説明

部分的なバックコンタクト太陽電池の製造方法

【課題】プロセス工程の数が減らされて、これにより製造コストが低減され、良好な開回路電圧(open-circuit voltage)と良好な短絡回路電流(short-circuit current)を有し、この結果、良好なエネルギー変換効率を有する、部分的なバックコンタクトの製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板2を提供する工程と、シリコン基板2の裏側に表面パッシベーション層3を堆積する工程と、表面パッシベーション層3とシリコン基板2との間の界面に薄い層に裂けた領域または泡1を形成する工程と、表面パッシベーション層3の上に金属層4を堆積する工程と、金属の焼成を行う工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細は、太陽電池の分野に関する。特に、部分的なバックコンタクトを有する太陽電池の製造方法およびそのようにして得られた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
部分的なバックコンタクトを有する結晶シリコン太陽電池、例えばPERC(Passivated Emitter and Rear Cell)構造やPERL(Passivated Emitter Rear Locally diffused cell)構造のために、先端デバイス構造が開発されてきた。そのような先端デバイス構造は、高いエネルギー変換効率を得たが、より多くのプロセス工程を必要とし、より先端的でないデバイスに比較して高い製造コストとなる。
【0003】
例えば製造コストを低減し、同時に良好なエネルギー変換効率を維持することで、結晶シリコン太陽電池の1ワット当たりのコストの最高値を減らすことが必要である。
【発明の概要】
【0004】
第1の発明の形態は、部分的なバックコンタクトを有するシリコン太陽電池の製造方法に関し、従来の製造方法に比較してプロセス工程の数が減らされて、これにより製造コストが低減され、良好な開回路電圧(open-circuit voltage)と良好な短絡回路電流(short-circuit current)を有し、この結果、良好なエネルギー変換効率を有する、部分的なバックコンタクトのセルを形成できる。
【0005】
部分的なバックコンタクトを含む太陽電池の製造方法が記載され、この方法は、
シリコン基板を提供する工程と、
シリコン基板の裏側に表面パッシベーション層を堆積する工程と、
表面パッシベーション層とシリコン基板との間の界面に、例えば泡のような薄い層に裂けた領域(delaminated region)を形成する工程と、
表面パッシベーション層の上に金属層を堆積する工程と、
金属の焼成を行う工程と、を含む。
【0006】
これにより、導電性パスが、薄い層に裂けた領域の位置の、金属層とシリコン基板との間に形成され、太陽電池やデバイスのためのバックコンタクトとなる。
【0007】
有利には、表面パッシベーション層とシリコン基板との間の界面に、例えば泡のような薄い層に裂けた領域を形成する工程は、
疎水性の洗浄方法を用いてシリコン基板を洗浄する工程と、
疎水性洗浄の後に、シリコン基板の裏側に表面パッシベーション層を堆積する工程と、
熱処理を行う工程と、を含む。
【0008】
1つの発明の形態は、部分的なバックコンタクトを有するシリコン太陽電池の製造方法に関し、この方法は、シリコン基板を提供する工程と、疎水性の洗浄方法を用いてシリコン基板を洗浄する工程と、疎水性の洗浄後に、シリコン基板の裏側に表面パッシベーション層を堆積する工程であって、好適には表面パッシベーション層は少なくとも約30nmの厚さを有する工程と、好適には約400℃と約600℃の間の範囲の温度で熱処理を行い、これにより表面パッシベーション層とシリコン基板との間の界面に、例えば泡のような薄い層に裂けた領域を形成する工程と、表面パッシベーション層の上に金属層を堆積する工程と、金属の焼成を行う工程と、を含む。金属の焼成工程中に、部分的なバックコンタクトが、薄い層に裂けた領域の部分に形成される。このように、部分的なバックコンタクトは、金属層の堆積前に表面パッシベーション中に開口部を形成する必要無しに、部分的なバックコンタクトが形成される。泡やふくれ(blister)中の微小なクラックによりふくれ内でシリコン基板に向かって金属が突き抜けることにより、コンタクトが形成されると信じられている。
【0009】
1つの形態では、疎水性の洗浄方法は、洗浄後に疎水性の表面が残される洗浄方法である。例えば、疎水性の洗浄は、最終工程として希釈したHF中への浸漬を含んでも良い。
【0010】
表面パッシベーション層は、単一層、または少なくとも(シリコン基板上に堆積された)第1層と、(第1層の上に堆積された)第2層を含む層のスタックでも良い。表面パッシベーション層が単一層の具体例では、これは例えば、少なくとも約30nmの厚さを有するAl層でも良い。表面パッシベーション層が層のスタックである具体例では、第1層は、例えば約5nmと約15nmの間のような約2nmと約30nmの間の範囲の厚さを有するAl層でも良く、第2層は、例えば約100nmと約200nmの間のような約70nmと約300nmの間の範囲の厚さを有するSiN層および/またはSiO層でも良い。Al層は、例えば熱ALD(atomic layer deposition)、プラズマ強化ALD、プラズマ強化CVD(chemical vapour deposition)により、または当業者に知られた他の好適な方法により提供される。所定の具体例では、好ましくは、熱ALDAl層は、例えば約200℃と約250℃との間のような、約250℃より低い温度で堆積される。第2層は、好適には約400℃と約600℃の間の範囲の温度で、CVDで堆積され、これにより、同時に熱処理を行い、別の熱処理を不要にする。表面パッシベーション層の上に堆積した金属層は、例えばAlを含む。金属焼成工程は、薄い層に裂けた領域の部分で、部分的なコンタクトを形成する工程を含む。金属焼成工程は、好適には、例えば約835℃と約950℃の間の範囲の温度のような、約835℃より高い温度で行われる。
【0011】
本発明の具体例では、この方法は、更に、薄い層に裂けた領域や泡を形成する位置および/または密度を制御するために、シリコン基板の裏面上に表面形状を導入する工程を含む。
【0012】
表面パッシベーション層が層のスタックである本発明の具体例では、この方法は、更に、第1層の堆積後で第2層の堆積前に、追加のアニール工程の実施を含み、追加のアニール工程は第1層の脱ガスのために適用され、これにより金属の焼成時に、第2のタイプの薄い層に裂けた領域が形成されるのを回避する。好適には、追加のアニール工程は、例えば約600℃と約800℃の間の範囲の温度のような、600℃と900℃の間の範囲の温度で行われる。この追加のアニール工程は、例えば約30分間のような20分から1時間の間の期間、例えば、フォーミングガス雰囲気中または窒素雰囲気のような不活性雰囲気中で行われる。
【0013】
金属層を形成前に表面パッシベーション層中に開口部を形成することを必要とせずに、金属焼成工程で部分的な裏側のコンタクトが形成できることが、1つの発明の形態にかかる方法の長所である。このように、プロセス工程の数が低減され、部分的なバックコンタクトを有する太陽電池の従来の製造プロセスに比較して、製造スループットが増加する。
【0014】
Al層が低い温度(例えば200℃)で堆積でき、より高温で堆積したAl層に比較して、より良好な表面パッシベーション品質となることが、1つの形態にかかる方法の長所である。
【0015】
第2の発明の形態は、例えば泡のような薄い層に裂けた領域の位置に、太陽電池の部分的なバックコンタクトを形成するための第1の形態にかかる方法の使用に関する。
【0016】
第3の発明の形態は、裏面と表面を有する太陽電池デバイスに関し、この太陽電池デバイスは、シリコン基板、シリコン基板の裏側の表面パッシベーション層、および部分的なバックコンタクトを含み、部分的なバックコンタクトは、太陽電池デバイスの裏面の上に、ランダムに分布している。
【0017】
部分的なバックコンタクトがランダムに分布するとは、バックコンタクトのいずれかの予め決められた配置、またはバックコンタクトの位置の予め決められた規則性や周期性が無いことを意味する。
【0018】
好適な具体例では、パッシベーション層は、部分的なバックコンタクトに対応する位置の薄い層に裂けた領域を含む。
【0019】
好適な具体例では、パッシベーション層は、少なくとも30nmの厚さを有する。
【0020】
好適な具体例では、パッシベーション層は、約2nmと約30nmの間の範囲の厚さを有するAl層を含む第1層と、約70nmと約300nmの間の範囲の厚さを有するSiN層および/またはSiO層を含む第2層とを含む。
【0021】
所定の発明の形態の所定の目的および長所は、上述の通りである。もちろん、そのような目的や長所の全てが、この明細書の特定の具体例で達成される必要はないことが理解される。このように、例えば当業者は、ここで教示や示唆された他の目的や長所を達成する必要なしに、ここで教示された1つの長所または長所のグループを達成または最適化する方法で、この記載が具体化されることを認識するであろう。更に、この概要は単に例示であり、明細書の範囲を制限することを意図するものではないことが理解される。構成および操作の方法の双方についての明細は、その特徴や長所と共に、添付された図面とともに読むことで、以下の詳細な説明を参照して良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】PECVDSiNで覆われた熱ALDAl層の顕微鏡写真である。
【図2】部分的に薄い層に裂けたALDAl/PECVDSiNスタックのSEM写真(断面)である。
【図3】異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図3(a)は5nmAlのALD堆積後、図3(b)は5nmAlのALD堆積と550℃の窒素雰囲気中でのアニール後、図3(c)は5nmAlのALD堆積と550℃の窒素雰囲気中でのアニールとSiN堆積後、である。
【図4】異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図4(a)は30nmAlのALD堆積後、図4(b)は30nmAlのALD堆積と350℃のフォーミングガス中でのアニール後、図4(c)は30nmAlのALD堆積と350℃のフォーミングガス中でのアニールとSiN堆積後、である。
【図5】異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図5(a)は30nmAlのALD堆積と350℃の窒素中でのアニール後、図5(b)は30nmAlのALD堆積と350℃の窒素中でのアニールとSiN堆積後、である。
【図6】異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図6(a)は30nmAlのALD堆積と550℃の窒素中でのアニール後、図6(b)は30nmAlのALD堆積と550℃の窒素中でのアニールとSiN堆積後、である。
【図7】薄い層に裂けた領域上のAl金属層を焼成した後に形成された(裏面領域を有する)部分的なコンタクトの(断面)SEM写真である。
【図8】本発明の具体例にかかるプロセスフローと、代わりの先端技術のプロセスフローとの間の比較チャートを示す。
【図9】ミラー研磨されたc−Si基板上のふくれたALDAl/PECVDSiN層の、(a)SEM傾斜上面写真と(b)断面写真である。図9(c)と図9(d)は、親水性プレALD堆積洗浄(図9(c))と疎水性プレALD堆積洗浄(図9(d))についての、粗いc−Si表面上に成長させたALDAl/PECVDSiN層の光学顕微鏡上面写真である。
【図10】Al層で覆われた、ふくれたパッシベーション層の焼成による、半導体金属コンタクト形成のメカニズムの概略図である。
【図11a】共同焼成(co-firing)の前後での、5nm、10nmまたは30nmの膜厚のALDAl層と、PECVDSiN層とを含むスタックで測定した、平均ふくれ半径を示す。プレALDウエハ洗浄は、親水性(Si−OH)または疎水性(Si−H)であった。
【図11b】図11(a)と同じAl/SiNx層により裏側がパッシベートされたランダムAlBSFSi太陽電池について、平均短絡回路電流密度(Jsc)と開回路電圧(Voc)を示す。全ての場合、ピークの焼成温度は865℃である。
【図11c】図11(a)と同じAl/SiNx層により裏側がパッシベートされたランダムAlBSFSi太陽電池について、平均曲線因子(FF)と効率(eta)を示す。全ての場合、ピークの焼成温度は865℃である。
【図12】ランダムAlBSFSi太陽電池部分のLBICマッピング(20μm解像度)を示し、裏側において、ランダムな金属−半導体コンタクトを明確に示す。
【図13a】ピークの焼成温度の関数として、Al/SiN層により裏側がパッシベートされたランダムAlBSFSi太陽電池について、平均Jscを示す。プレAl洗浄は疎水性であり、Alの膜厚は5nm、10nm、または30nmであった。また、参照の全体AlBSFセルについての平均セル特性も示される。
【図13b】ピークの焼成温度の関数として、Al/SiN層により裏側がパッシベートされたランダムAlBSFSi太陽電池について、平均Vocを示す。プレAl洗浄は疎水性であり、Alの膜厚は5nm、10nm、または30nmであった。また、参照の全体AlBSFセルについての平均セル特性も示される。
【図13c】ピークの焼成温度の関数として、Al/SiN層により裏側がパッシベートされたランダムAlBSFSi太陽電池について、平均FFを示す。プレAl洗浄は疎水性であり、Alの膜厚は5nm、10nm、または30nmであった。また、参照の全体AlBSFセルについての平均セル特性も示される。
【図13d】ピークの焼成温度の関数として、Al/SiN層により裏側がパッシベートされたランダムAlBSFSi太陽電池について、平均電池効率を示す。プレAl洗浄は疎水性であり、Alの膜厚は5nm、10nm、または30nmであった。また、参照の全体AlBSFセルについての平均セル特性も示される。
【図14a】本発明の具体例にかかるプロセスフローを示し、コンタクトはパッシベーション層の中のふくれの位置に形成される。(a)は実際のサンプルの写真である。
【図14b】本発明の具体例にかかるプロセスフローを示し、コンタクトはパッシベーション層の中のふくれの位置に形成される。(b)は同じフローの概略図である。
【0023】
異なる図面において、同一の符号は同一または類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明において、明細書の全体を通した理解と、如何にしてそれが特定の具体例中で実施されるかを提供するために、多くの特別な細部が説明される。しかしながら、本明細書は、それらの特定の細部無しに実施できることが理解される。他の例では、公知の方法、手続き、および技術は、本明細書が不明確にならないように、詳細には示されていない。本明細書は、所定の図面を参照しながら、特定の具体例について記載されるが、本明細書はこれに限定されない。ここに含まれて記載された図面は模式的であり、本明細書の範囲を限定するものではない。また、図面において、図示目的で、いくつかの要素の大きさは誇張され、それゆえに縮尺どおりには描かれていない。
【0025】
更に、明細書中の、第1、第2、第3等の用語は、類似の要素の間で区別するために使用され、ランクや他の方法での、一時的、空間的な順序を表す必要はない。そのように使用された用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された明細書の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる順序によっても操作できることを理解すべきである。
【0026】
また、明細書中の、上、下、上に、下に等の用語は、記載目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された明細書の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる位置でも操作できることを理解すべきである。
【0027】
また、「含む(comprising)」の用語は、それ以降に示される手段に限定して解釈されるべきではなく、他の要素や工程を排除しない。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分の存在は、表されたように解釈されるべきであり、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除してはならない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。
【0028】
所定の具体例において、太陽電池または基板の表面または表側は、光源に向かうように配置される面または側であり、これにより光を受ける。太陽電池または基板の後面、裏面、後側、または裏側は、表面または表側に対向する面または側である。
【0029】
「薄い層に裂けた領域(delaminated region)」は、例えば泡やふくれのような、薄い層に裂けている領域をいう。本明細書の目的のために、「泡(bubble)」および「ふくれ(blister)」の用語は同義語として使用される。
【0030】
1つの具体例は、部分的なバックコンタクトを有する太陽電池の製造方法に関し、この方法は、シリコン基板を提供する工程と、疎水性の洗浄方法を用いてシリコン基板を洗浄する工程と、疎水性の洗浄後に、シリコン基板の裏側に表面パッシベーション層を形成する工程であって、例えば約30nmと約150nmとの間の範囲の厚さのような、少なくとも約30nmの厚さを有する工程と、約400℃と約600℃の間の範囲の温度で熱処理を行う工程と、を含む。この結果、半導体基板と表面パッシベーション層との間の界面に、例えば泡のような薄い層に裂けた領域が形成される。表面パッシベーション層は、単一層を含み、または第1層と第2層のスタックを含んでも良い。表面パッシベーション層が少なくとも第1層と第2層を含む具体例では、第2層の堆積は、また熱処理の関数を有する。表面パッシベーション層の厚さは、良好な裏面パッシベーションの品質の提供に加えて、良好な裏面反射を提供するために選択しても良い。この方法は、更に、例えばAl層のような金属層を形成し、裏側で表面パッシベーション層を覆う工程と、金属焼成を行う工程とを含み、これによりリアコンタクトとリアBSF領域を、薄い層に裂けた領域に形成しても良い。金属層を形成する工程は、スクリーン印刷、スパッタ、蒸着または当業者に知られた他の好適な方法を含んでも良い。金属焼成を行う工程は、好適には、約835℃より高い温度、例えば約835℃と約950℃との間、例えば約850℃と900℃との間の範囲の温度で行われる。
【0031】
所定の具体例では、表面パッシベーション層は、例えばAl層を含む。表面パッシベーション層が単一層の具体例では、Al層は少なくとも約30nmである。表面パッシベーション層が層のスタックの具体例では、Al層が、シリコン基板の裏側に第1層として形成され、第2層が第1層の上に形成される。第1層と第2層の全厚さは、好適には約100nmである。
【0032】
Al層は、例えば熱ALDまたはプラズマ強化ALDのような、ALD(atomic layer deposition)の手段により形成される。しかしながら、本明細書は、これには限定されず、当業者に知られた他の好適な方法が使用できる。好適には、ALDAl層は、例えばHOおよびTMAを前駆体として用いて、約250℃より低い温度で堆積される。第2層は、例えばSiN層またはSiO層または当業者に知られた他の好適な層でも良い。第2層は、好適には約400℃と約600℃の間に範囲の温度で、例えば化学気相堆積法により堆積できる。
【0033】
部分的な金属コンタクトの形成を可能にする裏面金属層を形成する前に、裏面パッシベーションスタック中に開口部を形成する必要性が避けられることが、部分的なバックコンタクトを有する太陽電池を製造する従来の方法と比べた、1つの具体例にかかる方法の優位点である。代わりに、金属の焼成工程中に、薄い層に裂けた領域中に部分的なコンタクトを形成しても良い。
【0034】
例えばALD技術で堆積されたAl層が、p型シリコンに対して非常に良好なパッシベーションであることが示される。この優秀なパッシベーション品質は、化学パッシベーションと電界効果パッシベーションに関係する。最良のALDAlパッシベーション品質は、低い堆積温度(例えば200℃)で得られる。
【0035】
パッシベーション層の臨界膜厚(例えばAl層では約30nm、Al層とSiN層を含むスタックでは約100nm)および臨界温度(例えば約400℃から約600℃)に達した場合に、部分的に薄い層に裂けることにより、低温で堆積された層は、また、「ふくれ(blister)」や「泡(bubble)」を表す。部分的に薄い層に裂けることは、例えば、Al層中で形成される応力に関連し、または臨界温度より高い熱処理によるAl層中の水素の放出に関連する。1つの具体例にかかる方法では、この部分的に薄い層に裂けたパッシベーション層は、PERC型太陽電池のための裏面パッシベーション層として使用される。裏面金属の焼成後に、薄い層に裂けた領域は、部分的なポイントコンタクトとなる。加えて、裏面金属の焼成工程は、部分的な裏面電界(Buck Surface Field)を形成する。
【0036】
図1は、疎水的に洗浄されたミラー研磨シリコン基板上に堆積された、100nm膜厚のPECVDSiNで覆われた約30nm膜厚の熱ALDAl層を含む表面パッシベーション層の顕微鏡写真(上面)である。熱ALDAl層は、HOとTMAを前駆体に用いて、200℃で堆積させた。図2は、部分的に薄い層に裂けた、図1のALDAl/PECVDSiNスタックのSEM写真(断面)である。部分的に薄い層に裂けることは、例では22.6マイクロメータの直径を有するように示された泡を形成することがわかる。
【0037】
図3は、異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図3(a)は5nmAlのALD堆積後、図3(b)は5nmAlのALD堆積と550℃の窒素雰囲気中でのアニール後、図3(c)は5nmAlのALD堆積と550℃の窒素雰囲気中でのアニールと420℃でのSiN堆積(SiN膜厚は200nmから300nm)後、である。
【0038】
図4は、異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図4(a)は30nmAlのALD堆積後、図4(b)は30nmAlのALD堆積と350℃のフォーミングガス中でのアニール後、図4(c)は30nmAlのALD堆積と350℃のフォーミングガス中でのアニールと420℃でのSiN堆積(SiN膜厚は200nmから300nm)後、である。
【0039】
図5は、異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図5(a)は30nmAlのALD堆積と350℃の窒素中でのアニール後、図5(b)は30nmAlのALD堆積と350℃の窒素中でのアニールと420℃でのSiN堆積(SiN膜厚は200nmから300nm)後、である。
【0040】
図6は、異なる段階におけるCZSi基板の光学顕微鏡写真を示す。図6(a)は30nmAlのALD堆積と550℃の窒素中でのアニール後、図6(b)は30nmAlのALD堆積と550℃の窒素中でのアニールと420℃でのSiN堆積(SiN膜厚は200nmから300nm)後、である。
【0041】
図3、図4、図5、および図6に示される全てのサンプルについて、Al堆積の前にシリコン基板の疎水性洗浄(最終工程として2%HF浸漬)が行われた。図3、図4、図5、および図6に示された結果から、薄い層に裂けた領域の形成および薄い層に裂けた領域の大きさおよび密度は、Al層の膜厚、熱処理やアニールの雰囲気、熱処理の温度、およびAl層の上のSiN層の存在のような、多くのパラメータにより影響されることが結論づけられる。
【0042】
例えば、図3(c)を図6(b)と比較すると、図3(c)に示されたサンプルでは5nmで、図6(b)に示されるサンプルでは30nmで、Al層の膜厚に違いがある。より厚いAl層では、泡の数はより小さくなり、より大きなサイズとなる。図6(a)では、アニール後でSiN堆積前に、30nm膜厚のAl層で泡に形成が始まるのが見られる。
【0043】
例えば、図4(c)を図5(b)と比較すると、熱処理の雰囲気に違いがあり、図4(c)に示されるサンプルではフォーミングガスであり、図5(b)に示されるサンプルでは窒素である。熱処理が窒素中で行われた場合、泡の数はより少なく、より大きなサイズとなる。
【0044】
例えば、図5(b)を図6(b)と比較すると、熱処理の温度に違いがあり、図5(b)に示されるサンプルでは350℃であり、図6(b)に示されるサンプルでは550℃である。より高いアニール温度では、泡の数が少なくなり、それらのサイズはより大きくなる。また、より高いアニール温度では、薄い層に裂けた領域の形成は、SiN堆積の前に始まる。
【0045】
200℃で堆積された薄いALDAl層(膜厚5nm、10nm、30nm)と、420℃で堆積されたPECVDSiN層(膜厚200nmから300nm)とを含むスタックが、シリコン基板の上に形成されて実験が行われた。Al堆積とSiN堆積の間で、別のアニール工程は行われなかった。薄い層に裂けた領域の形成は、Al堆積前に使用されるウエハ洗浄により影響されることが観察された。(親水性のシリコン表面となる)親水性の洗浄の場合の、薄い層に裂けた領域のサイズは、(疎水性のシリコン表面となる)疎水性の洗浄の場合より、小さくなることが見出された。実験では、親水性の洗浄は、硫酸ペルオキシド(surfuric-peroxide)混合物(85℃で、H:HSO 1:4)中での洗浄と、それに続く2%HF浸漬、室温でのNHOH:H:HO 1:1:5中での洗浄、および最後の乾燥を含む。疎水性の洗浄は、硫酸ペルオキシド(surfuric-peroxide)混合物(85℃で、H:HSO 1:4)中での洗浄と、それに続く2%HF浸漬、および乾燥を含む。薄い層に裂けた領域のサイズは、Alの膜厚が増加するとともに大きくなる。異なる洗浄および異なるAl膜厚に対して、薄い層に裂けた領域のサイズを表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
このように、薄い層に裂けた領域のサイズは、表面の前処理、ALDAl層の膜厚、および堆積後のアニール条件により調整できることが結論づけられる。
【0048】
1つの具体例では、薄い層に裂けた領域のサイズ(直径)は、好適には約10マイクロメータと40マイクロメータの間の範囲である。薄い層に裂けた領域は、好適には、全裏面の面積の約2%から約5%を覆う。それゆえに、Al堆積前に、シリコン表面の疎水性洗浄を行うことが好ましい。所定の具体例では、表面パッシベーション層は、約5nmと約15nmの間の範囲の膜厚のAl層と、少なくとも約100nmの膜厚のSiN層とを含むスタックであり、SiN層は、約400℃と約600℃の間の範囲の温度で堆積されて、これによりAl堆積後でSiN堆積前の熱処理またはアニールの必要性を避けることができる。他の具体例では、表面パッシベーション層は、例えば膜厚が少なくとも30nmのAl層であり、熱処理工程は、約400℃と約600℃の間の温度で、Al堆積後に、好適には窒素雰囲気中で行われる。
【0049】
上述の結果は、熱ALDの手段により堆積されたAl層を含むパッシベーション層に関するが、類似の泡の形成は、例えばプラズマ強化ALDやプラズマ強化CVDのような他の技術により堆積されたAl層でも見られた。泡は、(膜厚と温度に依存する挙動により示された)Al層中に形成された応力により、および熱処理のAl層中の水素放出により現れる。
【0050】
1つの具体例にかかる製造プロセスを用いると、例えばPERCセルのような、部分的なバックコンタクトを有する太陽電池のプロセス工程数が、従来の方法に比較して減らせる。より好適には、裏面メタライゼーション前の、裏面パッシベーション中の開口部の形成工程がなくせる。全体AlBSFを用いた太陽電池に比較して、単に1つの追加プロセス工程(裏面に表面パッシベーション層を堆積する工程)のみが、効率の増大のために必要となる。これを図8に模式的に示し、本発明(ランダムAlBSF)にかかる製造プロセスのためのプロセスフローと、裏面のメタライゼーション前に(例えばレーザ溶融による)裏面のパッシベーション層の開口部を含む部分的なAlBSFを有する太陽電池の従来の製造プロセスのプロセスフローを示す。
【0051】
1つの具体例の方法により、太陽電池(サイズが148.25cm)がp型シリコン基板上に形成される実験が行われた。
【0052】
参照として、全体の裏面電界(BSF)を有する、即ち、セルの裏面全体に延びたBSFを有するp型シリコン太陽電池が作製された。それらの参照セルでは、基板の表側は手クスチュアであり、基板の裏側は研磨された。POCl拡散により表側にエミッタが形成され、続いて表側にSiN反射防止コーティング(ARC)が堆積された。次に、裏側にAl層がスクリーン印刷され、表側にAgパターンがスクリーン印刷され、続いて、金属の共同焼成工程が行われた。共同焼成工程は、セルの裏側にAlBSFを形成した。AM1.5照明の下で、それらの参照セルに対して得られた電流−電圧特性を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
1つの具体例の方法で太陽電池が作製された。1つの追加の工程を除いて、参照セルの作製に使用されたのと同じプロセス工程が用いられた。この追加の工程は、エミッタ拡散後で反射防止コーティングの堆積前に、セルの裏側にAl/SiNパッシベーションスタックを堆積する工程を含む。パッシベーションスタックの堆積前に、上述のような疎水性洗浄が行われた。行われた実験では、パッシベーションスタックを堆積する工程は、ALDAlの第1層を約200℃で堆積する工程と、PECVDSiNの第2層を、第1層の上に約420℃で堆積する工程を含む。Al層の膜厚は、約5nm、約10nmまたは約30nmであった。SiNの膜厚は、約200nmと約300nmの間の範囲であった。参照セルのように裏側にAl層をスクリーン印刷する代わりに、裏側のAl層はスパッタにより形成された。裏面パッシベーションスタック中に開口部を形成することなく、セルの裏面全体にAl層が形成された。金属の共同焼成工程のために、異なる温度845℃、865℃、および885℃が用いられた。パッシベーションスタックが薄い層の裂けた領域である位置では、図7のSEM断面図に示すように、部分的なポイントコンタクトと部分的なBSFが焼成後に得られた。このメカニズムが、図10に模式的に示される。図10(a)は、焼成後の状態であり、Al層4で覆われた、シリコン基板2の表面とパッシベーション層3との間にふくれ1が形成された。図10(b)は、焼成後の状況を示し、Al層4は、BSF領域5を含む、シリコン基板2とコンタクトを形成する。また、図14(a)および図14(b)は、コンタクトがパッシベーション層中のふくれの位置に形成される本発明の具体例にかかるプロセスフローを示す。図14(a)は、実際のサンプルのSEM像であり、一方、図14(b)は、同じフローの模式図を示す。
【0055】
図12は、AlBSF太陽電池部分のLBICマッピングを示し、裏において、ランダムな金属半導体コンタクトを明確に示す(20μm解像度)。
【0056】
1つの具体例の方法で作製されたそれらのセルで得られた、AM1.5照明下での電流−電圧特性を表3に示す。それらの結果から、特に最も小さいAl層膜厚(約5nm)を有するセルと、最も大きいAl層膜厚(約30nm)を有するセルに対して、曲線因子がむしろ低いことが結論づけられる。これは、セルの裏側において、例えば低過ぎる泡密度や小さ過ぎる泡のような、最適でないコンタクトに関する。1つの具体例では、約10nmのAl層膜厚で、全面BSF(表2)と良好な曲線因子値を有する参照セルと比較して、より高い短絡回路密度Jscとより高い開回路電圧Vocを示す、最良の結果が得られる。
【0057】
【表3】



【0058】
更なる結果がここで述べられるが、それらは部分的に上述の結果と重なる。
【0059】
実験では、148.25cmの大きさの太陽電池が、2Ω・cmのシート抵抗を有する150μm膜厚のp型シリコン基板上に作製された。シート抵抗が60Ω/□(Ohm per square)のエミッタが形成された。ランダムな部分的AlBSFセルの場合、ふくれた層が、追加のコンタクト開口工程無しに裏面パッシベーションとして使用された。全面AlBSFセルと、裏面パッシベーション層をレーザ除去したふくれの無い部分的AlBSFセルが、参照として使用された。図8は、異なるセルについてのプロセスフローを模式的に示す。
【0060】
裏側のパッシベーション層の堆積前に、ウエハは、HFラスト(HF-last)(Si−H)工程または酸化ラスト(oxidizing last)(SiOH)工程を用いて洗浄され、当業者に知られたマランゴニ(Marangoni)乾燥が行われた。
【0061】
ランダムAlBSFセルおよび部分的AlBSFセルのための裏面パッシベーション層として、ALDAlとPECVDSiNのスタックが使用された。5nm、10nm、または30nmの膜厚の熱ALDAlを、トリメチルアウミニウム(TMA)と脱イオン(de-ionized)(DI)水を前駆体として用いて、商用的なALDリアクタ中で、200℃で成長させた。SiN層の膜厚は、太陽電池の裏の内部反射のために最適化された。共同焼成工程は、ランダムAlBSFについては845℃、865℃、および885℃で行われ、部分的AlBSFセルと全面AlBSFセルについては865℃で行われた。
【0062】
ふくれは目に見えるようにされ、走査電子顕微鏡(SEM)または光学顕微鏡を用いて測定された。使用された電流−電圧(I−V)セットアップは、200×200mmの照射面積、小さな偏り誤差(bias error)、および時間に対して良好な安定性を有する安定状態のXeランプの太陽シミュレーションである。シリコン太陽電池の空間的に決定された直列抵抗は、商用的なフォトリミネッセンス(PL)システムを用いて測定された。組織内で組み立てられた光線誘起電流(LBIC:Light Beam Induced Current)測定セットアップが、1050nmの波長で、太陽電池の短絡電流密度(Jsc)を描くのに使用された。
【0063】
ALDAl/PECVDSiNパッシベーション層のふくれが観察された。ふくれは、臨界温度(例えば約400℃から約600℃)を超える熱処理によりAl層中の気体が脱着することにより起きる、十分に厚い(例えば30nm以上のような、10nm以上の膜厚)Al層の部分的な薄い層への裂けである。また、Al層をSiO層またはSiNでキャップする工程も、ふくれとなる。キャップ層は、ふくれのために臨界温度より高い温度で堆積され、加えて、全スタックは、単体Al層よりも、より効果的な気体バリアである。Si上に堆積した、一般的なふくれたAl/SiNスタックのSEM像が、図9(a)および図9(b)に示される。
【0064】
プレALD洗浄は、ふくれの形成に影響する。図9(c)および図9(d)からそれぞれ分かるように、親水性の洗浄はより高密度のより小さいふくれにつながり、一方で、疎水性の洗浄はより低密度の大きなふくれにつながる。図9(c)および図9(d)は、親水性のプレALD堆積洗浄(図9(c))および疎水性のプレALD堆積洗浄(図9(d))に対して、粗いc−Si表面上に成長させたALDAl/PECVDSiN層の光学顕微鏡上面写真である。
【0065】
十分に薄いAl層を用いて、SiNキャッピングに先立って、例えば約600℃の温度でアニール工程を行うことにより、ふくれを避けることができる。Al層は、SiNキャッピングに先立って脱ガスされ、いまだ適当なパッシベーション特性を有しても良い。これは、メタライゼーションに先立って、裏面誘電体パッシベーション層を開口するためにレーザ切断が用いられる部分的なAlBSF参照セルの準備のために行われる。
【0066】
本発明に関して、シリコン基板と、AlとSiNのスタックとの間の界面でふくれが形成されるが形成されたランダムAlBSF太陽電池が作製された。疎水性と同様に親水性のプレALD洗浄が使用され、5nm、10nm、または30nm膜厚のAl層が堆積された。シリコン/Al界面のふくれの平均サイズは、図11(a)に示すようにばらつく。この平均サイズは、共同焼成工程の前後において測定された。焼成工程後に、ランダムAlBSFセルの裏面Al金属層が熱いHCl中で除去されてふくれを再度見えるようにした。865℃で焼成されたランダムAlBSFセルの短絡電流密度(Jsc)、開回路電圧(Vco)、曲線因子(FF)、およびエネルギー変換効率(eta)の平均が、図11(b)および図11(c)に示される。
【0067】
図11(a)(b)(c)から、例えば4マイクロメータより大きな、好適には5マイクロメータより大きなふくれ直径のような、最小ふくれ直径が、十分なコンタクトとその結果として十分に高いFFやJscを可能にするのに有利であると結論づけられる。最良のFFおよびJscは、焼成中にふくれサイズがさらに増加する場合に得られ、これは10nm膜厚のAl層と疎水性のプレALD洗浄の場合である。例えば図9(c)に示され、より低いFF、Jsc、およびVocに反映されたように、ふくれサイズが小さすぎ密度が高すぎるため、親水性のプレALD洗浄はより好ましくない。一方、例えばAlのための10nmの膜厚(例えば5nmから20nmの範囲、より好適には7nmから15nmの膜厚)は好適な膜厚である。なぜならば、これはそれ自身の上にふくれを形成するためには(例えば30nm膜厚のAl層に比べて)厚過ぎることはなく、焼成プロセス中に十分な追加の脱ガスを行うのに十分に厚いためである。SEM測定は、図7に示すように、金属により覆われたふくれた裏面パッシベーション層の焼成により、部分的なBFS領域が形成されることを明確に示す。図12に示すように、LBIC測定は、それらの部分的なコンタクトのランダムな分布を、Jscが誘導されたより暗い領域として示す。
【0068】
ALDAl堆積に先立って疎水性洗浄を行ったランダムAlBSFでは、ふくれサイズは十分なコンタクトを可能にするのに十分に大きい。ピーク焼成温度の関数とした、Jsc、Voc、FF、および効率の平均値を、図13(a)、図13(b)、図13(c)、および図13(d)にそれぞれ示す。ピーク焼成温度の関数として、パッシベーション品質とコンタクトとの間にはバランスがあることが結論づけられる。もし焼成温度が高すぎれば、裏面パッシベーション品質または開回路電圧Vocは、大きく減少するかもしれない。一方、もしピーク焼成温度が低過ぎた場合、裏面コンタクトまたはFF(およびそれゆえにJsc)は最適ではない。
【0069】
最適のランダムAlBSFセルは、全体BSF参照セルの16.6%に比較して、17.4%の平均セル効率を有した。より良い裏面内部反射とより良い裏面パッシベーションのために、JscおよびVocについて、それぞれ1.3mA/cmおよび5mVの明らかな利得がある。別の実験では、ふくれの無い部分的AlBSFセルが作製された。結果は、潜在的に、14.2mVのVocの利得が、全体AlBSFセルに比較してランダムAlBSFで達成できることを示唆する。最良のAl/SiNパッシベーションされたランダムと部分的なAlBSFセルの間のVocの隔たりは、多くの理由を有する。疎水性のプレALD洗浄の場合、焼成中に、高密度のより小さなふくれが形成される。それらの追加のふくれは、追加のコンタクトにつながるかも知れないし、つながらないかも知れない。しかし、表面パッシベーション品質が低下するために、双方の場合でより低いVocとなる。ふくれの密度は均一ではなく、Siウエハのエッジで明確に低い。これは、全体AlBSFセルに比較して、ランダムAlBSFセルのエッジでの増加した直列抵抗につながる。追加の小さなふくれの形成は、Al堆積工程とSiN堆積工程の間でアニール工程を行うことにより回避できる。このアニール工程は、好適には、焼成中にそれらの追加のふくれの形成を避けるのに十分なように、Al膜を脱ガスするのに十分高い温度で行われる。しかしながら、このアニール工程は、既に存在するふくれのための焼成中に、小さなサイズの増加の機会を残すのに十分に低い温度で行われる。ミラー研磨ウエハの上のふくれの形成を、テクスチュアウエハと比較することにより、表面形状の近傍にふくれが容易に現れることが観察された。この効果は、ウエハのエッジでは、より低いふくれ密度を補償するために使用できる。
【0070】
前の記載は、本発明の所定の具体例を詳述する。しかしながら、このテキストで先の記載がいかに詳しく表されても、本発明は多くの方法で実施できることが認められる。本発明の所定の性質または形態を記載する場合の特別な用語の使用は、用語が関係する本発明の性質や形態の特定の特徴を含むように限定するために、その用語をここで再定義することを暗示すると取るべきではない。
【0071】
上記詳細な説明は、本発明の新しい特徴を、様々な具体例に適用して示し、記載し、指摘するが、本発明の精神から離れること無しに、この技術の当業者により、記載されたデバイスやプロセスの形態や細部において、様々な省略、代替、および変化が行えることが理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的なバックコンタクトを含む太陽電池の製造方法であって、
シリコン基板を提供する工程と、
シリコン基板の裏側に表面パッシベーション層を堆積する工程と、
表面パッシベーション層とシリコン基板との間の界面に薄い層に裂けた領域を形成する工程と、
表面パッシベーション層の上に金属層を堆積する工程と、
金属の焼成を行う工程と、を含む方法。
【請求項2】
表面パッシベーション層とシリコン基板との間の界面に薄い層に裂けた領域を形成する工程は、
疎水性の洗浄方法を用いてシリコン基板を洗浄する工程と、
疎水性の洗浄の後に、シリコン基板の裏側に表面パッシベーション層を堆積する工程と、
熱処理を行う工程と、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面パッシベーション層を堆積する工程は、膜厚が少なくとも30nmの表面パッシベーション膜を堆積する工程を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
熱処理を行う工程は、約400℃と約600℃との間の範囲の温度で熱処理を行う工程を含む請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
疎水性の洗浄方法は、洗浄後に疎水性の表面を残す洗浄方法を含む請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
表面パッシベーション層を堆積する工程は、スタック層を堆積する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
表面パッシベーション層は、2nmと30nmの間の範囲の膜厚を有するAlを含む第1層と、70nmと300nmの間の範囲の膜厚を有するSiNまたはSiOを含む第2層とを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1層は250℃より低い温度で堆積され、第2層は400℃と600℃の間の範囲の温度で堆積され、これにより熱処理を同時に行う請求項7に記載の方法。
【請求項9】
金属はアルミニウムを含み、金属焼成工程は、835℃と950℃の間の範囲の温度で行われる請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
更に、第1層の堆積後で第2層の堆積前に、追加のアニール工程を含み、追加アニール工程は、600℃と900℃の間の範囲の温度で行われる請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
裏面と表面とを有する太陽電池デバイスであって、
シリコン基板と、
シリコン基板の裏側の表面パッシベーション層と、
部分的なバックコンタクトとを含み、
部分的なバックコンタクトは、太陽電池デバイスの裏面にランダムに分布した太陽電池デバイス。
【請求項12】
パッシベーション層は、部分的なバックコンタクトに対応する位置に薄い層に裂けた領域を含む請求項11に記載の太陽電池デバイス。
【請求項13】
パッシベーション層は、少なくとも30nmの膜厚を有する請求項11または12に記載の太陽電池デバイス。
【請求項14】
パッシベーション層は、2nmと30nmの間の範囲の膜厚を有するAlを含む第1層と、70nmと300nmの間の範囲の膜厚を有するSiNまたはSiOを含む第2層とを含む請求項13に記載の太陽電池デバイス。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14a】
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【図14b】
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【公開番号】特開2012−160732(P2012−160732A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−16884(P2012−16884)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】