部分的に厚い肩回旋筋腱板を修復するためのカニューレシステム及び方法
【課題】腱等の軟組織を通した骨への改善されたアクセスを提供する。
【解決手段】経軟組織アンカー埋植システムは、組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、軟組織を通過するためのカニューレと、縫合糸アンカー10と、を含む。カニューレを通る軸方向のルーメン18と、薄壁の遠位部分と、遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外表面の少なくとも一部分にある、弓状の溝等の組織と係合し、腱等の組織が溝に入り込んで拡張し、外科医がカニューレで組織を操作することを可能にする。
【解決手段】経軟組織アンカー埋植システムは、組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、軟組織を通過するためのカニューレと、縫合糸アンカー10と、を含む。カニューレを通る軸方向のルーメン18と、薄壁の遠位部分と、遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外表面の少なくとも一部分にある、弓状の溝等の組織と係合し、腱等の組織が溝に入り込んで拡張し、外科医がカニューレで組織を操作することを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、軟組織を骨に修復させる、特に部分的に厚い肩回旋筋腱板断裂の修復を行うシステム及び方法に関する。
【0002】
特に運動選手の間でよく起こるけがは、骨から腱、靭帯又は他の軟組織が、完全に又は部分的に剥離してしまうことである。組織剥離は、過度な運動による転倒中に、又は様々な他の理由で起こり得る。特に、組織が関連する骨からほとんど、又は完全に剥離した場合、外科的処置がしばしば必要となる。組織付着用に現在利用可能なデバイスには、ねじ、ステープル、縫合糸アンカー及びタックが挙げられる。
【0003】
関節鏡下での組織付着は肩回旋筋腱板で一般に行なわれ、不安定性の手技に少なくとも1つのカニューレが用いられる。典型的には、縫合糸が装填されたアンカーを挿入具タイプのデバイスを使用して、骨に固定させる。縫合糸は、アイレットを通って、又はポストを周回して、アンカーに通常摺動可能に付けられ、その結果、1本の縫合糸は2つの自由なリムを有する。縫合糸リムは、挿入具の外部に沿って、通常溝内、若しくは他の外部のチャンネル内に、又は挿入具の内部に、典型的には保持される。アンカーが骨に挿入された後、縫合糸の1つのリムは、腱又は関節唇等の修復される軟組織に貫通される。次に、縫合糸の2つの端が互いに結ばれ、それによって、アンカーを用いて軟組織がループ内に捕獲される。ループを締めることで、軟組織はアンカーによって骨に近づく。
【0004】
PASTA(腱板関節面部分断裂、腱板関節側部分断裂としても知られる)肩の回旋筋腱板の病変は、特に修復が困難であり得る。肩回旋筋腱板は、肩を取り囲む筋肉の群と上腕頭にこれら筋肉を付着させる腱とを含む。腱は上腕頭に付着するフットプリントを有し、PASTA病変では、肩回旋筋腱板のフットプリントの関節側の一部分が上腕頭から剥離する。かかる病変は、棘上筋腱において最も一般的に見られる。
【0005】
治療法の1つの選択肢は、全層断裂のための標準的な技術を用いて部分断裂を行い、修復を完成することである。したがって、既存の健全な組織付着の温存は失われ、全腱を再付着させなければならない。別の選択肢には、ねじ付きの縫合糸アンカーを腱を通過させて上腕頭の中にねじで留め、縫合糸を腱を通して腱に縛り付けて、再付着させることが挙げられる。これは、腱に更なる外傷を引き起こす。
【0006】
軟組織を過度に損傷させることなく、軟組織を経由したアクセスを外科医に提供することが、長年にわたって切実に必要とされてきた。放射状に延長可能な拡張器を含む多くの初期のアクセスデバイスは、Dubrulらによって米国特許第5,431,676号に開示される。皮膚を通して開口部を形成する器具は、Jacksonらによって米国特許第4,716,901号に説明される。
【0007】
より最近のカニューレデバイスは、Putzによって米国特許公開公報第2003/0073934号に開示される。側面に隙間を有する2つのカニューレは、側面の隙間が並列されずに整合され、プローブの通路を画定する。次に、カニューレは互いに相対して回転され、プローブからの分離を円滑化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、骨にアクセス中に軟組織への外傷を最小限にする改善されたカニューレシステムを有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、腱等の軟組織を通した骨への改善されたアクセスを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、軟組織の操作を向上させることである。
【0011】
本発明は、一実施形態では、組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤ、経軟組織のカニューレ、及び縫合糸アンカーを含む、経軟組織アンカー埋植システムを特徴とする。カニューレは、少なくとも位置決めワイヤを収容できる寸法である、カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁で好ましくは鋭い遠位部分と、好ましくは遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外表面の少なくとも一部分にある、弓状の溝、へこみ又は他の凹部等の組織と係合する特徴と、を有する。腱等の組織が溝の中に入り込んで拡張し、外科医がカニューレで組織を操作することを可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、システムは、一実施形態では鋭く、他の実施形態では鈍い、遠位先端部を有する栓子を更に含む。好ましくは、栓子は、長手方向軸を有し、位置決めワイヤを収容できる寸法である中央ルーメンを含み、栓子の遠位先端部は、中央ルーメンの長手方向軸から横方向にオフセットされる。好ましくは、オフセットは、中央ルーメンの公称半径内にとどまる。
【0013】
更に、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分、及び第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分、を有するカニューレであって、第1及び第2の湾曲状の区分は、第2の区分が第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から、カニューレを通るカニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと、互いに対して移動が可能であることを特徴とする。
【0014】
特定の実施形態では、弓状の溝等の少なくとも1つの組織と係合する特徴は、第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの少なくとも一部分上に画定される。一実施形態では、組織と係合する特徴の少なくとも一部分は、最初の構成で組織に対して保護され、第2の構成で組織に露出される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つは、その遠位部分の遠位端から離れて延びる近位方向に、軟組織との最初の接触の表面積が段階的に増加し、次に軟組織の中を貫通する、角度を有する遠位表面を有し、かつ第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する。
【0015】
本発明は、骨に所望のアンカーを受け入れる部位を探し出し、探し出しワイヤをアンカーを受け入れる部位で軟組織に通して少なくとも骨の上まで通し、カニューレを、探し出しワイヤに被せて軟組織に通すステップであって、カニューレが、薄壁の遠位部分と、位置決めワイヤを収容できる寸法である、カニューレを通る軸方向のルーメンと、を含む、ことによって軟組織を通って骨の中に縫合糸アンカーを通す方法を更に特徴とする。方法は、薄壁の遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外側表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴を用いて軟組織の一部分と係合させ、次に組織をカニューレで操作すること更に含む。縫合糸アンカーをカニューレを通して進ませ、アンカー部位で骨の中に留置する。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、カニューレの第2の湾曲状の区分がカニューレの第1の湾曲状の区分内に入れ子になった状態で軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成である間に、カニューレを組織を通して進ませることを含む。次に、第1及び第2の湾曲状の区分は、カニューレを通るカニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成に互いに対して移動される。特定の実施形態では、方法は、第1及び第2の湾曲状の区分が第2の構成に移動された後、カニューレを用いて組織を操作することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【図1】新規の縫合糸アンカーの斜視図。
【図2】ねじ回しに装填された図1の縫合糸アンカーの側面図。
【図3】図1の縫合糸アンカーの頂面図。
【図4】Kワイヤが腱を通って縫合糸アンカーを留置するのに望ましい位置まで挿入されているところを示す、上腕骨、及びPASTA病変を患う関連する肩回旋筋腱板の腱の側面図。
【図5】Kワイヤに被せて腱に貫通させる新規のカニューレシステムを示す図4の腱の側面図。
【図6】図5のカニューレシステムの斜視図。
【図6A】図6のカニューレシステムの遠位部分の拡大側面図。
【図6B】図6Aのカニューレシステムの断面図。
【図6C】Kワイヤが抜去された状態の、図6Bと類似する図。
【図7】縫合糸アンカーが、図2に示されるようなねじ回しに装填された状態でカニューレシステムの外側部分を経由して腱を貫通している図4の腱の側面図。
【図8】縫合糸アンカーが腱の下の上腕骨の中に埋植され、縫合糸リムが縫合糸アンカーから前方のカニューレの外へ出ているところを示す、図4の腱の側面図。
【図9】脊髄針が腱の位置を貫通し、縫合糸回収装置が脊髄針を通って前方のカニューレの外へ出ているところを示す、図4の腱の側面図。
【図10】縫合糸リムの双方が縫合糸アンカーから異なる位置で腱を通るところを示す、図4の腱の側面図。
【図11】縫合糸リムが一緒に結ばれ、腱が上腕骨に締め付けられ、PASTA病変の修復が達成されるところを示す、図4の腱の側面図。
【図12】本発明によるカニューレの別の実施形態の遠位部分の斜視図。
【図13】図12のカニューレの遠位部分の断面の側面図。
【図14】図12のカニューレを備えた栓子の斜視図。
【図15】腱を操作するために腱を通って進み係合する、図12のカニューレの遠位部分の部分的側断面。
【図16】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図17】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図18】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図19】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図20】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図21】相対回転が可能である第1及び第2の湾曲状の区分を有する、本発明によるカニューレの概略斜視図。
【図22】腱に対して第1及び第2の構成の状態の、図21のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【図23】腱に対して第1及び第2の構成の状態の、図21のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【図24A】図22及び23の概略下面図。
【図24B】図22及び23の概略下面図。
【図24C】図22及び23の概略下面図。
【図25】本発明による別の複数の区分のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【図26】本発明による別の複数の区分のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、1つの構成体で、組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、軟組織を通過するためのカニューレと、縫合糸アンカーと、を含む経軟組織アンカー埋植システムによって達成することができる。カニューレは、少なくとも位置決めワイヤを収容できる寸法の、カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁で好ましくは鋭い遠位部分と、好ましくは遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外表面の少なくとも一部分にある、弓状の溝、へこみ又は他の凹部等の組織と係合する特徴と、を有する。腱等の組織が溝に入り込んで拡張し、外科医がカニューレで組織を操作することを可能にする。本発明による組織と係合する特徴を備えるカニューレは、図12から始まる図で示される。本発明による第1及び第2の湾曲状の区分を備えるカニューレは、図21から始まる図で例示され、第2の区分が第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で、軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する。
【0019】
図1は、尖った遠位先端部14及び近位端16を有する細長い本体12を用いて、新規のカニューレシステム及び方法で使用する新規の縫合糸アンカー10を示す。軸方向通路18は、近位端16から本体12の中を延びる。通路18は、本体の側面20に沿って開かれる。ねじ山22は、本体12を取り囲む。縫合糸ブリッジ又はポスト24(図2参照)は、遠位部26において通路18に横方向に広がる。
【0020】
ここで図2及び図3を参照すると、挿入具28は、通路18に嵌入する。ある長さの縫合糸30は、縫合糸ブリッジ24を周回して、挿入具28上の長手方向溝32の中に受け入れられる。図3に最も良く示されるように、近位端16における通路18の断面形状は、本質的に六角形34であり、その対向隅部に一対の縫合糸通路36を備える。縫合糸通路36は、縫合糸ブリッジ24の両側に通じる。挿入具28は、六角形34に嵌合するように相補型形状を有し、挿入具の溝32は、アンカー10の縫合糸通路36と一直線上にある。
【0021】
図示の縫合糸アンカー10は、縫合糸通路36が本体12を貫通し、ねじ山22を除く通路18が開かれたままの状態であり、断面積を最小限にし、通過する軟組織への外傷を最小にする一方で、ねじ回し28が骨の中に打ち込まれるのに十分な機械的強度を有する。骨内で更なる固定強度が必要な場合は、アンカー10の断面積を大きくすることが可能であり、その場合、縫合糸通路36は必ずしも本体12を横方向に貫通する必要はない。アンカー10は、ステンレス鋼、チタン、コバルト・クロム、PEEK(ポリアリールエーテルエーテルケトン)、Biocryl Rapideポリマー、その他の生体適合性ポリマー、高分子セラミック複合材料、生体吸収性高分子等などの任意の好適な生体適合性材料から形成されることができる。好適なアンカー材料及び構成は、Cauldwellらによって米国特許公開公報第2008/0147063号に開示されるもの、及びLizardiによって米国特許第7,381,213号に開示されるものを含み、それら双方の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
図4〜11は、図1の縫合糸アンカー10、及び新規のカニューレシステム48を使用してPASTA病変を修復するための手技を例示する。図4に示されるように、経皮的又は関節鏡視下のいずれかで、一種の位置決めワイヤ、又は探し出しワイヤとしても知られるキルシュナー鋼線(Kワイヤ)38が、第1の位置39において、肩回旋筋腱板の腱40を通してその付着フットプリント44の下の所望のアンカー部位42まで挿入され、関連上腕頭46の上に位置決めされる。Kワイヤ38は、骨の中に穿刺され、又は部位42に単に位置決めされ、つまり、所望の位置で少なくとも骨の上に位置決めされる。Kワイヤ38の操作を簡単にするために、その外表面は、非平滑化されるのが好ましく、取り外し可能な近位ハンドル(図示せず)が備わっていてよい。上腕頭46上のこの部位42は、縫合糸アンカー10(図1参照)が埋植される部位である。
【0023】
図5に示されるように、カニューレシステム48を、Kワイヤ38に被せて腱40に貫通させて部位42まで通す。図6は、図6A〜Cに例示する遠位部分の拡大図を用いて、カニューレ48をより詳細に示している。カニューレ48は、鋭い遠位部52を有する内部カニューレ50と、近位ハンドル54と、カニューレを貫通するルーメン56とを含む(図6C参照)。内部カニューレ50は、遠位端60と、近位ハンドル62と、カニューレを貫通するルーメン64とを有する外部カニューレ58に嵌合する。内部カニューレ50の遠位部分52は、外部カニューレ58の遠位端60をわずかに越えて延び、遠位端60は先細になっており、腱40を通芯するのではなく、遠位部分52が小さい孔を形成し、遠位部分52及び遠位端60の先細によって、腱40への損傷を最小限にして、つまり、軟組織をあまり切断することなく、カニューレシステム48が組織を脇へ押しやって、腱40を通ってより小さい孔を形成することを可能にする。従来のカニューレは、スリットカットを通って組織の中に挿入された。組織への外傷をできるだけ少なくするために、カニューレシステム48は、徐々に組織を広げる。外部カニューレ58は、貫通深度を可視的に示す線66と、更にアンカーの挿入及び骨の中への適切な深さの評価を補助する可視化窓68とを有する。挿入中に外部カニューレ58に対して内部カニューレ50が滑るのを防止するために、これらを一緒にしておくのに役立つ手だてが好ましくは施される。図示されているのは連結ナブ70及び溝72であるが、摩擦嵌め、ねじ込み、磁石等などのその他の選択肢も用いられる。
【0024】
図7に示されるように、アンカー10の挿入に備えて、Kワイヤ38及び内部カニューレ50が抜去されて、アンカー部位42に位置決めされた外部カニューレ58が残される。縫合糸30が縫合糸ブリッジ24を周回して定位置に配置され縫合糸通路36及び溝32を通った状態で(図2参照)挿入具28に予め装填された縫合糸アンカー10は、外部カニューレのルーメン60を下方に通ってアンカー部位42まで進められ、次に上腕頭46の中に打ち込まれる。アンカー10が、ステンレス鋼又はチタンなどの生体適合性金属で形成されている場合、アンカー10は挿入具28を介して簡単にねじ込まれることができる。代わりに、アンカー10が、生体吸収性高分子又は強度の弱いその他の材料で形成されている場合、ルーメン60を通してアンカー10を挿入する前に、ドリル、タップ又は千枚通しを使用するなどして、カニューレ46を通して部位42にパイロット孔を準備する必要がある。次に、挿入具28及び外部カニューレ58を、カニューレ48が通された第1の位置39において、腱40を上方に通って抜去することができ、第1及び第2の縫合糸リム74及び76がそれぞれ残される。図8に示されるように、次に、第1の縫合糸リム74が、捕捉器具(図示せず)を介するなどして、補助カニューレ78を通して回収される。
【0025】
図9に示されるように、第1の位置39から離間した第2の位置82において、脊髄針80が腱40を通って進む。第1の縫合糸リム74が縫合糸捕捉ループ86に挿通されることができるように、縫合糸捕捉ループ86を有する可撓性の針金縫合糸捕捉装置84(例えば、DePuy Mitek,Inc.(Raynham,MA)から入手可能なChia Percpasser)を脊髄針80に通して、補助カニューレ78を通して外に回収する。脊髄針80及び縫合糸捕捉装置84が皮膚を通って引き戻されると、第1の縫合糸リム74が第2の位置82において腱40を通して引っ張られる。迅速に手技を進めるために、ここで第1及び第2の縫合糸リム74及び76を一緒に結び、腱40を縛り付ける。しかしながら、図10に示されるように、第2の縫合糸リム76を第1の位置39の反対側にある第3の位置88で腱40を通って進めて、図8及び図9の手技を繰り返すのが好ましい。糸結びを簡単にするために、縫合糸リム74及び76の両方は、補助カニューレ78又はその他のポータルなどの単一ポータルの中を通って経皮的に引き出されるのが好ましい。次に、図11に示されるように、腱40を上腕頭46にしっかりと固定させるために、結び目90を結んで縛り付ける。第1の位置39の反対側にある位置82及び88において縫合糸リム74及び76を腱40に通すことによって、カニューレシステム48が通されることによってその部位に生じた欠損は、結び目90が締め付けられるときに自然に互いに引き合わせられる。
【0026】
PASTA病変の程度に応じて、腱40の下に2つ以上の縫合糸アンカー10を留置するのが望ましい場合がある。このような場合、アンカー10から出ている縫合糸リムを一緒に結ぶことができる。好ましくはマットレスパターンにそれらを結ぶ前に、図9及び図10に例示されるような別個の位置において縫合糸リムを腱に通すのが更に好ましい。2つの縫合糸アンカーを用いる1つの手技は、以下の図16〜20で例示される。更に、修復は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWhittakerらによって米国公開出願第2008/0033486号に開示されているような1つ以上の結び目のない縫合糸アンカー(図示せず)を使用して、腱40の横方向の位置92に留置して形成されることができ、1つ以上のアンカー10からの縫合糸リム74及び76は、好ましくは同様にマットレスパターンを用いてdual row法で通すことができる。横方向のアンカーが用いられる場合、dual row法の1つの方法は、一対の本発明の縫合糸アンカー10を前方と後方に置き、それぞれから1つのリム74を互いに結び、もう一方のリム76を横方向のアンカーに、好ましくは無結節で、わたして、三角形を形成する。
【0027】
縫合糸アンカー10及びカニューレシステム48はまた、SLAP(肩関節窩上関節唇複合損傷)病変を修復するために使用されてもよい。典型的には、従来のかなり大きなカニューレ(7〜8mm)が肩回旋筋腱板を通して留置され、SLAPを修復するために上方関節唇にアクセスする。本発明のカニューレシステムはかなり小さく、また大きなスリットを通って挿入されるのではなく組織を拡張する傾向があるため、肩回旋筋腱板に与える外傷はより少ない。そのような手技は、Kワイヤ38を挿入し、次に、前述の方法でカニューレシステム48を腱板間隙部を通して挿入し、関節窩周縁にドリルで孔を開けて、アンカー10を挿入し、カニューレシステム48を抜去し、縫合糸シャトルを使用して縫合糸を関節唇に通し、結び目を結ぶステップであり得る。
【0028】
手技は、皮膚経由のアクセス、及び腱40経由のアクセスの双方を提供するカニューレシステム48を通して好都合に行なわれる。カニューレシステム48は、アンカー10が通るだけの寸法になっており、組織、特に腱40を操作するために機器を通すスペースはあまり残されていない。最適に狭い縫合糸アンカー10に関して説明したが、軟組織にアンカーを留置するためのカニューレシステム48及び軟組織を貫通する方法は、他のより大きな寸法のアンカーにも適しており、本発明による他のカニューレ構成体にも適している。例えば、システム及び方法は、DePuy Mitek,Inc.(Raynham,MA)から入手可能な、寸法が4mm以上のHEALIXアンカー又はGRYPHONアンカーを用いて行うことができる。
【0029】
図12及び13は、腱(図12及び13に図示せず)を操作する能力を組み入れる本発明によるカニューレ202の別の実施形態の遠位部分200を示す。少なくともカニューレ202の遠位部分及びシャフトは、ステンレス鋼などのメディカルグレードで滅菌可能な金属で形成される。遠位部分200の前縁は、外面が研削され、わずかに環状の面取り204を備え、好ましくは腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁206を作り出す。遠位部分200の前縁は更に、組織を貫通し易やすくするために非対称である。第1の角度208、好ましくは約20度で部分200全体が研削され、より鋭い先端210を作り出す。第2の角度212、好ましくは約45度で角度208の近位部分全体が研削され、一対のポイント214を作り出し、骨と係合し、遠位部分200が当接して定位置に保持されるのに役立つ。更に、特にカニューレ202が組織を通って進むときに回転される場合、必要に応じて、ある程度の切断動作をもたらす補助をし得る。カニューレ202の外表面の周りの環状溝215は、遠位部分200の近位に位置し、次に説明される組織との係合をもたらす。用語「溝」は、細長いくぼみ、チャンネル及び他の凹部を含むことが意図される。
【0030】
ここで図14もまた参照すると、栓子216は、カニューレ202内にぴったりと嵌合する寸法であり、この構成体でカニューレ202の拡大した近位カラー又はハンドル203と係合する。栓子216は、中心軸線218を有し、中心軸線218から横方向にオフセットされ、いくつかの構成体において鋭く他の構成体において鈍い、遠位先端部220で終端する。中央ルーメン222は、K−ワイヤ(図12〜14に図示せず)を受け入れるために栓子216を下行する。先端220を軸線からずらすことによって、ルーメン222に遮断されない。
【0031】
実施中、カニューレ202及び栓子216は、上述の手技と類似して動作する。K−ワイヤ、好ましくはトロカールタイプの先端を備える、は、皮膚及び腱を通して留置され、アンカー(図12〜14に図示せず)を留置する位置で下側の骨と係合する。栓子216及び遠位方向に延びる遠位先端部220を備えるカニューレ202を、K−ワイヤに被せて通す。栓子の遠位先端部220は、特に遠位先端部220が鈍い場合、K−ワイヤに沿って通過するときに主として組織を拡張し、カニューレ202の面取り204も同様に、組織を更に拡張する。したがって、カニューレ202及び栓子216は、組織からカニューレの大きさの孔を切断するのではなく、組織をほとんど取り除かずにカニューレを介して開口部を拡張させ、組織への損傷をより少なくし、手技後に組織が治癒しやすくする。
【0032】
ここで図15もまた参照すると、一旦カニューレ202が腱40を貫通すると、溝215が、組織の隆起217によって例示されるように、わずかに溝215に入り込んで拡張し、カニューレ202にしっかりとかつゆっくりと掛止する傾向がある腱40との係合をもたらし、その結果、外科医は、腱を損傷させることなく、腱を持ち上げて下側の骨の視覚化を向上させることができる。外科医が望む場合、腱40は骨を横切って所望の位置に移動させることができる。次に、カニューレ202を通して留置されるアンカーを用いて上述したように手技が終了する。他の構成体では、組織と係合する特徴は、隆起したリブ又は他の突起部である。しかしながら、軟組織への外傷を最小限にするために、突起部よりも溝の形が好ましい。突起部は、組織をより一層拡張する可能性があり、組織のより少ない拡張が概して好ましい。
【0033】
図16〜20は、上述の手技を用いて、少なくとも2つの縫合糸アンカー302及び310を使用して、それらの縫合糸アンカーがそれぞれ腱Tを通って、2つの所望の位置で上腕骨Hに挿入される、肩Sを修復する代替技術を例示する。アンカー302は縫合糸リム304及び306を摺動可能に保持し、一方でアンカー310は、縫合糸リム312及び314を保持する。関節鏡(図示せず)が、上腕骨Hの頭部の上方の肩峰下の空間に留置される。カニューレ300(図16参照)は、同じポータルに横方向に挿入され、肩峰下の減圧に使用される。1つの縫合糸リムは、リム306及び312等のカニューレ300を通してそれぞれのアンカーから回収される(図17参照)。クランプ320は縫合糸リムに留置され、結び目321はクランプ320に接して結ばれる。次に、腱Tで所望の張力が得られるまで、それぞれ矢印324及び326で示される他の縫合糸リム304及び314を引っ張ることによって、矢印322(図18参照)で示されるように、結び目321をカニューレ300を通して往復させる。次に、縫合糸リム304及び314は、関節鏡視下で、摺動しない結び目を用いて結び、縫合糸ブリッジ330(図20参照)を用いて腱Tを上腕骨Hに固定させて修復が完了する。必要に応じて、余分の縫合糸は、コードカッターで取り除かれてよい。
【0034】
本発明による他のシステムは、最初の切開を小さく行い、次にポータルを作るために拡張させて、好ましくは経腱で、軟組織を通して、所望の修復位置までカニューレを挿入しやすくする。好ましくは、カニューレは相互作用する複数の曲線状の部分又は区分を有し、最小侵襲性の方法で組織を通って挿入され、次に、回転される、つまり操作され、必要に応じて、軟組織を通って完全なポータルを作り出す。
【0035】
いくつかの構成体では、本発明によるカニューレシステムは、湾曲状の区分とも呼ばれる、複数の相互作用する薄壁の、好ましくは鋭い先端を有する、スリーブ、シリンダー又は管を有し、それらは、いくつかの構成体では、部分的に弧状であり、他の構成体では、遠位部分から一定の間隔をあけた断面で実質的に完全な弧状、完周のシリンダーである。最初の構成では、管の遠位部分は、軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する、半円、好ましくは実質的に半円、又は半円以下を形成するように整合され、軟組織を通して挿入され、軟組織を貫通して「半月」のような、三日月形状の切開部又は開口部を形成する。次に、カニューレ管は、軟組織を貫通して実質的に円形のポータルを形成するように操作される。次に、縫合糸アンカー、他のデバイス、又は機器が、カニューレシステムを通して進むことができる。使用終了後、システムは、好ましくは平らにされる、又は他の方法で最初の構成に戻されて、軟組織への外傷を最小限にしながら患者から抜去される。最初の小さい外形の相対的に小さい切開部は、したがって、カニューレを操作することによって拡張され、関節鏡用ポータルを形成する。
【0036】
図21及び22に最初の小さい外形構成で示される、本発明によるカニューレ400は、第1の外側の湾曲状の区分402、及び第1の区分402と概して共軸である第2の内側の湾曲状の区分404を有する。好ましくは、区分402及び404の少なくともシャフト及び遠位部分は、ステンレス鋼材などのメディカルグレードで滅菌可能な金属で形成される。矢印410及び412によって示されるように、生体適合性材料の把持部406は、第1の区分402の近位端の近くに位置し、把持部408は手動又はロボット化のどちらかで、区分402及び404の相対的な回転を補助するために、第2の区分404の近位端の近くに位置する。近位開口部414が第2の区分404に画定され、軸方向に延びるカニューレのルーメン420と連通する。図22及び23に拡大断面で示されるように、第1の区分402は、勾配付き縁427を備える遠位端426で終端する、角度を有する又は先細になった遠位部分422を有し、第2の区分404は、勾配付き縁429を備える遠位端428で終端する、角度を有する又は先細になった遠位部分424を有する。この構成体で、縁部427及び429は、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い。更にこの構成体で、遠位部分422及び424の双方は、弓状の溝430及び432をそれぞれ画定する。
【0037】
カニューレ400の第1及び第2の区分は、図22及び24Aに腱Tに対して最初の構成で示され、第2の拡張した構成は、図23及び24Bに示される。第1及び第2の遠位部分の両方は、遠位端426及び428から離れた進行を測定するときに弓状が段階的に増加、すなわち、遠位部分422及び424の両方は、角度を有する遠位表面を有し、軟組織との最初の接触の表面積が段階的に増加する。組織と係合する特徴432は、最初の構成で覆われ、拡張した構成で露出され、腱Tとの接触を増強し、外科医によるその組織の操作を容易にする。
【0038】
好ましくは、図24Cに例示されるように、カニューレ400を通したアクセス、及びカニューレ400を用いた操作が終了後、区分402及び404は、最初の構成に戻される。これによって、カニューレ400が患者から抜去されるとき、軟組織への更なる外傷が最小限になる。
【0039】
代替カニューレ500が、第1の湾曲状の区分502及び第2の湾曲状の区分504を有して、図25に最初の構成で、図26に拡張した構成で示される。この構成体で、カニューレ500が軟組織Tを通って進むとき、軟組織Tは、最初の構成によって完全に拡張される。第1及び第2の遠位部分522及び524の両方は、角度を有する遠位表面を有し、軟組織との最初の接触の表面積が段階的に増加するが、この構成で、第2の遠位端528だけが勾配付き縁を有する。第1の遠位端526は、単に薄壁である。
【0040】
本発明によるカニューレシステムが、PASTA修復を含む肩回旋筋腱板修復、及びSLAP修復を含む病変修復での使用が本明細書で説明されたが、それらは本発明を限定するものではない。他の肩の修復に好適な手技には、二頭筋腱固定術、バンカート修復、肩峰鎖骨剥離の修復、三角筋肉の修復、関節包移動及び関節包唇の再建が挙げられる。足及び足首の好適な手技には、横方向の安定化、内側の安定化、アキレス腱修復、足の中央の再建、外反母趾の修復、中足靭帯及び腱修復が挙げられる。膝の好適な手技には、内側側副靭帯修復、外側側副靭帯修復、後斜靭帯修復、及び腸脛靭帯腱固定が挙げられる。肘の好適な修復には、二頭筋腱再付着、橈−尺側副靭帯再建、及び外側上顆炎修復が挙げられる。手首の好適な手技には、舟状月状靭帯再建が挙げられ、股関節部の好適な手技には、関節包修復及び寛骨臼唇修復が挙げられる。
【0041】
本発明についてその特定の具体的な実施形態と関連して具体的に説明してきたが、これは、説明を目的とするためのものであって、限定を目的とするものではなく、また、添付の特許請求の範囲は、先行技術で認められるのと同程度に広義に解釈されるべきであることを理解すべきである。したがって、本発明の基礎となる新規な特徴を、本発明の好ましい実施形態に適用されるように図示し、説明し、指摘したが、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、例示された装置の形と詳細並びにその操作の様々な省略、代用及び変更を行うことができることを理解するであろう。例えば、本発明の範囲内と同様の結果を得るために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を行う要素及び/又は工程の全ての組み合わせが明確に意図される。ある記載された実施形態の要素を別の実施形態の要素に置換することも十分意図され、想到される。また、図面は必ずしも縮尺通りではないが、実際には単に概念的なものである。よって、添付の「請求項の範囲」によって示されている通りに限り限定されることが意図される。
【0042】
本明細書に引用される全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は任意の他の参照文献は、その全文が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、少なくとも前記位置決めワイヤを収容できる寸法である、前記カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁の遠位部分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
(2) 前記組織と係合する特徴が、弓状の溝である、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記カニューレの前記軸方向のルーメン内に受け入れられ、前記カニューレの遠位部分の遠位方向に延びる遠位先端部を有する栓子、を更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記栓子が、長手方向軸を有し、前記位置決めワイヤを収容できる寸法である中央ルーメンを有し、前記栓子の遠位先端部が、前記中央ルーメンの前記長手方向軸から横方向にオフセットされる、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記栓子の前記遠位先端部が、鋭く、かつ前記カニューレの前記遠位部分が、鋭い、実施態様4に記載のシステム。
(6) 軟組織を通って骨の中に縫合糸アンカーを通す方法であって、
前記骨上に所望のアンカーを受け入れる部位を探し出すステップと、
探し出しワイヤを前記アンカーを受け入れる部位で前記軟組織に通して少なくとも前記骨の上まで通すステップと、
カニューレを、前記探し出しワイヤに被せて前記軟組織に通すステップであって、前記カニューレが、薄壁の遠位部分と、少なくとも前記位置決めワイヤを収容できる寸法である、前記カニューレを通る軸方向のルーメンと、を含む、ステップと、
前記軟組織の一部分を、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と係合させて、次に、前記組織を前記カニューレで操作するステップと、
前記縫合糸アンカーを前記カニューレを通して進ませて、前記アンカー部位で前記骨の中に前記縫合糸アンカーを留置させるステップと、を含む方法。
(7) 前記軟組織の前記一部分が、腱を含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記操作するステップが、前記腱を移動させて前記腱の下側の視覚化を向上させることを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記位置決めワイヤに沿って前記軟組織を通過するためのカニューレであって、前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
(10) 前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、実施態様9に記載のシステム。
【0044】
(11) 経軟組織アクセスシステムであって、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、を含み、前記第1及び第2の湾曲状の区分は、前記第2の区分が前記第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から、前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である、前記カニューレを含む、システム。
(12) 前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴を、更に含む、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記組織と係合する特徴の少なくとも一部分が、前記最初の構成で前記組織に対して保護され、前記第2の構成で前記組織に露出される、実施態様12に記載のシステム。
(15) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、その遠位部分の遠位端から離れて延びる近位方向に、前記軟組織との最初の接触及び貫通の表面積が段階的に増加する、角度を有する遠位表面を有する、実施態様11に記載のシステム。
(16) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する、実施態様11に記載のシステム。
(17) 軟組織を通って骨の中に縫合糸アンカーを通す方法であって、
前記骨上に所望のアンカーを受け入れる部位を探し出すステップと、
探し出しワイヤを前記アンカーを受け入れる部位で前記軟組織に通して少なくとも前記骨の上まで通すステップと、
カニューレを、前記探し出しワイヤに被せて前記軟組織に通すステップであって、前記カニューレが、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、を含み、前記第1及び第2の湾曲状の区分は、前記第2の区分が前記第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成で互いに対して位置決めされる、ステップと、
前記第1及び第2の湾曲状の区分を前記最初の小さい外形構成から、前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動させるステップと、
前記縫合糸アンカーを前記カニューレを通して進ませて、前記アンカー部位で前記骨の中に前記縫合糸アンカーを留置させるステップと、を含む方法。
(18) 前記カニューレが、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面にある組織と係合する特徴を更に含み、前記方法は、前記軟組織の一部分を、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面にある組織と係合する特徴と係合させて、次に、前記組織を前記カニューレで操作するステップを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記組織と係合する特徴の少なくとも一部分は、前記最初の構成で前記組織に対して保護され、前記第2の構成で前記組織に露出される、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、実施態様18に記載の方法。
【0045】
(21) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、角度を有する遠位表面を有し、前記軟組織との前記最初の接触の表面積が段階的に増加する、実施態様17に記載の方法。
(22) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する、実施態様17に記載の方法。
【背景技術】
【0001】
本出願は、軟組織を骨に修復させる、特に部分的に厚い肩回旋筋腱板断裂の修復を行うシステム及び方法に関する。
【0002】
特に運動選手の間でよく起こるけがは、骨から腱、靭帯又は他の軟組織が、完全に又は部分的に剥離してしまうことである。組織剥離は、過度な運動による転倒中に、又は様々な他の理由で起こり得る。特に、組織が関連する骨からほとんど、又は完全に剥離した場合、外科的処置がしばしば必要となる。組織付着用に現在利用可能なデバイスには、ねじ、ステープル、縫合糸アンカー及びタックが挙げられる。
【0003】
関節鏡下での組織付着は肩回旋筋腱板で一般に行なわれ、不安定性の手技に少なくとも1つのカニューレが用いられる。典型的には、縫合糸が装填されたアンカーを挿入具タイプのデバイスを使用して、骨に固定させる。縫合糸は、アイレットを通って、又はポストを周回して、アンカーに通常摺動可能に付けられ、その結果、1本の縫合糸は2つの自由なリムを有する。縫合糸リムは、挿入具の外部に沿って、通常溝内、若しくは他の外部のチャンネル内に、又は挿入具の内部に、典型的には保持される。アンカーが骨に挿入された後、縫合糸の1つのリムは、腱又は関節唇等の修復される軟組織に貫通される。次に、縫合糸の2つの端が互いに結ばれ、それによって、アンカーを用いて軟組織がループ内に捕獲される。ループを締めることで、軟組織はアンカーによって骨に近づく。
【0004】
PASTA(腱板関節面部分断裂、腱板関節側部分断裂としても知られる)肩の回旋筋腱板の病変は、特に修復が困難であり得る。肩回旋筋腱板は、肩を取り囲む筋肉の群と上腕頭にこれら筋肉を付着させる腱とを含む。腱は上腕頭に付着するフットプリントを有し、PASTA病変では、肩回旋筋腱板のフットプリントの関節側の一部分が上腕頭から剥離する。かかる病変は、棘上筋腱において最も一般的に見られる。
【0005】
治療法の1つの選択肢は、全層断裂のための標準的な技術を用いて部分断裂を行い、修復を完成することである。したがって、既存の健全な組織付着の温存は失われ、全腱を再付着させなければならない。別の選択肢には、ねじ付きの縫合糸アンカーを腱を通過させて上腕頭の中にねじで留め、縫合糸を腱を通して腱に縛り付けて、再付着させることが挙げられる。これは、腱に更なる外傷を引き起こす。
【0006】
軟組織を過度に損傷させることなく、軟組織を経由したアクセスを外科医に提供することが、長年にわたって切実に必要とされてきた。放射状に延長可能な拡張器を含む多くの初期のアクセスデバイスは、Dubrulらによって米国特許第5,431,676号に開示される。皮膚を通して開口部を形成する器具は、Jacksonらによって米国特許第4,716,901号に説明される。
【0007】
より最近のカニューレデバイスは、Putzによって米国特許公開公報第2003/0073934号に開示される。側面に隙間を有する2つのカニューレは、側面の隙間が並列されずに整合され、プローブの通路を画定する。次に、カニューレは互いに相対して回転され、プローブからの分離を円滑化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、骨にアクセス中に軟組織への外傷を最小限にする改善されたカニューレシステムを有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、腱等の軟組織を通した骨への改善されたアクセスを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、軟組織の操作を向上させることである。
【0011】
本発明は、一実施形態では、組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤ、経軟組織のカニューレ、及び縫合糸アンカーを含む、経軟組織アンカー埋植システムを特徴とする。カニューレは、少なくとも位置決めワイヤを収容できる寸法である、カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁で好ましくは鋭い遠位部分と、好ましくは遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外表面の少なくとも一部分にある、弓状の溝、へこみ又は他の凹部等の組織と係合する特徴と、を有する。腱等の組織が溝の中に入り込んで拡張し、外科医がカニューレで組織を操作することを可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、システムは、一実施形態では鋭く、他の実施形態では鈍い、遠位先端部を有する栓子を更に含む。好ましくは、栓子は、長手方向軸を有し、位置決めワイヤを収容できる寸法である中央ルーメンを含み、栓子の遠位先端部は、中央ルーメンの長手方向軸から横方向にオフセットされる。好ましくは、オフセットは、中央ルーメンの公称半径内にとどまる。
【0013】
更に、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分、及び第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分、を有するカニューレであって、第1及び第2の湾曲状の区分は、第2の区分が第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から、カニューレを通るカニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと、互いに対して移動が可能であることを特徴とする。
【0014】
特定の実施形態では、弓状の溝等の少なくとも1つの組織と係合する特徴は、第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの少なくとも一部分上に画定される。一実施形態では、組織と係合する特徴の少なくとも一部分は、最初の構成で組織に対して保護され、第2の構成で組織に露出される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つは、その遠位部分の遠位端から離れて延びる近位方向に、軟組織との最初の接触の表面積が段階的に増加し、次に軟組織の中を貫通する、角度を有する遠位表面を有し、かつ第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する。
【0015】
本発明は、骨に所望のアンカーを受け入れる部位を探し出し、探し出しワイヤをアンカーを受け入れる部位で軟組織に通して少なくとも骨の上まで通し、カニューレを、探し出しワイヤに被せて軟組織に通すステップであって、カニューレが、薄壁の遠位部分と、位置決めワイヤを収容できる寸法である、カニューレを通る軸方向のルーメンと、を含む、ことによって軟組織を通って骨の中に縫合糸アンカーを通す方法を更に特徴とする。方法は、薄壁の遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外側表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴を用いて軟組織の一部分と係合させ、次に組織をカニューレで操作すること更に含む。縫合糸アンカーをカニューレを通して進ませ、アンカー部位で骨の中に留置する。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、カニューレの第2の湾曲状の区分がカニューレの第1の湾曲状の区分内に入れ子になった状態で軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成である間に、カニューレを組織を通して進ませることを含む。次に、第1及び第2の湾曲状の区分は、カニューレを通るカニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成に互いに対して移動される。特定の実施形態では、方法は、第1及び第2の湾曲状の区分が第2の構成に移動された後、カニューレを用いて組織を操作することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【図1】新規の縫合糸アンカーの斜視図。
【図2】ねじ回しに装填された図1の縫合糸アンカーの側面図。
【図3】図1の縫合糸アンカーの頂面図。
【図4】Kワイヤが腱を通って縫合糸アンカーを留置するのに望ましい位置まで挿入されているところを示す、上腕骨、及びPASTA病変を患う関連する肩回旋筋腱板の腱の側面図。
【図5】Kワイヤに被せて腱に貫通させる新規のカニューレシステムを示す図4の腱の側面図。
【図6】図5のカニューレシステムの斜視図。
【図6A】図6のカニューレシステムの遠位部分の拡大側面図。
【図6B】図6Aのカニューレシステムの断面図。
【図6C】Kワイヤが抜去された状態の、図6Bと類似する図。
【図7】縫合糸アンカーが、図2に示されるようなねじ回しに装填された状態でカニューレシステムの外側部分を経由して腱を貫通している図4の腱の側面図。
【図8】縫合糸アンカーが腱の下の上腕骨の中に埋植され、縫合糸リムが縫合糸アンカーから前方のカニューレの外へ出ているところを示す、図4の腱の側面図。
【図9】脊髄針が腱の位置を貫通し、縫合糸回収装置が脊髄針を通って前方のカニューレの外へ出ているところを示す、図4の腱の側面図。
【図10】縫合糸リムの双方が縫合糸アンカーから異なる位置で腱を通るところを示す、図4の腱の側面図。
【図11】縫合糸リムが一緒に結ばれ、腱が上腕骨に締め付けられ、PASTA病変の修復が達成されるところを示す、図4の腱の側面図。
【図12】本発明によるカニューレの別の実施形態の遠位部分の斜視図。
【図13】図12のカニューレの遠位部分の断面の側面図。
【図14】図12のカニューレを備えた栓子の斜視図。
【図15】腱を操作するために腱を通って進み係合する、図12のカニューレの遠位部分の部分的側断面。
【図16】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図17】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図18】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図19】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図20】2つの縫合糸アンカーが、本発明にしたがって骨の中に挿入された後、縫合糸リムがカニューレを通して結ばれ、患者の肩の腱を固定させる状態の概略斜視図。
【図21】相対回転が可能である第1及び第2の湾曲状の区分を有する、本発明によるカニューレの概略斜視図。
【図22】腱に対して第1及び第2の構成の状態の、図21のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【図23】腱に対して第1及び第2の構成の状態の、図21のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【図24A】図22及び23の概略下面図。
【図24B】図22及び23の概略下面図。
【図24C】図22及び23の概略下面図。
【図25】本発明による別の複数の区分のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【図26】本発明による別の複数の区分のカニューレの遠位部分の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、1つの構成体で、組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、軟組織を通過するためのカニューレと、縫合糸アンカーと、を含む経軟組織アンカー埋植システムによって達成することができる。カニューレは、少なくとも位置決めワイヤを収容できる寸法の、カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁で好ましくは鋭い遠位部分と、好ましくは遠位部分に近位かつ隣接のカニューレの外表面の少なくとも一部分にある、弓状の溝、へこみ又は他の凹部等の組織と係合する特徴と、を有する。腱等の組織が溝に入り込んで拡張し、外科医がカニューレで組織を操作することを可能にする。本発明による組織と係合する特徴を備えるカニューレは、図12から始まる図で示される。本発明による第1及び第2の湾曲状の区分を備えるカニューレは、図21から始まる図で例示され、第2の区分が第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で、軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する。
【0019】
図1は、尖った遠位先端部14及び近位端16を有する細長い本体12を用いて、新規のカニューレシステム及び方法で使用する新規の縫合糸アンカー10を示す。軸方向通路18は、近位端16から本体12の中を延びる。通路18は、本体の側面20に沿って開かれる。ねじ山22は、本体12を取り囲む。縫合糸ブリッジ又はポスト24(図2参照)は、遠位部26において通路18に横方向に広がる。
【0020】
ここで図2及び図3を参照すると、挿入具28は、通路18に嵌入する。ある長さの縫合糸30は、縫合糸ブリッジ24を周回して、挿入具28上の長手方向溝32の中に受け入れられる。図3に最も良く示されるように、近位端16における通路18の断面形状は、本質的に六角形34であり、その対向隅部に一対の縫合糸通路36を備える。縫合糸通路36は、縫合糸ブリッジ24の両側に通じる。挿入具28は、六角形34に嵌合するように相補型形状を有し、挿入具の溝32は、アンカー10の縫合糸通路36と一直線上にある。
【0021】
図示の縫合糸アンカー10は、縫合糸通路36が本体12を貫通し、ねじ山22を除く通路18が開かれたままの状態であり、断面積を最小限にし、通過する軟組織への外傷を最小にする一方で、ねじ回し28が骨の中に打ち込まれるのに十分な機械的強度を有する。骨内で更なる固定強度が必要な場合は、アンカー10の断面積を大きくすることが可能であり、その場合、縫合糸通路36は必ずしも本体12を横方向に貫通する必要はない。アンカー10は、ステンレス鋼、チタン、コバルト・クロム、PEEK(ポリアリールエーテルエーテルケトン)、Biocryl Rapideポリマー、その他の生体適合性ポリマー、高分子セラミック複合材料、生体吸収性高分子等などの任意の好適な生体適合性材料から形成されることができる。好適なアンカー材料及び構成は、Cauldwellらによって米国特許公開公報第2008/0147063号に開示されるもの、及びLizardiによって米国特許第7,381,213号に開示されるものを含み、それら双方の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
図4〜11は、図1の縫合糸アンカー10、及び新規のカニューレシステム48を使用してPASTA病変を修復するための手技を例示する。図4に示されるように、経皮的又は関節鏡視下のいずれかで、一種の位置決めワイヤ、又は探し出しワイヤとしても知られるキルシュナー鋼線(Kワイヤ)38が、第1の位置39において、肩回旋筋腱板の腱40を通してその付着フットプリント44の下の所望のアンカー部位42まで挿入され、関連上腕頭46の上に位置決めされる。Kワイヤ38は、骨の中に穿刺され、又は部位42に単に位置決めされ、つまり、所望の位置で少なくとも骨の上に位置決めされる。Kワイヤ38の操作を簡単にするために、その外表面は、非平滑化されるのが好ましく、取り外し可能な近位ハンドル(図示せず)が備わっていてよい。上腕頭46上のこの部位42は、縫合糸アンカー10(図1参照)が埋植される部位である。
【0023】
図5に示されるように、カニューレシステム48を、Kワイヤ38に被せて腱40に貫通させて部位42まで通す。図6は、図6A〜Cに例示する遠位部分の拡大図を用いて、カニューレ48をより詳細に示している。カニューレ48は、鋭い遠位部52を有する内部カニューレ50と、近位ハンドル54と、カニューレを貫通するルーメン56とを含む(図6C参照)。内部カニューレ50は、遠位端60と、近位ハンドル62と、カニューレを貫通するルーメン64とを有する外部カニューレ58に嵌合する。内部カニューレ50の遠位部分52は、外部カニューレ58の遠位端60をわずかに越えて延び、遠位端60は先細になっており、腱40を通芯するのではなく、遠位部分52が小さい孔を形成し、遠位部分52及び遠位端60の先細によって、腱40への損傷を最小限にして、つまり、軟組織をあまり切断することなく、カニューレシステム48が組織を脇へ押しやって、腱40を通ってより小さい孔を形成することを可能にする。従来のカニューレは、スリットカットを通って組織の中に挿入された。組織への外傷をできるだけ少なくするために、カニューレシステム48は、徐々に組織を広げる。外部カニューレ58は、貫通深度を可視的に示す線66と、更にアンカーの挿入及び骨の中への適切な深さの評価を補助する可視化窓68とを有する。挿入中に外部カニューレ58に対して内部カニューレ50が滑るのを防止するために、これらを一緒にしておくのに役立つ手だてが好ましくは施される。図示されているのは連結ナブ70及び溝72であるが、摩擦嵌め、ねじ込み、磁石等などのその他の選択肢も用いられる。
【0024】
図7に示されるように、アンカー10の挿入に備えて、Kワイヤ38及び内部カニューレ50が抜去されて、アンカー部位42に位置決めされた外部カニューレ58が残される。縫合糸30が縫合糸ブリッジ24を周回して定位置に配置され縫合糸通路36及び溝32を通った状態で(図2参照)挿入具28に予め装填された縫合糸アンカー10は、外部カニューレのルーメン60を下方に通ってアンカー部位42まで進められ、次に上腕頭46の中に打ち込まれる。アンカー10が、ステンレス鋼又はチタンなどの生体適合性金属で形成されている場合、アンカー10は挿入具28を介して簡単にねじ込まれることができる。代わりに、アンカー10が、生体吸収性高分子又は強度の弱いその他の材料で形成されている場合、ルーメン60を通してアンカー10を挿入する前に、ドリル、タップ又は千枚通しを使用するなどして、カニューレ46を通して部位42にパイロット孔を準備する必要がある。次に、挿入具28及び外部カニューレ58を、カニューレ48が通された第1の位置39において、腱40を上方に通って抜去することができ、第1及び第2の縫合糸リム74及び76がそれぞれ残される。図8に示されるように、次に、第1の縫合糸リム74が、捕捉器具(図示せず)を介するなどして、補助カニューレ78を通して回収される。
【0025】
図9に示されるように、第1の位置39から離間した第2の位置82において、脊髄針80が腱40を通って進む。第1の縫合糸リム74が縫合糸捕捉ループ86に挿通されることができるように、縫合糸捕捉ループ86を有する可撓性の針金縫合糸捕捉装置84(例えば、DePuy Mitek,Inc.(Raynham,MA)から入手可能なChia Percpasser)を脊髄針80に通して、補助カニューレ78を通して外に回収する。脊髄針80及び縫合糸捕捉装置84が皮膚を通って引き戻されると、第1の縫合糸リム74が第2の位置82において腱40を通して引っ張られる。迅速に手技を進めるために、ここで第1及び第2の縫合糸リム74及び76を一緒に結び、腱40を縛り付ける。しかしながら、図10に示されるように、第2の縫合糸リム76を第1の位置39の反対側にある第3の位置88で腱40を通って進めて、図8及び図9の手技を繰り返すのが好ましい。糸結びを簡単にするために、縫合糸リム74及び76の両方は、補助カニューレ78又はその他のポータルなどの単一ポータルの中を通って経皮的に引き出されるのが好ましい。次に、図11に示されるように、腱40を上腕頭46にしっかりと固定させるために、結び目90を結んで縛り付ける。第1の位置39の反対側にある位置82及び88において縫合糸リム74及び76を腱40に通すことによって、カニューレシステム48が通されることによってその部位に生じた欠損は、結び目90が締め付けられるときに自然に互いに引き合わせられる。
【0026】
PASTA病変の程度に応じて、腱40の下に2つ以上の縫合糸アンカー10を留置するのが望ましい場合がある。このような場合、アンカー10から出ている縫合糸リムを一緒に結ぶことができる。好ましくはマットレスパターンにそれらを結ぶ前に、図9及び図10に例示されるような別個の位置において縫合糸リムを腱に通すのが更に好ましい。2つの縫合糸アンカーを用いる1つの手技は、以下の図16〜20で例示される。更に、修復は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWhittakerらによって米国公開出願第2008/0033486号に開示されているような1つ以上の結び目のない縫合糸アンカー(図示せず)を使用して、腱40の横方向の位置92に留置して形成されることができ、1つ以上のアンカー10からの縫合糸リム74及び76は、好ましくは同様にマットレスパターンを用いてdual row法で通すことができる。横方向のアンカーが用いられる場合、dual row法の1つの方法は、一対の本発明の縫合糸アンカー10を前方と後方に置き、それぞれから1つのリム74を互いに結び、もう一方のリム76を横方向のアンカーに、好ましくは無結節で、わたして、三角形を形成する。
【0027】
縫合糸アンカー10及びカニューレシステム48はまた、SLAP(肩関節窩上関節唇複合損傷)病変を修復するために使用されてもよい。典型的には、従来のかなり大きなカニューレ(7〜8mm)が肩回旋筋腱板を通して留置され、SLAPを修復するために上方関節唇にアクセスする。本発明のカニューレシステムはかなり小さく、また大きなスリットを通って挿入されるのではなく組織を拡張する傾向があるため、肩回旋筋腱板に与える外傷はより少ない。そのような手技は、Kワイヤ38を挿入し、次に、前述の方法でカニューレシステム48を腱板間隙部を通して挿入し、関節窩周縁にドリルで孔を開けて、アンカー10を挿入し、カニューレシステム48を抜去し、縫合糸シャトルを使用して縫合糸を関節唇に通し、結び目を結ぶステップであり得る。
【0028】
手技は、皮膚経由のアクセス、及び腱40経由のアクセスの双方を提供するカニューレシステム48を通して好都合に行なわれる。カニューレシステム48は、アンカー10が通るだけの寸法になっており、組織、特に腱40を操作するために機器を通すスペースはあまり残されていない。最適に狭い縫合糸アンカー10に関して説明したが、軟組織にアンカーを留置するためのカニューレシステム48及び軟組織を貫通する方法は、他のより大きな寸法のアンカーにも適しており、本発明による他のカニューレ構成体にも適している。例えば、システム及び方法は、DePuy Mitek,Inc.(Raynham,MA)から入手可能な、寸法が4mm以上のHEALIXアンカー又はGRYPHONアンカーを用いて行うことができる。
【0029】
図12及び13は、腱(図12及び13に図示せず)を操作する能力を組み入れる本発明によるカニューレ202の別の実施形態の遠位部分200を示す。少なくともカニューレ202の遠位部分及びシャフトは、ステンレス鋼などのメディカルグレードで滅菌可能な金属で形成される。遠位部分200の前縁は、外面が研削され、わずかに環状の面取り204を備え、好ましくは腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁206を作り出す。遠位部分200の前縁は更に、組織を貫通し易やすくするために非対称である。第1の角度208、好ましくは約20度で部分200全体が研削され、より鋭い先端210を作り出す。第2の角度212、好ましくは約45度で角度208の近位部分全体が研削され、一対のポイント214を作り出し、骨と係合し、遠位部分200が当接して定位置に保持されるのに役立つ。更に、特にカニューレ202が組織を通って進むときに回転される場合、必要に応じて、ある程度の切断動作をもたらす補助をし得る。カニューレ202の外表面の周りの環状溝215は、遠位部分200の近位に位置し、次に説明される組織との係合をもたらす。用語「溝」は、細長いくぼみ、チャンネル及び他の凹部を含むことが意図される。
【0030】
ここで図14もまた参照すると、栓子216は、カニューレ202内にぴったりと嵌合する寸法であり、この構成体でカニューレ202の拡大した近位カラー又はハンドル203と係合する。栓子216は、中心軸線218を有し、中心軸線218から横方向にオフセットされ、いくつかの構成体において鋭く他の構成体において鈍い、遠位先端部220で終端する。中央ルーメン222は、K−ワイヤ(図12〜14に図示せず)を受け入れるために栓子216を下行する。先端220を軸線からずらすことによって、ルーメン222に遮断されない。
【0031】
実施中、カニューレ202及び栓子216は、上述の手技と類似して動作する。K−ワイヤ、好ましくはトロカールタイプの先端を備える、は、皮膚及び腱を通して留置され、アンカー(図12〜14に図示せず)を留置する位置で下側の骨と係合する。栓子216及び遠位方向に延びる遠位先端部220を備えるカニューレ202を、K−ワイヤに被せて通す。栓子の遠位先端部220は、特に遠位先端部220が鈍い場合、K−ワイヤに沿って通過するときに主として組織を拡張し、カニューレ202の面取り204も同様に、組織を更に拡張する。したがって、カニューレ202及び栓子216は、組織からカニューレの大きさの孔を切断するのではなく、組織をほとんど取り除かずにカニューレを介して開口部を拡張させ、組織への損傷をより少なくし、手技後に組織が治癒しやすくする。
【0032】
ここで図15もまた参照すると、一旦カニューレ202が腱40を貫通すると、溝215が、組織の隆起217によって例示されるように、わずかに溝215に入り込んで拡張し、カニューレ202にしっかりとかつゆっくりと掛止する傾向がある腱40との係合をもたらし、その結果、外科医は、腱を損傷させることなく、腱を持ち上げて下側の骨の視覚化を向上させることができる。外科医が望む場合、腱40は骨を横切って所望の位置に移動させることができる。次に、カニューレ202を通して留置されるアンカーを用いて上述したように手技が終了する。他の構成体では、組織と係合する特徴は、隆起したリブ又は他の突起部である。しかしながら、軟組織への外傷を最小限にするために、突起部よりも溝の形が好ましい。突起部は、組織をより一層拡張する可能性があり、組織のより少ない拡張が概して好ましい。
【0033】
図16〜20は、上述の手技を用いて、少なくとも2つの縫合糸アンカー302及び310を使用して、それらの縫合糸アンカーがそれぞれ腱Tを通って、2つの所望の位置で上腕骨Hに挿入される、肩Sを修復する代替技術を例示する。アンカー302は縫合糸リム304及び306を摺動可能に保持し、一方でアンカー310は、縫合糸リム312及び314を保持する。関節鏡(図示せず)が、上腕骨Hの頭部の上方の肩峰下の空間に留置される。カニューレ300(図16参照)は、同じポータルに横方向に挿入され、肩峰下の減圧に使用される。1つの縫合糸リムは、リム306及び312等のカニューレ300を通してそれぞれのアンカーから回収される(図17参照)。クランプ320は縫合糸リムに留置され、結び目321はクランプ320に接して結ばれる。次に、腱Tで所望の張力が得られるまで、それぞれ矢印324及び326で示される他の縫合糸リム304及び314を引っ張ることによって、矢印322(図18参照)で示されるように、結び目321をカニューレ300を通して往復させる。次に、縫合糸リム304及び314は、関節鏡視下で、摺動しない結び目を用いて結び、縫合糸ブリッジ330(図20参照)を用いて腱Tを上腕骨Hに固定させて修復が完了する。必要に応じて、余分の縫合糸は、コードカッターで取り除かれてよい。
【0034】
本発明による他のシステムは、最初の切開を小さく行い、次にポータルを作るために拡張させて、好ましくは経腱で、軟組織を通して、所望の修復位置までカニューレを挿入しやすくする。好ましくは、カニューレは相互作用する複数の曲線状の部分又は区分を有し、最小侵襲性の方法で組織を通って挿入され、次に、回転される、つまり操作され、必要に応じて、軟組織を通って完全なポータルを作り出す。
【0035】
いくつかの構成体では、本発明によるカニューレシステムは、湾曲状の区分とも呼ばれる、複数の相互作用する薄壁の、好ましくは鋭い先端を有する、スリーブ、シリンダー又は管を有し、それらは、いくつかの構成体では、部分的に弧状であり、他の構成体では、遠位部分から一定の間隔をあけた断面で実質的に完全な弧状、完周のシリンダーである。最初の構成では、管の遠位部分は、軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する、半円、好ましくは実質的に半円、又は半円以下を形成するように整合され、軟組織を通して挿入され、軟組織を貫通して「半月」のような、三日月形状の切開部又は開口部を形成する。次に、カニューレ管は、軟組織を貫通して実質的に円形のポータルを形成するように操作される。次に、縫合糸アンカー、他のデバイス、又は機器が、カニューレシステムを通して進むことができる。使用終了後、システムは、好ましくは平らにされる、又は他の方法で最初の構成に戻されて、軟組織への外傷を最小限にしながら患者から抜去される。最初の小さい外形の相対的に小さい切開部は、したがって、カニューレを操作することによって拡張され、関節鏡用ポータルを形成する。
【0036】
図21及び22に最初の小さい外形構成で示される、本発明によるカニューレ400は、第1の外側の湾曲状の区分402、及び第1の区分402と概して共軸である第2の内側の湾曲状の区分404を有する。好ましくは、区分402及び404の少なくともシャフト及び遠位部分は、ステンレス鋼材などのメディカルグレードで滅菌可能な金属で形成される。矢印410及び412によって示されるように、生体適合性材料の把持部406は、第1の区分402の近位端の近くに位置し、把持部408は手動又はロボット化のどちらかで、区分402及び404の相対的な回転を補助するために、第2の区分404の近位端の近くに位置する。近位開口部414が第2の区分404に画定され、軸方向に延びるカニューレのルーメン420と連通する。図22及び23に拡大断面で示されるように、第1の区分402は、勾配付き縁427を備える遠位端426で終端する、角度を有する又は先細になった遠位部分422を有し、第2の区分404は、勾配付き縁429を備える遠位端428で終端する、角度を有する又は先細になった遠位部分424を有する。この構成体で、縁部427及び429は、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い。更にこの構成体で、遠位部分422及び424の双方は、弓状の溝430及び432をそれぞれ画定する。
【0037】
カニューレ400の第1及び第2の区分は、図22及び24Aに腱Tに対して最初の構成で示され、第2の拡張した構成は、図23及び24Bに示される。第1及び第2の遠位部分の両方は、遠位端426及び428から離れた進行を測定するときに弓状が段階的に増加、すなわち、遠位部分422及び424の両方は、角度を有する遠位表面を有し、軟組織との最初の接触の表面積が段階的に増加する。組織と係合する特徴432は、最初の構成で覆われ、拡張した構成で露出され、腱Tとの接触を増強し、外科医によるその組織の操作を容易にする。
【0038】
好ましくは、図24Cに例示されるように、カニューレ400を通したアクセス、及びカニューレ400を用いた操作が終了後、区分402及び404は、最初の構成に戻される。これによって、カニューレ400が患者から抜去されるとき、軟組織への更なる外傷が最小限になる。
【0039】
代替カニューレ500が、第1の湾曲状の区分502及び第2の湾曲状の区分504を有して、図25に最初の構成で、図26に拡張した構成で示される。この構成体で、カニューレ500が軟組織Tを通って進むとき、軟組織Tは、最初の構成によって完全に拡張される。第1及び第2の遠位部分522及び524の両方は、角度を有する遠位表面を有し、軟組織との最初の接触の表面積が段階的に増加するが、この構成で、第2の遠位端528だけが勾配付き縁を有する。第1の遠位端526は、単に薄壁である。
【0040】
本発明によるカニューレシステムが、PASTA修復を含む肩回旋筋腱板修復、及びSLAP修復を含む病変修復での使用が本明細書で説明されたが、それらは本発明を限定するものではない。他の肩の修復に好適な手技には、二頭筋腱固定術、バンカート修復、肩峰鎖骨剥離の修復、三角筋肉の修復、関節包移動及び関節包唇の再建が挙げられる。足及び足首の好適な手技には、横方向の安定化、内側の安定化、アキレス腱修復、足の中央の再建、外反母趾の修復、中足靭帯及び腱修復が挙げられる。膝の好適な手技には、内側側副靭帯修復、外側側副靭帯修復、後斜靭帯修復、及び腸脛靭帯腱固定が挙げられる。肘の好適な修復には、二頭筋腱再付着、橈−尺側副靭帯再建、及び外側上顆炎修復が挙げられる。手首の好適な手技には、舟状月状靭帯再建が挙げられ、股関節部の好適な手技には、関節包修復及び寛骨臼唇修復が挙げられる。
【0041】
本発明についてその特定の具体的な実施形態と関連して具体的に説明してきたが、これは、説明を目的とするためのものであって、限定を目的とするものではなく、また、添付の特許請求の範囲は、先行技術で認められるのと同程度に広義に解釈されるべきであることを理解すべきである。したがって、本発明の基礎となる新規な特徴を、本発明の好ましい実施形態に適用されるように図示し、説明し、指摘したが、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、例示された装置の形と詳細並びにその操作の様々な省略、代用及び変更を行うことができることを理解するであろう。例えば、本発明の範囲内と同様の結果を得るために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を行う要素及び/又は工程の全ての組み合わせが明確に意図される。ある記載された実施形態の要素を別の実施形態の要素に置換することも十分意図され、想到される。また、図面は必ずしも縮尺通りではないが、実際には単に概念的なものである。よって、添付の「請求項の範囲」によって示されている通りに限り限定されることが意図される。
【0042】
本明細書に引用される全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は任意の他の参照文献は、その全文が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、少なくとも前記位置決めワイヤを収容できる寸法である、前記カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁の遠位部分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
(2) 前記組織と係合する特徴が、弓状の溝である、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記カニューレの前記軸方向のルーメン内に受け入れられ、前記カニューレの遠位部分の遠位方向に延びる遠位先端部を有する栓子、を更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記栓子が、長手方向軸を有し、前記位置決めワイヤを収容できる寸法である中央ルーメンを有し、前記栓子の遠位先端部が、前記中央ルーメンの前記長手方向軸から横方向にオフセットされる、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記栓子の前記遠位先端部が、鋭く、かつ前記カニューレの前記遠位部分が、鋭い、実施態様4に記載のシステム。
(6) 軟組織を通って骨の中に縫合糸アンカーを通す方法であって、
前記骨上に所望のアンカーを受け入れる部位を探し出すステップと、
探し出しワイヤを前記アンカーを受け入れる部位で前記軟組織に通して少なくとも前記骨の上まで通すステップと、
カニューレを、前記探し出しワイヤに被せて前記軟組織に通すステップであって、前記カニューレが、薄壁の遠位部分と、少なくとも前記位置決めワイヤを収容できる寸法である、前記カニューレを通る軸方向のルーメンと、を含む、ステップと、
前記軟組織の一部分を、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と係合させて、次に、前記組織を前記カニューレで操作するステップと、
前記縫合糸アンカーを前記カニューレを通して進ませて、前記アンカー部位で前記骨の中に前記縫合糸アンカーを留置させるステップと、を含む方法。
(7) 前記軟組織の前記一部分が、腱を含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記操作するステップが、前記腱を移動させて前記腱の下側の視覚化を向上させることを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記位置決めワイヤに沿って前記軟組織を通過するためのカニューレであって、前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
(10) 前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、実施態様9に記載のシステム。
【0044】
(11) 経軟組織アクセスシステムであって、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、を含み、前記第1及び第2の湾曲状の区分は、前記第2の区分が前記第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から、前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である、前記カニューレを含む、システム。
(12) 前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴を、更に含む、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記組織と係合する特徴の少なくとも一部分が、前記最初の構成で前記組織に対して保護され、前記第2の構成で前記組織に露出される、実施態様12に記載のシステム。
(15) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、その遠位部分の遠位端から離れて延びる近位方向に、前記軟組織との最初の接触及び貫通の表面積が段階的に増加する、角度を有する遠位表面を有する、実施態様11に記載のシステム。
(16) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する、実施態様11に記載のシステム。
(17) 軟組織を通って骨の中に縫合糸アンカーを通す方法であって、
前記骨上に所望のアンカーを受け入れる部位を探し出すステップと、
探し出しワイヤを前記アンカーを受け入れる部位で前記軟組織に通して少なくとも前記骨の上まで通すステップと、
カニューレを、前記探し出しワイヤに被せて前記軟組織に通すステップであって、前記カニューレが、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、を含み、前記第1及び第2の湾曲状の区分は、前記第2の区分が前記第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成で互いに対して位置決めされる、ステップと、
前記第1及び第2の湾曲状の区分を前記最初の小さい外形構成から、前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動させるステップと、
前記縫合糸アンカーを前記カニューレを通して進ませて、前記アンカー部位で前記骨の中に前記縫合糸アンカーを留置させるステップと、を含む方法。
(18) 前記カニューレが、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面にある組織と係合する特徴を更に含み、前記方法は、前記軟組織の一部分を、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面にある組織と係合する特徴と係合させて、次に、前記組織を前記カニューレで操作するステップを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記組織と係合する特徴の少なくとも一部分は、前記最初の構成で前記組織に対して保護され、前記第2の構成で前記組織に露出される、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、実施態様18に記載の方法。
【0045】
(21) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、角度を有する遠位表面を有し、前記軟組織との前記最初の接触の表面積が段階的に増加する、実施態様17に記載の方法。
(22) 前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する、実施態様17に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、少なくとも前記位置決めワイヤを収容できる寸法である、前記カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁の遠位部分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
【請求項2】
前記組織と係合する特徴が、弓状の溝である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カニューレの前記軸方向のルーメン内に受け入れられ、前記カニューレの遠位部分の遠位方向に延びる遠位先端部を有する栓子、を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記栓子が、長手方向軸を有し、前記位置決めワイヤを収容できる寸法である中央ルーメンを有し、前記栓子の遠位先端部が、前記中央ルーメンの前記長手方向軸から横方向にオフセットされる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記栓子の前記遠位先端部が、鋭く、かつ前記カニューレの前記遠位部分が、鋭い、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記位置決めワイヤに沿って前記軟組織を通過するためのカニューレであって、前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
【請求項7】
前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
経軟組織アクセスシステムであって、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、を含み、前記第1及び第2の湾曲状の区分は、前記第2の区分が前記第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から、前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である、前記カニューレを含む、システム。
【請求項9】
前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴を、更に含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記組織と係合する特徴の少なくとも一部分が、前記最初の構成で前記組織に対して保護され、前記第2の構成で前記組織に露出される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、その遠位部分の遠位端から離れて延びる近位方向に、前記軟組織との最初の接触及び貫通の表面積が段階的に増加する、角度を有する遠位表面を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項1】
経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、少なくとも前記位置決めワイヤを収容できる寸法である、前記カニューレを通る軸方向のルーメンと、薄壁の遠位部分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
【請求項2】
前記組織と係合する特徴が、弓状の溝である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カニューレの前記軸方向のルーメン内に受け入れられ、前記カニューレの遠位部分の遠位方向に延びる遠位先端部を有する栓子、を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記栓子が、長手方向軸を有し、前記位置決めワイヤを収容できる寸法である中央ルーメンを有し、前記栓子の遠位先端部が、前記中央ルーメンの前記長手方向軸から横方向にオフセットされる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記栓子の前記遠位先端部が、鋭く、かつ前記カニューレの前記遠位部分が、鋭い、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
経軟組織アンカー埋植システムであって、
組織を貫通する遠位先端部を有する位置決めワイヤと、
前記位置決めワイヤに沿って前記軟組織を通過するためのカニューレであって、前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴と、を含む前記カニューレと、
前記カニューレのルーメンを通って嵌合する寸法の縫合糸アンカーと、を含むシステム。
【請求項7】
前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
経軟組織アクセスシステムであって、
前記軟組織を通過するためのカニューレであって、第1の薄壁の遠位部分を有する第1の湾曲状の区分と、第2の薄壁の遠位部分を有する第2の湾曲状の区分と、を含み、前記第1及び第2の湾曲状の区分は、前記第2の区分が前記第1の区分内に少なくとも部分的に入れ子になった状態で前記軟組織にカニューレの全周に満たない周囲を呈する最初の小さい外形構成から、前記カニューレを通る前記カニューレの軸方向のルーメンを画定する第2のより大きな構成へと互いに対して移動が可能である、前記カニューレを含む、システム。
【請求項9】
前記遠位部分に近位かつ隣接の前記カニューレの前記第1及び第2の湾曲状の区分の少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分にある組織と係合する特徴を、更に含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記組織と係合する特徴が、前記第1及び第2の湾曲状の区分のそれぞれにある弓状の溝である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記組織と係合する特徴の少なくとも一部分が、前記最初の構成で前記組織に対して保護され、前記第2の構成で前記組織に露出される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、その遠位部分の遠位端から離れて延びる近位方向に、前記軟組織との最初の接触及び貫通の表面積が段階的に増加する、角度を有する遠位表面を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1及び第2の遠位部分の少なくとも1つが、腱を通って切断できるだけ十分に鋭い遠位縁を有する、請求項8に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−101079(P2012−101079A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−246184(P2011−246184)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(507083478)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (47)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Mitek,Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive,Raynham,Massachusetts 02767 United States of America
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246184(P2011−246184)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(507083478)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (47)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Mitek,Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive,Raynham,Massachusetts 02767 United States of America
【Fターム(参考)】
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