説明

還元処理装置および還元処理方法

【課題】pHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができる還元処理装置および還元処理方法を提供すること。
【解決手段】反応槽1に貯留してある酸化性溶液に対して還元剤を注入することにより該溶液の還元処理を行う還元処理装置において、溶液中の遊離塩素濃度が0.2mg/L以下にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値を記憶する設定記憶部21を有し、還元処理指令が与えられた場合に、還元剤を注入させ、かつ必要に応じてpH調整剤を注入させることにより溶液のpH値を所定範囲に調整し、pH調整後の溶液の酸化還元電位値が対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入させる一方、酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了する制御部20を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元処理装置および還元処理方法に関し、より詳細には、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有してなる酸化性溶液、すなわちpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対し、還元剤を注入することにより該溶液の還元処理を行う還元処理装置および還元処理方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応槽に貯留してある酸化性溶液に対して還元剤を注入することにより該溶液の還元処理を行う還元処理装置として、pH検出手段、酸化還元電位検出手段、還元剤注入手段および補正手段が備えられたものが知られている。
【0003】
pH検出手段は、反応槽に貯留してある溶液のpH値を検出するためのものである。酸化還元電位検出手段は、反応槽に貯留してある溶液の酸化還元電位値を検出するためのものである。還元剤注入手段は、反応槽に貯留してある酸化性溶液に対して還元剤を注入するためのものである。補正手段は、pH検出手段を通じて検出されたpH値と予め決められた基準pH値であるpH7との差に基づき、酸化還元電位検出手段を通じて検出された酸化還元電位値を基準pH値(pH7)のときの酸化還元電位値に補正するためのものである。
【0004】
このような還元処理装置においては、pH検出手段を通じて反応槽に貯留してある酸化性溶液のpH値を検出し、検出したpH値(以下、検出pH値とも称する)と、基準pH値との差に基づいて補正手段を通じて検出した酸化還元電位値を基準pH値のときの酸化還元電位値に補正し、該補正した酸化還元電位値により還元剤注入手段を通じて還元剤を注入し、酸化性溶液の還元処理を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−20033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に提案されている還元処理装置では、検出pH値と基準pH値との差に基づいて検出した酸化還元電位値を基準pH値のときの酸化還元電位値に補正しているが、これは還元対象となる溶液は、酸化還元電位値とpH値との間に略直線的に変位する関係が成立することを前提にして決められたものである。一方、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液については、酸化還元電位値とpH値との間に略直線的に変位する関係が成立するか否かは定かではなく、上述した還元処理装置では、pHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対して適正な還元剤の注入量で良好に還元処理を行うことができない虞れがあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、pHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができる還元処理装置および還元処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る還元処理装置は、酸化性溶液に対して還元剤を注入するための還元剤注入手段と、前記酸化性溶液に対してpH調整剤を注入するためのpH調整剤注入手段とを備え、前記還元剤注入手段による還元剤の注入により前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理装置において、前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値を記憶する記憶手段を有し、還元処理指令が与えられた場合に、前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させ、かつ必要に応じて前記pH調整剤注入手段を通じてpH調整剤を注入させることにより前記溶液のpH値を所定範囲に調整し、pH調整後の溶液の酸化還元電位値が、前記記憶手段に記憶する対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させる一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る還元処理装置は、酸化性溶液に対して還元剤を注入するための還元剤注入手段を備え、該還元剤注入手段による還元剤の注入により前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理装置において、前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値を記憶する記憶手段を有し、還元処理指令が与えられた場合に、前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させ、還元剤注入後に検出された前記溶液の酸化還元電位値およびpH値と、前記記憶手段に記憶する酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させる一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る還元処理装置は、上述した請求項2において、前記制御手段は、検出された酸化還元電位値が対応するpH値の酸化還元電位基準値以下となる場合には、前記反応槽内の溶液を中和する処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る還元処理装置は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、前記制御手段は、pHによって解離状態が変化する酸化剤を含有した酸化性溶液に還元処理を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る還元処理装置は、上述した請求項4において、前記酸化性溶液に含有される酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る還元処理装置は、上述した請求項1〜5のいずれか一つにおいて、前記制御手段は、膜により被処理水を濾過する装置の膜の洗浄に使用された洗浄液の排水である酸化性溶液に還元処理を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に係る還元処理方法は、酸化性溶液に対して還元剤、並びに必要に応じてpH調整剤を注入することにより前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理方法において、前記酸化性溶液に対して還元剤を注入した後に、必要に応じてpH調整剤を注入して該溶液のpH値を所定範囲に調整する調整処理工程と、前記調整処理工程後の溶液から検出された酸化還元電位値と、前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH毎に決められた酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入する一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了する比較処理工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に係る還元処理方法は、酸化性溶液に対して還元剤を注入することにより前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理方法において、前記酸化性溶液に対して還元剤を注入する注入処理工程と、前記注入処理工程後の溶液から検出された酸化還元電位値およびpH値と、前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには前記還元剤を注入する一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了する還元工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に係る還元処理方法は、上述した請求項8において、前記還元工程で還元剤の注入を終了した後、前記反応槽内の溶液を中和する中和処理工程を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項10に係る還元処理方法は、上述した請求項7〜9のいずれか一つにおいて、前記酸化性溶液は、pHによって解離状態が変化する酸化剤を含有した酸化性溶液であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項11に係る還元処理方法は、上述した請求項10において、前記酸化性溶液に含まれる酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項12に係る還元処理方法は、上述した請求項7〜11のいずれか一つにおいて、前記酸化性溶液は、膜により被処理水を濾過する装置の膜の洗浄に使用された洗浄液の排水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の還元処理装置によれば、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値を記憶手段に記憶する制御手段が、還元処理指令が与えられた場合に、還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させ、かつ必要に応じてpH調整剤注入手段を通じてpH調整剤を注入させることにより溶液のpH値を所定範囲に調整し、pH調整後の溶液の酸化還元電位値が、記憶手段に記憶する対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させる一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了するので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入させることにより、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度を許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明の還元処理装置によれば、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値を記憶手段に記憶する制御手段が、還元処理指令が与えられた場合に、還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させ、還元剤注入後に検出された溶液の酸化還元電位値およびpH値と、記憶手段に記憶する酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させる一方、酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了するので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入させることにより、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度を許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができるという効果を奏する。
【0022】
本発明の還元処理方法によれば、調整処理工程において、酸化性溶液に対して還元剤を注入した後に、必要に応じてpH調整剤を注入して該溶液のpH値を所定範囲に調整し、比較処理工程において、調整処理工程後の溶液から検出された酸化還元電位値と、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH毎に決められた酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入する一方、酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了するので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入することにより、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度を許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明の還元処理方法によれば、注入処理工程において、酸化性溶液に対して還元剤を注入し、還元工程において、注入処理工程後の溶液から検出された酸化還元電位値およびpH値と、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入する一方、酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了するので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入することにより、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度を許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る還元処理装置および還元処理方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。尚、以下においては、還元処理装置の実施の形態を中心にして説明し、還元処理方法の実施の形態については、還元処理装置の実施の形態の説明中に適宜説明を行うことにする。
【0025】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1における還元処理装置の構成を模式的に示す模式図である。ここに例示する還元処理装置は、反応槽1と、還元剤容器2と、第1pH調整剤容器3と、第2pH調整剤容器4と、撹拌機構8と、pH計9と、ORP計10と、制御部(制御手段)20とを備えて構成してある。
【0026】
反応槽1は、酸化性溶液を貯留するものである。この反応槽1に貯留される酸化性溶液は、図2に示すような膜濾過装置から供給されたものである。
【0027】
このような膜濾過装置は、原水槽13、膜モジュール14および逆洗ポンプ17を備えて構成してある。原水槽13は、例えば河川水や湖沼水等の原水を貯留するためのものである。この原水槽13に貯留される原水は、供給ポンプ16の作用によって図示しない供給ラインを通じて膜モジュール14まで送出される。
【0028】
膜モジュール14は、微細孔が形成されてなる膜を有しており、該膜に供給ポンプ16により送出された原水を通過させることにより濾過するものである。濾過された濾過水は、濾過水槽15に送出され、該濾過水槽15に貯留される。
【0029】
逆洗ポンプ17は、膜モジュール14における所定時間の濾過処理後、濾過水槽15に貯留してある濾過水を逆流させて膜モジュール14の孔の細孔内および膜面の夾雑物を除去する逆洗処理を行うためのものである。この逆洗ポンプ17による逆洗処理を行う際には、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム容器18に収容される次亜塩素酸ナトリウムを、逆洗ポンプ17の作用により逆流する濾過水に注入して洗浄液として膜モジュール14を通過させて殺菌を行っている。この逆洗ポンプ17の逆洗処理に用いられた洗浄液は、膜モジュール14を通過後、洗浄排水として上記還元処理装置に供給され、酸化性溶液として反応槽1に貯留される。
【0030】
このように反応槽1に貯留される酸化性溶液は、次亜塩素酸ナトリウムを酸化剤として含有してなるものであるが、本発明はこれに限定されずに種々のものを用いてよく、例えばハロゲン系酸化物等を用いてもよい。
【0031】
ここで、反応槽1に貯留してある酸化性溶液の特性について述べる。この酸化性溶液には、次亜塩素酸ナトリウムが酸化剤として含有されており、かかる次亜塩素酸ナトリウムは、図3に示すように、pHによって解離状態が変化するもの、すなわちpHによって塩素Cl、次亜塩素酸HClO、次亜塩素酸イオンClOと存在形態が変化数するものである。特に、pH5〜pH10付近では、下記式(1)で平衡が成り立っている。
【0032】
式(1) HClO ⇔ ClO(次亜塩素酸イオン)+H(水素イオン)
次亜塩素酸(HClO)は、次亜塩素酸イオン(ClO)と比較して酸化還元電位が高く、そのため遊離塩素濃度が同じであってもpHによって、酸化還元電位が異なる。
【0033】
還元剤容器2は、還元剤を収容するものである。収容される還元剤としては、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この還元剤容器2には、還元剤注入配管5が接続してある。
【0034】
還元剤注入配管5は、基端が還元剤容器2に接続してある一方、先端が反応槽1の上面開口を臨む態様で設けてあり、その途中には還元剤注入ポンプ5aが設けてある。還元剤注入ポンプ5aは、詳細は後述するが、制御部20から指令が与えられることにより所定時間駆動して、還元剤を還元剤注入配管5の先端から反応槽1の内部の溶液に注入するためのものである。これにより、還元剤容器2は、還元剤注入配管5および還元剤注入ポンプ5aとともに、反応槽1に貯留してある酸化性溶液に対して還元剤を注入するための還元剤注入手段を構成している。
【0035】
第1pH調整剤容器3は、アルカリ性調整剤を収容するものである。収容されるアルカリ性調整剤としては、苛性ソーダや炭酸水素ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この第1pH調整剤容器3には、第1pH調整剤注入配管6が接続してある。
【0036】
第1pH調整剤注入配管6は、基端が第1pH調整剤容器3に接続してある一方、先端が反応槽1の上面開口を臨む態様で設けてあり、その途中には第1pH調整剤注入ポンプ6aが設けてある。第1pH調整剤注入ポンプ6aは、詳細は後述するが、制御部20から指令が与えられることにより所定時間駆動して、アルカリ性調整剤を第1pH調整剤注入配管6の先端から反応槽1の内部の溶液に注入するためのものである。
【0037】
第2pH調整剤容器4は、酸性調整剤を収容するものである。収容される酸性調整剤としては、硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この第2pH調整剤容器4には、第2pH調整剤注入配管7が接続してある。
【0038】
第2pH調整剤注入配管7は、基端が第2pH調整剤容器4に接続してある一方、先端が反応槽1の上面開口を臨む態様で設けてあり、その途中には第2pH調整剤注入ポンプ7aが設けてある。第2pH調整剤注入ポンプ7aは、詳細は後述するが、制御部20から指令が与えられることにより所定時間駆動して、酸性調整剤を第2pH調整剤注入配管7の先端から反応槽1の内部の溶液に注入するためのものである。
【0039】
撹拌機構8は、反応槽1の内部の液体(溶液)を撹拌するためのものである。pH計9は、反応槽1の内部の溶液のpH値を検出し、検出したpH値(以下、検出pH値とも称する)を検出信号として制御部20に与えるものである。ORP計10は、反応槽1の内部の溶液の酸化還元電位値を検出し、検出した酸化還元電位値(以下、検出ORP値とも称する)を検出信号として制御部20に与えるものである。
【0040】
図1中の符号11は、反応槽1の内部の溶液を排出するための排水管であり、符号12は、開閉することにより排水管11を通じての溶液の排出を許容、あるいは規制する排水バルブである。
【0041】
制御部20は、図4に示すように、設定記憶部21、入力処理部22、pH判断部23、還元剤注入ポンプ駆動処理部24、調整剤注入ポンプ駆動処理部25、比較判断部26および出力部27を備えて構成してある。尚、ここで示した制御部20の構成要素は、本実施の形態の特徴的なものであり、制御部20は、その他の構成要素を有することはいうまでもない。
【0042】
設定記憶部21は、制御部20が種々の動作を行うのに必要なプログラムやデータを記憶するものであり、本実施の形態では、制御部20が還元処理制御を行うのに必要な調整pH情報や酸化還元電位基準値を設定して記憶するためのものである。ここで、調整pH情報は、反応槽1の内部の酸化性溶液のpHを所定範囲に調整するのに必要な情報で、本実施の形態では、排水基準値の範囲として例えば6.5〜7.5の範囲を所定範囲としている。
【0043】
酸化還元電位基準値は、還元処理制御を行う際に還元処理の終了を判断するのに必要な値で、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度である遊離塩素濃度が許容範囲、例えば0.2mg/L以下の範囲にあることを規定するとともに、pH値毎に決められた酸化還元電位値である。具体的には、pHが7を超える場合(pH>7の場合)には酸化還元電位基準値が630mV、pHが6を超える場合(より詳細には6<pH≦7の場合)には酸化還元電位基準値が670mVとしている。このように設定された酸化還元電位基準値は、次のようにして求められたものである。
【0044】
図5は、pH6.5〜7.5における遊離塩素濃度と酸化還元電位値との関係を実験的に求めたものである。この図5に示すように、同じ遊離塩素濃度の場合には、pH値が低いほど酸化還元電位が高いことが明らかである。そして、遊離塩素濃度が0.2mg/L以下となる場合には、pH値が7のときにはORP値が630mV、pH値が6のときにはORP値が670mV、pH値が8のときにはORP値が570mVとなり、かかる遊離塩素濃度のときに還元処理を終了するものとして、pHが7を超える場合(pH>7の場合)には酸化還元電位基準値が630mV、pHが6を超える場合(より詳細には6<pH≦7の場合)には酸化還元電位基準値が670mVとしている。
【0045】
入力処理部22は、種々の情報を入力処理するものであり、本実施の形態では、特にpH計9からの検出信号(検出pH値)、並びにORP計10からの検出信号(検出ORP値)を入力するものである。
【0046】
pH判断部23は、入力処理部22を通じて入力した検出pH値と、設定記憶部21に記憶する調整pH情報とを比較して、反応槽1の内部の溶液のpHが所定範囲にあるか否かを判断するものである。
【0047】
還元剤注入ポンプ駆動処理部24は、還元剤注入ポンプ5aに対して駆動指令を与えるものである。この駆動指令を与えられた還元剤注入ポンプ5aは、上述したように所定時間駆動し、これにより、所定量の還元剤が反応槽1の内部に注入される。
【0048】
調整剤注入ポンプ駆動処理部25は、第1pH調整剤注入ポンプ6aまたは第2pH調整剤注入ポンプ7aに対して駆動指令を与えるものである。この駆動指令を与えられた第1pH調整剤注入ポンプ6aまたは第2pH調整剤注入ポンプ7aは、上述したように所定時間駆動し、これにより、所定量のアルカリ性調整剤または酸化性調整剤が反応槽1の内部に注入される。
【0049】
比較判断部26は、入力処理部22を通じて入力した検出ORP値と、設定記憶部21に記憶する酸化還元電位基準値とを比較して、反応槽1の内部の溶液のORP値が対応するpH値の酸化還元電位基準値以下であるか否かを判断するものである。
【0050】
出力部27は、比較判断部26を通じて反応槽1の内部の溶液のORP値が酸化還元電位基準値以下であると判断された場合に、還元処理が終了した旨を出力するものである。
【0051】
図6は、上記制御部が実施する還元処理制御の処理内容を示すフローチャートである。かかる図6を参照しながら、制御部20が実施する還元処理制御について説明することにより、還元処理装置の動作について説明を行う。
【0052】
還元処理制御における制御部20は、還元処理指令が与えられた場合に(ステップS101:Yes)、還元剤注入ポンプ駆動処理部24を通じて還元剤注入ポンプ5aに対して駆動指令を出力する(ステップS102)。この駆動指令が与えられた還元剤注入ポンプ5aは、所定時間駆動し、これにより所定量の還元剤が反応槽1の内部に注入されることになる。
【0053】
そして、注入した還元剤と、反応槽1の内部に貯留された酸化性溶液とを所定時間反応させた後、制御部20は、入力処理部22を通じてpH計9からの検出信号、すなわち検出pH値を入力する(ステップS103)。
【0054】
検出pH値を入力した制御部20は、pH判断部23を通じて、検出pH値と設定記憶部21に記憶する調整pH情報とを比較して、検出pH値が6.5〜7.5の範囲内にあるか否かを判断し、検出pH値が6.5〜7.5の範囲内にあれば、入力処理部22を通じてORP計10からの検出信号、すなわち検出ORP値を入力する(ステップS104:Yes,ステップS105:Yes,ステップS106)。
【0055】
一方、pH判断部23を通じて検出pH値が6.5未満である場合には(ステップS104:No)、制御部20は、調整剤注入ポンプ駆動処理部25を通じて第1pH調整剤注入ポンプ6aに対して駆動指令を出力する(ステップS107)。これにより、第1pH調整剤注入ポンプ6aは、所定時間駆動し、所定量のアルカリ性調整剤が反応槽1の内部に注入されることになる。かかるステップS107の処理を実施した制御部20は、注入したアルカリ性調整剤と、反応槽1の内部に貯留された溶液とを所定時間反応させた後、手順をステップS103に戻して、上述したステップS103以降の処理を繰り返し実施する。
【0056】
また、pH判断部23を通じて検出pH値が7.5未満である場合には(ステップS105:No)、制御部20は、調整剤注入ポンプ駆動処理部25を通じて第2pH調整剤注入ポンプ7aに対して駆動指令を出力する(ステップS108)。これにより、第2pH調整剤注入ポンプ7aは、所定時間駆動し、所定量の酸性調整剤が反応槽1の内部に注入されることになる。かかるステップS108の処理を実施した制御部20は、注入した酸性調整剤と、反応槽1の内部に貯留された溶液とを所定時間反応させた後、手順をステップS103に戻して、上述したステップS103以降の処理を繰り返し実施する。
【0057】
上記ステップS106を実施した制御部20、すなわち入力処理部22を通じて検出ORP値を入力した制御部20は、比較判断部26を通じて、入力した検出ORP値と、設定記憶部21に記憶する酸化還元電位基準値とを比較して、反応槽1の内部の溶液のORP値が対応するpH値の酸化還元電位基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、制御部20は、比較判断部26を通じて、検出pH値が7を超えている場合には(ステップS109:Yes)、すなわち検出pH値が7より大きく7.5以下の場合には、検出ORP値が630mV(酸化還元電位基準値)以下であるか否かを判断する(ステップS110)。
【0058】
検出ORP値が630mV以下の場合には(ステップS110:Yes)、制御部20は、出力部27を通じて還元処理を終了した旨を出力して(ステップS111)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。これにより、反応槽1の内部の酸化性溶液は、遊離塩素濃度が0.2mg/L以下の許容範囲に還元されたことになる。
【0059】
また、上記ステップS109において、検出pH値が7を超えていない場合には(ステップS109:No)、すなわち検出pH値が6.5以上7以下の場合には、制御部20は、比較判断部26を通じて、検出ORP値が670mV(酸化還元電位基準値)以下であるか否かを判断する(ステップS112)。
【0060】
検出ORP値が670mV以下の場合には(ステップS112:Yes)、制御部20は、出力部27を通じて還元処理を終了した旨を出力して(ステップS111)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。反応槽1の内部の酸化性溶液は、遊離塩素濃度が0.2mg/L以下の許容範囲に還元されたことになる。
【0061】
一方、ステップS110において検出ORP値が630mVを超えている場合(ステップS110:No)、あるいはステップS112において検出ORP値が670mVを超えている場合には(ステップS112:No)、制御部20は、手順をステップS102に戻して、上述したステップS102以降の処理を繰り返し実施する。これにより、反応槽1の内部の溶液のpH値を所定範囲に維持する態様で還元剤を注入することが可能になる。
【0062】
このようにして還元処理制御が実施され、反応槽1の酸化性溶液を所望の状態に還元した後に、還元処理装置は、排水バルブ12を開成させて、排水管11を通じて反応槽1の内部の溶液を外部に排出する。
【0063】
以上説明したように、本発明の実施の形態1における還元処理装置によれば、制御部20が、還元処理指令が与えられた場合に、還元剤を注入させ、かつ必要に応じてpH調整剤(第1pH調整剤および第2pH調整剤)を注入させて反応槽1の内部の溶液のpH値を6.5〜7.5の範囲に調整し、pH調整後の溶液の酸化還元電位値が、設定記憶部21に記憶する対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入させる一方、酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了するので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入させることにより、溶液中の遊離塩素濃度を0.2mg/L以下の許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができる。
【0064】
また、還元処理装置によれば、上述したような還元処理を行うので、予め決められたpH値毎(例えば、pH値>7の場合、並びにpH値≦7の場合)に応じて所定量の還元剤を注入させればよく、従来のように基準pH値に対応した還元剤を注入する必要がないので、還元剤の注入量が必要以上に過大になってしまう虞れがない。また、従来のように補正処理を行う必要がない。従って、処理工程を増大することなく、酸化性溶液に対して適正な還元剤の注入量で還元処理を行うことができる。
【0065】
更に、還元処理装置によれば、還元剤を注入して反応槽1の内部の溶液のpH値を排水基準値の範囲である例えば6.5〜7.5の範囲に調整して還元処理を行うので、還元処理後の溶液をそのまま排水管11を通じて排出することができる。
【0066】
一方、本発明の実施の形態1における還元処理方法によれば、反応槽1の内部の酸化性溶液に対して還元剤を注入して該溶液のpH値を6.5〜7.5の範囲に調整する工程(調整処理工程)と、該工程後の溶液からの検出ORP値と、酸化還元電位基準値との比較の結果、検出ORP値が対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入する一方、該酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了する工程(比較処理工程)とを行うので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入させることにより、溶液中の遊離塩素濃度を0.2mg/L以下の許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができる。
【0067】
また、上記還元処理方法によれば、上記調整処理工程および上記比較処理工程を行うので、還元剤の注入量が必要以上に過大になってしまう虞れがない。また、従来のように補正処理を行う必要がない。従って、処理工程を増大することなく、酸化性溶液に対して適正な還元剤の注入量で還元処理を行うことができる。
【0068】
更に、還元処理方法によれば、還元剤を注入して反応槽1の内部の溶液のpH値を排水基準値の範囲である例えば6.5〜7.5の範囲に調整するので、還元処理後の溶液をそのまま排水管11を通じて排出することができる。
【0069】
<実施の形態2>
図7は、本発明の実施の形態2における還元処理装置の構成を模式的に示す模式図である。尚、上述した実施の形態1である還元処理装置と同一の構成を有するものには、同一の符号を付してその説明を省略する。本発明の実施の形態2における還元処理装置は、制御部30を備えて構成してある。つまり、本実施の形態における還元処理装置は、上述した実施の形態1における還元処理装置と制御部30が異なっている。
【0070】
制御部30は、図8に示すように、設定記憶部31、入力処理部32、還元剤注入ポンプ駆動処理部33、調整剤注入ポンプ駆動処理部34、比較判断部35および出力部36を備えて構成してある。尚、ここで示した制御部30の構成要素は、本実施の形態の特徴的なものであり、制御部30は、その他の構成要素を有することはいうまでもない。
【0071】
設定記憶部31は、制御部30が種々の動作を行うのに必要なプログラムやデータを記憶するものであり、本実施の形態では、制御部30が還元処理制御を行うのに必要な酸化還元電位基準値を設定して記憶するものである。
【0072】
ここで、酸化還元電位基準値は、還元処理制御を行う際に還元処理の終了を判断するのに必要な値で、溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度である遊離塩素濃度が許容範囲、すなわち0.2mg/L以下の範囲にあることを規定するとともに、pH値毎に決められた酸化還元電位値である。具体的には、pHが8を超える場合(pH>8の場合)には酸化還元電位基準値が570mV、pHが7を超える場合(より詳細には7<pH≦8の場合)には酸化還元電位基準値が630mV、pHが6を超える場合(より詳細には6<pH≦7の場合)には酸化還元電位基準値が670mVとしている。このように設定された酸化還元電位基準値は、図5に示したように、遊離塩素濃度が0.2mg/L以下となる場合には、pH値が7のときにはORP値が630mV、pH値が6のときにはORP値が670mV、pH値が8のときにはORP値が570mVとなり、かかる遊離塩素濃度のときに還元処理を終了するものとして、pHが8を超える場合(pH>8の場合)には酸化還元電位基準値が570mV、pHが7を超える場合(7<pH≦8の場合)には酸化還元電位基準値が630mV、pHが6を超える場合(より詳細には6<pH≦7の場合)には酸化還元電位基準値が670mVとしている。
【0073】
入力処理部32は、種々の情報を入力処理するものであり、本実施の形態では、特にpH計9からの検出信号(検出pH値)、並びにORP計10からの検出信号(検出ORP値)を入力するものである。
【0074】
還元剤注入ポンプ駆動処理部33は、還元剤注入ポンプ5aに対して駆動指令を与えるものである。この駆動指令を与えられた還元剤注入ポンプ5aは、上述したように所定時間駆動し、これにより、所定量の還元剤が反応槽1の内部に注入される。
【0075】
調整剤注入ポンプ駆動処理部34は、第1pH調整剤注入ポンプ6aまたは第2pH調整剤注入ポンプ7aに対して駆動指令を与えるものである。この駆動指令を与えられた第1pH調整剤注入ポンプ6aまたは第2pH調整剤注入ポンプ7aは、上述したように所定時間駆動し、これにより、所定量のアルカリ性調整剤または酸化性調整剤が反応槽1の内部に注入される。
【0076】
比較判断部35は、入力処理部32を通じて入力した検出ORP値が、設定記憶部31に記憶する酸化還元電位基準値以下であるか否かを判断するものである。
【0077】
出力部36は、比較判断部35を通じて反応槽1の内部の溶液のORP値が酸化還元電位基準値以下であると判断された場合に、還元処理が終了した旨を出力するものである。
【0078】
図9は、上記制御部が実施する還元処理制御の処理内容を示すフローチャートである。かかる図9を参照しながら、制御部30が実施する還元処理制御について説明することにより、還元処理装置の動作について説明を行う。
【0079】
還元処理制御における制御部30は、還元処理指令が与えられた場合に(ステップS201:Yes)、還元剤注入ポンプ駆動処理部33を通じて還元剤注入ポンプ5aに対して駆動指令を出力する(ステップS202)。この駆動指令が与えられた還元剤注入ポンプ5aは、所定時間駆動し、これにより所定量の還元剤が反応槽1の内部に注入されることになる。
【0080】
そして、注入した還元剤と、反応槽1の内部に貯留された酸化性溶液とを所定時間反応させた後、制御部30は、入力処理部32を通じてpH計9からの検出信号、すなわち検出pH値、並びにORP計10からの検出信号、すなわち検出ORP値を入力する(ステップS203)。
【0081】
検出pH値および検出ORP値を入力した制御部30は、比較判断部35を通じて、入力した検出pH値および検出ORP値と、設定記憶部31に記憶する酸化還元電位基準値とを比較して、反応槽1の内部の溶液のORP値が対応するpH値の酸化還元電位基準値以下であるか否かを判断する。具体的には、制御部30は、比較判断部35を通じて、検出pH値が8を超えている場合には、検出ORP値が570mV以下であるか否かを判断し(ステップS204:Yes,ステップS205)、検出ORP値が570mV以下の場合には(ステップS205:Yes)、制御部30は、出力部36を通じて還元処理を終了した旨を出力して(ステップS206)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。これにより、反応槽1の内部の酸化性溶液は、遊離塩素濃度が0.2mg/L以下の許容範囲に還元されたことになる。
【0082】
一方、検出ORP値が570mVを超えている場合には(ステップS205:No)、制御部30は、手順をステップS202に戻して、上述したステップS202以降の処理を繰り返し実施する。これにより、反応槽1の内部の溶液に対して還元剤を注入することが可能になる。
【0083】
ところで、ステップS203で入力した検出pH値が7より大きく8以下である場合(7<pH値≦8の場合)には、検出ORP値が630mV以下であるか否かを判断し(ステップS204:No,ステップS207:Yes,ステップS208)、検出ORP値が630mV以下の場合には(ステップS208:Yes)、制御部30は、出力部36を通じて還元処理を終了した旨を出力して(ステップS206)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。これにより、反応槽1の内部の酸化性溶液は、遊離塩素濃度が0.2mg/L以下の許容範囲に還元されたことになる。
【0084】
検出ORP値が630mVを超えている場合には(ステップS208:No)、制御部30は、手順をステップS202に戻して、上述したステップS202以降の処理を繰り返し実施する。これにより、反応槽1の内部の溶液に対して還元剤を注入することが可能になる。
【0085】
また、ステップS203で入力した検出pH値が6より大きく7以下である場合(6<pH値≦7の場合)には、検出ORP値が670mV以下であるか否かを判断し(ステップS204:No,ステップS207:No,ステップS209:Yes,ステップS210)、検出ORP値が670mV以下の場合には(ステップS210:Yes)、制御部30は、出力部36を通じて還元処理を終了した旨を出力して(ステップS206)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。これにより、反応槽1の内部の酸化性溶液は、遊離塩素濃度が0.2mg/L以下の許容範囲に還元されたことになる。
【0086】
検出ORP値が670mVを超えている場合には(ステップS210:No)、制御部30は、手順をステップS202に戻して、上述したステップS202以降の処理を繰り返し実施する。これにより、反応槽1の内部の溶液に対して還元剤を注入することが可能になる。
【0087】
上記ステップS203で入力した検出pH値が6以下である場合には(ステップS204:No,ステップS207:No,ステップS209:No)、制御部30は、調整剤注入ポンプ駆動処理部34を通じて第1pH調整剤注入ポンプ6aに対して駆動指令を出力する(ステップS211)。これにより、第1pH調整剤注入ポンプ6aは、所定時間駆動し、所定量のアルカリ性調整剤が反応槽1の内部に注入されることになる。かかるステップS211の処理を実施した制御部30は、注入したアルカリ性調整剤と、反応槽1の内部に貯留された溶液とを所定時間反応させた後、手順をステップS203に戻して、上述したステップS203以降の処理を繰り返し実施する。これにより、反応槽1の内部の溶液のpH値を上昇させることが可能になる。
【0088】
このようにして還元処理制御が実施され、反応槽1の酸化性溶液を所望の状態に還元した後に、還元処理装置は、排水バルブ12を開成させて、排水管11を通じて反応槽1の内部の溶液を外部に排出する。
【0089】
以上説明したように、本発明の実施の形態2における還元処理装置によれば、制御部30が、還元処理指令が与えられた場合に、還元剤を注入させ、還元剤注入後の検出pH値および検出ORP値と、設定記憶部31に記憶する酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入させる一方、酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了するので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入させることにより、溶液中の遊離塩素濃度を0.2mg/L以下の許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができる。
【0090】
また、還元処理装置によれば、上述したような還元処理を行うので、予め決められたpH値毎(例えば、pH値>8の場合、7<pH値≦8の場合、並びに6<pH値≦7の場合)に応じて所定量の還元剤を注入すればよく、従来のように基準pH値に対応した還元剤を注入する必要がないので、還元剤の注入量が必要以上に過大になってしまう虞れがない。また、従来のように補正処理を行う必要がない。従って、処理工程を増大することなく、酸化性溶液に対して適正な還元剤の注入量で還元処理を行うことができる。
【0091】
一方、本発明の実施の形態2における還元処理方法によれば、反応槽1の内部の酸化性溶液に対して還元剤を注入する工程(注入処理工程)と、該工程後の溶液の検出ORP値および検出pH値と、pH値毎に決められた酸化還元電位基準値との比較の結果、検出ORP値が対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入する一方、該酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了する工程(還元工程)とを行うので、対応するpH値の酸化還元電位基準値を閾値として還元剤を注入させることにより、溶液中の遊離塩素濃度を0.2mg/L以下の許容範囲にすることが可能になる。従って、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有する酸化性溶液のようにpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対しても適正な還元剤の注入量で還元処理を良好に行うことができる。
【0092】
また、上記還元処理方法によれば、上記注入処理工程および上記還元工程を行うので、還元剤の注入量が必要以上に過大になってしまう虞れがない。また、従来のように補正処理を行う必要がない。従って、処理工程を増大することなく、酸化性溶液に対して適正な還元剤の注入量で還元処理を行うことができる。
【0093】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施の形態2においては、還元処理制御を行った後に、制御手段(制御部30)は、検出された酸化還元電位値が対応するpH値の酸化還元電位基準値以下となる場合には、すなわち還元処理制御を行った場合には、反応槽内の溶液を中和する処理を適宜行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明に係る還元処理装置および還元処理方法は、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を含有してなる酸化性溶液、すなわちpHによって解離状態が変化する酸化性溶液に対し、還元剤を注入することにより該溶液の還元処理を行うのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1における還元処理装置の構成を模式的に示す模式図である。
【図2】図1に示した還元処理装置に酸化性溶液を供給する膜濾過装置の構成を模式的に示す模式図である。
【図3】酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムのpHによる解離状態の変化を示す図表である。
【図4】図1に示した制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】pH6.5〜7.5における遊離塩素濃度と酸化還元電位値との関係を実験的に求めた図表である。
【図6】制御部が実施する還元処理制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2における還元処理装置の構成を模式的に示す模式図である。
【図8】図7に示した制御部の構成を示すブロック図である。
【図9】制御部が実施する還元処理制御の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1 反応槽
2 還元剤容器
5 還元剤注入配管
5a 還元剤注入ポンプ
6a 第1pH調整剤注入ポンプ
7a 第2pH調整剤注入ポンプ
9 pH計
10 ORP計
20,30 制御部
21,31 設定記憶部
22,32 入力処理部
23 pH判断部
24,33 還元剤注入ポンプ駆動処理部
25,34 調整剤注入ポンプ駆動処理部
26,35 比較判断部
27,36 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化性溶液に対して還元剤を注入するための還元剤注入手段と、
前記酸化性溶液に対してpH調整剤を注入するためのpH調整剤注入手段と
を備え、
前記還元剤注入手段による還元剤の注入により前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理装置において、
前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値を記憶する記憶手段を有し、
還元処理指令が与えられた場合に、前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させ、かつ必要に応じて前記pH調整剤注入手段を通じてpH調整剤を注入させることにより前記溶液のpH値を所定範囲に調整し、pH調整後の溶液の酸化還元電位値が、前記記憶手段に記憶する対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させる一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了する制御手段を備えたことを特徴とする還元処理装置。
【請求項2】
酸化性溶液に対して還元剤を注入するための還元剤注入手段を備え、該還元剤注入手段による還元剤の注入により前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理装置において、
前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値を記憶する記憶手段を有し、
還元処理指令が与えられた場合に、前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させ、還元剤注入後に検出された前記溶液の酸化還元電位値およびpH値と、前記記憶手段に記憶する酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには前記還元剤注入手段を通じて還元剤を注入させる一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元処理を終了する制御手段を備えたことを特徴とする還元処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、検出された酸化還元電位値が対応するpH値の酸化還元電位基準値以下となる場合には、前記反応槽内の溶液を中和する処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の還元処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、pHによって解離状態が変化する酸化剤を含有した酸化性溶液に還元処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の還元処理装置。
【請求項5】
前記酸化性溶液に含有される酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項4に記載の還元処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、膜により被処理水を濾過する装置の膜の洗浄に使用された洗浄液の排水である酸化性溶液に還元処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の還元処理装置。
【請求項7】
酸化性溶液に対して還元剤、並びに必要に応じてpH調整剤を注入することにより前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理方法において、
前記酸化性溶液に対して還元剤を注入した後に、必要に応じてpH調整剤を注入して該溶液のpH値を所定範囲に調整する調整処理工程と、
前記調整処理工程後の溶液から検出された酸化還元電位値と、前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH毎に決められた酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには還元剤を注入する一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了する比較処理工程と
を含むことを特徴とする還元処理方法。
【請求項8】
酸化性溶液に対して還元剤を注入することにより前記酸化性溶液の還元処理を行う還元処理方法において、
前記酸化性溶液に対して還元剤を注入する注入処理工程と、
前記注入処理工程後の溶液から検出された酸化還元電位値およびpH値と、前記溶液中の対象となる酸化性残留物質濃度が許容範囲にあることを規定するpH値毎に決められた酸化還元電位基準値とを比較して、検出された酸化還元電位値が、対応するpH値の酸化還元電位基準値を超えるときには前記還元剤を注入する一方、前記酸化還元電位基準値以下となるときには還元剤の注入を終了する還元工程と
を含むことを特徴とする還元処理方法。
【請求項9】
前記還元工程で還元剤の注入を終了した後、前記反応槽内の溶液を中和する中和処理工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の還元処理方法。
【請求項10】
前記酸化性溶液は、pHによって解離状態が変化する酸化剤を含有した酸化性溶液であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一つに記載の還元処理方法。
【請求項11】
前記酸化性溶液に含まれる酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項10に記載の還元処理方法。
【請求項12】
前記酸化性溶液は、膜により被処理水を濾過する装置の膜の洗浄に使用された洗浄液の排水であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか一つに記載の還元処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−189933(P2009−189933A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32211(P2008−32211)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】