説明

部品供給ユニットの移動装置

【課題】種々なタイプの部品供給ユニットに対応することができる部品供給ユニットの移動装置を提供する。
【解決手段】静止レール9に可動部材10が進退可能な状態で組み合わされ、可動部材10に基部材12が固定され、この基部材12に部品供給ユニット100を取り付けるための支持部材13が固定され、基部材12を進退させる駆動手段16が設けられており、部品供給ユニット100はジョイント部材20を介して支持部材13に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、種々な部品の部品供給ユニットを所定の位置に移動させて部品供給を行う部品供給ユニットの移動装置に関している。
【背景技術】
【0002】
特許第4609672号公報には、保持ヘッドに受け入れられたボルトが保持ヘッドの移動によって目的箇所である溶接電極に供給されることが記載されている。そして、ここでは上記移動のためにスライドレールが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4609672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されている技術は、保持ヘッドで受け取ったボルトを直線的に移動させて溶接電極に供給するものであり、スライドレールに沿って移動する部材は、ボルトを受け取る機能を果たす保持ヘッドである。そして、ボルトを溶接電極に到達させるために、スライドレール全体を別に設けた昇降エアシリンダで上昇させるようにしている。
【0005】
上記のような装置であると、部品の供給形式が、ボルトを目的箇所である受入孔に挿入する場合、ナットを目的箇所であるガイドピンに合致させる場合などのように、種々変化するとき、装置全体を作り直す必要がある。したがって装置の準備に手間取ったり、経費が嵩んだりするという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、種々なタイプの部品供給ユニットに対応することができる部品供給ユニットの移動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、静止レールに可動部材が進退可能な状態で組み合わされ、前記可動部材に基部材が固定され、この基部材に部品供給ユニットを取り付けるための支持部材が固定され、前記基部材を進退させる駆動手段が設けられており、前記部品供給ユニットはジョイント部材を介して前記支持部材に取り付けられていることを特徴とする部品供給ユニットの移動装置である。
【発明の効果】
【0008】
部品の供給箇所が複数ある場合、部品供給ユニットの動作で一つ目の供給箇所に部品供給が完了すると、そのつぎに前記駆動手段が動作して前記静止レールに沿って可動部材が所定量移動し、その後、部品供給ユニットの動作で二つ目の供給箇所に部品供給がなされる。三つ目以降も同様な動作が継続される。
【0009】
このような機能の部品供給ユニットが前記ジョイント部材を介して前記支持部材に固定してあるので、例えば、ボルト供給用の部品供給ユニットをナット供給用の部品供給ユニットに付け換えて使用することができ、部品の種類の変更に対して簡単に対応することができる。とくに、部品供給ユニットには部品の受け取り、この部品の目的箇所への移動など部品供給にとって必要な動作が集約されているので、このような機能のユニットを取り換えるだけで部品の種類変更に対して簡単に対応することができ、設備構造の簡素化や、変更に要する作業時間の短縮などが効果的に達成される。上記取り換えに際しては、前記ジョイント部材を用いて簡単に交換作業が可能である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記駆動手段は、前記支持部材と隣り合った箇所の前記基部材に取り付けられている請求項1記載の部品供給ユニットの移動装置である。
【0011】
前記駆動手段が支持部材と隣り合った箇所の基部材に取り付けてあるので、基部材、駆動手段、支持部材に結合された部品供給ユニットが一体になって進退動作をする。とくに、基部材、支持部材および駆動手段の3者がコンパクトに一体化されているので、部品供給ユニットをジョイント部材を介して取り付けることが行いやすくなる。つまり、部品供給ユニットは部品の種類や、供給箇所などによってその全体形状が種々様々なものとなるので、基部材、支持部材および駆動手段の3者のコンパクト化を促進することによって、部品供給ユニットの装着が行いやすくなるのである。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記駆動手段から延びている出力軸の先端部が静止部材に結合してある請求項2記載の部品供給ユニットの移動装置である。
【0013】
基部材、支持部材および駆動手段の3者が一体化され、駆動手段の出力軸の先端部が静止部材に結合してあるので、上記3者は静止レールに沿って確実に進退動作をする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】装置全体の側面図と一部の断面図である。
【図2】装置の要部を示す平面図と一部の平面図である。
【図3】ジョイント部材の一部を示す斜視図である。
【図4】基部材、支持部材、駆動手段を示す平面図と側面図である。
【図5】部品供給ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の部品供給ユニットの移動装置を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜図5は、本発明の実施例1を示す。
【0017】
本実施例における部品について説明する。
【0018】
供給される部品はボルト1であり、部品2に開けた複数の受入孔3に挿入される。ボルト1は六角形の頭部4に軸部5が一体化されたもので、頭部4の角部間寸法は13mm、軸部5の直径と長さはそれぞれ11mmと40mmである。また、部品2は分厚い板材に所定間隔で複数の受入孔3が開けられたものである。
【0019】
つぎに、移動装置の構造を説明する。
【0020】
装置の機枠や支持基板などの静止部材6に、平坦な長方形の基板7が水平な姿勢で固定されている。真っ直ぐなガイドレール8が基板7に固定されている。このガイドレール8は、基板7に固定されている長尺な静止レール9と、この静止レール9に対して進退可能な状態で組み合わされた可動部材10によって構成されている。可動部材10に下向きの力が作用しても可動部材10が静止レール9から外れないようにするために、図1(B)に示すように、静止レール9の横側に係合溝が形成され、この係合溝に可動部材10の係合片が摺動可能な状態ではめ込んである。
【0021】
可動部材10の下面に、厚肉の四角い板材で作られた基部材12がボルト付けまたは溶接などによって固定されている。図1(B)に示すように、この基部材12の片側寄りに鉛直方向に延びる支持部材13が固定されている。この支持部材13は断面円形の棒材であり、実際には支持板14を介して基部材12に固定してある。なお、以下に説明する板材などの固定箇所は、上記のように、ボルト付けまたは溶接が採用されている。
【0022】
基部材12の端部に鉛直方向に延びた姿勢で支持板15が固定され、この表面に駆動手段であるエアシリンダ16の前面が固定されている。図1(B)から明らかなように、支持板15は支持部材13とは反対側に片寄った箇所に配置されている。したがって、エアシリンダ16は支持部材13と隣り合った位置関係となっている。このような位置関係となっているので、基部材12、支持部材13および駆動手段16の3者のコンパクト化が促進される。
【0023】
基板7の両端にカバー板17が鉛直方向の姿勢で固定されている。エアシリンダ16のピストンロッド18は、支持板15を貫通してその先端部がカバー板17に結合してある。すなわち、駆動手段の出力軸の先端部が静止部材に結合してある。これによって、エアシリンダ16のピストンロッド18が進出したり後退したりすると、その反力で可動部材10が静止レール9に沿って進退する。この進退時には、基部材12、支持部材13およびエアシリンダ16が一体になって移動する。
【0024】
なお、エアシリンダ16の前面が支持板15の表面に結合されているが、これに換えてエアシリンダ16のシリンダボディを基部材12に直接またはディスタンスピースを介して固定するようにしてもよい。つまり、駆動手段であるエアシリンダ16は、直接的あるいは間接的に基部材12と一体化されている。
【0025】
つぎに、ジョイント部材について説明する。
【0026】
ボルト1を目的箇所である受入孔3へ到達させるために、部品供給ユニット100が配置してある。この部品供給ユニット100は、支持部材13にジョイント部材20を介して取り付けられている。このジョイント部材20は、支持部材13のような軸部材やこの軸部材を強固に締め付けて一体化される結合片などの組み合わせで構成されている。軸部材の長手方向に沿った位置決めと、軸部材の円周方向に結合片を回動させる位置決めの複合で、部品供給ユニット100の配置姿勢が設定される。
【0027】
図2(A)は図1の(2)−(2)断面図である。直方体の部材を加工して作られた結合片21は、図3にも立体的に図示してある。支持部材13が貫通する断面円形の孔22が鉛直方向に開けられ、この孔22に連通する切り割り23が設けられ、この切り割り23の空間を小さくする方向の締め付け力を締め付けボルト24で付与する。この締め付けボルト24は孔22の軸線と直角に食い違った方向にねじ込まれている。これによって、支持部材13の外周面が強固に締め付けられて、支持部材13と結合片21との一体化がなされる。締め付けボルト24を緩めて結合片21を回動したり、支持部材13の軸方向にずらしたりして所定の箇所で再び締め付けボルト24を締め付ける。
【0028】
結合片21にはもう一つの孔25が水平方向に開けられ、ここに通した断面円形の軸部材26が前記支持部材22の締め付け構造と同じ構造で締め付けられるようになっている。図3の符号19は、孔25に連通する切り割りである。この軸部材26に、直方体の部材でできた結合片27が溶接され、そこに設けた孔28に後述の部品供給ユニット100が締め付けられるようになっている。図2(B)において、符号29は孔28に連通する切り割り、符号30は締め付けボルトである。
【0029】
上記のような軸部材や結合片などの組み合わせによって、ジョイント部材20を構成する各部材が鉛直方向、水平方向、斜め方向、回動方向など種々な方向に位置調節がなされて、部品供給ユニット100の配置姿勢が設定される。
【0030】
つぎに、部品供給ユニットについて説明する。
【0031】
部品供給ユニット100は、部品の種類、供給の目的箇所の形状などによって、基部材12、支持部材13、エアシリンダ16の集合体から、斜め下方へ延びた形式のものや水平方向に延びた形式のもの、あるいは鉛直方向に延びた形式のものなど種々なタイプが採用される。ここでは、斜め下方に延びたタイプである。
【0032】
図5は部品供給ユニット100の断面図である。パーツフィーダ32から送出されたボルト1は供給管33の端部に設けたストッパ片34に当たって停止する。この停止したボルト1は出口開口35から横方向に出て、供給ロッド36の先端部に保持される。供給ロッド36が斜め下方に進出してボルト1が受入孔3に挿入されるようになっている。この挿入は、ボルト1を供給ロッド36の先端部に保持する力が消去されることによって行われる。
【0033】
ボルト1を供給ロッド36の先端部に保持する力は、永久磁石37の吸引力を活用している。この吸引磁力を消滅させるために、永久磁石37をボルト1から離隔させるような構造が採用されている。供給ロッド36は内外二重構造とされ、中空のアウター軸38内に摺動可能な状態でインナー軸39が挿入してある。インナー軸39の先端に永久磁石37が固定され、永久磁石37とアウター軸38が供給ロッド36の端部において一平面上に整列して、頭部4の密着面を形成している。
【0034】
インナー軸39にはその直径方向に延びている規制ピン40が固定され、アウター軸38のストローク方向に開けた長孔41から外部に突出している。インナー軸39とアウター軸38の間に圧縮コイルばね42が介装され、これによってインナー軸39に押出し方向の張力が付与され、この張力は規制ピン40が長孔41の下端に当たっていることによって、図5に示す位置関係が設定されている。
【0035】
アウター軸38の先端部の片側にストッパ部材43が突出した状態で形成されており、ストッパ片34に受け止められたボルト1が永久磁石37に吸引され、出口開口35を経て供給ロッド36の先端部に移動する。このときに頭部4がストッパ部材43で受け止められて、供給ロッド36に対するボルト1の相対位置が決定される。
【0036】
供給ロッド36全体は断面円形の外筒45内に収容され、外筒45に取り付けたエアシリンダ46のピストンロッド47が供給ロッド36に結合されている。外筒45の外側面にエアシリンダ48が固定され、そのピストンロッド49に係合片50が結合してある。この係合片50は、外筒45のストローク方向に開けた長孔51を貫通して外筒45の内部に突出している。この係合片50と規制ピン40は供給ロッド36の進出後に衝合できるように、両者の相対位置が設定されている。
【0037】
つぎに、ジョイント部材と部品供給ユニットの結合構造を説明する。
【0038】
主として図2に示すように、ジョイント部材20の一部である結合片27の孔28に外筒45が挿入され、締め付けボルト30を締め付けて部品供給ユニット100の固定がなされる。部品供給ユニット100は、ジョイント部材20を調節して、傾斜した姿勢でボルト1が受入孔3に挿入されるように取り付けられている。具体的な調節は、支持部材13と結合片21の相対位置、結合片21と軸部材26の相対位置、結合片27と外筒45の相対位置などを調節する。
【0039】
つぎに、部品供給ユニットの動作を説明する。
【0040】
図5は、ボルト1が供給ロッド36の先端部に永久磁石37によって保持されている状態を示している。エアシリンダ46によって供給ロッド36が進出し、ボルト1の軸部5の先端が受入孔3の間近にきたところで停止する。この停止に引き続いて、エアシリンダ48の動作で係合片50が引き戻されると、係合片50が規制ピン40に衝合して圧縮コイルばね42を縮めながらインナー軸39が引き上げられる。このようなインナー軸39の変位によって永久磁石37がボルト1から遠ざかるので、ボルト1に対する吸引保持力が実質的に消滅し、ボルト1は供給ロッド36の先端部から離れて、軸部5が受入孔3内に挿入される。
【0041】
上述の実施例では、部品供給ユニット100が吊り下げられた状態とされているが、図4に示すように、支持部材13を上方へ延ばした配置にすることも可能である。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0042】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0043】
上述の動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行わせることが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0044】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0045】
ボルト1を挿入する受入孔3が複数ある場合、部品供給ユニット100の供給ロッド36が進出し、一つ目の受入孔3へのボルト挿入が完了する。そのつぎにエアシリンダ16が動作して静止レール9に沿って可動部材10が所定量移動し、その後、部品供給ユニット100の供給ロッド36が進出し、二つ目の受入孔3にボルト挿入がなされる。
【0046】
このような機能の部品供給ユニット100が前記ジョイント部材20を介して前記支持部材13に固定してあるので、例えば、ボルト供給用の部品供給ユニットをナット供給用の部品供給ユニットに付け換えて使用することができ、部品の種類の変更に対して簡単に対応することができる。とくに、部品供給ユニット100にはボルト1の受け取り、受入孔3への移動などボルト供給にとって必要な動作が集約されているので、このような機能のユニットを取り換えるだけで部品の種類変更に対して簡単に対応することができ、設備構造の簡素化や、変更に要する作業時間の短縮などが効果的に達成される。上記取り換えに際しては、前記ジョイント部材20を用いて簡単に交換作業が可能である。
【0047】
前記駆動手段であるエアシリンダ16は、前記支持部材13と隣り合った箇所の前記基部材12に取り付けられている。
【0048】
前記エアシリンダ16が支持部材13と隣り合った箇所の基部材12に取り付けてあるので、基部材12、エアシリンダ16、支持部材13に結合された部品供給ユニット100が一体になって進退動作をする。とくに、基部材12、支持部材13およびエアシリンダ16の3者がコンパクトに一体化されているので、部品供給ユニット100をジョイント部材20を介して取り付けることが行いやすくなる。つまり、部品供給ユニット100は部品の種類や、供給箇所などによってその全体形状が種々様々なものとなるので、基部材12、支持部材13およびエアシリンダ16の3者のコンパクト化を促進することによって、部品供給ユニット100の装着が行いやすくなるのである。
【0049】
前記エアシリンダ16から延びているピストンロッド18の先端部がカバー板17に結合してある。
【0050】
基部材12、支持部材13およびエアシリンダ16の3者が一体化され、エアシリンダ16のピストンロッド18の先端部がカバー板17に結合してあるので、上記3者は静止レール9に沿って確実に進退動作をする。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述のように、本発明の装置によれば、種々なタイプの部品供給ユニットに対応することが可能となる。したがって、自動車の車体組立工程や、家庭電化製品の板金組立工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 ボルト
2 部品
3 受入孔
4 頭部
5 軸部
8 ガイドレール
9 静止レール
10 可動部材
12 基部材
13 支持部材
16 エアシリンダ、駆動手段
20 ジョイント部材
36 供給ロッド
45 外筒
100 部品供給ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止レールに可動部材が進退可能な状態で組み合わされ、前記可動部材に基部材が固定され、この基部材に部品供給ユニットを取り付けるための支持部材が固定され、前記基部材を進退させる駆動手段が設けられており、前記部品供給ユニットはジョイント部材を介して前記支持部材に取り付けられていることを特徴とする部品供給ユニットの移動装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記支持部材と隣り合った箇所の前記基部材に取り付けられている請求項1記載の部品供給ユニットの移動装置。
【請求項3】
前記駆動手段から延びている出力軸の先端部が静止部材に結合してある請求項2記載の部品供給ユニットの移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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