説明

遺伝子配列解析システム

【課題】
従来の大規模並列パイロシーケンシング装置は、測定ビーズの導入に、時間と手順が多くかかるため、スループットが低下すること、及び試薬の置換精度が低下することによる解析精度の劣化が生じる困難があった。
【解決手段】
複数のマイクロ反応槽を有するフローセルと、それに対向するカメラを有し、測定対象のDNAは、比重4以上のビーズ、好適にはジルコニアビーズの表面に固定された構成を用いる。フローセルは、ビーズをフローセルに導入する際には、水平とし、伸長反応を測定する際は、カメラの光軸と対向し、カメラの光軸は水平方向に対して傾きを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分析に用いるキット、装置、システム及び遺伝子の塩基配列を解析する装置に関する。より詳しくは、遺伝子配列解析、遺伝子多型解析、遺伝子変異解析及び遺伝子発現解析を可能とする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA塩基配列決定にはゲル電気泳動と蛍光検出を用いた方法が広く用いられている。この方法ではまず、配列解析を行おうとするDNA断片のコピーを多数作製する。DNAの5'末端を始点として種々の長さの蛍光標識断片を作製する。また、これらDNA断片の3'末端の塩基種に応じて波長の異なる蛍光標識を付加しておく。ゲル電気泳動により長さの違いを1塩基の差で識別し、それぞれの断片群が発する発光を検出する。発光波長色から測定中のDNA断片群のDNA末端塩基種を知る。DNAは短い断片群から順次蛍光検出部を通過するので、蛍光色を計測することで短いDNAから順に末端塩基種を知ることができる。これにより、配列決定をする。このような蛍光式DNAシーケンサーは幅広く普及しており、また、ヒトゲノム解析にも大いに活躍した。この方法では、内径50μm程度のガラス細管を、多数本用い、さらに末端検出等の方法を利用し、一台あたりの解析処理数を増加する技術が開示されている。(例えば非特許文献1)
一方、パイロシーケンシングに代表される段階的化学反応による配列決定法(例えば特許文献1及び特許文献2)は、取り扱いの簡便性から注目されている。概略は以下の通りである。ターゲットとするDNA鎖にプライマーをハイブリダイズさせ、4種の相補鎖合成核酸基質(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を1種類ずつ順番に反応液中に加えて相補鎖合成反応を行う。相補鎖合成反応が起きるとDNA相補鎖が伸長し、副産物としてピロリン酸(PPi)が生成する。ピロリン酸は共存する酵素の働きでATPに変換され、ルシフェリンとルシフェラーゼの共存下で反応して発光を生じる。この光を検出することで加えた相補鎖合成基質がDNA鎖に取り込まれたことがわかり、相補鎖の配列情報、従ってターゲットとなったDNA鎖の配列情報がわかる。
【0003】
この方法は、フロースルー型解析への適用が可能であり、上記手法を応用して、解析処理数を格段に増加させる技術が報告されている(例えば非特許文献2)。本技術は、複数の微小反応槽を1面に有するフロースルーセルを用いる。ターゲットDNA鎖にプライマーをハイブリダイズさせた同一種類の分子複数を、直径約35μmのセファロース製ビーズ1個の表面に固定し、そのビーズと生物発光用酵素(ルシフェラーゼ)等を固定したビーズを、フローセル内の同微小反応槽に充填する。また、それらのビーズが流出しない様に、直径0.8μmのマイクロ粒子(microparticle)を、充填している。これらのビーズの充填は、ビーズ含有溶液をフローセルに導入して、遠心器により沈降させることにより実施している。また解析は、フローセル上流より、伸長反応用の4種の相補鎖合成核酸基質(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を逐次導入し、その際に生じる生物発光を観測している。これらの技術は、まず、光ファイバープレートの1端面にアンカープローブを固定し、環状核酸鋳型(Circular nucleic acid templates)と結合させ、生物発光により配列決定や多型解析を行う(例えば特許文献3)。また、上記光ファイバープレートを利用し、ピコタイタプレートを製作し、フローセルの一部に利用している(例えば非特許文献3)。さらに、このピコタイタプレート内の個々の反応ウエル内で、生成する物質、具体的にはピロリン酸などの、横方向への拡散によるコンタミネーションの減少を図るためのメンブレン等を付加したプレートに関し、文献(例えば特許文献4)に開示されている。
【0004】
また、パイロシーケンシング反応へ応用が可能な試薬として、先に述べた技術と異なる反応系の例が開示されている(例えば特許文献5)。この従来技術では、酵素ピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)の逆反応を用いて、AMPとPPiをATPに合成し、AMP濃度を測定している。
【0005】
【非特許文献1】Anal. Chem. 2000, 72, 3423-3430
【非特許文献2】Margulies M, et al., “Genome sequencing in microfabricated high-density picolitre reactors.”, Nature, Vol.437, Sep.15; 2005, pp376-80及びSupplementary Information s1〜s3
【非特許文献3】Electrophoresis 2003, 24, 37693777
【特許文献1】国際公開パンフレット第98/13523号
【特許文献2】国際公開パンフレット第98/28440号
【特許文献3】国際公開パンフレット第01/020039号
【特許文献4】国際公開パンフレット第03/004690号
【特許文献5】特開平第09-234099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微小反応槽を複数並列するフロースルー型検出器を用いたパイロシーケンシング解析技術は、従来のゲル電気泳動と比較して、格段のスループット性能を有する。しかし、その解析可能な塩基長が短いことが、現在の大きな課題である。そのため、この技術では、解析塩基長の拡大が重要な目標の一つである。
【0007】
解析可能塩基長が制限される理由の一つは、ポリメラーゼ伸長反応の精度に起因する。先に述べた通り、本技術は、ポリメラーゼ伸長反応により、4種類の塩基を逐次、伸長させ、その伸長反応の発生あり/なしにより、塩基配列情報を得る方法である。その場合、伸長反応の精度は、伸長の材料として導入する試薬成分が微小反応槽内に到達する確度と、その後に導入する他の種類の試薬導入時に残留してしまう以前の試薬成分の残留量に依存する。具体例として、図14を用いて説明する。まず、ビーズ上に、同じ種類の測定対象DNA1401〜1403が、プライマー1411〜1413と相補的に結合した状態で、固定されているとする(図14(a))。本図では、簡単のため、3分子だけ表記した。プライマーの3‘側末端より、伸長による解析が始まるが、本例では「dCTP」により伸長が起きることは、容易にわかる。ここで、伸長基質を、順に、C→G→T→A→C(繰り返し)で導入すると仮定する。まず塩基Gと相補的なdCTPを主成分とする試薬を導入し、伸長反応の有無を解析するとする。すると、一般的には、1421及び1422の様に、塩基Cがプライマーの3’末端に追加される。しかし、仮にdCTPの供給が不十分である場合、1423の様に、伸長反応未達の分子が発生してしまう。その後、適当な洗浄試薬を用い、導入したdCTP成分を排出した後、次の試薬としてdGTPを主成分とする試薬を導入する。すると、正常に伸長した分子1431及び1432は、つぎのGを取り込むことが出来るが、未伸長であった分子1433は、伸長できない。その後、Tで伸長が起き、Aでは伸長が起きない(図14(d))。この結果、正確に伸長していた分子は、1441及び1442の様になっている。しかし、最初に未伸長となってしまった分子は、1443の様になる。実際には、ビーズ上の分子の一部が未伸長となるため、1441と1443が混合された状態となる。次に、再度dCTPを注入すると、本来ならば伸長は生じない。しかし、未伸長だった分子1453は、伸長が生じてしまう。このため、解析者は、偽の配列情報として、「GCAG」と、4塩基目がGであると検定してしまう。これを、伸長のフェーズずれが要因とする偽信号成分と言う。
【0008】
一方、試薬導入間の洗浄が不十分であれば、残留成分由来の過伸長が発生してしまう。先と同様の場合において、C→G→Tと検定した場合を考える(図15(a))。dTTP1511を導入した際に、仮に以前に導入したdGTP1501〜1504が一部残留していると、伸長反応として、TGと、2塩基分伸長してしまう場合がある。このような場合を、過伸長とよぶ。この場合、次のAでは、起きないはずの伸長が2塩基分発生する。このため、解析者は、偽の配列情報として、「GCATT」と、4塩基目及び5塩基目がTであると検定してしまう。
【0009】
いずれの場合も、その後の解析における偽伸長信号の発生要因となり、真の伸長との判別が難しくなる。従来技術は、ビーズの充填において、マイクロ粒子や、メンブレンなどを利用しているため、試薬導入の不完全や、洗浄不完全により残留が発生しやすく、偽信号の増加が起こりやすい。
【0010】
また、従来技術では、微小反応槽へのビーズの導入において、遠心器を利用しているが、その結果、測定所要時間の増大、及び手順の増加が発生し、結果として測定スループットの低下が発生している。そのため、試料固定ビーズの簡便で高速な充填手段が求められている。
【0011】
以上の通り、解析スループットが高く、試薬の導入精度と、洗浄による残留試薬の低減を実現した、解析可能塩基長の長い、大規模並列化塩基配列解析装置の実現には、これらの課題が克服される必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記に上げた課題の解決には、試料固定ビーズをマイクロ反応槽へ「自動的に」挿入する技術、及び試薬流入時に、ビーズが容易には流出しないための技術が必要となる。我々は、この課題の対策として、高比重のビーズの利用を考えた。従来、バイオ分野に用いられていたビーズは、その多くが比重4未満のものであった。特に、上記に述べた従来技術におけるセファロースビーズでは、比重は1より若干重い程度であり、周囲に存在する溶液と比重がほとんどかわらないために、ビーズを所定の領域に設置しようとしても容易に流出してしまう。そのため、マイクロ粒子等による梱包が必要となり、従って、試薬導入の不十分な課題や、試薬置換時の不完全性が生じてしまう。実施例でも述べるが、比重4以上のビーズは、その自重により、マイクロ反応槽内に容易に捕捉される。特に、比重6のジルコニアビーズは、耐食性も良く、強度もあり、取り扱いが容易である。また、その自重により、フローセル内部へ外部から導入する操作だけで、容易に反応槽に捕捉させることができる。自動的に反応槽に捕捉されるためには、特にその重力を利用してもよい。その場合、試薬を水平に流す際に、反応槽の開口部を鉛直方向において実質的に上向きに配置する必要がある。この場合、ビーズの補足には適しているが、フローセル内に気泡が混入した場合、それが滞在してしまう可能性がある。気泡の混入が生じるとその後の測定に影響が生じる。本発明の実施技術では、4種の基質試薬や、それらを洗浄する試薬等を、順次、フローセル内に流入する必要があるが、流入の流路において、それらの試薬間に「エアギャップ」を用いることが有効である。「エアギャップ」を用いれば、送液中に前後の試薬の混合の発生を回避し、試薬置換が精度良く行うことができる。「エアギャップ」の利用は、フローセル内への、積極的な気泡の導入であるが、気泡の排出に困難が伴う。気泡の排出には、試薬の流れを鉛直方向において下から上へとすることが有効である。この際、予め、フローセルの角度を可変とすること、及び反応測定時の試薬の流れる向きの角度を、鉛直よりずらすことにより、解決できる。この構成により、試薬の流れを鉛直方向において下から上へとする構成であっても、反応槽からビーズが脱落することを防止することができる。特に、5度〜30度程度のずれが、気泡の排出と、ビーズ保持の両方の目的を達成するに好適である。
【0013】
本発明では、比重4以上であって例えば比重6のビーズ例として、ジルコニア粒子を用いる。ジルコニア粒子は、二酸化ジルコニウム(ZrO2)からなるものでもよく、また、酸化ジルコニウムに酸化イットリウムを添加することで強化しているものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、核酸分析、特に遺伝子配列解析において、解析スループットの向上と、解析精度の向上が達成される。特に、解析精度の向上は、従来技術の蛍光式DNAシーケンサーに対抗しうる水準を達成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を、実施例により説明する。ここでは、測定対象の遺伝子の配列を、パイロシーケンシング法の原理を用いて、決定する。本実施例の装置構成例を、図1に示す。本実施例の装置は、フロースルー型のセル(フローセル)101、発光画像を検出する冷却型CCDカメラなどの検出部である2次元撮像デバイス102、順次にセルに分注するために4種の核酸基質(dATP、dGTP、dCTP、dTTPの4種類など)を各々収める試薬槽103〜106、伸長反応測定後にフローセル内を洗浄するための洗浄試薬を収める洗浄試薬槽107、洗浄後にセル内の洗浄試薬成分の残留を洗い流すためのコンディショニング試薬を収めるコンディショニング試薬槽108、それらを選択的にフローセル側に注入するための注入部(選択バルブ109、試薬をハンドリングするためのポンプ110)、廃液ボトル111、などにより構成される。また、試料(測定対象核酸)を表面に固定したビーズは、液体に攪拌した状態で、ビーズ槽112に収められる。システムはビーズ導入と試薬導入を切り替える導入切替機構113を有する
ここで、上記のフローセルの構造例を説明する。図2は、フローセルの展開図である。フローセルは、後述の試料固定ビーズを保持するため、複数のマイクロ反応槽(凹部)201を表面に有する基板202と、試薬流入口203、試薬排出口204、及び必要に応じて設ける試料投入口(図示せず)を有する上板205と、流路を形成するスペーサー206で構成される。
【0016】
基板の1例を、図5に示す。基板は、中央部に複数のマイクロ反応槽501を有する。図5(b)は、破線部分の断面図である。マイクロ反応槽501の形状は、例えば、円柱状でよい。この形状は、基板の素材や、製作方法により、選択される。我々は、基板として、ステンレス材を用い、切削加工により製作した例、シリコンウエハーを用い、マスクとウエットエッチングにより製作した例、スライドガラス等のガラスを用い、粒子を用いたブラスタ加工により製作した例、及びポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用い、金型の射出成型により製作した例を検討した。本例は、本発明に用いる材料や製作法につき、制限するものではない。
【0017】
図1の装置構成説明に戻る。2次元撮像デバイス102の撮影面が、上記フローセルのマイクロ反応槽の分布する領域となる様に、上述のフローセルを設置している。破線121は、2次元撮像デバイス102の撮影に関する光軸、すなわち撮像デバイスの撮像面の中心を通り、撮像面に実質的に垂直な法線を示している。また、破線122は、フローセルの基板面を示している。この基板面は、撮像デバイスが撮影する像面である。破線124は、線121と面122との交点を通る鉛直方向の線である。ここで、角度123は、フローセルの基板面の鉛直方向からの傾きを示している。この角度は、光軸121の水平な面からの傾きと同意である。本図では、水平な台として130を図示し、光軸と平行に設置される台として131を図示している。従って、台130と台131とがなす角度も角度123である。フローセルの試薬流入口141、試薬排出口142は、それぞれ図中の通り、フローセルに設けられており、位置関係は試薬流入口141が鉛直方向において下で、試薬排出口142が上である。従って、試薬の流れは、鉛直方向で下から上である。これは、セル内に流入する気泡を、試薬の排出とともに、効率的に排出するために有効な配置である。
【0018】
本装置の測定対象である試料固定ビーズを説明する。図3は、試料固定ビーズの例である。ビーズとしては、例えば、ビーズ301として、比重約6のジルコニアビーズを用いる。ここで比重は水に対する比重をさす。ジルコニアビーズは、その素材として、二酸化ジルコニウム(ZrO2)と記載されることが多いが、一般例としては、酸化ジルコニウムに酸化イットリウム等を添加することで強化している物質である。その比重は、製造工程や混合比などで異なるが、一般的には5.5〜6のものが多い。ビーズは、二酸化ジルコニウムを素材とするものでも、酸化ジルコニウムに酸化イットリウム等の添加物を添加したものを素材とするものであってもよい。この場合、試薬に対する耐食性に優れ、比重が高いため、本装置における利用に最適である。ただし、比重4以上のビーズを用いることが効果的である。その理由や効果に関しては、後述する。
【0019】
ビーズ表面には、測定対象の単鎖化DNA302と配列解析開始位置であるプライマー303が相補的に結合したものが、複数分子固定されている。なお、図3では、簡単のため、1組だけを表記した。ここで、1ビーズの表面に固定される分子は、1種類、つまり同じ種類のものである必要がある。1ビーズ表面に、単一種類の分子を、複数増幅する手法は、例えば従来より公知である「エマルジョンPCR」等とすることができる(例えば非特許文献2)。その形態としては、図の示すとおり、測定対象DNAをビーズ表面に固定し、あるいは増幅した後に固定し、プライマーを相補的に結合させる場合(図3(b))と、プライマーをビーズ表面に固定し、測定対象DNAを相補的に結合する場合(図3(c))などが、利用できる。本実施例では、ビーズの径として、約20〜100μmについて、実験を行い、効果を確認した。ビーズの径の違いは、表面積の違いとなり、1ビーズ表面に固定される分子数、つまり、後述の測定感度の違いにつながるが、カメラとして電子増倍型冷却CCDを用いた場合、上記すべての場合について、測定が可能である。ただし、フローセルのマイクロ反応槽の径や深さは、用いるビーズの大きさにより選択する必要がある。一般的には、マイクロ反応層の径や深さは、用いるビーズの1.2倍〜1.5倍程度とすることが、好適である。すなわち、約50μmのビーズを用いる場合は、径および深さとして、60〜75μm程度とすることが好適である。これは、1反応層に入るビーズが高々1個である条件を満たすことのできる好適な条件である。
【0020】
本実施例の解析手順のフローは、図4である。本実施例では、予め何らかの方法により、表面に測定対象DNAとプライマーのセットが固定されたビーズを準備する。解析手順は以下の通りである。
(1)ビーズの導入
フローセルのマイクロ反応槽に、測定対象を固定したジルコニアビーズを導入する。その場合、フローセルの角度を可動的とし、ビーズの導入時には水平あるいは水平に近い角度とすることが有効である。すなわち、フローセル基板面の鉛直方向に対する角度を可動的とし、ビーズの導入時には水平方向と実質的に平行か、その近傍範囲とする。図5は、ビーズ導入時のフローセル内を説明している。502は、フローセル基板の断面であり、マイクロ反応槽が503,504で示される。矢印510、511はビーズを含む試料溶液の流れを示している。ビーズは、上流より流入し、510のようにマイクロ反応槽に進入し、捕捉される。一度捕捉されたビーズは、試料溶液と比較して比重が高いため、反応槽より流出することはない。また、ビーズを1個捕捉した反応槽は、それ以上はビーズは捕捉できない。従って、他のビーズは、例えば511で示されるように、まだビーズを捕捉していない他の反応槽まで流れ、そこで捕捉される。本図は、試料溶液は、左から右に流れているが、実際には、ビーズが反応槽内に捕捉されるように、流れを交互に往復方向に流し、捕捉率を上げる。ビーズが反応槽に捕捉されるメカニズムは、ビーズの自重と、浮力と、沈降に際に関与する溶液の粘性力で、簡単に記述できる。それらの関係は、以下のようになる。図6は、ビーズが反応槽に捕捉される場合と捕捉されずに流れる場合の条件を説明する図である。601のビーズが、矢印602の方向に流れる場合、反応槽の開口部では、沈降が開始し、603の様になる。このとき、図の様にビーズの中心が開口部より沈降すれば、そのビーズは捕捉され、そこまで沈降しなければ、ビーズは反応槽の開口部より飛び出してしまう。そのため、捕捉される条件は、開口部の径、ビーズの比重と径、流速により、おおよそ決定できる。その条件を見出すため、以下の仮説に従い計算した。この理論計算の前提条件を以下に記す。図6に示すように,ビーズは溶液の比重より大きいため,プレート上面にほぼ接して一定の速度(vflow)で移動する。この速度はフローセル内の流速に比例する。ビーズの重心がウェルの端に到達後(図6の601),重力によって沈降を開始し,沈降距離(d)がビーズの半径(r)以上になったときにビーズ603がウェルの中に充填される。いま,ビーズの比重をσ,溶液の比重をρ=1,ビーズの体積をV,ビーズの半径をr,溶液中のビーズが受ける抵抗率をf,重力加速度をgとし,プレート上面にビーズが接したときのビーズの重心を原点とし,プレートに対して鉛直下向きをx軸として,ビーズの重心位置でビーズの位置を表わすとする。ビーズには重力と浮力と抵抗力が加わるから,ビーズの運動方程式は[数1] と表わせる。
【0021】
【数1】

ここで[数2][数3]はxの時間tについての1回および2回微分である。
【0022】
【数2】

【0023】
【数3】

この微分方程式をt=0での初期条件の条件で解くと[数4] (1)となる。
【0024】
【数4】

また,抵抗率fはストークスの式からηを溶液の粘度として[数5] (2)で表わされる。
【0025】
【数5】

次に図6の点線で示したようにビーズがウェルに充填されるためには[数6] (3)で距離r以上沈降しなければならない。
【0026】
【数6】

このための条件は[数7] (4)である。
【0027】
【数7】

ここで,(4)の等号条件に(3),(2)式と[数8]で表されるVを代入し,r=30 μm, R=40 μm,g=9.8 msec-2, [数9]で表されるηを(水の40℃での粘度)を代入すると図7に示すような比重の閾値とvflowの関係が得られる。
【0028】
【数8】

【0029】
【数9】

この結果、以下のことが導かれる。まず、試料の流速をあげるには、比重が大きければ、大きいほどよい。比重4程度までは、比重の増加にしたがい、上限流速は増加する。フローセル内でビーズの捕捉率を上げるためには、この上限速度の範囲内で、流速が高い方が有効である。何故ならば、流速が大きければ、単位時間のビーズの移動量が大きく、反応槽との遭遇確立が増加するためである。しかし、本図より、比重4以上では、比重が増加しても上限流速の上昇があまり期待できない。そのため、比重4以上のビーズでは、その捕捉率が増加しない。従って、比重4以上のビーズを用いれば、その捕捉率に差異が少ない。その結果、捕捉率の観点からは、比重4以上を用いることが、好適であるといえる。
【0030】
ここで、ビーズの捕捉率を改善するいくつかの実施の例を説明する。捕捉率は、ビーズがフローセルの基板表面を流れる際に、ビーズとマイクロ反応槽が出会う確立を上げれれば、改善させることができる。例えば、図8は、マイクロ反応槽を2次元に配置した場合であって、4つのマイクロ反応槽を含む配置格子の最小単位が正方形、もしくは長方形である810となる格子状配置の場合を示す。これは、マイクロ反応槽がフローセルの長軸方向に複数の列を形成して配置され、フローセルの長軸方向と実質的に直交する短軸方向の直線上に、隣り合う複数の列の各々のマイクロ反応槽の開口面における中心点が位置しないように配置される態様であってもよい。矢印801の軌跡で示すように格子最小単位の正方形や長方形の角に接するビーズは、その延長上に配置する反応槽に、数多く出会うことが可能であるが、矢印802の軌跡で示すように格子最小単位の正方形や長方形の角に接さないビーズは、反応槽に出会うことができない。これを改善する方法としては、簡単には、反応槽の分布密度を高くすることがあげられる。しかし、隣接するマイクロ反応槽の距離が小さい場合、反応槽間の発光成分のコンタミネーションが発生する可能性があるため、距離を維持したままに、ビーズと反応槽との交差効率を上げることが重要である。例えば、図9の通り、試料溶液の流れ方向901に対し、反応槽が斜めに分布する。このとき、マイクロ反応槽を2次元に配置した場合であって、4つのマイクロ反応槽を含む配置格子の最小単位は長方形ではない菱形910となる。この場合、反応槽間の距離を維持しながら、ビーズと反応槽の出会う確率をさらに向上させ、ビーズの捕捉率を高めることが可能である。また、図10の様に、反応槽間に、ビーズの流れ方向を変化させる突起物1001を設けることも有効である。この突起物の製作は、樹脂材料を用いた金型による射出成形において、簡単に実現できる。突起の形状は、図の様に単なる点でも良いが、図11の様に、斜め分布している反応槽の配置格子の最小単位である、長方形ではない菱形の辺の位置に実質的に配置するか、これに実質的に平行になる様にする(1101)と、より効果的である。特に、本例では、突起物1101は、反応槽と反応槽を結ぶ線上に位置している。この結果、反応槽と反応槽の中間を移動してきたビーズ1110は、突起物と出会う際に、突起物に沿って移動するため、その延長上の反応槽に誘導される。また、同様に誘導されたビーズ111の誘導先の反応槽が、既に他のビーズで占有されている場合(1112)でも、誘導されたビーズは反応槽の存在する流れ上に誘導されているため、その流れの延長上にある空の反応槽(本図では1113)に出会うことができる。従って、ビーズの捕捉率が格段に向上する。また、以上に述べた凸状構造物は、基板側でなく、フローセルの基板に向かい合う上板の流路側に設けることによっても、同様な効果を得ることができる。
【0031】
以上の実施の例より、フローセル内のマイクロ反応槽への試料固定ビーズの補足を、試料溶液の制御だけで実現できる。これは、装置の自動化に有効であり、解析スループットの向上に大きく寄与する。
【0032】
また、本装置では、ビーズの導入時と、以降に述べる反応測定時で、フローセルの傾きを変化させることが、特徴的である。これは、フローセル内に逐次混入する気泡を、試薬排出口より効率よく排出し、気泡の残留により反応現象、つまり生物発光の観測に悪影響が生じる事態を解決する。また、フローセルを鉛直方向に対して垂直にしない構成とする。この理由は、測定中に反応槽内のビーズが流出、あるいは落下することを防ぐためである。フローセルの角度が可動である場合、その角度の再現性が重要である。特に、測定時のフローセル面は、イメージデバイスの光軸に実質的に垂直であることが求められる。この場合のズレは、測定像のゆがみを発生させる。図17は、フローセルの傾き制御機構の一例である。破線1701は水平、1702は鉛直、1703はカメラの光軸、1704は光軸と実質的に垂直な線である。1710は装置の基部であり、それより、フローセルの水平支持アーム1711、及び測定位置アーム1712が固定されている。フローセル1720は、モーターなどの回転機構1713により、傾きが制御される。1721は試薬流入口、1722は試薬排出口、1723は反応槽の位置である。本図は、ビーズを挿入する際の水平位置での固定の場合を示している。ビーズは、フローセル内に挿入され、反応槽に挿入される。ビーズの挿入が終了すると、フローセルは、図18の様に、測定位置に回転機構を軸に移動する。これにより、フローセルは水平方向に対して傾きを有するようになる。この際、測定位置アーム1712がフローセルの上部位置を決めるので、光軸に実質的に垂直な位置でフローセルを固定することができる。図19は、光軸側より、フローセルを見た図である。測定位置アーム1712は、左右に2本あり、その間にフロー部分が固定される。
(2)背景発光成分の除去
次に、背景発光成分の除去(フローセルのイニシャライズ)を行う(図4のフロー参照)。本実施例の遺伝子配列解析技術は、生物発光を利用する。反応のメカニズムは、図12の通りである。塩基の伸長反応により発生するピロリン酸(PPi)を、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)の存在下で、AMPと反応させてATPを生産する。その際、生物発光酵素のルシフェラーゼおよび発光基質のルシフェリンを共存させると、ATP発生量に比例した光量の生物発光が生じる。この生物発光を、定量的に検出すれば、塩基の伸長の有無と、伸長した場合の伸長塩基数が決定できる。この反応系では、伸長反応以前に存在するATPが、背景発光として影響する。ATPは、通常の生物活動で広く利用されているため、細菌等の汚染により、容易に混入し、その一部はセル内に付着し、洗浄液の流水だけでは除去できない場合もある。また、試料は、通常、PCR等の手法による増幅過程を経ているため、ピロリン酸等の残留・混入も考えられる。従って、伸長反応開始前に、外部由来のATP成分と、ピロリン酸成分を、分解する必要がある。分解除去は、アピラーゼやピロホスファターゼ(PPase)などの分解酵素を含む水溶液で、フローセル内を洗浄すればよい。当該水溶液は分解酵素水溶液槽に収められ、4種類の核酸基質の選択的注入の機構と同様の機構によってフローセルへ注入される。本実施例では、アピラーゼおよび、ピロホスファターゼを、それぞれ0.1 mU/μLの濃度で調製した洗浄用試薬を用いた。なお、パイロシーケンシングは、ATPの存在量を計測する手法であり、特許文献1記載の反応系、つまりスルフリラーゼ等を利用することも、可能であることは言うまでもない。しかし、本実施例で用いるPPDKの反応系の方が、背景発光が低く、優れている。
(3)核酸配列測定
次に、パイロシーケンシングの原理に基づき、配列決定を行う。まず、用いる試薬は、例えば、以下の通りである。
〔1〕試薬A:生物発光用試薬+dATP+ポリメラーゼ(或いは、dATPの代わりにdATPαS)
〔2〕試薬C:生物発光用試薬+dCTP+ポリメラーゼ
〔3〕試薬G:生物発光用試薬+dGTP+ポリメラーゼ
〔4〕試薬T:生物発光用試薬+dTTP+ポリメラーゼ
〔5〕洗浄試薬:アピラーゼ0.1 mU/μL、ピロホスファターゼ0.1 mU/μL
〔6〕コンディショニング試薬:生物発光用試薬と同成分。
ここで、生物発光用試薬とは、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、PPDK、PEP、AMP、を有する試薬である。また、その他、化学反応を安定化するため、いくつかの成分を添加する場合があるが、反応系に対し阻害を生じさせない限り、それらの添加については、制限しない。
【0033】
これらの試薬を、「試薬A〜Tのいずれか→洗浄試薬→コンディショニング試薬→試薬A〜Tのいずれか」の繰り返し導入及び結果評価により、生物発光検出を行う。図13は、本実施例の装置で遺伝子配列解析を行った場合の例を、模式的に示したものである。今、3つの反応槽1301〜1303に注目して、説明する。1310は、1塩基分の伸長発生時の発光を示し、1311は2塩基分の伸長発生時の発光を示す。(1)〜(4)は、それぞれ、試薬A〜Tを導入した際の発光画像を示している。(1)では、1301と1302は、伸長による発光が観測されており、特に1302は2塩基分の伸長が発生している。一方、1303は発光が見られていないことから、伸長が発生しなかったといえる。これらの4回の測定から、試料の遺伝子配列を、(5)及び(6)として得ることが出来る。なお、核酸伸長反応時のフローセルの温度は、摂氏32度〜40度が適している。そのため、フローセルを、予め、上記温度範囲の任意の条件に設定しておく。本実施例では、37度、または40度に設定して、実験を行った。
【0034】
生物発光の発光量は、伸長塩基数に比例している。従って、反応槽の発光量を計算し、塩基の伸長の有無とその塩基数を確定することができる。反応槽は、1個のビーズ由来の発光を示し、かつその位置は変化しないので、上記の様に、反応試薬を順次導入し、その結果得られる生物発光イメージの位置と発光信号強度を、時系列的に積み上げることにより、試料の遺伝子配列情報を、並列的に得ることが出来る。この場合の並列度は、フローセル内のマイクロ反応槽の数と反応槽のビーズ捕捉率の積である。
【0035】
以上より、試料を固定したビーズに対し、試料核酸の配列を、ビーズごと、並列に解析することが達成できる。比重の大きなビーズ、特にジルコニアビーズを用いること、及び角度を制御するフローセルを用いることにより、フローセル中のマイクロ反応槽へのビーズの挿入から、核酸伸長による解析まで、処理の自動化を容易にすることができる。また、本構成では、反応槽内のビーズは、その後の試薬溶液や洗浄溶液などの注入時において、それ自身の重量で、安定的に反応槽内に留まることができる。その結果、従来技術で必要とした、マイクロ粒子による詰め込み状態の構成や、メンブレンなどを用いることなく、扱いが容易でかつ高精度な分析が可能となる。さらには、試薬の置換を精度良く、高速に行うことができる。つまり、パイロシーケンシングでは、反応槽内に、4種の試薬(A〜T)や、洗浄試薬等を、確実に導入することと、それらの試薬を確実に排出することが、重要である。本構成では、反応槽内には、ビーズを1個のみ捕捉しているため、上記の試薬の置換をとても容易でかつ高速にすることができる。これは、装置のスループット向上と、精度向上に、大きく寄与する。
【0036】
なお、フローセルは水平方向に対して傾きを有するようにして実験し、具体的には、本実施例では垂線(鉛直方向)とフローセルとの傾きは、10度として実験した。これは、本実施例で利用したビーズが、比重6のジルコニアビーズであったため、反応槽からの流出防止が10度の傾きで十分であったからである。この角度が小さい場合は、先に記述の通り、気泡の排出がスムーズである反面、ビーズの流出が発生しやすくなる。一方、角度が大きい場合は、ビーズの流出が防げる半面、フローセル内に気泡が滞留してしまうエラーの発生率が増加する。本発明の様に、比重6のビーズを用い、角度を10度とする場合、ビーズの流出と気泡の滞留を同時に防ぐことができたため、好適な条件であることがわかった。傾きは6度から30度の範囲であれば、ビーズの流出と気泡の滞留を同時に防ぐ効果が顕著にみられるが、この範囲外とすることも可能である。なお、図16の様に、カメラの光軸を、ミラー等の反射板1601により、屈折させることにより、カメラ自身は水平を維持しながら、フローセルの角度のみ調整することが可能である。一般的にカメラの重量が大きいため、フローセルの垂線とカメラの光軸を一致させる調整は、ある程度の困難を伴う。しかし、上記の通りに中間に反射板を設ける場合、その板の角度を調節するだけで、好適な光学的位置を構築することが、容易に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】装置構成図である。
【図2】フローセルの概略図である。
【図3】試料固定ビーズの説明図である。
【図4】測定時のフローを説明する図である。
【図5】フローセル内のマイクロ反応槽の例である。
【図6】反応槽へビーズが沈降する仕組みを説明する図である。
【図7】比重と利用可能流速領域を示す図である。
【図8】マイクロ反応槽の配置を示す図である。
【図9】マイクロ反応槽の配置を示す図である。
【図10】マイクロ反応槽の配置を示す図である。
【図11】マイクロ反応槽の配置を示す図である。
【図12】パイロシーケンシングの反応メカニズムを説明する図である。
【図13】測定した生物発光像である。(実験結果)
【図14】課題である未伸長現象を説明する図である。
【図15】課題である過伸長現象を説明する図である。
【図16】光路に反射板を用いる装置構成図である。
【図17】フローセルの傾きを制御する機構の説明図である。
【図18】フローセルの傾きを制御する機構の説明図である。
【図19】フローセルの傾きを制御する機構の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面に複数の凹部を有する容器と、
水に対する比重が4以上の複数の粒子とを有するキット。
【請求項2】
前記粒子はジルコニアを含む粒子であることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記複数の凹部は2次元配置として配置され、前記2次元配置の配置格子の最小単位は長方形ではない菱形であることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記凹部は前記容器の長軸方向に複数の列を形成して配置され、前記容器の前記長軸方向と実質的に直交する短軸方向の直線上に、隣り合う複数の列の各々の前記凹部の開口面における中心点が位置しないように配置されることを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記一の面に複数の突起部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項6】
前記一の面に複数の突起部をさらに有し、前記突起部は前記菱形の辺の位置に実質的に配置されることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項7】
前記一の面に複数の突起部をさらに有し、前記突起部は前記菱形の辺の位置に実質的に平行に配置されることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項8】
複数の凹部を有する第一部材と、前記第一部材の前記凹部と対向し、導入部と導出部とを具備する第2部材とを具備するセルと、
前記導入部から粒子を含む液体を導入し、かつ前記導出部から液体を導出する液流制御部と、
前記凹部について光学検出をする検出部とを有し、
前記液流制御部は、水に対する比重が4以上である前記粒子を含む液体を前記導入部へ導入することを特徴とする装置。
【請求項9】
前記セルを、水平方向に対して傾きを有するように移動させるセル制御部を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記セル制御部は、前記液流制御部が前記粒子を含む液体を前記導入部に導入するときに前記セルを実質的に水平に配置し、前記検出部が前記光学検出するときに前記セルを前記水平方向に対して傾きを有するように配置することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
4種類の核酸基質の各々を収めるための第1試薬槽、第2試薬槽、第3試薬槽、及び第4試薬槽と、前記4種類の核酸基質を前記セルに選択的に注入する注入部とをさらに有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記凹部の径及び深さは、前記粒子の1.2倍以上1.5倍以下であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記液流制御部は、前記粒子を含む液体を前記導入部に導入するときに、前記粒子を含む液体を往復方向に流れるように制御することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項14】
ATPとピロリン酸と少なくとも一方を分解するための溶液を収める第5試薬槽と、前記分解するための溶液を前記セルに選択的に注入する注入部とをさらに有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記液流制御部は、ジルコニアを含む粒子を含む液体を前記導入部へ導入することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項16】
前記セル制御部は、前記検出部が前記光学検出するときに前記セルを鉛直方向に対して6度から30度の範囲の傾きを有するように配置することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項17】
複数の凹部を有する第一部材と、前記第一部材の前記凹部と対向し、導入部と導出部とを具備する第2部材とを具備するセルと、
水に対する比重が4以上であり、前記凹部に収められる粒子と、
前記導入部から前記粒子を含む液体を導入し、かつ前記導出部から液体を導出する液流制御部と、
前記凹部について光学検出をする検出部と、
前記セルを、水平方向に対して傾きを有するように移動させるセル制御部を有するシステム。
【請求項18】
前記粒子を格納する粒子槽をさらに有することを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
一の面に複数の凹部を有し、実質的に水平に設置された容器へ、水に対する比重が4以上である複数の粒子を含む第1液体を導入し、
前記第1液体の流れで移動した前記粒子を前記凹部に格納する粒子を用いる分析方法。
【請求項20】
前記粒子を前記凹部に格納した後に、前記容器を水平方向に対して傾きを有する位置へ移動し、
移動された前記容器に反応用試薬を含む第2液体を導入し、
前記凹部について光学的に検出することを特徴とする請求項19に記載の粒子を用いる分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−109864(P2008−109864A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293483(P2006−293483)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】