説明

部品搬送キャリア

【課題】電子部品等の多数の部品を工程によらず安定して保持可能な部品搬送キャリアを提供する。
【解決手段】本発明に係る部品搬送キャリア1は、平板状の下部板20と、厚さ方向に貫通する複数の第1の孔部が形成され、下部板20上に重ねて接合される平板状の中間板30と、厚さ方向に貫通する複数の第2の孔部が第1の孔部に対応する位置に形成され、中間板30上に重ねて接合される平板状の上部板40と、からなり、第1の孔部および前記第2の孔部は、部品を収容する複数の収容部10を構成し、中間板30は、収容部10内の部品を付勢して挟持する弾性部材31を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の部品を収容して搬送する部品搬送キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電振動子等の電子部品の小型化が進み、表面実装可能なチップ状の電子部品が多くなっている。このような電子部品は非常に小さいため、製造過程においては一般に、部品搬送キャリアに電子部品を収容し、この部品搬送キャリアを搬送することにより、複数の電子部品を各製造工程の間でまとめて搬送するようにしている。また、製造工程によっては、電子部品を部品搬送キャリアに収容した状態のままで、各種加工や検査が行われる。
【0003】
しかしながら、従来の部品搬送キャリアは、プレートを窪ませて形成した複数の収容部を設け、単にこの収容部内に電子部品を載置して収容するものであったため、例えば搬送中に振動が加わったような場合に、電子部品が収容部から脱落するという問題があった。特に、電子部品を部品搬送キャリアに収容した状態のままで各種加工や検査を行う場合には、電子部品の一部を収容部から突出させる必要があり、脱落を防ぐために収容部を深くすることができないため、この問題が顕著となっていた。
【0004】
このような問題に対し、収容部内に収容した電子部品を押圧して挟持する部品搬送キャリアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−96523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の部品搬送キャリア(搬送フレーム)では、ベース層材と位置決め層材の間にスライド移動するばね層材を備えるという複雑な構造となっているため、製造コストが上昇すると共に、動作の信頼性を確保できない場合があるという問題があった。
【0007】
具体的には、小型化が年々進行する電子部品を多数収容可能に部品搬送キャリアを構成した場合、位置決め層材およびばね層材を薄手且つ幅広に構成する必要があるが、このような場合に、位置決め層材およびばね層材の平坦性を維持し、撓みや引っかかり等することなくばね層材をスライドさせることは非常に困難である。
【0008】
また、電子部品を挟持するばね層材の第1弾性体と位置決め層材の開口端との高さが異なっていることから電子部品にモーメントが作用するため、電子部品を安定して挟持することができないという問題があった。特に、例えば部品搬送キャリア上で電子部品のパッケージを溶接して封止する場合のように部品搬送キャリアに熱が加わる工程においては、熱により位置決め層材が歪み、第1弾性体との位置関係が変化して電子部品を挟持不能となる可能性があるため、使用できないという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、電子部品等の多数の部品を工程によらず安定して保持可能な部品搬送キャリアを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、平板状の下部板と、厚さ方向に貫通する複数の第1の孔部が形成され、前記下部板上に重ねて接合される平板状の中間板と、厚さ方向に貫通する複数の第2の孔部が前記第1の孔部に対応する位置に形成され、前記中間板上に重ねて接合される平板状の上部板と、からなり、前記第1の孔部および前記第2の孔部は、部品を収容する複数の収容部を構成し、前記中間板は、前記収容部内の前記部品を付勢して挟持する弾性部材を備えることを特徴とする、部品搬送キャリアである。
【0011】
(2)本発明はまた、前記弾性部材は、前記中間板と一体形成され、前記第2の孔部の内側に突出する腕部と、前記腕部の先端に設けられて前記部品に当接する当接部と、からなることを特徴とする、上記(1)に記載の部品搬送キャリアである。
【0012】
(3)本発明はまた、前記腕部は、U字状に曲折して一端が前記当接部に繋がる第1のU字状部を備えることを特徴とする、上記(2)に記載の部品搬送キャリアである。
【0013】
(4)本発明はまた、前記腕部は、前記第1のU字状部の他端から前記第1のU字状部の内側方向に曲折した後に前記中間板に繋がることを特徴とする、上記(3)に記載の部品搬送キャリアである。
【0014】
(5)本発明はまた、前記腕部は、前記第1のU字状部の他端からU字状に曲折して前記中間板に繋がる第2のU字状部を備えることを特徴とする、上記(3)または(4)に記載の部品搬送キャリアである。
【0015】
(6)本発明はまた、前記第2のU字状部は、S字状に蛇行するように形成された蛇行領域を前記第1のU字状部側の部分に備えることを特徴とする、上記(5)に記載の部品搬送キャリアである。
【0016】
(7)本発明はまた、前記蛇行領域は、複数のS字形が連続する形状に形成されていることを特徴とする、上記(6)に記載の部品搬送キャリアである。
【0017】
(8)本発明はまた、前記下部板および前記上部板の少なくとも一方には、前記腕部と対向する面に、凹部が形成されていることを特徴とする、上記(2)乃至(7)のいずれかに記載の部品搬送キャリアである。
【0018】
(9)本発明はまた、前記弾性部材は、前記部品を前記収容部内に収容可能とする退避状態となるために外部の操作部材から操作力を受ける操作面を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の部品搬送キャリアである。
【0019】
(10)本発明はまた、前記弾性部材には、厚さ方向に貫通する操作孔が形成され、前記操作面は、前記操作孔の内周面であることを特徴とする、上記(9)に記載の部品搬送キャリアである。
【0020】
(11)本発明はまた、前記下部板および前記上部板の少なくとも一方には、前記操作面に対応する位置に、前記操作部材を挿通して前記弾性部材を操作するための挿通孔が形成されていることを特徴とする、上記(9)または(10)に記載の部品搬送キャリアである。
【0021】
(12)本発明はまた、前記下部板には、前記収容部に対応する位置に、厚さ方向に貫通する下部挿通孔が形成されていることを特徴とする、上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の部品搬送キャリアである。
【0022】
(13)本発明はまた、前記下部板、前記中間板および前記上部板は、複数箇所のスポット溶接により互いに接合されることを特徴とする、上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の部品搬送キャリアである。
【0023】
(14)本発明はまた、前記複数の収容部のうちの少なくとも一部の前記収容部の近傍に溶接点が設定されることを特徴とする、上記(13)に記載の部品搬送キャリアである。
【0024】
(15)本発明はまた、前記複数の収容部は、マトリクス状に配列され、縦方向および横方向に一定の間隔で前記収容部の近傍に溶接点が設定されることを特徴とする、上記(14)に記載の部品搬送キャリアである。
【0025】
(16)本発明はまた、前記収容部の周囲の上面に、溝部が形成されていることを特徴とする、上記(1)乃至(15)のいずれかに記載の部品搬送キャリアである。
【0026】
(17)本発明はまた、前記溝部は、前記複数の収容部にわたって連続的に形成されていることを特徴とする、上記(16)に記載の部品搬送キャリアである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の部品搬送キャリアによれば、電子部品等の多数の部品を工程によらず安定して保持可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係る部品搬送キャリアの平面図である。(b)部品搬送キャリアの正面図である。(c)部品搬送キャリアの底面図である。
【図2】(a)図1(a)の一部を拡大した拡大平面図である。(b)図1(c)の一部を拡大した拡大底面図である。(c)収容部に部品を収容した状態を示した拡大平面図である。
【図3】(a)下部板の平面図である。(b)図3(a)の一部を拡大した拡大平面図である。
【図4】下部板の構成を部分的に示した概略図である。
【図5】(a)中間板の平面図である。(b)図5(a)の一部を拡大した拡大平面図である。
【図6】(a)上部板の平面図である。(b)図6(a)の一部を拡大した拡大平面図である。
【図7】(a)下部板の孔部および凹部と、中間板の弾性部材および孔部と、上部板の孔部との重なりを示した拡大平面図である。(b)図7(a)のA−A線断面図である。(c)図7(a)のB−B線断面図である。
【図8】(a)当接部を退避させた状態を示した拡大平面図である。(b)図8(a)のC−C線断面図である。
【図9】(a)収容部内に部品を収容した状態を示した拡大平面図である。(b)図9(a)のD−D線断面図である。
【図10】(a)〜(e)部品搬送キャリアへの部品の収容方法を示した概略図である。
【図11】(a)〜(c)弾性部材の形状のバリエーションを示した拡大平面図である。
【図12】(a)部品搬送キャリアの上面に溝部を設けた例を示した平面図である。(b)図12(a)の一部を拡大した拡大平面図である。(c)図12(b)のE−E線断面図であり、部品にシーム溶接を行う場合の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
【0030】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る部品搬送キャリア1の平面図であり、同図(b)は、部品搬送キャリア1の正面図であり、同図(c)は、部品搬送キャリア1の底面図である。
【0031】
部品搬送キャリア1は、略長方形状の平板であり、同図(a)に示される上面側に複数の窪みである収容部10が設けられており、この収容部10内に電子部品等の各種部品を収容して搬送するものである。本実施形態では、長方形状の部品を搬送することを想定して、収容部10を長方形状に構成している。また、収容部10は、8×16のマトリクス状に配置されており、部品搬送キャリア1は、最大128個の部品を一度に搬送することが可能となっている。
【0032】
収容部10内には、収容された部品を付勢して挟持するための弾性部材31の一部が突出している。そして、収容部10の近傍には、この弾性部材31を操作するための挿通孔11が設けられている。この挿通孔11は、同図(a)および(c)に示されるように、厚さ方向に貫通する孔となっている。
【0033】
部品搬送キャリア1の底面側には、同図(c)に示されるように、各収容部10に対応する位置に、それぞれ4つの下部挿通孔12が設けられている。この下部挿通孔12は、部品の検査を行う場合に、収容部10内に収容された部品の電極に下方からプローブを接触させるためのものである。
【0034】
また、部品搬送キャリア1の長手方向の両端部には、部品を収容部10内に収容する場合や収容部10内の部品に加工等の処理を施す場合等に、部品搬送キャリア1の位置を決定するための位置決め孔13がそれぞれ設けられている。また、長手方向の一端には、○○するための矩形状の切欠き14(★切欠き14の用途についてご教示ください★)が設けられている。
【0035】
本実施形態の部品搬送キャリア1は、同図(b)に示されるように、下部板20と、下部板20の上に重ねて接合される中間板30と、中間板30の上に重ねて接合される上部板40の3枚の平板から構成されている。なお、部品搬送キャリア1の対角部に設けられた2つの孔は、下部板20、中間板30および上部板40を接合する際の位置決めに使用される組立用孔15である。
【0036】
下部板20、中間板30および上部板40の接合は、本実施形態では、スポット溶接によって行われる。スポット溶接を行う溶接点16は、本実施形態ではまず、同図(a)および(c)に示されるように、複数の収容部10の外側の外周部分において略千鳥状に配置している。さらに、本実施形態では、収容部10の近傍にも溶接点16を設けるようにしている。具体的には、マトリクス状に配置された収容部10の縦方向および横方向にそれぞれ2つおきの間隔で、収容部10の角部近傍に溶接点16を配置している。
【0037】
このように、収容部10の近傍に溶接点16を設けることにより、下部板20、中間板30および上部板40の撓みによる浮き上がりを防いで確実に密着させ、収容部10の深さを所定の寸法に設定することができる。また、部品搬送キャリア1に熱が加わったような場合にも、下部板20、中間板30および上部板40が個別に歪んで浮き上がるのを防止することができる。
【0038】
図2(a)は、図1(a)の一部を拡大した拡大平面図であり、図2(b)は、図1(c)の一部を拡大した拡大底面図であり、図2(c)は、収容部10に部品100を収容した状態を示した拡大平面図である。
【0039】
これらの図に示されるように、収容部10は、収容する部品100の形状に合わせて平面視が長方形状に形成されており、4つの角部には、部品100の角部を回避するための逃げ溝10aがそれぞれ形成されている。詳細は後述するが、収容部10は、外周部分が中間板30および上部板40に形成された孔部から構成され、底部分が下部板20から構成される窪みとなっている。
【0040】
挿通孔11は、下部板20および上部板40に形成された楕円形断面の孔部から構成される貫通孔であり、収容部10の長手方向端部の近傍に設けられている。下部挿通孔12は、下部板20に形成された略正方形断面の4つの孔部から構成されている。下部挿通孔12は、収容部10内の部品100の電極位置に対応する位置に設けられており、本実施形態では、収容部10の四隅部分に対応する位置に配置されている。
【0041】
弾性部材31は、詳細は後述するが、中間板30と一体的に形成されており、下部板20と上部板30の間で弾性変形可能な形状に構成されている。弾性部材31は、部品100に当接する当接部31aの一部が収容部10内に突出した状態となるように形成されており、弾性変形の復元力により収容部10内の部品100を収容部の対向する端面である当接面10bに向けて付勢する。これにより、収容部10内の部品100は、弾性部材31の当接部31aと、収容部10の当接面10bとの間に挟持され、収容部10内に安定的に保持されることとなる。
【0042】
弾性部材31の当接部31aには、挿通孔11と重なる位置に挿通孔11と同じく厚さ方向に貫通する操作孔31bが設けられている。収容部10内に部品100を収容する場合には、外部から挿通孔11を介してこの操作孔31b内に棒状の操作部材を挿入して当接部31aを収容部10から退避させる。
【0043】
次に、部品搬送キャリア1を構成する下部板20、中間板30および上部板40について説明する。
【0044】
図3(a)は、下部板20の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部を拡大した拡大平面図である。これらの図に示されるように、下部板20には、挿通孔11を構成する孔部21および下部挿通孔12を構成する孔部22が、挿通孔11および収容部10に対応する位置にマトリクス状に形成されている。また、下部板20の外周部分には、位置決め孔13を構成する孔部23、組立用孔15を構成する孔部25および切欠き14を構成する切欠き24がそれぞれの位置に形成されている。なお、孔部21、22、23、25は、全て厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0045】
さらに、本実施形態では、下部板20の上面、すなわち中間板30に対向する面において、孔部21、22の近傍に凹部26を設けている。この凹部26は、中間板30が備える弾性部材31に対向する面を部分的に窪ませたものであり、平面視が弾性部材31の形状に合わせた略L字形状となっている。
【0046】
なお、本実施形態では、下部板20はステンレスから構成されており、孔部21、22、23、25および凹部26はエッチングにより形成されている。また、下部板20に部品搬送キャリア1の強度部材としての役割を持たせていることから、下部板20の厚みを、中間板30および上部板40の約4倍の0.6mmとしている。
【0047】
また、本実施形態では、2枚の板を重ねて接合することにより、下部板20を構成している。図4は、下部板20の構成を部分的に示した概略図である。同図に示されるように、下部板20は、厚さ方向に貫通する孔部21a、22aが形成された板20aと、厚さ方向に貫通する孔部21b、22b、26bが形成された板20bとを、孔部21aおよび孔部21bの位置、ならびに孔部22aおよび孔部22bの位置を合わせた状態で重ね、スポット溶接で接合することにより形成されている。
【0048】
板20aの孔部21aおよび板20bの孔部21bは挿通孔11を構成し、板20aの孔部22aおよび板20bの孔部22bは下部挿通孔12を構成する。また、板20bの孔部26bは、板20aの上面20a1と共に凹部26を構成する。なお、本実施形態では、板20aおよび板20bの厚みをそれぞれ0.3mmとしており、各孔部はエッチングにより形成されている。
【0049】
図5(a)は、中間板30の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部を拡大した拡大平面図である。これらの図に示されるように、中間板30には、厚さ方向に貫通する貫通孔である複数の孔部32が、収容部10に対応する位置にマトリクス状に形成されている。そして、この孔部32の形状により、中間板30と一体的に形成された弾性部材31が構成されている。また、中間板30の外周部分には、位置決め孔13を構成する孔部33、組立用孔15を構成する孔部35および切欠き14を構成する切欠き34がそれぞれの位置に形成されている。
【0050】
本実施計形態では、同図(b)に示されるように、厚さ方向に貫通する孔部32の輪郭形状によって弾性部材31を形成している。すなわち、弾性部材31は、孔部32の内側に突出した状態で中間板30と一体的且つ同一面内に形成されている。このようにして弾性部材31を形成することにより、部品搬送キャリア1に部品を挟持する弾性部材31を安価に付加することができる。また、中間板30と共に弾性部材31を薄手に構成することができるため、非常に小さく薄い部品100についても適切に挟持することが可能となっている。
【0051】
弾性部材31は、上述のように、部品100に当接する当接部31aと、当接部31aを退避させる(図の右方向に移動させる)場合に棒状の操作部材を挿入する操作孔31bを備えている。さらに、弾性部材31は、当接部31aと中間板30の間で両者を繋ぐと共に、腕部31cを備えている。この腕部31cは、当接部31aを支持すると共に、弾性変形して付勢力を発生する部分である。従って、腕部31cは、弾性変形しやすい形状であると共に、弾性変形した場合に生じる最大応力を低減して疲労破壊が生じ難い形状に構成されている。
【0052】
具体的に腕部31cは、略U字状に曲折して一端が当接部31aに繋がる第1のU字状部31c1と、第1のU字状部31c1の他端から略U字状に曲折して中間板30に繋がる第2のU字状部31c2を備えている。これら第1のU字状部31c1と第2のU字状部31c2は、互いに直交する方向で交わると共に第2のU字状部31c2が第1のU字状部31c1の内側に位置するように構成されている。すなわち、腕部31cは、第1のU字状部31c1から第1のU字状部31c1の内側方向に曲折して第2のU字状部31c2に繋がり、その後第2のU字状部31c2が中間板30に繋がるように構成されている。
【0053】
このように、当接部に繋がる第1のU字状部31c1を設けることにより、当接部31aを退避させる場合にU字形を開くように第1のU字状部31c1を変形させることができるため、歪みを適宜に分散させて発生する最大応力を低減することができる。そして、中間板30と第1のU字状部31c1を繋ぐ第2のU字状部31c2を設けることにより、当接部を退避させる場合にU字形を閉じる用に第2のU字状部31c2を変形させることができる。これにより、歪みをさらに分散させ、最大応力をより小さなものにすることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、腕部31cに生じる応力をより低減させるべく、第2のU字状部31c2に、略S字状に蛇行するように形成された蛇行領域31c2aを設けている。具体的には、第2のU字状部31c2の第1のU字状部31c1側の部分に2つの略S字形が連続する形状で第1のU字状部31c1に繋がる蛇行領域31c2aを設けると共に、中間板30側の部分に略L字状に曲折して中間板30に繋がるL字状領域31c2bを設けている。
【0055】
このように、蛇行領域31c2aを設けることにより、当接部31aを退避させる場合に半ば蛇腹のように蛇行領域31c2aを変形させることができる。これにより、歪みをさらに分散させ、最大応力を一層小さなものにすることができる。
【0056】
本実施形態のように弾性部材31を中間板30と一体的に形成した場合、板状の弾性部材31を本来変形しにくい方向である中間板30と同一面内において変形させることとなるため、弾性部材31には過大な応力が発生しやすく、弾性部材31の破壊により部品100の製造過程において不具合が生じたり、部品搬送キャリア1が使用不能になったりするという問題が従来生じていた。
【0057】
このような問題に対し、本実施形態では、弾性部材31の腕部31cに第1のU字状部31c1および第2のU字状部31c2を設けると共に、さらに、第2のU字状部31c2に蛇行領域31c2aを設けることで、弾性部材31を中間板30と同一面内で変形しやすくすると共に、変形した場合に過大な応力が発生しないようにしている。
【0058】
このようにすることで、弾性部材31の強度を高め、繰返し使用や熱に対する耐久力を向上させることができる。また、弾性部材31と共に中間板30を薄くすることが可能となるため、非常に小さく薄い部品100であっても必要な突出量を確保した状態で保持可能に部品搬送キャリア1を構成することができる。
【0059】
中間板30に形成された孔部32は、上述のように弾性部材31を形成すると共に、当接部31a側の部分(図の下側部分)が、収容部10の一部を構成するようになっている。従って、孔部32の当接部31a側の部分は、平面視が収容部10形状に合わせた略長方形状に形成されており、角部分には逃げ溝10aの一部を構成する溝32aが形成されると共に、当接部31aに対向する端面32bは当接面10bの一部を構成するようになっている。また、孔部32の当接部31a側の端面には、弾性部材31との接触を回避し、弾性部材31の変形量を確保するための窪みである逃げ部32cが形成されている。
【0060】
なお、本実施形態では、中間板30は、下部板20と同様にステンレスから構成されており、孔部31、32、33、35はエッチングにより形成されている。また、中間板30の厚みは、0.15mmとしている。
【0061】
図6(a)は、上部板40の平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部を拡大した拡大平面図である。これらの図に示されるように、上部板40には、挿通孔11を構成する孔部41および収容部10の一部を構成する孔部42が、挿通孔11および収容部10に対応する位置にマトリクス状に形成されている。また、上部板40の外周部分には、位置決め孔13を構成する孔部43、組立用孔15を構成する孔部45および切欠き14を構成する切欠き44がそれぞれの位置に形成されている。なお、孔部41、42、43、45は、全て厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0062】
孔部42は、中間板30の孔部32と共に収容部10を構成する部分であり、平面視が略長方形状に形成されると共に、4つの角部分には逃げ溝10aを構成する溝42aが形成されている。また、孔部42の反対側の端面42bは、中間板30の孔部32の端面32bと共に当接面10bを構成するようになっている。
【0063】
なお、本実施形態では、上部板40は、下部板20および中間板30と同様にステンレスから構成されており、孔部41、42、43、45はエッチングにより形成されている。また、上部板40の厚みは、中間板30よりやや薄い0.12mmとしている。
【0064】
図7(a)は、下部板20の孔部21、22および凹部26と、中間板30の弾性部材31および孔部32と、上部板40の孔部41、42との重なりを示した拡大平面図であり、同図(b)は、同図(a)のA−A線断面図であり、同図(c)は、同図(a)のB−B線断面図である。
【0065】
同図(a)および(b)に示されるように、収容部10は、外周部分が中間板30の孔部32の一部と、上部板40の孔部42から構成され、底部分が下部板20から構成されている。そして、下部挿通孔12は、収容部10の底部の四隅に対応する位置に配置されている。また、挿通孔11は、下部板20の孔部21(21a、21b)と、上部板40の孔部41から構成され、厚さ方向に貫通する孔となっている。
【0066】
弾性部材31は、同図(a)および(c)に示されるように、腕部31cが下部板20の凹部26に対応する位置に配置され、当接部31aは、腕部31cの弾性変形に伴って下部板20と上部板40の間でスライド移動するようになっている。本実施形態では、凹部26を設けることにより、腕部31cを凹部26内の空間で三次元的に弾性変形させるようにしている。すなわち、中間板30と同一面内の変形のみならず、腕部31cのねじれや厚さ方向の曲がり等をある程度許容することにより、弾性部材31のスムーズに弾性変形させると共に、過大な応力が発生しないようにしている。このようにすることで、弾性部材31の確実な動作と耐久力の向上を両立させることが可能となる。
【0067】
図8(a)は、当接部31aを退避させた状態を示した拡大平面図であり、同図(b)は、同図(a)のC−C線断面図である。上述のように、本実施形態では、弾性部材31の腕部31cをスムーズに弾性変形させることが可能であるため、当接部31aのスライド移動量を十分に確保することができる。従って、これらの図に示されるように、当接部31aは、収容部10内から完全に退避させることが可能となっている。このため、収容部10内に部品100を収容する場合に、当接部31aに影響されることなく確実に部品100を収容部10内に収容することができる。
【0068】
図9(a)は、収容部10内に部品100を収容した状態を示した拡大平面図であり、同図(b)は、同図(a)のD−D線断面図である。これらの図に示されるように、収容部10内に収容された部品100は、中間板30の孔部32および上部板40の孔部42の中で下部板20上に載置された状態となる。そして、部品100は、当接部31aと当接面10bの間で両者に挟持される。本実施形態では、中間板30の孔部32の端面32bおよび上部板40の孔部42の端面42bから当接面10bを構成しているため、安定した状態で部品100を挟持することが可能となっている。
【0069】
また、本実施形態の弾性部材31によれば、中間板30および上部板40を非常に薄く構成することができる。このため、同図(b)に示されるように、部品100を確実に保持しながらも、収容部10から上方への突出力を十分に確保することが可能となり、部品100に対する各種加工や検査等が、部品搬送キャリア1に保持した状態のままでも行いやすくなっている。
【0070】
なお、図8および図9は、弾性部材31の弾性変形の状態を必ずしも正確に図示したものとはなっていないことに注意されたい。
【0071】
次に、部品搬送キャリア1への部品100の収容方法について説明する。
【0072】
図10(a)〜(e)は、部品搬送キャリア1への部品100の収容方法を示した概略図である。部品搬送キャリア1に部品100を収容する場合、まず同図(a)に示されるように、ベース50上に部品搬送キャリア1を載置する。
【0073】
このベース50は、固定ベース51と、水平方向にスライド移動可能な移動ベース52とから構成されており、固定ベース51には棒状の2つの位置決め部材53が突設され、移動ベース52には、部品搬送キャリア1の挿通孔11に対応する位置に棒状の複数の操作部材54が突設されている。また、移動ベース52内には、部品搬送キャリア1の収容部10に対応刷る位置に繋がる通気孔55が形成されている。この通気孔55は、図示を省略した吸引ポンプに接続されており、下部挿通孔12を介して収容部10内の部品100を吸引し保持するためのものである。
【0074】
位置決め部材53を位置決め孔13内に挿通した状態で部品搬送キャリア1をベース50上に載置することにより、同図(b)に示されるように、複数の操作部材54は、挿通孔11および弾性部材31の操作孔31bに挿通されることとなる。従って、この状態で移動ベース52をスライド移動させることにより、弾性部材31の当接部31aを図8に示す状態に退避させることができる。
【0075】
次に、図10(c)に示されるように、当接部31aを退避させた状態で、収容部10内に部品100を投入していく。このとき、本実施形態では、通気孔55を介して収容部10内を吸引するようにしている。このように、収容部10内を吸引することにより、ある程度乱暴に部品100を投入したとしても、収容部10から部品100が跳ね返って飛び出さないようにすることができる。すなわち、収容部10内への部品100の投入を高速に行うことが可能となっている。
【0076】
全ての収容部10内への部品100の投入が完了したら、次に同図(d)に示されるように、移動ベース52を最初とは逆方向にスライド移動させる。これにより、弾性部材31の当接部31aは図9に示す状態となり、部品100は、収容部10内で当接部31aと当接面10bにより挟持され、安定的に保持された状態となる。
【0077】
最後に、同図(e)に示されるように、通気孔55および下部挿通孔12を介した吸引を解除した上で、部品搬送キャリア1をベース50から取り外すことで、部品搬送キャリア1への部品100の収容が完了する。このように、本実施形態の部品搬送キャリア1では、弾性部材31によって収容した部品100を確実に挟持するようにしながらも、部品100の収容を高速に行うことが可能となっている。特に、挿通孔11を介して操作部材54を操作孔31bに挿通することにより、全ての弾性部材31の当接部31aを一度に退避させることができるため、きわめて短時間に部品100の収容を行うことが可能となっている。
【0078】
次に、弾性部材31の形状のバリエーションについて説明する。
【0079】
図11(a)〜(c)は、弾性部材31の形状のバリエーションを示した拡大平面図である。本実施形態の弾性部材31は、弾性変形する腕部31cが第1のU字状部31c1および第2のU字状部31c2から構成されると共に、第2のU字状部31c2が2つの略S字形が連続する蛇行領域31c2aおよびL字状領域31c2bから構成されているが、この形状に限定されるものではなく、中間板30および弾性部材31の寸法や材質、部品搬送キャリア1の用途等に応じてその他の形状を採用するようにしてもよい。
【0080】
例えば、同図(a)に示されるように、弾性部材31の腕部31cは、第1のU字状部31c1のみから構成されるものであってもよい。また、同図(b)に示されるように、弾性部材31の腕部31cは、第1のU字状部31c1および第2のU字状部から構成されると共に第2のU字状部31c2が蛇行領域31c2bを備えないものであってもよい。
【0081】
また、弾性部材31の腕部31cを第1のU字状部31c1および第2のU字状部31c2から構成されると共に、第2のU字状部31c2が蛇行領域31c2aおよびL字状領域31c2bから構成されるようにした場合において、蛇行領域31c2aを2つ以外の略S字形からなるように構成してもよい。例えば、同図(c)に示されるように、蛇行領域31c2aを1つの略S字形からなるようにしてもよいし、図示は省略するが3つ以上の略S字形が連続する形状に蛇行領域31c2aを構成するようにしてもよい。
【0082】
また、図示は省略するが、弾性部材31の当接部31aの形状は、本実施形態で示した形状に限定されるものではなく、その他の形状であってもよい。また、本実施形態では、操作孔31bを当接部31aに形成しているが、例えば腕部31c等、その他の部分に操作孔31bを形成するようにしてもよい。また、本実施形態では、この操作孔31bの内周面を操作部材54からの操作力を受ける操作面としているが、例えば当接部31aや腕部31cの外周面の一部等、その他の面を操作面とするようにしてもよい。
【0083】
次に、部品搬送キャリア1の上面に溝部17を設けた例について説明する。
【0084】
図12(a)は、部品搬送キャリア1の上面に溝部17を設けた例を示した平面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部を拡大した拡大平面図である。この例では、収容部10の周囲において長手方向の列に沿って連続する溝部17を、部品搬送キャリア1の上面、すなわち上部板40の上面に複数形成している。詳細には、収容部10は、外周部分に窪みではない突出部10cが形成された状態で溝部17内に配置されている。なお、この溝部17は、エッチングにより形成することができる。
【0085】
このように、溝部17を形成して収容部10の周囲を窪ませることにより、部品100を部品搬送キャリア1に収容した状態のまま各種加工等を行う場合に、部品100を確実に保持するようにしながらも、各種加工装置と部品搬送キャリア1との干渉を防止することができる。
【0086】
同図(c)は、同図(b)のE−E線断面図であり、部品100にシーム溶接を行う場合の例を示している。この例では、部品100がパッケージ100aおよびリッド100bから構成されている。そして、部品搬送キャリア1に収容された部品100上でローラ電極200を転動させることにより、リッド100bのパッケージ100aへのシーム溶接を行う。
【0087】
このようにしてシーム溶接を行う場合、収容部10の周囲に溝部17を形成することにより、ローラ電極200と部品搬送キャリア1の接触を確実に回避することができる。すなわち、例えばローラ電極200が摩耗したような場合においてもローラ電極200と部品搬送キャリア1の接触による短絡を回避することができる。また、部品100が非常に薄い場合であっても、溶接専用のキャリアを使用することなく、部品搬送キャリア1上でシーム溶接を行うことができる。
【0088】
なお、溝部17は、図の縦方向に連続するように形成してもよい。また、収容部10が溝部17内に位置するのではなく、収容部10の両側にそれぞれ直線状の溝部17を形成するようにしてもよい。また、複数の収容部10にわたって連続するように溝部17を構成するのではなく、収容部10の周囲を囲む溝部17を個別に形成するようにしてもよい。また、溝部17を形成するのではなく、収容部10の外周部分を上面から突出させるようにしてもよい。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係る部品搬送キャリア1は、平板状の下部板20と、厚さ方向に貫通する複数の第1の孔部(孔部32)が形成され、下部板20上に重ねて接合される平板状の中間板30と、厚さ方向に貫通する複数の第2の孔部(孔部42)が第1の孔部32に対応する位置に形成され、中間板30上に重ねて接合される平板状の上部板40と、からなり、第1の孔部32および第2の孔部42は、部品100を収容する複数の収容部10を構成し、中間板30は、収容部10内の部品100を付勢して挟持する弾性部材31を備えている。
【0090】
このような構成とすることで、電子部品等の多数の部品100を工程によらず安定して保持することができる。これにより、脱落等のトラブルを防止して部品100の製造を安定的に行うことが可能になると共に、搬送や各工程を高速化することができる。
【0091】
なお、収容部10の形状は、本実施形態において示した形状に限定されるものではなく、収容する部品100の形状に応じた適宜に形状を採用することができる。また、弾性部材31の形状は、本実施形態において示した形状に限定されるものではなく、収容する部品100の形状や寸法、材質等に応じて適宜の形状を採用することができる。また、収容部10の配置は、本実施形態において示したマトリクス状に限定されるものではなく、直線状や環状、千鳥状等、その他の配列であってもよい。
【0092】
また、弾性部材31は、中間板30と一体形成され、第2の孔部32の内側に突出する腕部31cと、腕部31cの先端に設けられて部品100に当接する当接部31aと、からなる。このように、弾性部材31を中間板30一体形成することにより、弾性部材31のサイズによらず容易に弾性部材31を形成することができる。また、弾性部材31を腕部31cおよび当接部31aから構成することにより、腕部31cの弾性変形の復元力により部品100に対する付勢力を強化し、部品100を確実に挟持することができる。
【0093】
また、腕部31cは、U字状に曲折して一端が当接部31aに繋がる第1のU字状部31c1を備えている。このように、第1のU字状部31c1を設けることにより、弾性部材31を弾性変形させる場合に、U字形を開くように(または、閉じるように)第1のU字状部31c1を変形させることが可能となり、歪みを適宜に分散させて発生する最大応力を低減することができる。
【0094】
また、腕部31cは、第1のU字状部31c1の他端から第1のU字状部31cの内側方向に曲折した後に中間板30に繋がるように形成されている。このようにすることで、弾性変形時の歪みをさらに分散させ、発生する最大応力をより低減することができる。
【0095】
また、腕部31cは、第1のU字状部31c1の他端からU字状に曲折して中間板30に繋がる第2のU字状部31c2を備えている。このように、第2のU字状部31c2を設けることにより、弾性部材31を弾性変形させる場合に、U字形を閉じるように(または、開くように)第2のU字状部31c2を変形させることが可能となり、歪みをさらに分散させ、発生する最大応力をより小さなものとすることができる。
【0096】
また、第2のU字状部31c2は、S字状に蛇行するように形成された蛇行領域31c2aを第1のU字状部31c1側の部分に備えている。このように、蛇行領域31c2aを設けることにより、弾性部材31を弾性変形させる場合に半ば蛇腹のように蛇行領域31c2aを変形させることが可能となり、歪みをさらに分散させ、発生する最大応力を一層小さなものにすることができる。
【0097】
また、蛇行領域31c2aは、複数のS字形が連続する形状に形成されている。このようにすることで、蛇行領域31c2aにおける変形を容易にし、発生する最大応力をより一層小さなものとすることができる。
【0098】
また、下部板20および上部板40の少なくとも一方(本実施形態では、下部板20のみ)には、腕部31cと対向する面に、凹部26が形成されている。このように、凹部26を設けることで、腕部31cを弾性変形させる場合に、中間板30と同一面内の変形のみならず、腕部31cのねじれや厚さ方向の曲がり等をある程度許容することが可能となる。これにより、弾性部材31のスムーズに弾性変形させると共に、弾性部材31に過大な応力が発生しないようにすることができる。
【0099】
なお、本実施形態では、下部板20にのみ凹部26を設けているが、下部板20と上部板40の両方に凹部26を設けるようにしてもよいし、上部板40のみに凹部26を設けるようにしてもよい。また、凹部26は、本実施形態のように腕部31cの略全域にわたって設けるようにしてもよいし、部分的に設けるようにしてもよい。
【0100】
また、弾性部材31は、部品100を収容部10内に収容可能とする退避状態となるために外部の操作部材54から操作力を受ける操作面(操作孔31bの内周面)を備えている。このようにすることで、弾性部材31を退避状態にするための操作を外部から容易に行うことができる。これにより、部品100の収容部10内に収容する工程を高速化することができる。
【0101】
また、弾性部材31には、厚さ方向に貫通する操作孔31bが形成され、操作面は、操作孔31bの内周面となっている。このようにすることで、外部からの弾性部材31の操作する場合に、操作ミスを防止して弾性部材31を確実に退避状態とすることができる。
【0102】
また、下部板20および上部板40の少なくとも一方(本実施形態では両方)には、操作面に対応する位置に、操作部材54を挿通して弾性部材31を操作するための挿通孔11が形成されている。このように、挿通孔11を設けることにより、外部からの弾性部材31の操作をより容易且つ確実にすることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、下部板20および上部板40の両方に連通する挿通孔11を設けた例を示したが、これに限定されるものではなく、下部板20または上部板40の一方のみに挿通孔11を設けるようにしてもよい。また、本実施形態では、挿通孔11を下部挿通孔12を構成する下部板20の孔部22、および収容部10の一部を構成する上部板40の孔部42とは、別の孔として形成した例を示したが、これに限定されるものではなく、挿通孔11を下部板20の孔部22または上部板40の孔部42の一部として形成するようにしてもよい。
【0104】
また、下部板20には、収容部10に対応する位置に、厚さ方向に貫通する下部挿通孔12が形成されている。このように、下部挿通孔12を設けることで、収容部10内に収容した部品100に下方からアクセスすることが可能となる。これにより、例えば、収容部10内に部品100の電極に挿通孔12を通してプローブを接触させ、各種検査等を行うことができる。また、下部挿通孔12を介して収容部10内を吸引することで、弾性部材31により付勢する前の段階から、部品100を収容部10内に定着させることができる。なお、下部挿通孔21の形状、配置および個数は、本実施形態において示したものに限定されるものではなく、部品100に応じて適宜に設定することができる。
【0105】
また、下部板20、中間板30および上部板40は、複数箇所のスポット溶接により互いに接合されている。このように、スポット溶接により接合することで、下部板20、中間板30および上部板40を確実に一体化し、強度および剛性を高めることができる。また、熱が加わった場合の変形を最小限にすることができる。これにより、部品搬送キャリア1を薄く構成すると共に収容部10を浅く構成した場合であっても、部品100を適切保持することが可能となり、非常に小さく薄い部品100であっても確実に搬送し、部品搬送キャリア1に収容した状態のまま、溶接等の各種加工を部品100に施すことが可能となる。
【0106】
また、部品搬送キャリア1は、複数の収容部10のうちの少なくとも一部の収容部10の近傍に溶接点16が設定されている。このようにすることで、収容部10の近傍においても確実に下部板20、中間板30および上部板40を一体化することが可能となり、部品100を適切な状態で保持することができる。また、熱が加わった場合にも、上部板40や中間板30の変形による浮き上がり等によって部品100の適切な保持が不可能になるといった事態を防止することが可能となる。
【0107】
また、複数の収容部10は、マトリクス状に配列され、縦方向および横方向に一定の間隔で収容部10の近傍に溶接点16が設定されている。このようにすることで、スポット溶接を行う箇所を必要最小限にすることができ、部品搬送キャリア1の製造コストを削減することができる。
【0108】
また、部品搬送キャリア1は、収容部10の周囲の上面に、溝部17が形成されている。このようにすることで、収容部10内に収容した部品100に各種加工を施すような場合に、非常に小さく薄い部品100であっても、収容部10内に確実に保持すると共に、各種加工装置と部品搬送キャリア1との干渉を防止することができる。
【0109】
また、溝部17は、複数の収容部10にわたって連続的に形成されている。このようにすることで、例えばローラ電極200によるシーム溶接のように、複数の部品100を連続的に処理するような工程においても、部品搬送キャリア1との接触を効果的に防止することができる。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の部品搬送キャリアは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の部品搬送キャリアは、電子機器や電子部品もしくはその他の各種物品の製造、または物流の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 部品搬送キャリア
10 収容部
11 挿通孔
12 下部挿通孔
16 溶接点
17 溝部
20 下部板
26 凹部
30 中間板
31 弾性部材
31a 当接部
31b 操作孔
31c 腕部
31c1 第1のU字状部
31c2 第2のU字状部
31c2a 蛇行領域
32 中間板の孔部
40 上部板
42 上部板の孔部
100 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の下部板と、
厚さ方向に貫通する複数の第1の孔部が形成され、前記下部板上に重ねて接合される平板状の中間板と、
厚さ方向に貫通する複数の第2の孔部が前記第1の孔部に対応する位置に形成され、前記中間板上に重ねて接合される平板状の上部板と、からなり、
前記第1の孔部および前記第2の孔部は、部品を収容する複数の収容部を構成し、
前記中間板は、前記収容部内の前記部品を付勢して挟持する弾性部材を備えることを特徴とする、
部品搬送キャリア。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記中間板と一体形成され、前記第2の孔部の内側に突出する腕部と、前記腕部の先端に設けられて前記部品に当接する当接部と、からなることを特徴とする、
請求項1に記載の部品搬送キャリア。
【請求項3】
前記腕部は、U字状に曲折して一端が前記当接部に繋がる第1のU字状部を備えることを特徴とする、
請求項2に記載の部品搬送キャリア。
【請求項4】
前記腕部は、前記第1のU字状部の他端から前記第1のU字状部の内側方向に曲折した後に前記中間板に繋がることを特徴とする、
請求項3に記載の部品搬送キャリア。
【請求項5】
前記腕部は、前記第1のU字状部の他端からU字状に曲折して前記中間板に繋がる第2のU字状部を備えることを特徴とする、
請求項3または4に記載の部品搬送キャリア。
【請求項6】
前記第2のU字状部は、S字状に蛇行するように形成された蛇行領域を前記第1のU字状部側の部分に備えることを特徴とする、
請求項5に記載の部品搬送キャリア。
【請求項7】
前記蛇行領域は、複数のS字形が連続する形状に形成されていることを特徴とする、
請求項6に記載の部品搬送キャリア。
【請求項8】
前記下部板および前記上部板の少なくとも一方には、前記腕部と対向する面に、凹部が形成されていることを特徴とする、
請求項2乃至7のいずれかに記載の部品搬送キャリア。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記部品を前記収容部内に収容可能とする退避状態となるために外部の操作部材から操作力を受ける操作面を備えることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれかに記載の部品搬送キャリア。
【請求項10】
前記弾性部材には、厚さ方向に貫通する操作孔が形成され、
前記操作面は、前記操作孔の内周面であることを特徴とする、
請求項9に記載の部品搬送キャリア。
【請求項11】
前記下部板および前記上部板の少なくとも一方には、前記操作面に対応する位置に、前記操作部材を挿通して前記弾性部材を操作するための挿通孔が形成されていることを特徴とする、
請求項9または10に記載の部品搬送キャリア。
【請求項12】
前記下部板には、前記収容部に対応する位置に、厚さ方向に貫通する下部挿通孔が形成されていることを特徴とする、
請求項1乃至11のいずれかに記載の部品搬送キャリア。
【請求項13】
前記下部板、前記中間板および前記上部板は、複数箇所のスポット溶接により互いに接合されることを特徴とする、
請求項1乃至12のいずれかに記載の部品搬送キャリア。
【請求項14】
前記複数の収容部のうちの少なくとも一部の前記収容部の近傍に溶接点が設定されることを特徴とする、
請求項13に記載の部品搬送キャリア。
【請求項15】
前記複数の収容部は、マトリクス状に配列され、
縦方向および横方向に一定の間隔で前記収容部の近傍に溶接点が設定されることを特徴とする、
請求項14に記載の部品搬送キャリア。
【請求項16】
前記収容部の周囲の上面に、溝部が形成されていることを特徴とする、
請求項1乃至15のいずれかに記載の部品搬送キャリア。
【請求項17】
前記溝部は、前記複数の収容部にわたって連続的に形成されていることを特徴とする、
請求項16に記載の部品搬送キャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−230784(P2011−230784A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100972(P2010−100972)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(501410137)アキム株式会社 (49)
【Fターム(参考)】