説明

部分カプセル及びその使用法

【課題】飲料を調合するための部分カプセルは機械的安定性が比較的低い。その結果、飲料用原料が醸造チャンバを通って均一に流れない及び/又は抽出液が醸造チャンバの中で部分カプセルの周りを横向きに流れるおそれがある。
【解決手段】ほぼフラストコニカルな又は円筒形のベース部品を有する、飲料を調合するための部分カプセルを提供するものである。このベース部品は、飲料用原料を収容するキャビティと、このキャビティを閉じる薄膜を備えている。ベース部品の壁領域には、複数のチャネルを設る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぼフラストコニカル(frustoconical)な又は円筒形のベース部品を有する、飲料を調合するための部分カプセルに関する。このベース部品は、飲料用原料を収容するキャビティと、このキャビティを閉じる薄膜を備えている。
【背景技術】
【0002】
この種の部分カプセルは、一般に周知である。例えば、FR 2 556 323 A1は、部分カプセルを開示している。この部分カプセルは、フラストコニカルな又は円筒形のベース部品を有し、飲料を調合するために使用され、飲料用材料、特にコーヒー・パウダで満たされ、また薄膜で閉じられたキャビティを部分カプセルの中に備えている。コーヒー飲料を調合するために、部分カプセルは醸造チャンバ(brewing chamber)の中に配置されている。この中で、薄膜は穿孔され、抽出液、特に熱水がキャビティの中に導入されることになる。この抽出液は、飲料用原料を通って流れるため、飲料抽出物、特にコーヒー飲料が作られることになる。また、醸造チャンバでは、部分カプセルの底部も穿孔されているため、飲料抽出物は部分カプセルから離れて、適切な場合は、飲料容器、例えばコーヒー・カップに入ることになる。
【0003】
この部分カプセルの1つの欠点は、部分カプセルの機械的安定性が比較的低いことである。抽出液が抽出工程の間に大きな圧力で醸造チャンバに注入されるため、部分カプセルは抽出工程の間に比較的高い圧力を受けることになる。これにより、部分カプセルが、特に薄膜と底部との間の壁領域内で横方向に曲げられるおそれがあり、その結果、飲料用原料が醸造チャンバを通って均一に流れない及び/又は抽出液が醸造チャンバの中で部分カプセルの周りを横向きに流れるおそれがある。また、抽出される飲料の味が悪影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、従来技術の欠点を示さず、さらに、比較的単純で費用効率が高い方法で製造できる部分カプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、ほぼフラストコニカルな又は円筒形のベース部品を有する、飲料を調合するための部分カプセルによって達成される。このベース部品は、飲料用原料を収容するキャビティと、このキャビティを閉じる薄膜を具備し、複数のチャネルを有するベース部品の壁領域が設けられている。
【0006】
従来技術による部分カプセルに対する本発明に基づいた部分カプセルの利点は、ベース部品の壁領域が複数のチャネルによって補強されることである。このことは、まず第1に、部分カプセルがより大きな機械的安定性を有するため、部分カプセルの変形、特に横方向の湾曲が防止される利点がある。これにより、好ましいことに、飲料用原料が確実に醸造チャンバを通って均一に流れるため、抽出工程の品質と信頼性をかなり高めることができる。特に、複数のチャネルを使用することにより機械的な安定性が増加することは、ベース部品の材料の厚さを全体的に減らすことができることを意味する。これにより、部分カプセルの製造が大幅に費用効率的でかつ環境に優しいものにされることになる。第2は、複数のチャネルは、醸造チャンバ内で壁領域を醸造チャンバ壁へ接着することが減らされる又は避けられることを意味し、このことは、部分カプセルを醸造チャンバから放出する又は取り出すのに好都合である。複数のチャネルに関するさらに別の利点は、ベース部品に沿った抽出液の流れが、キャビティ内の壁領域のチャネル構造により渦巻になることである。従来技術と比較してキャビティ内で抽出液のより強力な渦巻が生じることは、従来技術に対する利点を有している。この利点は、望ましくないまた偶発的な主要な液体の流れは飲料用原料のベッドを通って形成されないが、その代わり液体は飲料用原料の全体積を通って流れることである。このため、抽出工程は、極めて効率的にかつ正確に制御及び再生され得る。別の方法として、カプセルの壁の材料の厚さをベース領域よりも厚くすることは実現可能であり、これにより、部分カプセルの底部に穴を開けることが単純化される。飲料用原料には、特に、コーヒー・パウダ(好ましくは粉末にしたロースト・コーヒー)、チョコレート・パウダ、ミルク・パウダ、お茶などが含まれる。別の方法として、飲料用原料は、飲料抽出物、例えばインスタント・コーヒーを含めることができる。
【0007】
本発明の真意の中で、チャネルは特に、好ましくは線形の主範囲(linear main extent)を有する凸面体又は凹面体である。チャネルは、クロスピース及び/又は溝の形式で設計されることが特に好ましい。この場合、チャネルは、必要に応じて、ベース部品の内面上にキャビティに向けて、及び/又はベース部品の外面上にキャビティから背けて形成されることになる。チャネルがそれぞれ薄膜に平行な面内に概ね延長するように機能が作られることが特に好ましく、チャネルがそれぞれ、例えば薄膜に平行なベース部品を囲みまた実質的には閉じているリングの形式でベース部品を囲むように作られることが好ましい。
【0008】
本発明のさらに別の要旨又は好ましい成果によれば、少なくともキャビティから背いた方向の外面上で粗くされた薄膜が提供される。このため、薄膜に面した醸造チャンバ壁に薄膜を接着することが好ましい方法で減らされる又は抑えられることになり、抽出工程の後で醸造チャンバから部分カプセルを排出又は取り出すことが一層容易に行われる。特に、自動排出機構が設けられた醸造チャンバの場合は、抽出工程の後で、部分カプセル壁又は部分カプセルの薄膜が醸造チャンバ壁に貼り付くことにより、部分カプセルが確実に排出されないおそれが存在する。これに対して推定される理由としては、例えば、部分カプセル壁と醸造チャンバ壁との間の静電気吸引力及び/又は部分カプセル壁と醸造チャンバ壁との間の液体の対応する表面張力と考えることができる。これらの影響は、例えば薄膜を粗くする及び/又は壁領域にチャネルを配置することにより部分カプセル壁を構造化することによって大幅に減少されるため、醸造チャンバから部分カプセルを従来技術に比べて信頼性高く自動排出されることが確実になる。薄膜は、粗くした保護膜又はフォイルを外面に備えた薄膜によって構成されることが好ましい。別の方法では、薄膜を、例えばレーザ照射によって粗くすることも可能である。
【0009】
本発明のさらに別の要旨又は好ましい成果によれば、ショルダ部を有するベース部品の壁領域が提供されることである。このショルダ部は、都合が良いことに、例えばこれらの部分カプセルが充填される前に、多数の部分カプセルを積み重ねることができる。部分カプセルが飲料用原料で充填される前は、部分カプセルは飲料用原料又は薄膜のどちらも含んでいない。このため、空の部分カプセル及び特にベース部品は、一緒に積み重ねられ、その結果、多数の空の部分カプセルが比較的コンパクトに配列されることが可能となる。これにより、特に、輸送及び保管コストが低減されることになる。本発明による部分カプセルは、スタック・エッジ(stack edge)の形式で設計されたショルダ部を有している。この結果、一緒に積み重ねられた2つの部分カプセルは、互いに少し離れて保持されることになる。この場合、ある部分カプセルは、ショルダ部により他の部分カプセルの上に置かれている。部分カプセルは、薄膜が取り付けられるフランジを備えることが好ましく、ショルダ部はいずれの場合にも、特にフランジに隣接するように設計されている。そして、1つの部分カプセルのショルダ部は、別の部分カプセルのフランジ上に置かれている。一緒に積み重ねられている2つの部分カプセルの2つのフランジは、有利には、ショルダ部の高さに基づいて、互いに間隔を空けて配置されている。各フランジは、有利には、一緒に積み重ねられた2つの部分カプセルを分離するために、特に機械によって取り出すのに比較的単純である。さらに、互いに重ねられた2つの部分カプセル間に間隔が空けられているため、部分カプセル間に真空が生じて、これにより空の部分カプセルが、この場合も信頼性が高くまた単純な方法で、互いから分離されることが可能となる。部分カプセルは好ましいことに、薄膜が取り付けられるフランジを備えており、ショルダ部はフランジに隣接するように設計されている。ベース部品は、薄膜に平行な面内のショルダ部の領域内で大きな直径を有していることが好ましい。ショルダ部の領域内で、薄膜の方向にベース部品にテーパを付けることが特に好ましい。これにより、有利には、一緒に重ねられた2つの空の部分カプセルのショルダ部が他方の中に滑り込むことが効率よく防止されることになる。2つの部分カプセル間の間隔は、軸方向の力が大きい場合において、確実に保証されることになる。このことは、例えば、比較的多数の空の部分カプセルを重ねる場合に重要である。薄膜の方向にテーパを付けるというショルダ部の設計は、フランジとショルダ部との間の中間領域の中で、例えば、醸造チャンバの中で係合するホールディング又はグリッピング・アームによって部分カプセルが保持されうるという利点も有している。この時、醸造チャンバは充填されているか又は部分カプセルが製造されている間であり、ホールディング又はグリッピング・アームは、この場合、フランジとショルダ部との間で自動的に中央に位置決めされている。したがって、このショルダ部は、自己センタリング効果を有することになる。
【0010】
本発明のさらに別の要旨又は好ましい成果によれば、薄膜が装着されるフランジを有する部分カプセルが提供されている。この場合、フランジに隣接するベース部品の壁領域の外径のフランジの外径に対する比率が0.79と0.95との間にある。このため、フランジは好ましいことに、このフランジに隣接する壁領域と比べるとかなり大きい。その結果、薄膜をフランジに安定した方法で装着するための十分大きな接着領域がフランジ上に作られ、また部分カプセルが製造されるとき、例えば深絞り工程(deep-drawing process)を用いて、キャビティを比較的単純な方法でフランジ領域の中心に位置決めすることができる。特に、必要な製造ばらつきに対する要求事項が結果として低減されるため、製造コストを全体的に低下することもできる。第2に、フランジは、フランジと壁領域との間のレバー・アームが小さい壁領域と比較すると十分小さいことである。このことは、都合が良いことに、フランジに対する力の影響が壁領域に対して望ましくない変形を引き起こさないことである。フランジに隣接するベース部品の壁領域の外径のフランジの外径に対する比率が0.85と0.89との間にある、また特にほぼ0.87であることが好ましい。したがって、最適の妥協案は、一方で製造バラツキが大きいことと、他方で材料の使用が少ないこととの間で有利に実現されることになる。さらに、最適な妥協案は、一方ではフランジと薄膜との間の良好な接着と、フランジと壁領域との間の機械的なレバー・アームが短いこととの間で実現される。フランジに隣接するベース部品の壁領域の外径が約39ミリメータであり、及び/又はフランジの外径が約45ミリメータであることが特に好ましい。
【0011】
本発明の好ましい成果のさらに別の要旨によれば、薄膜とほぼ平行に延長する底部及びほぼ薄膜とベース領域との間に延在する壁領域を有するベース部品が提供されている。この場合、ベース部品の底部の材料厚さは壁領域よりも大きい。このため、好ましいことに、ベース部品の底部は壁領域よりも堅くなる。これには、醸造チャンバ内の底部を穿孔することが、かなり単純化されるという利点がある。その理由は、底部は穿孔動作の間にキャビティの方向に曲がらない又はわずかしか曲がらないからである。本発明の好ましい成果では、キャビティの中に配置されたフィルタ素子が提供される。このフィルタ素子は、キャビティを、飲料用原料を収容する第1の領域と、飲料抽出物を受け入れる第2の領域とに分割している。またこのフィルタ素子は、ベース部品の底部に面した側面上で底部に溶接される。この溶接接点は、特に超音波溶接によって製造されている。この場合、当該溶接接点は、底部には溶接接点を製造するための十分な材料があることから、有利には、底部において比較的大きな材料厚さによる単純な方法で製造されている。
【0012】
本発明のさらに別の要旨又は好ましい成果によれば、キャビティの中に配置されたフィルタ素子が提供されている。このフィルタ素子は、キャビティを、飲料用原料を収容する第1の領域と飲料抽出物を受け入れる第2の領域とに分割すると共に、このフィルタ素子は、ベース部品の底部に面した側面上に可融性素子を有している。底部を向いているその側面領域の中では、フィルタ素子が、好ましくは、超音波溶接シームによって底部に溶接されている。超音波溶接シームを製造する間に、可融性素子が超音波によって融解され、底部に対する溶接結合が確立されることになる。従って、溶接結合は比較的簡単に確立できる。別の方法では、例えば摩擦溶接処理などの全ての他の周知の溶接処理を使用することもできる。
【0013】
本発明のさらに別の要旨又は好ましい成果によれば、キャビティの中に配置されたフィルタ素子が提供されている。このフィルタ素子は、キャビティを、飲料用原料を収容する第1の領域と飲料抽出物を受け入れる第2の領域とに分割すると共に、このフィルタ素子を取り出すための少なくとも1つの保持領域を有している。フィルタ素子は、有利には、保持領域の中で自動化された方法で取り出されることができるため、フィルタ素子を特にベース部品内へ自動的に実装することも可能である。従って、部分カプセルの製造コストを低減させることができる。
【0014】
好ましい成果によれば、複数のフィルタ開口を有するフィルタ素子が提供されている。これらのフィルタ開口は、保持領域の外側に配置され、該保持領域はフィルタ素子の中心部に形成されることが特に好ましい。したがって、吸引ヘッドを用いてフィルタ素子を有利に取り出すことができる。この吸引ヘッドは、フィルタ素子を保持領域の中で真空によって保持している。真空は、フィルタ開口を通る次の空気の流れによって補償されている。この吸引ヘッドは、空間内を全ての方向に移動できる実装用ロボット・アームに取り付けられていることが好ましい。
【0015】
本発明のさらに別の要旨又は好ましい成果によれば、キャビティの中に配置されたフィルタ素子が提供されている。このフィルタ素子は、キャビティを、飲料用原料を収容する第1の領域と飲料抽出物を受け入れる第2の領域とに分割している。ここで、部分カプセでルでは、薄膜とフィルタ素子との間の第1の距離の、ベース部品の底部とフィルタ素子との間の第2の距離に対する比率は、3.5と4.5との間である。第1の距離の第2の距離に対する比率は、3.8と4.2との間であることが好ましく、また、約4であることが好ましい。第1の距離が約20ミリメータであり、第2の距離が約5ミリメータであることが特に好ましい。従って、最適な比率は、有利には、第1の領域の中に配置された飲料用原料の特定の量を抽出し、かつ飲料用原料の特定の量を、抽出工程の間に第2の領域内に配置された特定の量の空気と接触させるために、第1の領域の体積と第2の領域の体積との間で達成されることになる。特に、最適なアロマと最適なクリームを入れたコーヒー飲料が、この方法で特に都合よく生成されることになる。同時に、部分カプセルをできるだけコンパクトに、かつこれにより費用効率的な方法で製造することができる。
【0016】
本発明のさらに別の要旨又は好ましい成果によれば、キャビティの中に配置されたフィルタ素子が提供されている。このフィルタ素子は、キャビティを、飲料用原料を収容する第1の領域と飲料抽出物を受け入れる第2の領域とに分割している。このフィルタ素子は、第1の領域を第2の領域から封鎖するための円周シール・リップを有し、前記シール・リップは、ベース部品の壁領域に対してぴったりした方法(form-fitting manner)で自身を形成し、フィルタ素子の少なくとも高さ全体にわたって薄膜に対して垂直に延在している。第2の領域は、シール・リップによって第1の領域から封鎖されているため、抽出液が第1の領域からフィルタ開口を通って第2の領域に流れることはない。このことは、飲料用原料が第2の領域に入らないように、またそこから飲料が入るようにするために必要である。このシール・リップは、第1の領域内の圧力が増加すると、シール・リップによって壁領域に対する接触圧力が増加され、すなわち、封鎖されるシール効果が圧力と共に増加するような方式の自己密閉式である。この効果は、シール・リップが薄膜の方向にフィルタ素子のフィルタ領域を超えて突出する場合、好ましいことに特に大きい。このフィルタ領域は、フィルタ開口を備えている。特に、シール・リップの形状は薄膜に対して平行な面内で円形であり、シール・リップの直径は、ベース部品の底部の方向にテーパが付いていることが好ましい。
【0017】
本発明のさらに別の要旨は、熱い飲料を作るために、本発明に基づいて部分カプセルを使用することである。
【0018】
本発明の代表的な実施形態は、図面の中で例示され、かつ下記の明細書の中でより詳細に説明される。これらの図面は単に実施例として描写されており、本発明の一般的概念を限定することはない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態による部分カプセルの概略横方向断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による部分カプセルの概略横方向断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による部分カプセルの概略横方向断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態による部分カプセルの概略斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施形態による部分カプセルのフィルタ素子の概略平面図である。
【図6】本発明の第6の実施形態による複数の積み重ねられた部分カプセルの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
種々の図面において、同一部品には常に同じ参照番号が付けられており、このため、概ねそれぞれ一度だけしか引用又は言及されない。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態による部分カプセル1の概略横方向断面図を例示している。この部分カプセル1は、ポットの形状でキャビティ3を囲むほぼフラストコニカルなベース部品2を有している。このキャビティ3は、薄膜4で閉鎖されている。ベース部品2は、特に、好ましくは深絞りされた柔軟な、半剛体の又は剛体のプラスチック材料から構成されている。薄膜4は、薄いプラスチック・フィルム又はアルミホイルから構成されていることが好ましい。ベース部品2は、薄膜4の領域内に取り囲み式(encircling)締付けフランジ7を有しており、薄膜4は、締付けフランジ7に、粘着性を持つように、特に溶接又は接着によって結合されている。熱可塑性材料、例えばポリプロピレンから製造されるフィルタ素子5が、ベース部品2の中に配置されている。このフィルタ素子5は、キャビティ3を第1の領域8と第2の領域9に分割する。第1の領域8は、飲料用原料を収容することが意図されている。この飲料用原料は、分かり易くするために図面には例示されていない。例えば、この第1の領域8は、キャビティ3が薄膜4で閉じられる前にコーヒー・パウダで満たされるようになっている。このコーヒー・パウダは、第1の領域8に注入されるとき、強く圧縮されることが好ましい。第2の領域9は、部分カプセル1の抽出工程の間に、飲料抽出物(図示せず)収容及び、特に収集する働きをするものである。部分カプセル1は、コーヒー装置(図示せず)の醸造チャンバ10に挿入されるように意図されている。コーヒー装置では、抽出液(例えば、熱水)が第1の領域8に、好ましくは高圧のもとで与えられる。この抽出液は飲料用原料と相互作用して、その結果、飲料抽出物が生じることになる。フィルタ素子5は、複数のフィルタ開口13(図1、2及び3では図示されていない)をフィルタ領域5’の中に有し、飲料抽出物のこし器として機能している。この場合、飲料抽出物はフィルタ開口13を通って第2の領域9に入るようになっている。第2の領域9は、ベース部品2の底部11によって範囲が定められている。この底部は、飲料抽出物のための出口開口を作るために、例えばコーヒー装置の底穿孔ステム(bottom puncturing stem)21によって醸造チャンバ10の中に穴が開けられる。別の方法では、抽出液が存在する場合、出口開口が底部11の中に自動的に形成され、及び/又は出口開口又は出口バルブを底部11の中に前もって組み込むことが実現可能である。フィルタ開口13の断面は、粒子がほとんどない飲料用原料が第1の領域8から第2の領域9に通過するような方法で選択されている。フィルタ素子5がベース部品2に対して移動されるのを防ぐために、部分カプセル1は、必要に応じて、ベース部品2に対する超音波溶接結合部6を有している。薄膜4は、キャビティ3から反対向きの側が粗面にされているため、抽出工程の後の薄膜4と醸造チャンバ10の壁との間の接着が防止又は減少され、部分カプセル1はフォールト・フリーの方法で自動的に醸造チャンバ10から排出されることになる。さらに、ベース部品2は、実質的にフランジ7と底部11との間に延在する壁領域12を有している。複数のチャネル15が壁領域12の中に作られ、前記チャネルはキャビティ3に向いた概ね円周溝の形状に設計されている。チャネル15は、円周方向で部分的に中断されることもあり得る。チャネル15は、壁領域12が複数のチャネル15によって補強されるような方法で、さらに設計されている。しかも、抽出工程の後で壁領域12と醸造チャンバ10の壁との間が接着することが、特に壁領域12の全体にわたって分布される複数のチャネル15によって防止され、その結果、醸造チャンバ10から部分カプセル1が自動的に放出されることが一層容易に行われることになる。図1に例示された部分カプセル1は、壁領域12とフランジ7との間の中間領域内に形成された円周方向ショルダ部16も備えている。この円周方向ショルダ部16の直径(薄膜4に平行している)は、壁領域12の直径よりも大きい。このショルダ部16の外形は、ショルダ部16の直径が図1に例示されているように、フランジ7の方向に一定のままであり、又は図3に例示されているように、フランジ7の方向に小さくなるように設計されることが好ましい。底部11の材料厚さは、例えば底部11を穿孔すること及び超音波溶接結合部6を作ることを容易にするために、壁領域12と比較すると大きい。フィルタ素子5は、底部11に向いた側方上に可融性素子17を有している。また、前記可融性素子は、超音波溶接結合部6を作るために、超音波溶接工程の間に底部11上で少なくとも部分的に融解するようになっている。フィルタ素子5は、一例として、第2の領域9と向かい合う面上でフィルタ領域5’を支援する補強構造体5’を有している。フィルタ素子5は、円周シール・リップ18も備えており、このシール・リップ18は、底部11の近傍で別のフィルタ素子5と接続され、またそこからフランジ7の方向に突出している。シール・リップ18は、少なくとも部分的に柔軟であり、フィルタ領域5’を超えてフランジ7の方向に突出する。シール・リップ18の自由端は、溝15の中にパチンとはまる。このシール・リップ18は、壁領域12内に作られ、壁領域12に対してぴったり合う方法で形成されるため、第1の領域8と第2の領域9との間に別のシールが作られ、このシールは液体がフィルタ素子5の周りに流れないようにしている。この場合、シール・リップ18は、第1の領域8と向き合う圧力領域18’を有するように設計されている。例えば、キャビティ3に流れる抽出液のために第1の領域内の圧力が増加すると、壁領域12の方向に向かって圧力領域18’上に動作の力が発生し、このため、第1の領域8内の圧力の作用として、壁領域12とシール・リップ18との間のシール効果が増加されることになる。薄膜4に対して垂直で、薄膜4と薄膜4に面するフィルタ領域5’との間の線に沿った第1の距離が、約20ミリメータであることが好ましく、一方、薄膜4に対して垂直で、薄膜4に面するフィルタ領域5’と底部11との間の線に沿った第2の距離が、約5ミリメータであることが好ましい。
【0022】
図2は、本発明の第2の実施形態による部分カプセル1の概略横方向断面図を例示している。この第2の実施形態は、図1に例示されている第1の実施形態とほぼ同一である。第2の実施形態による部分カプセル1は、ショルダ部7やシール・リップ18を有していない、又は底部11の材料厚さは壁領域12と比べてより大きくはない。さらに、チャネル15は、キャビティ3から背いた方向の壁領域12の側面上に形成された溝の形式で設計されている。
【0023】
図3は、本発明の第3の実施形態による部分カプセル1の概略横方向断面図を例示している。この第3の実施形態は、図1に例示されている第1の実施形態とほぼ同一である。第3の実施形態による部分カプセル1は、壁領域12の中に2つのチャネル15しか有していない。チャネル15の1つは、さらにフィルタ素子5をパチンと止める機能を果たすものである。
【0024】
図4は、本発明の第4の実施形態による部分カプセル1の概略斜視図を例示している。この第4の実施形態は、図2に例示されている第2の実施形態とほぼ同一であり、壁領域12には3つの溝15が形成されている。
【0025】
図5は、本発明の第5の実施形態による部分カプセル1が備えているフィルタ素子5の概略平面図を例示している。この第5の実施形態は、図2に例示されている第2の実施形態とほぼ同一である。フィルタ領域5’は、図5では薄膜4の斜視図から描かれている。この場合、フィルタ開口13は、フィルタ開口13がフィルタ領域5’の中央部には配置されないように配列される。さらに、フィルタ領域5’は中央部では平坦である。このため、フィルタ素子5は中央部に保持領域14を有し、前記保持領域は、真空吸引ヘッドによってフィルタ素子5を取り出すために設けられている。
【0026】
図6は、本発明の第6の実施形態による複数の重ねられた部分カプセル1の概略斜視図を例示している。この第6の実施形態は、図4に例示されている第4の実施形態とほぼ同一である。第6の実施形態による部分カプセル1は、ショルダ部16を有し、まだ飲料用原料で満たされておらず、またフィルタ素子5を備えておらず、かつ、まだ薄膜4で閉じられていない。図6は、合計6個のそのような空の部分カプセル1を示しており、5個の部分カプセル1は既に一緒に積み重ねられている。この場合、部分カプセル1は、そのショルダ部16が下に置かれた部分カプセル1のフランジ7の上に載せている。図6では、既に一緒に重ねられているこれら5個の部分カプセル1が、積み重ね方向101に沿って第6の部分カプセル1の中に積み重ねられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼフラストコニカルな又は円筒形のベース部品(2)を有し、前記ベース部品(2)が飲料用原料を収容するキャビティ(3)と、前記キャビティ(3)を閉じる薄膜(4)とを備えている、飲料を調合するための部分カプセル(1)であって、前記ベース部品(2)の壁領域(12)が複数のチャネル(15)を有していることを特徴とする部分カプセル。
【請求項2】
前記チャネル(15)がそれぞれ前記薄膜(4)にほぼ平行な面内で延在し、かつ前記ベース部品(2)をほぼ取り囲むように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の部分カプセル。
【請求項3】
前記チャネル(15)がそれぞれ、前記キャビティ(3)に面している前記ベース部品(2)の内面上、及び/又は前記キャビティ(3)から背いた方向に面している前記ベース部品(2)の外面上に形成された溝及び/又は凸面体を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の部分カプセル。
【請求項4】
前記チャネル(15)は、前記壁領域(12)が前記チャネル(15)によって補強され、及び/又は前記キャビティ(3)を通って流れる抽出液の渦巻が前記チャネル(15)によって発生するような方法で設計されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項5】
前記薄膜(4)が、少なくとも前記キャビティ(3)から背いた方向に面した外面上で粗くされていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項6】
前記薄膜(4)は、粗くされた保護フィルム又はフォイルを前記外面上に有していることを特徴とする、請求項5に記載の部分カプセル。
【請求項7】
前記ベース部品(2)の壁領域(12)がショルダ部(16)を有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項8】
前記部分カプセル(1)は、前記薄膜(4)が装着されるフランジ(7)を有し、前記ショルダ部(16)が前記フランジ(7)に隣接するように設計されていることを特徴とする、請求項7に記載の部分カプセル。
【請求項9】
前記ベース部品(2)が、前記薄膜(4)に平行な面内で前記ショルダ部(16)の領域において拡大された直径を有していることを特徴とする、請求項7又は8に記載の部分カプセル。
【請求項10】
前記ベース部品(2)は、前記ショルダ部(16)の領域の中で前記薄膜(4)の方向にテーパが付いていることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項11】
前記部分カプセル(1)は、前記薄膜(4)が装着されるフランジ(7)を有し、前記フランジ(7)に隣接する前記ベース部品(2)の壁領域の直径の前記フランジ(7)の直径に対する比率が0.79と0.95との間にあることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項12】
前記フランジ(7)に隣接する前記ベース部品(2)の前記壁領域(12)の直径の前記フランジ(7)の直径に対する比率が、0.85と0.89との間にあり、特に0.87であることを特徴とする、請求項11に記載の部分カプセル。
【請求項13】
前記フランジ(7)に隣接する前記ベース部品(2)の前記壁領域(12)の直径が約39ミリメータであり、及び/又は前記フランジ(7)の直径が約45ミリメータであることを特徴とする、請求項11又は12に記載の部分カプセル。
【請求項14】
前記ベース部品(2)が前記薄膜(4)とほぼ平行に延在する底部(11)及び前記薄膜(4)と前記底部(11)との間に実質的に延在する壁領域(12)を有し、前記底部(11)の材料厚さが前記壁領域(12)の厚さよりも大きい又は小さいことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項15】
フィルタ素子(5)が前記キャビティ(3)内に配置され、前記フィルタ素子(5)は、前記キャビティ(3)を、飲料用原料を収容する第1の領域(8)と飲料抽出物を受け入れる第2の領域(9)とに分割し、かつ前記フィルタ素子(5)は、前記ベース部品(2)の前記底部(11)に面する側面上に可融性素子(17)を有していることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項16】
前記フィルタ素子(5)が前記キャビティ(3)内に配置され、前記フィルタ素子(5)は、前記キャビティ(3)を、飲料用原料を収容する第1の領域(8)と飲料抽出物を受け入れる第2の領域(9)とに分割し、かつ前記フィルタ素子(5)は、前記フィルタ素子(5)を取り出すための少なくとも1つの保持領域(14)を有していることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項17】
前記フィルタ素子(5)は、前記保持領域(14)の外側に配置された複数のフィルタ開口(13)を有していることを特徴とする、請求項16に記載の部分カプセル。
【請求項18】
前記保持領域が、前記フィルタ素子(5)の中央部に形成されていることを特徴とする、請求項17に記載の部分カプセル。
【請求項19】
前記フィルタ素子(5)が前記キャビティ(3)内に配置され、前記フィルタ素子(5)は、前記キャビティ(3)を、飲料用原料を収容する第1の領域(8)と飲料抽出物を受け入れる第2の領域(9)とに分割し、前記部分カプセル(1)は、前記薄膜と前記フィルタ素子(5)との間の第1の距離の、前記ベース部品の底部と前記フィルタ素子との間の第2の距離に対する比率が3.5と4.5との間である比率を有していることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項20】
前記第1の距離の前記第2の距離に対する比率が3.8と4.2との間であり、好ましくは約4であることを特徴とする、請求項19に記載の部分カプセル。
【請求項21】
前記第1の距離が約20ミリメータであり、前記第2の距離が約5ミリメータであることを特徴とする、請求項20に記載の部分カプセル。
【請求項22】
前記フィルタ素子(5)が前記キャビティ(3)内に配置され、前記フィルタ素子(5)は、前記キャビティ(3)を、飲料用原料を収容する第1の領域(8)と飲料抽出物を受け入れる第2の領域(9)とに分割し、前記フィルタ素子(5)は、前記第1の領域(8)を前記第2の領域(9)から封鎖するための円周シール・リップ(18)を有し、前記シール・リップは、前記ベース部品(2)の前記壁領域(12)に対してぴったりした方法で自身を形成し、前記フィルタ素子(5)の少なくとも高さ全体にわたって前記薄膜(4)に対して垂直に延在していることを特徴とする、請求項1〜21のいずれかに記載の部分カプセル。
【請求項23】
前記シール・リップ(18)は、前記薄膜(4)に対して平行な面内で円形であり、前記シール・リップ(18)の直径は、前記ベース部品(2)の前記底部の方向にテーパが付いていることを特徴とする、請求項22に記載の部分カプセル。
【請求項24】
前記シール・リップ(18)が前記第1の領域(8)に向いた圧力領域(18’)を有し、特に、前記第1の領域(8)内の大きな圧力が前記シール・リップ(18)と前記壁領域(12)との間のシール圧力を増加させるように設計されていることを特徴とする、請求項23に記載の部分カプセル。
【請求項25】
熱い飲料を作るために、請求項1〜24のいずれか1つによる部分カプセル(1)を使用することを特徴とする用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156350(P2011−156350A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−279580(P2010−279580)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(510330828)クリューガー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】