説明

遺伝子療法適用のためのスーパーコイル状ミニサークルDNA

本発明は、核酸配列をコードするminivectorを含む核酸分子組成物および核酸配列をコードするminivectorを用いる遺伝子療法の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2009年10月16日に出願された米国仮出願第61/252,455号の利益を主張する。上記の出願の全教示を本明細書に援用する。
【0002】
政府援助
本発明は全て、または部分的に、国立衛生研究所からの助成金番号R01−AI054830により援助された。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子療法には、疾患に関係していることが示されている欠陥遺伝子を修正するための、疾患にかかった器官または細胞へのDNAまたはRNAの送達が含まれる。これはいくつかの異なるアプローチにより達成することができる。その病気が遺伝子産物が存在しない、または機能しないことによる場合、その遺伝子の機能するコピーをその疾患部位に送達することができる。あるいは、RNA干渉技術、例えば低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)およびマイクロRNA(miRNA)を用いて遺伝子発現を制御することができる。それにより特定のmRNAが相補的な低分子干渉RNA(siRNA)による分解の標的となる天然の細胞プロセスであるRNA干渉(RNAi)は、細胞レベルでの単一の遺伝子の特異的なサイレンシングを可能にする。様々な生物医学的および臨床的研究2−4により、RNAiは効率的な療法的アプローチとしての大きな可能性を有することが示されてきた。典型的には、RNA干渉は病原性遺伝子の発現を下方制御するために用いられるが、遺伝子プロモーター中の制御領域を標的とすることにより、遺伝子の上方制御も可能である15
【0004】
遺伝子療法にはとても大きな療法的可能性があり、多数の障害が好適な候補として同定されているにも関わらず、その分野は今のところ上手くいっていない。これらの失敗は、大部分は遺伝子送達と関係する厄介な問題によるものである。送達の効率は、最も一般的な送達法であるウイルスベクターに関して高いが、毒性、免疫および炎症性応答、標的化および用量の制御が困難であることを含む、臨床試験で観察された問題のため、これらは限られた療法的可能性しか有しない。加えて、そのベクターがゲノムの中に組み込まれて未知の長期の作用をもたらすであろうというもっともな懸念、およびそのウイルスが疾患を引き起こすその能力を取り戻すかもしれないという可能性が存在する。
【0005】
従って、多くの努力が非ウイルスベクターシステム、例えばプラスミドDNAに向けられてきた。これらのベクターは、それらの製造および保管が簡単であり、細胞中で安定して残存することができるため魅力的であるが、それらは免疫毒性応答を誘発する可能性のある細菌のDNA配列を含有する。樹状細胞およびT細胞を含む一部のヒトの細胞は、現行のプラスミドベクターでは効率的に形質移入することができない。短い線状のDNAベクターおよび小さいRNA、例えばショートヘアピンRNA(shRNA)およびマイクロRNA(miRNA)は、プラスミドよりも容易に細胞の中に導入される。しかし、線状のDNAおよびRNAの末端は細胞による急速な分解を誘発し、継続的な補充を必要とする。さらに、そのDNA末端は修復および組み替え経路にシグナルを送り、アポトーシスを引き起こし得る。これらの理由のため、RNAiおよびmiRNAに基づく技術はまだ臨床において非常に上手く行ってはいない。明らかに、遺伝子療法ベクターを細胞に療法的に送達するための新規の効率的な方法に関する必死の必要性が存在する。
【0006】
プラスミドDNAベクターは、それらは生成および単離が簡単であるため、基礎研究においてかなりの有用性を有する。それらは細菌株の中で増殖され、その細菌細胞から回収される。しかし、上記のように、これはそれらが細菌のDNA配列、特に原核生物の複製起点およびプラスミドの維持のための抗生物質耐性マーカーを含有することを必要とする。これらの細菌の配列の存在は、いくつかの非常に深刻かつ有害な結果をもたらす。最も明白なのは、それはそのプラスミドをどれだけ小さく作ることができるかを制限する。数kbpの大きなプラスミドは非常に低い効率でしか形質移入されない。また、それらの大きい大きさは、それらが(例えばエアロゾル化による)送達に伴う、または血流中での流体力学的剪断力の影響を受けやすくする。剪断に誘導される分解は生物学的活性の低下につながり、それは少なくとも部分的に、現在の遺伝子療法のための非ウイルスベクターの使用における成功の欠如の原因である。形質移入に伴うこれらの問題に取り組み、それを軽減するために、様々な陽イオン性およびリポソーム性形質移入試薬が設計されてきたが、これらは細胞毒性の問題に悩まされている。加えて、プラスミド上のその細菌配列はプラスミド上にある遺伝子のサイレンシングを誘導する可能性があり14、それは例えそのプラスミドがうまく形質移入されても有効性の低下につながる。真核生物のDNA配列よりも細菌のDNA配列においてより一般的であるCpGモチーフも、哺乳類細胞において免疫応答を誘発する。DNAベクターの大きさを低減することは、細胞の形質移入効率を増大させるための理にかなったアプローチのようである。プラスミド上の細菌の配列は物理的に除去することができ、結果として得られた療法的配列のみを含有する短い線状のDNA断片は一般に用いられるプラスミドベクターよりも容易に細胞の中に導入することができるであろうと想像するかもしれない。残念ながら、線状DNAの末端はインビボで非常に生体反応性であり、細胞のDNA修復および組み換えのプロセスならびにアポトーシスを誘発する。従って、生物学的環境において安定であり、より多量の細胞形質移入および導入遺伝子の発現を可能にする遺伝子ターゲッティング療法に関する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明はminivectorを含む核酸分子組成物を提供し、ここで前記のminivectorは核酸配列をコードしている。1態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。さらなる態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はマイクロRNA(miRNA)を含む。さらに別の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は遺伝子を含む。追加の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は、別の細胞の構成要素により、例えばタンパク質、異なるDNA配列、RNA配列、または細胞膜により結合されることができるDNAを含む。
【0008】
あらゆる態様において、そのminivectorは、望まれるならば化学的部分(例えばコレステロール、フルオレセイン、ビオチン、色素、または他の部分)で標識することができ;あるいは、または加えて、追加の修飾、例えば修飾された塩基または修飾された主鎖が含まれることもできる。
【0009】
別の態様において、本発明は、細胞において遺伝子の発現をサイレンシングする方法であって、前記の細胞をminivectorと接触させることを含み、ここで前記のminivectorは核酸配列をコードしており、ここでその核酸配列はその遺伝子の発現をサイレンシングする、前記方法を提供する。1態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。さらなる態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はマイクロRNA(miRNA)を含む。さらに別の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は遺伝子を含む。追加の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は、別の細胞の構成要素により、例えばタンパク質、異なるDNA配列、RNA配列、または細胞膜により結合されることができるDNAを含む。あらゆる態様において、そのminivectorは、望まれるならば上記のように(例えば化学的部分で、あるいは、または加えて、修飾された塩基および/または修飾された主鎖で)標識することができる。さらなる態様において、その細胞は哺乳類(例えばヒト)細胞である。
【0010】
1態様において、本発明は、療法上有効量のminivectorをそれを必要とする哺乳類に投与することを含む遺伝子療法の方法に関し、ここでそのminivectorは核酸配列をコードしている。1態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。さらなる態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はマイクロRNA(miRNA)を含む。さらに別の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は遺伝子を含む。追加の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は、別の細胞の構成要素により、例えばタンパク質、異なるDNA配列、RNA配列、または細胞膜により結合されることができるDNAを含む。あらゆる態様において、そのminivectorは、望まれるならば上記のように(例えば化学的部分で、あるいは、または加えて、修飾された塩基および/または修飾された主鎖で)標識することができる。さらなる態様において、その哺乳類はヒトである。
【0011】
別の態様において、本発明は、療法上有効量のminivectorを細胞に投与することを含む遺伝子療法の方法に関し、ここでそのminivectorは核酸配列をコードしている。1態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。さらなる態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はマイクロRNA(miRNA)を含む。さらに別の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は遺伝子を含む。追加の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は、別の細胞の構成要素により、例えばタンパク質、異なるDNA配列、RNA配列、または細胞膜により結合されることができるDNAを含む。あらゆる態様において、そのminivectorは、望まれるならば上記のように(例えば化学的部分で、あるいは、または加えて、修飾された塩基および/または修飾された主鎖で)標識することができる。さらに別の態様において、その細胞は哺乳類(例えばヒト)細胞である。
【0012】
別の態様において、本発明は、哺乳類の気道中の細胞に療法上有効量のminivectorを送達することを含む遺伝子療法の方法に関し、ここでそのminivectorは核酸配列をコードしている。そのminivectorは噴霧装置の使用により気道に投与することができ、キャリヤー分子の非存在下で投与することができる。1態様において、そのminivectorは哺乳類の気道の鼻粘膜に投与することができる。これらの態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含むことができる。他の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は遺伝子を含む。追加の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は、別の細胞の構成要素により、例えばタンパク質、異なるDNA配列、RNA配列、または細胞膜により結合されることができるDNAを含む。あらゆる態様において、そのminivectorは、望まれるならば上記のように(例えば化学的部分で、あるいは、または加えて、修飾された塩基および/または修飾された主鎖で)標識することができる。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、哺乳類細胞に有効量のminivectorを投与することを含む、哺乳類細胞において未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子の発現をサイレンシングする方法に関し、ここでそのminivectorは核酸配列をコードしており、ここでそのminivectorは未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子の発現をサイレンシングする。1態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。さらなる態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はマイクロRNA(miRNA)を含む。さらに別の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は遺伝子を含む。追加の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は、別の細胞の構成要素により、例えばタンパク質、異なるDNA配列、RNA配列、または細胞膜により結合されることができるDNAを含む。あらゆる態様において、そのminivectorは、望まれるならば上記のように(例えば化学的部分で、あるいは、または加えて、修飾された塩基および/または修飾された主鎖で)標識することができる。さらに別の態様において、その哺乳類細胞はヒト細胞である。
【0014】
1態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類において癌を処置する方法であって、その哺乳類に療法上有効量のminivectorまたはminivectorを含む哺乳類細胞を投与することを含み、ここでそのminivectorが核酸配列をコードしている、前記方法に関する。1態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。さらなる態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列はマイクロRNA(miRNA)を含む。さらに別の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は遺伝子を含む。追加の態様において、そのminivectorによりコードされている核酸配列は、別の細胞の構成要素により、例えばタンパク質、異なるDNA配列、RNA配列、または細胞膜により結合されることができるDNAを含む。あらゆる態様において、そのminivectorは、望まれるならば上記のように(例えば化学的部分で、あるいは、または加えて、修飾された塩基および/または修飾された主鎖で)標識することができる。さらなる態様において、その哺乳類はヒトである。1態様において、その癌は非ホジキンリンパ腫である。さらに別の態様において、その非ホジキンリンパ腫は未分化大細胞リンパ腫である。
【0015】
別の態様において、本発明は、細胞における遺伝子発現の方法であって、前記の細胞をminivectorと接触させることを含み、ここで前記のminivectorが核酸配列をコードしており、ここでその核酸配列がその遺伝子を発現する、前記方法に関する。1態様において、その核酸配列は遺伝子を含む。別の態様において、その細胞は哺乳類(例えばヒト)細胞である。
【0016】
上記のことは、付随する図面において図説されているような、以下の本発明の実施態様のより詳細な記述から明らかであると考えられ、ここで、異なる図の全てを通して同じ参照符号は同じ部品(parts)を指す。その図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、むしろ本発明の態様を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は遺伝子サイレンシングのためのshRNAをコードするminivectorの調製を示す。合成されたshRNAをコードするオリゴDNAを、改変したpMC−H1ベクターの中に、H1プロモーターの制御下にサブクローニングした。インテグラーゼに仲介される組み換えを経ることにより、H1プロモーターおよびshRNAに関する配列のみからなり、約385bpの大きさを有する環状minivectorを生成した。
【図2】図2は、形質移入しにくいリンパ腫細胞におけるそのminivectorの高い細胞形質移入/遺伝子サイレンシング能力を示す。上段:安定してGFPを発現する接着293FT細胞に、遺伝子サイレンシングのためにそのminivector、合成siRNA、またはDNAプラスミドベクターを、Lipofectamine法により形質移入した。3日間培養した後、フローサイトメトリーを実施し、細胞のGFP発現の平均蛍光強度の変化を未処理の細胞の平均蛍光強度(100%)と比較した。下段:同じ処理のセットを、形質移入しにくいJurkat細胞(ATCC、米国バージニア州マナサスからのヒトT−リンパ腫/白血病細胞株)において実施し、結果としてもたらされた細胞のGFP発現の変化を算出した。
【図3】図3A〜Bは、そのminivectorに誘導されるALK遺伝子のサイレンシングおよびKarpas299細胞((ドイツ生物物質資源センター(DSMZ)からのヒトALCL細胞株)の増殖停止を示す。図3Aは、細胞のALK遺伝子のサイレンシングを示す。療法的価値の可能性を検証するため、形質移入しにくいKarpas299細胞に、pMCベクター対照、無関係な対照のsiRNA、一般に用いられるpMC−H1−ALK/shRNAプラスミドベクター、ALK minivector、およびALKに特異的な合成されたsiRNAを形質移入した。4日間の形質移入の後、細胞のALK融合タンパク質の発現をFITCコンジュゲート抗ALK抗体を用いたフローサイトメトリーにより調べ、細胞のALKタンパク質に結合した(bond)抗体の平均蛍光強度により計算した。図3Bはリンパ腫細胞の増殖の阻害を示す。一方で、結果としてもたらされた細胞増殖の変化も、細胞形質移入の4日目にMTT細胞増殖アッセイにより同時に試験した。それぞれの処理を受けた細胞における相対的増殖速度をそのグラフに示した。**P<.01。
【図4】図4は、GFPに対するshRNAをコードするminivectorによるGFPのサイレンシングを示す。GFPを安定して発現する293FT細胞に、minivectorを3時間形質移入した。形質移入の後、示した時点において細胞を集め、それに蛍光顕微鏡観察(データは示していない)およびフローサイトメトリーを同時に行った。
【図5】図5は、非ウイルス性minivectorの概略図である。スーパーコイル状minivector DNAは、そのミニサークルを生成するために用いられた方法(Fogg et al. 2006)からの残存したattR部位、H1 RNAプロモーター、およびショートヘアピンRNA(shRNA)を含有している。遺伝子発現を制御するために、そのミニサークルは核の中に取り込まれ、そこでヒトRNAポリメラーゼ(IIまたはIII)がそれをshRNAへと転写する。そのshRNAは細胞質へと運び出され、そこで酵素Dicerがそれをプロセシングする。続いて、RISC複合体がセンス鎖と置き換わり、残ったsiRNAのアンチセンス鎖を用いてmRNAを標的化し、それがmRNAの分解および遺伝子サイレンシングをもたらす。そのshRNAは複数のクラスの遺伝子を制御するためのmiRNAをコードすることもできる。
【図6】図6A〜Eは、ヒトリンパ腫細胞におけるGFPのサイレンシングに関するベクターの比較を示す。GFPを安定して発現するヒトKarpas299リンパ腫細胞に、lipofectamine 2000を用いて、GFPをサイレンシングするようにコードした伝統的なプラスミドベクター(C)、minivector(D)、または合成されたshRNAを形質移入した。細胞を形質移入の4日後に集め、それに対してフローサイトメトリーを行った。GFP発現の変化を、処理した細胞(白いピーク)および未処理の細胞(灰色のピーク)の間で比較した。対照として、無関係のshRNA(図7B)および挿入断片無しのpMCベクター(図7A)を用いた。
【図7】図7A〜Bは、ヒト樹状細胞およびT細胞のminivectorによる形質移入が増進された遺伝子発現をもたらすことを示す。ヒトの未成熟DC(図7A)またはCD3/CD28活性化T細胞(図7B)に、膜擬の(mock)(Co)、GLucをコードしている伝統的な、通常の(Reg)プラスミド、またはminivectorを、GeneJuiceを用いて形質移入した。形質移入の後、成熟カクテルをDCに添加した。ランダム光単位(RLU)でのルシフェラーゼの活性を、形質移入の48h後に決定した。2つの独立した実験(灰色および黒色)において、minivectorを有する細胞では、通常のプラスミドと比較してより高い遺伝子発現があった。
【図8】図8A〜Bは、DNAの剪断を長さの関数として要約したグラフ表現である(少なくとも3回の別の実験に関して平均した)。(図8A)曲線はシグモイド関数への当てはめを表す。噴霧生存時間をそれぞれのDNAベクターに関して決定した。ベクターの50%が生存していた時間(Survival50(Neb))をプロットした(図8B)。それぞれのSurvival50(Neb)の値は、少なくとも3回の別の実験からの平均である。エラーバーは標準偏差を表す。
【図9】図9A〜Bは、DNAのトポロジーのDNAの生存への影響を示す。図9Aは、プラスミドDNAのトポロジーがどのようにそれの噴霧の間の生存に影響を及ぼすかを示す。それぞれの時点におけるそれぞれのトポロジーのDNAベクターの割合を示す。シグモイド関数に当てはめた曲線を示す。環状のプラスミドは線状のDNAよりもはるかに長く持ちこたえた。スーパーコイル形成は、剪断力に対する追加の耐性を提供した。図9Bは、Minivector DNA(385bp)のトポロジーがどのようにそれの超音波処理の間の生存に影響を及ぼすかを示す。DNAの割合を図9Aと同じように定量化した。スーパーコイル状Minivector DNAは、ニックの入った、または線状のDNAよりも有意に長く生存した。
【図10】図10は、スーパーコイル状minivectorに化学的部分を給合させるためのプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で記述される発明、例えば遺伝子療法のための(遺伝子の発現のサイレンシングおよび遺伝子の発現を引き起こすことを含む)遺伝子発現の改変における使用のためのminivector DNAは、興奮させるような有望さを有する。その環状DNAは細胞の中で存続するため、継続的な、更新可能なshRNAまたはmiRNAまたは導入遺伝子の発現が可能である。本明細書で記述される発明は、新規の非ウイルス性遺伝子療法ベクター、minivector DNA、小さいスーパーコイル状のDNAベクターに関し、それはほとんど完全に細菌の配列を欠いている(devoid os)。それらの小さい大きさのため、これらのminivectorは高い効率で形質移入される。細菌の配列の欠如は、プラスミドDNAベクターと関係するサイレンシングおよび免疫応答無しで、永続的な導入遺伝子の発現を可能にする。
【0019】
第1の例において、そのminivectorを、プロモーターおよび遺伝子サイレンシングを仲介するためのshRNAをコードする配列を含む最小限のコンストラクトを送達するそれらの能力に関して試験した。RNA干渉に仲介される遺伝子サイレンシングは、あるいは合成された低分子干渉RNAを送達することにより誘導することができる。しかし、これらのRNAは環境のヌクレアーゼの影響を非常に受けやすく、非常に一過性の応答しかもたらさず、従ってそれらの療法的価値を失う。それに対し、DNAベクターは生物学的環境において比較的安定である。従って、代替案としてshRNAを発現することができるDNAベクター系が遺伝子ターゲッティング療法のために開発されてきた。shRNAをコードするDNAベクターは合成されたsiRNAにより達成される細胞への作用よりもかなり長い期間細胞への作用を有し、標的化された遺伝子を数ヶ月の間下方制御することができる。さらに、誘導可能なshRNA発現系はDNAベクターをより扱いやすくする
【0020】
しかし、そのminivectorはshRNA(またはmiRNA)のための輸送手段であることに限定されない。大きな抗生物質耐性遺伝子および複製起点を必要としないことに起因する万能性のため、そのminivectorは小さい遺伝子(この場合ではGaussiaルシフェラーゼ)およびプロモーターを含有し、なお小さい大きさ(例えば約2000bp未満、これは遺伝子療法のための機能性遺伝子を有するあらゆるプラスミドよりもはるかに小さい)を維持するように設計することができる。Gaussiaルシフェラーゼをコードするminivectorのヒト樹状細胞およびT細胞中への形質移入は、結果として同じ遺伝子およびプロモーターを含有する通常のプラスミドと比較してはるかに高い遺伝子発現をもたらした。これらの結果は2つの重要なことを示している。第1に、minivectorは、転写され、機能するタンパク質へと翻訳されることができる小さい遺伝子を送達するために用いることができる。第2に、そしてこれらのベクターの大きな有望さを示すものであるが、そのminivectorは非ウイルス性の形質移入が以前にほとんど〜全く成功していなかった樹状細胞およびT細胞株に形質移入することができる。
【0021】
加えて、そのminivectorは遺伝子療法の重要な課題:そのベクターを疾患にかかった器官に標的化することを克服する。例えば、肺は、それらが容易にアクセス可能であるため遺伝子療法を適用しやすいが、薬物送達のためのエアロゾルを作り出すための噴霧は多大な剪断を引き起こし、プラスミドDNAのようなベクターを効果のないものにする。しかし、minivectorは例え凝縮剤の非存在下でも噴霧の際の剪断力を生き延び、これは肺組織への標的化された送達に関するそれらの有効性を示している。
【0022】
スーパーコイル状DNAミニサークルおよびミニサークルを製造するための方法が、Zechiedrichらによる米国出願第11/448,590号(米国公開第US 20070020659 A1号);表題:“生理的スーパーコイル形成を伴うミニサークルDNAの生成”において記述されており、それをそのまま本明細書に援用する。遺伝子療法適用に関して、スーパーコイル状ミニサークルを本明細書において“minivector”と呼ぶ。本明細書で記述されるように、minivectorは生体内安定性、高い細胞形質移入率、高い遺伝子サイレンシング能力を有することが試験されて分かっており、遺伝子療法における療法的可能性を有することが分かった。本明細書で記述されるその発見は、minivectorが遺伝子療法のための利点を有することを示している。
【0023】
本明細書で用いられる際の“minivector”は、小さい大きさの環状DNAベクター系(ミニサークル)を指し、それは以前にZechiedrichらによる米国出願第11/448,590号(米国公開第US 20070020659 A1号);表題:“生理的スーパーコイル形成を伴うミニサークルDNAの生成”において記述されており、それをそのまま本明細書に援用する。Minivectorはスーパーコイル状の環状DNA分子であり、それは大腸菌においてインビボでのインテグラーゼに仲介される部位特異的組み換えにより得られる。それは例えば、導入遺伝子発現カセット(プロモーターおよび核酸配列が含まれ、ここでその核酸配列は、例えば特定のmRNA転写産物に対して標的化されたshRNAをコードする配列であることができ、またはその核酸配列は特定のタンパク質の発現のための遺伝子をコードするものであることができる)のみを有し、重要なことだが、細菌由来の配列を有しない核酸分子を含有する8、9、10
【0024】
遺伝子療法における使用のためのMinivectorは、約100塩基対(bp)から約2.5キロ塩基(kb)まで、例えば約200bpから約2.2kbまで、例えば約300bpから約2.0kbまで、例えば約400bpから約1.9kbまで、例えば約500bpから約1.8kbまで、例えば約600bpから約1.7kbまで、例えば約700bpから約1.6kbまで、例えば約800bpから約1.5kbまで、例えば約900bpから約1.4kbまで、例えば約1kbから約1.3kbまで、例えば約1.1kbから約1.2kbまでの大きさの二本鎖の環状DNA分子である。Minivectorは約100bp以下の大きさの増加分(size increments)で作ることができる。
【0025】
そのminivectorは、例えば化学的部分を用いて、望まれるように標識することができる。代表的な標識には、フルオレセイン、ビオチン、コレステロール、色素、修飾塩基および修飾主鎖が含まれる。代表的な色素には、以下のものが含まれる:6−カルボキシフルオレセイン、5−/6−カルボキシローダミン、5−/6−カルボキシテトラメチルローダミン、6−カルボキシ−2’−,4−,4’−,5’−,7−,7’−ヘキサクロロフルオレセイン)、6−カルボキシ−2’−,4−,7−,7’−テトラクロロフルオレセイン)、6−カルボキシ−4’−,5’−ジクロロ−2’−,7’−ジメトキシフルオレセイン、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸)、Cascade Blue、Marina Blue、Pacific Blue、Cy3、Cy5、Cy3.5、Cy5.5、IRDye700、IRDye800、BODIPY色素、Texas Red、Oregon Green、Rhodamine Red、Rhodamine Green。追加の修飾には、修飾塩基(例えば2−アミノプリン、メチル化された塩基)、または修飾主鎖(例えばホスホロチオエート類、ここで、非架橋酸素の1個が硫黄により置換されている;2’−O−メチル−RNA−オリゴヌクレオチド類;メチル−ホスフェートオリゴヌクレオチド類)も含まれることができる。望まれるならば、化学的部分および/または修飾塩基および/または修飾主鎖が含まれる多重標識を同時に用いることができる。ヌクレオチドを標識する方法は、例えばRobert E. Farrellによる“核酸プローブ技術”;RNA Methodologies (第3版), 2005, pp. 285-316;ならびにCurrent Protocols in Immunology 2001 May;第10章:単位10.10におけるStanley TaborおよびAnn Boyleによる“核酸の酵素標識”において記述されている。これらの参考文献の教示をそのまま本明細書に援用する。
【0026】
本明細書で用いられる際、用語“RNA干渉”または“RNAi”は、それにより、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングが、そのサイレンシングされる遺伝子に配列が相同であるRNAにより開始されるプロセスを指す。植物からヒトまでの多種多様な生きた生物およびそれらの細胞で起こるRNAiは、異なる生物系では転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)およびコサプレッション(co−suppression)とも呼ばれてきた。RNAiにおいて観察されるmRNAの配列特異的分解は、低分子(または短鎖)干渉RNA(siRNA)により仲介される。
【0027】
本明細書で用いられる際、用語“干渉RNA”は、その少なくとも一部が実質的にその干渉RNAのヌクレオチド配列と同じであるヌクレオチド配列を有するRNA転写産物の分解を、RNA干渉(RNAi)の機構を通して方向づけることができるRNA分子を意味する。当技術で既知であるように、干渉RNAは、分子間の二本鎖を形成する2本の相補的な一本鎖RNAからなる“低分子干渉RNA”またはsiRNAであることができる。干渉RNAは、そのRNAがそれ自身の上に折り返されて、分子内二本鎖領域および対合していないループ領域を有するステムループ構造を形成することを可能にする2つの自己相補的領域を有する一本鎖RNAからなる“ショートヘアピンRNA”またはshRNAであることもできる。
【0028】
本明細書で用いられる際、用語“遺伝子サイレンシング”は、標的遺伝子の発現産物の低減を指す。サイレンシングは、最終的な遺伝子産物が生成されないという点で完全であってよく、または遺伝子産物の量の実質的な低減が起こるという点で部分的であってよい。
【0029】
哺乳類は、本明細書で用いられる際、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシの、ヒツジの、ウマの、イヌの、ネコの、げっ歯類の、もしくはマウスの種を含むがそれらに限定されない動物を指す。1態様において、その哺乳類はヒトである。
【0030】
哺乳類細胞は、本明細書で用いられる際、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシの、ヒツジの、ウマの、イヌの、ネコの、げっ歯類の、もしくはマウスの種を含むがそれらに限定されない動物からの細胞を指す。1態様において、その哺乳類細胞はヒト細胞である。
【0031】
用語“処置する”には、療法的処置および予防的処置(発現の可能性を低減する)の両方が含まれる。その用語は、疾患(例えば本明細書で描写される疾患または障害)の発現もしくは進行を減少させる(decrease)、抑制する、減じる(attenuate)、減らす(diminish)、止める、もしくは安定化する、その疾患の重篤さを和らげる、またはその疾患と関係する症状を改善することを意味する。
【0032】
本明細書で記述される際、遺伝子療法における使用のためのminivectorは有効量で存在する。本明細書で用いられる際、用語“有効量”は、適切な投与計画で投与された場合に標的の障害を(療法的に、または予防的に)処置するのに十分である量を指す。例えば、有効量は処置されている障害の重篤さ、持続期間または進行を低減する、もしくは改善する、処置されている障害の前進を防ぐ、処置されている障害の後退を引き起こす、または別の療法の予防的もしくは療法的作用(単数または複数)を増進する、もしくは向上させるのに十分である。
【0033】
本明細書で記述されるように、わずかにH1プロモーターおよび遺伝子療法のためのshRNAをコードする配列からなる環状DNA minivector系を試験した。そのminivector系の生体内安定性、細胞形質移入率、および遺伝子サイレンシング能力を、従来のDNAプラスミドベクターおよび合成されたsiRNAと比較した。加えて、そのminivectorの療法的能力を、形質移入しにくい懸濁Jurkat(リンパ腫/白血病)細胞およびKarpas299(ヒト未分化大細胞リンパ腫(ALCL))細胞において試験した。ALCL細胞は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子を含む異常な染色体転座を有する(1−3)。結果としてもたらされるキメラALK融合タンパク質(4−6)の異常な発現は、ALCLの発現に関する重要な発病因子であることが示されている(7−9)。この研究において、minivectorの細胞のALK遺伝子の発現およびリンパ腫細胞の増殖への作用を同時に試験した。
【0034】
その生体内安定性アッセイは、そのminivectorがヒト血清中で24時間を超えて安定であり、それに対し、合成されたsiRNAは4時間の保温の後に完全に消化されたことを示した。細胞形質移入試験のため、GFPのshRNAをコードするminivectorを安定なGFP発現細胞中にlipofectamineの方法論を用いて導入した。フローサイトメトリー分析は、そのminivectorの形質移入が293FT細胞(52%の低減)および形質移入しにくいJurkat懸濁リンパ腫細胞(46%の低減)の両方において有意なGFP遺伝子のサイレンシングを誘導することができることを明らかにした。療法的価値の可能性を試験するため、ヒト未分化大細胞リンパ腫(ALCL)の重要な病原因子である未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子のサイレンシングのためのminivectorを生成した。培養したKarpas299ALCL細胞にそのminivector、従来のプラスミドベクター、および合成されたsiRNAを形質移入し、結果としてもたらされた遺伝子サイレンシングをFITCコンジュゲート抗ALK抗体を用いるフローサイトメトリーにより監視した。ALKタンパク質発現の有意な減少が、minivector(25%の低減)および合成siRNA(26%の低減)を形質移入した細胞において検出され、それは従来のプラスミドにより誘導された減少(0.8%の低減)よりも30倍高かった。さらに、同時MTTアッセイはminivectorまたは合成siRNAにより誘導されたALCL細胞の有意な増殖停止を示したが(P<.01)、従来のプラスミドでは示されなかった。発見は、そのminivector系が血清中で安定であり、高い細胞形質移入能力を有することを示しており、これはインビボでの、特に形質移入しにくい細胞における遺伝子療法に関する価値の可能性を示唆している。
【0035】
これも本明細書で記述されるように、300塩基対未満から5,000塩基対を超えるまで異なるminivectorに、噴霧器によるエアロゾル化または超音波処理により生じる剪断力をかけた。スーパーコイル形成および長さの両方が、剪断力生存に劇的に影響を及ぼした。DNAのスーパーコイル形成はDNAを剪断から保護した。興味深いことに、ニックの入った分子は緩んだ無傷のDNAと同等に剪断された。DNAの剪断はDNAの長さと逆相関しており;DNAがより短いほど、そのDNAは剪断に対してより耐性であった。凝縮剤の非存在下においてさえも、1,200塩基対未満のスーパーコイル状DNAは、いくつかの療法に関する典型的な処置計画時間と等しい時間の間生存した。これらの結果は、遺伝子療法のための標的化された送達に関するminivectorの価値の可能性を示す。
【0036】
遺伝子療法適用に加え、ミニサークルはDNAのスーパーコイル形成、DNAのスーパーコイル形成に依存する代替構造、またはDNAのスーパーコイル形成に依存するタンパク質の機構を研究するために用いることもできる。例えば、59回のCAGリピートの区域を含む脊髄小脳変性症1型の疾患遺伝子座からの配列を含有する挿入断片を、582bpのミニサークルの中にクローニングした。より高いスーパーコイル形成のレベルにおいて、T7エンドヌクレアーゼIによる限られた、しかし有意な量の切断が検出され、これはスーパーコイルで安定化された代替構造の存在を示唆している。
【0037】
ミニサークルは、DNAトポイソメラーゼを標的とする抗生物質および抗癌薬の機構を評価するためのアッセイとして用いることもできる。さらに、ミニサークルは疾患に関わっていることが示されている遺伝子を制御するために、ならびにヒト樹状細胞およびヒトT細胞の遺伝子修飾において用いることができる。
【0038】
本明細書で記述される態様の全てにおいて、多種多様な細胞型または生物を用いることができる。例えば、上記で記述したような哺乳類を用いることができる。あるいは、細菌、古細菌、および真核生物(例えば植物)を含む他のタイプの細胞/生物を用いることができる。
【0039】
本明細書で記述される態様の全てにおいて、単一の系において複合型のminivectorを、および多数の標的を有するminivectorを用いることも可能である。例えば、それぞれの個々のminivectorが単一のタンパク質の部分またはドメインを含む異なる核酸配列をコードしており、単一の細胞中でその個々のminivectorが発現した時にその部分またはドメインが一体となって単一の活性なタンパク質を形成するように、2種類(またはより多く)の別個のminivectorを設計することができる。加えて、インビボでの組み替えの間にminivectorの多量体の形が形成されることもできる。さらに、多数の療法的shRNAをコードする配列を挿入し、形質移入された細胞中で同時に多数の遺伝子を標的とする能力を有するminivectorを生成し、結果として非常に高感度かつ特異的な遺伝子療法をもたらすことが可能である。
【0040】
以下は本発明の態様の記述である。
【実施例】
【0041】
実施例1:細胞形質移入および遺伝子サイレンシング
材料および方法
オリゴヌクレオチド合成およびminivectorの調製
GFPサイレンシングのため、合成siRNAを対になった対照のsiRNAと共に購入した(Ambion、カリフォルニア州フォスターシティーからのカタログ番号AM4626)。ALK遺伝子のためのsiRNAは、報告された配列11に従ってAmbionにより以下の配列を有するように合成された:センス:(SEQ ID NO:1)
【0042】
【化1】

【0043】
および(SEQ ID NO:2)アンチセンス:
【0044】
【化2】

【0045】
。shRNAを発現するMinivectorを生成するために用いられた親プラスミドは、以下のように生成された。KasIおよびHindIII制限部位(restriction sited)をpMC339−BbvCI(Fogg et al. 2006)の中に組み込んだ。そのKasIおよびHindIII部位の間にpSUPER−CCR5shRNA−3(参考文献)からのH1プロモーターおよびshRNA発現配列を含有するKasI/HindIII断片を挿入することにより、H1プロモーターをそのpMCベクターの中にサブクローニングした。続いてBglII部位をそのshRNA発現配列の前に組み込んでpMV−CCR5shRNA3−BglIIを生成した。これは、そのBglIIおよびHindIII部位の間に挿入することによりshRNA発現配列を容易に交換することを可能にする(図1)。
【0046】
【化3】

【0047】
12のセンス配列を有するGFP shRNAおよび
【0048】
【化4】

【0049】
のセンス配列を有するALK shRNA(Ito M, Zhao N, Zeng Z, Chang CC, Zu Y. Cancer Gene Ther 2010; 17: 633-644.)をコードするDNA挿入断片を、それぞれ2つのオリゴヌクレオチドとして合成し、アニーリングさせてスープレックス(suplexes)を形成し、改変されたpMVベクター(ector)の中に、BglIIおよびBamHI部位の間に、H1プロモーターの制御下にサブクローニングした(図1)。結果として得られたプラスミドを、pMV−H1−GFPshRNAおよびpMV−H1−ALKshRNAと名付けた。Minivector DNAの親プラスミドを大腸菌株LZ54(Zechiedrich et al. (1997), Genes Dev. 11, 2580-2592)の中に形質転換し、ラージスケールでのλ−インテグラーゼ(Int)に仲介される(mediated)を、以前に記述されたように13、以下の少しの修正を加えて実施した。純粋な、スーパーコイル状の、単量体のMinivector DNAを、多数回のゲルSephacryl S−500濾過(GE Healthcare Life Sciences,ニュージャージー州ピスカタウェイ)により単離した。スーパーコイル状の単量体の形のminivectorのみを、遺伝子サイレンシングの研究のために用いた。プラスミドの名前の前の“p”の慣習に従って、我々はminivector DNAを“mv”を付けて名付け、minivectorを生成するために用いられる親プラスミドを“pMV”と名付ける。
【0050】
生体内安定性アッセイ
生成されたGFP shRNAをコードするminivector(1μg)ならびに等質量(equimass amounts)の親プラスミドpMV−H1−GFPshRNAおよび合成GFP siRNAを、100μlの100%ヒト血清(Atlanta Biological Inc. ジョージア州ローレンスビル)中で37℃で保温した。様々な時点において、残留するDNAベクターまたはsiRNA製品をフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、クロロホルムで抽出し、95%エタノール中で沈殿させた。次いで残留するRNAまたはDNA製品を、それぞれ10%ポリアクリルアミドおよび1.5%アガロースゲル、それに続く臭化エチジウム染色で調べた。DNAまたはsiRNA製品のバンドを、TotalLabソフトウェア(FotoDyne Inc.,ウィスコンシン州ハートランド)を用いて定量化し、Kaleidagraph(Synergy Software,ペンシルバニア州レディング)を用いてプロットした。
【0051】
細胞形質移入および遺伝子サイレンシング
GFP遺伝子のサイレンシングのためのレポーター系として、接着293FT細胞(形質転換したヒト胎児腎臓細胞株、Invitrogen)および形質移入しにくいJurkat細胞(ヒトリンパ腫/白血病細胞株)に由来する安定してGFPを発現する細胞を確立した。そのGFPを発現する細胞に、Lipofectamineの方法論を用いて、製造業者(Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)の説明書に従ってDNAベクターまたはsiRNAを形質移入した。結果としてもたらされた細胞のGFPの発現のサイレンシングを、3日目にフローサイトメトリーを用いて定量化し、FlowJoソフトウェア(BD Biosciences,カリフォルニア州サンノゼ)を用いてデータを分析した。細胞のGFPの平均蛍光強度の変化を、未処理の細胞を対照として用いて算出した(%)。
【0052】
加えて、培養したKarpas299細胞(ヒトALCL細胞株)に、合成ALK siRNAおよび対照siRNA、pMV−H1ベクター、pMV−H1−ALKshRNA、またはALK minivector(mv−H1−ALKshRNA)を上記のように形質移入した。細胞を3日目に集め、BD Biosciencesからの細胞調製キットを用いて製造業者の説明書に従って固定し、透過処理した。細胞のALK融合タンパク質をFITC−コンジュゲート抗−ALK抗体(1:20希釈、BD Biosciences)により染色し、フローサイトメトリーにより定量化した。
【0053】
MTT細胞増殖アッセイ
細胞のSLK遺伝子のサイレンシングの際の細胞成長/増殖における変化を同時に調べた。形質移入したKarpas299細胞の分割量(Aliquots)(100μl/試料)を96ウェルプレートに移し、Chemicon International(カリフォルニア州テメキュラ)からのMTTアッセイキットのアッセイ緩衝液10μlと混合し、37℃で4時間保温し、次いで製造業者の説明書に従って溶解させた。MTT細胞増殖アッセイを、BioRadマイクロプレートリーダーを用いて、それぞれの標本において検出されたOD540の吸光度により分析した。相対的な細胞増殖(%)を、未処理の細胞をバックグラウンド対照として用いることにより算出した。全ての実験を少なくとも3回行い、その結果を平均±標準偏差で表した。
【0054】
結果
そのminivectorはヒト血清中で安定であった
minivectorを生成するため、GFP遺伝子またはALK遺伝子に特異的なshRNAをコードする合成オリゴDNAを、改変されたpMV−H1親プラスミドの中にサブクローニングした(図1)13。インビボでのインテグラーゼに仲介される組み換えを経ることにより、わずかにH1プロモーター、shRNAに関する配列のみを含有し、ほとんど完全に細菌の配列を欠いている約385bpの環状minivectorが得られた。遺伝子サイレンシングの研究のため、そのminivectorの単量体およびスーパーコイル状の形態を分画し、精製した。
【0055】
生体内安定性の研究のため、精製したGFPminivectorを100%ヒト血清中で37℃において3日間保温した。対照グループにおいて、親のpMV−GFPshRNAベクターおよび合成GFP siRNAを同じ条件で試験した。様々な時点で、残留したDNAベクターおよび合成siRNAを抽出し、電気泳動により分析した。そのminivectorはヒト血清中で少なくとも48時間安定であったが、一方で親のベクターのプラスミドDNAは約4時間後に50%より多く分解していた。それに対し、合成siRNAは30分未満で消化された。
【0056】
形質移入しにくいリンパ腫細胞におけるminivectorの高い遺伝子サイレンシング効率
遺伝子サイレンシングに関する細胞形質移入の可能性を評価するため、2タイプの安定してGFPを発現する細胞は、接着293FT細胞(形質転換されたヒト腎臓線維芽細胞細胞株)に、および懸濁Karpas299細胞(ヒトALCL細胞株)に由来していた。“材料および方法”において記述したように、そのGFPを発現する細胞にGFPminivectorをLipofectamineの方法論を用いて形質移入し、3日間の形質移入の後、結果として生じた細胞のGFP発現の変化をフローサイトメトリーにより定量化した。接着293FT細胞では、そのminivectorの形質移入は有意なGFP遺伝子のサイレンシングを誘導し(49%)、それはpMV−H1−GFPshRNAプラスミドベクター(30%)および合成GFP siRNA(68%)により誘導されるサイレンシングに匹敵していた(図2の上段)。興味深いことに、形質移入しにくいJurkat細胞では、minivectorの形質移入は結果としてGFP遺伝子の有意なサイレンシング(細胞のeGFP発現の46%低減)をもたらし、それはpMV−H1−GFPshRNAプラスミドベクターにより誘導されるサイレンシング(4.5%)より10倍高く、合成GFP siRNAによるサイレンシング(61%)よりほんのわずかに低かった(図2の下段)。
【0057】
minivectorによるALK遺伝子のサイレンシングは、Karpas299リンパ腫細胞の増殖停止を誘導した。
ALK融合タンパク質の異常発現はALK陽性ALCLの発現に関する重要な病原因子であり、siRNAに誘導されるALK遺伝子のサイレンシングは結果としてALCL細胞の増殖阻害をもたらしたことが示されている。ALCLに関する療法的役割の可能性を検証するため、ALK shRNAをコードするminivectorを、形質移入しにくいKarpas299リンパ腫細胞の中に形質移入した。3日間の形質移入の後、結果として生じたALK遺伝子のサイレンシングを、細胞のALK融合タンパク質の発現を上記のようにFITCコンジュゲート抗ALK抗体を用いたフローサイトメトリーにより定量化することにより評価した。minivectorの形質移入は結果として培養されたKarpas299細胞におけるALK遺伝子の有意なサイレンシングをもたらし、細胞のALK融合タンパク質の発現が25%低減しており、それは合成ALK siRNAの形質移入により誘導されるサイレンシング(27%)と同じくらい効率的であった(図3A)。それに対し、従来のプラスミドベクターであるpMV−H1−ALKshRNAは形質移入しにくいKarpas299リンパ腫細胞においてほとんど遺伝子サイレンシング作用を示さず、無視できる程度の細胞のALK融合タンパク質の発現の減少(0.8%)をもたらした。発見は、そのminivectorが形質移入しにくいKarpas299リンパ腫細胞において従来のプラスミドベクターよりも30倍効率的にALK遺伝子のサイレンシングを誘導したことを示した。
【0058】
加えて、誘導されたALK遺伝子のサイレンシングの結果もたらされる細胞への作用を確かめるため、それぞれの3日間の処置の後、対応する細胞増殖を同時に調べた。相対的細胞増殖速度(%)は、“材料および方法”の下で記述したように、MTT細胞増殖アッセイにより検出された。Karpas299リンパ腫細胞の、ALK/shRNAをコードするminivectorおよび合成ALK siRNAによる形質移入は、結果として有意な細胞増殖の阻害(40%近くの減少およびP<.01)をもたらした。それに対し、pMV−H1−ALK/shRNAのプラスミドベクターは、ビヒクルのみ、pMC−H1、または対照のsiRNAを形質移入した対照の細胞と比較して、細胞増殖への検出される作用を有しなかった(図3B)。まとめると、これらの発見は、そのminivectorが特に形質移入しにくい細胞における細胞の遺伝子のサイレンシングのための強力な手段であることを示している。
【0059】
この研究では、遺伝子ターゲッティング療法に関するminivectorの生体内安定性および使用の可能性を形質移入しにくいリンパ腫細胞において検証した。その発見は、そのminivectorが合成siRNAおよび従来のプラスミドDNAベクターの両方を超える利点:(従来のプラスミドベクターと比較して)高い細胞形質移入/遺伝子サイレンシング率およびヒト血清中での高い生体内安定性を有していることを示している。加えて、そのminivector系を用いることは、従来のプラスミドベクターのバックボーンの細菌の配列からの細胞毒性の可能性も排除する。その結果は、そのminivector系がインビボでの遺伝子ターゲッティング療法のための有望な送達ベクターであることを示唆している。
【0060】
本明細書で記述したような環状minivectorは、わずかに転写プロモーター(H1)、ターゲッティング遺伝子のための療法的shRNAをコードする設計された配列、およびインテグラーゼに仲介されるインビボ組み換え部位のみからなる(図1)。その小さい大きさ(例えばこの実施例ではMinivectorは約385bpである)により、そのminivectorは、所与の体積/質量に対してより多い数の分子、および従来のDNAプラスミドベクターの細胞形質移入効率よりも高い細胞形質移入効率を有することができる。加えて、形質移入された細胞内でのH1プロモーターからの繰り返される遺伝子の転写により、shRNAのコピー数が著しく増幅されることが可能である。それに対し、形質移入された合成siRNAは細胞中でコピー数を増大させることはできない。また、合成siRNAはRNA干渉に仲介される遺伝子サイレンシングの間に完全に破壊され、従って絶えず補充する必要がある。遺伝子サイレンシングに関するminivectorの単量体の形態に加えて、minivectorの多量体の形態もインビボでの組み換えの間に形成される可能性があり、それは類似の技法を用いて精製することができる。そのようなminivectorの二量体/多量体の形態は、それらの遺伝子サイレンシングの可能性に関して、本明細書で記述した技法を用いて試験することができる。さらに、多数の療法的shRNAをコードする配列を挿入し、形質移入された細胞において同時に多数の遺伝子を標的とする可能性を有するminivectorを生成し、結果として非常に高感度かつ特異的な遺伝子療法をもたらすことが可能である。
【0061】
実施例2:shRNAをコードするMINIVECTORはヒト線維芽細胞においてGFPの発現を妨害する
GFPに対して標的化されたshRNAをコードするミニサークル(ミニサークルshRNA−GFP)の形質移入効率を、安定してGFPを発現するヒト胎児由来腎臓細胞(293FT/GFP)においてアッセイした。293FT細胞では見られないCCR5に対するshRNAをコードするMinivectorが陰性対照としての役目を果たした。lipofectamineを用いた形質移入の後、GFPの発現を蛍光活性化細胞選別法を用いて定量化した。GFPに仲介される蛍光への作用を有しなかった対照のminivectorを形質移入した細胞と比較して、minivectorを与えられた細胞は用量および時間依存方式での蛍光の減少を示し、蛍光が44%まで減少した(図4)。従って、GFP遺伝子に対するshRNAをコードするminivectorは、図5において図式化されているようにDicer経路を通って処理されてGFP発現をサイレンシングするようである。
【0062】
shRNAをコードするMinivectorは、Jurkatリンパ腫細胞においてGFPの発現を従来のshRNAプラスミドベクターよりも効果的にサイレンシングする。GFPを安定して発現するヒトkarpas299細胞を生成した。この細胞株を用いてminivectorと従来のプラスミドの形質移入およびサイレンシング効率を比較した。Minivector mv−H1−GFPshRNA(図6D)を、同じGFPに対するshRNAをコードする従来のプラスミドベクターであるpMV−H1−GFPshRNA(図6C)と比較した。加えて、DNAベクター中で用いられた配列と同じ配列を有する合成siRNAを試験した(図6E)。
【0063】
図6A〜Bにおいて示されているように、対照のpMV−H1ベクターおよび対照のshRNAを発現するMinivectorは細胞のGFPの発現への作用を有しなかった。従来のプラスミドベクターpMV−H1−GFPshRNAを用いた細胞の形質移入は、処理された細胞のGFP遺伝子の発現を4.5%サイレンシングした(図6C)。しかし、minivector処理は処理された細胞のGFPを46%サイレンシングし(図6D)、それはオリゴマー性shRNAにより誘導されるサイレンシング(61%)(図6E)に匹敵する。
【0064】
実施例3:ヒト樹状細胞およびT細胞の形質移入
GaussiaルシフェラーゼをコードするMinivectorはヒト樹状細胞および活性化されたT細胞に高い効率で形質移入された。活性化されたT細胞が腫瘍と戦う能力を測定するための系が確立された(Ahmed et al. 2007, J Immunother. 30(1):96-107)。短いルシフェラーゼ遺伝子であるGaussiaルシフェラーゼを、mvGLucを作るためにminivectorの中にクローニングした。利用可能である最も小さい容易に追跡可能な遺伝子の1つであるにも関わらず、そのルシフェラーゼ遺伝子は結果として比較的大きいminivector(約1.2kb)をもたらし、それは上記のGFP発現の制御を示した実験において用いられた約385bpのミニサークルよりもはるかに大きい。しかし、そのGLucをコードするミニサークルは典型的なDNAプラスミドベクターよりもまだ小さく、そして重要なことだが、選択または複製のためのあらゆる細菌の配列を欠いている。示したように、ヒト樹状細胞(DC)(図7A)およびT細胞(図7B)中へのGLucの送達は結果として通常のプラスミドと比較してより高い遺伝子発現をもたらした。これらの結果は2つの重要なことを示している。第1に、minivectorは、転写され、機能するタンパク質へと翻訳されることができる小さい遺伝子を送達するために用いることができる。第2に、そしてこれらのベクターの大きな有望さを示すものであるが、そのminivectorは非ウイルス性の形質移入が以前にほとんど〜全く成功していなかったDCおよびT細胞株に形質移入することができる。
【0065】
実施例4:マウスの肺におけるGAUSSIAルシフェラーゼの活性
CMVプロモーターの制御または様々な制御下のGaussiaルシフェラーゼの非分泌型をコードする1,613bpのMinivectorを、非近交系メスNIH Swissマウスに鼻腔内投与した(5μg)。そのマウスの半分は水中のMinivector(mcGLuc+HO)を与えられ、その他の半分はPEI中のMinivector(mcGLuc+PEI)を与えられた。対照のマウスはDNAを全く与えられなかった。Minivectorの投与の72時間後に、マウスを屠殺し、それらの肺を集めた。肺全体をビーズおよび溶解緩衝液を用いてホモジナイズし、次いでELISAを用いてルシフェラーゼ活性に関してアッセイした。Minivectorは両方ともたとえPEIの非存在下であってもマウスの肺に形質移入され、Gaussiaルシフェラーゼを発現した。これらの結果は、それは処置の間に通常毒性のある形質移入ビヒクルが必要とされない可能性があることを示しているため、重要である。追加の実験には、肺細胞内で異なるタンパク質または特定の遺伝子をサイレンシングするためのshRNAを発現する他のminivectorを用いること、およびAerotechII噴霧器を用いるエアロゾル化によりそのminivectorを投与することが含まれる。
【0066】
実施例5 MINIVECTORへの剪断力の評価
材料および方法
化学物質、試薬および装置
アクリルアミド(EMD Chemicals,Merck KGaA,ダルムシュタット、ドイツ)、アガロース(ISC BioExpress,ユタ州ケイズビル)、およびSYBR(登録商標)Gold(Invitrogen,カリフォルニア州ハーキュリーズ)を除く全ての化学物質はFisher Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)を通して購入した。全ての制限酵素はNew England Biolabs(マサチューセッツ州イプスウィッチ)から購入した。Plasmid MaxiキットはQiagen(カリフォルニア州バレンシア)からのものであり、Amicon Ultra遠心フィルターはMillipore(マサチューセッツ州ビレリカ)からのものであった。Aerotech IIジェット噴霧器はPharmalucence(マサチューセッツ州ベッドフォード)から購入し、Aridyne 2000圧縮機はAllied Healthcare Products(ミズーリ州セントルイス)から購入した。1/8”プローブ超音波処理器(モデル60ソニックディスメンブレーター(Sonic Dismembrator))はFisher Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)からのものであった。PC ImageおよびTotal LabのソフトウェアプログラムはそれぞれFotodyne(ウィスコンシン州ハートランド)およびTotalLab(ノースカロライナ州ダーラム)から購入した。
【0067】
DNAの生成および取り扱い
281bpから5,302bpまでに及ぶ広い範囲の大きさを含むいくつかのプラスミドおよびMinivectorに、Aerotech II噴霧器を通したエアロゾル化により生じる剪断力を、または超音波処理により生じる剪断力をかけた。文全体を通して、これらのベクターはそれらの長さのみにより参照され、これはそれが評価される主な変数であるためである。プラスミドの名前の前に“p”を用いる慣習に従って、Minivector(商標)DNAを“mv”を付けて名付ける。Minivector(商標)DNAを生成するために用いられる親プラスミドを“pMV”と名付ける。親プラスミドであるpMV−KB4TAL−GLucKDELおよびpMV−CMV−GLucKDELはDr.David Spencer(ベイラー医科大学)から頂いたものであり、pMV−KB4TAL−mCherryおよびpMV−CMV−mCherryはDr.Martin MatzukおよびDr.Zhifeng Yu(ベイラー医科大学)から頂いたものである。pQR499はDr.John Ward(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン、英国)から頂いたものである。pDJC1はpQR499をTfiIおよびAflIIIで消化することにより構築された。消化されたpQR499の陥凹末端をT4 DNAポリメラーゼにより埋め、続いてT4 DNAリガーゼによりライゲーションした。大腸菌DH5α細胞中でプラスミドを生成し、Plasmid Maxi Kitを製造業者の説明書通りに用いて単離し、続いてAmicon Ultra遠心フィルターを用いて脱塩および濃縮した。MinivectorのDNAを以下のように得た。Minivectorの親プラスミドを大腸菌株LZ54(Zechiedrich et al. 1997)中に形質転換し、大規模λ Int仲介組み換えおよびMinivector(商標)DNA単離を、記述された(Fogg et al. 2006; Zhao et al. 2010)通りに行った。ニックの入ったDNAベクターを生成するため、ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BbvCIを製造業者のプロトコルに従って用いた。線状化は、PvuI、BspHI、またはSeaIを製造業者のプロトコル通りに用いて行った。
【0068】
DNAの剪断
噴霧のため、10mLのTE(10mM トリス−HCl、1mM EDTA、pH8)中1ngμL−1のDNAをAerotech IIジェット噴霧器に添加した。Aridyne 2000圧縮機により10L/分の速度および50p.s.i.のゲージ圧で空気を噴霧器に送達した。噴霧の間、全ガラス製インピンジャー(AGI)を用いて0.5〜3.5分、7〜10分、20〜23分、および25〜28分の時点で3分間エアロゾルを捕捉し、ここでAGIのリザーバーは20mLのTEを保持していた。エアロゾルの排出量はおおよそ0.3mL分−1であった。同時に、15μLの試料を噴霧器のリザーバーから取り出した。
【0069】
DNAの長さの噴霧における生存への作用の残りの研究のため、15μLの分割量を、噴霧の前およびDNA溶液が使い果たされた時点である30分までの噴霧の間を通した合間に噴霧器のリザーバーから取り出した。早期に起きた劇的な変化のため、分割量は最初1または2分間隔で取り出された。
【0070】
超音波処理のため、エッペンドルフチューブ中の1mLのTE中1ngμL−1のDNAを超音波処理の間氷上で保温し、1/8”プローブ超音波処理器を7ワット(2乗平均の平方根)の電力出力に相当する“5”に設定した。15μLの分割量を、超音波処理の前および超音波処理の間のデータに示した時点において取り出した。全てのDNA剪断実験は最低でも3回別々に行った。DNAを、1,000bpを超える長さに関して1%アガロースゲル、または1,000bp未満のDNAに関して5%アクリルアミド(29:1アクリルアミド:ビス−アクリルアミド)ゲル上で、40mMトリス−アセテートおよび2mM EDTA中でゲル電気泳動により分析した。全てのゲルに125ボルトを2時間かけ、SYBR(登録商標)Gold(Invitrogen,カリフォルニア州ハーキュリーズ)で20分間染色し、PC Imageを用いて可視化した。Total Labを利用して残存するDNAを定量化した。
【0071】
結果
DNAの長さの剪断に対する耐性への作用
細いゲージの針を通る通過、HPLCポンプを通る循環、噴霧、および超音波処理を含む、流体力学的剪断を生じる多数のプロセスが存在し;これらの方法は配列決定のため、またはショットガンクローニング(Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2006)のためのDNA断片を生成するために日常的に用いられている。噴霧は、その再現性および臨床的適切さのため、最初に選択される。DNAベクターが噴霧からの剪断力に耐えた場合、超音波処理が用いられ、これはそれが噴霧器よりもはるかに高い剪断力をより長い時間の間生じさせることができる一方で再現性を維持しているためである。異なるDNAの間の比較を容易にするためにSurvival50という用語が用いられ、これはそのDNAの半分を分解するのに必要な時間を示す。カッコ中の用語(Neb)および(Son)は、それぞれ噴霧および超音波処理を指す。下記で記述するように得られたそれぞれのDNAに関するSurvival50の値も表1に列挙する。
【0072】
DNA試料にCollison様ジェット噴霧器(May K.R. (1973) Collison噴霧器。説明、性能および適用 J. of Aerosol Science, Vol. 4, #3, p. 235)において噴霧を施した。その噴霧器は以下のように作動する:高圧の空気がノズル中の小さな開口部を通してポンプで押し出される。ノズルおよびリザーバーの間の圧力の差が療法溶液をリザーバーから吸い出して高速のジェット噴流にし、そうして15〜500μmの大きさの一次液滴を生成する(Lentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990)。この一次液滴形成の間には最小限のDNAの分解しか起こらない(Lentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990);しかし、その液滴は大きすぎて肺の中に深く浸透することができない(Eberl et al. 2001, Eur J Nucl Med. 2001 Sep;28(9): 1365-72)。阻流板(baffle)内のプラスチックの錐体がその一次液滴を壊して肺の中に深く浸透することができるより小さな(1〜10μm)液滴にする(Bennet et al. 2002, Journal of Aerosol Medicine, 15, 179-188)。DNAの剪断は、ほぼ排他的にその阻流板内のプラスチックの錐体との衝突の間に起こる(Lentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990)。そのより小さな液滴は阻流板領域を逃れてエアロゾルの形で噴霧器を出る。取り外し可能な蓋がリザーバーからの試料採取を可能にする。
【0073】
その小さい液滴のごく小さな割合が気流により吸い口から運び出され;その液滴の大部分は凝縮されてリザーバー中に戻され、そこでそれらはノズルを通って再循環する。結果として、リザーバー中のDNAは時間が経つにつれてますます剪断された状態になる。
【0074】
その凝縮およびエアロゾル化が急速であるため、リザーバー中のDNAの状態はエアロゾル中のDNAの状態と同じである(Knight et al, 1988, J of Infect Diseases, 158(2):443-8)。試料をリザーバーから集めることはエアロゾルを捕捉することよりも容易であり、面倒でなく、そのためエアロゾルからの試料とリザーバーからの試料を比較した(データは示していない)。実際、両方の部位からのDNAの分解は、この研究において試験された長さのスペクトルの両方の末端に相当するDNAである3,869bpのプラスミドまたは385bpのminivectorに関して同じであった。従って、残りの噴霧実験において、試料をリザーバーから吸い出した。
【0075】
281から5,302bpまでに及ぶスーパーコイル状DNAに噴霧を施し、それらの生存をゲル電気泳動により定量化した。DNAの剪断の程度を、時間の経過に伴う完全長の(無傷の)DNAベクターの消失から決定した。その結果は高度に再現性があり、DNAの濃度と無関係であった。1,873bpのDNAに関して、1μg/mlから10μg/mlまでの範囲のDNA濃度は同じ結果を与えた(データは示していない)。DNAの長さと剪断の間の関係は、強く比例していた。加えて、DNAの分解は長さに依存して異なっていた(図8A〜B)。2,600bpを超えるスーパーコイル状DNAは急速に断片化し、擬似指数的分解を示した。1,580〜2,232bpのスーパーコイル状DNAベクターは、図8A〜BにおけるS字の形状の曲線により理解できるように最初は剪断に抵抗を示し、次いで分解した。1,243bp以下のスーパーコイル状Minivector DNAは測定可能な程度に分解せず、水性溶媒の蒸発のため、時間と共にわずかな濃縮作用を示した。
【0076】
比較的大きいMinivector(商標)DNAであるpMV−CMV−Luc2(2,679bp)は、噴霧器において類似の大きさのプラスミドと比較可能な比較的短い生存時間を有しており、これはプラスミドとMinivector(商標)DNAの間の剪断生存時間の差は配列の違い(例えばプラスミド上の複製起点、抗生物質耐性をコードする遺伝子)のためではないことを示している。
【0077】
噴霧の間の濃縮作用は、以前に剪断に耐性である小さい薬物について観察されている。この濃縮作用は、噴霧の終わりごろにそのリザーバーの体積が小さい時により顕著になる。3,000bpを超えるDNAは噴霧の初期の間に完全に剪断される。従って、その濃縮作用はこれらの大きいDNAベクターの剪断の定量化に関しては無視することができたが、その濃縮作用は1,243bp以下のDNAに関するデータ定量に問題を引き起こした。
【0078】
1,243〜1,714bpのスーパーコイル状Minivector DNAは噴霧の後に大部分が無傷であったが、剪断された断片がそのスーパーコイル状のバンドの前を泳動するより短いDNA断片のスメアとして見ることができた(データは示していない)。プラスミドおよびこれらのより大きいminivectorからのこれらの断片の典型的な分解産物の長さは、200〜1,000bpであった。
【0079】
噴霧器において385bpのMinivectorの検出可能な剪断は無かったため、超音波処理により生じる剪断力に対するこれらのMinivectorの耐性を試験した;次いで1,243bp未満のDNAベクターに関するSurvival50(Son)を測定した。385bpのベクターのSurvival50(Son)は28分であった。比較すると、同じ条件下での超音波処理の間の3,869bpのプラスミドのSurvival50(Son)はわずか0.37分であり、これは従来のプラスミドベクターと比較してはるかに高いMinivectorの剪断耐性を示している。
【0080】
DNAのトポロジーの剪断力に対する耐性への作用
線状の、ニックの入った、および弛緩した形状の1,873bpのpQR499プラスミドおよび385bpのmv−H1−CCR5shRNA Minivector(商標)DNAを生成し、DNAのトポロジーの剪断力に対する耐性への作用を調べた。これらのトポロジー的形状のDNAに、(1,873bpに関して)噴霧または(385bpに関して)超音波処理を施し、それらの生存を時間に関して定量化した(図9)。予想されたように、DNAのスーパーコイル形成は剪断力生存への強い保護作用を有していた。その線状の形状の1,873bpのDNAに関するSurvival50(Neb)は、その負にスーパーコイル形成した形状における約22分と比較して、約4分であった。従って、スーパーコイル形成に仲介されるコンパクト化の利益がないため、線状DNAはおそらくはるかに大きな流体力学的径を有し;線状になった1,873bpのDNAははるかに大きな(3,000bpを超える)スーパーコイル状DNAプラスミドの剪断と同様に剪断された。ニックの入った(開環状)DNAは線状よりも約4倍長く持ちこたえ、これは環状であることがいかに流体力学的径を低減させるかを反映している。予め存在しているニックはDNAベクターの生存を低減させるであろうと予想するかもしれない。弛緩した(両方の鎖が共有結合により閉じている)1,873bpのプラスミドは、ニックの入った1,873bpのプラスミドと同じだけ生存した。従って、ニックはそれ以上DNAを剪断力に晒さない。ニックの入った、弛緩した、またはスーパーコイル状のDNAが噴霧により剪断された際、我々は完全長の線状の形状に対応する分解産物を全く観察しなかった。これは線状のDNAの短い寿命の結果である可能性が最も高く、完全長の線状の形状になるとすぐにそれは急速に剪断され、従って蓄積しないと考えられる。負のスーパーコイル形成は、剪断生存において、ニックの入った、および弛緩した1,873bpのDNAを超える(約1.3倍)再現性のある向上をもたらした。
【0081】
385bpのminivectorに関して、DNAトポロジーへの類似の依存が観察された。線状の385bpのDNAは超音波処理の間に急速に分解した。ニックの入った385bpのDNAは、線状よりも約7倍長く生存した。スーパーコイル状の385bpのMinivector(商標)DNAはニックの入った385bpのDNAよりも約4倍長く生存し、それはスーパーコイル状の1,873bpのDNAに関して観察された向上よりも劇的な向上であった。
【0082】
論考
2,000bp未満のMinivector(商標)DNAは、噴霧器において有意に分解しない。Minivector(商標)DNAの剪断力への耐性は、主にその小さい大きさに起因するようである。噴霧器における生存時間は、そのプラスミドの大きさが3,000bpより下まで下がると急激に増大する(図9)。
【0083】
DNAを剪断力から保護するための努力
もろい伝統的なプラスミドDNAベクターまたはsiRNAを送達の間保護するためのビヒクル系の組成の向上において、多くの努力がなされて来ており、なされ続けている。陽イオン性薬剤、例えばポリエチレンイミン(PEI)はDNAを凝縮させ、流体力学的径を低減させ、それによりDNAを剪断から保護するのを助ける(Belur et al. 2007, Nat Protoc 2: 146-52、およびLentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990)。残念なことに、これらのビヒクルのほとんどは細胞毒性であり、(Brunot et al. 2007. Biomaterials 28:632-40; Moghimi et al. 2005, Molecular therapy 11 : 990-5)、それがそれらの有用性を制限している。PEIは血液に送達された場合細胞毒性であるが、エアロゾルにより送達された場合、全身投与と比較して毒性が低い(Di Giola and Conese, 2009, Drug Des Devel Ther. 2009 Feb 6;2: 163-88)。Minivector(商標)DNAの送達に伴う剪断力に耐える能力は、凝縮剤の非存在下においてさえも、毒性のビヒクルの必要性を低減するはずである。DNAが肺において細胞の中に入ることを可能にするために、おそらくいくらかのビヒクルがなお必要であると考えられるが、これは従来のプラスミドDNAベクターに関して必要とされるであろうよりも少ないはずである。
【0084】
DNAの剪断の遺伝子療法への療法的結果
DNAの剪断の明らかな損失は、療法のために残存している無傷の生物学的に活性なベクターの量の低減である。スーパーコイル状ベクターの喪失を埋め合わせるために、送達されるDNAの用量を単純に増大させることができるであろうと主張することが可能であろう。これを行うことは2つの好ましくない結果をもたらすであろう。第1に、ベクターの量を増大させることは細胞毒性の送達ビヒクルの量の同等の増大を必要とする。第2に、大きなプラスミドDNAは壊れてより小さな線状のDNA断片になる。その短い線状のDNA断片の送達の結果、ベクターに関係する毒性がもたらされる可能性がある。剪断されたDNAの送達のさらなる結果には、DNAの分解、ならびにDNA修復および組み替え経路の誘導が含まれ、それは結果としてゲノムの不安定性をもたらす可能性がある。遊離のDNA末端は細胞中で迅速に処理される。極端な例として、DNAの末端は、特に大量に送達された場合、アポトーシスの引き金を引く可能性がある。別の極端な例として、細胞はそのDNAを修復し、ランダムな方式でライゲーションして大きなエピソーム性コンカテマーを形成する可能性がある。これはマウスの肝臓に送達された線状DNAに関して報告されており、その事例では結果として数週間持続する安定な長期導入遺伝子発現がもたらされた(Chen et al, 2001, Molecular Therapy, 3, 403-410)。DNAの剪断の結果もたらされるランダムなDNA断片が一緒につながり、新しい毒性の遺伝子産物に関する潜在性を有する新しい配列を生成する可能性がある。
【0085】
従って、Minivector(商標)DNAが噴霧の間伝統的なプラスミドベクターよりも長い間噴霧および超音波処理を生存しただけではなく、無傷で、たとえあったとしても非常に少ないDNAの分解で生存したのは重要である。従って、短い線状のDNA断片を送達する危険性は、より小さい、スーパーコイル状DNAベクターを用いることによりかなり低減される。
【0086】
DNAの剪断に関するモデル
DNAのスーパーコイル形成は、剪断生存への相反する作用を有する可能性がある。スーパーコイル状DNAにおける捻れ歪みはその分子をより剪断を受けやすくする可能性がある一方で、コンパクト化は剪断耐性を増大させる(Lengsfeld and Anchordoquy, 2002, Journal of Pharmaceutical Sciences, 91, 1581-1589)。本明細書中のデータは、コンパクト化の有益な作用が優勢な作用であることを示している。スーパーコイル形成により提供される利点は、DNAがより大きくなるにつれて減少する。
【0087】
肺へのDNAベクターの送達
剪断力を生き延びるDNAベクターの長さを同定することは、どの送達経路であろうとも、遺伝子療法送達に関する重要な関わり合いを有する;しかし、Collison様ジェット噴霧器の使用は、我々のデータを特に肺への療法的送達に密接に関連するものにする。肺は静脈内、気管内、鼻腔内およびエアロゾル送達法により容易にアクセス可能であり、これらの経路のいずれもDNAベクター送達を適用しやすい。しかし、エアロゾルによる核酸の送達は非侵襲的であり、冒された組織に直接送達し、そして非標的器官における合併症を防ぐのを助ける可能性がある。加えて、エアロゾル送達はDNAが肺に全身投与により得ることのできる量よりもはるかに高い量で送達されることを可能にする(Bennet et al. 2002, Journal of Aerosol Medicine, 15, 179-188)。肺疾患の処置に関して、いくつかの有望な遺伝子療法標的が同定されてきた。嚢胞性線維症の処置を目標とする幾ダースもの遺伝子療法臨床試験が進行中である;しかし、残念ながらその療法は今のところ成功していない(O'Sullivan and Freedman, 2009, Lancet, 373, 1891-1904)。喘息もRNA干渉(Duncan et al, 2008, Molecular Pharmaceutics, 5, 559-566)、shRNA(Kozma et al, 2006, J. Immunol 176: 819-26)またはマイクロRNA(miRNA)に関する疾患標的としての高い可能性を有する。
【0088】
実施例6 スーパーコイル状MINIVECTORへの化学的部分の結合
一本鎖環状DNAの鋳型を、まずニッキングエンドヌクレアーゼNt.BbvCIを用いてスーパーコイル状Minivector DNAにニックを入れることにより生成した。次いでT7エキソヌクレアーゼがそのニックにおいてニックの入った鎖が完全に消化されるまでヌクレオチドの除去を開始することができた。無傷の鎖はそのエキソヌクレアーゼが作用するための5’末端を欠いており、従って消化されないまま残った。次いで、内部に標識された、5’リン酸化されたオリゴヌクレオチドプライマーをその環状ssDNA鋳型にアニーリングさせた。続いてT4 DNAポリメラーゼを用いて2番目の鎖を再合成し、それはプライマーの位置で開始および終了し、結果としてニックの入った環状の標識されたDNAが得られた。スーパーコイルを復元するため、部分的にDNAらせんを解くインターカレーターである臭化エチジウム(EtBr)を添加した。T4 DNAリガーゼによるニックの密閉がその解けた状態を留めた(trapped)。それに続くブタノール抽出によるEtBrの除去は、負にスーパーコイル形成された標識されたMinivector DNAを生成した。そのプロセスの流れ図を図10に示す。
【0089】
その手順の様々な段階における生成物を、5%ポリアクリルアミドゲル上でのポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。DNAをSYBR Goldで染色することにより可視化し、またはTyphoon Imager(GE Life Sciences)を用いて532nmのレーザーで励起し、蛍光Cy3標識の存在に関して検出することにより可視化した。Cy3の蛍光は、その手順の後の段階において、その標識されたプライマーのアニーリングおよび第2の鎖の再合成の後にのみ検出される。
【0090】
Cy3標識された339bpのMinivector NDAを、完成したMinivectorと無関係な標識プライマーを除去するため、50K MWカットオフ排除フィルターカラムを通して精製した後、リポソーム性形質移入試薬である“Lipofectamine 2000”によりHeLa細胞の中に形質移入した。蛍光標識を欠く同じ339bpのMinivectorを、並行する実験において陰性対照としてHeLaの中に形質移入した。形質移入の3時間後の画像は、457nmにおける青色発光チャンネルにより同定されたDAPIで染色された核を示した。Cy3標識されたDNAは、617nmにおける近赤色発光チャンネルにより同定された。画像は、Cy3標識されたDNAの存在および蛍光画像化法によりMinivector DNAを可視化する能力を確証した(データは示していない)。
【0091】
参考文献
【0092】
【化5】

【0093】
【化6】

【0094】
本明細書で引用された全ての特許、公開された出願および参考文献の教示を、そのまま援用する。
この発明は特にその実施態様に関連して示され、記述されたが、それにおいて添付された特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく形式および詳細における様々な変更がなされてよいことは当業者には理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
minivectorを含む核酸分子組成物であって、前記のminivectorが核酸配列をコードしている、前記組成物。
【請求項2】
その核酸配列がショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
その核酸配列が、タンパク質;異なるDNA配列;RNA配列;および細胞膜からなるグループから選択される構成要素により結合されることができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
そのminivectorが化学的部分、修飾されたオリゴヌクレオチド、および/または修飾された主鎖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
その化学的部分が、フルオレセイン、ビオチン、色素、およびコレステロールからなるグループから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
細胞において遺伝子の発現をサイレンシングする方法であって、前記の細胞をminivectorと接触させることを含み、前記のminivectorが核酸配列をコードしており、その核酸配列がその遺伝子の発現をサイレンシングする、前記方法。
【請求項8】
その核酸配列がショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
その核酸配列が、タンパク質;異なるDNA配列;RNA配列;および細胞膜からなるグループから選択される構成要素により結合されることができるDNAを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
療法上有効量のminivectorをそれを必要とする哺乳類に投与することを含み、そのminivectorが核酸配列をコードしている、遺伝子療法の方法。
【請求項12】
その核酸配列がショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
その核酸配列が、タンパク質;異なるDNA配列;RNA配列;および細胞膜からなるグループから選択される構成要素により結合されることができるDNAを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
その哺乳類がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
細胞に療法上有効量のminivectorを投与することを含み、そのminivectorが核酸配列をコードしている、遺伝子療法の方法。
【請求項17】
その核酸配列がショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
その核酸配列が、タンパク質;異なるDNA配列;RNA配列;および細胞膜からなるグループから選択される構成要素により結合されることができるDNAを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
その細胞が哺乳類細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
哺乳類細胞において未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子の発現をサイレンシングする方法であって、その哺乳類細胞に有効量のminivectorを投与することを含み、そのminivectorが核酸配列をコードしており、そのminivectorが未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子の発現をサイレンシングする、前記方法。
【請求項22】
その核酸配列がショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
その核酸配列が、タンパク質;異なるDNA配列;RNA配列;および細胞膜からなるグループから選択される構成要素により結合されることができるDNAを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
その哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
それを必要とする哺乳類において癌を処置する方法であって、その哺乳類に療法上有効量のminivectorまたはminivectorを含む哺乳類細胞を投与することを含み、そのminivectorが核酸配列をコードしている、前記方法。
【請求項27】
その核酸配列がショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
その核酸配列が、タンパク質;異なるDNA配列;RNA配列;および細胞膜からなるグループから選択される構成要素により結合されることができるDNAを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
その哺乳類がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
その癌が非ホジキンリンパ腫である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
その非ホジキンリンパ腫が未分化大細胞リンパ腫である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
細胞における遺伝子発現の方法であって、前記の細胞をminivectorと接触させることを含み、前記のminivectorが核酸配列をコードしており、その核酸配列が遺伝子を発現する、前記方法。
【請求項34】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
その細胞が哺乳類細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
哺乳類の気道中の細胞に療法上有効量のminivectorを送達することを含み、そのminivectorが核酸配列をコードしている、遺伝子療法の方法。
【請求項37】
その核酸配列がショートヘアピンRNA(shRNA)またはマイクロRNA(miRNA)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
その核酸配列が、タンパク質;異なるDNA配列;RNA配列;および細胞膜からなるグループから選択される構成要素により結合されることができるDNAを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
その核酸配列が遺伝子を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
その哺乳類がヒトである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
そのminivectorが噴霧装置の使用により送達される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
そのminivectorがキャリヤー分子の非存在下で送達される、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
そのminivectorがその哺乳類の気道の鼻粘膜に送達される、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
請求項1に記載の組成物を含む、哺乳類細胞。

【図1】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−507934(P2013−507934A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534410(P2012−534410)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/052920
【国際公開番号】WO2011/047318
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(391058060)ベイラー カレッジ オブ メディスン (16)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
【Fターム(参考)】