説明

部品実装機の制御方法、部品実装機およびプログラム

【課題】作業者の安全を確保することができる部品実装機の制御方法を提供する。
【解決手段】前面操作部2が設けられている部品実装機1の側とは異なる側における作業者の作業領域に、当該作業領域への人の侵入を感知する後面フィーダ部感知用センサ22が設けられており、作業者が前面操作部2を操作しているか否かを判定し、後面フィーダ部感知用センサ22が人の侵入を感知しているか否かを判定し、作業者が前面操作部2を操作しており、かつ後面フィーダ部感知用センサ22が人の侵入を感知していると判定した場合には、前面操作部2が設けられている側とは異なる側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を考慮した部品実装機1の制御処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装機の制御方法に関し、特に、作業者の安全性を向上させるための部品実装機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前側および後側にそれぞれ部品の装着ステージを有する部品実装機が、部品実装機の市場では多く見られる。このような部品実装機にあっては、近年、前側および後側にそれぞれ操作パネルを備えているため、前側および後側から部品供給作業を含むメンテナンス作業が可能となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
操作パネルを両面に備えることにより、作業者は前側および後側のいずれの側からも部品実装機の操作が可能となり、作業者の作業性が向上する。
【特許文献1】特開2008−21122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、両側から操作が可能となる一方で、それぞれの側から作業者が作業を行なっていると、お互いに相手に気付きにくく、安全に作業が進められないという問題がある。例えば、図15に示すように、前側の操作パネルを用いて部品実装機の操作を行なっている作業者502は、後側の部品供給部に対する作業を行なっている作業者504が屈んでいると、その存在に気付きにくいので、作業者504の安全が確保できない可能性がある。なお、このような問題は、操作パネルが片側にしかない部品実装機であっても生じ得る。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、作業者の安全を確保することができる部品実装機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る部品実装機の制御方法は、操作部を有する部品実装機の制御方法であって、前記操作部が設けられている前記部品実装機の第1の側とは異なる第2の側における作業者の作業領域に、当該作業領域への人の侵入を感知するセンサが設けられており、前記部品実装機の制御方法は、作業者が前記操作部を操作しているか否かを判定し、前記センサが人の侵入を感知しているか否かを判定し、作業者が前記操作部を操作しており、かつ前記センサが人の侵入を感知していると判定した場合には、前記第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を考慮した前記部品実装機の制御処理を実行する。
【0007】
この構成によると、作業者が操作部を操作しており、操作部が設けられている部品実装機の第1の側とは異なる第2の側における作業領域で作業者が作業を行なっており、かつ、操作部を操作する作業者が、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者に気付かない場合であっても、前記第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を考慮した部品実装機の制御処理が実行される。このため、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を確保することができる。
【0008】
好ましくは、前記操作部は、表示部を有し、前記部品実装機の制御処理は、前記表示部に、前記第2の側における作業領域に作業者がいることを警告表示する処理を含む。
【0009】
この構成によると、警告表示を見ることにより、操作部を操作する作業者は、第2の側における作業領域に作業者がいることに気付くことができる。このため、操作部を操作する作業者は、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者に対して声を掛ける等することにより、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を確保した上で、作業を続行することができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記部品実装機の制御処理は、前記部品実装機の可動部の動作を制限する処理を含む。
【0011】
この構成によると、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者が部品実装機の内部のメンテナンス作業等を行なっていたとしても、可動部の動作が制限されるため、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者は安全にメンテナンス作業を実行することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記部品実装機の制御処理は、さらに、前記可動部の動作を制限しているときに、作業者が前記操作部から前記可動部の動作を開始させるための操作入力を行なっているか否かを判定する処理と、前記可動部の動作を制限しているときに、作業者が前記操作部から前記可動部の動作を開始させるための操作を行なっていると判定した場合には、前記操作部から操作入力を行なう作業者に対して、前記可動部の動作を開始させるための操作入力をさらに要求する処理と、前記操作部から操作入力を行なう作業者が前記要求に従った操作を行なった場合にのみ、前記可動部の動作を開始させる処理とを含む。
【0013】
この構成によると、可動部の動作を開始させるために、さらに操作を要求することにより、操作部を操作する作業者は、第2の側における作業領域に作業者がいることに気付くことができるとともに、可動部が安易に動作を開始するのを防ぐことができる。このため、操作部を操作する作業者は、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者に対して声を掛ける等することにより、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を確保した上で、可動部の動作を開始させることができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記操作部は、表示部を有し、前記部品実装機の制御処理は、さらに、前記可動部の動作を制限しているときに、作業者が前記操作部から前記可動部の動作を開始させるための操作入力を行なっていると判定した場合には、前記表示部に、前記第2の側における作業領域に作業者がいることを警告表示する処理を含む。
【0015】
この構成によると、可動部の動作を開始させようとすると、警告表示がされる。よって、操作部を操作する作業者は、第2の側における作業領域に作業者がいることに気付くことができる。このため、操作部を操作する作業者は、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者に対して声を掛ける等することにより、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を確保した上で、可動部の動作を開始させることができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記部品実装機は、さらに、状況表示灯を有し、前記部品実装機の制御処理は、前記状況表示灯を点灯させる処理を含む。
【0017】
この構成によると、警告表示灯を見ることにより、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者は、第1の側で操作部を操作する作業者がいることに気付くことができる。このため、第2の側における作業領域で作業を行なう作業者はメンテナンス作業を中止することにより、安全を確保することができる。
【0018】
なお、本発明は、このような特徴的なステップを含む部品実装機の制御方法として実現することができるだけでなく、部品実装機の制御方法に含まれる特徴的なステップを処理部とする部品実装機として実現することができる。また、部品実装機の制御方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、作業者の安全を確保することができる部品実装機の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る部品実装機について説明する。
まず、図1〜図5を用いて、部品実装機の構成を説明する。
【0021】
図1は、部品実装機の外観を示す図である。
図1(a)は、部品実装機を前面斜め上から見た斜視図であり、図1(b)は、部品実装機を後面斜め上から見た斜視図である。
【0022】
部品実装機1は、基板上に複数種類の電子部品を実装する装置であり、図1(a)および図1(b)に示すように、前面操作部2と後面操作部3とを備えている。
【0023】
前面操作部2は、前面タッチパネル2aと前面ボタン部2bとから構成される。前面タッチパネル2aは、作業者が触れることでメンテナンス作業等に関する指示を部品実装機1に与えることができる表示装置であり、たとえば液晶のタッチパネルである。
【0024】
前面ボタン部2bは、全体の動作等に係る指示を部品実装機1に与える複数のボタンからなるボタン群である。後面操作部3も同様に後面タッチパネル3aと後面ボタン部3bとから構成される。
【0025】
つまり、部品実装機1は、前面からも後面からも作業者の指示を受け付けることができる部品実装機である。
【0026】
なお、前面操作部2および後面操作部3は、実質的にいずれか一方のみが作業者の指示を受け付け可能となるように排他制御される。これら操作部における表示内容およびボタンの配置等については図6を用いて後述する。
【0027】
また、部品実装機1は、稼働状況を作業者に視認させる状況表示灯4と、基板に実装する部品が一時的に置かれるフィーダテーブル5〜8とを備える。部品実装機1の主電源の投入および遮断を行う電源スイッチ9は前面に備えられている。
【0028】
2つの前側カバー10および2つの後側カバー11はそれぞれ開閉可能であり、それらを必要に応じて開けた状態で部品実装機1の内部の各部に対するメンテナンス作業が行われる。
【0029】
部品実装機1の前面には、それぞれマット上に人が載った事を感知するマットセンサである、前面操作部感知用センサ41と、2つの前面フィーダ部感知用センサ21とが設けられている。前面操作部感知用センサ41は、前面操作部2を操作する作業者を感知できる位置に設けられている。2つの前面フィーダ部感知用センサ21は、フィーダテーブル5および6の前面に設けられている。つまり、2つの前面フィーダ部感知用センサ21は、前側カバー10を開けて、部品実装機1の内部の各部に対するメンテナンス作業を行なう作業者を感知できる位置に設けられている。
【0030】
同様に部品実装機1の後面にも、後面操作部3を操作する作業者を感知できる位置に後面操作部感知用センサ42が設けられ、後側カバー11を開けて、部品実装機1の内部の各部に対するメンテナンス作業を行なう作業者を感知できる位置に2つの後面フィーダ部感知用センサ22が設けられている。
【0031】
以下では、各センサは、人を感知したときにONし、人を感知していないときにOFFするものとする。
【0032】
なお、請求項に示す操作部は、前面操作部2(または後面操作部3)に対応し、請求項に示すセンサは、後面フィーダ部感知用センサ22(または前面フィーダ部感知用センサ21)に対応する。また、請求項に示す第2の側における作業者の作業領域は、後面フィーダ部感知用センサ22の上面部(センサの感知領域)または前面フィーダ部感知用センサ21の上面部(センサの感知領域)に対応する。さらに、請求項に示す表示部は、前面タッチパネル2a(または後面タッチパネル3a)に対応する。
【0033】
図2は、部品実装機1の主要な内部構成を示す第1の図である。
部品実装機1は、4つの移載ヘッド15と、各移載ヘッド15をX軸方向およびY軸方向に移動させるXYユニット16とを備える。なお、前側に本来存在する2つの移載ヘッド15は図示の都合上省略されている。
【0034】
また、図中に示すように、X軸方向は部品実装機1における基板の搬送方向と平行な方向であり、Y軸方向はX軸方向に垂直かつ基板の板面に平行な方向である。
【0035】
図2に示すように、XYユニット16は、前側と後側のそれぞれに2つずつ存在し、各XYユニット16は、X軸方向に平行なビーム17を1つずつ配置する。従って、移載ヘッド15も、前側と後側の2つのビーム17上のそれぞれに1つずつ配置される。
【0036】
移載ヘッド15はXYユニット16によりビーム17上をX軸方向に移動させられる。またビーム17はXYユニット16により、X軸方向と平行を保ちながらY軸方向に移動させられる。これにより、移載ヘッド15は、X軸方向およびY軸方向に移動する。
【0037】
移載ヘッド15は、X軸方向およびY軸方向に移動しながら、部品の吸着および基板への部品の装着を繰り返す構成部であり、部品を吸着し基板に装着するノズル15aを複数備えている。
【0038】
また、前後に向き合って存在する一組の移載ヘッド15は、1つの基板に対し交互に部品を装着することができる。このような1つの基板に対し交互に部品を装着することを「交互打ち」という。つまり、部品実装機1は交互打ちの部品実装機である。
【0039】
また、部品実装機1において、前後に向き合って存在する移載ヘッド15は二組存在する。つまり、部品実装機1は2つの装着ステージを有している。
【0040】
各移載ヘッド15が基板に装着する部品は、例えばテープフィーダによって供給される。テープフィーダは、リール状に巻かれた部品テープを保持しており、部品を供給する部品供給部の一例である。また、複数のテープフィーダは一括交換台車20により、一括して部品実装機1にセットすることができる。つまり、一括交換台車20は部品供給部を一括して交換することができる器具であり、部品実装機1に部品を供給する部品供給部の一例でもある。
【0041】
例えば、部品装着の対象となる基板の種類を変更する場合、一括交換台車20ごと取り替えることで、基板に装着する部品の組を一括して変更することができる。
【0042】
一括交換台車20はそれぞれの装着ステージの前後に1台ずつセット可能であり、図示していないが、部品実装機1の後側にも各装着ステージに対し1台ずつセットすることができる。
【0043】
図3は、部品実装機1の主要な内部構成を示す第2の図である。
部品実装機1は、基板を搬送する基板コンベア31を各装着ステージに備えている。また、各基板コンベア31の下には、下受ブロック30を備えている。各基板コンベア31は、2つのコンベア幅寄せ部31a、31bにより2つのレールの間隔が変更される。例えば、下受ピンの交換の際には、下受ブロック30が上昇可能なように2つのレールの間隔が広げられる。
【0044】
基板コンベア31により搬送されてきた基板は、下受ブロック30に保持されている複数の下受ピン(図示せず)により支えられ、1組の移載ヘッド15により部品が装着される。
【0045】
例えば、基板は、部品実装機1の前側から見て左から右に搬送される。つまり、1つの基板は左側の装着ステージで交互打ちにより部品を装着され、更に、右側の装着ステージで交互打ちにより部品を装着される。
【0046】
図4は、部品実装機1の構成概要を示す上面図である。なお、図の下方向が部品実装機1の前側である。また、各移載ヘッド15の下にはそれぞれXYユニット16が存在するが、図示および説明の簡略化のためにXYユニット16についての図示および説明は省略する。また、各XYユニット16は、それぞれが備えるビーム17をY軸方向に移動させる。
【0047】
図4に示すように、部品実装機1は、図1〜図3を用いて説明した各構成部以外に、ノズルステーション32と、ラインカメラ33とを備えている。
【0048】
ノズルステーション32は複数種のノズルを保持する台であり、移載ヘッド15は、取り付けられているノズルをノズルステーション32に置かれたノズルと交換することができる。また、ラインカメラ33は移載ヘッド15が吸着した部品の種類、吸着状態などの部品に関する情報を認識するためのカメラであり、レンズ等の光学系を備えている。ノズルステーション32およびラインカメラ33は4つの移載ヘッド15のそれぞれに対応して1つずつ存在する。
【0049】
また、図4に示すように、部品実装機1において、上流側つまり左側の装着ステージを第1装着ステージ102、下流側つまり右側の装着ステージを第2装着ステージ105とする。
【0050】
また、部品実装機1において移動可能であり位置の制御が可能な構成要素を可動部と呼ぶ。例えば、移載ヘッド15、ビーム17およびXYユニット16のそれぞれ、およびそれらの組み合わせによる部分は可動部である。本実施の形態においては、各装着ステージの前後のそれぞれに存在する移載ヘッド15とビーム17との組を1つの可動部としても扱い、その説明を行う。
【0051】
具体的には、図4に示すように、第1装着ステージ102の前側の移載ヘッド15とビーム17とを第1前側可動部103、第1装着ステージ102の後側の移載ヘッド15とビーム17とを第1後側可動部104、第2装着ステージ105の前側の移載ヘッド15とビーム17とを第2前側可動部106、第2装着ステージ105の後側の移載ヘッド15とビーム17とを第2後側可動部107として説明を行う。
【0052】
上記各可動部は、全体としてY軸方向に移動することができる。また、各可動部において移載ヘッド15は、ビーム17上をX軸方向に移動することができる。
【0053】
図5は、部品実装機1の機能的な主要構成を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、部品実装機1は、機能的な構成として、前面操作部2、後面操作部3、判定部100、制御部101、第1前側可動部103、第1後側可動部104、第2前側可動部106、第2後側可動部107、前面操作部感知用センサ41、前面フィーダ部感知用センサ21、後面操作部感知用センサ42、後面フィーダ部感知用センサ22、および通信I/F(インタフェース)部110を含む。
【0054】
なお、上述のように、第1前側可動部103および第1後側可動部104のそれぞれは第1装着ステージ102における部品装着のための可動部である移載ヘッド15とビーム17とを含んでおり、第2前側可動部106および第2後側可動部107のそれぞれは第2装着ステージ105における部品装着のための可動部である移載ヘッド15とビーム17とを含んでいる。
【0055】
前面操作部2および後面操作部3は、図1を用いて説明したように、作業者が部品実装機1に指示を与えるための構成部であり、それぞれ部品実装機1の前側および後側に設置されている。
【0056】
判定部100は、前面操作部感知用センサ41、前面フィーダ部感知用センサ21、後面操作部感知用センサ42、および後面フィーダ部感知用センサ22の感知結果に基づいて、作業者の存在位置を判定する処理部である。
【0057】
制御部101は、判定部100の判定結果に応じ、各可動部、各操作部および状況表示灯4を制御する処理部である。
【0058】
例えば、制御部101は、前面および後面に作業者がそれぞれいることを感知した際に、タッチパネルに作業者がいることを警告表示したり、部品実装機1の可動部の動作を制限したり、警告表示灯を点灯させたりする。また、可動部の動作を制限しているときに作業者が可動部の動作を開始させるための操作を行なった場合には、制御部101は、作業者に対して、可動部の動作を開始させるための操作をさらに要求する。なお、制御部101の詳細な動作については後述する。
【0059】
判定部100および制御部101の処理は、プロセッサ上でプログラムを実行することにより実現される。
【0060】
通信I/F部110は、他のコンピュータとの間の通信を行なうための処理部である。
図6は、前面操作部2における前面タッチパネル2aの表示例および前面ボタン部2bのボタンの配置例を示す図である。なお、図6に示す前面タッチパネル2aは、一例として、作業者がメンテナンス作業に関する指示を行うためのメンテナンスメニュー画面を表示している。また、後面操作部3における画面表示、ボタンの配置、およびそれらの機能も前面操作部2と同じであり、図6においてかっこ内の符号が後面操作部3における各部の符号である。
【0061】
図6に示すように、前面ボタン部2bはSELECTボタン2cを含む。SELECTボタン2cは作業者が前面操作部2を有効にするための指示を部品実装機1に与えるためのボタンである。
【0062】
このボタンが作業者に押されONになると、前面操作部2が有効になり、その後の作業者の指示の受付が可能となる。なお、SELECTボタン2cがONになると、SELECTボタン2cの左上部にあるインジケータ(図中ではSELECTボタン2c内の左上部の円で表現している。)が点灯する。
【0063】
また、SELECTボタン2cがONの場合、後面操作部3内のSELECTボタン3cはOFFになる。逆に、SELECTボタン3cがONの場合、前面操作部2内のSELECTボタン2cはOFFになる。つまり、前面操作部2および後面操作部3の双方から同時に部品実装機1に指示を与えることはできない。
【0064】
また、前面ボタン部2b内にあるUNLOCKボタンは、自身以外の前面操作部2内の全てのボタンを有効にするためのボタンである。
【0065】
作業者は、部品実装機1の前側(後側)にいる場合、SELECTボタン2c(3c)をONにし、前面タッチパネル2a(後面タッチパネル3a)に表示されたボタンの中から所望するメンテナンス作業に対応するボタンを押す。これにより、当該メンテナンス作業のための画面に遷移する。
【0066】
例えば、作業者により、「下受ピン交換」と表示されたボタンが押されると、図7に示す画面に遷移する。作業者は、図7に示す画面に従って、下受ピン交換作業を行なうこととなる。
【0067】
次に、図8〜図15を用いて、部品実装機1が実行する処理について説明する。
部品実装機1では、図8、図9および図12に示すフローチャートで特定される処理が並列して実行されているものとする。
【0068】
図8は、前面操作部2および後面操作部3のうち作業者の操作入力を有効とする操作部を決定する処理のフローチャートである。
【0069】
以下の説明では、「現許可操作部」とは、現在、作業者からの操作入力を有効としている操作部を示し、「新許可操作部」とは、これから、作業者の操作入力を有効とする操作部を示す。また、「現許可操作部」および「新許可操作部」のそれぞれは、「無効」、「前面」、「後面」の3状態を有するものとする。「無効」とは、前面操作部2および後面操作部3からの操作入力を無効とする状態を示す。「前面」とは、前面操作部2からの操作入力のみを有効とする状態を示す。「後面」とは、後面操作部3からの操作入力のみを有効とする状態を示す。なお、現許可操作部の状態および新許可操作部の状態は変数に記憶される。
【0070】
初期設定として、制御部101は、現許可操作部の状態を無効とする(S22)。
制御部101は、100msec待機した後(S24)、初期設定として、新許可操作部の状態を無効とする(S26)。なお、制御部101の待機時間は100msecに限定されるものではなく、それ以外の時間であっても良い。
【0071】
判定部100は、前面操作部2を操作できる位置に作業者がいるか否かを判定する(S28)。つまり、判定部100は、前面操作部感知用センサ41がONしているか否かを判定する。
【0072】
前面操作部2を操作できる位置に作業者がいないと判定した場合には(S28でNO)、判定部100は、後面操作部3を操作できる位置に作業者がいるか否かを判定する(S30)。つまり、判定部100は、後面操作部感知用センサ42がONしているか否かを判定する。
【0073】
前面操作部2を操作できる位置には作業者がいないと判定し、かつ後面操作部3を操作できる位置に作業者がいると判定した場合には(S30でYES)、制御部101は、新許可操作部の状態を後面に設定する(S32)。
【0074】
前面操作部2を操作できる位置にも、後面操作部3を操作できる位置にも作業者がいないと判定した場合には(S30でNO)、制御部101は、新許可操作部の状態を無効に設定する(S34)。
【0075】
前面操作部2を操作できる位置に作業者がいると判定した場合には(S28でYES)、判定部100は、後面操作部3を操作できる位置に作業者がいるか否かを判定する(S36)。つまり、判定部100は、後面操作部感知用センサ42がONしているか否かを判定する。
【0076】
前面操作部2を操作できる位置に作業者がいると判定し、かつ後面操作部3を操作できる位置に作業者がいないと判定した場合には(S36でNO)、制御部101は、新許可操作部の状態を前面に設定する(S38)。
【0077】
前面操作部2を操作できる位置および後面操作部3を操作できる位置の双方に作業者がいると判定した場合には(S36でYES)、制御部101は、現許可操作部の状態が無効か否かを判断する(S40)。
【0078】
現許可操作部の状態が無効であれば(S40でYES)、制御部101は、優先的に前面操作部2からの操作入力を受け付けるために、新許可操作部の状態を前面に設定する(S42)。現許可操作部の状態が無効以外であれば(S40でNO)、現在の状態を維持するために、以降の処理は行なわず、S24に戻る。
【0079】
新許可操作部の状態が設定された後、制御部101は、現許可操作部の状態と新許可操作部の状態とが異なっているか否かを判断する(S44)。
【0080】
現許可操作部の状態と新許可操作部の状態とが等しければ(S44でNO)、以降の処理は行なわず、S24に戻る。
【0081】
現許可操作部の状態と新許可操作部の状態とが異なっていれば(S44でYES)、制御部101は、前面操作部2および後面操作部3の状態を、新許可操作部の状態に切り替える(S46)。つまり、新許可操作部の状態が前面であれば、前面操作部2からの操作入力を有効とし、後面操作部3からの操作入力を無効とする。新許可操作部の状態が後面であれば、前面操作部2からの操作入力を無効とし、後面操作部3からの操作入力を有効とする。新許可操作部の状態が無効であれば、前面操作部2および後面操作部3の双方からの操作入力を無効とする。
【0082】
次に、制御部101は、現許可操作部の状態を、新許可操作部の状態で書き換え(S48)、S24に戻る。
【0083】
判定部100および制御部101は、S24からS48までの処理を繰り返し実行する。これにより、作業者が操作を行なう場合にのみ操作部からの操作入力を有効とし、作業者が操作を行なわない場合には操作部からの操作入力を無効とすることができる。よって、作業者がいないにもかかわらず、操作部に物がぶつかる等して操作入力が行なわれることによる設定誤り等を防止することができる。
【0084】
また、2つの操作部から2人の作業者が操作入力を行なおうとした場合には、先に、操作部の位置に到着した作業者からの入力のみを有効にすることができる。これにより、2人の作業者が異なる操作を行なうことによる設定誤り等を防止することができる。
【0085】
図9は、前面タッチパネル2aおよび後面タッチパネル3aの電源のON/OFF制御処理、ならびに部品実装機1の前後に作業者がいる場合の警告処理のフローチャートである。
【0086】
以下の説明では、「現表示操作部」とは、現在のタッチパネルの表示状態を示し、「新表示操作部」とは、これからのタッチパネルの表示状態を示す。また、「現表示操作部」および「新表示操作部」のそれぞれは、「消去」、「前面」、「後面」の3状態を有するものとする。「消去」とは、前面タッチパネル2aおよび後面タッチパネル3aのいずれの電源もOFFである状態を示す。「前面」とは、前面タッチパネル2aの電源がONであり、後面タッチパネル3aの電源がOFFである状態を示す。「後面」とは、後面タッチパネル3aの電源がONであり、前面タッチパネル2aの電源がOFFである状態を示す。
【0087】
また「警告状態」とは、部品実装機1に対する作業を行なっている作業者の反対側の面に別の作業者がいることを警告するか否かを示す。「警告状態」は、「有り」、「無し」の2状態を有するものとする。「有り」とは、警告を行なう必要がある状態を示し、「無し」とは、警告を行なう必要がない状態を示す。
【0088】
なお、現表示操作部の状態、新表示操作部の状態および警告状態は、変数に記憶される。
【0089】
初期設定として、制御部101は、現表示操作部の状態を消去に設定し、カウンタを0に設定する(S132)。ここで、カウンタは、タッチパネルが消去されるまでの処理回数を数えるカウンタである。カウンタは、部品実装機1のメモリ(図示せず)に設けられている。
【0090】
制御部101は、100msec待機した後(S134)、初期設定として新表示操作部の状態を消去に設定し、警告状態を無しに設定する(S136)。なお、制御部101の待機時間は100msecに限定されるものではなく、それ以外の時間であっても良い。
【0091】
判定部100は、部品実装機1の前面に作業者がいるか否かを判定する(S138)。つまり、判定部100は、前面フィーダ部感知用センサ21または前面操作部感知用センサ41がONしているか否かを判定する。
【0092】
部品実装機1の前面に作業者がいないと判定した場合には(S138でNO)、判定部100は、部品実装機1の後面に作業者がいるか否かを判定する(S140)。つまり、判定部100は、後面フィーダ部感知用センサ22または後面操作部感知用センサ42がONしているか否かを判定する。
【0093】
部品実装機1の前面にも後面にも作業者がいないと判定した場合には(S140でNO)、制御部101は、現表示操作部の状態が消去か否かを判断する(S142)。現表示操作部の状態が消去であると判断した場合には(S142でYES)、すでに、両タッチパネルの電源がOFFされているため、S134に戻る。
【0094】
現表示操作部の状態が消去以外であると判断した場合には(S142でNO)、制御部101は、カウンタが0よりも大きいか否かを判断する(S144)。
【0095】
カウンタの値が0以下になっていれば(S144でNO)、制御部101は、カウンタに50を設定し(S146)、S134に戻る。
【0096】
カウンタの値が0よりも大きければ(S144でYES)、制御部101は、カウンタの値を1つデクリメントする(S148)。制御部101は、カウンタの値が0であるか否かを判断する(S150)。カウンタの値が0でないと判断した場合には(S150でNO)、S134に戻る。
【0097】
カウンタの値が0であると判断した場合には(S150でYES)、制御部101は、現在、電源がONとなっているタッチパネルの電源をOFFにするために、新表示操作部の状態を消去に設定する(S152)。S142〜S152までの処理により、部品実装機1の前面にも後面にも作業者がいない状態が一定時間続いた後に、それまで表示されていたタッチパネルの電源をOFFすることが可能となる。つまり、部品実装機1の前面にも後面にも作業者が存在しないにも関わらず、前面タッチパネル2aまたは後面タッチパネル3aの電源がONとなっている場合には(S142でNO)、初めにカウンタに50がセットされ(S146)、S134〜S150の処理が繰り返し実行される。この繰り返し処理が実行されるたびにカウンタが1つずつデクリメントされ(S148)、カウンタの値が0になった時点で(S150でYES)、新表示操作部の状態が消去に設定される(S152)。これにより、繰り返しを50回実行する時間(一定時間)だけ待機した後に、それまで表示されていたタッチパネルの電源をOFFすることが可能となる。
【0098】
部品実装機1の前面に作業者はいないが、後面に作業者がいると判定した場合には(S140でYES)、制御部101は、新表示操作部の状態を後面に設定する(S154)。
【0099】
部品実装機1の前面に作業者がいると判定した場合には、判定部100は、部品実装機1の後面に作業者がいるか否かを判定する(S156)。つまり、判定部100は、後面フィーダ部感知用センサ22または後面操作部感知用センサ42がONしているか否かを判定する。
【0100】
部品実装機1の前面に作業者がいるが、後面に作業者がいないと判定した場合には(S156でNO)、制御部101は、新表示操作部の状態を前面に設定する(S158)。
【0101】
例えば、図15に示すように部品実装機1の前面にも後面にも作業者がいると判断した場合には(S156でYES)、制御部101は、警告状態を有りに設定する(S160)。その後、制御部101は、現許可操作部の状態が無効以外か否か(現許可操作部の状態が前面または後面か否か)を判断する(S162)。現許可操作部の状態は、図8のフローチャートで示した処理により設定される。
【0102】
現許可操作部の状態が無効以外であれば(S162でYES)、制御部101は、新表示操作部の状態に、現許可操作部の状態を上書きする(S164)。これにより、作業者が操作部に対して操作入力を行なっている面のタッチパネルをON状態にすることができる。
【0103】
現許可操作部の状態が無効であれば(S162でNO)、優先的に前面タッチパネル2aをONにするために、制御部101が、新表示操作部の状態を前面に設定する(S166)。
【0104】
S152、S154、S158、S164およびS166の処理実行後に、制御部101は、現表示操作部の状態と新表示操作部の状態とが異なるか否かを判定する(S168)。
【0105】
両者が異なっていれば(S168でYES)、制御部101は、新表示操作部の状態に基づいて、前面タッチパネル2aおよび後面タッチパネル3aの状態を切り替える(S170)。つまり、制御部101は、新表示操作部の状態が消去の場合には、前面タッチパネル2aおよび後面タッチパネル3aの電源をOFF状態にする。また、制御部101は、新表示操作部の状態が前面の場合には、前面タッチパネル2aの電源をON状態にし、後面タッチパネル3aの電源をOFF状態にする。さらに、制御部101は、新表示操作部の状態が後面の場合には、前面タッチパネル2aの電源をOFF状態にし、後面タッチパネル3aの電源をON状態にする。
【0106】
次に、制御部101は、現表示操作部の状態に、新表示操作部の状態を上書きする(S172)。
【0107】
現表示操作部の状態と新表示操作部の状態とが等しい場合には(S168でNO)、S170およびS172の処理は実行されない。
【0108】
S172の処理後、または、現表示操作部の状態と新表示操作部の状態とが等しい場合に(S168でNO)、制御部101は、カウンタの値を0にリセットする(S174)。
【0109】
制御部101は、警告状態が有りまたは無しのいずれであるかを判断する(S176)。警告状態が有りであると判断した場合には(S176でYES)、制御部101は、警告画面表示処理を実行する(S178)。つまり、制御部101は、電源がONしているタッチパネル上に、反対側の面に作業者がいることを知らせるための警告メッセージを表示する(S178)。例えば、図10に示すように、制御部101は、電源がONしているタッチパネル上に、「反対面に作業者がいます」との警告メッセージ302を表示する。なお、警告メッセージ302の内容、大きさ、表示位置はこれに限定されるものではなく、反対面に作業者がいることを知らせる内容であればどのような内容であってもよい。
【0110】
また、制御部101は、状況表示灯4を点灯させ、ブザー(図示せず)を鳴らす(S179)。これにより、メンテナンス作業を行なう作業者(上記反対側の面の作業者)に対しても、反対側の面に、操作部を操作する作業者がいることを伝えることができる。これにより、例えば、部品実装機1の内部に対するメンテナンス作業を行なっている場合には、作業者はメンテナンス作業を中止することにより、安全を確保することができる。
【0111】
次に、制御部101は、部品実装機1に対するメンテナンス作業を行なう作業者の安全を確保するために、部品実装機1の可動部の動作を制限する処理を行なう(S180)。この可動部動作制限処理(S180)の詳細については、後述する。
【0112】
警告状態が無しであると判断した場合には(S176でNO)、制御部101は、タッチパネルに表示されている警告メッセージ(例えば、図10の警告メッセージ302)を、タッチパネル上から消去する(S182)。
【0113】
S180またはS182の処理後、S134に戻る。
判定部100および制御部101は、S132からS182までの処理を繰り返し実行する。これにより、操作部を操作している作業者の作業面とは反対側の面に他の作業者がいる場合に、操作部を操作している作業者および上記他の作業者の双方に対して警告を行なう。これにより、操作部を操作している作業者は、反対側の面の作業者に声をかける等して、反対側の面の作業者の安全を確保した上で、作業を続行することができる。一方、警告を受けたり、声を掛けられたりした反対側の面の作業者は、作業を中止するなどして、自身の安全を確保することができる。
【0114】
図11は、可動部動作制限処理(図9のS180)の詳細なフローチャートである。
以下の説明では、制御部101に、予め制御モードが設定されているものとする。制御モードには「0」から「4」までの5段階があり、作業者の熟練度に応じて設定されるものとする。数値が小さいほど熟練度が高い作業者用の制御モードであるとする。なお、制御モードは、以下に説明する5段階に限定されるものではなく、自由に設計できるものとする。
【0115】
判定部100は、電源がONしているタッチパネルの面と反対側の面の、部品実装機1の内部に対するメンテナンス作業を行なうことができる位置に作業者がいるか否かを判定する(S212)。つまり、反対側の面が前面の場合には、判定部100は、前面フィーダ部感知用センサ21がONしているか否かを判定する。また、反対側の面が後面の場合には、判定部100は、後面フィーダ部感知用センサ22がONしているか否かを判定する。
【0116】
メンテナンス作業を行なうことができる位置に作業者がいると判定した場合には(S212でYES)、制御部101は、設定されている制御モードの値を判断する(S214〜S220)。
【0117】
制御モードが0の場合には(S220でNO)、制御部101は、標準制御処理を行なう(S230)。つまり、制御モードが0の場合には、全可動部(第1前側可動部103、第1後側可動部104、第2前側可動部106、および第2後側可動部107)の動きを制限することがないように、制御部101は、各ビーム17の移動速度や移動加速度等の、動きに関するパラメータを決定する。
【0118】
制御モードが1の場合には(S214でYES)、制御部101は、該当ビームのみに対して低速制御処理を行なう(S222)。つまり、第1前側可動部103の前に位置する前面フィーダ部感知用センサ21がONしている場合には、制御部101は、第1前側可動部103のビーム17が低速で移動するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。同様に、第1後側可動部104の前に位置する後面フィーダ部感知用センサ22がONしている場合には、制御部101は、第1後側可動部104のビーム17が低速で移動するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。また、第2前側可動部106の前に位置する前面フィーダ部感知用センサ21がONしている場合には、制御部101は、第2前側可動部106のビーム17が低速で移動するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。また、第2後側可動部107の前に位置する後面フィーダ部感知用センサ22がONしている場合には、制御部101は、第2後側可動部107のビーム17が低速で移動するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。
【0119】
制御モードが2の場合には(S216でYES)、制御部101は、該当ビームのみに対して停止制御処理を行なう(S224)。つまり、第1前側可動部103の前に位置する前面フィーダ部感知用センサ21がONしている場合には、制御部101は、第1前側可動部103のビーム17が停止するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。同様に、第1後側可動部104の前に位置する後面フィーダ部感知用センサ22がONしている場合には、制御部101は、第1後側可動部104のビーム17が停止するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。また、第2前側可動部106の前に位置する前面フィーダ部感知用センサ21がONしている場合には、制御部101は、第2前側可動部106のビーム17が停止するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。また、第2後側可動部107の前に位置する後面フィーダ部感知用センサ22がONしている場合には、制御部101は、第2後側可動部107のビーム17が停止するように、そのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。
【0120】
制御モードが3の場合には(S218でYES)、制御部101は、該当ステージの全ビームに対して停止制御処理を行なう(S226)。つまり、第1装着ステージ102の前後に存在する前面フィーダ部感知用センサ21または後面フィーダ部感知用センサ22がONしている場合には、制御部101は、第1装着ステージ102に含まれる第1前側可動部103のビーム17および第1後側可動部104のビーム17が停止するように、2つのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。また、第2装着ステージ105の前後に存在する前面フィーダ部感知用センサ21または後面フィーダ部感知用センサ22がONしている場合には、制御部101は、第2装着ステージ105に含まれる第2前側可動部106のビーム17および第2後側可動部107のビーム17が停止するように、2つのビーム17の動きに関するパラメータを決定する。
【0121】
制御モードが4の場合には(S220でYES)、制御部101は、全ステージの全ビームに対して停止制御処理を行なう(S228)。つまり、制御部101は、2つの前面フィーダ部感知用センサ21および2つの後面フィーダ部感知用センサ22のいずれかがONすると、全てのビーム17が停止するように、全てのビーム17の動きに関するパラメータを決定する(S228)。
【0122】
制御部101は、S222〜S230の処理で決定されたパラメータに基づいて動くように、各ビーム17に対して動作指令を出力する(S232)。
【0123】
以上説明した可動部動作制限処理(図9のS180、図11)により、電源がONしているタッチパネルの面と反対側の面のフィーダ部感知用センサがONした際に、作業者がメンテナンス作業の対象とする可動部に位置するビーム17を低速動作または停止させることができる。このため、作業者は安全にメンテナンス作業を実行することができる。
【0124】
また、制御モード4は、部品実装機1を無人運転させる場合などに特に有効であり、部外者が部品実装機1の内部に手を挿入した場合の安全を確保することができる。
【0125】
図12は、部品実装機1の操作に対する動作実行処理のフローチャートである。
判定部100は、前面操作部2および後面操作部3を含む部品実装機1に対する操作が行なわれるまで待機する(S190)。
【0126】
操作が行なわれた場合には、判定部100は、その操作が可動部動作開始操作か否かを判定する(S192)。可動部動作開始操作とは、部品実装機1の可動部(第1前側可動部103、第1後側可動部104、第2前側可動部106および第2後側可動部107のいずれかの可動部)の動作を開始させるための動作である。可動部動作開始操作を行なうことにより、通常は、可動の動作が開始される。
【0127】
行なわれた操作が可動部動作開始操作であると判定した場合には(S192でYES)、判定部100は、前面タッチパネル2aまたは後面タッチパネル3aのいずれかに警告メッセージが表示されているか否かを判定する(S194)。つまり、判定部100は、図9に示した処理で設定した警告状態が有りであれば、警告メッセージが表示されていると判定し、無しであれば、警告メッセージが表示されていないと判定する。
【0128】
警告メッセージが表示されていると判定した場合には(S194でYES)、制御部101は、電源がONしているタッチパネル上に、警告画面を表示した後、可動部動作開始操作要求画面を表示する(S196)。このとき、制御部101は、可動部の動作を開始させない。図13は、警告画面の一例を示す図である。S196の処理では、反対面に作業者がいることを再度注意喚起するために、例えば、全画面表示で反対面に作業者がいることの警告メッセージを表示する。可動部動作開始操作要求画面とは、可動部の動作を開始させるために必要な操作を要求するための画面であり、その一例を図14に示す。図14では、可動部の動作を開始させるために必要な操作の一例として、部品実装機1に設けられたSERVOスイッチ(図示せず)をONにして、ボタン部(前面ボタン部2bまたは後面ボタン部3b)のUNLOCKボタンを押し、ボタン部のSTARTボタンを押すことを作業者に要求している。このように、可動部の動作を開始させるために所定の操作を必要としたり、警告画面を表示したりすることにより、作業者は、反対側に作業者がいることに気付くことができる。また、通常であれば可動部の動作が開始される状況であっても、可動部の動作を開始させるためにさらなる操作の要求がなされる。その要求が満たされるまでは可動部は稼働しない。このため、操作部を操作する作業者は、反対側の作業者に声を掛ける等して、反対側の作業者の安全を確保した上で、可動部の動作を開始させることができる。また、可動部の動作を開始させるための操作を複雑な操作とすることにより、誤った操作により可動部が動き出す等の事故を未然に防止することができる。
【0129】
なお、可動部の動作を開始させるための操作は、これに限定されるものではなく、他の操作であってもよい。
【0130】
判定部100は、前面操作部2および後面操作部3を含む部品実装機1に対する操作が行なわれるまで待機する(S198)。
【0131】
判定部100は、行なわれた操作が、可動部動作開始操作要求画面で要求した操作であるか否かを判定する(S200)。つまり、SERVOスイッチがONにされ、UNLOCKボタンとSTARTボタンとが押されたか否かを判定する(S200)。
【0132】
行なわれた操作が、上記要求した操作であると判定した場合には(S200でYES)、制御部101は、当該操作に対応した動作を実行する(S202)。つまり、制御部101は、第1前側可動部103、第1後側可動部104、第2前側可動部106および第2後側可動部107を動作させる。
【0133】
行なわれた操作が、上記要求した操作でない場合には(S200でNO)、S190に戻り、新たに操作が行なわれるまで待機する。これにより、要求した操作以外の操作が行なわれることにより可動部が動作するのを防止することができる。
【0134】
行なわれた操作が可動部動作開始操作でない場合には(S192でNO)、制御部101は、その操作に対応した動作を実行する(S202)。
【0135】
また、行なわれた操作が可動部動作開始操作ではあるが、警告メッセージが表示されていない場合には(S194)、操作面の反対側に作業者はいない。このため、制御部101は、可動部の動作を開始するための操作の要求を行なうことなく、可動部の動作を開始させる(S202)。
【0136】
判定部100および制御部101は、S190からS202までの処理を繰り返し実行する。これにより、作業者の操作面とは反対側の面に別の作業者がいる場合に、操作を行なう作業者が可動部の動作を開始させようとした場合には、可動部の動作を開始させるための特別な操作を要求するとともに警告画面を表示する。このため、操作を行なう作業者は、別の作業者に声を掛ける等して、別の作業者の安全を確保した上で、可動部の動作を開始させるための操作を行なうことができる。よって、メンテナンス作業中の作業者の安全を確保することが可能となる。
【0137】
以上説明したように、本実施の形態によると、部品実装機の前側および後側のそれぞれで作業者が作業を行なっており、かつ、操作部を操作する作業者が反対側の作業者に気付かない場合であっても、反対側の作業者の安全を考慮した部品実装機の制御処理が実行される。このため、反対側の作業者の安全を確保することができる。
【0138】
例えば、反対側に作業者がいることがタッチパネルに警告表示される。このため、警告表示を見ることにより、操作部を操作する作業者は、反対側に作業者がいることに気付くことができる。このため、操作部を操作する作業者は、反対側の作業者に対して声を掛ける等することにより、反対側の作業者の安全を確保した上で、作業を続行することができる。
【0139】
また、反対側に作業者がいる場合には、部品実装機の可動の動作が制限される。このため、反対側の作業者は安全にメンテナンス作業を実行することができる。
【0140】
さらに、操作部を操作する作業者が可動部の動作を開始させようとしたときに、反対側に作業者がいる場合には、可動部の動作を開始するためのさらなる操作が要求される。よって、可動部が安易に動作を開始するのを防ぐことができるとともに、操作部を操作する作業者は、反対側に作業者がいることに気付くことができる。このため、操作部を操作する作業者は、反対側の作業者に対して声を掛ける等することにより、反対側の作業者の安全を確保した上で、可動部の動作を開始させることができる。
【0141】
さらにまた、操作部を操作する作業者が可動部の動作を開始させようとしたときに、反対側に作業者がいる場合には、反対側に作業者がいることがタッチパネルに警告表示される。よって、操作部を操作する作業者は、反対側に作業者がいることに気付くことができる。このため、操作部を操作する作業者は、反対側の作業者に対して声を掛ける等することにより、反対側の作業者の安全を確保した上で、可動部の動作を開始させることができる。
【0142】
また、部品実装機の前側および後側のそれぞれで作業者が作業を行なっている場合には、警告表示灯を見ることにより、メンテナンス作業を行なっている作業者は、反対側に作業者がいることに気付くことができる。このため、メンテナンス作業を行なっている作業者はメンテナンス作業を中止することにより、安全を確保することができる。
【0143】
以上、本発明の実施の形態に係る部品実装システムについて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0144】
例えば、上述の実施の形態では、操作部を操作する作業者がいるか否かを感知するために、前面フィーダ部感知用センサ21および後面フィーダ部感知用センサ22を用いたが、このようなセンサを用いなくとも、操作部からの操作入力が継続して行なわれているか否かを判定しその判定結果に基づいて操作部を操作する作業者がいるか否かを感知するようにしてもよい。
【0145】
また、上述の実施の形態では前面フィーダ部感知用センサ21または後面フィーダ部感知用センサ22が作業者を感知した際に、ビームの動きを制限することとしたが、それ以外の可動部を制限するものであっても良い。例えば、テープフィーダの動きを制限するものであってもよいし、基板コンベア31の動きを制限するものであってもよい。
【0146】
また、操作部が前面または後面の一方の面のみに設けられている部品実装機であっても本発明は適用可能である。
【0147】
また、本発明は、各面に2種類のセンサが設けられているものには限定されず、各面に1種類のセンサのみが設けられている構成であっても本発明を適用可能である。例えば、一方の面に操作部感知用センサが設けられており、反対側の面にフィーダ部感知用センサが設けられている構成であってもよい。
【0148】
さらに、部品実装機が備えるステージ数および移載ヘッドの数も上述の実施の形態の数に限定されるものではない。
【0149】
さらにまた、部品実装機は、交互打ちの部品実装機に限定されるものではなく、1つの移載ヘッドが1枚の基板に対して部品を実装する部品実装機であってもよい。
【0150】
また、移載ヘッドは、いわゆるロータリーヘッド式の移載ヘッドであってもよい。
また、上述の実施の形態では、フィーダ部感知用センサおよび操作部感知用センサの一例として、マットセンサを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、赤外線センサや、光電センサなどのように、人の存在を感知できるセンサを用いることが可能である。
【0151】
また、部品実装機1における判定部100および制御部101等の動作は、プロセッサ、メモリ、通信I/F等を備えるコンピュータにより実現することができる。例えば、前面操作部感知用センサ41および後面フィーダ部感知用センサ22からの感知結果を通信I/Fを介してプロセッサが受け取る。プロセッサは、感知結果に基づいて、メモリに記憶された警告画面の表示情報を前面タッチパネル2aに表示する。このようなコンピュータの動作によっても、本発明の部品実装機の制御方法は実現され、また、本発明の部品実装機の動作が実現される。
【0152】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、部品実装機の制御方法に適用でき、特に、作業者の安全性を向上させるための部品実装機の制御方法等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】部品実装機の外観を示す図である。
【図2】部品実装機の主要な内部構成を示す第1の図である。
【図3】部品実装機の主要な内部構成を示す第2の図である。
【図4】部品実装機の構成概要を示す上面図である。
【図5】部品実装機の機能的な主要構成を示す機能ブロック図である。
【図6】前面操作部における前面タッチパネルの表示例および前面ボタン部のボタンの配置例を示す図である。
【図7】下受ピンの交換が行われる場合の前面タッチパネルの表示例を示す図である。
【図8】前面操作部および後面操作部のうち作業者の操作入力を有効とする操作部を決定する処理のフローチャートである。
【図9】前面タッチパネルおよび後面タッチパネルの電源のON/OFF制御処理、ならびに部品実装機の前後に作業者がいる場合の警告処理のフローチャートである。
【図10】警告メッセージを含む表示画面の一例を示す図である。
【図11】可動部の動作を制御する処理のフローチャートである。
【図12】部品実装機の操作に対する動作実行処理のフローチャートである。
【図13】警告画面の一例を示す図である。
【図14】可動部の動作を開始させるために必要な操作を要求するための画面の一例を示す図である。
【図15】部品実装機の前後に作業者がいる状況を説明するための図である。
【符号の説明】
【0155】
1 部品実装機
2 前面操作部
2a 前面タッチパネル
2b 前面ボタン部
2c、3c SELECTボタン
3 後面操作部
3a 後面タッチパネル
3b 後面ボタン部
4 状況表示灯
5〜8 フィーダテーブル
9 電源スイッチ
10 前側カバー
11 後側カバー
15 移載ヘッド
15a ノズル
16 XYユニット
17 ビーム
20 一括交換台車
21 前面フィーダ部感知用センサ
22 後面フィーダ部感知用センサ
30 下受ブロック
31 基板コンベア
31a、31b コンベア幅寄せ部
32 ノズルステーション
33 ラインカメラ
41 前面操作部感知用センサ
42 後面操作部感知用センサ
100 判定部
101 制御部
102 第1装着ステージ
103 第1前側可動部
104 第1後側可動部
105 第2装着ステージ
106 第2前側可動部
107 第2後側可動部
110 通信I/F部
302 警告メッセージ
502、504 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を有する部品実装機の制御方法であって、
前記操作部が設けられている前記部品実装機の第1の側とは異なる第2の側における作業者の作業領域に、当該作業領域への人の侵入を感知するセンサが設けられており、
前記部品実装機の制御方法は、
作業者が前記操作部を操作しているか否かを判定し、
前記センサが人の侵入を感知しているか否かを判定し、
作業者が前記操作部を操作しており、かつ前記センサが人の侵入を感知していると判定した場合には、前記第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を考慮した前記部品実装機の制御処理を実行する
部品実装機の制御方法。
【請求項2】
前記操作部は、表示部を有し、
前記部品実装機の制御処理は、前記表示部に、前記第2の側における作業領域に作業者がいることを警告表示する処理を含む
請求項1記載の部品実装機の制御方法。
【請求項3】
前記部品実装機の制御処理は、前記部品実装機の可動部の動作を制限する処理を含む
請求項1記載の部品実装機の制御方法。
【請求項4】
前記部品実装機の制御処理は、さらに、
前記可動部の動作を制限しているときに、作業者が前記操作部から前記可動部の動作を開始させるための操作入力を行なっているか否かを判定する処理と、
前記可動部の動作を制限しているときに、作業者が前記操作部から前記可動部の動作を開始させるための操作を行なっていると判定した場合には、前記操作部から操作入力を行なう作業者に対して、前記可動部の動作を開始させるための操作入力をさらに要求する処理と、
前記操作部から操作入力を行なう作業者が前記要求に従った操作を行なった場合にのみ、前記可動部の動作を開始させる処理とを含む
請求項3記載の部品実装機の制御方法。
【請求項5】
前記操作部は、表示部を有し、
前記部品実装機の制御処理は、さらに、
前記可動部の動作を制限しているときに、作業者が前記操作部から前記可動部の動作を開始させるための操作入力を行なっていると判定した場合には、前記表示部に、前記第2の側における作業領域に作業者がいることを警告表示する処理を含む
請求項4記載の部品実装機の制御方法。
【請求項6】
前記部品実装機は、さらに、状況表示灯を有し、
前記部品実装機の制御処理は、前記状況表示灯を点灯させる処理を含む
請求項1記載の部品実装機の制御方法。
【請求項7】
操作部を有する部品実装機であって、
前記操作部が設けられている前記部品実装機の第1の側とは異なる第2の側における作業者の作業領域に、当該作業領域への人の侵入を感知するセンサが設けられており、
前記部品実装機は、
作業者が前記操作部を操作しているか否かを判定する手段と、
前記センサが人の侵入を感知しているか否かを判定する手段と、
作業者が前記操作部を操作しており、かつ前記センサが人の侵入を感知していると判定した場合には、前記第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を考慮した前記部品実装機の制御処理を実行する手段と
を備える部品実装機。
【請求項8】
操作部を有する部品実装機を制御するプログラムであって、
前記操作部が設けられている前記部品実装機の第1の側とは異なる第2の側における作業者の作業領域に、当該作業領域への人の侵入を感知するセンサが設けられており、
前記プログラムは、コンピュータに、
作業者が前記操作部を操作しているか否かを判定させ、
前記センサが人の侵入を感知しているか否かを判定させ、
作業者が前記操作部を操作しており、かつ前記センサが人の侵入を感知していると判定した場合には、前記第2の側における作業領域で作業を行なう作業者の安全を考慮した前記部品実装機の制御処理を実行させる
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−232218(P2010−232218A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75149(P2009−75149)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】