説明

部品の搬送方法

【課題】従来よりも部品の搬送姿勢が変化しにくく、安定した姿勢で部品を搬送することができる搬送方法を提供する。
【解決手段】本発明の部品の搬送方法は、搬送方向にそれぞれ延在し、上方に向けて開くように構成された一対の平坦な搬送面2A、2Bを有する搬送トラック2内において、相互に隣接する二つの略平坦な外面部1bA、1bBを備えた部品1を前記搬送トラックに振動を与えることで前記搬送方向へ搬送する部品の搬送方法であって、前記二つの外面部を前記一対の搬送面にそれぞれ対向させた姿勢で前記部品を搬送し、前記一対の搬送面をいずれも水平面に対して傾斜させるとともに、前記一対の搬送面間の開角θを前記二つの外面部間の交差角φより小さく構成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部品の搬送方法に係り、特に、二つの略平坦な搬送面を備えた搬送トラック内において振動により部品を搬送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、振動式部品供給装置としては、搬送方向に対して直交する断面形状がV字状とされたV溝状の搬送トラックを備えた搬送体を振動させることで、部品を搬送トラック内にて搬送方向に沿って搬送するようにしている。一般的には、上記V溝状の搬送トラックにより搬送される部品(典型的には直方体状の部品)は、当該搬送トラックを構成しそれぞれが搬送方向に沿って延在する一対の搬送面に対して、二つの隣接する外面部を対向させた姿勢で搬送される(たとえば、以下の特許文献1及び2参照)。
【0003】
上記のようなV溝状の搬送トラックの形状としては、直方体状の部品を搬送する場合には、特許文献1の図30乃至図32に示されるように一対の搬送面間の開角が90度である構成と、特許文献1の図27乃至図29に示されるように開角が鈍角である構成とが知られている。また、特許文献2に示されるように円柱状部品を搬送する場合には、開角が鋭角に設定されたV溝状の搬送トラックが用いられる場合もある(特許文献2の図2参照)。
【0004】
さらに、搬送トラックの断面形状としては、特許文献1の図39乃至図41並びに特許文献3の図2乃至図5に示すように、一方の搬送面を略垂直に構成し他方の搬送面を傾斜させることで、一対の搬送面間の開角が鋭角に設定される構成が知られている。
【特許文献1】特開2001−187628号公報
【特許文献2】特開平5−69929号公報
【特許文献3】特開平11−314742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の種々の搬送トラックにおいて直方体状の部品、たとえば図5に示されるように直方体のベース部1Dの両端部に半田等で被覆された電極部1Eが形成されてなる電子部品などの部品1を、図4(a)に示すように搬送面2A及び2Bを備えた搬送トラック2に沿って搬送する状況を考える。この状況において、たとえば、搬送トラック2の下流側で何らかの理由によって部品1が停止した場合には、後続の部品1が前方の部品1に衝突すると、図4(b)に二点鎖線で示すように各部品1が搬送方向の左右にはじけ飛ぶことにより、たとえば、より低く構成された一方の搬送面2A側にはみ出して部品1の姿勢が変わってしまったり、搬送トラック2から部品1が一方の搬送面2Aを越えて脱落してしまったりするといった問題点がある。これは、図5に示すように部品1の搬送方向前後の端面1aが僅かに凸状に湾曲しているために、隣接する部品1間の端面1a同士が衝突すると搬送方向の左右に応力がばらばらに生ずるとともに、外側面1bもまた僅かに凸状に湾曲していることから外側面1bが搬送面2A及び2Bに対して密接せず、部品1が搬送トラック内で不安定な状態で搬送されていくためである。
【0006】
また、上記のように部品列が急停止しない場合でも、上述のような凸湾曲状の外側面を有する部品のように部品の外側面と搬送面の整合性が悪い場合には、部品の搬送姿勢が搬送過程で変化しやすいために効率的な搬送ができず、搬送速度の向上を図ることが難しいという問題点がある。
【0007】
さらに、部品の搬送に伴って上記一対の搬送面に半田等の異物が付着すると、部品が当該異物に接触することでさらに部品姿勢が不安定になり、搬送速度が低下するという問題点もある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、従来よりも部品の搬送姿勢が変化しにくく、安定した姿勢で部品を搬送することができる搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる実情に鑑み、本発明の部品の搬送方法は、搬送方向にそれぞれ延在し、上方に向けて開くように構成された一対の平坦な搬送面を有する搬送トラック内において、相互に隣接する二つの略平坦な外面部を備えた部品を前記搬送トラックに振動を与えることで前記搬送方向へ搬送する部品の搬送方法であって、前記二つの外面部を前記一対の搬送面にそれぞれ対向させた姿勢で前記部品を搬送し、前記一対の搬送面をいずれも水平面に対して傾斜させるとともに、前記一対の搬送面間の開角を前記二つの外面部間の交差角より小さく構成することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、一対の搬送面の開角が部品の二つの外面部間の交差角より小さいことにより、一対の搬送面に対する上記二つの外面部の当接位置が共に上方へ移動するため、部品の搬送トラックによる支持位置が相対的に高くなることから、当該部品の搬送姿勢が従来より安定する。したがって、搬送効率を従来より向上させ、搬送速度を高めることが可能になる。
【0011】
本発明において、前記部品は、前記一対の搬送面の傾斜角をそれぞれ同角度分だけ小さくすることで前記開角が前記交差角と一致するようにしたときの前記部品の基準当接位置よりも上方に基準当接位置を有する態様で搬送されることが好ましい。これによれば、部品がより上部において一対の搬送面に吊り下げられた場合と類似の態様で搬送が行われるので、部品姿勢が安定し、搬送効率の向上によって搬送速度を高めることができ、停止時における部品姿勢の変動や部品の搬送トラックからの脱落などを抑制できる。
【0012】
本発明において、前記開角と前記交差角の角度差を3度以上15度以下とすることが好ましい。開角と交差角の角度差が小さすぎると、搬送体の振動によって部品が搬送されていくため、また、部品の外側面が僅かに凸状に湾曲している場合には、上述の効果が十分に得られない場合があり、また、上記角度差が大きすぎると、一対の搬送面に部品の角部がそれぞれ当接して部品が詰まりやすくなることでやはり搬送速度が低下する。一般的には、開角と交差角の角度差が3度以上15度以下であれば、部品姿勢の安定化を享受しつつ、部品の詰まりによる障害を抑制できる。たとえば、典型的なケースとして交差角が90度であれば、開角は75度以上87度以下である。
【0013】
特に、前記交差角が略90度であり、前記開角を83〜87度の範囲内とすることが好ましい。交差角が略90度であれば一般的な直方体状の部品のほとんどが該当する。この場合には、上述のように開角を75度以上87度以下とすることが好ましいが、特に開角を83〜87度の範囲内にすることで搬送速度を最も高めることができる。
【0014】
本発明において、前記一対の搬送面のうち、一方の前記搬送面の上縁を他方の前記搬送面の上縁より低くし、前記一方の搬送面を越えて前記部品を前記搬送トラックから排除可能に構成するとともに、前記一方の搬送面の前記水平面に対する傾斜角が前記他方の搬送面の前記水平面に対する傾斜角以下に構成することが好ましい。これによれば、一方の搬送面を低く形成して当該搬送面を越えて部品が排除可能に構成すると、搬送トラック上で部品の良否(形状、寸法、姿勢など)を検出した結果に応じて気流の吹き付け等によって部品を一方の搬送面を越えて排除することで、部品を選別することができる。この場合、一方の搬送面の傾斜角を他方の搬送面の傾斜角以下にすることで、一方の搬送面を越えて行われる部品の排除を容易かつ確実に行うことができる。
【0015】
本発明において、前後両側の端面からそれぞれ四つの外側面の一部に延在する電極部を備えた略直方体状の前記部品を、前記四つの外側面のうちいずれか二つを前記外面部とした姿勢で搬送することが好ましい。これによれば、電極部の形成によって前後両側の端面が凸状に湾曲することが多いことから、上述の作用効果をより確実に得ることができるとともに、搬送中の急停止による部品姿勢の変化や部品の搬送トラックからの脱落も生じやすくなるため、本発明を適用することによって高い効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態] 以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本発明に係る搬送トラック2の搬送方向と直交する断面及び当該搬送トラック2上を搬送されていく部品1の断面を示す拡大断面図である。本実施形態において、搬送体20は図1の紙面と直交する方向に延在し、搬送トラック2を構成する一対の搬送面2A、2Bもそれぞれ同方向に延在するように構成されている。搬送体20は図示しない振動機(たとえば、搬送トラック2が直線状であれば直線振動機、螺旋状であれば回転振動機)上に設置され、それぞれ搬送方向下流側へ斜め上方に向かう振動方向を有する振動が付与される。
【0017】
本実施形態において、搬送トラック2は一対の搬送面2Aと2Bを有し、これらの一対の搬送面2A、2Bは共に水平面Hxに対して傾斜した傾斜面(傾斜した平坦面)となっている。より具体的には、図示例(実施例)の場合、一対の搬送面2Aと2Bは垂線Pxに対して左右対称な傾斜度を有している。一方の搬送面2Aと他方の搬送面2B間の開角θは部品1の相互に隣接する外側面1bA、1bB間の交差角よりも若干小さく設定されている。ここで、図示例(実施例)の場合には交差角φは約90度で、開角θは85度である。したがって、図示例(実施例)の場合、上述のように対称な搬送面2A、2Bの水平面に対する傾斜角は共に47.5度となっている。
【0018】
なお、部品1は上述のものと同様であり、図4又は図5に示すように電極部1Eにおいて外側面1bが凸状に湾曲した面となっているが、この湾曲度はわずかなものであり、基本的にベース部1Dの外側面が平坦面となっていて当該外側面間の交差角が90度になっているため、電極部1Eの表面間の交差角φも実質的に90度とみなすことができる。このような部品1としては、電気抵抗、コンデンサ、インダクタ、LEDチップなどが挙げられる。一般にはSMD(表面実装デバイス)の多くがこのような形状を有する。なお、図1乃至図3に示す部品1の断面は、図5に示す部品1の電極部1Eの断面形状を示している。
【0019】
図1に示す二点鎖線は、一対の搬送面2A、2Bの傾斜角を共に同角度(図示例では2.5度)ずつ小さくして開角を交差角φと同じにした(すなわち図示例では90度とした)場合の一対の搬送面2A′、2B′の搬送トラック(比較例)の輪郭と、この搬送トラックの輪郭に対応する部品1′の輪郭を示す。なお、部品1と1′は同一形状の部品である。部品1、1′は搬送トラック2上において振動によって搬送方向に送られていくので所定の姿勢及び位置に静止しているわけではないが、各図においては搬送トラック2上において平均的な基準姿勢で静止したときの様子を示してある。この基準静止姿勢は、たとえば、搬送トラック2上において振動を停止したときの部品1の静止姿勢を平均した姿勢(部品1の外面と搬送面との間の摩擦が0であると仮定したときの最終静止姿勢)であり、搬送面2A、2B、2A′、2B′の傾斜角と、部品1、1′の外部形状や重心1G、1G′の位置等によって定まる。この基準静止姿勢において、搬送面2A、2A′に対する部品1、1′の外面部1bAの当接位置(以下、単に「基準当接位置」という。)を1PA、1PA′とし、搬送面2B、2B′に対する部品1、1′の基準当接位置を1PB、1PB′としてある。
【0020】
なお、部品1、1′は振動による搬送トラック2からの周期的な押圧作用により搬送トラック2上を繰り返し飛翔しながら搬送されていくので、その外側面1bA、1bBの搬送面2A、2B、2A′、2B′に対する搬送時の実際の当接位置は上記基準当接位置よりも上方になることが多く、しかもそれぞれがばらつくため、当該当接位置の平均位置も上記基準当接位置とは一致しないが、当該平均位置は定性的な意味では基準当接位置に対応する位置となるので、以下では基準当接位置に基づいて部品の搬送状態を説明することとする。
【0021】
図示二点鎖線で示す比較例においては、基準当接位置1PA′、1PB′が重心1G′を通過し搬送面2A′、2B′と直交する線上にあるが、実施例においては、基準当接位置1PA、1PBは重心1Gを通過し搬送面2A、2Bと直交する線よりも上方に設定される。これは、部品1、1′の外側面1bA、1bBの輪郭線が僅かに凸状に湾曲しているからである。したがって、比較例に比べると、実施例では搬送面2A、2Bに対する当接位置が上方に位置するため、部品1の搬送時の姿勢が安定し、これによって振動に伴う部品1の移動方向が搬送方向に近づくこととなるので、搬送速度を高めることが可能になる。このことを理解するには、部品1は搬送体20の振動によって搬送されていくので実際の移動時の状態を反映したものではないが、たとえば、以下のように考えることができる。仮に、基準当接位置1PA,1PBが搬送面2A、2Bに当接したまま部品1が搬送方向にすべるように移動していくことを想定すると、比較例では低い基準当接位置1PA′、1PB′の二箇所で支持された状態で部品1′が搬送されていくが、実施例ではより高い基準当接位置1PA、1PBの二箇所で支持された状態で、換言すると上部で吊り下げられた状態で部品1が搬送されていく。すなわち、比較例では重心1G′が支持位置である基準当接位置1PA′、1PB′よりもかなり高い位置にあるのに対して、実施例では重心1Gが支持位置である基準当接位置1PA、1PBとほぼ同じ高さにある。したがって、搬送体20から部品1が左右方向に外力を受けた場合でも、実施例の部品1の搬送姿勢が比較例の部品1′よりも変化しにくくなる。
【0022】
上記基準当接位置1PA、1PBの位置と開角θとの関係は部品1の外側面1bA、1bBの面形状によって区々となるが、部品1の図示の断面形状が、大きな曲率半径を有する湾曲度の小さい凸曲面で構成される角部以外の部分である非角部AEPと、隣接する外側面1b間において小さな曲率半径を有する湾曲度の大きい凸曲面で構成される角部EPの組み合わせで構成されるものとしたとき、上記基準当接位置1PA,1PBが外側面1bA、1bBの非角部AEP上に存在し、角部EP上には存在しないように上記開角θが設定されることが好ましい。これは、基準当接位置1PA、1PBが角部EP上に存在する場合には、部品1と搬送面2A,2Bの間の当接部分の傾斜角が大きくなるため、部品1が搬送面2A,2B間において詰まりやすくなるからである。
【0023】
一般的に、上記開角θと交差角φの角度差Δθは3〜15度の範囲内であることが好ましく、特に、4〜10度の範囲内であることが望ましい。これは、角度差Δθが小さすぎると本発明の効果が得られず、大きすぎると部品が詰まりやすくなるからである。特に、交差角φが90度の場合には83〜87度の範囲内であることが最も望ましい。この点は以下の他の実施形態の場合も同様である。
【0024】
なお、本実施形態において、搬送面2Aの上縁が搬送面2Bの上縁より低く構成されており、搬送トラック2上を搬送されてきた部品1の形状、構造、姿勢などに不具合があるとき、当該部品1を搬送面2Aを越えて外側に排除できるようになっている。この場合には、部品の選別機構として、以下の第2実施形態において説明する検出手段や気流吹き付け手段などを用いることができる。ここで、図示例のように部品排除側の搬送面2Aの幅を部品1の外側面1bAの幅と略同一(0.9倍から1.2倍程度)に設定することで、部品1をさらに排除しやすくなる。
【0025】
[第2実施形態] 次に、図2を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。この実施形態では、図2に示すように、搬送面2A、2Bが共に水平面Hxに対して傾斜し、搬送面2Aと2B間の開角θが部品1の隣接する二つの外面部1bA、1bB間の交差角より小さい点(具体的には開角θが交差角φ=90度より小さい角度(85度)である点)については上記第1実施形態と同様である。
【0026】
本実施形態では、垂線Pxに対して搬送面2Aと2Bの傾斜度が対称に構成されていない点で第1実施形態とは異なる。すなわち、搬送面2Aは搬送面2Bよりも水平面Hxに対する傾斜角が小さい。図示例では、搬送面2Aの水平面Hxに対する傾斜角は30度、搬送面2Bの水平面Hxに対する傾斜角は60度+Δθで図示例では65度である。ここで、Δθは搬送トラック2の開角θと部品1の交差角φの角度差(図示例では5度)である。上述のように、当該角度差Δθは3〜15度の範囲内であることが好ましく、特に、4〜10度の範囲内であることが好ましい。
【0027】
本実施形態では、搬送面2Aの傾斜角が小さく、搬送面2Bの傾斜角が大きく設定されているので、部品1の重心1Gは垂線Pxより搬送面2A側にあり、したがって、部品1の外側面1bAは搬送面2Aに対してほぼ正対するが、外側面1bBは急傾斜の搬送面2Bに対しては傾いた姿勢で対向する。その結果、外側面1bA上の基準当接位置1PAは外側面1bAの中間点に近い位置に設定されるが、外側面1bB上の基準当接位置1PBは外側面1bBの上部側に設定される。図示例の場合、基準当接位置1PBは第1実施形態のそれよりも非角部面AEPと角部面EPの接続点に近い位置となっている。
【0028】
本実施形態では、搬送面2Aと2Bの傾斜角が左右で非対称となっているため、部品1の姿勢も偏った姿勢となるとともに、搬送面2Aに対する外側面1bAの相対姿勢と、搬送面2Bに対する外側面1bBの相対姿勢についても相互に異なるものとなる。しかしながら、本実施形態においても、基準当接位置1PA、1PBは、第1実施形態の比較例と同様にして搬送トラックの開角θを90度にした場合に比べると高い位置となり、搬送時の支持点が重心1Gに対して相対的に上昇するので、搬送姿勢の安定性を高めることができる点は第1実施形態と同様である。
【0029】
また、本実施形態では、傾斜角のより小さい搬送面2Aの上端が低く形成され、これによって部品選別機構を設けることで部品1が搬送面2Aを越えて搬送トラック2の外側に排除可能な構造となっている。たとえば、部品1の姿勢を図示しない検出手段(光検出器など)によって判別し、その判別結果に応じて、不要な部品1を搬送トラック2から排除するために、図示しない気流の吹き付け手段を動作させることができる。なお、当該気流の吹き付け手段は、たとえば、搬送面2Bのうち部品1の外側面1bBが通過する領域に開口する気流吹き付け孔を設け、この気流吹き付け孔を圧縮空気等を供給する気流供給系(供給弁を含む。)に接続したものが挙げられる。この場合、図2に示すように、搬送面2Aの傾斜角が搬送面2Bのそれよりも小さく形成されているとともに、部品1の搬送面2Aに対する基準当接位置1PAが搬送面2Bに対する基準当接位置1PBより低くなるように設定されているので、部品1を容易に搬送面2Aを越えて外側へ排除することができる。ここで、図示例のように部品排除側の搬送面2Aの幅を部品1の外側面1bAの幅と略同一(0.9倍から1.2倍の範囲)に設定することで、部品1をさらに排除しやすくなる点は第1実施形態と同様である。
【0030】
[第3実施形態] 次に、図3を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。この実施形態では、図3に示すように、搬送面2A、2Bが共に水平面Hxに対して傾斜し、搬送面2Aと2B間の開角θが部品1の隣接する二つの外面部1bA、1bB間の交差角φより小さい点(具体的には開角θが交差角φ=90度より小さい角度(85度)である点)については上記第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、垂線Pxに対して搬送面2Aと2Bの傾斜度が対称に構成されていない点で第2実施形態と共通する。
【0031】
ただし、本実施形態では、搬送面2Aの傾斜角が45度、搬送面2Bの傾斜角が50度に設定されているので、第2実施形態に比べて垂線Pxに対する左右の対称性が高くなっている。この場合でも、上述のように比較例に対する搬送状態の差により第1実施形態と同様に部品1の搬送姿勢を安定させることができ、搬送効率を向上させて搬送速度を高めることができる。また、第2実施形態と同様に部品1を搬送面2Aを越えて排除する場合に好適な構成となっている。ここで、図示例のように部品排除側の搬送面2Aの幅を部品1の外側面1bAの幅と略同一(0.9倍から1.2倍の範囲)に設定することで、部品1をさらに排除しやすくなる点は第1実施形態と同様である。
【0032】
以上説明した各実施形態の部品の搬送方法においては、部品供給装置のうち、部品1を搬送する過程で不要な部品を排除して選別する部品選別領域に形成された搬送トラック2上において実現される方法として用いることが好ましい。この部品選別領域では、部品1のうち問題のある部品を搬送トラック上から排除する必要があるので、他の領域とは異なり、搬送トラックの上方に部品の飛び出しを防止するためのカバー等を設けることができず、このため、部品1の搬送姿勢が不安定になったり、部品の供給が下流側の原因で強制的に停止したときに後続の部品が衝突することで部品1の姿勢が変化したり、部品が搬送トラック外へ脱落してしまったりといった事態を防止することが難しい。したがって、本発明を上記部品選別領域における部品1の搬送方法として用いることにより、部品姿勢の変化や部品の脱落を防止する上でも大きな効果を得ることができる。
【0033】
上記のいずれの実施形態においても、部品1は、一対の搬送面の傾斜角をそれぞれ同角度分だけ小さくすることで開角θが交差角φと一致するようにしたときの部品の基準当接位置よりも上方に基準当接位置を有する態様で搬送される。したがって、部品1は搬送トラックによって上部を支持され、いわば吊り下げられた状態で搬送されていくので、部品1の姿勢が搬送方向に対して左右に振れにくくなり、安定した搬送姿勢を得ることができるため、より効率的に搬送されることから、搬送速度を高めることができる。また、部品が急停止する際にも部品1の姿勢が乱れにくくなるので、部品1の姿勢が変わってしまったり搬送トラック上から脱落してしまったりすることが抑制される。
【0034】
尚、本発明の部品の搬送方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。たとえば、上記各実施形態では基本的に直方体形状の部品1を搬送する場合について説明したが、本発明では部品が直方体形状である場合に限らず、少なくとも相互に隣接する二つの略平坦な外面部を備えた部品であればよい。また、上記各実施形態では部品の外面部間の交差角が90度の場合について説明したが、当該交差角は90度でなくても構わない。さらに、上記各実施形態はいずれも搬送トラックをV溝状に構成した例を示すが、搬送トラックは必ずしもV溝状でなくてもよく、部品の隣接する二つの外面部に対向する一対の搬送面を備えたものであればよい。たとえば、一対の搬送面の間に、凹状の溝、或いは、部品に抵触しない範囲で水平な面が形成された搬送トラックであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態の部品及び搬送トラックの断面形状を示す拡大断面図。
【図2】第2実施形態の部品及び搬送トラックの断面形状を示す拡大断面図。
【図3】第3実施形態の部品及び搬送トラックの断面形状を示す拡大断面図。
【図4】部品が搬送トラック上で搬送されていく様子を示す平面図(a)及び下流側で部品搬送が停止したときの部品の姿勢を示す平面図(b)。
【図5】部品の一例を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0036】
1…部品、1a…端面、1b、1bA,1bB…外側面、非角部…AEP、角部…EP、1D…ベース部、1E…電極部、1PA、1PB…基準当接位置、2…搬送トラック、2A、2B…搬送面、20…搬送体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向にそれぞれ延在し、上方に向けて開くように構成された一対の平坦な搬送面を有する搬送トラック内において、相互に隣接する二つの略平坦な外面部を備えた部品を前記搬送トラックに振動を与えることで前記搬送方向へ搬送する部品の搬送方法であって、
前記二つの外面部を前記一対の搬送面にそれぞれ対向させた姿勢で前記部品を搬送し、
前記一対の搬送面をいずれも水平面に対して傾斜させるとともに、前記一対の搬送面間の開角を前記二つの外面部間の交差角より小さく構成することを特徴とする部品の搬送方法。
【請求項2】
前記部品は、前記一対の搬送面の傾斜角をそれぞれ同角度分だけ小さくすることで前記開角が前記交差角と一致するようにしたときの前記部品の基準当接位置よりも上方に基準当接位置を有する態様で搬送されることを特徴とする請求項1に記載の部品の搬送方法。
【請求項3】
前記開角と前記交差角の角度差を3度以上15度以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品の搬送方法。
【請求項4】
前記交差角が略90度であり、前記開角を83〜87度の範囲内とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品の搬送方法。
【請求項5】
前記一対の搬送面のうち、一方の前記搬送面の上縁を他方の前記搬送面の上縁より低くし、前記一方の搬送面を越えて前記部品を前記搬送トラックから排除可能に構成するとともに、前記一方の搬送面の前記水平面に対する傾斜角を前記他方の搬送面の前記水平面に対する傾斜角以下に構成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の部品の搬送方法。
【請求項6】
前後両側の端面からそれぞれ四つの外側面の一部に延在する電極部を備えた略直方体状の前記部品を、前記四つの外側面のうちいずれか二つを前記外面部とした姿勢で搬送することを特徴とする請求項1乃至5に記載の部品の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−302990(P2008−302990A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148992(P2007−148992)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(599069507)株式会社ダイシン (27)
【Fターム(参考)】