説明

部品接合装置及び液滴吐出ヘッド製造装置及び部品接合方法

【課題】容易に高精度な加圧接着接合を行うことが可能な技術の提供。
【解決手段】第1,第2の部品2,3を各々保持する第1,第2保持手段8,9と、各部品2,3を接触及び加圧する加圧手段と、基準となる一方の部品に対して他方の部品を接触及び加圧した状態でその姿勢を一旦保持する倣い保持手段24と、各部品2,3に設けられたアライメントマークに基づいて相対的な位置合わせを行うアライメント手段とを有し、基準となる一方の部品に対して他方の部品を加圧手段により第1の圧力で接触させ、各接合面が互いに密着した状態で倣い保持手段24により各部品2,3を一旦保持し、各部品2,3が接触した状態でアライメント手段により各部品2,3の相対的な位置合わせ後、倣い保持手段24を解除した後、基準となる一方の部品に対して他方の部品を加圧手段により第1の圧力より大きい圧力で接触させ、接着剤を介した状態で各部品2,3を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置の記録ヘッド等の、基材の表面に接合部を有する部品同士を接合する部品接合装置及び部品接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄片からなる部品同士を接合して製品とするものの一つとして、インク吐出用ノズル、いわゆるインクジェット方式の印字ヘッドが挙げられる。このインクジェット方式の印字ヘッドは、インク液滴を吐出するための複数のノズルと、各ノズルの裏側に位置するインク溜まりの容積を圧力によって変化させるための電気機械式変換素子や発熱抵抗体等のアクチュエータを主要構成として備えており、記録信号に応じて選択された位置のアクチュエータが駆動されることにより、インク溜まりを圧縮させてインクをノズルから吐出させるように構成されている。
【0003】
このような印字ヘッドの構成の一つとして、基板上に並べて設けられた複数の圧電素子と、各圧電素子に接合されている振動板と、インクを貯留し振動板の変位により容積変化を生じることで貯留室内の圧力を変化させる圧力室を備えた流路板と、圧力室を挟んで振動板と対向してインク吐出口を有するノズル板とを備えた構成が挙げられる。このような構成を備えた印字ヘッドでは、高密度及び高品質の記録を行うためにヘッドを構成している微細な構成部品の精度を個々に高めなければならないと共に、ノズル板、振動板、圧電素子等の各微細部品を接合して組み立てるときの組立精度(部品相互の位置精度すなわち接合精度)を高めなければならない。特に、組み立ての中でも振動板の変位部と流路板の位置精度、ノズル板と流路板及び振動板で構成される液室部品の位置精度を高めなければ、インクの吐出速度が低下する等により画像品質が低下してしまう。従って、上述のようなインクジェットヘッドを構成している2つの微細部品を自動的に接合する組立装置を構成しようとする場合、2つの微細部品の位置合わせ精度を向上することが要求される。
【0004】
そこで、アライメントピンをピン挿通穴に挿通し、ピン保持プレートと仲介プレートとを接合し、基準マークと第2アライメントマークとに基づいて仲介プレートに対しアライメントプレートを位置決めした状態で接合してアライメント治具を用い、フランジ部に位置決めプレートを配置した状態で位置決め穴にアライメントピンを挿通して位置決め部材とアライメント治具との位置決めを行い、基準ノズル開口と第1のアライメントマークとの平面位置を合わせて単位ヘッドとアライメント治具との位置決めを行うことにより、フランジ部に位置決めプレートを固定して位置決めする技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。また、接合される上ステージ上の部品と下ステージ上の部品において加圧時のずれを測定し、面傾斜設定手段は両方のステージ間のギャップや荷重の測定と合わせて傾斜具合を積極的に利用して位置ずれを緩和するように決定し、この傾斜の補正結果を基に面傾斜補正手段により上ステージ面と下ステージ面の傾きを調整してから再加圧するように構成し、面傾斜補正手段として4個のPZTステージ等を用いる技術が、例えば「特許文献2」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし「特許文献1」に開示された技術では、アライメントピンとピン挿通穴とにクリアランスがないとピンを挿入することができず、このクリアランスを大きくするとアライメント精度が出ないという問題点があり、できるだけクリアランスを小さくしようとしても組み立てのことを考慮するとアライメント精度は5μmが限界となり、接合後の位置ずれも同程度となる。また「特許文献2」に開示された技術では、本加圧時に上ステージ面と下ステージ面とは必ずしも平行とはならないために結果としては接合面での均一な荷重がかからないこととなり、インクを完全に止めるという観点から接合信頼性を高めることができないという問題点がある。また、面傾斜設定手段で設定する補正量は逐次フィードバックされなければならず、フィードバックを随時行うためにはゆっくりとした荷重プロファイルでなだらかに加圧していく必要があり、このように複雑な制御が求められるという問題があり、さらに面傾斜設定手段での計測等に要する時間や面傾斜を補正するために要する時間もかかり、タクトタイムが伸びてしまうという問題点もある。
【0006】
本発明は上述の問題点を解消し、部品同士を第1の圧力(弱圧)で圧接させて倣わせることで平行度調整を行う方法において、一旦その状態で倣い保持するのでそのまま部品を離間させずにアライメントするために高精度で接合位置の調整を行うことができ、倣い保持状態を解除してから接着剤を介して第2の圧力(強圧)で部品同士を加圧することにより、加圧力を増加させても部品同士の平行度が維持されるので加圧位置ずれが生じることなく、結果として容易に高精度な加圧接着接合を行うことが可能な技術の提供を目的とする。このような接合を行うことにより、加圧接合後の位置ずれは1μm以内とすることができ、さらに加圧中の接合面同士の平行度調整を容易に行うことができるので均一荷重による接合を行うことができ、接着剤膜厚の均一な高い接合品質を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、互いに接合され少なくとも一方の接合面に接着剤が塗布される第1の部品及び第2の部品をそれぞれ保持する第1の保持手段及び第2の保持手段と、前記各部品を接触及び加圧する加圧手段と、基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を接触及び加圧した状態でその姿勢を一旦保持する倣い保持手段と、前記各部品に設けられたアライメントマークに基づいて前記各部品の相対的な位置合わせを行うアライメント手段とを有し、基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を前記加圧手段により第1の圧力で接触させ、前記各接合面が互いに密着した状態で前記倣い保持手段により前記各部品を一旦保持し、前記各部品が接触した状態で前記アライメント手段により前記各部品の相対的な位置合わせを行い、位置合わせ後に前記倣い保持手段を解除した後、基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を前記加圧手段により第1の圧力よりも大きな第2の圧力で接触させ、前記接着剤を介した状態で前記各部品を接合することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の部品接合装置において、さらに第1の保持手段及び第2の保持手段は第1の部品及び第2の部品を保持する真空吸着手段及び保持を解除する解除手段をそれぞれ有することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の部品接合装置において、さらに前記アライメント手段は、前記各アライメントマークの相対的な位置ずれを検出する位置検出手段と、前記各部品の位置合わせ調整を行う位置調整手段とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の部品接合装置において、さらに前記加圧手段は位置及び荷重の制御が可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の部品接合装置において、さらに前記倣い保持手段は、第2の保持手段と一体的に設けられた凸球面を有する球面部材と、前記凸球面を受ける凹球面を有する軸受部材と、前記軸受部材を受ける凹球面を有する受け部材と、第2の保持手段の姿勢を保持及び解除可能なロック手段とを有し、前記加圧手段により前記各部品を第1の圧力で互いに接触及び加圧させた際に、前記各部品の倣い動作によって第2の保持手段が変位して前記各部品の平行度が調整されることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の部品接合装置を用いた液滴吐出ヘッド製造装置であって、第1の部品と第2の部品が振動板と流路板であることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の部品接合装置を用いた液滴吐出ヘッド製造装置であって、第1の部品と第2の部品がノズル及び流路板を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、互いに接合される第1の部品及び第2の部品の少なくとも一方に2種類の接着剤を塗布する工程と、前記各部品を互いに対向するように第1の保持手段及び第2の保持手段で保持する工程と、前記各部品を互いに接触させた後に弱圧にて加圧する工程と、基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を接触及び加圧して前記各部品が互いに密着した状態でこの姿勢を保持する工程と、前記各部品を接触させたまま前記各部品に設けられたアライメントマークに基づいて前記各部品の相対的な位置合わせを行う工程と、位置合わせ後に前記各部品の密着状体を一旦解除した後に前記各部品を第1の接着剤を用いて強圧下で加圧接合する工程と、強圧下で加圧接合された前記各部材を紫外線硬化型の第2の接着剤により仮固定する工程とを有し、前記各部品を第1及び第2の接着剤を介した状態で接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、弱圧である第1の圧力下で倣い動作により第1の部品と第2の部品との平行度を合わせた後にこの状態を一時的に保持し、各部品を離間させることなく位置合わせを行うことにより各部品の平行度が調整され、各部品の接合面に均一な荷重が作用した状態で位置合わせを行うことができるので、精度よく位置調整を行うことができる。さらに位置合わせが完了した後、保持状態の解除後に強圧である第2の圧力で各部品を加圧接合することにより、加圧が徐々に増加することで加圧手段の撓み等により第2の固定ベースが傾いたとしても、第1の部品に対して第2の部品が倣うことで絶えず平行度を維持することができるため、加圧中の位置ずれや各部品に不均一な荷重がかかることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を採用した部品接合装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態における部品接合装置による第1の部品と第2の部品との接合動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる部品接合装置の要部概略図である。
【図4】本発明の一実施形態を用いて作成される液滴吐出ヘッドの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に用いられる第2の部品を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に用いられる第1の部品を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施形態に用いられる第1の部品及び第2の部品が重ねられた状態を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態における第1の部品と第2の部品との中心位置間の位置誤差量を説明する概略図である。
【図9】本発明の一実施形態における厚さhの粘弾性体(粘度k)を間に挟んだ上下2枚の面積Aの平面が相対速度Uで運動するときに発生する力Fを説明する概略図である。
【図10】本発明の一実施形態における加圧手段による加圧中に第2の固定ベースの剛性に起因する変形が生じた際の倣い保持手段の状態を示す概略図である。
【図11】本発明の一実施形態を適用可能なサイドシュータ方式の記録ヘッドの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図4ないし図6は、本発明の一実施形態に用いられる液滴吐出ヘッドであるピエゾ(PZT)方式印字ヘッドの概略構成を示している。図4に示すようにピエゾ方式印字ヘッド41は、駆動ユニット43及びこれに接合した液室ユニット42を備えている。駆動ユニット43は、PZTベース55上に複数の圧電素子駆動部54a及び支柱部54bを交互に配設してなり、圧電素子駆動部54a及び支柱部54bはそれぞれ所定の間隔となるようにPZTベース55上に接合されている。
【0018】
液室ユニット42は、インク液滴を吐出する複数のノズル58を有するノズル板51と、図5に示すように各ノズル58に対応して形成された複数の液室57を有する流路板52と、図6に示すように各液室57に対応しかつ圧電素子駆動部54aの振動を各液室57に伝える振動板53とから構成されている。ノズル板51と流路板52及び流路板52と振動板53とは、流路板52の上下面に塗布された接着剤56を介して接合されている。液室ユニット42には、図示しないインク供給機構により供給されたインクが各液室57に供給される。駆動ユニット43の各圧電素子駆動部54a及び支柱部54bの上面は、接着剤56を介して液室ユニット42の下面に接着接合されており、圧電素子駆動部54aを選択的に駆動することによって液室ユニット42のノズル58からインク液滴が吐出される。
【0019】
上述の構成より、高品質の印字ヘッドを提供するためには、液室ユニット42を構成するノズル板51と流路板52、及び流路板52と振動板53、そして液室ユニット42と駆動ユニット43とを、接着剤56を介して高精度で接合する必要がある。しかし部品同士の接合においては、各部品間に塗布された接着剤の厚みのばらつきや部品の表面性状等により、各部品を保持する保持手段間において相対的な傾斜に差異が生じた場合に、水平面内での接着剤の速度勾配にばらつきが生じて部品の加圧位置にずれが生じてしまう。
【0020】
図9(A)に示すように、厚さhの粘弾性体(粘度k)を間に挟んだ上下2枚の面積Aの平面が相対速度Uで運動するときに発生する力Fは、F=kAU/hである。すなわち、接合加圧により接着剤に垂直方向の力が加わると、接着剤が押しつぶされると同時に水平方向へと広がり、その広がるときの粘弾性体内の速度勾配(U/h)に比例して、上部品あるいは下部品を横方向へと動かそうとする力Fが発生する。これを水平面全体で考えた場合、水平面全体での合力がそれぞれの部品にかかる力となる。
【0021】
また、図9(B)に示すように上下2枚の平面間に相対的な傾きがある(h12<h02)場合、左側の速度勾配(U12/h12)が右側の速度勾配(U02/h02)よりも大きくなり、左方向の力ΔFcが部品に作用することとなる。このときに部品に作用する左方向の力ΔFcは、ΔFc=F02−F12=kA2(U02/h02−U12/h12)となる。
【0022】
同様に、上下部品間の相対的な傾きが調整されると、加圧によって左側の速度勾配と右側の速度勾配とを同等の状態とすることにより左右それぞれにかかる力が等しくなり、部品を特定方向へと動かそうとする力が発生せずに部品の位置ずれを防止することができる。このことは、加圧時に上下部品間の面傾斜を相対的に傾斜させないようにすることで、接着剤の流動の不均質性により発生する水平方向の力を抑制でき、位置ずれの発生を防止することができる。
【0023】
次に、本発明の一実施形態を示す部品接合装置の構成について説明する。以降、上述した振動板53を第1の部品2とすると共に流路板52を第2の部品3とし、両者を接合する部品接合装置1は各部品2,3のそれぞれに設けられた位置検出基準であるアライメントマークを検出し、その検出結果に基づいて各部品2,3の位置調整を行う。
【0024】
図1及び図3は部品接合装置1に第1の部品2と第2の部品3とが供給された状態を示しており、第1の部品2は第1の固定ベース6に固定された第1の保持手段8によって真空吸着されて保持され、図示しない解除手段によって吸着解除される。同様に、第2の部品3は第2の固定ベース7に固定された第2の保持手段9によって真空吸着されて保持され、図示しない解除手段によって吸着解除される。第1の固定ベース6は部品接合装置1の装置本体17に固定されている。
【0025】
図5に示すように第2の部品3の両端には位置検出用のアライメントマーク5a,5bが形成されており、図6に示すように第1の部品2の両端にも位置検出用のアライメントマーク4a,4bが形成されている。アライメントマーク4a,4bは貫通穴によって形成されており、図7に示すようにアライメントマーク4a,4bを透してアライメントマーク5a,5bを検出することが可能に構成されている。
【0026】
図1に示すように部品接合装置1には、アライメントマーク4a,4bとアライメントマーク5a,5bとの相対的な位置ずれを検出する位置検出手段16と、各部品2,3の相対的な位置合わせを行う位置調整手段としてのXYθ方向に移動可能なアライメントステージ14と、加圧手段15とが設けられている。位置検出手段16は2視野以上を有する撮像手段であって第1の保持手段8の上部に配置されており、各部品2,3の加圧接合前であって両者間に僅かな間隙を有する状態及び加圧接合後であって両者が完全に密着した状態の何れにおいても、アライメントマーク4a,4bを介してアライメントマーク5a,5bを検出可能に構成されている。第1の保持手段8はその中央部に透視窓(貫通穴)を有しており、第1の保持手段8の直下に吸着保持された各部品2,3は僅かな間隙を設けて配置され、位置検出手段16はアライメントマーク4a,4bを透してアライメントマーク5a,5bを検出する。
【0027】
アライメントステージ14は、図示しない駆動手段によって駆動されることにより、第2の保持手段9によって保持された第2の部品3を図1において左右方向及び紙面方向及び鉛直軸を中心とした回転方向にそれぞれ移動させる。アライメントステージ14は位置検出手段16による検出結果に応じて駆動され、アライメントステージ14と位置検出手段16とによって各部品2,3の相対的な位置合わせを行うアライメント手段が構成されている。加圧手段15は電気的に制御されるエアシリンダ等のアクチュエータによって構成されており、数十mmのストロークを要するエアベアリングによって案内されて駆動され、連続的な荷重を発生可能に構成されている。また、内蔵された荷重検出手段によって荷重制御が可能であると共に、内蔵された位置検出手段によって位置制御可能に構成されている。
【0028】
次に、図3を用いて本発明の倣い保持手段を説明する。倣い保持手段24は、第2の固定ベース7と一体的に設けられた凸球面25を有する球面部材26と、凸球面25を受ける凹球面27を有する軸受部材29と、軸受部材29を受ける凹球面を有する受け部材28とを有している。球面部材26は、エアフローティング機構を備えた軸受部材29を介して凸球面25が凹球面27に沿って移動自在に構成されており、この移動により各部品2,3が当接された際に両者間の平行度が自動的にほぼ合致するように構成されている。凹球面27への給気は給気ポート34から供給される圧縮空気によって行われ、これによりエアフローティング機構を構成している。
【0029】
また、球面部材26及び軸受部材29及び受け部材28をそれぞれ貫通してシリンダ30及びその内部に空気圧によって上下動自在に設けられたピストン31が配置されており、ロックポート32にエアを供給することによりピストン31が下方に移動されてピストン31を介して受け部材28に対して球面部材26の位置及び姿勢がロックされ、フリーポート33にエアを供給することによりピストン31が上方に移動されてロックが解除されることにより球面部材26が受け部材28に対して自由に倣うように構成されている。このロックポート32及びフリーポート33によってロック手段36が構成されている。このとき、第1の部品2は真空ポート12から図示しない真空ポンプによって真空引きされ第1の保持手段8の真空吸着孔10によって吸着保持されている。また、第2の部品3も真空ポート13から図示しない真空ポンプによって真空引きされ第2の保持手段9の真空吸着孔11によって吸着保持されている。真空ポート35は図示しない真空ポンプに接続されており、この真空ポンプの作動によって凸球面25と凹球面27とを真空吸着により、ロック手段36による保持力よりも弱い保持力で保持可能に構成されている。倣い保持手段24におけるロック手段としては、上述したロック手段36も使用しても真空ポート35を用いる真空吸着機構を用いてもよい。
【0030】
次に、各部品2,3をそれぞれ保持する各保持手段8,9の平行度調整動作について説明する。先ず、フリーポート33にエアを供給して球面部材26を受け部材28に対して自由な状態とし、この状態より加圧手段15を作動させて第2の保持手段9を上昇させる。この上昇により第2の部品3が第1の部品2に押圧され、第2の部品3が第1の部品2に倣うように、すなわち第2の部品3と第1の部品2との間の平行度がほぼ揃うように倣わせられる。この倣い動作後にロックポート32にエアが供給され、上述のように平行度が調整された状態にて球面部材26を軸受部材29に対して一時的に保持することができる。球面部材26は第2の固定ベース7を介して第2の部品3と一定の位置関係に保持されていることから、球面部材26の保持により第1の部品2と第2の部品3との平行度も調整された状態で保持されることとなる。
【0031】
上述した構成を備えた部品接合装置1における、第1の部品2と第2の部品3とを位置調整しつつ接合する動作を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
先ず、第2の部品3に2種類の接着剤を塗布する(ST01)。ここで、1つは各部品2,3を接合するための第1の接着剤であり、他の1つは各部品2,3を仮固定するための第2の接着剤である。第1の接着剤としては硬化するまでに時間のかかるエポキシ系接着剤が適しており、これは第2の部品3の全面に均一となるように塗布される。第2の接着剤としては紫外線を照射することによって瞬時に硬化するUV接着剤が適しており、これは第2の部品3の4隅に塗布される。
【0033】
次に、第1の保持手段8によって真空吸着することにより第1の部品2を第1の固定ベース6の所定位置に固定すると共に、第2の保持手段9によって真空吸着することにより第2の部品3を第2の固定ベース7の所定位置に固定する(ST02)。そして、フリーポート33にエアを供給し、受け部材28に対して球面部材26を自由に移動可能な状態とする。
【0034】
次に、各部品2,3が僅かな間隙を介して対向配置されるように加圧手段15を作動させて第2の部品3を第1の部品2に近接させ、各部品2,3が近接した状態で位置検出手段16によってアライメントマーク4a,4bを検出して第1の部品2のセンター座標(Xs,Ys,θs)を、画像処理システムを備えた図示しない制御手段によって算出する。この算出されたセンター座標に対して第2の部品3の初期位置を変更し、アライメントマーク4a,4bを介してアライメントマーク5a,5bを確実に検出可能となる位置に第2の部品3を粗調整した後、アライメントマーク4a,4bを介してアライメントマーク5a,5bを位置検出手段16によって検出し、第2の部品3のセンター座標(Xr,Yr,θr)を図示しない制御手段によって算出する。そして、各センター座標同士の位置ずれ量(ΔXu,ΔYu,Δθu)が規定値を外れていれば、アライメントステージ14によって第2の部品3のアライメント調整を行う(ST03)。
【0035】
次に、加圧手段15の作動により第2の部品3を上昇させ、弱い荷重である第1の圧力(例えば5N)で第2の部品3を第1の部品2に接触させる。この状態において、倣い保持手段24の作用により第2の部品3は第1の部品2に対してほぼ平行となるように倣わせられる。この倣い動作後にロックポート32にエアが供給され、各部品2,3の平行度が調整された状態にて球面部材26が受け部材28に対して一時的に保持される(ST04)。球面部材26は第2の固定ベース7を介して第2の部品3と一定の位置関係となるように保持されていることから、球面部材26の保持によって各部品2,3間の平行度も調整された状態に維持されることとなる。
【0036】
そして2視野系の場合には、図8に示すように各アライメントマーク4a,4b,5a,5bのそれぞれの中心を検出してから、各アライメントマーク4a,4b,5a,5bから演算される各中心位置、すなわち水平面内での第1の部品2のセンター座標(Xs,Ys,θs)及び水平面内での第2の部品3のセンター座標(Xr,Yr,θr)を求め、それぞれの中心位置が合致するように各部品2,3の中心位置間の位置誤差量(ΔXu,ΔYu,Δθu)を、(ΔXu,ΔYu,Δθu)=(Xs,Ys,θs)−(Xr,Yr,θr)により演算し、第1の部品2を基準に第2の部品3をアライメントステージ14を用いて補正する(ST05)。本実施形態では、第1の部品2の位置を基準として第2の部品3の水平面内における位置をX方向、Y方向、θ方向において補正しているが、これとは逆に第2の部品3の位置を基準として第1の部品2側の位置を補正してもよい。
【0037】
次に、倣い保持手段24による保持を解除し(ST06)、その後第1の圧力よりも強い荷重である第2の圧力(例えば100N)で第2の部品3を第1の部品2に接触させる。このとき、加圧時に作用する力により第2の固定ベース7の剛性に起因する変形が生じても、倣い保持手段24の保持が解除されているので第2の固定ベース7は第1の固定ベース6に倣うことが可能となり(ST07)、加圧中において各固定ベース6,7間の相対的な傾きが発生しない。このように、加圧中にも各部品2,3の平行度調整を行うことにより接着剤の大きな流動が発生せず、滑動による位置ずれの発生が防止される。また、各部品2,3の接合状態が均一で良好な状態であるため、接合品質を確保することができる。
【0038】
その後、接合された各部品2,3に紫外線を照射し、第2の部品3の4隅に塗布された第2の接着剤を硬化させる(ST08)。これにより各部品2,3が仮接合され、加圧状態を解除しても仮接合状態を保持することができる。そして、部品接合装置1から仮接合された各部品2,3を取り出す(ST09)。この一連の動作により、部品接合装置1を用いた第1の部品2と第2の部品3との接合動作が完了する。
【0039】
上述の構成により、弱圧である第1の圧力下で倣い動作により各部品2,3の平行度を合わせた後にこの状態を一時的に保持し、各部品2,3を離間させることなく位置合わせを行うことにより各部品2,3の平行度が調整され、各部品2,3の接合面に均一な荷重が作用した状態で位置合わせを行うことができるので、精度よく位置調整を行うことができる。さらに位置合わせが完了した後、保持状態の解除後に強圧である第2の圧力で各部品2,3を加圧接合することにより、加圧が徐々に増加することで加圧手段15の撓み等により第2の固定ベース7が傾いたとしても、第1の部品2に対して第2の部品3が倣うことで絶えず平行度を維持することができるため、加圧中の位置ずれや各部品2,3に不均一な荷重がかかることを防止することができる。これにより、接着接合において均一な膜厚による高信頼性を有する接合が可能となる。また、倣い保持手段24の解除手段は電磁弁の動作のみによる簡単なシーケンスであるので、タクトタイムの増加を防止することができる。
【0040】
図10は、図2のステップST07において加圧手段15による加圧中に第2の固定ベース7の剛性に起因する変形が生じた際の、倣い保持手段24の状態を示す図である。同図に示すように、撓みに起因する変形により角度θだけ傾斜が生じた場合であっても、球面部材26の凸球面27と球面軸受29の凹球面27との間がエアフローティング機構によって回転自在であるため、傾斜を戻して各部品2,3の平行度調整を行うことが可能である。
【0041】
上記実施形態では、第1の部品2を振動板53、第2の部品3を流路板52としたが、第1の部品をノズル板51とすると共に第2の部品が流路板52を含む部品とし、これ等を位置調整して加圧接合する場合には、図4に示すようにノズル板51にアライメントマーク4a’,4b’を設けると共に流路板52にアライメントマーク5a’,5b’を設け、これ等を用いて位置調整を行う。
【0042】
本発明を用いて接合される液滴吐出ヘッドとしてのインクジェット記録ヘッドは、インク流路の向きと吐出口の向きとが異なるサイドシュータ方式であってもよい。サイドシュータ方式の記録ヘッドの一例を図11に示す。図11に示す記録ヘッド60は、天板63にオリフィス65を設け、一点鎖線62で示すように流路64内の吐出エネルギ作用部へのインクの流れ方向とオリフィス65の開口中心軸とが直角を成す構成を有している。符号61は基板を示す。
【0043】
このような構成とすることにより、PZT(ピエゾ)からのエネルギをより効率よくインク液滴の形成とその飛行のための運動エネルギへと変換することができると共に、インクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点がある。また、サイドシュータ方式において気泡が成長し、その気泡がオリフィス65に達すれば気泡が大気に通じることとなり温度低下による気泡の収縮が発生しないことから、記録ヘッドの寿命を延ばすことが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 部品接合装置
2 第1の部品
3 第2の部品
8 第1の保持手段
9 第2の保持手段
14 位置調整手段(アライメントステージ)
15 加圧手段
16 位置検出手段
24 倣い保持手段
25 凸球面
26 球面部材
27 凹球面
28 受け部材
29 軸受部材
36 ロック手段
52 流路板
58 ノズル
41,60 液滴吐出ヘッド(記録ヘッド)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2010−58359号公報
【特許文献2】特開2008−6609号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合され少なくとも一方の接合面に接着剤が塗布される第1の部品及び第2の部品をそれぞれ保持する第1の保持手段及び第2の保持手段と、前記各部品を接触及び加圧する加圧手段と、基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を接触及び加圧した状態でその姿勢を一旦保持する倣い保持手段と、前記各部品に設けられたアライメントマークに基づいて前記各部品の相対的な位置合わせを行うアライメント手段とを有し、
基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を前記加圧手段により第1の圧力で接触させ、前記各接合面が互いに密着した状態で前記倣い保持手段により前記各部品を一旦保持し、前記各部品が接触した状態で前記アライメント手段により前記各部品の相対的な位置合わせを行い、位置合わせ後に前記倣い保持手段を解除した後、基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を前記加圧手段により第1の圧力よりも大きな第2の圧力で接触させ、前記接着剤を介した状態で前記各部品を接合することを特徴とする部品接合装置。
【請求項2】
請求項1記載の部品接合装置において、
第1の保持手段及び第2の保持手段は第1の部品及び第2の部品を保持する真空吸着手段及び保持を解除する解除手段をそれぞれ有することを特徴とする部品接合装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の部品接合装置において、
前記アライメント手段は、前記各アライメントマークの相対的な位置ずれを検出する位置検出手段と、前記各部品の位置合わせ調整を行う位置調整手段とを有することを特徴とする部品接合装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の部品接合装置において、
前記加圧手段は位置及び荷重の制御が可能であることを特徴とする部品接合装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の部品接合装置において、
前記倣い保持手段は、第2の保持手段と一体的に設けられた凸球面を有する球面部材と、前記凸球面を受ける凹球面を有する軸受部材と、前記軸受部材を受ける凹球面を有する受け部材と、第2の保持手段の姿勢を保持及び解除可能なロック手段とを有し、前記加圧手段により前記各部品を第1の圧力で互いに接触及び加圧させた際に、前記各部品の倣い動作によって第2の保持手段が変位して前記各部品の平行度が調整されることを特徴とする部品接合装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の部品接合装置を用いた液滴吐出ヘッド製造装置であって、第1の部品と第2の部品が振動板と流路板であることを特徴とする液滴吐出ヘッド製造装置。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の部品接合装置を用いた液滴吐出ヘッド製造装置であって、第1の部品と第2の部品がノズル及び流路板を含むことを特徴とする液滴吐出ヘッド製造装置。
【請求項8】
互いに接合される第1の部品及び第2の部品の少なくとも一方に2種類の接着剤を塗布する工程と、前記各部品を互いに対向するように第1の保持手段及び第2の保持手段で保持する工程と、前記各部品を互いに接触させた後に弱圧にて加圧する工程と、基準となる一方の前記部品に対して他方の前記部品を接触及び加圧して前記各部品が互いに密着した状態でこの姿勢を保持する工程と、前記各部品を接触させたまま前記各部品に設けられたアライメントマークに基づいて前記各部品の相対的な位置合わせを行う工程と、位置合わせ後に前記各部品の密着状体を一旦解除した後に前記各部品を第1の接着剤を用いて強圧下で加圧接合する工程と、強圧下で加圧接合された前記各部材を紫外線硬化型の第2の接着剤により仮固定する工程とを有し、前記各部品を第1及び第2の接着剤を介した状態で接合することを特徴とする部品接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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