説明

遺伝子疾患および障害を治療するための間葉系幹細胞の使用

動物において、例えば、嚢胞性線維症、ウィルソン病、筋萎縮性側索硬化症、または多発性嚢胞腎疾患などの遺伝子疾患または障害を治療する方法であって、動物において、遺伝子疾患または障害を治療するのに有効な量の間葉系幹細胞を前記動物に投与する工程を含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、2008年3月5日出願の米国非仮出願第12/042,487号(現在、係属中)に優先権を請求する。本出願はまた、2007年1月10日出願の米国特許出願第11/651,878号(現在、係属中)、および2006年1月12日出願の米国仮出願第60/758,387号(現在、放棄)にも関連し、これらは各々、本明細書にその全体が援用される。
【背景技術】
【0002】
[0002]間葉系幹細胞(MSC)は、骨芽細胞、筋細胞、軟骨細胞、および脂肪細胞を含む細胞系譜に容易に分化しうる、多能性幹細胞である(Pittengerら, Science, vol. 284, pg. 143(1999); Haynesworthら, Bone, vol. 13, pg. 69(1992); Prockop, Science, vol. 276, pg. 71(1997))。in vitro研究によって、MSCが筋肉(Wakitaniら, Muscle Nerve, vol. 18,, pg. 1417(1995))、ニューロン様前駆体(Woodburyら, J. Neurosci. Res., Vol, 69. pg. 908(2002); Sanchez−Ramosら, Exp. Neurol., vol. 171, pg. 109(2001))、心筋細胞(Tomaら, Circulation, vol. 105, pg. 93(2002); Fakuda, Artif. Organs, vol. 25, pg. 187(2001))およびおそらく他の細胞型に分化する能力があることが立証されてきている。さらに、MSCは造血幹細胞の増殖に有効なフィーダー層を提供することが示されてきている(Eavesら, Ann. N.Y. Acad. Sci., vol. 938, pg. 63(2001); Wagersら, Gene Therapy, vol. 9, pg. 606(2002))。
【0003】
[0003]多様な動物モデルを用いた最近の研究によって、損傷を受けた骨、軟骨、半月板または心筋組織の修復または再生にMSCが有用でありうることが示されてきている(Dekokら, Clin. Oral Implants Res., vol. 14, pg. 481(2003)); Wuら, Transplantation, vol. 75, pg. 679(2003); Noelら, Curr. Opin. Investig. Drugs, vol. 3, pg. 1000(2002); Ballasら, J. Cell. Biochem. Suppl., vol. 38, pg. 20(2002); Mackenzieら, Blood Cells Mel. Dis., vol. 27(2002))。何人かの研究者らは、MSCを用いて、骨形成不全症(Pereiraら, Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 95, pg. 1142(1998))、パーキンソン症(Schwartzら, Hum. Gene Ther., vol. 10, pg. 2539(1999))、脊髄傷害(Choppら, Neuroreport, vol. 11, pg. 3001(2000); Wuら, Neurosci. Res., vol. 72, pg. 393(2003))および心障害(Tomitaら, Circulation, vol. 100, pg. 247(1999); Shakeら, Ann. Thorac. Surg., vol. 73, pg. 1919(2002))を含む動物疾患モデルにおいて移植に関して有望な結果を得た。
【0004】
[0004]骨形成不全症(Horwitzら, Blood, vol. 97, pg. 1227(2001); Horowitzら Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 99, pg. 8932(2002))および異種骨髄移植の生着増進(Frassoniら, Int. Society for Cell Therapy, SA006(概要)(2002); Kocら, J. Clin. Oncol., vol. 18, pg. 307(2000))のための臨床試験においてもまた、有望な結果が報告されてきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pittengerら, Science, vol. 284, pg. 143(1999)
【非特許文献2】Haynesworthら, Bone, vol. 13, pg. 69(1992)
【非特許文献3】Prockop, Science, vol. 276, pg. 71(1997)
【非特許文献4】Wakitaniら, Muscle Nerve, vol. 18,, pg. 1417(1995)
【非特許文献5】Woodburyら, J. Neurosci. Res., Vol, 69. pg. 908(2002)
【非特許文献6】Sanchez−Ramosら, Exp. Neurol., vol. 171, pg. 109(2001)
【非特許文献7】Tomaら, Circulation, vol. 105, pg. 93(2002)
【非特許文献8】Fakuda, Artif. Organs, vol. 25, pg. 187(2001))
【非特許文献9】Eavesら, Ann. N.Y. Acad. Sci., vol. 938, pg. 63(2001)
【非特許文献10】Wagersら, Gene Therapy, vol. 9, pg. 606(2002)
【非特許文献11】Dekokら, Clin. Oral Implants Res., vol. 14, pg. 481(2003)
【非特許文献12】Wuら, Transplantation, vol. 75, pg. 679(2003)
【非特許文献13】Noelら, Curr. Opin. Investig. Drugs, vol. 3, pg. 1000(2002)
【非特許文献14】Ballasら, J. Cell. Biochem. Suppl., vol. 38, pg. 20(2002)
【非特許文献15】Mackenzieら, Blood Cells Mel. Dis., vol. 27(2002)
【非特許文献16】Pereiraら, Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 95, pg. 1142(1998)
【非特許文献17】Schwartzら, Hum. Gene Ther., vol. 10, pg. 2539(1999)
【非特許文献18】Choppら, Neuroreport, vol. 11, pg. 3001(2000)
【非特許文献19】Wuら, Neurosci. Res., vol. 72, pg. 393(2003)
【非特許文献20】Tomitaら, Circulation, vol. 100, pg. 247(1999)
【非特許文献21】Shakeら, Ann. Thorac. Surg., vol. 73, pg. 1919(2002)
【非特許文献22】Horwitzら, Blood, vol. 97, pg. 1227(2001)
【非特許文献23】Horowitzら Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 99, pg. 8932(2002)
【非特許文献24】Frassoniら, Int. Society for Cell Therapy, SA006(概要)(2002)
【非特許文献25】Kocら, J. Clin. Oncol., vol. 18, pg. 307(2000)
【発明の概要】
【0006】
[0005]本技術は、一般的に、間葉系幹細胞に関する。より具体的には、本明細書に記載する技術は、遺伝子疾患および障害を治療するための間葉系幹細胞の使用に関する。さらにより具体的には、本技術は、少なくとも1つの組織および/または少なくとも1つの臓器の炎症によって特徴付けられる遺伝子疾患または障害を治療するための間葉系幹細胞の使用に関する。
【0007】
[0006]少なくとも1つの側面において、本技術は、MSCを宿主組織に再定植(repopulating)させるためのMSCの使用を提供する。本技術のさらに別の側面は、機能不全組織の機能を改善するためのMSCの使用を提供する。さらにより詳細には、本技術のさらに別の側面において、遺伝子欠陥ならびに/あるいは炎症または炎症仲介因子によって特徴付けられる機能不全組織の機能を改善するための間葉系幹細胞の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[0007]以下は、本技術を例示する目的のためであり、そして本技術を限定する目的のためではなく提示される、図面の簡単な説明である。
[0008]図1〜6は、全身放射線照射、ならびに以下:対照治療、外因性骨髄細胞および間葉系幹細胞の骨内送達、または外因性骨髄細胞および間葉系幹細胞の静脈内送達の1つの後、ラット骨髄から得られる間葉系幹細胞コロニーの一連の顕微鏡写真の略図である。
【0009】
[0008a]図1〜3は、エバンスブルーで染色した細胞の略図を示す。水平な線は、拡散した紫の染色を表し、そして垂直の線は濃縮された濃い紫の染色を表す。
[0008b]図4〜6は、ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(hPAP)染色細胞の略図を示す。右に傾いた斜線は、拡散した薄いピンクの染色を表し、そして左に傾いた斜線は、濃縮された濃いピンクの染色を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0009]驚くべきことに、間葉系幹細胞は、静脈内または骨内投与によるなどで全身投与された場合、炎症組織に向かって遊走し、そして炎症組織内に生着する(engraft)ことが発見されている。したがって、本技術の少なくとも1つの側面にしたがって、動物において、遺伝子疾患または障害を治療する1以上の方法、より詳細には、動物の炎症組織または臓器の少なくとも1つによって特徴付けられる遺伝子疾患または障害を治療する方法を提供する。少なくともいくつかの態様において、方法は、動物において、遺伝子疾患または障害を治療するのに有効な量の間葉系幹細胞を動物(ヒトを含む)に投与する工程を含む。
【0011】
[0010]本技術の範囲は、いかなる理論的論拠にも限定されないが、注入された間葉系幹細胞(MSC)は、炎症組織にホーミングし、すなわち炎症組織に向かって遊走し、そして炎症組織内に生着する。炎症の関与は、限定されるわけではないが、例えば、多発性嚢胞腎疾患、嚢胞性線維症、ウィルソン病、ゴーシェ病、およびハンチントン病を含むいくつかの遺伝子疾患に関して記載されてきている。これらおよび他の遺伝子障害によって影響を受ける組織または臓器内の炎症の存在は、炎症組織および/または臓器へのMSCのホーミングを促進し、そしてMSCの生着を促進することも可能である。
【0012】
[0011]また、いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、MSCの投与は、治療中の動物において欠陥がある遺伝子の野生型コピーをMSCが所持する点で、遺伝子欠陥によって引き起こされる組織および/または臓器機能不全を修正しうると考えられる。患者(ヒトを含む動物)へのMSCの投与は、疾患によって影響を受ける組織および/または臓器への、野生型遺伝子を所持する細胞の生着を生じる。生着MSCは、局所環境にしたがって分化可能である。分化に際して、MSCは、周囲の組織では欠陥があるかまたは周囲の組織には存在しない、タンパク質の野生型を発現しうる。欠陥組織および/または臓器内のドナーMSCの生着および分化は、組織および/または臓器機能を修正しうる。
【0013】
[0012]当業者に認識されるであろうように、治療される動物では欠陥がある遺伝子の野生型コピーをMSCが含有するように、MSCを遺伝子修飾してもよい。あるいは、例えば、ドナーMSCが治療中の動物では欠陥がある遺伝子の内因性野生型を有するならば、ドナーMSCの遺伝子形質導入は必要でない可能性もある。したがって、組織および/または臓器機能の修正は、こうした野生型遺伝子(単数または複数)の存在から生じると考えられる。
【0014】
[0013]さらに、MSCを野生型遺伝子送達のビヒクルとして使用すると、突然変異した場合に治療されるべき遺伝子疾患の発展につながる、すべての遺伝子の正常なコピーを提供可能である。これは、(1)遺伝子欠陥(単数または複数)が同定されているかどうか、(2)疾患の発展に、遺伝子(単数または複数)の突然変異型の貢献が知られているかどうか、あるいは(3)疾患が、単一の遺伝子突然変異または遺伝子突然変異の組み合わせから生じるかどうかにかかわらず達成されると考えられる。機能しないと疾患の発展に寄与するタンパク質の正常型が発現されると、疾患によって損なわれた組織の機能が改善または修正されうる。
【0015】
[0014]一般的に、本技術の方法を通じて治療しようとする遺伝子疾患または障害は、少なくとも1つの炎症組織または臓器によって特徴付けられる遺伝子疾患または障害であるが、他の遺伝子疾患および障害もまた治療してもよい。本明細書に記載する技術にしたがって治療可能な遺伝子疾患または障害には、限定されるわけではないが、嚢胞性線維症、多発性嚢胞腎疾患、ウィルソン病、筋萎縮性側索硬化症(またはALSまたはルーゲーリック病)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、ゴーシェ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ツェルウェガー症候群、自己免疫多腺性症候群、マルファン症候群、ウェルナー症候群、副腎白質ジストロフィー(またはALD)、メンケス症候群、悪性小児性大理石骨病、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症(またはSMA)、またはグルコース・ガラクトース吸収不良が含まれる。
【0016】
[0015]例えば、嚢胞性線維症(CF)は、肺、膵臓および他の臓器における分泌細胞の機能障害によって特徴付けられる遺伝子障害である。これらの細胞における分泌欠陥は、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の機能するコピーが欠けていることによって引き起こされる。CFTR遺伝子における突然変異の結果、肺に、異常に粘度が高く粘着性がある粘液裏層が現れ、これが気道を塞ぎ、そして命を脅かす感染につながる。また、他の合併症の中でもとりわけ、膵臓において粘度の高い分泌物があるために、消化酵素が腸に到達することが出来ず、体重増加が劣る。
【0017】
[0016]いくつかの態様において、本明細書に記載する本技術にしたがったMSC投与を使用して、疾患によって影響を受ける組織に、野生型(正常)CFTR遺伝子を提供することによって、CF症状を治療することも可能である。全身に送達されたMSCの肺への局在は、循環流経路、および炎症組織へのMSCの遊走反応の両方によって達成されると考えられる。CF患者は、典型的には、肺の頻繁な緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染に苦しむ。シュードモナス属感染および回復を何度も繰り返す間に、炎症および瘢痕が伴う。CF患者の肺における炎症マーカーには、MSC補充を促進することが知られるケモカインである、TNF−αおよびMSP−1が含まれる。
【0018】
[0017]したがって、さらに、罹患組織内への一体化(integrated)後、MSCは局所環境にしたがって分化し(成熟し)、そして機能的に正常なCFTRタンパク質を産生し始めると考えられる。タンパク質の活性型を含有する細胞が存在すると、CF組織で観察される分泌障害が改善または修正されうる。MSC送達はまた、CF患者(すなわちヒトを含む動物)の肺における線維症の進行および瘢痕拡大も制限しうる。
【0019】
[0018]ウィルソン病は、銅輸送の遺伝子障害であり、肝臓、脳、目および他の部位に銅が集積し、そして毒性が生じると考えられる。ウィルソン病患者の肝臓は、胆汁内に正しく銅を放出しない。ATP7B遺伝子における欠陥がウィルソン病の症状の原因である。
【0020】
[0019]肝臓に銅が集積すると、炎症および線維症によって特徴付けられる組織損傷が生じる。ウィルソン病の炎症反応は、MSCが損傷組織に補充されるのを促進することが知られるケモカインであるTNF−αを伴う。したがって、全身送達MSCは、ウィルソン病患者において、炎症肝臓領域に遊走すると考えられる。生着すると、MSCは分化して肝細胞を形成し、そしてATP7B遺伝子の正常なコピーの発現および機能するATP7Bタンパク質の産生を開始する。したがって、その結果、外因性に送達されたMSCに由来する肝細胞は、正常な銅輸送を実行し、それによって、肝臓における過剰な銅集積を減少させるかまたは軽減しうる。MSCが位置特異的に成熟することによって、脳および目における銅の蓄積もまた減少しうる。これらの組織における銅蓄積の減少は、MSC療法によって治療された患者において、ウィルソン病の症状を回復させうる。
【0021】
[0020]筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病)は、脊髄および脳における運動ニューロン細胞の進行性変性によって特徴付けられる神経学的障害であり、最終的に、麻痺および死を生じる。SOD1遺伝子(またはALS1遺伝子)は、家族性ALSの多くの症例と関連する(例えば、Nature, vol. 362:59−62を参照されたい)。やはり、いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、SOD1によってコードされる酵素は、スーパーオキシドラジカルを無害な物質に変換することによって、スーパーオキシドラジカルを除去すると考えられる。SOD1の作用に欠陥があると、スーパーオキシドラジカルが過剰なレベルとなるため、細胞死が生じる。したがって、この酵素におけるいくつかの異なる突然変異はすべてALSを生じ、確認するのが困難な該疾患の正確な分子の原因となる。突然変異した場合にALSの開始に寄与する他の既知の遺伝子には、ALS2(Nature Genetics, 29(2):166−73.)、ALS3(Am J Hum Genet, 2002 Jan; 70(1):251−6.)およびALS4(Am J Hum Genet. June; 74(6).)が含まれる。
【0022】
[0021]ALSに対する感受性に寄与するいくつかの現在同定されていない遺伝子があると推測されている。これは非家族性ALSの患者(例えばヒト患者)の場合に特に当てはまる。したがって、本技術の使用および方法論にしたがって、MSC治療によって、ALS患者にこれらの遺伝子の正常なコピーが提供されることが可能であると考えられ、これは、ドナーMSCを健康なドナーから得ることが可能であり、そしてALSの発展を生じる突然変異が稀であるためである。
【0023】
[0022]その結果、本技術にしたがって、野生型遺伝子送達のためのビヒクルとしてMSCを使用すると、突然変異した場合にALSの発展につながる遺伝子すべての正常なコピーを提供することも可能であると考えられる。これは、(1)遺伝子欠陥(単数または複数)が同定されているかどうか、(2)ALSの発展に、遺伝子(単数または複数)の突然変異型の貢献が知られているかどうか、そして(3)該疾患が、単一の遺伝子突然変異または遺伝子突然変異の組み合わせから生じているかどうかにかかわらず当てはまる。機能しないとALSの発展に寄与するタンパク質の正常型が発現されると、ALS患者において、筋機能が回復しうる。
【0024】
[0023]筋ジストロフィーは、随意筋の進行性萎縮を伴い、最終的に肺機能を調節する筋肉に影響を及ぼす疾患である。デュシェンヌ型およびベッカー型筋ジストロフィーはどちらも、タンパク質・ジストロフィンをコードする遺伝子中の突然変異によって引き起こされる。より重度の疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、正常なジストロフィン・タンパク質が存在しない。より穏やかなベッカー型筋ジストロフィーでは、ある程度の正常なジストロフィンが作製されるが、不十分な量でしかない。
【0025】
[0024]ジストロフィンは、内部細胞骨格を形質膜に連結することによって、筋細胞に構造的完全性を与える。ジストロフィンを欠く筋細胞またはジストロフィンが不十分な量しかない筋細胞はまた、比較的透過性でもある。細胞外構成要素は、これらのより透過性の細胞に進入し、これが、筋細胞が破裂しそして死亡するまで内圧を増加させることもありうる。続く炎症反応が損傷を増大させうる。筋ジストロフィーにおける炎症仲介因子には、MSCが損傷組織に遊走するのを促進することが知られるサイトカインであるTNF−α(Acta Neuropathol LBerl)., 2005 Feb; 109(2):217−25. Epub 2004 Nov 16)が含まれる。
【0026】
[0025]したがって、本技術にしたがった、正常なジストロフィン遺伝子を含有するMSCの送達は、以下の方式で、デュシェンヌ型およびベッカー型筋ジストロフィーの症状を治療すると考えられる。変性した筋肉へのMSCの遊走は、局所環境にしたがったMSC分化を生じて、この場合には筋細胞を形成しうる。分化して筋肉を形成したMSCは、これらの細胞が正常なジストロフィン遺伝子を所持するため、正常なジストロフィン・タンパク質を発現すると考えられる。MSC由来筋細胞は、内因性筋細胞と融合可能であり、正常なジストロフィン・タンパク質を多核細胞に提供する。分化しているヒト筋芽細胞と、ジストロフィンを発現しているMSCの融合の成功は、「全長ジストロフィンを異所性に発現しているヒト間葉系幹細胞は、細胞融合によって、デュシェンヌ型筋ジストロフィー筋管を補完しうる」(Goncalvesら、Human Molecular Geneticsにおいて2005年12月1日にオンラインで公開されたAdvance Access)と題される論文において報告されてきている。変性した筋肉内に生着したMSCの度合いが大きければ大きいほど、筋組織は、構造的および機能的に正常な筋肉により緊密に似る可能性が高い。
【0027】
[0026]ゴーシェ病は、グルコセレブロシドと呼ばれる特定の種類の脂肪を通常は分解するタンパク質である、酵素・グルコセレブロシダーゼを産生する能力がないことから生じる。ゴーシェ病では、グルコセレブロシドは、肝臓、脾臓、および骨髄に集積する。
【0028】
[0027]ゴーシェ病は、例えば、本技術の方法論にしたがって、グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子の正常なコピーを宿するMSCの送達によって治療可能である。グルコセレブロシド集積によって引き起こされる組織損傷は、損傷領域へのMSCの遊走を引き起こす炎症反応を生じる。ゴーシェ病における炎症反応は、MSCを組織損傷領域に補充することが知られるサイトカインであるTNF−αを伴う(Eur Cytokine Netw., 1999 Jun; 10(2):205−10)。損傷組織内に生着すると、MSCは、局所環境の手がかりにしたがって、失われた細胞型と置換するように分化しうる。MSC由来細胞は、こうした細胞によって活性グルコセレブロシダーゼが発現されうるため、グルコセレブロシドを正常に分解する能力を有しうる。したがって、静脈内送達されたグルコセレブロシダーゼ酵素は、ゴーシェ病の進行の遅延またはゴーシェ病の症状の逆転にさえも有効である(Biochem Biophys Res Commun., 2004 May 28; 318(2):381−90.)。野生型MSCがグルコセレブロシダーゼを産生し、これが、該酵素を産生するMSC由来細胞に外部から利用可能であるかどうかは知られていない。もしそうであるならば、外因性由来MSCによるグルコセレブロシダーゼ発現は、周囲組織においてグルコセレブロシド・レベルを減少させるであろう。しかし、この方式でのゴーシェ病のためのMSC療法の利点は、グルコセレブロシドを分解する能力を有する細胞の寄与だけでなく、これらの細胞が隣接する細胞にもまたグルコセレブロシダーゼを提供して、天然組織におけるグルコセレブロシドの減少を生じることであると考えられる。
【0029】
[0028]パーキンソン病(PD)は、運動系障害であり、ドーパミン産生脳細胞の喪失を生じる。PDの主な症状は、振戦、肢および体幹の硬直、動作緩慢、ならびに平衡および協調の障害である。疾患の古典的な病的特徴は、レビー小体と呼ばれる封入体が、脳の多くの領域中に存在することである。
【0030】
[0029]一般的に、PDに対する遺伝子構成要素があり、そして多様な別個の突然変異が疾患開始を生じうると考えられる。パーキンソン病の少なくともある程度の症例に関与していると考えられる1つの遺伝子は、タンパク質・アルファ−シヌクレインをコードするASYNである。レビー小体斑におけるアルファ−シヌクレインの集積は、パーキンソン病およびアルツハイマー病の特徴である。
【0031】
[0030]しかし、アルファ−シヌクレイン集積が、パーキンソン病における神経損傷の根本的原因であるのか、または神経細胞死の結果であるかはまだ明らかではない。アルファ−シヌクレイン構築が神経変性の主な原因であるならば、1つの可能性は、アルファ−シヌクレイン損傷の発現または集積を制御するのに関与する1以上のさらなるタンパク質が、年齢とともに減退していくというものである。MSC療法がPDを治療しうる1つの機構は、1以上のこうした制御タンパク質の更新された供給源を提供することを通じる。
【0032】
[0031]疾患の遺伝的基礎にかかわらず、本技術にしたがってMSCをPD患者に送達すると、ドーパミン産生細胞の置換が生じうると考えられる。ニューロン細胞死から生じる炎症は、脳の罹患領域への直接のMSC遊走を引き起こすはずである。
【0033】
[0032]アルツハイマー病は、事実および事象を記憶する能力、そして最終的に友人および家族を認識する能力の進行性の喪失を生じる。アルツハイマー病患者の脳における病理は、アミロイド−ファミリー・タンパク質によって取り囲まれ、断片化された脳細胞で構成される病変の形成によって特徴付けられる。
【0034】
[0033]本技術にしたがった、プレセニリン−1(PSI)、プレセニリン−2(PS2)および場合によって、まだ同定されていない他の遺伝子の正常なコピーを含有するMSCの送達は、アルツハイマー病の合併症を治療すると考えられる。該疾患に特徴的な脳細胞断片化から生じる炎症は、MSCを誘引して、その領域に遊走させる。次いで、MSCは、損傷神経組織内に位置する場合、神経細胞型に分化しうる。さらに、MSCによって発現されそして分泌されるメタロプロテイナーゼは、これらの斑内のアミロイドタンパク質および他のタンパク質型を分解することによって、アルツハイマー病患者の脳で見られる特徴的な病変が減少する。アミロイド斑の消散は、MSCが分化する機会および内因性幹細胞がニューロンを形成する機会を提供しうる。
【0035】
[0034]ハンチントン病(HD)は遺伝性の変性性神経疾患であり、運動調節の減少、知的能力の喪失および感情障害を導く。ハンチントン・タンパク質をコードする遺伝子であるHD遺伝子中の突然変異は、最終的に基底神経節および脳の大脳皮質における神経変性を生じる。
【0036】
[0035]HD遺伝子における突然変異がどのようにハンチントン病を生じるかは現在明らかではない。しかし、神経変性に関与する炎症は、MSC補充を導く環境を提供する。これらの領域にMSCが生着すると、局所環境にしたがった分化が導かれ、これには、HD遺伝子の正常型を所持するニューロンを形成するMSCの成熟が含まれる。したがって、MSC療法の1つの効果は、神経変性によって失われたニューロンを置換することでありうる。本技術の実施にしたがった送達方法論は、こうした結果および/または転帰を達成すると考えられる。
【0037】
[0036]ハンチントン病の開始および/または進行に寄与する要因には、ハンチントン・タンパク質の産生レベルを調節する制御タンパク質の年齢関連減少が含まれうる。したがって、MSCの投与はまた、こうした制御構成要素の利用可能性を回復すると考えられる。
【0038】
[0037]シャルコー・マリー・トゥース症候群(CMT)は、足、下肢、手、および前腕の筋肉の緩慢な進行性変性、ならびに肢、指、およびつま先の感覚の穏やかな喪失によって特徴付けられる。
【0039】
[0038]突然変異した際にCMTを生じる遺伝子は、シュワン細胞およびニューロンにおいて発現される。いくつかの異なるおよび別個の突然変異、または突然変異の組み合わせがCMTの症状を生じうる。CMT突然変異の遺伝の異なるパターンもまた知られる。CMTの最も一般的な型の1つは1A型である。1A型CMTで突然変異している遺伝子は、タンパク質PMP22をコードすると考えられ、これは、神経コンダクタンスに重要な脂肪性の鞘であるミエリンでの末梢神経のコーティングに関与する。CMTの他の型には、1B型自己劣性およびX連鎖が含まれる。
【0040】
[0039]例えば1A型CMT遺伝子、1B型CMT遺伝子および/または他の遺伝子を発現する、本技術にしたがったMSCの送達は、末梢神経のミエリン・コーティングを回復しうる。変性領域における炎症反応の構成要素には、損傷組織へのMSCホーミングを支持することが知られるサイトカインである、MCP−1(単球化学誘因タンパク質−1; J. Neurosci Res., 2005 Sep 15;81(6):857−64)の産生および分泌が伴う。変性組織の構造および機能を回復させる機構は、該疾患の促進に関与する特定の突然変異に応じるであろう。
【0041】
[0040]I型糖尿病において、免疫系が、インスリンを産生する膵臓中の細胞であるベータ細胞を攻撃する。特定の遺伝子、遺伝子変異体、およびアレルの存在が、該疾患に対する感受性を増加させうる。例えば、該疾患に対する感受性は、ヒト白血球抗原(HLA)DQB1およびDRB1の特定のアレルを所持する患者において増加する。やはり、本技術にしたがって、I型糖尿病感受性遺伝子の正常なコピーを持つドナー由来のMSCを送達すると、体がインスリンを製造しそして用いる能力が回復されうると考えられる。疾患の遺伝的基礎にかかわらず、MSCをI型糖尿病に送達すると、機能不全インスリン産生細胞の置換を生じうる。I型糖尿病患者の膵臓に存在する炎症マーカーには、MSCを誘引することが知られるケモカインであるTNF−αが含まれる。したがって、本技術を介してMSCを全身投与すると、I型糖尿病における炎症膵臓組織の領域にホーミングすることも可能である。生着すると、MSCはインスリン産生細胞に分化しうる。さらに、MSC生着は、免疫系による検出および破壊からインスリン産生ベータ細胞を保護しうる。ベータ細胞数が回復すると、I型糖尿病を回復させるかまたはその重症度を減少させることも可能である。
【0042】
[0041]本技術の実施にしたがってMSCを投与することによって治療可能な他の遺伝子疾患を以下に列挙する。
[0042]多発性嚢胞腎疾患:PKD1遺伝子の正常型を送達すると、嚢胞形成が阻害されうる。
【0043】
[0043]ツェルウェガー症候群:PXRI遺伝子の正常なコピーをMSCによって送達すると、ペルオキシソーム機能が修正され、正常な細胞脂質代謝および代謝的酸化が付与されうる。
【0044】
[0044]自己免疫多腺性症候群:ARE(自己免疫制御因子)遺伝子の正常なコピーを発現するMSCを送達し、そして/または疾患進行中に破壊された腺組織を再生することによって、この疾患を治療可能である。
【0045】
[0045]マルファン症候群:FBN1遺伝子の正常型を発現しているMSCを送達すると、フィブリン・タンパク質の産生が生じうる。フィブリンの存在は、結合組織に正常な構造的完全性を付与しうる。
【0046】
[0046]ウェルナー症候群:WRN遺伝子の正常型を発現しているMSCを送達すると、早期に加齢しない、組織代謝回転のための細胞供給源が提供されうる。
[0047]副腎白質ジストロフィー(ALD):ALD遺伝子の正常型を発現しているMSCを送達すると、脳において正しいニューロン・ミエリン形成が生じ、そして/または副腎の損傷領域の再生につながりうる。
【0047】
[0048]メンケス症候群:銅を吸収する能力を有する、X染色体上のまだ同定されていない単数または複数の遺伝子の正常なコピーを発現するMSCを送達すると、疾患症状が回復する可能性もある。
【0048】
[0049]悪性小児性大理石骨病:例えば、突然変異すると、悪性小児性大理石骨病の開始に寄与する遺伝子の正常なコピーをMSCが所持してもよい。これらの遺伝子には、塩素チャネル7遺伝子(CLCN7)、大理石骨病関連膜貫通タンパク質(OSTM1)遺伝子、およびT細胞免疫制御(TCIRG1)遺伝子が含まれる。MSC送達は、骨芽細胞前駆体および/または破骨細胞分化を調節する他の細胞型の前駆体として作用しうるMSCを提供することによって、骨芽細胞/破骨細胞比を修正しうる。
【0049】
[0050]脊髄小脳失調症:SCA1遺伝子の正常型を発現するMSCを送達すると、神経変性で失われた宿主ニューロンを置換するのに適切なレベルで、アタキシン−1タンパク質(SCA1遺伝子産物)を産生する新規ニューロンを形成するように分化可能な細胞が提供される。また、MSC生着が、アタキシン−1タンパク質の発現を制御するタンパク質を提供する可能性もある。
【0050】
[0051]脊髄性筋萎縮症:SMA遺伝子の正常なコピーを発現するMSCを送達すると、疾患進行中に死んだニューロンを置換する新規運動ニューロンを形成するように分化しうる細胞を提供することも可能である。
【0051】
[0052]グルコース・ガラクトース吸収不良:SGLT1遺伝子の正常なコピーを発現しているMSCを送達することによって、腸の裏打ちに渡るグルコースおよびガラクトース輸送が修正されうる。
【0052】
[0053]遺伝子の野生型コピーを含有するようにMSCを遺伝子修飾してもよいことが当業者には認識されるであろう。例えば、CFTR遺伝子、ATP7B遺伝子、SOD1遺伝子、タンパク質・ジストロフィンをコードする遺伝子、タンパク質・グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子、ASYN遺伝子、HD遺伝子、タンパク質PMP22をコードする遺伝子、PKD1遺伝子、PXRI遺伝子、ARE遺伝子、FBN1遺伝子、WRN遺伝子、ALD遺伝子、CLCN7遺伝子、OSTM1遺伝子、TCIRG1遺伝子、SCA1遺伝子、SMA遺伝子、またはSGLT1遺伝子などの遺伝子、またはその一部、組み合わせ、誘導体、あるいはその代替物を含有するように、MSCを遺伝子修飾してもよい。当業者によってさらに認識されるように、1以上の外因性遺伝子を含有するようにMSCを遺伝子修飾してもよい。トランスフェクションおよび形質転換を含む、当該技術分野に周知の方法および技術によって、こうした遺伝子修飾を達成してもよい。
【0053】
[0054]しかし、本明細書に記載しそして請求する本技術の範囲は、いかなる特定の遺伝子疾患または障害の治療にも限定されないものであることが理解されるものとする。むしろ、当業者には、本技術が、MSC送達において、多様な異なる方式で利用可能であることが認識されるはずである。
【0054】
[0055]したがって、本技術の少なくとも1つの側面にしたがって、間葉系幹細胞を宿主組織(ヒトまたは動物)に再定植(repopulating)させるための1以上の方法を提供する。該方法は、宿主において、内因性間葉系幹細胞集団を減少させ、そして間葉系幹細胞を宿主組織に再定植させるのに有効な量で、単離外因性間葉系幹細胞を宿主に投与する工程を含む。したがって、再定植組織は、外因性MSCおよび内因性MSCの混合物を含んでもよい。あるいは、再定植組織は、内因性MSCを実質的に含まなくてもよい。
【0055】
[0056]本明細書に記載する技術の別の側面にしたがって、動物(例えばヒト)において、機能不全組織の機能を改善するための1以上の方法を提供する。該方法は、機能不全組織の機能を改善するのに有効な量で、間葉系幹細胞を該動物に投与する工程を含む。間葉系幹細胞を、静脈内または骨内送達によるか、あるいは機能不全組織に直接投与するなどによって、全身投与してもよい。機能不全組織は、遺伝子欠陥ならびに/あるいは炎症、および損傷組織へのMSC遊走を促進するものを含む炎症仲介因子によって特徴付けられうる。
【0056】
[0057]本技術のさらなる側面にしたがって、動物(例えばヒト)において、機能不全組織の機能を改善するための薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、機能不全組織の機能を改善するのに有効な量で間葉系幹細胞を含む。機能不全組織は、遺伝子欠陥ならびに/あるいは炎症、および損傷組織へのMSC遊走を促進するものを含む炎症仲介因子によって特徴付けられうる。
【0057】
[0058]本側面に関する(respective)少なくとも1つの態様において、間葉系幹細胞を投与する動物は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒトおよび非ヒト霊長類を含む霊長類であってもよい。
【0058】
[0059]さらに、本技術の間葉系幹細胞(MSC)療法、方法、組成物は、一般的に、例えば、以下の順序に基づく:MSC含有組織の採取、MSCの単離および拡大、ならびに動物への、生化学的操作を伴うまたは伴わないMSCの投与。
【0059】
[0060]本技術の実施にしたがって投与される間葉系幹細胞は、均質な組成物であってもよいし、またはMSCが濃縮された混合細胞集団であってもよい。接着性の骨髄または骨膜細胞を培養することによって均質な間葉系幹細胞組成物を得てもよく、そしてユニークなモノクローナル抗体で同定される特異的細胞表面マーカーによって間葉系幹細胞を同定してもよい。間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団を得るための方法が、例えば、米国特許第5,486,359号に記載される。間葉系幹細胞の別の供給源には、限定されるわけではないが、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、軟骨膜、肝臓、腎臓、肺および胎盤が含まれる。
【0060】
[0061]本技術の実行で利用する間葉系幹細胞を、多様な方法によって投与してもよい。例えば、間葉系幹細胞を、静脈内、動脈内、腹腔内、または骨内投与によるなどで、全身投与してもよい。また、疾患によって影響を受けた組織および臓器に直接注射することによって、MSCを送達してもよい。1つの態様において、間葉系幹細胞を静脈内投与する。したがって、当業者は、MSC送達に適しており、そしてMSCに基づく療法とともに用いるのに適している多様な方式で、本明細書に記載する技術を投与してもよいことを認識するであろう。さらに、当業者は、MSCが、望ましい様式、系、または措置の構成要素または側面またはその一部であるような治療様式、系、または措置で、本技術を利用してもよいこともまた理解するであろう。
【0061】
[0062]さらに、間葉系幹細胞は、同種、自己、および異種を含む、多様な供給源由来であってもよい。
[0063]例えば、本技術の1つの態様において、ドナー間葉系幹細胞の投与前に、宿主間葉系幹細胞集団を減少させて、ドナーMSC持続を増加させる。限定されるわけではないが、部分的または全身放射線照射、ならびに/あるいは化学切除または非切除法を含む、当業者に知られる多様な手段のいずれによって、宿主間葉系幹細胞集団を減少させてもよい。この方法は、骨髄へのMSC遊走を増加させることが以前示されてきている。いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、この方法は、本技術の実施にしたがって、ドナーMSC生着(組織一体化)のための開放されたニッチを提供すると考えられる。
【0062】
[0064]別の限定されない態様において、宿主間葉系幹細胞集団は、限定されるわけではないが、本明細書において上に列挙するものを含む、当業者に知られる任意の多様な手段によって減少される。次いで、ドナーMSCの投与によって、宿主組織に再定植させてもよい。ドナーMSCの投与後、宿主組織MSC集団は、50%より多くのドナー細胞または外因性に得られる細胞を含んでもよい。あるいは、宿主組織MSC集団は、80%より多くのドナー細胞または外因性に得られる細胞を含んでもよい。あるいは、実質的にすべての再定植宿主組織MSCは、ドナー起源であってもまたは外因性に得られてもよい。
【0063】
[0065]本技術にしたがって、同種ドナーMSCを投与した後、宿主組織MSC集団は、宿主由来MSCおよびドナー由来MSCの混合物であってもよい。あるいは、宿主組織MSC集団は、宿主由来MSCまたは内因性MSCを実質的に含まなくてもよい。
【0064】
[0066]1つの限定されない態様において、ドナーMSCの投与前に、宿主を部分的または全身放射線照射に供する。照射は単回線量または多数回用量で投与してもよい。例えば、いくつかの態様において、照射は、約8グレイ(Gy)〜約12グレイ(Gy)の総量で投与される。別の態様において、照射は、約10Gy〜約12Gyの総量で投与される。投与される照射の量、および投与される線量の回数は、患者の年齢、体重、および性別、ならびに投与時点での患者の全身健康状態を含む、多様な要因に応じる。
【0065】
[0067]他の限定されない態様において、宿主MSC集団が、部分的または全身放射線照射ならびに/あるいは化学切除または非切除法を通じて減少する場合、宿主の造血系を再構築するため、MSCとともに、造血幹細胞を投与する。造血幹細胞は、限定されるわけではないが、骨髄、臍帯血、または末梢血を含む、多様な供給源に由来してもよい。投与すべき造血幹細胞の量は、患者の年齢、体重、および性別、患者に行われる放射線照射および/または化学切除または非切除治療、患者の全身健康状態、ならびに造血幹細胞の供給源を含む、多様な要因に応じる。
【0066】
[0068]さらにさらなる態様において、ドナーMSCは宿主と同種であってもよい。ドナーMSCは、宿主とマッチするかまたはミスマッチするヒト白血球抗原(HLA)であってもよい。ドナーMSCは、宿主に対して部分的にHLAミスマッチであってもよい。例えば、ドナーおよび宿主は、非同一同胞であってもよい。いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、宿主に対して部分的にHLAミスマッチであるドナーMSCを含む同種ドナーMSCは、患者にドナー造血幹細胞をMSCと同時に投与する特定の状況下で、ドナーMSCの生着率および持続を増加させうると考えられる。造血幹細胞の同時投与は、上述のような患者の内因性MSC集団を減少させる処置後、血液および免疫系を再構築するために必要でありうる。供与されたMSCおよび供与された造血幹細胞に対して、実質的に類似でない表現型を有する患者に、互いに対して同一であるかまたは実質的に類似である免疫表現型を有するMSCおよび造血幹細胞を投与すると、ドナーMSCの生着および持続が促進されうる。
【0067】
[0069]例えば、ドナーMSCおよびドナー造血幹細胞の両方を、レシピエントのHLAマッチ同胞から得てもよい。あるいは、ドナーMSCおよびドナー造血幹細胞を、互いに対して実質的に類似の免疫表現型を有するが、患者に対して実質的に類似でない免疫表現型を有する2供与個体から得る。どちらの場合でも、供与造血幹細胞から得られる再構築免疫系は、供与MSCと反応してはならない(供与MSCの数を減少させてはならない)し、または供与MSCの数の減少に対して限定された効果しか持ってはならない。これらの条件下で、供与MSCは、宿主MSCよりも生存上の利点を有し、それによって、治療患者において、宿主MSCに対するドナー由来MSCの比が増加しうる。
【0068】
[0070]本技術の少なくとも1つの態様において、造血幹細胞を含む骨髄細胞は、患者に対して自己である。さらなる態様において、自己骨髄細胞を、体重kgあたり、1x10細胞〜約1x10細胞の量で投与する。
【0069】
[0071]他の態様において、造血幹細胞を含む骨髄細胞は、患者に対して同種である。ドナー骨髄細胞は、宿主に対して、HLAマッチまたはHLAミスマッチであってもよい。ドナー骨髄細胞は、宿主に対して部分的にHLAミスマッチであってもよい。例えば、ドナーおよび宿主は、非同一同胞であってもよい。さらなる態様において、同種骨髄細胞を、体重kgあたり、1x10細胞〜約3x10細胞の量で投与する。
【0070】
[0072]さらに、本技術にしたがって利用する間葉系幹細胞を、動物(例えばヒト)において遺伝子疾患または障害を治療するのに有効な量で投与する。少なくとも1つの態様において、体重キログラム(kg)あたり約0.5x10MSC〜体重kgあたり約10x10MSCの量で間葉系幹細胞を投与する。さらに他の態様において、体重kgあたり約8x10MSCの量で間葉系幹細胞を投与する。さらなる態様において、体重kgあたり約1x10MSC〜体重kgあたり約5x10MSCの量で間葉系幹細胞を投与する。さらにさらなる態様において、体重kgあたり約2x10MSCの量で間葉系幹細胞を投与する。あるいは、また、約35kg以上の体重の個体には、注入当たり200x10、約35kg未満であるが約10kg以上の体重の個体には、50x10、そして約10kg未満であるが約3kg以上の体重の個体には、20x10MSCの均一用量で、間葉系幹細胞を投与してもよい。
【0071】
[0073]さらに、間葉系幹細胞を1回投与してもよいし、または約3日〜約7日の定期的間隔で、間葉系幹細胞を2回以上投与してもよいし、または約1ヶ月〜約12ヶ月の定期的間隔で、間葉系幹細胞を長期間、すなわち動物(例えばヒト)の生涯にわたって投与してもよい。投与すべき間葉系幹細胞の量および投与頻度は、患者(ヒトを含む動物)の年齢、体重、および性別、治療しようとする遺伝子疾患または障害、ならびにその度合いおよび重症度を含む、多様な要因に応じる。
【0072】
[0074]本技術の別の側面にしたがって、動物(例えばヒト)において、遺伝子疾患または障害を治療するための薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、動物において、遺伝子疾患または障害を治療するのに有効な量の間葉系幹細胞を含む。遺伝子疾患または障害は、動物の炎症組織または臓器の少なくとも1つによって特徴付けられてもよい。
【0073】
[0075]許容されうる薬学的キャリアーと組み合わせて、本技術のこの側面に関して、間葉系幹細胞を投与してもよい。例えば、注射用の薬学的に許容されうる液体媒体中の細胞懸濁物として、間葉系幹細胞を投与してもよい。少なくとも1つの態様において、薬学的に許容されうる液体媒体は生理食塩水溶液である。生理食塩水溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびヒト血清アルブミンなどのさらなる物質を含有してもよい。
【0074】
[0076]本明細書に記載する技術およびその利点は、ここで、以下の実施例を参照することによって、よりよく理解されるであろう。これらの実施例は、本技術の特定の態様を記載するために提供される。これらの特定の実施例を提供することによって、出願者(ら)は、本技術の範囲および精神をいかなる方式で限定することも意図しない。当業者は、本明細書記載の技術の完全な範囲には、本明細書に付随する請求項によって定義される主題、およびこれらの請求項の任意の改変、修飾、または同等物が含まれることを理解し、そして認識するであろう。
【実施例】
【0075】
実施例1−嚢胞性線維症の治療のための間葉系幹細胞
[0077]患者にドナーMSCを送達する前に、全身放射線照射ならびに/あるいは化学切除または非切除法の使用を通じて宿主MSC集団を減少させることによって、ドナーMSC持続の増加を達成してもよい。この方法は、ドナーMSC生着(組織一体化)のための開放されたニッチを提供し、そして骨髄へのMSC遊走を増加させることが以前に示されてきている。患者の骨髄中の宿主MSCの数を減少させるために用いる方法によって破壊される可能性もある患者の造血系を再構築するために、MSC注入に加えて、骨髄細胞または造血幹細胞の送達もまた必要であろう。
【0076】
[0078]静脈内注入または骨髄腔への直接注射(骨内注射)のいずれかによってMSCを送達してもよい。静脈内MSC送達は、レシピエントの骨髄内のMSC一体化の成功には十分でありうるが、骨内注射はMSC生着持続を増進しうる。やはり、いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、迅速にドナーMSCが生着すれば、宿主MSC減少処置後に残った天然MSCいずれかが拡大する前に、外因性に得られた集団がよく確立される可能性が増加するはずである。
【0077】
[0079]骨髄移植と同時に静脈内(IV)または骨内(IO)MSC送達いずれかを行うと、切除法後の生着が生じるという仮説を試験するため、放射線照射後の骨髄移植のラットモデルを用いている。また、2つのMSC送達法の相対的成功の予備的な比較測定値が得られるようにプロトコルを設計した。
【0078】
[0080]第0日、12匹の雄Lewisラットに2分割の5.0グレイ(Gy)を放射線照射した。放射線照射分割は、4時間離した。翌日、さらに8〜10匹の雄Fisherラットから、骨髄細胞(BMC)を調製した。注射のため、総体積150μl中、全部で30x10BMCおよび1x10MSCを用いた。後の検出のために遺伝子マーカーであるヒト胎盤アルカリホスファターゼ(hPAP)を所持するMSCを方法で用いた。この研究の実験設計を以下の表1に示す。
【0079】
[0081]
表1.研究設計、実験群による分配
【0080】
【表1】

放射線照射は2分割の5.0Gyに分けられた。放射線照射分割は、4時間離した。
[0082]第1群(対照)の動物には放射線照射のみを与えた。第2群の動物には、膝蓋靱帯を通じて、左の脛骨頭部内にMSCおよび骨髄細胞を直接注射した。第3群の動物には、MSCおよび骨髄細胞を静脈内注射した。
【0081】
[0083]動物の体重を測定し、そして14日間の期間にわたって毎日観察し、そして頭を上下する(bobbing)および/または身をよじる(writhing)などの疼痛の明らかな徴候を示す動物はいずれも、ブプレノルフィンで治療した。6mlの柔らかい日常の餌に、0.5mg/kg(の食品)の濃度で、ブプレノルフィンを投与した。動物が体重15%を喪失した時点でこの治療を開始し、そして計画された安楽死時まで続けた。
【0082】
[0084]第14日、すべての動物を屠殺し、そして各脛骨から骨髄を収集した。骨髄試料を試験管内に収集し、密封し、そしてアッセイ用にプレーティングするまで、氷中に詰めた。
【0083】
[0085]次いで、各試料由来の骨髄を、コロニー形成単位アッセイのためにプレーティングした。各コロニーの形成が、単一のMSCの増殖から得られるように、細胞を低密度でプレーティングした。プレーティングしたMSCを12日間増殖させた。コロニー増殖のこの期間の後、まず、hPAP遺伝子の発現に関して、プレートを染色した。外因性に得たMSCコロニーは、プレート上、ピンクに染色されたコロニーとして同定された(図4〜6の略図を参照されたい)。次いで、プレートをエバンスブルーで染色し、この染色剤は、内因性MSCまたは外因性MSC由来であるかにかかわらず、すべてのコロニーを濃い紫に染色する(図1〜3の略図を参照されたい)。次いで、外因性送達由来のMSCの割合を決定してもよい。生じるデータは、IVまたはIO送達がドナー由来細胞の生着を確立するのにより効率的であるかどうかに関して、最初の評価を提供する。
【0084】
[0086]移植後、第14日、第2群および第3群の動物の骨髄由来の間葉系幹細胞によって形成されたコロニーのほぼ100%は、hPAP染色によって立証されるように、外因性に得たドナー細胞で構成された(図4〜6の略図を参照されたい)。あるとしてもわずかのコロニーがレシピエント由来細胞を含んだ(図1〜3および4〜6の略図を比較されたい)。対照的に、第1群の動物の骨髄由来の間葉系幹細胞によって、レシピエント由来細胞で構成されるコロニーが形成された(図1〜3の略図を参照されたい)。まったく驚くべきことに、IVおよびIO MSC送達のどちらも高率の初期生着を生じる。さらに、MSCおよびBMC(どちらも互いに対してHLA同一であるが、ドナーに対して部分的にHLAミスマッチである)のIOおよびIV送達は、内因性またはレシピエント由来MSCの骨髄への再定植を抑制するかまたは阻害するようである。したがって、まったく予期せぬことに、内因性間葉系幹細胞の全集団までもが、外因性に得た間葉系幹細胞によって置換されうることが見出された。
【0085】
[0087]将来の研究は、動物モデルにおける、移植されたMSCの持続および/またはホーミング能に関するさらなる研究、あるいは遺伝子疾患のヒト患者における試験開始を伴ってもよい。動物モデルにおける将来の研究には、後の時点で、移植後に屠殺される実験被験体が含まれてもよい。この方式では、MSC生着の持続が決定される。これらの後の実験のためのMSC送達法は、上述のものと類似のパイロット研究によって決定されるであろう。持続するMSC生着を達成するための方法を上述のラットモデルで開発した後、線維性肺傷害のラットモデルを開発する。MSC移植片を得たラットに、肺への局所照射を行う。放射線照射後多様な時点で動物を屠殺し、そしてPCRまたは免疫組織化学によって、MSCの存在に関して肺を分析する。追跡可能なMSCを実験被験体に投与し、肺への局所照射を行った上述のラットモデルは、嚢胞性線維症で起こる線維性肺傷害の代替である。このラットモデルにおける放射線照射傷害後の肺へのMSCの有意な遊走は、MSCが嚢胞性線維症患者で観察される線維性肺傷害の治癒に関与しうることを示唆する。
【0086】
[0088]以下の方式で、遺伝子疾患のための治療としてのMSC集団置換の有効性をヒト患者において評価してもよい。(この例では)嚢胞性線維症の患者に、3.75%体積/体積のDMSOおよび1.875%重量/体積のヒト血清アルブミンを添加したPlasmaLyteA生理食塩水溶液(Baxter)中のMSC(2.5x10細胞/ml)を静脈内注入または骨内注射する。体重キログラムあたり総量200万のMSCが患者に投与されるまで、注入を続ける。1ヶ月間隔で治療措置を反復する。肺活量測定によって肺機能を評価する。臨床症状にさらなる改善がまったく観察されなくなるまで治療を続ける。
【0087】
[0089]本明細書において先に議論するように、嚢胞性線維症を患う患者において、線維性肺傷害の根底にある原因は、遺伝子欠陥である。遺伝的に正常な個体からMSCを得て、そして嚢胞性線維症患者に移植すると、線維性傷害と関連する炎症シグナルに反応して、移植された細胞が肺に遊走した結果、疾患症状の進行が阻害されるか、または臨床徴候の逆転さえ起こりうる。改善の度合いは、肺の組織裏打ちの置換レベルによって決定されるであろう。したがって、一般の当業者は、他の疾患状態および障害の中でも、嚢胞性線維症のための治療様式、系または措置としての、本技術の重要性を認識しうる。
【0088】
実施例2−ウィルソン病の治療のための間葉系幹細胞
[0090]以下の方式で、ヒト患者において、ウィルソン病のための治療としてのMSC集団置換の有効性を評価してもよい。患者に、3.75%体積/体積のDMSOおよび1.875%重量/体積のヒト血清アルブミンを添加したPlasmaLyteA生理食塩水溶液(Baxter)中のMSC(2.5x10細胞/ml)を静脈内注入または骨内注射する。体重キログラムあたり200万のMSCが患者に投与されるまで、注入を続ける。
【0089】
[0091]1ヶ月間隔で治療措置を反復して、血清セルロプラスミン、血液および尿中の銅レベル、ならびに肝臓画像(すなわち腹部X線またはMRI)を測定することによって、臨床症状を監視する。臨床症状にさらなる改善がまったく観察されなくなるまで治療を続ける。ここでもまた、本明細書記載の技術は、ウィルソン病の予防、治療、または治癒において、有益な転帰を提供可能な治療様式、系または措置を提供すると考えられる。
【0090】
実施例3−筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療のための間葉系幹細胞
[0092]以下の方式で、ヒト患者において、筋萎縮性側索硬化症のための治療としてのMSC集団置換の有効性を評価してもよい。患者に、3.75%体積/体積のDMSOおよび1.875%重量/体積のヒト血清アルブミンを添加したPlasmaLyteA生理食塩水溶液(Baxter)中のMSC(2.5x10細胞/ml)を静脈内注入または骨内注射する。体重キログラムあたり200万のMSCが患者に投与されるまで、注入を続ける。
【0091】
[0093]1ヶ月間隔で治療措置を反復する。神経学的試験、筋肉活性を試験する筋電図(EMG)、および神経機能を評価する神経伝導速度(NCV)試験によって臨床症状を監視する。運動機能にさらなる改善がまったく観察されなくなるまで治療を続ける。
【0092】
[0094]本技術はここで、関連するいかなる当業者も本技術を実施することが可能であるようにするため、完全で、明らかで、簡潔でそして正確な表現で記載される。前述の記載は、本発明の好ましい態様を記載し、そして付随する請求項に示すような本技術の精神および範囲から逸脱することなく、これを修飾してもよいことが理解されるものとする。さらに、公開特許出願、保管機関受入番号、およびデータベース受入番号を含むすべての特許、刊行物の開示は、各特許、刊行物、保管機関受入番号、およびデータベース受入番号が具体的にそして個々に本明細書に援用されるのと同じ度合いで、本明細書に援用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因性間葉系幹細胞を宿主組織に再定植(repopulating)させるための方法であって:
宿主組織の内因性間葉系幹細胞集団を減少させ;そして間葉系幹細胞を宿主組織に再定植させるのに有効な量で、単離外因性間葉系幹細胞を投与する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
宿主組織が骨髄である、請求項1の方法。
【請求項3】
内因性間葉系幹細胞集団が、骨髄間葉系幹細胞集団である、請求項2の方法。
【請求項4】
宿主に外因性骨髄細胞を投与する工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項5】
骨髄細胞が同種である、請求項4の方法。
【請求項6】
骨髄細胞がHLAマッチである、請求項5の方法。
【請求項7】
骨髄細胞が部分的にHLAミスマッチである、請求項5の方法。
【請求項8】
骨髄細胞が自己のものである、請求項4の方法。
【請求項9】
再定植組織が外因性間葉系幹細胞および内因性間葉系幹細胞を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
再定植宿主組織が内因性間葉系幹細胞を実質的に含まない、請求項1の方法。
【請求項11】
外因性間葉系幹細胞が同種のものである、請求項1の方法。
【請求項12】
外因性間葉系幹細胞が、HLAマッチであるかまたは部分的にHLAミスマッチである、請求項11の方法。
【請求項13】
外因性間葉系幹細胞が自己のものである、請求項1の方法。
【請求項14】
外因性間葉系幹細胞が遺伝子修飾されている、請求項1の方法。
【請求項15】
外因性間葉系幹細胞が、CFTR遺伝子、ATP7B遺伝子、SOD1遺伝子、タンパク質・ジストロフィンをコードする遺伝子、タンパク質・グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子、ASYN遺伝子、HD遺伝子、タンパク質PMP22をコードする遺伝子、PKD1遺伝子、PXRI遺伝子、ARE遺伝子、FBN1遺伝子、WRN遺伝子、ALD遺伝子、CLCN7遺伝子、OSTM1遺伝子、TCIRG1遺伝子、SCA1遺伝子、SMA遺伝子、およびSGLT1遺伝子からなる群より選択される遺伝子を含有するように、遺伝子修飾されている、請求項14の方法。
【請求項16】
機能不全組織の機能を改善する方法であって、機能不全組織の機能を改善するのに有効な量で、単離同種間葉系幹細胞を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項17】
機能不全組織が遺伝子欠陥によって特徴付けられる、請求項16の方法。
【請求項18】
機能不全組織が炎症によって特徴付けられる、請求項16の方法。
【請求項19】
同種間葉系幹細胞が、静脈内投与によって投与される、請求項16の方法。
【請求項20】
同種間葉系幹細胞が、骨内投与によって投与される、請求項16の方法。
【請求項21】
同種間葉系幹細胞が、体重キログラムあたり約0.5x10細胞〜体重キログラムあたり約10x10細胞の量で投与される、請求項16の方法。
【請求項22】
同種間葉系幹細胞が、体重キログラムあたり約1x10細胞〜体重キログラムあたり約5x10細胞の量で投与される、請求項16の方法。
【請求項23】
同種間葉系幹細胞が、体重キログラムあたり約2x10細胞の量で投与される、請求項16の方法。
【請求項24】
動物において、1以上の遺伝子疾患または障害を治療するための薬学的組成物であって、動物において、1以上の遺伝子疾患または障害を治療するのに有効な量の間葉系幹細胞を含む、前記薬学的組成物。
【請求項25】
遺伝子疾患または障害が、動物の炎症組織または臓器の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項24の薬学的組成物。
【請求項26】
間葉系幹細胞が同種のものである、請求項24の薬学的組成物。
【請求項27】
間葉系幹細胞が、HLAマッチであるかまたは部分的にHLAミスマッチである、請求項26の薬学的組成物。
【請求項28】
間葉系幹細胞が自己のものである、請求項24の薬学的組成物。
【請求項29】
間葉系幹細胞が遺伝子修飾されている、請求項24の薬学的組成物。
【請求項30】
外因性間葉系幹細胞が、CFTR遺伝子、ATP7B遺伝子、SOD1遺伝子、タンパク質・ジストロフィンをコードする遺伝子、タンパク質・グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子、ASYN遺伝子、HD遺伝子、タンパク質PMP22をコードする遺伝子、PKD1遺伝子、PXRI遺伝子、ARE遺伝子、FBN1遺伝子、WRN遺伝子、ALD遺伝子、CLCN7遺伝子、OSTM1遺伝子、TCIRG1遺伝子、SCA1遺伝子、SMA遺伝子、およびSGLT1遺伝子からなる群より選択される遺伝子を含有するように、遺伝子修飾されている、請求項29の方法。
【請求項31】
骨髄細胞をさらに含む、請求項24の薬学的組成物。
【請求項32】
機能不全組織の機能を改善するための薬学的組成物であって、機能不全組織の機能を改善するのに有効な量の単離同種間葉系幹細胞を含む、前記薬学的組成物。
【請求項33】
機能不全組織が、遺伝子欠陥によって特徴付けられる、請求項32の薬学的組成物。
【請求項34】
機能不全組織が、炎症仲介因子の発現または産生によって特徴付けられる、請求項33の薬学的組成物。
【請求項35】
間葉系幹細胞が同種である、請求項34の薬学的組成物。
【請求項36】
外因性間葉系幹細胞が、HLAマッチであるかまたは部分的にHLAミスマッチである、請求項35の薬学的組成物。
【請求項37】
間葉系幹細胞が自己のものである、請求項34の薬学的組成物。
【請求項38】
間葉系幹細胞が遺伝子修飾されている、請求項34の薬学的組成物。
【請求項39】
外因性間葉系幹細胞が、CFTR遺伝子、ATP7B遺伝子、SOD1遺伝子、タンパク質・ジストロフィンをコードする遺伝子、タンパク質・グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子、ASYN遺伝子、HD遺伝子、タンパク質PMP22をコードする遺伝子、PKD1遺伝子、PXRI遺伝子、ARE遺伝子、FBN1遺伝子、WRN遺伝子、ALD遺伝子、CLCN7遺伝子、OSTM1遺伝子、TCIRG1遺伝子、SCA1遺伝子、SMA遺伝子、およびSGLT1遺伝子からなる群より選択される遺伝子を含有するように、遺伝子修飾されている、請求項38の方法。
【請求項40】
骨髄細胞をさらに含む、請求項34の薬学的組成物。

【公表番号】特表2011−514901(P2011−514901A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549663(P2010−549663)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/001390
【国際公開番号】WO2009/111030
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500430486)オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】