す。変異Asn222Leuはその残基でのグリコシル化をブロックし、酵素活性については許容されていた。変異Asn264Leuは、その残基でのグリコシル化を阻害したが、酵素活性もまた阻害した。変異Thr266Leuは、残基Asn264でのグリコシル化をブロックし、酵素活性については許容されていた。変異Asn272Leuはその残基でのグリコシル化をブロックし、活性については許容されていた。3ヶ所の変異体Asn222Leu、Thr266Leu、Asn272Leuはグリコシル化されておらず活性を有していた。
【0182】
実施例2
CPG2(表面)の、CMDAプロ−ドラッグ存在下でのNIH3T3細胞を殺す能力を試験した。3セットのNIH3T3細胞を用意し、各々MLVβpリンクでトランスフェクションを受けた細胞の1皿、MLVCPG2(表面)でトランスフェクションを受けた細胞の1皿又はMLVCPG2(表面)LNLLでトランスフェクションを受けた細胞の1皿を含んでいた。細胞をトランスフェクションに続いて42時間インキュベートし、その後、セット1をプロドラッグビヒクル(5mM Hepes,0.5%v/v DMSO,pH7.0;最終濃度)の存在下24時間インキュベートした。セット2は、CMDAプロドラッグ(最終濃度0.5mM)の存在下3時間インキュベートした。セット3はCMDA(0.5mM)中24時間インキュベートした。プロドラッグ処理後、細胞を5mlの10%FCS/DMEMで3回洗浄し、セット1及び3は更に24時間新鮮な培地中でインキュベートし、セット2は45時間インキュベートした。その後、細胞を新鮮な培養皿で継代し、2ml FCS/DMEM中1×10細胞/35mm皿で播種した。更に72時間インキュベーション後、細胞の増殖を[3H]−チミジンの取り込みによって評価した。
【0183】
チミジンの取り込みにおいて、1μCiの[メチル−H]チミジンを各ウエル(2ml培地)に添加し、37℃で5時間インキュベートした。細胞をPBSA(4℃)で2回洗浄し、5%w/vトリクロロ酢酸(TCA)水溶液で4℃、20分間固定した。TCAを除去し、細胞を2mlメタノールで2回洗浄し、空気乾燥した。DNAを、1mlの0.1M NaOH,1% SDSを用い室温で5分間抽出し、4mlのシンチレーション流体に添加し、取り込まれたチミジンを、シンチレーションカウンティングによって決定した。
【0184】
MLVCPG2(表面)又はMLVCPG2(表面)LNLLでトランスフェクションを受けた細胞は、MLVβpリンクでトランスフェクションを受けた細胞と同じ速度で増殖し、このことは、哺乳動物細胞の表面上でのCPG2(表面)又はCPG2(表面)LNLLの発現は、細胞の増殖速度に影響を及ぼさないことを示す(図5、試料1−3)。コントロールの細胞のプロドラッグの処理は、その細胞の増殖の速度において最小限の効果を有する(図5、試料1,4,7)。対照的に、CPG2(表面)及びCPG2(表面)LNLLを発現する細胞のプロドラッグの処置は、増殖において著しい効果を有する。CPG2(表面)を発現する細胞は、3時間のプロドラッグ処置によって影響を受けないが、24時間プロドラッグ処置後細胞増殖の〜87%阻害があった(図5、試料2,5,8)。CPG2(表面)LNLLを発現する細胞は、3時間のプロドラッグ処置後の細胞増殖において〜20%減少を示し、続く24時間プロドラッグ処理後完全な細胞の死を示し、プロドラッグ処置により大きな感受性を有していた。
【0185】
これらのデータから、CPG2(表面)を発現するNIH3T3細胞をCMDAプロドラッグで処置すると、細胞増殖は阻害できることがわかる。CPG2(表面)のグリコシル化をブロックすることは、酵素活性を増大させ、酵素−プロドラッグシステムの細胞殺傷の可能性を非常に増大させる結果となることがわかる。
【0186】
製造例2
1.ベクターの構築
発現カセットを、EF1aプロモーター、第1エクソン、第1イントロン及び第2エクソンの部分を含むプラスミドpEF−Bos(ミジスマ及びナスガタ(Mizishuma and Nasgata)(1990), NAR, 18, 5322)由来の1.2kbのHindIII/EcoR1フラグメントを、β−グロビン遺伝子に、β−グロビン遺伝子の転写開始に対し位置−4に融合することによって構築した。ポリリンカー及びβ−グロビンの3’の翻訳されていない領域を含有するプラスミドMLVβ−Pリンク由来のNco−1/HindIIIフラグメントを、β−グロビン遺伝子の翻訳開始にまたがって位置する(転写開始に対して、位置+50)、β−グロビン遺伝子のNco−1部位に融合し、適切なmRNAプロセッシングのためのポリリンカー及び3’非翻訳領域を与えた。
【0187】
この完全なカセットを、ベクターpMClNeo PolyA(ストラタジーン(Stratagene))にクローン化させた。pMC1Neo PolyAを最初に修飾して、Neo遺伝子中に位置するNco1部位を破壊し、Neo遺伝子の3’末端に位置するBamHi、HincII及びSaI1部位を除去した。EF1α発現カセットを、(末端修復された)HindIIIフラグメントとして、修飾されたpMC1Neo PolyAプラスミド中の(末端修復された)Xho1部位にクローン化した。EF1αプロモーター及び反対方向に向かう(Neo遺伝子の発現をおこなう)TKプロモーターを有するベクターを、CPG2(表面)LNLLの発現のために選択した;該ベクターをpMCEF−Pリンクと命名する。CPG2(表面)LNLLを、Nco1/Xba1フラグメントとしてpMLVCPG2(表面)からpMCEF−PリンクのNco1/Xba1部位にクローン化した;該プラスミドをpMCEFCPG2(表面)LNLLと命名する。コントロールプラスミドとして、lacZ遺伝子も、また、プラスミドMLVBlacZからNco1/Xbaフラグメントとして、pMCEF−PリンクのNco1/Xba1部位にクローン化した;これをpMCEFlacZと命名する。
【0188】
2.安定な細胞株の調製
安定な細胞株を、CPG2(表面)LNLL、またはコントロールとしてLacZ遺伝子産物(β−ガラクトシダーゼ)を構成的に発現するNIH3T3細胞を用いて調製した。これを行なうために、上記比較例1に記載されるように、pMCEF−CPG2(表面)LNLLまたはpMCEFlacZでNIH3T3細胞をトランスフェクトし、トランスフェクションから2日後、G418を1mg/mlで含む培地に細胞を低密度でプレートした。単一の細胞から生じるコロニーが、約2週間後に観察され得、これらをクローン化し個々に増殖させた。各G418耐性コロニーからの細胞抽出物(上記比較例に記載されるように抽出した)30mlを、上記比較例1からの抗血清を用いて、イムノプロテインブロッティングすることにより、CPG2(表面)の発現を測定した。高レベルのCPG2(表面)LNLLを発現する細胞株#16(図6A)およびβ−ガラクトシダーゼを発現する細胞株#3(下記を参照)を、さらなる調査のために選択した。CPG2(表面)LNLLおよびβ−ガラクトシダーゼの発現を、酵素アッセイによって、細胞株で証明した。これらのアッセイのために、株#3および#16に関する1×10個の細胞を35mm組織培養皿にプレートし、4日間インキュベートした。細胞抽出物を調製し(上記を参照)、5μgのタンパク質をCMDA分解アッセイおよびβ−ガラクトシダーゼアッセイにかけた(CMDAアッセイは、上記比較例に記載されている)。細胞中のβ−ガラクトシダーゼ活性のアッセイのために、5μgの抽出タンパク質を、600μlのアッセイ用緩衝液(40mM NaPO、26.7mM NaHPO、6.7mMKCI、1mMMgSO、25mM 2−メルカプトエタノール、50mM Tris.HCL、0.06%v/v Triton X−100、2.2mM o−ニトロフェニル β−D−ガラクトピラノシド)に加え、37℃で60分間インキュベートした。250μlの1MNaCOをサンプルに加え、OD420を測定した。図6Bおよび6Cの結果は、株#3からの抽出物(点刻棒)が高レベルのβ−ガラクトシダーゼ活性を含むがCPG2活性を含まない、ことを示している。株#16からの抽出物は、いかなる検出可能なβ−ガラクトシダーゼ活性も含まないが、検出可能なレベルのCPG2活性を含む。
【0189】
実施例3
製造例2で得られた細胞株#3および#16を、CMDAプロドラッグによる細胞障害性についてテストした。24ウェル皿の各ウェルに1×10個の細胞をプレートし、40時間インキュベートし、続いて、CMDAの濃度を増加させながら、37℃で60分間処理した。さらに6時間インキュベーションした後、細胞の10%を24ウェル皿に再プレートし、さらに5日間インキュベートし、細胞生存度を[H]−チミジン取込みにより測定した。図7の結果は、細胞株#3(黒塗りの印)はテストされた最高濃度のCMDAにさえ感受性ではないが、#16(白抜きの印)は用量依存性に感受性であり、−125μMのIC50を示すことを示している。
【0190】
実施例4
製造例2で得られた細胞株#3および#16を、表示される種々の濃度で混合することによってバイスタンダー効果を測定し、24ウェルプレートにウェル毎にトータルで1×10個の細胞をプレートした。表示されているように250μMまたは1000μM CMDAを用いて、60分間処理したことを例外として、実施例3に記載されるように細胞をインキュベーションし処理した。細胞の生存度を、実施例3のように測定した。CPG2(表面)LNLLを発現している細胞が40%だけで、80%以上の細胞がプロドラッグの存在下に殺滅されたので、これらの条件では、ぎりぎりのバイスタンダー効果があることを、図8のこれらの結果は示している。
【0191】
製造例3
この実施例では、CPG2(表面)の活性の増大を可能にするよう、グリコシル化部位の他の突然変異を作製した。この目的のために、グリコシル化されることが示されている部位である、コドン222、264および272での、保存されたアスパラギンからグルタミンへの突然変異を作製することの生存性をテストした。これは、下記のPCRプライマーを使用して、PCR誘導突然変異誘発により行われた。
コドン222に関して:
#1171: 5'>GTG CAG GTC CAA ATC ACC GGC<3' および
#1172: 5'>GCC GGT GAT TTG GAC CTG CAC<3'。
コドン264に関して:
#926: >5'CTG CGC TTC CAA TGG ACC ATC<3' および
#927: >5'GAT GGT CCA TTG GAA GCG CAG<3'。
コドン272に関して:
#1173: 5'>AAG GCC GGC CAA GTC TCG AAC<3' および
#1174: 5'>GTT CGA GAC TTG GCC GGC CTT<3'。
【0192】
これは、実施例1に記載される実験プロトコールを使用して行われた。
【0193】
コドンN222/264/272Q突然変異を含むCPG2(表面)を、CPG2(表面)QQQと称し、Nco1/XbaフラグメントとしてMLVβPリンクにクローニングした;このプラスミドをpMLVCPG2(表面)QQQと呼ぶ。CPG2(表面)QQQの酵素活性をテストするために、NIH3T3細胞をpMLVCPG2(表面)またはpMLVCPG2(表面)QQQでトランスフェクトし、細胞抽出物を調製した;これら抽出物を、イムノプロテインブロッティングにより調べ、CPG2酵素活性を比較例に記載されるように調べた。イムノプロテインブロットは、CPG2(表面)QQQタンパク質(図9A、レーン2)が、CPG2(表面)タンパク質(図9A、レーン1)と違い、グリコシル化されていないタンパク質と一致する移動度で泳動することを示している。活性アッセイのデータから、類似の量の活性のためには、CPG2(表面)タンパク質(黒塗り棒、図9B)は、CPG2(表面)タンパク質(白抜き棒、図9B)よりも−50倍高いレベルのCPG2開裂活性を含むと見ることができる。
【0194】
MDA261Bの安定な細胞株の調製
CPG2(表面)QQQは、CPG2(表面)よりも活性であるので、CPG2(表面)QQQ、またはコントロールとしてβ−ガラクトシダーゼを構成的に発現するMDA261B細胞株を調製した。CPG2(表面)QQQをpMCEF−PリンクにNco1/Xbaフラグメントとしてクローニングした;このプラスミドをpMCEFCPG2(表面)QQQと呼ぶ。比較例に記載されたプロトコールに従って、MDA361B細胞を、pMCEFCPG2(表面)QQQ、またはpMCEFlacZのいずれかでトランスフェクトし、NIH3T3細胞に関するようにG418コロニーを生ずるよう処理した。NIH3T3細胞に関して記載されたように、イムノプロテインブロット分析によって、G418耐性コロニーを、CPG2(表面)QQQ発現に関してテストした。これらの分析から、β−ガラクトシダーゼを発現するM2およびCPG2(表面)QQQを発現するM38の2つの細胞株を、さらなるテストのために選択した。イムノプロテイン分析は、M38がCPG2(表面)QQQを発現(図10A、レーン2)するが、M2は発現しない(図10A、レーン1)ことを証明している。株M2によるβ−ガラクトシダーゼの発現は、酵素アッセイによって確認された(図10B、レーン1はM2抽出物を含み、レーン2はコントロールの抽出物を含む)。
【0195】
実施例5
これらの細胞株を、CMDAプロドラッグおよびプロドラッグ2に対する感受性に関してテストした。1×10個の細胞を、24ウェルプレートの各ウェルにプレートした。細胞を48時間37℃でインキュベーションした。続いて、CMDAまたはプロドラッグ2の濃度を増加させながら、それらを60分間37℃でインキュベートし、2回洗浄し、培地に戻して、さらに5日間インキュベートした。次に、細胞の生存度を、[H]−チミジン取込みを用いて測定した。結果は、CPG2(表面)QQQを発現する細胞株(株M38、図11Aおよび11B、白抜きの印)が、β−ガラクトシダーゼを発現する株(株M2、図11Aおよび11B、黒塗りの印)よりも、両方のプロドラッグに対してより感受性であったことを示す。
【0196】
プロドラッグCMDAに関しては、M2がプロドラッグに対していかなる感受性も示さなかったので、M38がM2よりどれくらい多く感受性であるかは、テストされた最高濃度でさえ、判断できなかった。しかしながら、プロドラッグ2を用いると、その差違は実質的なものであり、M38細胞はM2細胞よりも、プロドラッグに対して200倍のオーダーでより感受性であった。
【0197】
実施例6
プロドラッグ2はまた、製造例3で得られたMDA MB361トランスフェクト細胞で、スルホローダミンB細胞障害性アッセイを用いてアッセイされ(図12)、これは96ウェルマイクロタイター皿のウェルごとに5000細胞をプレートすることにより為された。細胞を、160μlのDMEM培地にプレートした。終夜インキュベートした後、5%血清を含むDMEMで作製された薬剤または適切なコントロールを、40μl体積でウェルに加えた。標準的条件下で、細胞を4日間インキュベートした。この後、培地を除去し、細胞を、氷上の氷冷10% TCA(トリクロロ酢酸)を用いて約30分間処理した。TCAを除去し、18μlの0.4%スルホローダミンB(SRB)を加えるために、細胞をすすいだ。該スルホローダミンBは、細胞を10分間染色するために残した。染色の後、細胞をTCA中ですすぎ、18μlの10mM TRISを加える前に空気乾燥し、続いて、細胞の生存度を読んだ。各株が等しく感受性であることを確実にするために(即ち、CPG2発現株が細胞殺滅剤に対しより感受性とされなかったことをチェックするために)、シスプラチン(CDDP)をコントロールとして使用した。コントロールのI2C−Z株と比較して、CPG2−発現株に関しては、CDDPに対する感受性の間にいかなる差違も見い出されなかった。(図12を参照)
【0198】
実施例7
CPG2(表面)QQQを構成的に発現するMDA MB 361細胞によるバイスタンダー効果を調べるために、M38細胞株、M2細胞株、またはM38:M2細胞の1:10混合物を、24ウェルプレートのウェルにプレートし(1×10個の細胞)、48時間インキュベートした。続いて、細胞を、種々の濃度のプロドラッグ2で60分間処理し、新鮮な培地で2回洗浄し、新鮮な培地中で5日間インキュベートした。次に、[H−メチル]チミジン取込みによって、細胞の生存度を測定した。結果は、M38細胞株(IC50 〜1μM)が、M2細胞株(IC50 〜200μM)よりも、プロドラッグに対して〜200倍、より感受性であることを示す。しかしながら、細胞の僅か10%がCPG2(表面)QQQを発現し実質的なバイスタンダー効果を明示していた事実にも拘わらず、これら2つの細胞株を1:10の割合で混合するとき、IC50は〜10倍減少した(〜20μM)。
【図面の簡単な説明】
【0199】
図面の簡単な説明
【図1】図1.NIH3T3細胞中のCPG2(表面)の発現 NIH3T3細胞は、MLVβpリンク(レーン1)またはMLVCPG2(表面)(レーン2)でトランスフェクションされた。該細胞は緩衝液A中に抽出され、各サンプルは10%w/vポリアクリルアミドゲルで電気泳動され、ニトロセルロースに移され、CPG2特異的ポリクローナル抗体でプローブされた。図1は、CPG2(表面)の泳動位置を示し、図の左側には標準分子量マーカー(kDa)の泳動位置を示す。
【図2A】図2.NIH3T3細胞中でのCPG2(表面)の発現に対するツニカマイシンの影響 (A)イムノブロット分析:NIH3T3細胞は、各々MLVCPG2(表面F/S)(レーン1,3)またはMLVCPG2(表面)(レーン2,4)でトランスフェクションされた。該細胞はツニカマイシンの非存在下(レーン1,2)またはツニカマイシンの存在下(レーン3,4)でインキュベーションされた。抽出物を調製し、図1に記載するようにして分析した。図は、CPG2(表面)の泳動位置を示し、図の左側には標準分子量マーカー(kDa)の泳動位置を示す。
【図2B】図2.NIH3T3細胞中でのCPG2(表面)の発現に対するツニカマイシンの影響 (B)CPG2酵素活性アッセイ:(A)部での細胞から抽出された酵素についてCPG2酵素活性を分析した。サンプル番号は(A)部のレーン番号に対応している;サンプル5はネガティブコントロールとして細胞抽出物の代わりに抽出緩衝液を含む。活性は緩衝液コントロールに対して任意な値として表わされる。
【図3A】図3.発現されたCPG2(表面)に対するグリコシル化変異の影響 (A)イムノブロット分析:NIH3T3細胞はMLVCPG2(表面)(レーン1,5);MVCPG2(表面)LNN(レーン2,6);MVCPG2(表面)NLN(レーン3,7);MVCPG2(表面)NNL(レーン4,8)またはMLVβpリンク(レーン9,10)でトランスフェクションされた。サンプルは、コントロール細胞(レーン1、2、3、4、9)またはツニカマイシンで処理された細胞(レーン5、6、7、8、10)に由来するものである。サンプルは図1と同様に分析された。種々の形態のCPG2(表面)と図の左側には標準分子量マーカー(kDa)の泳動位置を示す。
【図3B】図3.発現されたCPG2(表面)に対するグリコシル化変異の影響 (B)CPG2酵素活性アッセイ:(A)部に由来する細胞抽出物をCPG2酵素活性アッセイにより分析した。サンプル番号は(A)部のレーン番号に対応している。活性は緩衝液コントロールに対して任意な値として表わされる。
【図4A】図4.CPG2(表面)における潜在的なグリコシル化部位全ての変異の影響 (A)イムノプロテインブロット分析.NIH3T3細胞はMLVCPG2(表面)(レーン1,3)またはMLVCPG2(表面)LNLL(レーン2,4)でトランスフェクションされた。抽出物はコントロール細胞(レーン1,2)、またはツニカマイシンで処理された細胞(レーン3,4)に由来する。サンプルは図1と同様に分析された。CPG2(表面)プロテインと各レーンの左側には標準分子量マーカー(kDa)の泳動位置を示す。
【図4B】図4.CPG2(表面)における潜在的なグリコシル化部位全ての変異の影響 (B)CPG2酵素活性アッセイ.(A)部に由来する細胞抽出物をCPG2酵素活性アッセイにより分析した。サンプル番号は(A)部のレーン番号に対応する;更にネガティブコントロールとして、コントロール細胞(サンプル5)またはツニカマイシンで処理された細胞(サンプル6)のいずれかに由来する、MLVβpリンクでトランスフェクションされた細胞由来のサンプル(サンプル5,6)を含む。結果を緩衝液コントロールに対する任意な値として表わす。
【図5】図5.細胞毒性アッセイ NIH3T3細胞は、MLVβpリンク(サンプル1,4,7)MLVCPG2(表面)(レーン2,5,8)またはMLVCPG2(表面)LNLL(レーン3,6,9)でトランスフェクションされた。トランスフェクション後42時間して、細胞を、コントロールとしてプロドラッグ・ビヒクルで24時間(レーン1−3)、CMDAプロドラッグで3時間(レーン4−6)またはCMDAプロドラッグで24時間(レーン7−9)で処理した。回復期間後、細胞を新鮮な組織培養ディッシュで継代し、3日後、細胞の生存度を[メチル−H]チミジンの取り込みを測定することによって求めた。取り込まれたチミジンの量は、各サンプルのdpm値で示される。
【図6A】図6(A)イムノブロット分析.図はNIH3T3細胞でのCPG2(表面)LNLLの構成性(constitutive)発現を示す。CPG2(表面)LNLLの電気泳動位置と図の左側には標準分子量マーカー(kDa)の泳動位置を示す。レーン1および2はそれぞれ細胞株(cell line)#3および#16である。
【図6B】図6(B)β−ガラクトシダーゼの酵素活性アッセイ.(B)および(C)において、(A)由来の細胞抽出物が分析された。NIH3T3細胞株#3に対する結果を白抜きバーで示し、細胞株#16に対する結果を黒塗りバーで示す。活性は緩衝液コントロールに対する任意の値で示す。
【図6C】図6(C)CPG2の酵素活性アッセイ.(B)および(C)において、(A)由来の細胞抽出物が分析された。NIH3T3細胞株#3に対する結果を白抜きバーで示し、細胞株#16に対する結果を黒塗りバーで示す。活性は緩衝液コントロールに対する任意の値で示す。
【図7】図7.CPG2(表面)LNLLまたはβ−ガラクトシダーゼを構成的に発現するNIH3T3細胞株のプロドラッグCMDAに対する感度。
【図8】図8.CPG2(表面)LNLLまたはCMDAプロドラッグを構成的に発現するNIH3T3細胞で見られるバイスタンダー・エフェクト。
【図9A】図9(A)イムノブロット分析:NIH3T3細胞中でのCPG2(表面)およびCPG2(表面)QQQの一過性の発現。CPG2(表面)およびCPG2(表面)QQQの泳動位置および図の左側に標準分子量マーカー(kDa)の泳動位置を示す。
【図9B】図9(B)CPG2の酵素活性アッセイ.(A)由来の細胞抽出物を分析した。サンプル番号は(A)由来のレーン番号に対応する。活性を緩衝液コントロールに対する任意の値として表す。
【図10A】図10(A)イムノブロット分析:MDA MB361細胞中でのCPG2(表面)QQQの構成的発現.CPG2(表面)QQQの泳動位置を、図の左の標準分子量マーカー(kDa)の泳動位置として表す。
【図10B】図10(B)MDA MB361細胞株M2およびM36で発現されたβ−ガラクトシダーゼの酵素活性.(A)由来の細胞抽出物を分析した。サンプル番号は(A)由来のレーン番号に対応する。活性は、緩衝液コントロールに対する任意の値として表す。
【図11A】図11(A)CPG(表面)QQQまたはβ−ガラクトシダーゼを構成的に発現するMDA MB 361細胞のプロドラッグCMDAに対する感度。
【図11B】図11(B)CPG(表面)QQQまたはβ−ガラクトシダーゼを構成的に発現するMDA MB 361細胞のプロドラッグ2に対する感度。
【図12】図12 CPG2を構成的に発現するMDA MB 361細胞のプロドラッグ2に対する感度−スルホローダミンアッセイ。
【図13】図13 CPG2(表面)QQQを構成的に発現するMDA MB 361細胞株で見られるプロドラッグ2とのバイスタンダー・エフェクト。
【0200】
【表1】

【0201】
【表2】

【0202】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシペプチダーゼ活性を保持しているが、1又はそれ以上のグリコシル化部位で、該部位でのグリコシル化を阻止するために、置換、欠失又は挿入を含むカルボキシペプチダーゼ。
【請求項2】
請求項1のカルボキシペプチダーゼをコードする核酸を含むベクター。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−42821(P2006−42821A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235444(P2005−235444)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【分割の表示】特願平8−505598の分割
【原出願日】平成7年7月27日(1995.7.27)
【出願人】(500069552)キャンサー リサーチ キャンペーン テクノロジー リミティド (4)
【Fターム(参考)】