説明

遺伝子改変植物及びフィトレメディエーションにおけるそれらの使用

シュートに重金属を蓄積できる遺伝子改変植物、及び該遺伝子改変植物を用いて該重金属を除去し、できれば回収する方法。上記の遺伝子改変植物は、少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の複数のコピーを含み、上記のP1B-タイプのATPアーゼを過剰発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、フィトレメディエーション(phytoremediation)の分野に関する。より具体的には、本発明は、シュート(shoots)に重金属を蓄積できる遺伝子改変植物、及び該遺伝子改変植物を用いて上記の重金属を除去し、かつできれば回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの環境及び健康問題は、環境汚染と関連している。土壌の重金属汚染は、金属の環境における存続性がほとんどわからないので、特に有害である。ある重金属は土壌中に自然に存在するが、重金属汚染は、しばしば、人間活動の結果である。重金属での環境汚染は、工業化のために大きく増加している。採鉱、精錬、集約農業、汚泥投棄、エネルギー及び燃料の生産、電気めっき及び燃料排出は、土壌を重金属で汚染することに寄与している。
【0003】
重金属で汚染された土壌は、正常な植物の生育を阻害し、食物の汚染を引き起こす。多くの重金属は人間の健康に非常に毒性であり、低濃度で発がん性である。よって、重金属を環境から除去することは、重要である。
【0004】
現在、この問題を扱うための最も一般的な方法は、汚染土壌の除去及び埋蔵、又は汚染領域の隔離である。しかし、このような方法は非常に費用がかかる。
土壌の浄化のための比較的新しい新規な選択の一つは、土壌から有機及び無機の汚染物質を取り除く植物を用いるフィトレメディエーションである。
【0005】
フィトレメディエーションは、植物抽出(phytoextraction)、根茎ろ過(rhizofiltration)及び植物安定化(phytostabilization)に分けることができる。
− 植物抽出は、汚染物質を蓄積する植物を用いて、土壌から汚染物質を植物の収穫可能な部分へ抽出する方法である。
− 根茎ろ過は、植物の根(roots)を用いて、汚染された水の流れから汚染物質を除去する方法である。
− 植物安定化は、植物を用いて土壌中の毒性金属のような汚染物質を安定化して、それらが土壌の水に入ることを防ぐことである。
しかし、ほとんどの植物は、高いレベルの重金属を含有する土壌中で生育することができない。
【0006】
ある特定の植物は、ニッケル、コバルト、銅、鉛、亜鉛、カドミウム及びセレニウムを蓄積することが見出されている。ニッケルの蓄積体(accumulators)は、現在までに発見されている高蓄積体のうちでは、断然最も一般的である。より稀にしか吸収されない重金属は、マンガン、カドミウム及び鉛を含み、鉛は特に吸収が難しく、吸収された後に植物の根から植物の茎(stems)へ移動させるのが非常に困難でもある。
【0007】
よって、高い濃度の重金属を含有する土壌において生育できる植物に対する必要性がある。植物に重金属耐性を付与するために、重金属を輸送するP-タイプのATPアーゼ、より具体的には重金属輸送体として知られるP1B-ATPアーゼの特性を用いることが提案されている。
【0008】
P1B-ATPアーゼは、エネルギーを発生するATP加水分解反応において放出されるエネルギーを用いて、正に荷電された物質を膜を横切って移動させる(Inesi, 1985)。P1B-ATPアー
ゼは、始原菌からヒトまでの全ての生物において見いだされ、ソフトメタルカチオンを輸送すると考えられている。これらは、HMA (Axelsen及びPalmgren, 2001; Williamsら, 2000)又はCPx-タイプのATPアーゼ (Solioz及びVulpe, 1996; Rensingら, 1997; Williamsら, 2000)とよばれる。
【0009】
酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)においては、2つのP1B-ATPアーゼ(Cattyら, 1997)、CCC2及びPCA1しか見つかっておらず、両方とも銅の輸送に参加している(Fuら,1995; Bassett Jrら, 1996; Ranら, 1994)。
【0010】
シロイヌナズナ(アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana))では、7つのP1B-ATPアーゼが以前に同定されているが(Axelsen及びPalmgren, 2001)、最近のゲノムの公開は、HMAグループに属する8つ目の遺伝子を明らかにしている(P-タイプのATPアーゼデータベース; http://biobase.dk/~axe/Patbase.html)。
【0011】
コメ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))ゲノムの2つのドラフト配列が最近完成したことにより、このグループ内によく似た数の酵素があることが示されている。1つ又は2つのP1B-ATPアーゼしか有さない他の真核生物に比べて、アラビドプシス及びオリザでのHMAの数の平行拡張(parallel expansion)は、これらの酵素が植物における金属の全体の移動において重要な役割を演じることを示唆する。
【0012】
両方の種において、これらの8つのタンパク質は、全長配列のアラインメントとイントロンの位置に基づいて6つのクラスタに分類されている(Baxterら, 2003)。アラビドプシスにおいて、2つの最初のクラスタ(それぞれHMA1、HMA2-4)は、Zn/Cd/Co/Pb ATPアーゼの可能性がある。他の4つはCu/Ag輸送において役割を有している可能性がある。最初の2つの特徴付けされた酵素は、この最後のサブグループのメンバーである。AtHMA7 (RAN1)は、エチレン受容体への銅輸送体として同定されている(Hirayamaら, 1999; Woeste及びKieber, 2000)。最近、AtHMA6 (PAA1)は、葉緑体の銅タンパク質への銅の移動に参加するCu輸送体として、特徴付けられている(Shikanaiら, 2003)。また、全ての真核生物のHMAは、このCu/Agサブグループに属するとして今のところ特徴付けられている。
【0013】
Zn/Cd/Co/Pbサブグループの多くのメンバーが知られているにもかかわらず(Rensingら,
1998; Hou及びMitra, 2003; Lebrunら, 1994a及び1994b; Tsaiら, 2002)、植物におけるあるホモログの最初の特徴づけは、発表されたばかりである(Millsら, 2003)。これらの著者らは、AtHMA4が、野生型サッカロミセス・セレビシエにおいてCdに対する耐性の増加を誘導し、Znに対して高度に感受性であるエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)zntA変異体のZn耐性を回復させたことを示した。予想されたように、AtHMA4は、copA変異体の関係において、銅耐性を回復できなかった。
【0014】
よって、重金属に対する植物の耐性を実質的に増加させる観点で、これらの輸送体の特性を用いることが提案されている。
− 欧州特許出願第1 136 558号は、種々の原核生物又は真核生物を起源とする1又は複数の異種の重金属輸送及び/又は隔離(sequestering)タンパク質をコードする配列を含む植物を提案している。この金属輸送タンパク質は、例えば、P-タイプのATPアーゼのような膜タンパク質、好ましくはカドミウムATPアーゼのような細菌のP-タイプのATPアーゼである。このような植物は、重金属耐性及びおそらく重金属蓄積が改善されたことが記載されている。しかし、カドミウムATPアーゼ改変植物の使用に関して、植物のカドミウムに対する耐性の増加は、指摘されている唯一の特性である。
【0015】
− PCT国際出願WO 02/081707号は、重金属耐性が増大され、重金属の摂取が減少した植物形質転換体を開示している。植物を形質転換するのに用いられているP-タイプのATPア
ーゼはZntAであり、これはイー・コリのP-タイプのATPアーゼであり、細胞質膜を横切ってPb(II)/Cd(II)/Zn(II)をポンピングする。より具体的には、上記のPCT国際出願では、亜鉛輸送ATPアーゼ (NC_000913)、亜鉛輸送ATPアーゼ (NC_002655)、重金属輸送ATPアーゼ (NC_003198)、P-タイプのATPアーゼファミリー(NC_003197)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)からのカチオン輸送P-タイプのATPアーゼ(GenBank #Z46257)及びその他の多くを含む生物学的に活性なZntA様重金属ポンピングATPアーゼを用い得ると考えている。ZntA-トランスジェニック植物、例えばZntA-トランスジェニックアラビドプシス植物が記載されている。この植物は、鉛及びカドミウムに対して増大した耐性を示し、鉛及びカドミウムの含量は、野生型植物に比べてより低い。よって、このような形質転換植物は、重金属で汚染された環境で生育できる。よって、この技術は、有害な重金属の摂取が減少した収穫植物を作製するのに有用であり得る。このことは、上記のPCT国際出願の発明者であるLEE J.らの名の下での文献(Plant Physiol., 2003)により確認され、この文献は、細菌の重金属ポンプであるZntAはアラビドプシスで発現でき、Pb(II)及びCd(II)に対する耐性の増加、及びトランスジェニック植物のシュートでの重金属含量の減少をもたらすことを確かめている。よって、両方の文献は、重金属への耐性が増大されかつ重金属の摂取が減少した植物、すなわちトランスジェニックZntAアラビドプシス植物を開発可能であることを示す。もしZntAを収穫植物に導入できるならば、得られる植物は、そのシュートに含有する重金属がより少ないので、より安全であろうと結論付けている。
【0016】
よって、これらの2つの文献に記載されたトランスジェニック植物の狙いは、フィトレメディエーションではない。上記の文献で提案されたトランスジェニック植物は、フィトレメディエーション、より具体的には上記で規定するような植物抽出のために用いることができない。
【0017】
− Mills R.Fら(Plant J., 2003, 上記)は、AtHMA4、Zn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼが、野生型のサッカロミセス・セレビシエにおけるCdに対する耐性の増加を誘導し、Znに対して高い感受性を有するエシェリヒア・コリzntA変異体のZn耐性を回復したことを示した。彼らは、フィトレメディエーションとの密接な関係から、植物における金属輸送に対してかなりの興味があると考えているが、この文献では、AtHMA4が主にアラビドプシスの根で発現され、細胞質膜に存在して過剰の金属、例えばZn又はCdを根圏にくみ出す、根の表皮細胞での解毒系として植物体において(in planta)機能し得ることのみを示している。よって、彼らは、AtHMA4含有植物を根茎ろ過に用いることを提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のことから、開示された方法のいずれも、土壌からの重金属の除去のための効率的なフィトレメディエーション系、すなわち土壌からの重金属の除去に特に適合させた植物抽出法を用いる方法を提案していないことがわかる。実際に、以前に開示された方法は、野生型より重金属の摂取がより少なく、重金属で汚染された環境においてさえ健康な生育を維持する植物の選択に焦点を当て、植物抽出によるフィトレメディエーションに焦点を当てていない。
さらに、この分野における興味及び研究の増加にもかかわらず、フィトレメディエーションに関係するいくつかの問題が残されている。例えば、多くの金属蓄積植物は、獲得した金属の実質的な部分を、それらの根から別の組織に移動できない。
【0019】
よって、植物抽出による重金属の経済的なフィトレメディエーションを提案する観点から、収穫可能な部分に重金属を抽出できる植物に対する必要性がある。
本発明者らは、予期せぬことに、Zn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+輸送体のサブファミリー又はサブクラスの少なくとも1つのP1B-ATPアーゼを過剰発現する植物が、植物抽出法を用いるフ
ィトレメディエーションの方法における使用のよい候補であり、このような遺伝子改変植物がシュートに効率的に重金属を移動させることを知った。
【課題を解決するための手段】
【0020】
よって、本発明のある観点において、重金属を蓄積でき、それらをシュートに、より具体的には茎及び葉に移動できる遺伝子改変植物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のこの観点の好ましい実施形態は、Zn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の1つ又は複数のコピーを含み、上記のP1B-タイプのATPアーゼを過剰発現することを特徴とする遺伝子改変植物を含む。「P1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の1つ又は複数のコピーを含む」ことが、上記の遺伝子改変植物が該ATPアーゼをコードする配列の少なくとも1つのさらなるコピーを含むことを意味することはいうまでもない。好ましい実施形態において、植物は同型接合であり、よって追加された配列のコピーの同じ数(少なくとも2)を含む。以下の実施例に記載されるように、同型接合植物は、形質転換された植物の自家交差(self-crossing)により得ることができる。
【0022】
本発明によると、上記のP1B-タイプのATPアーゼは、好ましくは真核生物起源であり、より好ましくは高等植物からのものである。好ましい実施形態において、上記のP1B-タイプのATPアーゼは、、HMA1、HMA2、HMA3及びHMA4から選択される。フィトレメディエーションのために遺伝子改変される野生型植物がHMA遺伝子を有する場合、上記の内在性遺伝子の少なくとも1つのさらなるコピーは、該内在性遺伝子を過剰発現するために、上記の植物ゲノムに導入されるのが好ましい。あるいは、例えば野生型植物が重金属のフィトレメディエーションを達成するためにその発現が望まれるP1B-タイプのATPアーゼを欠く場合、該P1B-タイプのATPアーゼは、生態型にかかわらず、シロイヌナズナの重金属ATPアーゼ HMA1〜HMA4 (すなわち、AtHMA1、AtHMA2、AtHMA3及びAtHMA4)からなる群より、又は別の植物種から選択することができる。シロイヌナズナの対応する配列は、次のウェブサイトから入手可能である:http://mips.gsf.de又はhttp://biobase.dk/~axe/Patbase.html。
【0023】
有利に用い得る核酸配列は、シロイヌナズナのものであり:
・生態型Ws (Wassilewskija):AY054390 (AtHMA2)、AY434729又はAY055217 (AtHMA3)、AF412407 (AtHMA4));
・生態型Columbia:NM_119890 (AtHMA1)、NM_119157又はAY434728 (AtHMA2)、NM_119158又はAY434730 (AtHMA3)、NM_127468又はAJ297264 (AtHMA4);
・生態型Landsberg:AJ400906 (AtHMA1)。
【0024】
しかし、本発明は、シロイヌナズナのその他の野生の生態型の対応する配列の使用も含む。当業者は、上記のもの(AtHMA1〜4)に等価な配列を、該配列との適切なアラインメントにより容易に取得することができる。
【0025】
本発明の別の実施形態によると、上記の遺伝子改変植物は、Zn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスの2つの異なるP1B-タイプのATPアーゼをコードする少なくとも2つの異なる配列の1つ又は複数のコピーを含む。この実施形態によると、遺伝子改変植物は、HMA3及びHMA4の少なくとも両方を過剰発現するのが好ましい。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態によると、上記の遺伝子改変植物は、Zn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の1つ又は複数のコピーと、(1)金属キレート化に関係する酵素(例えばフィトケラチンシンターゼ、グルタチオンシンセ
ターゼ又はγ−グルタミルシステインシンターゼ)又は(2)別の金属輸送体、例えばYCF1又はその他のABC輸送体をコードする配列から選択される少なくとも別の配列とを含む。
【0027】
上記のAtHMA配列は、適切なベクターに挿入でき、該AtHMA配列は、植物で発現可能な転写及び翻訳調節配列、例えば植物特異的プロモータ、より好ましくはCaMV35Sプロモータに操作可能に連結されかつその調節性制御下にあり、該ベクターは既知の方法を用いて、選択された植物に導入される。上記のベクターは、有利にはアグロバクテリウム(Agrobacterium)/植物シャトルベクターである。
好ましくは、上記のベクターは植物に導入でき、このようなベクターは、アグロバクテリウム・チューモファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)法を用いる植物の形質転換を可能にする。形質転換された植物は、次いで、同型接合の安定系統を得るために自家交差できる。
【0028】
本発明によると、用いられる植物は、カラシナ(Brassica juncea)、ポプラ(Poplar)、タバコ(Nicotiana tabacum)からなる群より選択される。
【0029】
本発明は、植物を形質転換できる組み換えベクターにも関し、該ベクターは、形質転換された植物がZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼの少なくとも1つを過剰発現するという観点で、少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼ(重金属ポンピングATPアーゼ)をコードする配列の1つ又は複数のコピーを含むことを特徴とする。本発明によるベクターに導入される配列によりコードされるATPアーゼは、植物で発現したときに、重金属を該植物のシュートに移動できるように選択される。よって、ZntAは、本発明によって用いるのに適切なATPアーゼではない。有利に用い得るATPアーゼの例は、真核生物のP1B-ATPアーゼであるHMA1、HMA2、HMA3及びHMA4、特に、フィトレメディエーションに用いる植物に近縁の植物を起源とするものである。
【0030】
有利には、上記のコードする配列は、植物特異的プロモータのような植物で発現可能な転写及び翻訳調節配列に操作可能に連結されかつその調節性制御の下にある。
【0031】
ある特定の実施形態において、本発明による組み換えベクターは、HMA3をコードする第一の配列とHMA4をコードする第二の配列とを含む。以下の実施例3に記載されるように、これらの2つのATPアーゼは、重金属、特にCo、Pb及びCdをシュートに蓄積するために相乗的に作用する。よって、本発明は、HMA3をコードする第一のベクターとHMA4をコードする第二のベクターとを少なくとも含む、上記のような組み換えベクターの組にも関する。
【0032】
本発明は、上記のベクター若しくはベクターの組により形質転換された植物細胞又は植物にも関する。
【0033】
本発明は、
− 上記で規定するような、すなわち、植物で発現可能な転写及び翻訳調節配列に操作可能に連結されかつその調節性制御の下にある、少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の1つ又は複数のコピーを含む組み換えベクターを少なくとも準備し、そして
− 上記の組み換えベクターを植物細胞又は植物組織に導入して遺伝子改変植物細胞又は遺伝子改変植物組織を作製する
ことを含む、少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼを過剰発現する遺伝子改変植物を作製する方法にも関する。
同型接合系統を得るために、自家交差のさらなる工程を行ってもよい。
【0034】
本発明の別の観点において、上記で規定する遺伝子改変植物は、環境(すなわち土壌、
水など、特に汚染された土壌)から重金属を抽出するために用いられる。有利には、HMA3及びHMA4の両方を過剰発現する植物は、Co、Cd又はPdで汚染された環境から該金属を植物抽出するために用いられる。よって、本発明は、
− 上記の遺伝子改変植物を少なくとも1種の重金属で汚染された土壌を含む領域に植える工程、及び
− 適切な時間間隔で上記の遺伝子改変植物から植物組織を回収して除去する工程
を含むことを特徴とする、土壌からの重金属のフィトレメディエーション方法にも関する。
【0035】
本発明のこの観点の好ましい実施形態は、次の重金属:Zn、Co、Cd又はPbの少なくとも1種を土壌から抽出することを含む。HMA3及びHMA4の両方を過剰発現する植物を用いる場合、この共発現(co-expression)の相乗効果は、Co、Cd及びPbについて達成されるが、Znに関する上記の植物のレメディエーション能力は、HMA3の過剰発現によって著しく改善されない。
【0036】
植物全体は、金属含有環境(すなわち土壌、水など)で生育させた後に除去でき、それによりこれらの金属をその組織の中に取り入れる。しかし、多くの好ましい実施形態において、上記の遺伝子改変植物の能力の利点は、蓄積された金属の実質的な割合を茎及び葉の組織に隔離することである。
よって、上記の遺伝子改変植物は、汚染された土壌に植えられ、生育させ、土壌から特定の金属を取り除く。
次いで、適切な時間間隔で、金属含有組織、より好ましくは葉及びできれば枝を植物から除去し、残りの植物組織を生存させる。
回収された植物組織を生育領域から除き、正しく処理することにより、金属含有組織が土壌に再び取り込まれることが許容されない。
【0037】
本発明の別の実施形態において、上記の重金属は、上記の植物組織から既知の方法により、Mn+状態で抽出できる。
本発明のさらに別の実施形態において、上記の重金属は、回収した金属含有組織を燃焼させた後に得られる灰から抽出され、該金属はM0状態である。
燃焼操作は、制御された環境のプロセスの下で行われる。
M0状態で得られる重金属は、有利には直接再利用される。
【0038】
次の表は、配列表に示す配列番号と種々の配列の名称との対応を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記の規定に加えて、本発明は、本発明の主題である方法の例示的実施形態及び添付の図面に言及する以下の記載から明らかになるその他の規定をも含む。該図面では:
- 図1:Ws生態型からのAtHMA4の核酸及びアミノ酸配列(アクセッション番号AF412407)。灰色の強調された文字は、5' UTRに相当する。N-末端重金属モチーフ、多くのシステインダブレット及びHisストレッチを箱で囲む。よく保存された部位に下線を付す。選択的スプライシングされた形で欠失されたアミノ酸配列は、黒で強調する。Athma4ΔHis形及びそのGFP融合体の停止挿入の位置は、黒塗りの垂直の矢印で示し、白塗りの矢印はAtHMA4及びAthma4asのGFP融合位置に相当する。
【0041】
- 図2:Ler及びCol-0生体型には存在しないが、Ws生態型にAtHMA4のcDNAの選択的スプライシングされた形が存在することの証明。RTは、4μgの全葉RNAを用いて行った。
- 図3:A:キメラ構築物及びEGFPを融合させていないAtHMA4を発現する種々の形質転換株のミクロソーム画分のウェスタンブロット分析。50μgのタンパク質を、各画分について8
% SDS-PAGEに載せた。分離したタンパク質をニトロセルロースメンブレン上にエレクトロトランスファーし、抗EGFPセイヨウワサビペルオキシダーゼ抗体を用いて視覚化した。B:AtHMA4::EGFPを発現する酵母細胞の共焦点顕微鏡観察。上:透過の像;下:EGFP蛍光の像。
【0042】
- 図4:A:AtHMA4(Athma4D401A、Athma4as及びAthma4ΔHisではない)は、Cdに対する耐性の増加を付与し、エス・セレビシエのycf1変異株を機能的に置き換えることができる。種々の株を、記載した濃度でCdCl2を補った固形のSC最少培地上で増殖させた。プレート
を30℃で4日間インキュベートした。上部(野生型):野生型株BY4741のpYES2のみ-、AtHMA4-、Athma4D401A-、Athma4as-及びAthma4ΔHis-形質転換体。下部:構築物をycf1変異株で発現させた以外は上部と同じ(ycf1 YCF1は、変異株ycf1のpYES2-YCF1による補完を示す)。B:AtHMA4により付与される金属耐性は、CdのグルタチオンS-複合化形に影響を与えない。種々の株を、70μM CdCl2及び5 mM BSOを補ったか又は補わない(コントロール)固形のSC最少培地上で、30℃で4日間増殖させた。
【0043】
- 図5:AtMHA4又はAtHMA4::EGFPの発現(Athma4ΔHisではない)は、Pbの存在下でycf1の機能的置き換えを誘導する。株を、20 mM Pb(CH3COO)2を補ったか又は補わない(コントロール)固形のSC最少培地上で増殖させた(条件及び株は図4と同じ)。
- 図6:AtHMA4は、Znに対する耐性をわずかに増大させ、zrc1株を部分的に置き換え可能であった。株及び培養条件は、図4と同じであった。ZnSO4、7H2Oは、記載された濃度で培地に加えられた。
【0044】
- 図7:野生株のpYES2-のみ(WT)又はAtHMA4- (WT AtHMA4)形質転換体;ycf1変異株のYCF1- (ycf1 YCF1)又はAtHMA4- (ycf1 AtHMA4)形質転換体の48時間培養のCd含量。エラーバーは、5つの独立した実験からのSEを示す。
- 図8:種々の組織から抽出されたRNAについてRT-PCRにより測定されたAtHMA4 (及びAthma4as)の発現プロフィール。RT-PCRの結果は、選択的スプライシングされた形(Athma4as、350bpサイズの断片)の発現をよりよく視覚化するために、27及び30サイクルの後に示す。
【0045】
- 図9:A:5'UTR を含むAtHMA4のエキソン/イントロンマップ及びRm396変異株のT-DNA挿入の位置。9番目のエキソン(5'UTRを含む)のアスタリスクは、cDNAの選択的スプライシングされた形(Athma4as)における欠失の位置を示す。矢印は、Rm396及びWsからのRNA抽出物を用いてRT-PCRにより転写産物の存在を制御するのに用いた種々のプライマを示す。B:T-DNA挿入Rm396系統は、AtHMA4についての真のK.-O.変異株である。RT-PCRを、AtHMA4に特異的な種々のプライマ対を用いてRNAについて行った。上部:オリゴヌクレオチド1 (1HMA4:配列番号7)及び2 (Rev6HMA4:配列番号1);中:1及び3 (Rev18HMA4:配列番号14);下部:4 (10HMA4: 配列番号15)及び5 (Rev8HMA4: 配列番号16)。
【0046】
- 図10:植物体におけるGUS活性の発現プロフィール。a:根;b:根の切片;c:苗木(plantlet);d:茎及び茎の葉(cauline leaf);e:おしべ(stamens)。
- 図11:AtHMA4発現は、Zn処理によりアップレギュレートされる。A:全RNAに対するRT-PCR増幅。B:根系でのGUS染色。挿入図は、1mM Znで処理した根の双眼顕微鏡観察に相当する。植物を、水栽培で生育させ、記載した濃度のZnSO4を用いて24時間処理した。
【0047】
- 図12:AtHMA4の過剰発現は、金属に対する耐性を増大させる。A:葉から抽出したRNAを用いて行ったRT-PCRにより測定されたAtHMA4の過剰発現。B:標準の栄養溶液(Zn 3μM)上で8日間水栽培で生育させた野生株(Col-0)又は過剰発現(35S-AtHMA4)植物からの葉の、ICP測定により測定したZn含量。C:垂直に生育した苗木の根の長さ。植物の写真は、発芽から15日後に撮影される。D:グラフは、2つの系統のうち1つを詳細に分析した、3つのうちの1つの代表的な実験の結果を示す。値は、75〜100の根の測定の平均であり、エラーバーはSEMを示す(P<0.005)。
【0048】
しかし、これらの実施例は、本発明の主題の説明のためのみに与えられ、その限定を構成しないことが明確に理解されるべきである。
実施例1:材料及び方法
− 植物材料、培養培地、並びに全RNAの抽出及び測定
植物を、制御された環境下で(8 hの300μmol.m-2.s-1での光周期、22℃及び相対湿度70
%)、1 % (w/v)スクロース及び0.7 % (w/v)バクトアガーを加えた1/2強度(MS/2)の栄養
溶液(Murashige及びSkoog, 1962)からなる固形培地のMurashige及びSkoog培地で生育させた。Wassiliewskija (Ws)、Columbia (Col-0)及びLandsberg erecta (Ler)の生態型のシロイヌナズナの表面滅菌種子の発芽は、固形培地上で起こった。2週間後、幼若植物を、同じ栄養溶液で飽和させた砂の上にさらに3週間置き、最後に水栽培の培養系に移した。植物を異なる金属(インビトロ又は水栽培で)で処理したときに、栄養溶液中のものに加えて図の凡例に記載するような種々の濃度を与えられた。
【0049】
全RNAを、Verwoerdら(1989)にしたがって種々の組織(根、葉、茎、茎の葉、花及び長果角)から抽出し、RNA濃度を260 nmのUV吸収を用いて測定した(BioPhotometer, Eppendorf, Hamburg, Germany)。
【0050】
− AtHMA4のcDNAのクローニング
2つの連続する5' RACE-PCRを、製造業者の使用説明に従って行った(5' RACE System, GibcoBRL(登録商標), Carlsbad, CA)。RACEの最初のサイクルにおいて、2番目の予測されるエキソンに位置する遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマRev6HMA4 (5'-GACCAATATGTTGATGTCGATCC-3') (配列番号1)を用いてcDNAを増幅した。2つの連続するセミ−ネストPCRを、それぞれプライマRev5HMA4 (GGCTTTGGCAAGAATCGGATAG-3') (配列番号2)及びRev4HMA4 (5'-GCGGCAACTGCTGCCACGGCGAGCC-3') (配列番号3)とともにExpand High-Fidelity System (Roche, Mannheim, Germany)を用いて行った。反応条件は、94℃で3分、次いで94℃で30秒、53℃又は67℃で30秒、68℃で1分を35サイクルであった。最後のサイクルに続いて、68℃で5分の延長伸長工程を行った。増幅断片をpGEM-T (登録商標) Easyベクター(Promega, Madison, WI)にクローニングした。5' RACEの2回目を、上記のようにして行った。異なるプライマを用い、cDNA増幅にはRev3HMA4 (5'-CTTCTTCACTTTCTTTTTCTCTTCTTC-3) (配列番号4)を、2つの連続するセミ−ネストPCRにはRev2HMA4 (5'-GTAGCAAAAGGAAGAAGCCGATG-3') (配列番号5)及びRev1HMA4 (5'-CTGGTTTGGTGCGATCAGATAAAGG-3') (配列番号6)を、それぞれ55℃及び58℃のアニーリング温度で用いた。
【0051】
第一鎖完全長cDNA合成を、製造業者の使用説明に従ってThermoScript (商標) RT-PCRシステム (Invitrogen (商標), Carlsbad, CA)を用い、全葉RNA 4μg及びオリゴ(dT)20プライマを用いて行った。次いで、PCRを、Platinum (登録商標) Pfx (Invitrogen (商標))をBACクローンに存在すると予想されるコードする配列の5'-UTR及び3'端に相当するプライマ (5'-端プライマ1HMA4 (5'-CACTTCTCTCAACCTTTATCTGAT-3') (配列番号7)及び3'-端プライマRev14HMA4 (5'-GTTATTCAATCAATCTCCATCAAG-3') (配列番号8))とともに用いて行った。PCR反応条件は、ハイブリダイゼーション温度(50℃)及び最終伸長工程(10分)以外は上記と同様であった。3.6 kbの増幅断片をpCR (登録商標)-XL-TOPOベクター(Invitrogen (商標))に直接クローニングした。同じ手順を、選択的スプライシングされた形のcDNA (AtHMA4as)のクローニングに用いた。
【0052】
− AtHMA4過剰発現系統の作製
EcoRVによる消化の後に、CaMV35SカセットをpGreen0179バイナリベクターのEcoRV / StuI部位にサブクローニングした。pCR (登録商標)-XL-TOPOベクターのNotI部位にリバース相補プライマ対TopoFV1for (配列番号9)/rev (配列番号22)をクローニングすることにより、AtHMA4の3'-端にSmaI部位を付加した。次いで、AtHMA4のcDNAを、BamHI / SmaI消化により抽出し、pGreen-CaMV35Sベクターの同じ部位にクローニングした。この構築物を、エー・チューモファシエンスのAGL1細胞にエレクトロポレーションにより導入した。植物のアグロ形質転換(agrotransformation)を、フローラルディップ法(Clough及びBent, 1998)により行った。形質転換植物を、ハイグロマイシンB 30μg / mlを補った固形培地上で選択した。
【0053】
− DNA断片分離
DNA断片を、TAEバッファー中で調製した1 % (w/v)アガロースゲル上で、エチジウムブロミドの存在下に電気泳動した(Sambrookら, 1989)。DNAを、UV光の下にGeneGenius GG-X装置(Syngene, Cambridge, UK)を用いて視覚化した。DNA断片の抽出及び精製を、NucleoSpin (登録商標) Extractキット(Macherey-Nagel, Duren, Germany)を用いて行った。
【0054】
− 配列決定
Perkin Elmer ABI Prism 310シーケンサーを用いて「BigDyes」法(PE Biosystems, Foster City, CA)を用いた。
【0055】
− AtHMA4の発現分析
* RT-PCR:全RNA抽出及び第一鎖cDNA合成を、上記のようにして行った。分析する全ての器官からの同じ量(4μg)のRNAを、オリゴ(dT)20プライマを用いるRT-PCRに用いた。プライマHMA4For230 (5'-CGCAGCTTGCTTTACTGGGTATCAAGTGTTGAAAG-3') (配列番号10)及びRev2bisHMA4 (5'-CATCTAAAACATTCCCTAGCTGTTCTTGAGC-3') (配列番号11) を、ハイブリダイゼーション温度(65℃)及びサイクル数(26サイクル)以外は上記と同じ条件で行うPCRに用いた。これは、増幅収率の中間-log段階になるように選択した。コントロールとして、actin8遺伝子のPCRを、同じcDNAサンプルについて、プライマActin8F (5'-GTGGTCGTACAACCGGTATTGTGTTGGACTCTGGTG-3') (配列番号12)及びActin8R (5'-ACGCTGTAACCGGAAAGTTTCTCACATAGTGCACAAATGAC-3') (配列番号13)を用いて行った。これらのプライマを、5サイクル後にPCR反応チューブに加えた。実験を、独立して別々の材料について3回繰り返した。Rm396変異体系統を制御するために3回のRT-PCRを、T-DNA挿入位置に対して上流、両側及び下流に位置するプライマ対を用いて行った。RTを、最初のものについて遺伝子特異的プライマRev6HMA4 (配列番号1)を用いて行った。第一鎖cDNAを、プライマ1HMA4 (配列番号7)及びRev6HMA4 (配列番号1)を用いるPCR反応において用いた。その他の2つについてのPCR反応を、オリゴ(dT)20 cDNAとともにプライマ対1HMA4 (配列番号7)/ Rev18HMA4 (5'-GCCTTTTGTGGAGCTAAGCTC-3') (配列番号14)、及び10HMA4/ Rev8HMA4 (5'-ATGGAGGCAGCAGCAGTTGTGTTCC-3' (配列番号15)/ 5'-GGGACAACCACTGACTAACACAAC-3' (配列番号16))をそれぞれ用いて行った。actin8遺伝子のPCRを、上記と同じcDNAサンプルについて行った。
【0056】
* GUS活性:発達の種々の段階にある植物又は器官を、Jeffersonら, 1987に記載される手順に従ってGUS活性について調べた。サンプルをGUS染色溶液(50 mM NaPO4, pH 7.0, 0.01 % (w/v) Triton-X100, 1 mM K3Fe(CN)6, 1 mM K4Fe(CN)6及び1 mg.ml-1 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド (X-Gluc))に浸漬させ、真空浸潤させ、37℃で6時間インキュベートした。次いで、染色されたサンプルを70 % (v/v)エタノールを2〜3回交換しながら60℃で2時間インキュベートすることにより、色素を洗い流した。苗木の根を、各30分間のリンス濃度の連続するエタノール浴により乾燥させ、次いで樹脂中に固定し、その後、横断切片を切断した。
【0057】
− 酵母株、生育条件及び形質転換
エス・セレビシエ参考株BY4741 (MATa; his3Δ1; leu2Δ0; met15Δ0; ura3Δ0)及び変異株Δycf1 (YDR135c::kanMX4以外はBY4741と同様)、Δzcr1 (YMR243c::kanMX4以外はBY4741と同様)及びΔcot1 (BY4742株:MATα; his3Δ1; leu2Δ0; lys2Δ0; ura3Δ0; YOR316c::kanMX4)は、Euroscarf (Frankfurt, Germany)から購入した。全ての酵母株をYPD培地(1 % (w/v)酵母エキス、2 % (w/v)ペプトン、2 % (w/v)デキストロース)上で増殖させた。ウラシルを欠く合成完全(SC)最少培地を、プラスミドで形質転換した酵母株の選択及び維持に用いた(0.67 % (w/v)酵母窒素塩基、0.19 % (w/v)ウラシルを欠くドロップアウト、2 % (w/v)デキストロース) (全ての製品はSigma, St Louis, MOから)。
【0058】
AtHMA4及び選択的スプライシングされた形(Athma4as)を、酵母発現ベクターpYES2のNotI部位に、ガラクトース誘導可能プロモータの下でクローニングした。C-末端のHis11スト
レッチを欠くAtHMA4の短縮されたバージョンを構築した。PfuUltra (商標) (Stratagene (登録商標), Cedar Creek, TX)を用いるPCRを、プライマ:
- 22HMA4: (5'-GAGAGTGTTGGAGACTGCAAGTCTGGTCATTGCCAGAAG-3') (配列番号17)及び
- ΔHisStopHMA4: (配列番号18)
(5'-AAGGAAAAAAGCGGCCGCAAAAGGAAAATTAGCTGCATAACTCTTTTGCATA AC-3')
を用いて行った。BsgI及びNotIで消化したこの860 bpの断片を、完全長cDNAにおける同じ断片の位置にクローニングした。次いで、このcDNAをEagIにより消化し、pYES2にNotI部位でクローニングした。これらの3つのcDNAも、3'のEGFP遺伝子とのフレーム内で同じベクターにクローニングした。これらのクローニングについて、AtHMA4及びAthma4as cDNAを、遺伝子の3'端でDraIIIによりまず消化し、端をS1ヌクレアーゼ処理によりブラントにした。次に、pCR (登録商標)-XL-TOPOベクターからEcoRI消化により断片を切り出し、最終的にpYES2-GFPベクターのEcoRI及びSmaI部位に、EGFP遺伝子とのフレーム内でクローニングした。また、Athma4ΔHis::EGFP融合体を創るために、AtHMA4のcDNAについて、Hisコーディング断片を欠損させ、SmaI部位を創るプライマ22HMA4 (配列番号17) 及びΔHisHMA4 (5'-AAGGAAAAAAGCGGCCGCAAAAGGAAAACCCGGGGCTGCATAACTCTTTTGCATAAC-3') (配列番号18)を用いてPCR増幅を行った。増幅断片を、天然のcDNAの対応する断片の位置に、BsgI及びNotI部位にクローニングした。次いで、Athma4ΔHisのcDNAを、pYES2-GFPベクターのEcoRI及びSmaI部位にクローニングした。配列決定により、融合体は3つの構築物に制御された。Δycf1変異株は、pYES2ベクターのSacI及びNotI部位にクローニングされたYCF1::EGFP融合体により補完された。部位特異的突然変異誘発を、QuickChange (登録商標) II XL Site-directed Mutagenesis Kit (Stratagene (登録商標))を用いて、鋳型としてのpYES2中のAtHMA4::EGFP構築物に対して、プライマ対:
- HMA4D401Afor: (配列番号19)
(5'-GATCAAGATTGTTGCTTTCGCTAAAACTGGGACTATTACAAGAGG-3')及び
-HMA4D401Arev: (配列番号20)
(5'-CCTCTTGTAATAGTCCCAGTTTTAGCGAAAGCAACAATCTTGATC-3')
を用いて行い、保存ドメインDKTGTからのアスパラギン酸-401残基がアラニンで置換された変異体を創出し、変異体Athma4D401A::GFPを得た。
【0059】
酵母株を、pYES2単独、又はAtHMA4-, Athma4D401A-; Athma4as-, Athma4ΔHis-; AtHMA4::GFP-, Athma4D401A::GFP-, Athma4as::GFP-若しくはAthma4ΔHis::GFP-pYES2とともに、製造業者(Invitrogen (商標))の使用説明に従って形質転換した。
【0060】
− 酵母の金属耐性についてのアッセイ
酵母細胞を、まず、ウラシルを含まないSC最少培地(デキストロースの代わりに2 % (w/v)のラフィノース)で、30℃で一晩予備培養し、次いで、O.D.600nm = 0.4で24時間、誘導培地に移した(1 % (w/v)ラフィノース及び2 % (w/v)ガラクトースを加えた以外は最少培地と同じ)。固形培地については、2 % (w/v)アガーを加えた。種々の金属溶液を、図面の凡例に示す濃度で液体又は固形培地に加えた。固形培地上でのドロップ試験について、O.D.600nm = 2.0の酵母培養物2μLを広げ(1.6 104細胞)、3つの10倍段階希釈を作製した。プレートを30℃で4日間インキュベートした。液体培地について、酵母細胞をO.D.600nm =
0.4に希釈し、対数後期で増殖させた。
【0061】
− 共焦点顕微鏡によるGFP蛍光の観察
種々の形質転換酵母株を、GFP蛍光について、クリプトン/アルゴンレーザを備えた共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM, Fluoview Olympus, France)を用いて観察した。蛍光の励起は二色性フィルタ(488 nm)を用いて達成し、記録は510〜550 nmで行った。観察は、油浸のもと、×100 / 1.35 naの倍率で対物レンズ(UplanApo)を用いて行った。
【0062】
− 酵母細胞の金属含量の測定
酵母細胞を、金属耐性アッセイについて記載したのと同じ条件下で増殖させた。重金属を補った誘導培地15 mL中で48時間増殖させた後、OD600nmを測定した。細胞を遠心分離により回収し、10 mM EDTA, pH 7.5で3回、及び最後に水で洗浄した。洗浄したペレットを80℃で一晩乾燥させ、次いで、MARS Xマイクロ波装置(CEM, Matthews, NC)を用いて無機質化のために硝酸と混合した。最後に、重金属の含量を、ICP-AES Vista MPX装置(Varian, San Diego, CA)を用いて測定した。
【0063】
− 可溶性のミクロソームタンパク質画分の調製
形質転換酵母の一晩の予備培養を、3 mLのSC-URA最少培地中で、30℃、270 rpmで行った。細胞を遠心分離(5分、6,000 rpm)により回収し、誘導培地50 mL中に0.4 OD600nmに希釈し、さらに24時間増殖させた。全ての続く手順は4℃で行った。酵母細胞を遠心分離(10分、7,000 g)により回収し、20 mL TEKバッファー(50 mM Tris HCl pH 7.5, 1mM EDTA, 100 mM KCl)に懸濁した。7,000 gで10分間の遠心分離の後、ペレットを2 mL TESバッファー(50 mM Tris HCl pH 7.5, 1 mM EDTA, 0.6 Mソルビトール, 1% (w/v) BSA, 2mM β-メルカプトエタノール, 10 mM Na2SO4、及び"Complete"プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Diagnostics))に懸濁した。次いで、細胞を酸洗浄(acid-washed)ガラスビーズ(425〜600μm, Sigma)を用いて激しく混合することにより破砕した。ガラスビーズをTESバッファーで4回洗浄し、洗浄画分をプールし、8,000 rpmで15分間遠心分離した。次いで、上清を100,000 gで45分間超遠心分離し、ミクロソーム画分を500μl TEGバッファー(50 mM Tris HCl pH 7.5, 1mM EDTA, 30% (v/v)グリセロール)に懸濁した。タンパク質濃度をBradford法(Sigma)を用いて測定した。
【0064】
− SDS-PAGE及びイムノブロッティング
タンパク質サンプル(50μg)を迅速に融解し、20 mM Tris HCl pH 8.0, 2% SDS (w/v), 10% β-メルカプトエタノール (v/v), 20%グリセロール (v/v)及びブロモフェノールブルーを含有する変性バッファー(1/4; v/v)と混合した。サンプルを60℃で30分間加熱し、冷却し、8% SDS-PAGEに載せた。タンパク質をニトロセルロースメンブレン(BioRad, Hercules, CA)にエレクトロトランスファーした後、ブロットを、1/1000 (v/v)希釈したEGFPに対する一次モノクローナル抗体(Clontech, Palo Alto, CA)とインキュベートした。1/5000 (v/v)に希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ二次抗体(Sigma)、及びSuperSignal (登録商標) West Pico Chemiluminescent Substrate (Pierce, Rockford, IL)を用いて視覚化した。全ての工程は、製造業者の使用説明に従って行った。
【0065】
実施例2:結果
− Ws生態型からのAtHMA4のクローニング及び配列分析
研究は、AtHMA4のT-DNA挿入変異体がINRAベルサイユコレクションにおいて同定されたので、Wassiliewskija生態型(Ws)について行った。BACクローンAC002392の予測されるATGがWsにおけるものに相当するかをまず決定した。植物組織から抽出した全RNAに対する2回の連続する5' RACE-PCRを行った(実施例1を参照されたい)。第一回目において、第二の予測されるエキソンで設計されたリバースプライマを用いてcDNAを得た。2回の連続するセミネストPCRにより、それぞれ516 bp及び488 bpのサイズの2つの増幅産物を分離した。配列決定により、これらの断片はAtHMA4に相当することを確かめた。新たに見出された配列に相当するプライマを用いる5'RACEの2回目では、別の上流の転写断片を得ることはできず、AtHMA4のmRNAの5'端が決定されたことを示唆した。Columbia (Col-0)生態型のゲノムDNAから予測されるコーディング配列に加えて、99 bpの5'-UTRが見出された。完全長cDNA
(3618 bp)を、次いで、ユニーク断片での2工程のRT-PCRにより得て、pCR (登録商標)-XL-TOPOベクターにクローニングし、配列決定した(Genbankアクセッション番号AF412407) (図1)。Col-0からのBACクローンの配列に関するいくつかの核酸の違いが観察された。WsとCol-0との間の生態型の違いは、ゲノムDNAおよびcDNAについての種々の独立したPCRにより制御した。最後に、4つの塩基の変更が検出され、アミノ酸の違いをもたらした(位置53
7においてHに対してQ;805においてKに対してR;970においてNに対してT;及び1056においてKに対してT)。
【0066】
いくつかのRT-PCR実験は、AtHMA4のcDNAの選択的スプライシングされた形を示した(図2)。同じプライマ対を用いて、それぞれ約450 bp及び350 bpのサイズの2つの増幅断片を得た。これらの2つの断片をクローニングして配列決定し(442及び358 bp)、ともにAtHMA4に相当した。逆転写反応の間のいずれの問題、例えばmRNAの安定ヘアピンループを排除するために、種々の条件を試験した(種々の逆転写酵素及び/又は遺伝子の選択的スプライシング部分の下流に多少近く位置するリバースプライマ)。試験した全ての条件において、核酸配列の位置1652と1735との間の84 bpの断片が存在しないスプライシングされた産物が得られた(図1、角括弧内の塩基及び強調したアミノ酸)。イントロンの標準的な境界(5'-開始GT、3'-終端AG)が、この断片の両端に存在したが、エキソン/イントロン予測の別のソフトウェア(GeneFinder, GeneScan)は、この配列が潜在的イントロンであると示さなかった。転写産物のスプライシングされた形において、リーディングフレームは保存された。RT-PCRを用いて、このスプライシングされた形に対応する完全長cDNAを増幅し、pCR (登録商標)-XL-TOPOベクターにクローニングしてAthma4asとよんだ。スプライシング部位の周囲の核酸配列はCol-0及びWsに同一であったが、cDNAのこのようなスプライシングされた形は、Landsberg erecta又はColumbia生態型から抽出されたRNAで観察されなかった(図2)。
【0067】
酵母におけるAtHMA4の発現
AtHMA4、Athma4D401A、ならびにともに短縮された形であるAthma4asおよびAthma4ΔHisをpYES2ベクターにサブクローニングし、サッカロミセス・セレビシエの野生型酵母株、BY4741で発現させた。
【0068】
AtHMA4::GFP局在化
AtHMA4を局在化させるために、異なる形のC-ter融合体もpYES2ベクターにクローニングし、野生型酵母株BY4741で発現させた。抗-EGFPセイヨウワサビペルオキシダーゼ抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、種々のキメラタンパク質の発現を制御した(図3A)。融合タンパク質は、ミクロソーム画分において観察された。融合タンパク質の理論上の分子質量の範囲(150〜155 kDa)内の1つのハイブリダイゼーションバンドのみが見出された。空のベクターpYES2を用いたときにミクロソーム画分を用いてシグナルは観察されず、EGFPを有さないAtHMA4または可溶性画分を用いても観察されなかった。共焦点顕微鏡下では、AtHMA4::EGFPは、後ゴルジ装置(late Golgi apparatus)からの膜タンパク質を含有する小胞に典型的な断続的な染色(punctuated staining)として現れ、それぞれサッカロミセス・セレビシエ及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からのCCC2について記載されたものと類似のパターンであった(Yuanら, 1997; Weissmanら, 2002) (図3B)。類似のパターンが、Athma4::EGFPの3つの他の形を用いても観察された。これに対して、EGFPのみで形質転換された細胞は、拡散された細胞質蛍光を示した。
【0069】
Cd耐性
ドロップ試験実験は、AtHMA4の発現が、耐性を150μM Cdまで上昇させることができたことを示した(図4A)。これに対して、変異の形であるAthma4as及びAthma4ΔHisは、野生型の表現型を変えなかった(図4A)。以前に報告されたように、ycf1株はCdに対して非常に感受性であった(図4A) (Liら, 1996; Mason及びMichaelis, 2002)。ycf1株をAtHMA4で形質転換したときに、Cdに対する耐性は、野生型のレベルに回復された(図4A)。この結果は、AtHMA4がycf1欠損株を機能的に補完することを示す。2つの短縮された形であるAthma4as及びAthma4ΔHisは、ycf1変異株を補完することができなかった(図4A)。Cdに対する耐性の増加とycf1表現型の補完とが輸送によるものかまたは単にキレート化現象によるものかを試験するために、AtHMA4のD401A変異体(Athma4D401A)を作製した。Asp-401は、全てのP
-ATPアーゼにおいて厳密に保存されたモチーフ、DKTGTに属し、活性化された酵素においてリン酸化される不変の残基であると予測される。よって、輸送機能はAthma4D401A変異体では低下されるはずである。実際には、この変異体はCdに対する耐性が全く増加せず、ycf1変異株の補完も示さなかった(図4A)。この実験は、AtHMA4による酵母細胞の解毒化プロセスが、輸送機能に基づくことを明確に証明している。ドロップ試験において用いた同じ範囲のカドミウム濃度で行った液体培養実験は、プレートで得られた結果を確認した。同様の試験を70μMカドミウムで、γ-グルタミルシステインシンターゼの既知の阻害剤(Griffith及びMeister, 1979)である5 mMのブチオニンスルホキシイミン(BSO)の存在下で行った。この場合、ycf1株の増殖は完全に阻害されたが、野生型-pYES2及びycf1-YCF1株はわずかに増殖した(図4B)。興味深いことに、AtHMA4を発現する株は、BSOの存在又は不在で同じ速度で増殖した(図4B)。この結果は、YCF1とは逆に、AtHMA4はCdを解毒するのに金属のグルタチオンS-複合化の形を必要としないことを示す。
【0070】
酵母エス・セレビシエでのAtHMA4の発現は、Millsら(2003)により以前に記載されたように、Cdに対する耐性の増加を誘導する(図4A)。150μM Cdの存在下では、野生株の増殖は迅速に損なわれたが、AtHMA4-形質転換体はまだ増殖することができた。AtHMA4でAsp-401がAlaに置換された場合はそうではなかった。Asp-401は、リン酸化コンセンサスドメインDKTGTに属し、このような変異は、P-タイプのATPアーゼの輸送機能を損なう(Mollerら,
1996)。予想されるように、AtHMA4D401AはCdに対する増加した耐性をもはや与えず、ycf1変異株の表現型の補完も与えない。この知見は、キレート化ベースの解毒化プロセスを無効にし、AtHMA4により与えられる金属耐性と加水分解との間の強い連結を証明する。エス・セレビシエ酵母細胞において、Cd解毒化プロセスにおけるYCF1の重要性が明確に証明されている(Liら, 1997)。ATP-結合カセットファミリーのメンバーであるこのタンパク質は、グルタチオンS-複合化Cdの液胞への輸送に参加する。この活性に従って、Cdに対するycf1変異株の感受性が強く増強される。興味深いことに、この実験は、AtHMA4の発現が、欠損株のCdに対する過剰な感受性(extrasensitivity)を中和できたことを示す。予想されるように、カドミウム及びγ-グルタミルシステインシンターゼの阻害剤(Griffith及びMeister, 1979)であるBSOの存在下において、野生型酵母の増殖が大きく阻害されたが、ycf1欠損株は増殖しなかった(図4B)。両方の株において、AtHMA4発現は増殖能力を回復させ、AtHMA4が非GS2-複合化形においてCd中毒から酵母細胞を保護できたことを証明した。
【0071】
Pb / Zn / Co耐性
上記の項で記載したものと同様の実験を、AtHMA4が輸送すると予測される3種のその他の金属(Pb、Zn及びCo)を用いて行った。図5は、固形培地に供給した酢酸Pbの存在下で得られた結果を示す。AtHMA4-形質転換体及びベクターのみの形質転換対について、約20 mM
Pbの濃度までの耐性の同じ能力が観察された。Songら(2003)により最近発表されたように、ycf1変異株がPbに対して感受性が高いことも観察された。AtHMA4をycf1変異体の関係において発現させたときに、変異株の増殖能力を部分的に回復することができたが、空のベクターはできなかった(図5)。
【0072】
一連のドロップ試験を、ある範囲のZn濃度の存在下でも行った(図6)。AtHMA4-形質転換体は、野生株よりもZnに対する耐性がわずかにより高かった(25 mMの濃度まで)。このような耐性の増加は、Athma4as及びAthma4ΔHisを発現する株では観察されなかった。興味深いことに、AtHMA4はCDFファミリーに属する亜鉛液胞輸送体の欠損変異体であるzrc1を助けることができた。すでに記載したように、この変異株はZnに対して高度に感受性である(MacDiarmidら, 2003)。この株のAtHMA4-形質転換体は、Znに対して野生型の耐性を示したが、Athma4asおよびAthma4ΔHisは示さなかった。
【0073】
AtHMA4はCd、Pb及びZnの濃度に対して耐性を与えることができたが、このような現象は、Coの存在下では観察されなかった。対応するCDF液胞輸送体の欠損であるcot1変異株は
、Coに非常に感受性であることが知られている(Conklinら, 1992)。しかし、この変異株におけるAtHMA4の発現は、Co耐性を回復できなかった。
他の金属もスクリーニングしたが(Ag、Cu、Ni及びFe)、AtHMA4が発現されたときに、これらの金属に対する耐性に変化は見られず、これは予測と一致している(Arguello, 2003)。
【0074】
最近、YCF1もPb毒性に対する耐性に参加することが報告されている(Songら, 2003)。エス・セレビシエ野生株で発現されたAtHMA4はPb耐性を増加させなかったが、ycf1株でPb耐性を回復できた(図5)。この実験は、植物P1B-ATPアーゼがPb解毒化特性を与えることを最初に証明している。P1B-ATPアーゼのうち、イー・コリからのZntAのみがPb耐性を与えることが証明された(Rensingら, 1997及び1998)。現在までに、環状ヌクレオチド作動型イオンチャネル(CNGC)ファミリーに属するNtCBP4が、Pb耐性に参加する植物輸送体の唯一の例であった。この輸送体の過剰発現は、Pb蓄積及び過剰感受性を誘導する(Araziら, 1999)。この過剰感受性応答とは対照的に、C-末端部分から欠失した短縮形は、Pbに対する増大した耐性を誘導した(Sunkarら, 2000)。このタバコタンパク質のアラビドプシスのホモログであるAtCNGC1は、類似の機能を示す(Sunkarら, 2000)。
【0075】
Cd及びPbの他にも、AtHMA4は、Zn耐性も増加させ(25 mMまで)、欠損変異株zrc1の部分的補完も与える(図6)。この最後の知見は、AtHMA4で形質転換したこの酵母株についてZn耐性にいずれの変化も観察できなかった、Millsら(2003)の以前の結果と矛盾する。一方、これらの著者らは、Zn/Cd P-タイプのATPアーゼ流出ポンプ(efflux pump)を欠損するイー・コリ株であるzntAの機能的補完を観察した。異なる実験手順及び/又は用いたZn濃度の範囲が、これらの不一致を説明できる。
【0076】
最後に、Co耐性を与えるAtHMA4の能力を調べた。AtHMA4は、耐性の増加を誘導できず、酵母欠損変異株cot1 (CDFファミリーに属するCo輸送体;Conklinら, 1992)の増殖も回復できないことが見出された。CPx-ATPアーゼのうち、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis )からのCadAは、Coに対する穏やかな耐性を与えた(Gaballa及びHelmann, 2003)。CadAがそのN-末端部分にCxxCモチーフを有し、これがCoの結合部位であり得るが、このようなモチーフがAtHMA4には存在しないことに注目することは有用である。
【0077】
カドミウム蓄積(酵母における解毒化プロセス)
40又は80μMのCdの存在下で48時間の期間が過ぎた後に、野生株及び補完された株におけるCd含量をICP-AESにより決定した。酵母により蓄積されたCdのレベルは、pYES2のみの形質転換体及びpYES2-YCF1-補完ycf1についてとほぼ同様であることが見出された(図7)。野生株においてAtHMA4が発現されるとき、Cd含量は、pYES2のみの形質転換体におけるレベルに比べて大きく減少された(40及び80μMのCdの存在下での酵母の増殖について、それぞれ50及び62%のCd含量の下落)。AtHMA4がycf1に導入されたとき、酵母細胞のCd含量の下落は、さらにより顕著であった(40及び80μMのCdの存在下で増殖した酵母について、ycf1に比べてそれぞれ80及び83%)。
【0078】
Cd毒性を制限するために、AtHMA4は、i) 酵母細胞質膜におけるCd流出プロセス、ii) 液胞へのCd輸送、iii) タンパク質のC-末端部分の大きいポリヒスチジンモチーフを狙ったCdキレート化に参加し得る。AtHMA4D401A及びAtHMA4のスプライシングされた形のいずれかを用いて得られた結果により、この最後の仮定を却下できる。実際に、タンパク質のこれらの形はポリヒスチジン伸長を示すが、酵母のCd耐性及び含量の修飾ができなかったので、単純なキレート化プロセスではないようである。選択的スプライシングされた形における欠失は、大きいサイトソルのループに相当し、強力に保存されたモチーフであるMLTGDN及びGDGVNDAPの近くの、タンパク質の中央部分に位置する。この最後のモチーフは、推定ヒンジドメインの一部分である(Scarborough, 2000; Xuら, 2002)。28残基のこのよ
うな欠失は、触媒プロセスの間に発生するコンホメーション変化において大きい乱れをおそらく誘導する。これらの全ての結果は、AtHMA4がCdの移動の活性プロセスに含まれることを示唆する。YCF1機能の模倣である液胞へのCd輸送は、AtHMA4を発現する酵母細胞において、野性株に比べて、等しいかまたはさらに増加されたCd含量に導く。逆に、金属含量の決定は、AtHMA4形質転換酵母細胞において、野生株又はYCF1形質転換株におけるものに比べて、大きく減少されたCd含量を示した(図7)。これらの結果は、酵母細胞からのCd流出におけるAtHMA4の役割を強く議論する。
【0079】
AtHMA4を発現する酵母株のCd含量の減少は、外部の媒質への毒性のものの流出を可能にするであろうタンパク質が細胞質膜に位置することを示唆する。しかし、AtHMA4::EGFPの蛍光イメージは、細胞質膜でも液胞の膜でも高いレベルのタンパク質を検出しなかった(図3B)。観察された断続的な染色パターンは、以前に記載されたように、細胞質膜へ通行する後ゴルジからの小胞の典型であるようだ(Yuanら, 1997; Nothwehrら, 2000; Weissmanら, 2002)。よって、AtHMA4が後ゴルジ小胞においてCd負荷に参加して酵母細胞質膜でCd流出を駆動していると提案される。
【0080】
最後に、タンパク質のAtHMA4ΔHisの形は、金属耐性実験において機能的でないことが見出され、ポリヒスチジンモチーフは金属への結合及び/又は移動に必須であることが示唆された。ヘモフィルス(Haemophilus)において、Cu、ZnスーパーオキシドジスムターゼのN-ter部分におけるHisリッチドメインは、活性部位に送達される金属に最初に結合することが示されている(Battistoniら (2001))。AtHMA4のC-末端部分のポリヒスチジンストレッチは、「自己シャペロン」に類似の役割を演じることができるだろう。
【0081】
アラビドプシスにおけるAtHMA4の組織特異的発現
Ws生態型の種々の器官におけるAtHMA4の発現のレベルを、コントロールとしてACTIN8遺伝子の一部分を用いてRT-PCRにより調べた。cDNAの完全バージョンにおける442 bp断片及びAthma4as転写産物の場合の358 bpの産物を増幅した。分析した全ての組織においてAtHMA4転写産物を検出し、根、茎及び花ではより高い発現レベルであった(図8)。Athma4asの発現は、全ての器官で観察されたが、AtHMA4に比べてより小さい程度であった。
【0082】
T-DNA挿入変異体研究
Rm396系統において、T-DNAを第三番目のイントロンにおいて挿入する(図9A)。GUS遺伝子の断片に相当するプローブを用いるサザンハイブリダイゼーションは、この挿入がユニークであったことを示した。AtHMA4 (9HMA4:5'-CCATTAAAAGGCCTAGGATCGACATC-3' (配列番号21))及びT-DNAについて設計したプライマを用いるPCR分析は、変異系統Rm396が挿入について同型接合であったことを証明した。AtHMA4転写産物の不在は、挿入の上流、下流及び両側のそれぞれに位置する3つの異なるオリゴヌクレオチド対を用いるRT-PCRにより制御した。予想されたように、野生株WsのRNA抽出物について、1HMA4 (配列番号7)/ Rev18HMA4 (配列番号14)、及び10HMA4 (配列番号15)/ Rev8HMA4 (配列番号16)プライマ対を用いて、それぞれ708 bp及び574 bpの2つの増幅断片が観察された。これらの断片は、Rm396のRNA抽出物を用いたときには存在しなかった(図9B、真ん中及び下の部分)。Rm396系統のAtHMA4遺伝子の9つのコーディングエキソンのうち7つの欠失は、この変異体においてAtHMA4を機能性でなくしているようである。
【0083】
標準的条件下でのGUS発現
興味深いことに、Rm396変異体は、GUS遺伝子とAtHMA4の2つの最初のエキソンとの翻訳融合体を示す。図9B (上の部分)は、挿入断片の上流に位置するプライマ対を用いるRT-PCRを示す。この場合、逆転写反応は、遺伝子特異的プライマRev6HMA4 (配列番号1)を用いて実現した。増幅断片はWs及びRm396 RNAを用いて観察され、AtHMA4及びGUS遺伝子の最初の2つのエキソンに相当する転写産物の存在を確かにする。この融合は、AtHMA4プロモー
タの制御下でのGUS活性の検出を可能にする。GUS染色は、植物の発達状態にかかわらず(発芽から4日後から8週齢の植物まで)、根、篩部及び木部の道管の周囲で観察された(図10a)。根のレベルにおいて、GUS発現は、内鞘及び形成層の細胞において特に強かった(図10b)。GUS染色は、維管束組織(vascular tissue)において、シュート頂端分裂組織の下、おしべにおいて、茎の葉の基部においても観察された(図10c〜e)。これらの結果は、RT-PCRで観察されたものとよく一致している(図8)。
【0084】
金属存在下でのGUS発現
植物を1 mMまでのZn濃度に24時間曝露したときに、AtHMA4の発現レベルにおける上昇が、根において観察された(図11A)。Zn によるAtHMA4の発現レベルのこのようなアップレギュレーションは、Col-0生態型からのRNA抽出物を用いたRT-PCRを用いて、Millsら(2003)により報告されている。用いるZn濃度に応じて、GUS染色強度及びパターンにおける変更が観察された(図11B)。顕著には、高いZn濃度(1 mM)で植物を生育させたときに、GUS染色は、根の伸長領域に厳密に限定された(図11C)。Znと対照的に、Cd及びPbは、RT-PCR及びGUS染色により調べたように(データ示さず)、用いた濃度にかかわらず発現プロフィールを変更しなかった。これらの最後の結果は、Col-0において記載されたCdによるAtHMA4の発現のダウンレギュレーションと一致しない(Millsら, 2003)。
【0085】
Rm396表現型の特徴付け
Rm396はAtHMA4についてのノックアウト変異体として特徴付けられたので、金属摂取又は金属毒性と関連する表現型について調べた。Ws生態型及びRm396系統の幼若植物を、飢餓から毒性までの金属濃度の範囲(Cd、Zn、Co、Pb、Cu、Ni、Fe)の存在下でインビトロで生育させた。研究した金属にかかわらず、野生型と変異株系統の間で、発芽レベル及び植物の発達において著しい違いは観察されなかった(データ示さず)。さらに、Cd毒性につながる表現型特徴の分析(湿潤重量の減少、葉の萎黄病ならびに根及び葉におけるCd蓄積)は、野生型とRm396系統との間に顕著な違いを与えなかった。
【0086】
アラビドプシスにおけるAtHMA4発現
RT-PCRにより、AtHMA4が、Col-0生態型における観察に従って、Ws生態型の全ての主要組織で発現されることが示された(図8)。AtHMA4の発現パターンを、INRAベルサイユコレクションからのT-DNA挿入変異体を用いてGUS染色により、詳細に研究した。GUS染色は、内鞘及び形成層の細胞の領域で根においてほとんど観察された(図10)。GUS染色は、シュート頂端分裂組織の付近に位置する維管束組織、おしべ及び茎の葉の基部とも関連した。このような局在化は、AtHMA4が、維管束組織への又は維管束組織からの基質の移動に参加し得ることを強く示唆する。
【0087】
84 bpの欠失及びリーディングフレームの保持に導くWs生態型に特異的なAtHMA4転写産物の選択的スプライシングされた形の存在が、観察された(図2)。これは、植物輸送体の転写産物についての選択的スプライシングの最初の観察である。RT-PCRにより、この選択的スプライシングされた形が、研究した全ての組織における完全長のものよりも低い量で見出された。組織又は発達段階に特異的な選択的スプライシングを有するいくつかの動物の遺伝子が同定されている(考察のために、Green, 1991を参照されたい)。P1B-ATPアーゼの場合、及び顕著にはともにヒト遺伝子ATP7A (Menkesタンパク質)及びATP7B (Wilsonタンパク質)の場合、これら2つのタンパク質の異なる細胞内分布の原因となる異なる選択的スプライシングされた形において、これらが見出されている(Yangら, 1997; Qi及びByers, 1998)。対照的に、植物においては、選択的スプライシングはほとんど発表されていないが、それが重要な役割を有することを示す結果もある。Rubiscoアクチベース(activase)は、選択的スプライシングが酵素の光調節の微調整を可能にする最もよく知られた例の一つを表す(Werneckeら, 1989)。第二の例は、FCA転写産物の選択的スプライシングであり、これは開花調節に含まれる(Macknightら, 1997及び2002)。種々の重金属を用いて
異なる処置及び実験を行ったが、植物体におけるこの選択的スプライシングされた形及び酵母株における機能的役割の調節は、観察できなかった。しかし、この短縮されたタンパク質が金属解毒化と別の生理的役割を演じるという観点は、除くことができない。
【0088】
AtHMA4は、推定のZn/Cd/Pb/Co輸送体であるので、その発現レベル及びパターン化に対するこのような金属の影響を、RT-PCR実験及びGUS染色を用いて分析した。AtHMA4発現は、1 mMまでの濃度範囲のZnにより根においてアップレギュレーションされ(図11)、本研究及びMillsら(2003)におけるRT-PCR実験と一致した。より高いZn濃度(1 mM)において、強いGUS染色が観察されたが、根の伸長領域に限られた。顕著には、RT-PCR及びGUS染色実験は、Cd又はPbによるAtHMA4発現のいずれの調節も示唆せず、これは、Millsら(2003)の以前の結果と対照的である。Ws及びCol-0生態型の間のCd耐性、及びWs及びCol-0で見出される発現プロフィールにおける既知の違いは、これらの非常に異なる観察に含まれ得る。さらに、これらの研究は、Cdの異なる塩(本研究ではCdCl2に対して、その他の研究ではCdSO4)を用いて行われ、結合するアニオンは異なる結果を作り出すであろう。
【0089】
AtHMA4の欠損変異体は、正常な又は金属過剰の条件下でいずれの特定の表現型も示さず、このような表現型の不在は、同じ(例えばAtHMA2及びAtHMA3)又は他のタンパク質ファミリーに属しかつ余分の機能を支持する他の輸送体の存在が原因であり得る。このことは、いくつかのAtHMA4特性が変異体の関係においてのみ観察されたので、酵母で説明される。
【0090】
AtHMA4の過剰発現
アラビドプシスでのAtHMA4の役割を試験するために、この遺伝子を異所で発現する植物を作製した。AtHMA4 cDNAを、強力な構成性CaMV35Sプロモータの下にクローニングし、アグロバクテリウム・チューモファシエンス媒介形質転換を介してアラビドプシスに導入した。単一T-DNA挿入を有する、AtHMA4のmRNAレベルが上昇した2つの独立した系統(図12A)を選択し、安定な同型接合系統を得るために自家交差させた。栄養溶液(3μM Zn)で水栽培した過剰発現植物からのシュートのZn含量を、ICP-AESにより測定した。過剰発現植物からのAtHMA4の葉は、コントロールよりも61%多くZnを蓄積した(図12B)。根生育測定によりアッセイされるように、両方の過剰発現系統は、増大したCd及びZn耐性を示した(図12C及びD)。コントロールの固形培地(Zn 3μM)において、過剰発現植物の根の長さは、野生型のものと統計的に違いがなかった。しかし、高いZn濃度(50、200μM)又はCd (10、40μM)を含有する培地では、過剰発現系統からの根の長さは、野生型の根に比べてそれぞれ35、154、43及び123%大きかった。
【0091】
ノックアウト変異体についての表現型を見出すことができなかったにもかかわらず、植物体でのAtHMA4の過剰発現は、酵母においてすでに観察されたように、Zn及びCdに対する耐性を増加させる(図12D)。この増大した耐性は、Zn又はCdの処理中の根の発達のレベルにおいて特に明確であった(例として、Cd 40μMの存在下では、野生型の植物に比べて、過剰発現系統について根は2倍長かった)。コントロール条件下で生育するときに、過剰発現系統はより長い根を示さなかったが、Zn含量は、野生型のものより61%高かった。
【0092】
これらの知見はまとめて、AtHMA4が木部への重金属の負荷に参加し、シュートへのその輸送を可能にしていることを強く示唆する。
同じことが、AtHMA1-3についても観察され得る。
【0093】
実施例3:HMA3及びHMA4の結合
AtHMA3は、AtHMA4と同じATPアーゼのP1Bサブグループに属する。この酵素は、全ての野生型シロイヌナズナ生態型に存在するわけではない。特に、AtHMA3はWassilewskija生態型で発現するが、Columbia生態型に存在しない。
この酵素を酵母で異種に発現させることにより、本発明者らは、AtHMA3がカドミウム、
コバルト及び鉛を輸送するが、亜鉛はおそらく輸送しないことを示している。AtHMA3は、液胞に局在し、酵母においてこのオルガネラ(organite)中で金属の隔離を行う(Gravotら, FEBS Lett. 2004)。
【0094】
植物においては、AtHMA3は液胞膜に局在化され、液胞内の毒性金属を隔離することにより細胞を解毒する。HMA3及びHMA4の両方を過剰発現する遺伝子改変植物において、これらの2つの酵素は相乗的に作用する。HMA4は、根から植物の上の部分への重金属の輸送を促進するが、HMA3は液胞での隔離を助ける。結果として、植物はより長い期間、重金属の毒性濃度に耐え、汚染された土壌からの該金属のより強い抽出を可能にする。
【0095】
引用した文献
Arazi T, Sunkar R, Kaplan B and Fromm H (1999) A tobacco plasma membrane calmodulin-binding transporter confers Ni2+ tolerance and Pb2+ hypersensitivity in transgenic plants. Plant J 20:171〜182
Arguello JM (2003) Identification of ion-selectivity determinants in heavy-metal
transport P1B-type ATPase. J Membrane Biol 195:93〜108
Axelsen KB, Palmgren MG (2001) Inventory of the superfamily of P-type ion pumps in Arabidopsis. Plant Physiol 126:696〜706
Bassett Jr DE, Boguski MS and Hieter P (1996) Yeast genes and human disease. Nature 379:589〜590
【0096】
Battistoni A, Pacello F, Mazzetti AP, Capo C, Kroll JS, Langford PR, Sansone A, Donnarumma G, Valenti P and Rotilio G (2001) A histidine-rich metal binding domain at the N terminus of Cu,Zn-superoxide dismutases from pathogenic bacteria. J Biol Chem 276:30315〜30325
Baxter I, Tchieu J, Sussman MR, Boutry M, Palmgren MG, Gribskov M, Harper JF and
Axelsen KB (2003) Genomic comparison of P-type ATPase ion pumps in Arabidopsis and rice. Plant Physiol 132:618〜628
Catty P, de Kerchove d'Exaerde A and Goffeau A (1997) The complete inventory of the yeast Saccharomyces cerevisiae P-type transport ATPases. FEBS Lett 409:325〜332
Clemens S (2001) Molecular mechanisms of plant metal tolerance and homeostasis. Planta 212:475〜486
【0097】
Clough SJ and Bent AF (1998) Floral dip: a simplified method for Agrobacterium-mediated transformation of Arabidopsis thaliana. Plant J 16:735〜743
Conklin DS, McMaster JA, Culbertson MR and Kung C (1992) COT1, a gene involved in cobalt accumulation in Saccharomyces cerevisiae. Mol Cell Biol 12:3678〜3688
Gravot, A., A. Lieutaud, et al. (2004). "AtHMA3, a plant P1B-ATPase, functions as a Cd/Pb transporter in yeast." FEBS Lett 561(1-3): 22〜8.
Fu D, Beeler TJ and Dunn TM (1995) Sequence, mapping and disruption of CCC2, a gene that cross-complements the Ca(2+)-sensitive phenotype of csg1 mutants and encodes a P-type ATPase belonging to the Cu(2+)-ATPase subfamily. Yeast 11:283〜292
【0098】
Gaballa A and Helmann JD (2003) Bacillus subtilis CPx-type ATPases: characterization of Cd, Zn, Co and Cu efflux systems. Biometals 16:497〜505
Green MR (1991) Biochemical mechanisms of constitutive and regulated pre-mRNA splicing. Annu Rev Cell Biol 7:559〜599
Griffith OW and Meister A (1979) Potent and specific inhibition of gluthatione s
ynthesis by buthionine sulfoximine (S-n-butylhomocysteine sulphoximine). J Biol Chem 254:7558〜7560
Hirayama T, Kieber JJ, Hirayama N, Kogan M, Guzman P, Nourizadeh S, Alonso JM, Dailey W and Dancis A (1999) RESPONSIVE-TO-ANTAGONIST1, a Menkes/Wilson disease-related copper transporter, is required for ethylene signaling in Arabidopsis. Cell 97:383〜93
Hou Z and Mitra B (2003) The metal specificity and selectivity of ZntA from Escherichia coli using the acylphosphate intermediate. J Biol Chem 278:28455〜28461
【0099】
Inesi G (1985) Mechanism of calcium transport. Annu. Rev. Physiol 47:573〜601
Jefferson RA, Kavanagh TA and Bevan MW (1987) GUS fusions: β-glucuronidase as a
sensitive and versatile gene fusion marker in higher plants. EMBO J 6:3901〜3907
Lebrun M, Audurier A and Cossart P (1994a) Plasmid-borne cadmium resistance genes in Listeria monocytogenes are similar to cadA and cadC of Staphylococcus aureus and are inducible by cadmium. J Bacteriol 176:3040〜3048
Lebrun M, Audurier A and Cossart P (1994b) Plasmid-borne cadmium resistance genes in Listeria monocytogenes are present on Tn5422, a novel transposon closely related to Tn917. J Bacteriol 176:3049〜3061
Lee J. et al., Plant Phsyiol., 2003, 133, 589〜596
【0100】
Li ZS, Szczypka M, Lu YP, Thiele DJ and Rea PA (1996) The yeast cadmium factor protein (YCF1) is a vacuolar glutathione S-conjugate pump. J Biol Chem 271:6509〜6517
Li ZS, Lu YP, Zhen RG, Szczypka M, Thiele DJ and Rea PA (1997) A new pathway for
vacuolar cadmium sequestration in Saccharomyces cerevisiae: YCF1-catalyzed transport of bis(glutathionato)cadmium. Proc Natl Acad Sci USA 94: 42〜47
MacDiarmid CW, Milanick MA and Eide DJ (2003) Induction of the ZRC1 metal tolerance gene in zinc-limited yeast confers resistance to zinc shock. J Biol Chem 278:15065〜15072
【0101】
Macknight R, Bancroft I, Page T, Lister C, Schmidt R, Love K, Westphal L, Murphy
G, Sherson S, Cobbett C and Dean C (1997) FCA, a gene controlling flowering time in Arabidopsis, encodes a protein containing RNA-binding domains. Cell 89:737〜745
Macknight R, Duroux M, Laurie R, Dijkwel P, Simpson G and Dean C (2002) Functional significance of the alternative transcript processing of the Arabidopsis floral promoter FCA. Plant Cell 14:877〜888
Mason DL and Michaelis S (2002) Requirement of the N-terminal extension for vacuolar trafficking and transport activity of yeast Ycf1p, an ATP-binding cassette transporter. Mol Biol Cell 13:4443〜4455
Mills RF, Krijger GC, Baccarini PJ, Hall JL and Williams LE (2003) Functional expression of AtHMA4, a P1B-type ATPase of the Zn/Co/Cd/Pb subclass. Plant J 35:164〜176
【0102】
Moller JV, Juul B and LeMaire M (1996) Structural organization, ion transport, and energy transduction of P-type ATPases. Biochim Biophys Acta 1286:1〜51
Murashige T and Skoog F (1962) A revised medium for rapid growth and bio assays with tobacco tissue cultures. Physiol Plant 15:473〜497
Nothwehr SF, Ha S-A and Bruinsma P (2000) Sorting of yeast membrane proteins int
o an endosome-to-Golgi pathway involves direct interaction of their cytosolic domains with Vps35p. J Cell Biol 151:297〜310
Qi M and Byers PH (1998) Constitutive skipping of alternatively spliced exon 10 in the ATP7A gene abolishes Golgi localization of the Menkes protein and produces the occipital horn syndrome. Hum Mol Genet 7:465〜469
Ran MR, Kirchrath L and Hollenberg CP (1994) A putative P-type Cu(2+)-transporting ATPase gene on chromosome II of Saccharomyces cerevisiae. Yeast 10:1217〜1225
【0103】
Rensing C, Mitra B and Rosen BP (1997) The zntA gene of Escherichia coli encodes
a Zn (II)-translocating P-type ATPase. Proc Natl Acad Sci USA 94:14326〜14331
Rensing C, Sun Y, Mitra B and Rosen BP (1998) Pb(II)-translocating P-type ATPases. J Biol Chem 273:32614〜32617
Sambrook J, Fritsch EF and Maniatis T (1989) Molecular cloning: A Laboratory Manual, Ed 2. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY
Scarborough GE (2000) Crystallisation, structure and dynamics of the proton-translocating P-type ATPase. J Exp Biol 203:147〜154
Shikanai T, Muller-Moule P, Munekage Y, Niyogi KK and Pilon M (2003) PAA1, a P-type ATPase of Arabidopsis, functions in copper transport in chloroplasts. Plant Cell 15:1333〜1346.
【0104】
Solioz M and Vulpe C (1996) CPx-type ATPases: a class of P-type ATPases that pump heavy metals. Trends Biochem Sci 21:237〜241
Song W-Y, Sohn EJ, Martinoia E, Lee YJ, Yang Y-Y, Jasinski M, Forestier C, Hwang
I and Lee Y (2003) Engineering tolerance and accumulation of lead and cadmium in transgenic plants. Nature Biotechnol 21:914〜919
Sunkar R, Kaplan B, Bouche N, Arazi T, Dolev D, Talke IN, Maathuis FJ, Sanders D, Bouchez D and Fromm H (2000) Expression of a truncated tobacco NtCBP4 channel in transgenic plants and disruption of the homologous Arabidopsis CNGC1 gene confer Pb2+ tolerance. Plant J 24:533〜542
Tsai K-J, Lin Y-F, Wong MD, Yang H H-C, Fu H-L and Rosen BP (2002) Membrane topology of the pl258 CadA Cd(II)/Pb(II)/Zn(II)-translocating P-type ATPase. J Bioenerg Biomembr 34:147〜156
【0105】
Verwoerd TC, Dekker BM and Hoekema (1989) A small-scale procedure for the rapid isolation of plant RNAs. Nucleic Acids Res 17:2362
Weissman Z, Shemer R and Kornitzer D (2002) Deletion of the copper transporter CaCCC2 reveals two distinct pathways for iron acquisition in Candida albicans. Mol Microbiol 44:1551〜1560
Werneke JM, Chatfield JM and Ogren WL (1989) Alternative mRNA splicing generates
the two ribulosebisphosphate carboxylase oxygenase activase polypeptides in spinach and Arabidopsis. Plant Cell 1:815〜825
Williams LE, Pittman JK and Hall JL (2000) Emerging mechanisms for heavy metal transport in plants. Biochim Biophys Acta 1465:104〜126
Woeste KE and Kieber JJ (2000) A strong loss-of-function mutation in RAN1 results in constitutive activation of the ethylene response pathway as well as a rosette-lethal phenotype. Plant Cell. 12:443〜55.
【0106】
Xu C, Rice WJ, He W and Stokes DL (2002) A structural model for the catalytic cycle of Ca2+-ATPase. J Mol Biol 316:201〜211
Yang X-L, Miura N, Kawarada Y, Terada K, Petrukhin K, Gilliam T and Sugiyama T (
1997) Two forms of Wilson disease protein produced by alternative splicing are localized in distinct cellular compartments. Biochem J 326:897〜902
Yuan DS, Dancis A and Klausner RD (1997) Restriction of copper export in Saccharomyces cerevisiae to a late Golgi or post-Golgi compartment in the secretory pathway. J Biol Chem 272:25787〜25793
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】Ws生態型からのAtHMA4の核酸及びアミノ酸配列(アクセッション番号AF412407)。
【図2】Ler及びCol-0生体型には存在しないが、Ws生態型にAtHMA4のcDNAの選択的スプライシングされた形が存在することの証明。
【図3】A:キメラ構築物及びEGFPを融合させていないAtHMA4を発現する種々の形質転換株のミクロソーム画分のウェスタンブロット分析。B:AtHMA4::EGFPを発現する酵母細胞の共焦点顕微鏡観察。
【0108】
【図4A】AtHMA4(Athma4D401A、Athma4as及びAthma4ΔHisではない)は、Cdに対する耐性の増加を付与し、エス・セレビシエのycf1変異株を機能的に置き換えることができる。
【図4B】AtHMA4により付与される金属耐性は、CdのグルタチオンS-複合化形に影響を与えない。
【図5】AtMHA4又はAtHMA4::EGFPの発現(Athma4ΔHisではない)は、Pbの存在下でycf1の機能的置き換えを誘導する。
【図6】AtHMA4は、Znに対する耐性をわずかに増大させ、zrc1株を部分的に置き換え可能であった。
【0109】
【図7】野生株のpYES2-のみ(WT)又はAtHMA4- (WT AtHMA4)形質転換体;ycf1変異株のYCF1- (ycf1 YCF1)又はAtHMA4- (ycf1 AtHMA4)形質転換体の48時間培養のCd含量。
【図8】種々の組織から抽出されたRNAについてRT-PCRにより測定されたAtHMA4 (及びAthma4as)の発現プロフィール。
【図9】A:5'UTR を含むAtHMA4のエキソン/イントロンマップ及びRm396変異株のT-DNA挿入の位置。B:T-DNA挿入Rm396系統は、AtHMA4についての真のK.-O.変異株である。
【0110】
【図10】植物体におけるGUS活性の発現プロフィール。
【図11】A:全RNAに対するRT-PCR増幅。B:根系でのGUS染色。
【図12】A:葉から抽出したRNAを用いて行ったRT-PCRにより測定されたAtHMA4の過剰発現。B:標準の栄養溶液(Zn 3μM)上で8日間水栽培で生育させた野生株(Col-0)又は過剰発現(35S-AtHMA4)植物からの葉の、ICP測定により測定したZn含量。C:垂直に生育した苗木の根の長さ。D:グラフは、2つの系統のうち1つを詳細に分析した、3つのうちの1つの代表的な実験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の1つ又は複数のコピーを含み、該P1B-タイプのATPアーゼを過剰発現することを特徴とする遺伝子改変植物。
【請求項2】
重金属を蓄積でき、それらをシュートに移動させることができることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子改変植物。
【請求項3】
前記P1B-タイプのATPアーゼが、重金属真核生物ATPアーゼHMA1、HMA2、HMA3及びHMA4からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の遺伝子改変植物。
【請求項4】
前記P1B-タイプのATPアーゼが、内因性ATPアーゼHMA1、HMA2、HMA3及びHMA4からなる群より選択されることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子改変植物。
【請求項5】
前記P1B-タイプのATPアーゼが、シロイヌナズナの重金属ATPアーゼHMA1、HMA2、HMA3及びHMA4からなる群より選択されることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子改変植物。
【請求項6】
Zn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスの2つの異なるP1B-タイプのATPアーゼをコードする少なくとも2つの異なる配列の1つ又は複数のコピーを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の遺伝子改変植物。
【請求項7】
少なくともHMA3及びHMA4の1つ又は複数のコピーを含むことを特徴とする請求項6に記載の遺伝子改変植物。
【請求項8】
Zn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼを少なくともコードする配列の1つ又は複数のコピーと、(1) 金属キレート化に関係する酵素又は(2) YCF1若しくはその他のABC輸送体のような別の金属輸送体をコードする配列から選択される少なくとも別の配列とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の遺伝子改変植物。
【請求項9】
前記金属キレート化に関係する酵素が、フィトケラチンシンターゼ、グルタチオンシンセターゼ及びγ−グルタミルシステインシンターゼからなる群より選択される請求項8に記載の遺伝子改変植物。
【請求項10】
ベクターが、少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の1つ又は複数のコピーを含み、該ATPアーゼが、植物において発現されたときに重金属を植物のシュートに移動させることができることを特徴とする、植物を形質転換可能な組み換えベクター。
【請求項11】
前記ATPアーゼが、真核生物のATPアーゼHMA1、HMA2、HMA3及びHMA4からなる群より選択される請求項10に記載の組み換えベクター。
【請求項12】
前記コードする配列が、植物特異的プロモータのような植物で発現可能な転写及び翻訳調節配列に操作可能に連結されかつその調節性制御の下にあることを特徴とする請求項10又は11に記載の組み換えベクター。
【請求項13】
HMA3をコードする第一配列及びHMA4をコードする第二配列を含むことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1つに記載の組み換えベクター。
【請求項14】
HMA3をコードする第一ベクター及びHMA4をコードする第二ベクターを少なくとも含むことを特徴
とする請求項10〜12のいずれか1つに記載の組み換えベクターの組。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか1つに記載の組み換えベクター、又は請求項14に記載のベクターの組で形質転換されたことを特徴とする遺伝子改変植物。
【請求項16】
カラシナ、ポプラ、タバコからなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜9及び15のいずれか1つで規定されるような遺伝子改変植物。
【請求項17】
請求項10〜13のいずれか1つに記載の組み換えベクター、又は請求項14に記載のベクターの組で形質転換されたことを特徴とする植物細胞。
【請求項18】
汚染環境からZn、Co、Cd又はPbを植物抽出するための、請求項1〜9、15及び16のいずれか1つに記載の遺伝子改変植物の使用。
【請求項19】
汚染環境からCo、Cd又はPbを植物抽出するための、請求項7に記載の遺伝子改変植物の使用。
【請求項20】
植物で発現可能な転写及び翻訳調節配列に操作可能に連結されかつその調節性制御の下にある、少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼをコードする配列の1つ又は複数のコピーを含む請求項10〜13のいずれか1つに記載の少なくとも1つの組み換えベクターを準備し、及び
前記少なくとも1つの組み換えベクターを、植物細胞又は植物組織に導入して遺伝子改変植物細胞又は遺伝子改変植物組織を作製する
ことを含む、少なくともZn2+/Co2+/Cd2+/Pb2+サブクラスのP1B-タイプのATPアーゼを過剰発現する請求項1〜9、15及び16のいずれか1つに記載の遺伝子改変植物を作製する方法。
【請求項21】
請求項1〜9、15及び16のいずれか1つに記載の遺伝子改変植物を、少なくとも1種の重金属で汚染された土壌を含む領域に植える工程、及び
適切な時間間隔で前記遺伝子改変植物から植物組織を回収して除去する工程
を含むことを特徴とする、土壌からの重金属のフィトレメディエーション方法。
【請求項22】
土壌から、次の重金属:Zn、Co、Cd又はPbの少なくとも1種を抽出することを伴うことを特徴とする請求項21に記載のフィトレメディエーション方法。
【請求項23】
植物全体を、金属含有土壌で生育させた後に除去することを特徴とする請求項21又は22に記載のフィトレメディエーション方法。
【請求項24】
適切な時間間隔で、金属含有組織を、生きたままの植物から除去することを特徴とする請求項21又は22に記載のフィトレメディエーション方法。
【請求項25】
葉及びできれば枝を除去する請求項24に記載の方法。
【請求項26】
金属含有組織が土壌に再び取り込まれないように、回収した植物組織を生育領域から除去し、正しく処理することを特徴とする請求項24又は25に記載のフィトレメディエーション方法。
【請求項27】
前記重金属が、前記植物組織からMn+状態で抽出され得ることを特徴とする請求項24又は25に記載のフィトレメディエーション方法。
【請求項28】
前記重金属が、回収された金属含有組織を燃焼させた後に得られる灰から抽出され、前
記金属がM0状態であることを特徴とする請求項24又は25に記載のフィトレメディエーション方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2007−529217(P2007−529217A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503445(P2007−503445)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000961
【国際公開番号】WO2005/090583
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506315103)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25,rue Leblanc Immeuble(Le Ponant D),75015 PARIS,France
【Fターム(参考)】