避雷装置:湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ
従来の並びに上方への落雷を保護対象の物体が経験することを低減する避雷装置である。この装置は、接地されるべく適合された支持構造物と、支持構造物の周りに巻回されており、保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体と、を含んでいる。この空間電荷は、雲の電荷によって保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を保護対象の物体上に生成すると共に、保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制している。それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大部分の雷放電は、主に負に帯電した雲と関連していることが広く知られている。遭遇する落雷の主なカテゴリには、非常に高い構造物からの上方への閃光と、負の降下する階段状のleader(リーダ)と関連した更に一般的な落雷という2つのものが存在している(参考文献[1]、[2])。負の降下するリーダは、負の空間電荷sheath(シース:さや)によって取り囲まれており、負のリーダが地面に接近するのに伴って、この負の空間電荷シースが、その影響範囲内にある任意の接地物体上に正の(イメージ)電荷を誘発する。接地構造物の高さが高いほど、且つ、降下する負のリーダの経路にそれが近いほど、接地構造物上に誘発される電荷は大きくなる。
【0003】
雷撃電流は、数kA〜数百kAの広いレンジにおいて変化する統計的な値であって、25〜35kAの中央値を有していることが知られている。構造物の吸引半径、即ち、降下するリーダがその構造物によって捕捉されることになる構造物の周りの最大半径距離は、負の空間電荷ジャケットと関連した雷撃電流と、その構造物の高さの両方に伴って増大する。
【0004】
最近、大きな空隙の絶縁破壊の物理的特性に関する研究の進歩により、様々な地上の構造物が雷撃を受けるメカニズムに関する理解が格段に進んでいる。具体的には、接地物体が落雷メカニズムにおいて果たしている役割が明らかになっている。モデル(参考文献[6])は、吸引半径が、構造物から生じる正のリーダによってカバーされている主要部分(2/3、又は、これ以上)と、負及び正のリーダの先端の間における最後の跳躍を構成している更に小さな部分という2つの部分から構成されていることを示している。
【0005】
任意の接地構造物の表面及びこの近傍における電界の増強は、雲の電荷及び/又は降下する負のリーダによって接地構造物上に誘発される正の(イメージ)電荷によって主にもたらされており、且つ、これは、雲の電荷及び/又は降下するリーダ自体に起因した背景電界をはるかに上回っていることを静電界分析が示している。接地物体の構造的な特徴に応じて、包囲する空気のイオン化が発生した際に、誘発電荷によって生じた開始電界に到達し、これにより、コロナ放電及び正のストリーマ形成がもたらされる。接地構造物の形状及び誘発される正の電荷量に応じて、この正のストリーマの長さは、メートルのレンジに成長可能である。
【0006】
この正のストリーマが臨界サイズに到達した場合に(参考文献[3]、[4])、構造物に対するストリーマの接合部に高導電性の幹が形成され、これにより、正のリーダが形成されることになる。約400〜500kV/mの平均傾きを具備した正のストリーマとは対照的に、リーダの傾きは、リーダ電流及びその存在の持続時間の両方の関数である。1Aの電流の場合に、リーダの傾きは、30〜50kV/m、即ち、正のストリーマの傾きの約1/10になる可能性があるが、100Aのレベルのリーダ電流の場合には、リーダの傾きは、最低で2〜3kV/mに低下可能であろう。これは、正のストリーマとは対照的に、正のリーダは、非現実的な高電位を要することなしに、100mのレンジの距離を伝播する能力を有していることを示している。
【0007】
接地構造物から生じるすべての可能なリーダが、軌跡を完成させ、最終的な跳躍において、降下する負のリーダと遭遇するわけではないことに留意することが重要である。正のリーダが構造物からどんどん遠く離れて伝播するのに伴って、その動きは、益々、リーダ先端前方の空間電位や電界などのパラメータによって支配されることになり、降下するリーダの電荷によって決定される度合いが増大し、接地構造物によって決定される度合いは少なくなる。状態が、連続した伝播にとって好適ではない場合には、正のリーダが停止してしまい、その正のストリーマ/正のリーダのプロセスを開始した関連する接地構造物は雷撃されないことになる。
【0008】
下方への負の雷によって雷撃される物体は、その誘発された正の電荷に起因して長い正のストリーマの生成に「成功」したものであり、この長い正のストリーマが、接近している負の降下するリーダと最終的な跳躍と呼ばれるものにおいて遭遇するべく、増大する電界ゾーン内において進行する正のリーダを結果的に形成している。最終的な跳躍は、上昇する正のリーダの先端と、降下する負の雷のリーダの先端の間における平均電圧の傾きが500〜600kV/mに到達した場合に発生する。
【0009】
負の降下する雷のリーダからわかるように、その個々の誘発された正の電荷を有するすべての接地物体は、それらの中のいずれのものが大きな正のストリーマの活動を生成することになるのか、そして、それらの中のいずれのものが最終的な跳躍に向かう軌跡を完成させる正のリーダの生成に「成功」するのかを決定する競争状態にある。最終的な跳躍に向かう軌跡の完成に成功した高い構造物が存在しない場合には、負の降下するリーダは、既定により、地面に向かうことになる。従って、このような落雷のリスクの低減を意図する場合には、任意の構造物が、電気的に沈黙した状態に、即ち、長い正のストリーマを生成する競技において不活発な又は抑制された状態に留まることが非常に有利である。
【0010】
先程参照した雷の閃光の第2タイプは、負の降下するリーダの存在を伴うことなしに、上方への正のストリーマ/リーダのプロセスの形態において発生する上方への閃光である。このタイプの雷撃の確率は、平らな地面上において100mを超える高さを有する構造物の場合に大きくなる。又、これらは、山上においては、格段に低い構造物においても発生可能である。この場合には、降下するリーダが存在しないため、構造物における及びその近傍における電界の増強は、雲の負電荷によってのみ直接的に生成された構造物上における正の誘発電荷によってもたらされている。
【0011】
上方への雷の場合には、正のリーダの開始に必要な周辺(地上)電界は、その大部分が構造物の高さに依存している。高い構造物の場合には、臨界周辺電界は、実際には、Eg=1600/hという簡単な式によって構造物の高さに関係付けられており、この場合に、Egの単位は、kV/mであり、構造物の高さの単位は、メートルである(参考文献[1]、[2])。最も高い構造物の場合にも、臨界周辺電界は、3kV/mを超過する必要がある(参考文献[1]、[2])。従って、この場合にも、上方への落雷のリスクの低減を意図する場合には、構造物が、電気的に沈黙した状態、即ち、不活発な又は抑制された状態、つまり、長い正のストリーマを生成する競技に参加するには、通常よりも大きな電界を必要とする状態に留まることが非常に有利である。
【0012】
(従来技術の背景)
避雷の方式は、2つの広範なカテゴリに分割可能である。第1のものは、フランクリン棒又は架空地線の変形であって、雷撃電流用の優先的な経路を付与することにより、潜在的な損傷を防止するという目的を有している。これらのシステムは、落雷の発生確率に対する効果を主張してはいない。
【0013】
米国特許第5,043,527号(Carpenter)、米国特許第4,910,636号(Sadler他)、及び米国特許第4,605,814号(Gillem)などのもう1つの避雷の方式の広範なカテゴリは、「散逸システム(dissipation system)」と呼称可能である。これらのシステムは、ワイヤ又は棒のポイント又は先端部を使用して空間電荷を生成している。これらの装置が機能すると考えられている方法については、ほとんど又はまったく科学的な根拠を伴っていないいくつかの矛盾する主張が存在している。いくつかの散逸システムの提案者は、空間電荷の生成によって雲の負の電荷を中和し、これにより、雷を除去可能であると主張しているが、これは、非現実的である。その他の散逸システムの提案者は、保護対象の構造物からのイオンの散逸により、風下に吹き飛ばされることによって蓄積電荷が低減されると共に、帯電した雲と保護対象の構造物の間の電位差が低減又は極小化されることになると主張している。
【0014】
接地構造物上における誘発(イメージ)電荷は、雲又は降下するリーダの誘発電荷が留まる限り、そこに留まる電荷であって、周囲の空気に散逸することはできないため、当然のことながら、これらの主張は、物理的に無効である。更には、金属が正のイオンを放出しないということは、確立された科学的事実である。これとは対照的に、正の空間電荷は、結果的に電子が電極(構造物)によって収集されると共に地面に注入され、これにより、周囲の空気に正イオンの空間電荷が残留するというイオン化のプロセスによって形成されている。又、定義により、接地構造物は、雷撃を受けない限り、接地電位に常に留まっている又は留まることになるため、雲と接地物体の間の電位を変更するということは、必然的に、雲の電位を変更するという非現実的な内容を意味している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、様々な雰囲気状態において構造物の末端における正のストリーム/リーダの開始を制御することにある。
【0016】
接地構造物の末端からの正のリーダの開始を制御する第1の可能性は、末端の形状を変更するというものである。但し、空間電荷を末端の表面における電界によって除算したものとして定義される構造物の末端の等価半径が、所謂臨界半径である臨界値を下回っている場合には、その構造物の形状は、実際には、正のリーダの開始に対する影響を具備していないという点に留意しなければならない。一方、大きな曲率半径を有する導電性表面によって末端の形状を変更した場合には、乾燥状態においてのみ、リーダ開始空間電位を実際に増大させることが可能である。但し、雨の場合には、大きな電極からのリーダ開始レベルは、等価半径が臨界半径以下である末端におけるものと同一になる(参考文献[5])。
【0017】
構造物の末端からの放電活動を制御する第2の技法は、空間電荷の遮蔽によるものである。正の空間電荷を生成する装置による構造物の末端の保護に成功するには、次のように、いくつかの前提条件が存在している。
【0018】
1.空間電荷生成装置は、正のストリーマモードにおいてコロナを生成してはならない。このような正のストリーマ生成は、正の空間電荷生成という目的を妨げることになると共に、実際には、前述のメカニズムに従って装置が雷撃を受ける確率を増大させる可能性を有している。ポイント又はポイントのアレイは、一般的に、正のストリーマを生成する傾向を有していることが知られていることから、この要件のみにより、先端放電に基づいた多くの装置が排除されることになろう。
【0019】
2.装置は、乾燥状態においてのみならず、湿潤状態においても、ストリーマを伴わないようにすることができなければならない。雷は、通常、雨と関連しているため、この要件は明らかである。乾燥状態においてしか要件どおりに機能しない装置は、不十分である。
【0020】
3.装置は、ストリーマを伴わない状態において十分に高レートの空間電荷を生成することにより、風の強い状態においても、その意図した目標を実現可能でなければならない。更には、近接したポイントは、相互作用して空間電荷を生成するそれぞれの能力を制限することになるため、多数の放電ポイントを近接状態において密集させたとしても、この問題を解決することにはならない。
【0021】
4.装置は、様々な状況及び状態において適用できるように、空間電荷の生成を制御すなんらかの手段を提供しなければならない。
【0022】
5.必要に応じて接地構造物からの正のストリーマの生成を抑制するべく、装置は、周辺電界が雷撃の前方において増大した際に入手可能な相対的に短い時間において、且つ、負のリーダが地面に向かって移動して1kV/μ秒を超過するレンジの空間電荷の変動を生成する際に数十ミリ秒において、十分に高レートの空間電荷をストリーマを伴わない状態において生成しなければならない。
【0023】
以上の内容に鑑み、接地構造物の末端からの放電活動を制御する空間電荷遮蔽法について列挙された必要な基準のすべてを満足している湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタを提供することが本発明の更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置が提供されており、この装置は、接地されるべく適合された支持構造物と、支持構造物の周りに巻回されており、保護対象物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、空間電荷は、雲の電荷によって保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を保護対象の物体上に誘発すると共に、保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している空間電荷生成導体と、を有していることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、空間電荷生成導体は、導電性ワイヤ、導電性ワイヤの束、導電性ファイバ、導電性フィラメント、導電性フィラメントの束、導電性ワイヤから製造されたyarn(ヤーン)、導電性ワイヤの束から製造されたヤーン、導電性ファイバから製造されたヤーン、導電性フィラメントから製造されたヤーン、導電性フィラメントの束から製造されたヤーン、導電性ワイヤから製造されたnitted fabric(編生地)、導電性ワイヤの束から製造された編生地、導電性ファイバから製造された編生地、導電性フィラメントから製造された編生地、導電性フィラメントの束から製造された編生地、導電性ワイヤから製造された織生地、導電性ワイヤの束から製造された織生地、導電性ファイバから製造された織生地、導電性フィラメントから製造された織生地、導電性フィラメントの束から製造された織生地を含む群から選択されており、この場合に、前述のワイヤ、ファイバ、及びフィラメントのそれぞれは、0.1mmを超過しない直径を具備している。
【0026】
好ましくは、支持構造物は、接地されていると共に、連続した環状体、区分化された環状体、連続した金属製環状体、区分化された金属製環状体、避雷ポール、送電線の架空地線、変電所の架空地線、支持ワイヤ、及びウィンドタービンブレードを含む群から選択されている。
【0027】
好ましくは、空間電荷生成導体は、支持構造物の周りに巻回されており、導体の単一レイヤ又は導体の複数レイヤを形成している。
【0028】
好ましくは、空間電荷生成導体は、長手方向及び/又は横断方向において支持構造物の周りに巻回されている。
【0029】
使用の際には、装置は、適切に成形及び寸法設定されていると共に落雷に先行する電界に晒された際に、グローモードのコロナに入り、湿潤及び乾燥状態の両方において、高い及び予測可能なレートの正の空間電荷を生成する。この正の空間電荷の生成レートは、風の強い状態においても、定義されたエリア内の構造物又は導体上に負の電荷を誘発すると共に、正のストリーマの生成を抑圧することにより、従来の並びに上方への落雷の両方のリスクを低減するのに十分なものである。
【0030】
本発明の別の態様によれば、通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置を製造する方法が提供されており、この方法は、a)接地されるべく適合された支持構造物を提供する段階と、b)支持構造物の周りに空間電荷生成導体を巻回することにより、保護対象の物体の近傍において、雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成する段階であって、空間電荷は、雲の電荷によって保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を保護対象の物体上に誘発すると共に、保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している、段階と、を有していることを特徴とする。
【0031】
好ましくは、段階b)は、空間電荷生成導体によって形成されたコイルの所与の巻線ピッチを選択すると共に、支持構造物の周りに巻回された空間電荷生成導体の所与の長さを選択することにより、保護対象の物体の近傍に生成される空間電荷のレートを制御する段階を有している。
【0032】
好ましくは、段階a)は、支持構造物の地面の上方における所与の高さを選択することにより、任意の所与の周辺電界において空間電荷生成導体が晒される電界の値を制御する段階を有している。
【0033】
好ましくは、段階a)は、支持構造物の所与の長さを選択すると共に、空間電荷生成導体の所与の長さを選択することにより、任意の所与の周辺電界及び支持構造物の地面の上方における所与の高さにおいて保護対象の物体の近傍に生成される空間電荷のレートの値を制御する段階を有している。
【0034】
好ましくは、段階(a)は、支持構造物の所与の直径を選択すると共に、空間電荷生成導体の長さを選択することにより、任意の所与の周辺電界及び支持構造物の地面の上方における所与の高さにおいて保護対象の物体の近傍に生成される空間電荷のレートの値を制御する段階を有している。
【0035】
好ましくは、支持構造物は、導電性支持構造物であり、段階a)は、導電性支持構造物の直径を選択することにより、任意の所与の周辺電界及び支持構造物の地面の上の所与の高さにおいて空間電荷生成導体が晒される電界を制御する段階を有している。
【0036】
好ましくは、段階a)は、保護対象の物体上に又はこの近傍に支持構造物を配置する段階を有している。
【0037】
好ましくは、段階b)は、保護対象の物体内にコイルを組み込む段階を有している。好ましくは、物体自体が支持構造物として機能している。
【0038】
本発明の更に別の態様によれば、通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する複数の避雷装置が提供されており、それぞれの装置は、接地されるべく適合された支持構造物と、支持構造物の周りに巻回されており、保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、空間電荷は、雲の電荷によって保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を保護対象の物体上に誘発すると共に、保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備しており、ここで、それぞれの避雷装置は、所与の距離だけ、互いに離隔している、空間電荷生成導体と、を有している。
【0039】
好ましくは、本明細書に開示されている本発明は、それ自身が、すべての従来のシステムから以下の点において弁別されている避雷装置である。
【0040】
・これは、空間電荷を生成するべく、非常に細い(直径が0.1mmを超過していない)導電性のワイヤ又はファイバ、或いは、このようなファイバ又はワイヤから製造された生地から構成されたコイルを使用している。
【0041】
・これは、例外的に高い電界においても、(ストリーマを伴っていない)パルスレスグローモードにおいてコロナを生成するのみである。
【0042】
・これは、湿潤及び乾燥状態の両方において機能する。
【0043】
・これは、空間電荷の生成レートを制御する手段を提供している。
【0044】
・更には、構造物の先端と雲又は降下するリーダの間の距離と比較した場合の本装置(インヒビタ)と保護対象の構造物の間の短い距離に起因し、これは、適切な極性の大きな電荷を誘発することにより、保護対象の構造物に対する雲又は降下する負のリーダの影響を中和するという現実的なタスクを実現している。そして、この結果、保護対象の又は隣接する導体又は構造物からのストリーマの生成を抑制している。
【0045】
好ましくは、本装置は、様々な形状及びサイズの環状体又は架空地線、或いは、支持ワイヤなどの支持構造物を含んでおり、これは、少なくとも部分的に金属製又は導電性である。或いは、この代わりに、本装置は、ウィンドタービンのブレードなどの非導電性の支持構造物を包含することも可能である。いずれの場合にも、支持電極又は支持構造物には、連続した又は区分化された電気コイルを形成するべく、長手方向及び/又は横断方向において、非常に細い(直径が0.1mm又は0.00394インチを超過していない、但し、10〜50ミクロンのレンジの直径によって最良の結果を実現可能である)導電性ワイヤ、ファイバ、フィラメント、又はフィラメントの束、このような細いファイバ又はワイヤから製造されたヤーン又は単層又は多層の織生地又は編生地が巻き付けられている。好ましくは、導電性ワイヤ又はファイバ又はフィラメントは、ステンレススチールなどの耐候性材料から製造されている。導電性ワイヤ又はファイバは、接地に電気的に接続されていると共に、コロナに入った際に、乾燥及び湿潤状態の両方において、ストリーマの形成を伴うことなしにグロータイプの放電を生成するように、十分に細くなっている。地面の上方における必要な高さにおいて適切な形状及び寸法に設定された際に、本装置は、ストリーマを伴うことなしに、最低でも2kV/mの周辺(地上)電界並びに数百kV/mのレンジの高い周辺電界において空間電荷を生成可能である。湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの近傍における10ミリクーロンのレンジの蓄積された正の空間電荷は、そのイメージ電荷を考えた場合に当然のこととして、数十メートルのレンジの装置の周りの距離において正のストリーマの生成を抑制するのに十分な負の電荷を誘発している。
【0046】
環状体形の電極支持構造物の便利な特徴は、既存の避雷/フランクリン棒に容易に取り付け可能であるという点にある。又、本発明を適用した送電線及び/又は変電所の保護は、インヒビタコイルを既存の接地線に容易に取り付け可能であるという利点を具備している。
【0047】
電気コイルの支持構造物として金属製の環状体電極を使用することにより、雲又は降下するリーダに起因した周辺電界の任意の一般的な値においてコイルが実際に晒される電界を制御及び強化する手段が提供されている。これは、環状体の材料の直径及び環径、並びに、その地面上における高さの調節によって実行される。
【0048】
電極の寸法及び地面上における高さによる電界の制御に加えて、コイルの巻線ピッチも、コイルの長さと、従って、装置の周りの正の電荷の生成レートを決定することになる。これは、電荷の制御と、雲又は負の降下するリーダに起因した周辺電界に対する本装置(インヒビタ)の感度を決定するための固有の可能性を提供している。
【0049】
説明対象である本発明は、複数の適切に離隔したインヒビタコイル(複数の接地線)を使用することによって同一の状態において電荷の生成を増大させる追加の単純な手段を提供している。環状体の場合には、ダブル環状体電極構成における個々の環状体の間の離隔は、個々の環状体の材料の直径よりも格段に大きく、且つ、環径よりも格段に小さくする必要がある。マルチ環状体構成における後続のダブル環状体の必要性及びその間の離隔については、保護対象の構造物の高さ及び個々の環状体の環径によって決定されることになる。
【0050】
空間電荷は、電界内を移動し、風や雨滴によって運び去られることが広く知られている。
【0051】
インヒビタコイルによって生成された正の空間電荷は、2つの成分を具備している。第1のものは、雲に起因した周辺電界がインヒビタコイルの空間電荷生成要素上におけるコロナの開始をもたらした際に即座に生成されている。これは、相対的に低速のプロセスであるが、風又は雨によって除去された電荷が、即座に、電極(環状体、接地線、又は支持ワイヤ)の表面に垂直の電界を増強すると共に、電荷の除去と電荷の生成間における均衡状態に到達する時点まで、電荷の生成レートを増大させる。
【0052】
空間電荷の第2の成分は、地面に対する下方への負のリーダの伝播の際の電界の増強に起因して生成されている。負の降下するリーダの速度は、105m/sのレベルであることが広く知られている。これは、負のリーダが約10msにおいて1kmの距離をカバーすることを意味している。数十メートル/秒の風速及び数メートル/秒の降下雨滴速度の場合には、10msの持続時間においてインヒビタによって生成される空間電荷は、実際的には停止状態となり、その割り当てられた役割を果たすことになる。
【0053】
乾燥及び湿潤状態の両方においてストリーマを伴うことなしに高レートの正の空間電荷を生成するというこの固有の特性に起因し、風の強い状態においても、隣接する(保護対象の)構造物上に負の電荷が誘発される。このような保護対象の構造物上の誘発された負の電荷は、雲又は降下する負のリーダの負の電荷によって構造物上に誘発された正の電荷を中和する。これは、保護対象の構造物からの正のストリーマの形成を抑制するという効果、特に、リーダ放電への変化に必要とされる臨界サイズにストリーマが到達することを抑制するという効果を具備しており、この結果、雷捕捉プロセスに対する構造物の参加を低減し、これにより、落雷に対するその脆弱性を低減している。
【0054】
通常の下方への雷の場合には、インヒビタは、構造の吸引半径における潜在的に正のリーダによってカバーされている部分を低減又は完全に除去するという目的を具備している。地上における限られた投影エリアを有する構造物又は物体の場合には、これは、相応して吸引半径raを大幅に低減することになると共に、構造物の周りの露出エリア(ττra2)を最大で10分の1に低減可能であろう。
【0055】
電力線及び変電所における落雷の発生は、前述の構造物の場合と非常に類似している。但し、1つの違いは、導体及び構造物の限られた高さに起因し、電力設備は、上方への閃光の傾向を有してはおらず、降下するリーダに起因してのみ雷撃可能であるという点である。電力線導体の避雷は、その大部分が架空地線によって行われているが、変電所の橋門上において、しばしば、避雷針も使用されている。2つの個別のメカニズムに起因し、雷に起因した線路及び変電所の絶縁フラッシュオーバーが発生する。第1のものは、「遮蔽障害」であり、この場合には、架空地線による保護の存在にも拘わらず、電力導体が雷撃される。第2の「バックフラッシュオーバー」と呼ばれるメカニズムは、タワーの先端又は架空地線が雷撃された際に発生し、一時的に、接地を上回ってその電位を上昇させ、導体とタワー構造物の間の絶縁体列に過度なストレスを印加する。いずれの場合にも、降下する負のリーダに起因して線路導体又は架空地線上に誘発された正の電荷が周囲の空気に過度なストレスを印加し、正のストリーマを生成する。これらのストリーマは、臨界サイズに到達した際に、正の上昇するリーダを生成し、このリーダーが、捕捉メカニズムと、従って、導体又は架空地線の横方向の吸引距離の決定において主要な役割を果たしている。
【0056】
架空地線の周りに巻回されたストリーマを伴わない湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルは、正の空間電荷雲を生成することになり、この空間電荷雲が、接地線及び保護対象の電気導体の両方に負の電荷を誘発することになろう。この結果、正のストリーマ/リーダ生成プロセスが抑制されると共に、その横方向の吸引距離が大幅に低減されることになる。
【0057】
通常は、5〜15kAのレンジである遮蔽障害に関連した雷撃電流の場合には、捕捉メカニズムのモデル(参考文献[6])は、導体から生じる正のリーダが横方向の吸引距離の略半分をカバーすることを示している。従って、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリームインヒビタコイルは、横方向の吸引距離を最大で2分の1以下に低減可能であろう。バックフラッシュオーバーに関連した雷撃電流は、各段に大きく、しばしば、100kAのレンジである。この場合には、接地線から上昇する正のリーダは、最大で横方向の吸引距離の2/3をカバー可能であり、この結果、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの適用は、バックフラッシュオーバーと関連した落雷の数の低減において更に有効となる。
【0058】
上方への雷の場合には、構造物からの正のストリーマの形成を抑制することは、保護対象の構造物からの上向きのリーダの形成のために雲の電荷によって生成される必要な周辺電界を上昇させるという効果を具備することになろう。雲の電荷に起因した周辺地上電界は、通常、2kV/m〜18kV/mのレンジにおいて変化する静的な変数である(参考文献[1]、[2])。構造物における上方への雷発生の臨界周辺電界は、Eg=1600/hという簡単な式によって付与される。従って、例えば、135mの通信タワーは、12kV/mという臨界周辺電界を具備することになり、553mの高さを有するCNタワーなどの構造物の場合には、臨界周辺電界は、3kV/mということになる。従って、必要な臨界周辺電界を上昇させることにより、且つ、構造物の高さ及び生成される空間電荷の量に応じて、インヒビタは、それらの構造物からの上方への雷を低減する又は完全に除去するという効果を具備することになる。
【0059】
本発明及びその多数の利点については、添付の図面を参照して提示されている好適な実施例に関する以下の非限定的な説明を参照することにより、更に理解することができよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
図1を参照すれば、電気インヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体12が巻き付けられた避雷針10が示されている。空間電荷生成導体12は、非常に細い(直径が0.1mmを超過しない)導電性のワイヤ、ファイバ、フィラメント、フィラメントの束、このようなファイバ又はワイヤから製造されたヤーン又は織生地又は編生地であってよい。導電性ワイヤ又はこれに類似したものは、巻線ピッチ距離WPを定義する所与の巻線ピッチによって避雷針10の周りに巻回可能である。
【0061】
図2a、図2b、図3a、図3bを参照すれば、本発明の好適な実施例による支持構造体として使用可能であるプレーンな単一環状体電極14及びセグメント化された環状体電極16が示されている。環状体電極14、16は、その材料の直径d、環径D、内部環径Di、及び外部環径Doを有するものとして示されている。これらは、本発明において変化可能である様々なパラメータ及び寸法を設定している。
【0062】
図4a、図4bを参照すれば、それぞれ、本発明の好適な実施例によるインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体12として使用された細い導電性のワイヤ又はファイバが横断方向において巻き付けられた連続した単一の金属製環状体14及びセグメント化された環状体16がそれぞれ示されている。
【0063】
図4cを参照すれば、本発明の好適な実施例による2つの連続した環状体14及び2つのインヒビタコイルを形成する横断方向において周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性のワイヤ及びファイバが示されている。
【0064】
図4dを参照すれば、本発明の好適な実施例による2つの連続した環状体14及び単一のインヒビタコイルを形成する横断方向において周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性ワイヤ又はファイバが示されている。
【0065】
図5aを参照すれば、本発明の好適な実施例による連続した環状体14及びマルチレイヤ型のインヒビタコイルを形成する長手方向及び横断方向の両方において環状体14の周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性ファイバ又はワイヤから製造された織生地又は編生地18が示されている。
【0066】
図5bを参照すれば、本発明の好適な実施例による連続した環状体及びインヒビタコイルを形成する長手方向において環状体の周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性ファイバ又はワイヤが示されている。
【0067】
図6を参照すれば、本発明の好適な実施例による避雷装置1を形成する図4aに示されているものに類似した複数のダブル環状体インヒビタコイル20がその上部に取り付けられた自立型の避雷ポール10が示されている。細い導体12が巻き付けられた環状体14が、UL認証された避雷針上に取り付けられているため、環状体電極又は環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルは、従来の避雷針が使用されている任意の場所において使用可能であり、これにより、避雷装置1が容易に形成される。ポール10は、支持ワイヤ22によって支持されると共に接地された電極24に接続された状態において示されている。
【0068】
図7を参照すれば、タワー26の最上部に取り付けられた本発明の好適な実施例による避雷装置1が示されている。避雷装置1は、従来の避雷針10に固定されると共に接地システム又は接地電極24に接続されたダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル20から製造されている。
【0069】
図8を参照すれば、タワー26の周りに取り付けられた本発明の別の好適な実施例による避雷装置1が示されている。避雷装置1は、接地電極24に接続されたダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル20から製造されている。
【0070】
図9を参照すれば、本発明は、単一ユニットとして提案されているが、いくつかのユニットを直列に使用することにより、高い通信タワー26などの物体を電気的に休止した状態にすることが可能である。この例においては、最上部の近くに直接的に取り付けられた避雷装置又はインヒビタ1と、接地システム24に接続されたタワー26の底部近傍におけるいくつかの避雷装置又はポール取り付け型のインヒビタ1が示されている。
【0071】
図10を参照すれば、本発明の別の好適な実施例によるウィンドタービンブレード28を保護するべく使用されている避雷装置が示されている。この例においては、インヒビタコイル30は、例えば、ウィンドタービンブレード28の絶縁ブレード内に組み込むべく製造可能であり、この場合には、ウィンドタービンブレードが支持構造物として機能している。組み込まれたコイル30は、ワイヤ32を介してグラウンドに接続されており、ワイヤ32は、従来の避雷金属先端36の従来の接地線34に接続可能である。
【0072】
図11を参照すれば、本発明の別の好適な実施例による水上を航行する船舶又はボート38を保護するべく使用される避雷装置が示されている。この例においては、インヒビタコイル40は、ボート38のマスト上に取り付けられていると共に、接地線42に接続されている。
【0073】
図12を参照すれば、本発明の好適な実施例による組み込み型のインヒビタコイル30を有する高電圧DCトリガされた空隙(トリガトロン)の一例が示されている。負の高電圧電極46と正の接地電圧電極48の間に、調節可能な空隙44が定義されており、正の接地電圧電極は、絶縁抵抗器50を介してトリガ電極に接続されている。正のストリーマを抑制することにより、本発明による装置を使用し、トリガトロンの場合のように、空隙の最小絶縁破壊電圧を増大させ、且つ、絶縁破壊電圧の消散を低減することにより、トリガパルスが印加される前のギャップの誤ったスパークを防止可能である。トリガトロンの1つの代替構成は、対向電極を接地しつつインヒビタ保持電極30を正の電位源に接続するというものになろう。
【0074】
図13を参照すれば、本発明の好適な実施例による保護対象の構造物54上に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ1として実施された避雷装置が示されている。インヒビタ1は、地線42を介して接地電極24に接続されている。負の雲の電荷60は、地面に正の電荷62を、構造物54に正の電荷64を、そして、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ1に正の電荷65を誘発している。インヒビタ1に誘発された正の電荷65は、雨70又は風の強い状態72においても、インヒビタの周りの空気のイオン化と、ストリーマを伴うことなしに保護対象である構造物54上に負の電荷68を誘発するための十分な正の空間電荷66の生成をもたらし、この結果、雲による誘発電荷を中和し、これにより、正のストリーマの形成を抑制している。又、インヒビタの正の電荷66に起因し、負の電荷74が地面に生成されている。
【0075】
図14a及び図14bを参照すれば、送電線のタワー又は変電所の支持構造物又は架空地線が使用されているその他の場所の間に吊り下げられた架空地線76の周りに空間電荷生成導体12が巻き付けられることにより、電気コイルが形成されている。
【0076】
図15を参照すれば、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル及び2つのポール取り付け型の環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ78が取り付けられた2つの架空地線76を有する2つの変電所の橋門が示されている。これらの変電所の橋門は、碍子連80、バスバー82、鋼製の橋門、及び接地線支持部86を含んでいる。
【0077】
図16a及び図16bを参照すれば、構造物90を支持するべく使用されている支持ワイヤ88の周りに空間電荷生成導体12が巻き付けられることにより、電気コイルが形成されている。電荷生成導体は、支持ワイヤ88の一部分にのみ巻回する必要がある。任意選択により、先端取り付け型の環状体インヒビタ1を提供可能である。
【0078】
図17を参照すれば、環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ1を金属製煙突92上に取り付け可能である。このインヒビタは、接地電極24に接続されている。
【0079】
(実験に基づいた試験)
本特許の著者らは、2006年1月23日〜31日の期間に、Hydro Quebec’s High Voltage Laboratoryに2つの一連の実験を依頼し、これに立ち会った。試験の目的は、細いワイヤが、
・電極のコロナ開始電圧、
・衝撃電流の生成(ストリーマ)対DC電流(グローモードコロナ)、並びに、
・試験電極が陽極として機能する1.5メートルのダブル環状体型プレーン空隙の絶縁破壊電圧に対して有することになる効果を判定することにあった。
【0080】
いくつかの同一のステンレススチール試験電極を構築した。それぞれの電極は、その環径が1メートルであって、その材料の直径が2.54cm(1インチ)である2つの環状体から構成されており、これらの環状体を30cm(12インチ)だけ離隔した状態においてステンレススチールフレーム上に対称的に取り付けた。1つのダブル環状体試験電極は、裸の状態で残して「標準」として機能させ、その他の試験電極には、
・50ミクロン(直径)のステンレススチールワイヤ、
・12ミクロン(直径)のステンレススチールファイバの275本のフィラメントの束、並びに、
・12ミクロン(直径)のステンレススチールファイバのフィラメントの束から製造された織生地の様々な量を巻回した。
【0081】
第1の一連の実験においては、直径が10cm(4インチ)の垂直のアルミニウムポールの地面の上方3.5mのところに試験電極を取り付けられた。約6mの直径の導電性プレートを試験電極上部の地上5メートルの高さ、即ち、試験電極の上方1.5メートルのところに吊り下げた。湿潤及び乾燥状態の両方において、直流電圧(DC)下においてそれぞれの電極を別個に試験した。導電性プレートの電圧を約45秒において負の600kVに昇圧させ、(電流フローの計測及び可視放電及び可聴雑音の監視を通じて)コロナ開始電圧に注意しつつ、電圧を600kVにおいて1分間にわたって保持した後に、絶縁破壊まで昇圧させた。乾燥状態の裸の「標準」電極の場合には、コロナ開始電圧は、約400kVであり、1.5メートルのギャップの絶縁破壊電圧は、約650kVであった。更に、これは、400kVから更に絶縁破壊の時点まで、大きなストリーマの活動を継続した。この同一の電極が湿潤状態にある際には、コロナ開始電圧は約250kVであり、絶縁破壊電圧の変化は、ほとんどないが、大きなストリームの活動を伴っていた。
【0082】
しかしながら、適切な量の細いワイヤ又は細いファイバ又はこのようなファイバから製造された織生地を試験電極の周りに巻回すると共に、これらに同一の状態を適用した場合には、大きな相違点が観察された。湿潤及び乾燥状態の両方におけるコロナ開始電圧が、最低で150kVまで低減された。ギャップの絶縁破壊電圧は、約150kVだけ増大し、電極は、最大で1.7mAのDC電流を生成するか、又は約1.7mC/sのレートにおいて空間電荷を生成した。更には、これらの電極は、湿潤及び乾燥状態の両方において、ちょうど絶縁破壊の時点までストリーマをまったく生成しなかった。
【0083】
第2の一連の試験においては、試験電極を正のDC源に直接接続すると共に、電流計測シャントを通じて接地された大きなスチールプレートの上方3.5メートルのところに逆さまに吊り下げた。電圧を段階的に最大で800kVまで昇圧させ、計測及び観察をそれぞれの安定期において実行した。裸の試験電極は、湿潤及び乾燥状態の両方において大きなストリーマの活動を具備したが、この場合にも、細いワイヤ又は細いファイバの適切な構成の存在は、ストリーマの活動を除去すると共に大量の空間電荷を生成することが観察された。この第2の一連の試験は、ギャップの絶縁破壊に到達するべく設計されてはいなかった。
【0084】
(参考文献)
1.Modeling of lightning incidence to Tall Structures Part I: Theory, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.9, No.1 January 1994, pp.162-171
2.Modeing of Lightning Incidence to Tall Structures Part II: Application, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.9, No.1 January 1994, pp.172-193
3.A Model for Switching Impulse Leader Inception and Breakdown of Long Air-Gaps, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.4, No.1, January 1989, pp.596-606
4.Switching Impulse Strength of Air Insulation: Leader Inception Criterion, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. On power Delivery, Vol.4, No.4, October 1989, pp.2187-2195
5.Influence of Rain on Swithcing Inpulse Sparkover Voltage of large Electrode Air-Gaps, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Apparatus and Systems, Vol.PAS-95, No.4, July/August 1976, pp.1394-1402
6.Modeling of Transmission Line Exposure to Direct Lightning Strokes, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.5, October 1990, pp1983-1997
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の好適な実施例による電気インヒビタコイルを形成する空間電荷生成要素である非常に細い(直径が0.1mm未満の)導電性ワイヤ、ファイバ、フィラメント、フィラメントの束又はヤーンが巻き付けられた従来の避雷針の側面断面図である。
【図2a】本発明の好適な実施例による支持構造物として使用されるプレーンな単一の環状体電極の側面断面図である。
【図2b】本発明の好適な実施例による支持構造物として使用されるプレーンな単一の環状体電極の平面図である。
【図3a】本発明の好適な実施例による支持構造として使用されるセグメント化された環状体電極の側面断面図である。
【図3b】本発明の好適な実施例による支持構造として使用されるセグメント化された環状体電極の平面図である。
【図4a】本発明の好適な実施例による単一の連続した環状体及び横断方向において環状体の周りに巻き付けられてインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ又はファイバの断面図である。
【図4b】本発明の好適な実施例によるセグメント化された環状体及び環状体の周りに横断方向において巻き付けられてインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ又はファイバの断面図である。
【図4c】本発明の好適な実施例によるダブル環状体及び横断方向において巻き付けられて2つのインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ及びファイバの断面図である。
【図4d】本発明の好適な実施例によるダブル環状体及び横断方向において巻き付けられて単一のインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ又はファイバの断面図である。
【図5a】本発明の好適な実施例による連続した環状体及び長手方向及び横断方向の両方において環状体の周りに巻き付けられてインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ファイバ又はワイヤから製造された織生地又は編生地の断面図である。
【図5b】本発明の好適な実施例による連続した環状体及び長手方向において環状体の周りに巻き付けられてインヒビタコイルを形成する電荷生成導体として使用されている細い導電性ファイバ又はワイヤの断面図である。
【図6】本発明の好適な実施例による自立型の避雷ポール上に取り付けられた複数のダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図7】本発明の好適な実施例による従来の避雷針及び接地システムに対して固定されたダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタが先端に取り付けられたタワーの側面断面図である。
【図8】本発明の好適な実施例によるタワーに直接取り付けられていると共に従来の接地システムによって接地されているダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図9】本発明の好適な実施例によるタワーに取り付けられた複数の環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図10】本発明の好適な実施例による絶縁ウィンドタービンブレード及び接地線を有する組み込み型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルの断面図である。
【図11】本発明の好適な実施例による接地線を有するボート上に配置された先端に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図12】本発明の好適な実施例による組み込み型のインヒビタコイルを有する高電圧DCトリガされた空隙の概略図である。
【図13】本発明の好適な実施例による保護対象の構造物上に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタとして実施された避雷装置の概略図である。
【図14a】本発明の好適な実施例による送電線のタワー又は変電所の支持構造物の間に吊り下げられた、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルが取り付けられた架空地線の側面断面図である。
【図14b】図14aに示されている架空地線の長手方向の詳細を示す側面図である。
【図15】本発明の好適な実施例による湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル及び2つのポール取り付け型の環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタが取り付けられた2つの架空地線を有する2つの変電所の橋門の平面図である。
【図16a】本発明の好適な実施例による湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルが取り付けられた支持ワイヤを有する通信タワーの断面正面図である。
【図16b】図16aに示された支持ワイヤの長手方向の詳細を示す側面図である。
【図17】本発明の好適な実施例による金属製煙突上に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、避雷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大部分の雷放電は、主に負に帯電した雲と関連していることが広く知られている。遭遇する落雷の主なカテゴリには、非常に高い構造物からの上方への閃光と、負の降下する階段状のleader(リーダ)と関連した更に一般的な落雷という2つのものが存在している(参考文献[1]、[2])。負の降下するリーダは、負の空間電荷sheath(シース:さや)によって取り囲まれており、負のリーダが地面に接近するのに伴って、この負の空間電荷シースが、その影響範囲内にある任意の接地物体上に正の(イメージ)電荷を誘発する。接地構造物の高さが高いほど、且つ、降下する負のリーダの経路にそれが近いほど、接地構造物上に誘発される電荷は大きくなる。
【0003】
雷撃電流は、数kA〜数百kAの広いレンジにおいて変化する統計的な値であって、25〜35kAの中央値を有していることが知られている。構造物の吸引半径、即ち、降下するリーダがその構造物によって捕捉されることになる構造物の周りの最大半径距離は、負の空間電荷ジャケットと関連した雷撃電流と、その構造物の高さの両方に伴って増大する。
【0004】
最近、大きな空隙の絶縁破壊の物理的特性に関する研究の進歩により、様々な地上の構造物が雷撃を受けるメカニズムに関する理解が格段に進んでいる。具体的には、接地物体が落雷メカニズムにおいて果たしている役割が明らかになっている。モデル(参考文献[6])は、吸引半径が、構造物から生じる正のリーダによってカバーされている主要部分(2/3、又は、これ以上)と、負及び正のリーダの先端の間における最後の跳躍を構成している更に小さな部分という2つの部分から構成されていることを示している。
【0005】
任意の接地構造物の表面及びこの近傍における電界の増強は、雲の電荷及び/又は降下する負のリーダによって接地構造物上に誘発される正の(イメージ)電荷によって主にもたらされており、且つ、これは、雲の電荷及び/又は降下するリーダ自体に起因した背景電界をはるかに上回っていることを静電界分析が示している。接地物体の構造的な特徴に応じて、包囲する空気のイオン化が発生した際に、誘発電荷によって生じた開始電界に到達し、これにより、コロナ放電及び正のストリーマ形成がもたらされる。接地構造物の形状及び誘発される正の電荷量に応じて、この正のストリーマの長さは、メートルのレンジに成長可能である。
【0006】
この正のストリーマが臨界サイズに到達した場合に(参考文献[3]、[4])、構造物に対するストリーマの接合部に高導電性の幹が形成され、これにより、正のリーダが形成されることになる。約400〜500kV/mの平均傾きを具備した正のストリーマとは対照的に、リーダの傾きは、リーダ電流及びその存在の持続時間の両方の関数である。1Aの電流の場合に、リーダの傾きは、30〜50kV/m、即ち、正のストリーマの傾きの約1/10になる可能性があるが、100Aのレベルのリーダ電流の場合には、リーダの傾きは、最低で2〜3kV/mに低下可能であろう。これは、正のストリーマとは対照的に、正のリーダは、非現実的な高電位を要することなしに、100mのレンジの距離を伝播する能力を有していることを示している。
【0007】
接地構造物から生じるすべての可能なリーダが、軌跡を完成させ、最終的な跳躍において、降下する負のリーダと遭遇するわけではないことに留意することが重要である。正のリーダが構造物からどんどん遠く離れて伝播するのに伴って、その動きは、益々、リーダ先端前方の空間電位や電界などのパラメータによって支配されることになり、降下するリーダの電荷によって決定される度合いが増大し、接地構造物によって決定される度合いは少なくなる。状態が、連続した伝播にとって好適ではない場合には、正のリーダが停止してしまい、その正のストリーマ/正のリーダのプロセスを開始した関連する接地構造物は雷撃されないことになる。
【0008】
下方への負の雷によって雷撃される物体は、その誘発された正の電荷に起因して長い正のストリーマの生成に「成功」したものであり、この長い正のストリーマが、接近している負の降下するリーダと最終的な跳躍と呼ばれるものにおいて遭遇するべく、増大する電界ゾーン内において進行する正のリーダを結果的に形成している。最終的な跳躍は、上昇する正のリーダの先端と、降下する負の雷のリーダの先端の間における平均電圧の傾きが500〜600kV/mに到達した場合に発生する。
【0009】
負の降下する雷のリーダからわかるように、その個々の誘発された正の電荷を有するすべての接地物体は、それらの中のいずれのものが大きな正のストリーマの活動を生成することになるのか、そして、それらの中のいずれのものが最終的な跳躍に向かう軌跡を完成させる正のリーダの生成に「成功」するのかを決定する競争状態にある。最終的な跳躍に向かう軌跡の完成に成功した高い構造物が存在しない場合には、負の降下するリーダは、既定により、地面に向かうことになる。従って、このような落雷のリスクの低減を意図する場合には、任意の構造物が、電気的に沈黙した状態に、即ち、長い正のストリーマを生成する競技において不活発な又は抑制された状態に留まることが非常に有利である。
【0010】
先程参照した雷の閃光の第2タイプは、負の降下するリーダの存在を伴うことなしに、上方への正のストリーマ/リーダのプロセスの形態において発生する上方への閃光である。このタイプの雷撃の確率は、平らな地面上において100mを超える高さを有する構造物の場合に大きくなる。又、これらは、山上においては、格段に低い構造物においても発生可能である。この場合には、降下するリーダが存在しないため、構造物における及びその近傍における電界の増強は、雲の負電荷によってのみ直接的に生成された構造物上における正の誘発電荷によってもたらされている。
【0011】
上方への雷の場合には、正のリーダの開始に必要な周辺(地上)電界は、その大部分が構造物の高さに依存している。高い構造物の場合には、臨界周辺電界は、実際には、Eg=1600/hという簡単な式によって構造物の高さに関係付けられており、この場合に、Egの単位は、kV/mであり、構造物の高さの単位は、メートルである(参考文献[1]、[2])。最も高い構造物の場合にも、臨界周辺電界は、3kV/mを超過する必要がある(参考文献[1]、[2])。従って、この場合にも、上方への落雷のリスクの低減を意図する場合には、構造物が、電気的に沈黙した状態、即ち、不活発な又は抑制された状態、つまり、長い正のストリーマを生成する競技に参加するには、通常よりも大きな電界を必要とする状態に留まることが非常に有利である。
【0012】
(従来技術の背景)
避雷の方式は、2つの広範なカテゴリに分割可能である。第1のものは、フランクリン棒又は架空地線の変形であって、雷撃電流用の優先的な経路を付与することにより、潜在的な損傷を防止するという目的を有している。これらのシステムは、落雷の発生確率に対する効果を主張してはいない。
【0013】
米国特許第5,043,527号(Carpenter)、米国特許第4,910,636号(Sadler他)、及び米国特許第4,605,814号(Gillem)などのもう1つの避雷の方式の広範なカテゴリは、「散逸システム(dissipation system)」と呼称可能である。これらのシステムは、ワイヤ又は棒のポイント又は先端部を使用して空間電荷を生成している。これらの装置が機能すると考えられている方法については、ほとんど又はまったく科学的な根拠を伴っていないいくつかの矛盾する主張が存在している。いくつかの散逸システムの提案者は、空間電荷の生成によって雲の負の電荷を中和し、これにより、雷を除去可能であると主張しているが、これは、非現実的である。その他の散逸システムの提案者は、保護対象の構造物からのイオンの散逸により、風下に吹き飛ばされることによって蓄積電荷が低減されると共に、帯電した雲と保護対象の構造物の間の電位差が低減又は極小化されることになると主張している。
【0014】
接地構造物上における誘発(イメージ)電荷は、雲又は降下するリーダの誘発電荷が留まる限り、そこに留まる電荷であって、周囲の空気に散逸することはできないため、当然のことながら、これらの主張は、物理的に無効である。更には、金属が正のイオンを放出しないということは、確立された科学的事実である。これとは対照的に、正の空間電荷は、結果的に電子が電極(構造物)によって収集されると共に地面に注入され、これにより、周囲の空気に正イオンの空間電荷が残留するというイオン化のプロセスによって形成されている。又、定義により、接地構造物は、雷撃を受けない限り、接地電位に常に留まっている又は留まることになるため、雲と接地物体の間の電位を変更するということは、必然的に、雲の電位を変更するという非現実的な内容を意味している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、様々な雰囲気状態において構造物の末端における正のストリーム/リーダの開始を制御することにある。
【0016】
接地構造物の末端からの正のリーダの開始を制御する第1の可能性は、末端の形状を変更するというものである。但し、空間電荷を末端の表面における電界によって除算したものとして定義される構造物の末端の等価半径が、所謂臨界半径である臨界値を下回っている場合には、その構造物の形状は、実際には、正のリーダの開始に対する影響を具備していないという点に留意しなければならない。一方、大きな曲率半径を有する導電性表面によって末端の形状を変更した場合には、乾燥状態においてのみ、リーダ開始空間電位を実際に増大させることが可能である。但し、雨の場合には、大きな電極からのリーダ開始レベルは、等価半径が臨界半径以下である末端におけるものと同一になる(参考文献[5])。
【0017】
構造物の末端からの放電活動を制御する第2の技法は、空間電荷の遮蔽によるものである。正の空間電荷を生成する装置による構造物の末端の保護に成功するには、次のように、いくつかの前提条件が存在している。
【0018】
1.空間電荷生成装置は、正のストリーマモードにおいてコロナを生成してはならない。このような正のストリーマ生成は、正の空間電荷生成という目的を妨げることになると共に、実際には、前述のメカニズムに従って装置が雷撃を受ける確率を増大させる可能性を有している。ポイント又はポイントのアレイは、一般的に、正のストリーマを生成する傾向を有していることが知られていることから、この要件のみにより、先端放電に基づいた多くの装置が排除されることになろう。
【0019】
2.装置は、乾燥状態においてのみならず、湿潤状態においても、ストリーマを伴わないようにすることができなければならない。雷は、通常、雨と関連しているため、この要件は明らかである。乾燥状態においてしか要件どおりに機能しない装置は、不十分である。
【0020】
3.装置は、ストリーマを伴わない状態において十分に高レートの空間電荷を生成することにより、風の強い状態においても、その意図した目標を実現可能でなければならない。更には、近接したポイントは、相互作用して空間電荷を生成するそれぞれの能力を制限することになるため、多数の放電ポイントを近接状態において密集させたとしても、この問題を解決することにはならない。
【0021】
4.装置は、様々な状況及び状態において適用できるように、空間電荷の生成を制御すなんらかの手段を提供しなければならない。
【0022】
5.必要に応じて接地構造物からの正のストリーマの生成を抑制するべく、装置は、周辺電界が雷撃の前方において増大した際に入手可能な相対的に短い時間において、且つ、負のリーダが地面に向かって移動して1kV/μ秒を超過するレンジの空間電荷の変動を生成する際に数十ミリ秒において、十分に高レートの空間電荷をストリーマを伴わない状態において生成しなければならない。
【0023】
以上の内容に鑑み、接地構造物の末端からの放電活動を制御する空間電荷遮蔽法について列挙された必要な基準のすべてを満足している湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタを提供することが本発明の更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置が提供されており、この装置は、接地されるべく適合された支持構造物と、支持構造物の周りに巻回されており、保護対象物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、空間電荷は、雲の電荷によって保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を保護対象の物体上に誘発すると共に、保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している空間電荷生成導体と、を有していることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、空間電荷生成導体は、導電性ワイヤ、導電性ワイヤの束、導電性ファイバ、導電性フィラメント、導電性フィラメントの束、導電性ワイヤから製造されたyarn(ヤーン)、導電性ワイヤの束から製造されたヤーン、導電性ファイバから製造されたヤーン、導電性フィラメントから製造されたヤーン、導電性フィラメントの束から製造されたヤーン、導電性ワイヤから製造されたnitted fabric(編生地)、導電性ワイヤの束から製造された編生地、導電性ファイバから製造された編生地、導電性フィラメントから製造された編生地、導電性フィラメントの束から製造された編生地、導電性ワイヤから製造された織生地、導電性ワイヤの束から製造された織生地、導電性ファイバから製造された織生地、導電性フィラメントから製造された織生地、導電性フィラメントの束から製造された織生地を含む群から選択されており、この場合に、前述のワイヤ、ファイバ、及びフィラメントのそれぞれは、0.1mmを超過しない直径を具備している。
【0026】
好ましくは、支持構造物は、接地されていると共に、連続した環状体、区分化された環状体、連続した金属製環状体、区分化された金属製環状体、避雷ポール、送電線の架空地線、変電所の架空地線、支持ワイヤ、及びウィンドタービンブレードを含む群から選択されている。
【0027】
好ましくは、空間電荷生成導体は、支持構造物の周りに巻回されており、導体の単一レイヤ又は導体の複数レイヤを形成している。
【0028】
好ましくは、空間電荷生成導体は、長手方向及び/又は横断方向において支持構造物の周りに巻回されている。
【0029】
使用の際には、装置は、適切に成形及び寸法設定されていると共に落雷に先行する電界に晒された際に、グローモードのコロナに入り、湿潤及び乾燥状態の両方において、高い及び予測可能なレートの正の空間電荷を生成する。この正の空間電荷の生成レートは、風の強い状態においても、定義されたエリア内の構造物又は導体上に負の電荷を誘発すると共に、正のストリーマの生成を抑圧することにより、従来の並びに上方への落雷の両方のリスクを低減するのに十分なものである。
【0030】
本発明の別の態様によれば、通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置を製造する方法が提供されており、この方法は、a)接地されるべく適合された支持構造物を提供する段階と、b)支持構造物の周りに空間電荷生成導体を巻回することにより、保護対象の物体の近傍において、雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成する段階であって、空間電荷は、雲の電荷によって保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を保護対象の物体上に誘発すると共に、保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している、段階と、を有していることを特徴とする。
【0031】
好ましくは、段階b)は、空間電荷生成導体によって形成されたコイルの所与の巻線ピッチを選択すると共に、支持構造物の周りに巻回された空間電荷生成導体の所与の長さを選択することにより、保護対象の物体の近傍に生成される空間電荷のレートを制御する段階を有している。
【0032】
好ましくは、段階a)は、支持構造物の地面の上方における所与の高さを選択することにより、任意の所与の周辺電界において空間電荷生成導体が晒される電界の値を制御する段階を有している。
【0033】
好ましくは、段階a)は、支持構造物の所与の長さを選択すると共に、空間電荷生成導体の所与の長さを選択することにより、任意の所与の周辺電界及び支持構造物の地面の上方における所与の高さにおいて保護対象の物体の近傍に生成される空間電荷のレートの値を制御する段階を有している。
【0034】
好ましくは、段階(a)は、支持構造物の所与の直径を選択すると共に、空間電荷生成導体の長さを選択することにより、任意の所与の周辺電界及び支持構造物の地面の上方における所与の高さにおいて保護対象の物体の近傍に生成される空間電荷のレートの値を制御する段階を有している。
【0035】
好ましくは、支持構造物は、導電性支持構造物であり、段階a)は、導電性支持構造物の直径を選択することにより、任意の所与の周辺電界及び支持構造物の地面の上の所与の高さにおいて空間電荷生成導体が晒される電界を制御する段階を有している。
【0036】
好ましくは、段階a)は、保護対象の物体上に又はこの近傍に支持構造物を配置する段階を有している。
【0037】
好ましくは、段階b)は、保護対象の物体内にコイルを組み込む段階を有している。好ましくは、物体自体が支持構造物として機能している。
【0038】
本発明の更に別の態様によれば、通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する複数の避雷装置が提供されており、それぞれの装置は、接地されるべく適合された支持構造物と、支持構造物の周りに巻回されており、保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、空間電荷は、雲の電荷によって保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を保護対象の物体上に誘発すると共に、保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備しており、ここで、それぞれの避雷装置は、所与の距離だけ、互いに離隔している、空間電荷生成導体と、を有している。
【0039】
好ましくは、本明細書に開示されている本発明は、それ自身が、すべての従来のシステムから以下の点において弁別されている避雷装置である。
【0040】
・これは、空間電荷を生成するべく、非常に細い(直径が0.1mmを超過していない)導電性のワイヤ又はファイバ、或いは、このようなファイバ又はワイヤから製造された生地から構成されたコイルを使用している。
【0041】
・これは、例外的に高い電界においても、(ストリーマを伴っていない)パルスレスグローモードにおいてコロナを生成するのみである。
【0042】
・これは、湿潤及び乾燥状態の両方において機能する。
【0043】
・これは、空間電荷の生成レートを制御する手段を提供している。
【0044】
・更には、構造物の先端と雲又は降下するリーダの間の距離と比較した場合の本装置(インヒビタ)と保護対象の構造物の間の短い距離に起因し、これは、適切な極性の大きな電荷を誘発することにより、保護対象の構造物に対する雲又は降下する負のリーダの影響を中和するという現実的なタスクを実現している。そして、この結果、保護対象の又は隣接する導体又は構造物からのストリーマの生成を抑制している。
【0045】
好ましくは、本装置は、様々な形状及びサイズの環状体又は架空地線、或いは、支持ワイヤなどの支持構造物を含んでおり、これは、少なくとも部分的に金属製又は導電性である。或いは、この代わりに、本装置は、ウィンドタービンのブレードなどの非導電性の支持構造物を包含することも可能である。いずれの場合にも、支持電極又は支持構造物には、連続した又は区分化された電気コイルを形成するべく、長手方向及び/又は横断方向において、非常に細い(直径が0.1mm又は0.00394インチを超過していない、但し、10〜50ミクロンのレンジの直径によって最良の結果を実現可能である)導電性ワイヤ、ファイバ、フィラメント、又はフィラメントの束、このような細いファイバ又はワイヤから製造されたヤーン又は単層又は多層の織生地又は編生地が巻き付けられている。好ましくは、導電性ワイヤ又はファイバ又はフィラメントは、ステンレススチールなどの耐候性材料から製造されている。導電性ワイヤ又はファイバは、接地に電気的に接続されていると共に、コロナに入った際に、乾燥及び湿潤状態の両方において、ストリーマの形成を伴うことなしにグロータイプの放電を生成するように、十分に細くなっている。地面の上方における必要な高さにおいて適切な形状及び寸法に設定された際に、本装置は、ストリーマを伴うことなしに、最低でも2kV/mの周辺(地上)電界並びに数百kV/mのレンジの高い周辺電界において空間電荷を生成可能である。湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの近傍における10ミリクーロンのレンジの蓄積された正の空間電荷は、そのイメージ電荷を考えた場合に当然のこととして、数十メートルのレンジの装置の周りの距離において正のストリーマの生成を抑制するのに十分な負の電荷を誘発している。
【0046】
環状体形の電極支持構造物の便利な特徴は、既存の避雷/フランクリン棒に容易に取り付け可能であるという点にある。又、本発明を適用した送電線及び/又は変電所の保護は、インヒビタコイルを既存の接地線に容易に取り付け可能であるという利点を具備している。
【0047】
電気コイルの支持構造物として金属製の環状体電極を使用することにより、雲又は降下するリーダに起因した周辺電界の任意の一般的な値においてコイルが実際に晒される電界を制御及び強化する手段が提供されている。これは、環状体の材料の直径及び環径、並びに、その地面上における高さの調節によって実行される。
【0048】
電極の寸法及び地面上における高さによる電界の制御に加えて、コイルの巻線ピッチも、コイルの長さと、従って、装置の周りの正の電荷の生成レートを決定することになる。これは、電荷の制御と、雲又は負の降下するリーダに起因した周辺電界に対する本装置(インヒビタ)の感度を決定するための固有の可能性を提供している。
【0049】
説明対象である本発明は、複数の適切に離隔したインヒビタコイル(複数の接地線)を使用することによって同一の状態において電荷の生成を増大させる追加の単純な手段を提供している。環状体の場合には、ダブル環状体電極構成における個々の環状体の間の離隔は、個々の環状体の材料の直径よりも格段に大きく、且つ、環径よりも格段に小さくする必要がある。マルチ環状体構成における後続のダブル環状体の必要性及びその間の離隔については、保護対象の構造物の高さ及び個々の環状体の環径によって決定されることになる。
【0050】
空間電荷は、電界内を移動し、風や雨滴によって運び去られることが広く知られている。
【0051】
インヒビタコイルによって生成された正の空間電荷は、2つの成分を具備している。第1のものは、雲に起因した周辺電界がインヒビタコイルの空間電荷生成要素上におけるコロナの開始をもたらした際に即座に生成されている。これは、相対的に低速のプロセスであるが、風又は雨によって除去された電荷が、即座に、電極(環状体、接地線、又は支持ワイヤ)の表面に垂直の電界を増強すると共に、電荷の除去と電荷の生成間における均衡状態に到達する時点まで、電荷の生成レートを増大させる。
【0052】
空間電荷の第2の成分は、地面に対する下方への負のリーダの伝播の際の電界の増強に起因して生成されている。負の降下するリーダの速度は、105m/sのレベルであることが広く知られている。これは、負のリーダが約10msにおいて1kmの距離をカバーすることを意味している。数十メートル/秒の風速及び数メートル/秒の降下雨滴速度の場合には、10msの持続時間においてインヒビタによって生成される空間電荷は、実際的には停止状態となり、その割り当てられた役割を果たすことになる。
【0053】
乾燥及び湿潤状態の両方においてストリーマを伴うことなしに高レートの正の空間電荷を生成するというこの固有の特性に起因し、風の強い状態においても、隣接する(保護対象の)構造物上に負の電荷が誘発される。このような保護対象の構造物上の誘発された負の電荷は、雲又は降下する負のリーダの負の電荷によって構造物上に誘発された正の電荷を中和する。これは、保護対象の構造物からの正のストリーマの形成を抑制するという効果、特に、リーダ放電への変化に必要とされる臨界サイズにストリーマが到達することを抑制するという効果を具備しており、この結果、雷捕捉プロセスに対する構造物の参加を低減し、これにより、落雷に対するその脆弱性を低減している。
【0054】
通常の下方への雷の場合には、インヒビタは、構造の吸引半径における潜在的に正のリーダによってカバーされている部分を低減又は完全に除去するという目的を具備している。地上における限られた投影エリアを有する構造物又は物体の場合には、これは、相応して吸引半径raを大幅に低減することになると共に、構造物の周りの露出エリア(ττra2)を最大で10分の1に低減可能であろう。
【0055】
電力線及び変電所における落雷の発生は、前述の構造物の場合と非常に類似している。但し、1つの違いは、導体及び構造物の限られた高さに起因し、電力設備は、上方への閃光の傾向を有してはおらず、降下するリーダに起因してのみ雷撃可能であるという点である。電力線導体の避雷は、その大部分が架空地線によって行われているが、変電所の橋門上において、しばしば、避雷針も使用されている。2つの個別のメカニズムに起因し、雷に起因した線路及び変電所の絶縁フラッシュオーバーが発生する。第1のものは、「遮蔽障害」であり、この場合には、架空地線による保護の存在にも拘わらず、電力導体が雷撃される。第2の「バックフラッシュオーバー」と呼ばれるメカニズムは、タワーの先端又は架空地線が雷撃された際に発生し、一時的に、接地を上回ってその電位を上昇させ、導体とタワー構造物の間の絶縁体列に過度なストレスを印加する。いずれの場合にも、降下する負のリーダに起因して線路導体又は架空地線上に誘発された正の電荷が周囲の空気に過度なストレスを印加し、正のストリーマを生成する。これらのストリーマは、臨界サイズに到達した際に、正の上昇するリーダを生成し、このリーダーが、捕捉メカニズムと、従って、導体又は架空地線の横方向の吸引距離の決定において主要な役割を果たしている。
【0056】
架空地線の周りに巻回されたストリーマを伴わない湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルは、正の空間電荷雲を生成することになり、この空間電荷雲が、接地線及び保護対象の電気導体の両方に負の電荷を誘発することになろう。この結果、正のストリーマ/リーダ生成プロセスが抑制されると共に、その横方向の吸引距離が大幅に低減されることになる。
【0057】
通常は、5〜15kAのレンジである遮蔽障害に関連した雷撃電流の場合には、捕捉メカニズムのモデル(参考文献[6])は、導体から生じる正のリーダが横方向の吸引距離の略半分をカバーすることを示している。従って、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリームインヒビタコイルは、横方向の吸引距離を最大で2分の1以下に低減可能であろう。バックフラッシュオーバーに関連した雷撃電流は、各段に大きく、しばしば、100kAのレンジである。この場合には、接地線から上昇する正のリーダは、最大で横方向の吸引距離の2/3をカバー可能であり、この結果、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの適用は、バックフラッシュオーバーと関連した落雷の数の低減において更に有効となる。
【0058】
上方への雷の場合には、構造物からの正のストリーマの形成を抑制することは、保護対象の構造物からの上向きのリーダの形成のために雲の電荷によって生成される必要な周辺電界を上昇させるという効果を具備することになろう。雲の電荷に起因した周辺地上電界は、通常、2kV/m〜18kV/mのレンジにおいて変化する静的な変数である(参考文献[1]、[2])。構造物における上方への雷発生の臨界周辺電界は、Eg=1600/hという簡単な式によって付与される。従って、例えば、135mの通信タワーは、12kV/mという臨界周辺電界を具備することになり、553mの高さを有するCNタワーなどの構造物の場合には、臨界周辺電界は、3kV/mということになる。従って、必要な臨界周辺電界を上昇させることにより、且つ、構造物の高さ及び生成される空間電荷の量に応じて、インヒビタは、それらの構造物からの上方への雷を低減する又は完全に除去するという効果を具備することになる。
【0059】
本発明及びその多数の利点については、添付の図面を参照して提示されている好適な実施例に関する以下の非限定的な説明を参照することにより、更に理解することができよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
図1を参照すれば、電気インヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体12が巻き付けられた避雷針10が示されている。空間電荷生成導体12は、非常に細い(直径が0.1mmを超過しない)導電性のワイヤ、ファイバ、フィラメント、フィラメントの束、このようなファイバ又はワイヤから製造されたヤーン又は織生地又は編生地であってよい。導電性ワイヤ又はこれに類似したものは、巻線ピッチ距離WPを定義する所与の巻線ピッチによって避雷針10の周りに巻回可能である。
【0061】
図2a、図2b、図3a、図3bを参照すれば、本発明の好適な実施例による支持構造体として使用可能であるプレーンな単一環状体電極14及びセグメント化された環状体電極16が示されている。環状体電極14、16は、その材料の直径d、環径D、内部環径Di、及び外部環径Doを有するものとして示されている。これらは、本発明において変化可能である様々なパラメータ及び寸法を設定している。
【0062】
図4a、図4bを参照すれば、それぞれ、本発明の好適な実施例によるインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体12として使用された細い導電性のワイヤ又はファイバが横断方向において巻き付けられた連続した単一の金属製環状体14及びセグメント化された環状体16がそれぞれ示されている。
【0063】
図4cを参照すれば、本発明の好適な実施例による2つの連続した環状体14及び2つのインヒビタコイルを形成する横断方向において周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性のワイヤ及びファイバが示されている。
【0064】
図4dを参照すれば、本発明の好適な実施例による2つの連続した環状体14及び単一のインヒビタコイルを形成する横断方向において周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性ワイヤ又はファイバが示されている。
【0065】
図5aを参照すれば、本発明の好適な実施例による連続した環状体14及びマルチレイヤ型のインヒビタコイルを形成する長手方向及び横断方向の両方において環状体14の周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性ファイバ又はワイヤから製造された織生地又は編生地18が示されている。
【0066】
図5bを参照すれば、本発明の好適な実施例による連続した環状体及びインヒビタコイルを形成する長手方向において環状体の周りに巻き付けられた空間電荷生成導体12として使用された細い導電性ファイバ又はワイヤが示されている。
【0067】
図6を参照すれば、本発明の好適な実施例による避雷装置1を形成する図4aに示されているものに類似した複数のダブル環状体インヒビタコイル20がその上部に取り付けられた自立型の避雷ポール10が示されている。細い導体12が巻き付けられた環状体14が、UL認証された避雷針上に取り付けられているため、環状体電極又は環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルは、従来の避雷針が使用されている任意の場所において使用可能であり、これにより、避雷装置1が容易に形成される。ポール10は、支持ワイヤ22によって支持されると共に接地された電極24に接続された状態において示されている。
【0068】
図7を参照すれば、タワー26の最上部に取り付けられた本発明の好適な実施例による避雷装置1が示されている。避雷装置1は、従来の避雷針10に固定されると共に接地システム又は接地電極24に接続されたダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル20から製造されている。
【0069】
図8を参照すれば、タワー26の周りに取り付けられた本発明の別の好適な実施例による避雷装置1が示されている。避雷装置1は、接地電極24に接続されたダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル20から製造されている。
【0070】
図9を参照すれば、本発明は、単一ユニットとして提案されているが、いくつかのユニットを直列に使用することにより、高い通信タワー26などの物体を電気的に休止した状態にすることが可能である。この例においては、最上部の近くに直接的に取り付けられた避雷装置又はインヒビタ1と、接地システム24に接続されたタワー26の底部近傍におけるいくつかの避雷装置又はポール取り付け型のインヒビタ1が示されている。
【0071】
図10を参照すれば、本発明の別の好適な実施例によるウィンドタービンブレード28を保護するべく使用されている避雷装置が示されている。この例においては、インヒビタコイル30は、例えば、ウィンドタービンブレード28の絶縁ブレード内に組み込むべく製造可能であり、この場合には、ウィンドタービンブレードが支持構造物として機能している。組み込まれたコイル30は、ワイヤ32を介してグラウンドに接続されており、ワイヤ32は、従来の避雷金属先端36の従来の接地線34に接続可能である。
【0072】
図11を参照すれば、本発明の別の好適な実施例による水上を航行する船舶又はボート38を保護するべく使用される避雷装置が示されている。この例においては、インヒビタコイル40は、ボート38のマスト上に取り付けられていると共に、接地線42に接続されている。
【0073】
図12を参照すれば、本発明の好適な実施例による組み込み型のインヒビタコイル30を有する高電圧DCトリガされた空隙(トリガトロン)の一例が示されている。負の高電圧電極46と正の接地電圧電極48の間に、調節可能な空隙44が定義されており、正の接地電圧電極は、絶縁抵抗器50を介してトリガ電極に接続されている。正のストリーマを抑制することにより、本発明による装置を使用し、トリガトロンの場合のように、空隙の最小絶縁破壊電圧を増大させ、且つ、絶縁破壊電圧の消散を低減することにより、トリガパルスが印加される前のギャップの誤ったスパークを防止可能である。トリガトロンの1つの代替構成は、対向電極を接地しつつインヒビタ保持電極30を正の電位源に接続するというものになろう。
【0074】
図13を参照すれば、本発明の好適な実施例による保護対象の構造物54上に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ1として実施された避雷装置が示されている。インヒビタ1は、地線42を介して接地電極24に接続されている。負の雲の電荷60は、地面に正の電荷62を、構造物54に正の電荷64を、そして、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ1に正の電荷65を誘発している。インヒビタ1に誘発された正の電荷65は、雨70又は風の強い状態72においても、インヒビタの周りの空気のイオン化と、ストリーマを伴うことなしに保護対象である構造物54上に負の電荷68を誘発するための十分な正の空間電荷66の生成をもたらし、この結果、雲による誘発電荷を中和し、これにより、正のストリーマの形成を抑制している。又、インヒビタの正の電荷66に起因し、負の電荷74が地面に生成されている。
【0075】
図14a及び図14bを参照すれば、送電線のタワー又は変電所の支持構造物又は架空地線が使用されているその他の場所の間に吊り下げられた架空地線76の周りに空間電荷生成導体12が巻き付けられることにより、電気コイルが形成されている。
【0076】
図15を参照すれば、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル及び2つのポール取り付け型の環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ78が取り付けられた2つの架空地線76を有する2つの変電所の橋門が示されている。これらの変電所の橋門は、碍子連80、バスバー82、鋼製の橋門、及び接地線支持部86を含んでいる。
【0077】
図16a及び図16bを参照すれば、構造物90を支持するべく使用されている支持ワイヤ88の周りに空間電荷生成導体12が巻き付けられることにより、電気コイルが形成されている。電荷生成導体は、支持ワイヤ88の一部分にのみ巻回する必要がある。任意選択により、先端取り付け型の環状体インヒビタ1を提供可能である。
【0078】
図17を参照すれば、環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタ1を金属製煙突92上に取り付け可能である。このインヒビタは、接地電極24に接続されている。
【0079】
(実験に基づいた試験)
本特許の著者らは、2006年1月23日〜31日の期間に、Hydro Quebec’s High Voltage Laboratoryに2つの一連の実験を依頼し、これに立ち会った。試験の目的は、細いワイヤが、
・電極のコロナ開始電圧、
・衝撃電流の生成(ストリーマ)対DC電流(グローモードコロナ)、並びに、
・試験電極が陽極として機能する1.5メートルのダブル環状体型プレーン空隙の絶縁破壊電圧に対して有することになる効果を判定することにあった。
【0080】
いくつかの同一のステンレススチール試験電極を構築した。それぞれの電極は、その環径が1メートルであって、その材料の直径が2.54cm(1インチ)である2つの環状体から構成されており、これらの環状体を30cm(12インチ)だけ離隔した状態においてステンレススチールフレーム上に対称的に取り付けた。1つのダブル環状体試験電極は、裸の状態で残して「標準」として機能させ、その他の試験電極には、
・50ミクロン(直径)のステンレススチールワイヤ、
・12ミクロン(直径)のステンレススチールファイバの275本のフィラメントの束、並びに、
・12ミクロン(直径)のステンレススチールファイバのフィラメントの束から製造された織生地の様々な量を巻回した。
【0081】
第1の一連の実験においては、直径が10cm(4インチ)の垂直のアルミニウムポールの地面の上方3.5mのところに試験電極を取り付けられた。約6mの直径の導電性プレートを試験電極上部の地上5メートルの高さ、即ち、試験電極の上方1.5メートルのところに吊り下げた。湿潤及び乾燥状態の両方において、直流電圧(DC)下においてそれぞれの電極を別個に試験した。導電性プレートの電圧を約45秒において負の600kVに昇圧させ、(電流フローの計測及び可視放電及び可聴雑音の監視を通じて)コロナ開始電圧に注意しつつ、電圧を600kVにおいて1分間にわたって保持した後に、絶縁破壊まで昇圧させた。乾燥状態の裸の「標準」電極の場合には、コロナ開始電圧は、約400kVであり、1.5メートルのギャップの絶縁破壊電圧は、約650kVであった。更に、これは、400kVから更に絶縁破壊の時点まで、大きなストリーマの活動を継続した。この同一の電極が湿潤状態にある際には、コロナ開始電圧は約250kVであり、絶縁破壊電圧の変化は、ほとんどないが、大きなストリームの活動を伴っていた。
【0082】
しかしながら、適切な量の細いワイヤ又は細いファイバ又はこのようなファイバから製造された織生地を試験電極の周りに巻回すると共に、これらに同一の状態を適用した場合には、大きな相違点が観察された。湿潤及び乾燥状態の両方におけるコロナ開始電圧が、最低で150kVまで低減された。ギャップの絶縁破壊電圧は、約150kVだけ増大し、電極は、最大で1.7mAのDC電流を生成するか、又は約1.7mC/sのレートにおいて空間電荷を生成した。更には、これらの電極は、湿潤及び乾燥状態の両方において、ちょうど絶縁破壊の時点までストリーマをまったく生成しなかった。
【0083】
第2の一連の試験においては、試験電極を正のDC源に直接接続すると共に、電流計測シャントを通じて接地された大きなスチールプレートの上方3.5メートルのところに逆さまに吊り下げた。電圧を段階的に最大で800kVまで昇圧させ、計測及び観察をそれぞれの安定期において実行した。裸の試験電極は、湿潤及び乾燥状態の両方において大きなストリーマの活動を具備したが、この場合にも、細いワイヤ又は細いファイバの適切な構成の存在は、ストリーマの活動を除去すると共に大量の空間電荷を生成することが観察された。この第2の一連の試験は、ギャップの絶縁破壊に到達するべく設計されてはいなかった。
【0084】
(参考文献)
1.Modeling of lightning incidence to Tall Structures Part I: Theory, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.9, No.1 January 1994, pp.162-171
2.Modeing of Lightning Incidence to Tall Structures Part II: Application, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.9, No.1 January 1994, pp.172-193
3.A Model for Switching Impulse Leader Inception and Breakdown of Long Air-Gaps, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.4, No.1, January 1989, pp.596-606
4.Switching Impulse Strength of Air Insulation: Leader Inception Criterion, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. On power Delivery, Vol.4, No.4, October 1989, pp.2187-2195
5.Influence of Rain on Swithcing Inpulse Sparkover Voltage of large Electrode Air-Gaps, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Apparatus and Systems, Vol.PAS-95, No.4, July/August 1976, pp.1394-1402
6.Modeling of Transmission Line Exposure to Direct Lightning Strokes, Farouk A.M. Rizk, IEEE Trans. on Power Delivery, Vol.5, October 1990, pp1983-1997
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の好適な実施例による電気インヒビタコイルを形成する空間電荷生成要素である非常に細い(直径が0.1mm未満の)導電性ワイヤ、ファイバ、フィラメント、フィラメントの束又はヤーンが巻き付けられた従来の避雷針の側面断面図である。
【図2a】本発明の好適な実施例による支持構造物として使用されるプレーンな単一の環状体電極の側面断面図である。
【図2b】本発明の好適な実施例による支持構造物として使用されるプレーンな単一の環状体電極の平面図である。
【図3a】本発明の好適な実施例による支持構造として使用されるセグメント化された環状体電極の側面断面図である。
【図3b】本発明の好適な実施例による支持構造として使用されるセグメント化された環状体電極の平面図である。
【図4a】本発明の好適な実施例による単一の連続した環状体及び横断方向において環状体の周りに巻き付けられてインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ又はファイバの断面図である。
【図4b】本発明の好適な実施例によるセグメント化された環状体及び環状体の周りに横断方向において巻き付けられてインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ又はファイバの断面図である。
【図4c】本発明の好適な実施例によるダブル環状体及び横断方向において巻き付けられて2つのインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ及びファイバの断面図である。
【図4d】本発明の好適な実施例によるダブル環状体及び横断方向において巻き付けられて単一のインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ワイヤ又はファイバの断面図である。
【図5a】本発明の好適な実施例による連続した環状体及び長手方向及び横断方向の両方において環状体の周りに巻き付けられてインヒビタコイルを形成する空間電荷生成導体として使用されている細い導電性ファイバ又はワイヤから製造された織生地又は編生地の断面図である。
【図5b】本発明の好適な実施例による連続した環状体及び長手方向において環状体の周りに巻き付けられてインヒビタコイルを形成する電荷生成導体として使用されている細い導電性ファイバ又はワイヤの断面図である。
【図6】本発明の好適な実施例による自立型の避雷ポール上に取り付けられた複数のダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図7】本発明の好適な実施例による従来の避雷針及び接地システムに対して固定されたダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタが先端に取り付けられたタワーの側面断面図である。
【図8】本発明の好適な実施例によるタワーに直接取り付けられていると共に従来の接地システムによって接地されているダブル環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図9】本発明の好適な実施例によるタワーに取り付けられた複数の環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図10】本発明の好適な実施例による絶縁ウィンドタービンブレード及び接地線を有する組み込み型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルの断面図である。
【図11】本発明の好適な実施例による接地線を有するボート上に配置された先端に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面断面図である。
【図12】本発明の好適な実施例による組み込み型のインヒビタコイルを有する高電圧DCトリガされた空隙の概略図である。
【図13】本発明の好適な実施例による保護対象の構造物上に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタとして実施された避雷装置の概略図である。
【図14a】本発明の好適な実施例による送電線のタワー又は変電所の支持構造物の間に吊り下げられた、湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルが取り付けられた架空地線の側面断面図である。
【図14b】図14aに示されている架空地線の長手方向の詳細を示す側面図である。
【図15】本発明の好適な実施例による湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイル及び2つのポール取り付け型の環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタが取り付けられた2つの架空地線を有する2つの変電所の橋門の平面図である。
【図16a】本発明の好適な実施例による湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタコイルが取り付けられた支持ワイヤを有する通信タワーの断面正面図である。
【図16b】図16aに示された支持ワイヤの長手方向の詳細を示す側面図である。
【図17】本発明の好適な実施例による金属製煙突上に取り付けられた環状体型の湿潤/乾燥状態におけるグローに基づいたストリーマインヒビタの側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置において、
接地されるべく適合された支持構造物と、
前記支持構造物の回りに巻回されており、前記保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、前記空間電荷は、前記雲の電荷によって前記保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を前記保護対象の物体上に誘発すると共に、前記保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している、空間電荷生成導体と、
を有することを特徴とする避雷装置。
【請求項2】
前記空間電荷生成導体は、導電性ワイヤ、導電性ワイヤの束、導電性ファイバ、導電性フィラメント、導電性フィラメントの束、導電性ワイヤから製造されたヤーン、導電性ワイヤの束から製造されたヤーン、導電性ファイバから製造されたヤーン、導電性フィラメントから製造されたヤーン、導電性フィラメントの束から製造されたヤーン、導電性ワイヤから製造された編生地、導電性ワイヤの束から製造された編生地、導電性ファイバから製造された編生地、導電性フィラメントから製造された編生地、導電性フィラメントの束から製造された編生地、導電性ワイヤから製造された織生地、導電性ワイヤの束から製造された織生地、導電性ファイバから製造された織生地、導電性フィラメントから製造された織生地、導電性フィラメントの束から製造された織生地を含む群から選択されており、ここで、前記ワイヤ、ファイバ、及びフィラメントのそれぞれは、0.1mmを超過しない直径を具備している請求項1記載の避雷装置。
【請求項3】
前記支持構造物は、接地されていると共に、連続した環状体、区分化された環状体、連続した金属製環状体、区分化された金属製環状体、避雷ポール、送電線の架空地線、変電所の架空地線、支持ワイヤ、及びウィンドタービンブレードを含む群から選択される請求項2記載の避雷装置。
【請求項4】
前記空間電荷生成導体は、導体の単一レイヤを形成するべく前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項5】
前記空間電荷生成導体は、導体の複数レイヤを形成するべく前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項6】
前記空間電荷生成導体は、長手方向において前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項7】
前記空間電荷生成導体は、横断方向において前記支持構造物の周りに更に巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項8】
前記空間電荷生成導体は、長手方向及び横断方向の両方において前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項9】
通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置を製造する方法において、
a)接地されるべく適合された支持構造物を提供する段階と、
b)前記支持構造物の周りに空間電荷生成導体を巻回することにより、前記保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成する段階であって、前記空間電荷は、前記雲の電荷によって前記保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を前記保護対象の物体上に誘発すると共に、前記保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している、段階と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記空間電荷生成導体は、導電性ワイヤ、導電性ワイヤの束、導電性ファイバ、導電性フィラメント、導電性フィラメントの束、導電性ワイヤから製造されたヤーン、導電性ワイヤの束から製造されたヤーン、導電性ファイバから製造されたヤーン、導電性フィラメントから製造されたヤーン、導電性フィラメントの束から製造されたヤーン、導電性ワイヤから製造された編生地、導電性ワイヤの束から製造された編生地、導電性ファイバから製造された編生地、導電性フィラメントから製造された編生地、導電性フィラメントの束から製造された編生地、導電性ワイヤから製造された織生地、導電性ワイヤの束から製造された織生地、導電性ファイバから製造された織生地、導電性フィラメントから製造された織生地、導電性フィラメントの束から製造された織生地を含む群から選択されており、この場合に、前記ワイヤ、ファイバ、及びフィラメントのそれぞれは、0.1mmを超過しない直径を具備している請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記支持構造物は、接地されていると共に、連続した環状体、区分化された環状体、連続した金属製環状体、区分化された金属製環状体、避雷ポール、送電線の架空地線、変電所の架空地線、支持ワイヤ、及びウィンドタービンブレードを含む群から選択されている請求項10記載の方法。
【請求項12】
段階b)は、前記保護対象の物体の近傍において生成される前記空間電荷のレートを制御するため、前記空間電荷生成導体によって形成された前記コイルの所与の巻線ピッチを選択すると共に、前記支持構造物の周りに巻回された前記空間電荷生成導体の所与の長さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項13】
段階a)は、任意の所与の周辺電界において前記空間電荷生成導体が晒される電界の値を制御するため、前記支持構造物の地面の上方における所与の高さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項14】
段階a)は、任意の所与の周辺電界及び前記支持構造物の地面の上方における所与の高さに対して前記保護対象の物体の近傍において生成される前記空間電荷のレートの値を制御するため、前記支持構造物の所与の長さを選択すると共に、前記空間電荷生成導体の所与の長さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項15】
段階a)は、任意の所与の周辺電界及び前記支持構造物の地面の上方における所与の高さに対して前記保護対象の物体の近傍において生成される前記空間電荷のレートの値を制御するため、前記支持構造物の所与の直径を選択すると共に、前記空間電荷生成導体の所与の長さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記支持構造物は、所与の周辺電界及び前記支持構造物の地面の上方における所与の高さに対して前記空間電荷生成導体が晒される電界を制御するため、導電性支持構造物であり、前記段階a)は、前記導電性支持構造物の直径を選択する段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項17】
段階a)は、前記保護対象の物体の上に前記支持構造物を配置する段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項18】
段階a)は、前記保護対象の物体の近傍に前記支持構造物を配置する段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項19】
段階b)は、前記保護対象の物体内に前記コイルを組み込む段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項20】
通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する複数の避雷装置において、
それぞれの避雷装置は、
接地されるべく適合された支持構造物と、
前記支持構造物の周りに巻回されており、前記保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、前記空間電荷は、前記雲の電荷によって前記保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を前記保護対象の物体上に誘発すると共に、前記保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備しており、ここで、それぞれの避雷装置は、所与の距離だけ互いに離隔している、空間電荷生成導体と、
を有する、ことを特徴とする複数の避雷装置。
【請求項1】
通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置において、
接地されるべく適合された支持構造物と、
前記支持構造物の回りに巻回されており、前記保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、前記空間電荷は、前記雲の電荷によって前記保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を前記保護対象の物体上に誘発すると共に、前記保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している、空間電荷生成導体と、
を有することを特徴とする避雷装置。
【請求項2】
前記空間電荷生成導体は、導電性ワイヤ、導電性ワイヤの束、導電性ファイバ、導電性フィラメント、導電性フィラメントの束、導電性ワイヤから製造されたヤーン、導電性ワイヤの束から製造されたヤーン、導電性ファイバから製造されたヤーン、導電性フィラメントから製造されたヤーン、導電性フィラメントの束から製造されたヤーン、導電性ワイヤから製造された編生地、導電性ワイヤの束から製造された編生地、導電性ファイバから製造された編生地、導電性フィラメントから製造された編生地、導電性フィラメントの束から製造された編生地、導電性ワイヤから製造された織生地、導電性ワイヤの束から製造された織生地、導電性ファイバから製造された織生地、導電性フィラメントから製造された織生地、導電性フィラメントの束から製造された織生地を含む群から選択されており、ここで、前記ワイヤ、ファイバ、及びフィラメントのそれぞれは、0.1mmを超過しない直径を具備している請求項1記載の避雷装置。
【請求項3】
前記支持構造物は、接地されていると共に、連続した環状体、区分化された環状体、連続した金属製環状体、区分化された金属製環状体、避雷ポール、送電線の架空地線、変電所の架空地線、支持ワイヤ、及びウィンドタービンブレードを含む群から選択される請求項2記載の避雷装置。
【請求項4】
前記空間電荷生成導体は、導体の単一レイヤを形成するべく前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項5】
前記空間電荷生成導体は、導体の複数レイヤを形成するべく前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項6】
前記空間電荷生成導体は、長手方向において前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項7】
前記空間電荷生成導体は、横断方向において前記支持構造物の周りに更に巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項8】
前記空間電荷生成導体は、長手方向及び横断方向の両方において前記支持構造物の周りに巻回されている請求項3記載の避雷装置。
【請求項9】
通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する避雷装置を製造する方法において、
a)接地されるべく適合された支持構造物を提供する段階と、
b)前記支持構造物の周りに空間電荷生成導体を巻回することにより、前記保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成する段階であって、前記空間電荷は、前記雲の電荷によって前記保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を前記保護対象の物体上に誘発すると共に、前記保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備している、段階と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記空間電荷生成導体は、導電性ワイヤ、導電性ワイヤの束、導電性ファイバ、導電性フィラメント、導電性フィラメントの束、導電性ワイヤから製造されたヤーン、導電性ワイヤの束から製造されたヤーン、導電性ファイバから製造されたヤーン、導電性フィラメントから製造されたヤーン、導電性フィラメントの束から製造されたヤーン、導電性ワイヤから製造された編生地、導電性ワイヤの束から製造された編生地、導電性ファイバから製造された編生地、導電性フィラメントから製造された編生地、導電性フィラメントの束から製造された編生地、導電性ワイヤから製造された織生地、導電性ワイヤの束から製造された織生地、導電性ファイバから製造された織生地、導電性フィラメントから製造された織生地、導電性フィラメントの束から製造された織生地を含む群から選択されており、この場合に、前記ワイヤ、ファイバ、及びフィラメントのそれぞれは、0.1mmを超過しない直径を具備している請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記支持構造物は、接地されていると共に、連続した環状体、区分化された環状体、連続した金属製環状体、区分化された金属製環状体、避雷ポール、送電線の架空地線、変電所の架空地線、支持ワイヤ、及びウィンドタービンブレードを含む群から選択されている請求項10記載の方法。
【請求項12】
段階b)は、前記保護対象の物体の近傍において生成される前記空間電荷のレートを制御するため、前記空間電荷生成導体によって形成された前記コイルの所与の巻線ピッチを選択すると共に、前記支持構造物の周りに巻回された前記空間電荷生成導体の所与の長さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項13】
段階a)は、任意の所与の周辺電界において前記空間電荷生成導体が晒される電界の値を制御するため、前記支持構造物の地面の上方における所与の高さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項14】
段階a)は、任意の所与の周辺電界及び前記支持構造物の地面の上方における所与の高さに対して前記保護対象の物体の近傍において生成される前記空間電荷のレートの値を制御するため、前記支持構造物の所与の長さを選択すると共に、前記空間電荷生成導体の所与の長さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項15】
段階a)は、任意の所与の周辺電界及び前記支持構造物の地面の上方における所与の高さに対して前記保護対象の物体の近傍において生成される前記空間電荷のレートの値を制御するため、前記支持構造物の所与の直径を選択すると共に、前記空間電荷生成導体の所与の長さを選択する段階を有する請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記支持構造物は、所与の周辺電界及び前記支持構造物の地面の上方における所与の高さに対して前記空間電荷生成導体が晒される電界を制御するため、導電性支持構造物であり、前記段階a)は、前記導電性支持構造物の直径を選択する段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項17】
段階a)は、前記保護対象の物体の上に前記支持構造物を配置する段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項18】
段階a)は、前記保護対象の物体の近傍に前記支持構造物を配置する段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項19】
段階b)は、前記保護対象の物体内に前記コイルを組み込む段階を有する請求項10記載の方法。
【請求項20】
通常の並びに上方への落雷を保護対象の物体が受けることを低減する複数の避雷装置において、
それぞれの避雷装置は、
接地されるべく適合された支持構造物と、
前記支持構造物の周りに巻回されており、前記保護対象の物体の近傍において雲の電荷とは反対極性の空間電荷を生成するコイルを形成している空間電荷生成導体であって、前記空間電荷は、前記雲の電荷によって前記保護対象の物体上に誘発された電荷とは反対極性の電荷を前記保護対象の物体上に誘発すると共に、前記保護対象の物体からのストリーマの形成を抑制しており、それぞれの空間電荷生成導体は、乾燥及び湿潤状態の両方において、それぞれの空間電荷生成導体が巻回されている前記支持構造物のコロナ開始電圧を低減するべく0.1mmを超過しない直径を具備しており、ここで、それぞれの避雷装置は、所与の距離だけ互いに離隔している、空間電荷生成導体と、
を有する、ことを特徴とする複数の避雷装置。
【図1】
【図2.a】
【図2.b】
【図3.a】
【図3.b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図2.a】
【図2.b】
【図3.a】
【図3.b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【公表番号】特表2009−516899(P2009−516899A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541552(P2008−541552)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001145
【国際公開番号】WO2007/059600
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508155114)
【出願人】(508155125)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001145
【国際公開番号】WO2007/059600
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508155114)
【出願人】(508155125)
【Fターム(参考)】
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