説明

遺伝子検査装置

【課題】核酸の検出と反応溶液の温度を制御するための温度測定とを同時に行える遺伝子検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る核酸検出装置は、試料核酸、核酸検出用蛍光物質及び温度測定用蛍光物質を含む反応溶液が供給される反応領域を有する検査用カセットと、前記反応溶液に励起光を照射する光照射手段と、前記励起光が照射された反応溶液に含まれる核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出するための第1の光検出手段と、前記励起光が照射された反応溶液に含まれる温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する第2の光検出手段と、該第2の蛍光から蛍光寿命を測定し、前記反応溶液の温度を算出するための温度演算手段と、該温度演算手段により算出された温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度になるように前記反応溶液の温度を制御するための温度制御手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料核酸を含む反応溶液の温度を制御しながら蛍光を利用して標的核酸をで検出する核酸検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCR増幅法による核酸増幅は生物学の分野では基本的な技術であり、PCR増幅中の核酸量をリアルタイムに測定し、それを解析して検体から抽出した標的核酸量を定量化する方法としてリアルタイムPCR法がある。
【0003】
従来、リアルタイムPCR法として、PCR反応溶液をウエルの中に入れ、ヒートサイクルを加えて増幅を行いながら核酸量の検出を行う方法が行われてきた。しかし、検査装置の小型化や反応速度向上による検査時間の短縮化等を図るため、特許文献1で開示されているように、検査用カセットなどのマイクロリアクタを用いて核酸を増幅する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1では、マイクロリアクタ中の反応溶液の温度を制御するための温度測定法として、例えばサーミスタ、熱電対又は白金測温体等の温度検出素子を用いる方法が挙げられている。これらの温度検出素子のなかでも、サーミスタを用いる方法が温度制御の厳密性の観点で好ましいとされる。そして、温度検出素子は高価であることから、温度検出素子は温度制御型リアクターの外部表面を通して流路に接するように設置することが好ましいとされる。これにより、リアクター部分を使い捨てにして、熱電変換素子や温度検出素子は再利用することができる。
【0005】
一方、特許文献2では、微小流路内を流れる液体に光を間欠的に照射し、液体中の蛍光物質を励起させて蛍光を発生させるとともに、その蛍光強度の減衰特性を測定することにより、微小流路中の液体の温度を測定している。
【特許文献1】特開2003−299485号公報
【特許文献2】特開2006−258537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される、検査用カセットの外壁の温度を測る方法では、内部の微量な反応溶液の温度が正しく測れないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、流路中の反応溶液の温度を正確に測定することができるが、核酸の検出と温度測定とを同時に行える装置、方法については記載がない。
【0008】
したがって、核酸の検出と反応溶液の温度を制御するための温度測定とを同時に行える遺伝子検査装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る核酸検出装置は、
試料核酸、標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質及び温度測定用蛍光物質を含む反応溶液が供給される反応領域を有する検査用カセットと、
前記反応溶液に励起光を照射する光照射手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出するための第1の光検出手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する第2の光検出手段と、
該第2の蛍光から蛍光寿命を測定し、前記反応溶液の温度を算出するための温度演算手段と、
該温度演算手段により算出された温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度になるように前記反応溶液の温度を制御するための温度制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る核酸検出装置は、
試料核酸及び標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質を含む反応溶液が供給される反応領域を有し、該反応領域に温度測定用蛍光物質が配置されている検査用カセットと、
前記反応溶液を供給した反応領域に励起光を照射するための光照射手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出するための第1の光検出手段と、
前記励起光が照射された反応領域に配置された温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出するための第2の光検出手段と、
該第2の蛍光から蛍光寿命を測定し、前記反応溶液の温度を算出するための温度演算手段と、
該温度演算手段により算出された温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度になるように前記反応溶液の温度を制御する温度制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る核酸検出方法は、
(1)試料核酸、標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質及び温度測定用蛍光物質を含む反応溶液を、検査用カセットの反応領域に供給する工程と、
(2)前記反応溶液が供給された反応領域に励起光を照射する工程と、
(3)前記励起光が照射された反応溶液の核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出する工程と、
(4)前記励起光が照射された反応溶液の温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する工程と、
(5)前記第2の蛍光の蛍光寿命から前記反応溶液の温度を算出する工程と、
(6)該算出した温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度と一致するように前記反応溶液の温度を調整する工程と、
(7)前記第1の蛍光に基づいて前記試料核酸での標的核酸の有無または量を検出する工程と、
を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る核酸検出方法は、
(1)試料核酸及び標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質を含む反応液を、核酸検査用のカセットの温度測定用蛍光物質が配置された反応領域に供給する工程と、
(2)前記反応液が供給された反応領域に励起光を照射する工程と、
(3)前記励起光が照射された反応液の核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出する工程と、
(4)前記励起光が照射された反応領域に配置された温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する工程と、
(5)前記第2の蛍光の蛍光寿命から前記反応溶液の温度を算出する工程と、
(6)該算出した温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度と一致するように前記反応溶液の温度を調整する工程と、
(7)前記第1の蛍光に基づいて前記試料核酸での標的核酸の有無または量を検出する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば標的核酸の検出と反応溶液の温度を制御するための温度測定とが同時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る核酸検出装置は、
試料核酸、標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質及び温度測定用蛍光物質を含む反応溶液が供給される反応領域を有する検査用カセットと、
前記反応溶液に励起光を照射する光照射手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出するための第1の光検出手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する第2の光検出手段と、
該第2の蛍光から蛍光寿命を測定し、前記反応溶液の温度を算出するための温度演算手段と、
該温度演算手段により算出された温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度になるように前記反応溶液の温度を制御するための温度制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0015】
また、もう一つの本発明に係る核酸検出装置は、
試料核酸及び標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質を含む反応溶液が供給される反応領域を有し、該反応領域に温度測定用蛍光物質が配置されている検査用カセットと、
前記反応溶液を供給した反応領域に励起光を照射するための光照射手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出するための第1の光検出手段と、
前記励起光が照射された反応領域に配置された温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出するための第2の光検出手段と、
該第2の蛍光から蛍光寿命を測定し、前記反応溶液の温度を算出するための温度演算手段と、
該温度演算手段により算出された温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度になるように前記反応溶液の温度を制御する温度制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る核酸検出装置によれば、反応溶液における核酸検出と温度測定とを同時に行うことができる。
【0017】
本発明の核酸検出装置は、試料核酸における検出対象としての標的核酸の有無やその量を検出するために利用でき、標的核酸が検査対象としての遺伝子を有するものであれば、試料核酸がどのような遺伝子を有しているかを検出する遺伝子検査装置として利用できる。
【0018】
以下、検体(試料核酸)の遺伝子検査を行う遺伝子検査装置として理由する場合の構成の概略について図10を用いて説明する。図10において、検査用カセット101は、反応溶液103が流れる流路102を有しており、温度制御手段104上に設置されている。光照射手段105は、流路103に励起光X(又はX’)を照射し、核酸検出用蛍光物質又は温度測定用蛍光物質を励起する手段である。核酸検出用蛍光物質は、反応溶液103中に含まれており、検査対象としての遺伝子を有する標的核酸を検出するための蛍光標識として働くものである。温度測定用蛍光物質は、反応溶液103中に含まれている、又は流路102の壁面若しくは壁面近傍に配置されており、その蛍光寿命を測定することで温度測定を可能とするものである。第1の光検出手段は、励起された核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光(Y)を検出する手段であり、第2の光検出手段は、励起された温度検出用蛍光物質から発せられる第2の蛍光(Y’)を検出する手段である。温度演算手段(不図示)は、第2の蛍光(Y’)の蛍光寿命を測定し、温度を算出する手段である。温度制御手段104は、流路102を流れる反応溶液を所定の温度となるように制御する手段であって、温度演算手段により算出した温度が望む温度と一致するように調整する機能を有する手段である。
【0019】
また、本発明に係る遺伝子検査装置は、図11に示すように、2つの光照射手段105及び105’を有する構成としてもよい。2つの光照射手段を有することで、核酸検出用と温度測定用の励起光とを別々の光照射手段で制御可能とすることができるため好ましい。
【0020】
本発明に係る遺伝子検査装置の検査は、試料核酸を含む反応溶液を流路に流して所定の温度条件で反応を行う検査に好適に利用できる。特に制限するものではないが、検査としては、例えば、リアルタイムPCR、LCR法、ハイブリダイゼーション又はSNPs解析等を挙げることができる。
【0021】
本発明に係る遺伝子検査装置を使用して例えばリアルタイムPCRを行うことにより、より正確な温度条件で核酸増幅を実施することができる。温度測定用蛍光物質と蛍光プローブ等の核酸検出用蛍光物質を反応溶液に加え、本発明に係る遺伝子検査装置を使用してリアルタイムPCR装置を行うことにより、より正確な温度条件で核酸の増幅を行うことができる。
【0022】
以下、本発明の好ましい形態について詳細に説明する。
【0023】
(検査用カセット)
検査用カセットは、反応溶液が流れる流路を有する。また、反応溶液を注入する注入口や、反応溶液が排出される排出口も有する。反応溶液の温度を制御するために、該検査用カセットは温度制御手段に接して配置されることが好ましい。
【0024】
また、流路の壁面又は壁面近傍に温度測定用蛍光物質を配置させた構成とすることもできる。このような流路を有する検査用カセットを用いることで、反応溶液中に温度測定用蛍光物質を含ませる必要がなくなる。温度測定用蛍光物質は、流路壁面全体に配置してもよく、壁面の一部に配置してもよく、検査方法に応じて適宜配置することができる。また、本発明において壁面又は壁面近傍に配置するという概念は、温度測定用蛍光物質が流路中に露出した状態で配置されている状態も、露出はしていないが壁面近傍に、すなわち壁面直下の壁内に、配置されている状態も含むものである。例えば、流路の一部で反応が行われる場合は、その部分の流路壁面又は壁面近傍にのみ温度測定用蛍光物質を配置する構成とすることができる。
【0025】
また、本発明における流路は、広義の意味で用いられる。つまり、流路は、反応溶液が流れる領域であるとともに、反応を行う領域でもあり、流路の一部が反応室のような構造となっていてもよい。
【0026】
また、反応溶液は常に一定の流速で流れている必要はなく、反応に応じて流速を調整することができ、停止させることもできる。
【0027】
なお、流路や注入口、排出口は、基板中に、フォトリソグラフィや成型などの公知技術を用いることにより形成することができる。基板の材料は、励起光、反応溶液中の核酸検出用蛍光物質若しくは温度検出用蛍光物質、又は流路壁等に配置した温度検出用蛍光物質等から発せられる蛍光を透過できるものであれば特に限定されない。例えば、シリコンウェハ、石英ガラス又はプラスチックなどを用いることができる。
【0028】
なお、反応溶液の送液は、送液可能な方法であれば任意であり、例えば、インジェクターを備えたマイクロポンプ、シリンジポンプ等が使用できる。送液速度は、PCR増幅、ハイブリダイゼーション等の各検査に適した送液速度を適宜設定することができる。
【0029】
なお、流路の形状は、直線状の流路でなくとも、同一平面上で複数回折り曲げた形状とすることもでき、特に限定されるものではない。なお、注入口と排出口とを別に設けなくとも、流路が環状であり、反応溶液を流路内に循環させるタイプの形状としてもよい。流露の幅は特に限定されるものではないが、例えば1〜1,000μmとすることができ、10〜100μmとすることが好ましい。
【0030】
また、検査用カセットは、装置に対して着脱可能に構成されることが好ましい。例えば、検査用カセットを所定位置に着脱自在に配置するホルダーを装置に設置して、ホルダー上に検査用カセットを配置して検出操作を行うことができる。ホルダーを利用する場合は、反応領域の温度を調整するための加熱冷却手段としての機能をホルダーに持たせてもよいし、加熱冷却手段をホルダーと別に設けて、ホルダーへの検査用カセットの設置時に、加熱冷却手段と検査用カセットを接続可能としてもよい。なお、装置に検査用カセットを常設しておく場合は、必要に応じて、カセットの流路を洗浄するための構成を装置に付加することができる。
【0031】
(反応溶液)
反応溶液は、核酸、標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質及び目的とする反応に応じた試薬を含む溶液である。また、温度測定用蛍光物質を含ませることができるが、温度測定用蛍光物質を流路の壁面又は壁面近傍に配置する構成とした場合は、通常、反応溶液中に温度測定用蛍光物質を添加する必要はない。
【0032】
標的あるいは試料となる核酸としては、特に限定されるものではないが、その由来としては、例えば人工合成産物、ヒトやマウスなどの動物、植物、細菌、真菌、古細菌、ウイルスなどの微生物等を挙げることができる。例えば、感染症起炎菌由来の核酸についてリアルタイムPCRを行う場合、血液中に存在する細菌の核酸が核酸となる。これらの標的核酸は、その血液の前処理を行い検体とした後、例えばリアルタイムPCR等の検査に供することができる。なお、感染症起炎菌由来の核酸についてのリアルタイムPCRは、その試料に含まれる核酸のコピー数(初期数)を測定することができるため、発症の有無の判定などに有効である。
【0033】
反応溶液は流路を流れ、温度制御手段により所定の温度に制御される。例えば、反応としてPCR反応が行われる場合、試薬としては、DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド(dNTP)などが挙げられ、一例として以下を含む。(1)核酸に特異的に結合するプライマー、(2)核酸に結合したプライマーから標的配列に相補的にDNAを合成するDNAポリメラーゼ(核酸がRNAの場合はRNAポリメラーゼ)、(3)DNA合成に必要な各種ヌクレオチド(dNTPなど)、(4)塩化マグネシウムや塩化カリウム等の塩類、(5)トリス等のバッファー。なお、プライマーやdNTPが蛍光標識されている場合は、それが核酸検出用蛍光物質となる。例えば、インターカレータや蛍光プローブなどが核酸検出用蛍光物質となる。
【0034】
また、流路には、反応溶液以外にも、反応溶液同士が混ざらないようにするためのバッファ液などを流すことができる。流路には複数の反応溶液を導入することができるが、この場合、各反応溶液の間にバッファ液を充填する。バッファ液としては、例えばPCR反応溶液の場合、PCR反応溶液と比較的混じりにくく、流路に付着したPCR反応溶液の洗浄を行い、各PCR反応溶液間のコンタミを防止することできる溶液が好ましい。例えば、バッファ液としては、シリコンオイルなどを用いることができる。
【0035】
(光照射手段)
光照射手段は、蛍光物質の励起光を照射する手段であり、流路中の反応溶液に励起光を照射する。また、流路の壁面又は壁面近傍に温度測定用蛍光物質が配置されている場合には、その蛍光物質にも励起光を照射する。
【0036】
光照射手段としては、高圧水銀ランプとフィルタを組み合わせ特定の波長を取り出すものやLEDなどを用いることが出来るがレーザ光発生装置を用いるのが望ましい。
【0037】
また、上述のように光照射手段は1つに制限されるものではない。例えば、核酸検出用蛍光物質に特有の励起光を照射する第1の光照射手段と、温度測定用蛍光物質に特有の励起光を照射する第2の光照射手段を有する構成であってもよい。
【0038】
核酸検出用蛍光物質に特有の励起光を照射する第1の光照射手段としてGaN系半導体を用いた405nm,445nm,470nm,488nmの青紫レーザや波長変換素子を用いた532nmの緑レーザなどを用いることが出来る。温度測定用蛍光物質に特有の励起光を照射する第2の光照射手段としてAlGalnP系半導体を用いた650nmの赤色レーザやAlGaAs系半導体を用いた780nm,808nmの赤外レーザなどを用いることが出来る。
【0039】
(光検出手段)
光検出手段としては、蛍光を受光し、その蛍光の強度を電気的信号に変換することができる手段であり、例えばCCD等を用いることができる。図10に示すように、第1の光検出手段106は、核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光(Y)を検出し、第2の光検出手段107は、温度測定用蛍光物質から発せいられる第2の蛍光(Y’)を検出する。
【0040】
光検出手段の構成としては、例えば、蛍光を検出する受光素子を有する光検出器、所定範囲の蛍光波長の蛍光のみを透過させるフィルター、蛍光を光検出器に導くための集光レンズ等から構成することができる。
【0041】
本発明に係る遺伝子検査装置を用いた検査において発生する光としては、主に、第1の励起光(X)、第2の励起光(X’)、第1の蛍光(Y)及び第2の蛍光(Y’)が考えられる。したがって、光検出手段は、対象とする蛍光のみを検出可能とするフィルタを有することが好ましい。
【0042】
(温度演算手段)
温度演算手段は、光検出手段により電気的信号とされた蛍光強度から蛍光寿命を測定し、温度を算出する。温度演算手段は、例えば温度測定用蛍光物質の蛍光寿命と温度との検量線のデータを用い、蛍光寿命から温度測定用蛍光物質の温度を算出することができる。
【0043】
(温度制御手段)
温度制御手段は、反応溶液を所定の温度に制御する手段であって、前記温度演算手段により測定された温度が目的とする温度と一致するように、反応溶液の温度を調整する手段である。
【0044】
温度制御手段としては、流路中の反応溶液の温度を制御できれば、どのような機構、形状のものでも良い。温度制御手段として、例えば、ヒーターやペルチェ素子等の加熱冷却部を有する装置を用いることができる。また、温度制御手段のうち加熱冷却部は検査用カセットに接して配置されることが好ましい。
【0045】
例えば、本発明に係る遺伝子検査装置を用いてリアルタイムPCR反応を行う場合、核酸を含むPCR反応溶液に温度サイクルを与えることにより核酸増幅を行うことができる。つまり、流路中の反応溶液にディネーチャー、アニール、エクステンションに適した温度、時間で温度サイクルを与えることにより、核酸を増幅することができる。このとき、核酸検出用蛍光物質により1サイクル毎に核酸の増幅量を把握することができ、また温度測定用蛍光物質により正確な温度を把握することができる。
【0046】
(核酸検出用蛍光物質)
核酸検出用蛍光物質は、反応溶液中に含まれ、核酸の検出を可能とする蛍光物質である。
【0047】
例えばリアルタイムPCR法では、蛍光検出方法にはインターカレーターを用いる方法と蛍光標識プローブを用いる方法があるが、このインターカレーターや蛍光標識プローブが核酸検出用蛍光物質に相当する。
【0048】
インターカレーター法では一般的に蛍光試薬としてSYBR Green Iを使用する。インターカレーター(SYBR Green I)は、PCR反応によって増幅された二本鎖DNAに結合し、励起光の照射により蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、増幅産物の生成量をモニターできる。また、蛍光標識プローブ法における蛍光プローブとしては、代表的なものに、TaqManプローブ、Molecular Beacon及びサイクリングプローブがある。
【0049】
(温度測定用蛍光物質)
温度測定用蛍光物質は、その蛍光寿命により温度の測定を可能とする物質である。温度測定用蛍光物質は、上述のように、流路の壁面又は壁面近傍に配置することができる。また、流路の壁面又は壁面近傍に配置されていない場合は、反応溶液中に含まれている必要がある。温度測定用蛍光物質を利用することにより、温度を測定するための機器を直接反応溶液に接触させることなく、反応溶液の温度を測定することができるようになる。
【0050】
例えば、温度測定用蛍光物質としては、温度により蛍光特性が変化する蛍光物質であれば良く、例えば、Nd−YAGやNd.YVO4などを用いることができる。
【0051】
また、核酸検出用蛍光物質と温度測定用蛍光物質との蛍光波長及び励起光波長は重ならないように、それぞれの蛍光物質を選択することが好ましい。蛍光波長及び励起光波長の両方において重なる部分があると、核酸検出と温度測定を同時に行えなくなってしまうためである。特に限定するものではないが、核酸検出用蛍光物質が発する蛍光の波長が長い温度測定用蛍光物質を選択することが好ましい。
【0052】
以上の記載より、本発明は、以下の遺伝子検査方法も提供するものであることが理解できる。
【0053】
(1)試料核酸、標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質及び温度測定用蛍光物質を含む反応溶液を、検査用カセットの反応領域に供給する工程と、
(2)前記反応溶液が供給された反応領域に励起光を照射する工程と、
(3)前記励起光が照射された反応溶液の核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出する工程と、
(4)前記励起光が照射された反応溶液の温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する工程と、
(5)前記第2の蛍光の蛍光寿命から前記反応溶液の温度を算出する工程と、
(6)該算出した温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度と一致するように前記反応溶液の温度を調整する工程と、
(7)前記第1の蛍光に基づいて前記試料核酸での標的核酸の有無または量を検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸検出方法。
【0054】
(1)試料核酸及び標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質を含む反応液を、核酸検査用のカセットの温度測定用蛍光物質が配置された反応領域に供給する工程と、
(2)前記反応液が供給された反応領域に励起光を照射する工程と、
(3)前記励起光が照射された反応液の核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出する工程と、
(4)前記励起光が照射された反応領域に配置された温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する工程と、
(5)前記第2の蛍光の蛍光寿命から前記反応溶液の温度を算出する工程と、
(6)該算出した温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度と一致するように前記反応溶液の温度を調整する工程と、
(7)前記第1の蛍光に基づいて前記試料核酸での標的核酸の有無または量を検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸検出方法。
【0055】
上記の核酸検出方法は、標的核酸が検査対象としての遺伝子を有するものであれば、試料核酸がどのような遺伝子を有しているかを検出する遺伝子検査方法として好適に利用できる。
【0056】
(実施形態1)
【0057】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0058】
図1は、本発明に係る遺伝子検査装置の構成を説明する図である。本実施形態の遺伝子検査装置により、例えばPCR反応による核酸増幅やSNPsの解析等を行うことができる。以下では、例として、本実施形態の遺伝子検査装置を用いてPCR反応により核酸を増幅する場合について説明する。
【0059】
図1において、1が示す部分は測定対象の検体から抽出した核酸を含む反応溶液の注入口がある。2は反応溶液を流す流路が形成された検査用カセットである。3は検査用カセットの流路中の反応溶液を所定の温度に加熱又は冷却するペルチェ素子などの加熱冷却手段である(加熱冷却手段は上述の加熱冷却部に相当する)。4は加熱冷却手段3の反対側に発生する熱を空気中に放熱するヒートシンクである。5は注入した反応溶液を流路中を移動させるためのポンプである。6は蛍光標識(核酸検出用蛍光物質)を励起する第1の励起光を照射する第1の励起光源である。励起光源としては、例えばLEDやレーザなどを使用することができる。7は、第1の励起光源6から出た第1の励起光をカセット2の増幅領域に照射させるための照明光学系である。8は、第1の励起光により励起された増幅領域の蛍光標識から出た蛍光を集光する第1の検出光学系である。9は、励起光などの光を阻止して蛍光標識からの第1の蛍光のみを透過させる第1のフィルタである。10は、蛍光標識からの蛍光を受光して電気信号に変換するCCDなどの第1の受光素子である。11は、温度測定用蛍光物質を励起する第二の励起光を発生する第2の励起光源である。12は、励起された温度測定用蛍光物質から発せられる蛍光を集光する第2の検出光学系である。13は、励起光などの光を阻止して温度測定用蛍光物質からの第2の蛍光のみを透過させる第2のフィルタである。14は、温度測定用蛍光物質からの蛍光を受光して電気信号に変換するフォトダイオードなどの第2の受光素子である。15は、第1の受光素子10からの画像信号を取り込むためのA/D変換器である。16は、取り込んだ画像を一時的に記憶しておく画像メモリである。17は、画像メモリ16中の画像データの数値化などの演算を行う演算手段である。18は、処理のためのデータを蓄積しておく蓄積メモリである。19は、第1の励起光源6の点灯、消灯を制御する第1の発光制御部である。20は、ポンプ5の動作を制御するポンプ制御部である。21は、加熱冷却手段3の駆動部である。22は、蛍光が減衰する時間を測る計測手段である。23は、第2の励起光源11の点灯、消灯を制御する第2の発光制御部である。
【0060】
加熱冷却手段3は、検査用カセット2を着脱可能に固定する。また、検査用カセット2に形成された流路への励起光の照射位置を自在に制御することができるようにする構成とすることができる。例えば、検査用カセットを装着する検査装置のホルダーはX−Yステージにより位置が微調整できる構成とすることができ、これにより検査領域を自在に移動させることが出来る
【0061】
次に、図1に示した実施形態の遺伝子検査装置の動作説明を行う。
【0062】
検査を行う血液などの検体から抽出した試料核酸を含む反応溶液を検査用カセット2の注入口1から流路に注入する。ポンプ5が動作して吸引口1が負圧になることにより、反応溶液は検査用カセット2に形成された流路の中を移動し、増幅領域に達する。増幅領域では加熱冷却手段3によって図2に示すような温度サイクルが反応溶液に加えられ、PCR法により核酸の増幅が行われる。
【0063】
核酸量の測定は、1回の温度サイクルごとに行われることが好ましい。第1の発光制御部19からの信号で第1の励起光源6が励起光を発し、流路中の増幅領域が励起照射される。増幅された核酸の蛍光標識から発生した蛍光を検出光学系A8で集光し、フィルタA9で励起光を阻止し、必要な蛍光のみを受光素子A10で検出する。検出された蛍光は電気信号に変換され、A/D変換器15でデジタル化され画像データとして画像メモリ16に保存される。演算手段17は、画像メモリ16に保存された画像を処理して蛍光量を求め、その蛍光値を蓄積メモリ18に保存する。反応溶液は数十回の温度サイクル、例えば40回の温度サイクルが加えられ40回蛍光量の測定が行われ、40回分の蛍光量の測定値が蓄積メモリ18に保存される。演算手段17は、例えば、それらの蛍光値から検体の初期核酸量を算出することができる。例えば、図3で示すように増幅又は検出を行いたい配列を有する核酸の初期量が多いと温度サイクルの回数が少ないうちに蛍光量が増加し始め、初期量が少ないと温度サイクルの回数が多くならないと蛍光量が増加し始めない。
【0064】
また、効率的な核酸増幅のために、反応溶液に与える温度サイクルの各温度が反応に適した所定の温度となるように、加熱冷却手段3を制御する必要がある。そこで、本発明に係る遺伝子検査装置は、上述のように核酸の検出を行うと同時に、反応溶液に含まれる温度測定用蛍光物質が発する蛍光の減衰特性、つまり蛍光寿命を測定することで、反応溶液の温度を測定する。そして、把握した反応溶液の温度が所定の温度サイクルの各温度に一致するように加熱冷却手段3を制御する。
【0065】
以下、本実施形態の構成での温度制御についてより具体的に説明する。第2の発光制御部23より第2の励起光源11を図4に示すように間欠的に点灯させ、第2の励起光を照射する。第2の励起光は検査用カセット2の増幅領域にある反応溶液中の温度検出用蛍光物質を励起する。励起した温度検出用蛍光物質は第2の蛍光を発する。該第2の蛍光は、第2の検出光学系12により集光され、さらに第2の蛍光のみを透過させる第2のフィルタ13を透過した後、第2の受光素子14で電気信号に変換される。また、第2の蛍光強度は、計測部22を用いて経時的に測定され、第2の蛍光の蛍光寿命が把握される。
【0066】
ここで、温度測定用蛍光物質が発する蛍光の強度(蛍光強度)は、図5に示すように、第2の励起光が無くなってから時間と共に減衰していく。この減衰特性は蛍光物質の温度に応じて変化する。したがって、あらかじめ温度に対応した温度測定用蛍光物質の蛍光寿命を測定し、図6に示すような検量線を作成しておくことで、測定した第2の蛍光の蛍光寿命から反応溶液の温度を算出することができる。
【0067】
演算手段17はあらかじめ設定された温度と測定した温度が一致するよう駆動部21に指示を与え、駆動部21により加熱冷却手段3を制御する。
【0068】
核酸検出用蛍光物質としては、例えば従来のリアルタイムPCR法では、SYBER GREEN I(商標、以下SYBER Gとも略す)のようなインターカレータ方式の蛍光標識が用いられてきた。この蛍光標識の励起光と蛍光は図7のような関係であり、図7に示すような遮断周波数を持つローパスフィルタを第1の受光素子の前に配置することで、励起光や第2の蛍光が第1の受光素子に到達することを阻止することができる。
【0069】
また、本発明では核酸検出と温度測定を光学的に行うため、図8に示すように、温度測定用蛍光物質の励起光波長と蛍光波長が、核酸検出用蛍光物質の蛍光波長より長くなるように構成することが好ましい。そのため、温度測定用蛍光物質としては、核酸検出用蛍光物質の蛍光波長より長い波長の励起光で励起でき、かつPCR増幅を阻害しない物質を用いることが好ましい。図8は、温度測定用蛍光物質としてNd−YAG、核酸検出用蛍光物質としてSYBER Gを用いた場合における励起光と蛍光の関係について示している。例えば、Nd−YAGの励起波長は808nmであり、その蛍光波長は1064nmとなる。したがって、SYBER Gの励起波長・蛍光波長と、Nd−YAGの励起波長・蛍光波長とが重なることがなく、所定のフィルタを用いることで一方の蛍光のみを受光素子で検出することが可能である。つまり、所定の波長を有する蛍光を選択的に検出することができる。例えば、温度測定用の励起光の波長を阻止するように、例えば図8に示すフィルタAのような蛍光波長を透過させるバンドパスフィルタを核酸検出用受光素子の前に配置することができる。
【0070】
なお、核酸検出用蛍光物質はSYBER GREEN Iに限定するものではなく、例えばCy3(商標)なども用いることができる。
【0071】
また、温度測定用蛍光物質もNd−YAGに限定されるものではなく、例えばNd.YVO4などを用いることもできる。温度測定用蛍光物質の励起光波長は、核酸検出用蛍光物質の蛍光波長より長くなるように構成することが好ましい。
【0072】
また、本実施形態のように、光照射手段を2つ有し、かつ、第1の励起光、第2の励起光、第1の蛍光及び第2の蛍光のそれぞれの波長が重ならない構成とすることがとくに好ましい。そうすることで核酸検出と温度測定を同時に併行して行うことができるためである。
【0073】
また、本実施形態では温度測定用蛍光物質の粉末を反応溶液に混合する方法について説明したが、温度測定用蛍光物質は反応溶液の反応領域に相当する部分の流路の壁面又は壁面近傍に配置しても良い。
【0074】
なお、リアルタイムPCR法について簡単に概要を説明する。PCR法では、1サイクルごとに標的核酸が指数関数的に増幅し、やがてプラトーに達する。本実施形態において、核酸検出用蛍光物質からの蛍光値は増幅産物量を示すことになる。そして、温度サイクルごとに蛍光量、つまり核酸の増幅量をモニタリングすることによりグラフに表すことができる。初発のDNA量(初期数)が多いほど、増幅産物量は早く検出可能な量に達し、増幅曲線が早いサイクルで立ち上がる。したがって、段階希釈したスタンダードサンプル等を用いてリアルタイムPCRを行うと、初発DNAが多い順番から並んだ増幅曲線が得られる。サンプルは既に初期数がわかっているサンプルと比較することで初期鋳型量を知ることができ、検体中の核酸を定量することができる。
【0075】
(その他の検査方法の例)
上述のように、本発明の検査対象としては、リアルタイムPCR法を用いたものに限られず、核酸を含む反応溶液を流路に流して所定の温度条件で反応を行う検査が対象となる。例えば、SNPsの解析を行う方法として、核酸の2本鎖が乖離する温度(メルティング温度)を測定する方法がある。遺伝子検査装置は本実施形態に示した構成のものを使用でき、核酸と核酸検出用蛍光物質を含む反応溶液を流路に注入する。反応溶液はポンプ5により流路中を移動し、メルティング検査領域に達する。加熱冷却手段3によって反応溶液の温度を図9に示すようにゆっくり変化させると、温度の上昇により核酸の2本鎖が乖離する。核酸の2本鎖が乖離すると、核酸検出用蛍光物質が発光しなくなる。この乖離する温度と蛍光量の変化によりSNPsの解析を行うことができる。この検査の場合も核酸検出用蛍光物質からの蛍光量の測定と反応溶液の温度測定とを同時に行う必要があり、本発明が有効である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態1に係る遺伝子検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】PCR反応における温度サイクルと核酸量の測定ポイントの例を示す図である。
【図3】蛍光量の測定値から検体の初期核酸量を算出する方法を説明する図である。
【図4】蛍光寿命を説明する図である。
【図5】蛍光の減衰特性の温度による変化を説明する図である。
【図6】蛍光寿命と温度の関係を説明する図である。
【図7】従来の核酸量測定法における光検出に用いられるフィルタの説明図である。
【図8】実施形態1における励起光及び蛍光の波長を説明する図である。
【図9】SNPsの解析法の概要を表す図である。
【図10】本発明に係る遺伝子検査装置の構成例を表す概略図である。
【図11】本発明に係る遺伝子検査装置の構成例を表す概略図である。
【符号の説明】
【0077】
1、注入口
2、検査用カセット
3、加熱冷却手段
4、ヒートシンク
5、ポンプ
6、第1の励起光源
7、照明光学系
8、第1の検出光学系
9、第1のフィルタ
10、第1の受光素子
11、第2の励起光源
12、第2の検出光学系
13、第2のフィルタ
14、第2の受光素子
15、A/D変換器
16、画像メモリ
17、演算手段
18、蓄積メモリ
19、第1の発光制御部
20、ポンプ制御部
21、駆動部
22、計測部
23、第2の発光制御部
101、検査用カセット
102、流路
103、反応溶液
104、温度制御手段
105、光照射手段(第1の光照射手段)
105’、第2の光照射手段
106、第1の光検出手段
107、第2の光検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料核酸、標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質及び温度測定用蛍光物質を含む反応溶液が供給される反応領域を有する検査用カセットと、
前記反応溶液に励起光を照射する光照射手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出するための第1の光検出手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する第2の光検出手段と、
該第2の蛍光から蛍光寿命を測定し、前記反応溶液の温度を算出するための温度演算手段と、
該温度演算手段により算出された温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度になるように前記反応溶液の温度を制御するための温度制御手段と、
を有することを特徴とする核酸検出装置。
【請求項2】
試料核酸及び標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質を含む反応溶液が供給される反応領域を有し、該反応領域に温度測定用蛍光物質が配置されている検査用カセットと、
前記反応溶液を供給した反応領域に励起光を照射するための光照射手段と、
前記励起光が照射された反応溶液に含まれる核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出するための第1の光検出手段と、
前記励起光が照射された反応領域に配置された温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出するための第2の光検出手段と、
該第2の蛍光から蛍光寿命を測定し、前記反応溶液の温度を算出するための温度演算手段と、
該温度演算手段により算出された温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度になるように前記反応溶液の温度を制御する温度制御手段と、
を有することを特徴とする核酸検出装置。
【請求項3】
前記光照射手段は、前記核酸検出用蛍光物質に特有の励起光を照射する第1の光照射手段と、前記温度測定用蛍光物質に特有の励起光を照射する第2の光照射手段とで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の核酸検出装置。
【請求項4】
前記第1の光検出手段は前記第1の蛍光を選択的に検出し、前記第2の光検出手段は前記第2の蛍光を選択的に検出することを特徴とする請求項3に記載の核酸検出装置。
【請求項5】
前記検査用カセットを着脱自在に配置し得るホルダーを有する請求項1乃至4のいずれかに記載の核酸検出装置。
【請求項6】
(1)試料核酸、標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質及び温度測定用蛍光物質を含む反応溶液を、検査用カセットの反応領域に供給する工程と、
(2)前記反応溶液が供給された反応領域に励起光を照射する工程と、
(3)前記励起光が照射された反応溶液の核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出する工程と、
(4)前記励起光が照射された反応溶液の温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する工程と、
(5)前記第2の蛍光の蛍光寿命から前記反応溶液の温度を算出する工程と、
(6)該算出した温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度と一致するように前記反応溶液の温度を調整する工程と、
(7)前記第1の蛍光に基づいて前記試料核酸での標的核酸の有無または量を検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸検出方法。
【請求項7】
(1)試料核酸及び標的核酸を検出するための核酸検出用蛍光物質を含む反応液を、核酸検査用のカセットの温度測定用蛍光物質が配置された反応領域に供給する工程と、
(2)前記反応液が供給された反応領域に励起光を照射する工程と、
(3)前記励起光が照射された反応液の核酸検出用蛍光物質から発せられる第1の蛍光を検出する工程と、
(4)前記励起光が照射された反応領域に配置された温度測定用蛍光物質から発せられる第2の蛍光を検出する工程と、
(5)前記第2の蛍光の蛍光寿命から前記反応溶液の温度を算出する工程と、
(6)該算出した温度が、前記標的核酸の検出のための反応に必要とされる予め設定された温度と一致するように前記反応溶液の温度を調整する工程と、
(7)前記第1の蛍光に基づいて前記試料核酸での標的核酸の有無または量を検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸検出方法。
【請求項8】
前記第1の励起光、前記第2の励起光、前記第1の蛍光及び前記第2の蛍光のそれぞれの波長は全て重ならず、前記核酸の検出と前記温度の測定を同時に併行して行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の遺伝子検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−81898(P2010−81898A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256403(P2008−256403)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】