説明

部品搬送システム

【課題】簡略な機構で部品搭載部を昇降させることができる部品搬送システムを提供する。
【解決手段】従動台車20の走行経路に、従動台車20を駆動台車10に対して持ち上げるカムレール30を設けることで、重量が大きい駆動台車10を持ち上げることなく、従動台車20のみを持ち上げることができる。これにより、駆動台車10の動力が小さくても、長いスロープを要することなくコンパクトなスペースで部品搭載部を持ち上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式の台車で部品を搬送する部品搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の組立工場では、車体に組み付けられる部品がストックエリアから組付作業場まで搬送される。このような部品の搬送を、所定の搬送経路に沿って自走可能な自走式の台車で行う場合がある。例えば特許文献1には、部品を搭載した搬送台車を自走式台車で牽引する搬送装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−135321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような搬送装置による部品搬送システムでは、自走式台車に部品を搬入あるいは搬出する作業者の高さが異なる場合があり、例えば作業者が床面に立っている場合や、所定高さの作業台の上に立っている場合がある。作業者が作業台の上に立っている場合、自走式台車の部品搭載部(部品を搭載する所)の高さが相対的に低くなるため、搬入あるいは搬出作業がしにくくなる恐れがある。このため、作業者が作業台の上で作業をするエリアでは、作業性を確保するために、自走式台車を作業者に合わせて所定の高さまで持ち上げる必要がある。
【0005】
例えば、油圧シリンダ等により昇降可能なリフタを設ければ、各作業場所の作業者の高さに合わせて部品搭載部を昇降させることができる。具体的には、搬送経路の所定箇所の床面にリフタを設け、このリフタで自走式台車ごと持ち上げたり、あるいは、自走式台車上にリフタを搭載し、搬送経路の所定箇所でリフタを上昇させたりすることが考えられる。しかし、リフタを設けると設備が大掛かりとなるため、設備コストが嵩むと共に、メンテナンス工数の増加を招く。
【0006】
また、搬送経路の所定箇所にスロープを設け、自走式台車にスロープを上らせれば、部品搭載部を所定の高さに配することができる。しかし、自走式台車は一般的に駆動力が小さく、且つ、バッテリーやモータ等を搭載して重量が大きいため、スロープを上らせることは困難である。例えばスロープの傾斜角度を十分に緩やかにすれば、比較的小さい動力で自走式台車を上らせることができるが、スロープの長さが長くなって設置スペースが大きくなる。
【0007】
本発明の解決すべき課題は、自走式台車の駆動力が小さくても、コンパクトなスペース内で部品搭載部を昇降させることができる部品搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、駆動部を搭載し、所定の搬送経路に沿って走行する自走式の駆動台車と、駆動台車に連結され、当該連結状態を維持しながら駆動台車に対する上下動が許容された従動台車とを備え、従動台車に部品を搭載して搬送する部品搬送システムであって、従動台車の走行経路に、従動台車を駆動台車に対して持ち上げるカムレールを設けた部品搬送システムを提供する。
【0009】
このように、従動台車の走行経路に、従動台車を駆動台車に対して持ち上げるカムレールを設けることで、重量が大きい駆動台車を持ち上げることなく、比較的軽量な従動台車のみを持ち上げることができる。これにより、小さな駆動力で従動台車を所定の高さまで持ち上げることができ、カムレールの傾斜を必要以上に緩やかにする必要がないため、カムレールを短くして省スペース化を図ることができる。
【0010】
例えば、駆動台車及び従動台車のうち、一方にガイドピンを設けると共に他方にガイド穴を設け、ガイド穴の内周にガイドピンを挿入することにより駆動台車と従動台車とを連結することで、両台車の連結状態を維持しながら従動台車の駆動台車に対する上下動を許容することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の部品搬送システムによれば、駆動台車の駆動力が小さくても、コンパクトなスペース内で部品搭載部(従動台車)を持ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】部品搬送システムの平面図である。
【図2】搬送車両の側面図である。
【図3】搬送車両の平面図である。
【図4】搬送車両の正面図である。
【図5】従動台車がカムレールに乗り上げた状態を示す側面図である。
【図6】従動台車がカムレールに乗り上げた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に、本発明の実施形態に係る部品搬送システム100を示す。部品搬送システム100は、搬送経路Lに沿って自走する搬送車両1で部品を搬送するものであり、本実施形態では自動車のシートSを搬送する場合を示す。部品搬送システム100は、搬入装置2で搬送されたシートSを搬送車両1に搬入する搭載エリアA1と、搬送車両1からシートSを搬出して車体Bに組み付ける組付エリアA2とを有する。搭載エリアA1では、作業者が所定高さの作業台3の上に立って作業を行う。組付エリアA2では、作業者が床面に立って作業を行う。本実施形態では、ループ状の搬送経路L上を、複数(図示例では4台)の搬送車両1が循環搬送される。
【0015】
搬送車両1は、図2〜4に示すように、自走式の駆動台車10と、駆動台車10に牽引される従動台車20とを備える。尚、搬送車両1の説明において、搬送方向前方(図2の左側)を「前方」、搬送方向後方(図2の右側)を「後方」と言い、搬送方向と直交する水平方向(図3の上下方向)を「幅方向」と言う。
【0016】
駆動台車10は、バッテリー及びモータからなる駆動部11を搭載し、搬送経路L上を自走可能とされる。本実施形態では、駆動部11を搭載したベース12と、ベース12の下面に設けられたローラ13と、磁気センサ14と、ガイドピン15とを備える。磁気センサ14で、搬送経路Lに沿って床面に配設された磁気テープ(図示省略)の磁気信号を検知し、この磁気信号に基づいて駆動部11を駆動することで、駆動台車10が搬送経路Lに沿って走行する。ガイドピン15は、ベース12の前方端部から鉛直上方に延びている。
【0017】
従動台車20は、駆動台車10に牽引され、搬送経路Lに沿って走行するものであり、枠体21と、枠体の下端部に設けられたローラ22と、シートSが搭載される部品載置部23と、連結リング24とを備える。枠体21は、図4に示すように、正面視で下向きに開口した略コの字型を成し、その内部に駆動台車10が配される。このように、従動台車20と駆動台車10とを搬送方向で重ねて配することで、例えば駆動台車10と従動台車20とを搬送方向に並べて連結する場合と比べて、搬送車両1の搬送方向寸法をコンパクトにすることができる。従動台車20のローラ22は駆動台車10のローラ13と異なる経路上を走行し、本実施形態では、図3に示すように、駆動台車10のローラ13の走行経路L10が従動台車20のローラ22の走行経路L20よりも内側に設けられる。部品載置部23は、枠体21に前後方向に掛け渡された一対の梁で構成される。連結リング24は、枠体21の前方端部に支持部24bを介して設けられ、本実施形態では前方上方に若干傾斜して設けられる。
【0018】
従動台車20は、駆動台車10に対する上下動が許容された状態で、駆動台車10に連結される。本実施形態では、駆動台車10に設けられたガイドピン15を、従動台車20に設けられた連結リング24のガイド穴24aの内周に隙間を介して挿入することで、従動台車20の上下動を許容している。駆動台車10と従動台車20とは、ガイドピン15及び連結リング24以外の箇所では連結されておらず、両台車は前方端部同士のみで連結されている。
【0019】
搭載エリアA1には、従動台車20のローラ22の走行経路L20上に、従動台車20を所定の高さまで案内するカムレール30が設けられる(図1参照)。カムレール30は、図5に示すように、所定高さに設けられた水平部31と、水平部31の前方端部及び後方端部を床面と連続する傾斜部32,33とを有する。水平部31の高さ(ローラ22が走行する面の高さ)は、搭載エリアA1の作業台3の高さとほぼ同じに設定される。
【0020】
次に、部品搬送システム100によるシートSの搬送手順を説明する。尚、図5及び図6では、図面の簡略化のため、駆動台車10の駆動部11等の図示を省略している。
【0021】
まず、シートSを搭載していない空の搬送車両1が搭載エリアA1に搬入される。そして、駆動台車10で牽引された従動台車20のローラ22が、走行経路L20上に設けられたカムレール30の傾斜部33に乗り上げて所定の高さまで案内され、カムレール30の水平部31上を走行する(図5参照)。このとき、駆動台車10はカムレール30の幅方向内側で床面上を走行する(図6参照)。すなわち、重量の大きい駆動部11を搭載した駆動台車10を持ち上げず、軽量な従動台車20のみを持ち上げるため、駆動部11の駆動力が小さく、且つ、カムレール30の傾斜部33の長さが比較的短い(すなわち傾斜角度が比較的大きい)場合でも、部品搭載部23(従動台車20)を所定の高さまで持ち上げることができる。そして、搬送車両1が搭載エリアA1の所定位置、すなわち作業者によるシートSの搭載が行われる位置(図5参照)に達したら、搬送車両1が停止される。例えば、床面の所定位置に停止信号を発する磁気テープ(図示省略)を設け、この磁気テープを磁気センサ14で検知することで、搬送車両1を自動的に停止させることができる。
【0022】
この状態で、搬入装置2で搭載エリアA1に搬入されたシートSが、作業者により従動台車20の部品載置部23上に搭載される。このとき、作業者は作業台3の上に立っているが、従動台車20の部品搭載部23が所定高さまで持ち上げられているため、シートSの搭載作業を楽に行うことができる。尚、図示例では、カムレール30の水平部31と作業台3とがほぼ同じ高さになっているが、部品の種類や従動台車20の部品載置部23の高さ等に応じて、カムレール30を作業台3よりも高くしたり低くしたりしてもよい。
【0023】
その後、駆動台車10の駆動部11を再び駆動して搬送車両1を走行させる。例えば、駆動台車10に発進スイッチ(図示省略)を設け、従動台車20にシートSを搭載したら、作業者が発進スイッチを押して搬送車両1を発進させる。そして、従動台車20がカムレール30の傾斜部32に沿って床面上に下ろされ、シートSを搭載した搬送車両1が床面上の搬送経路Lに沿って走行する。
【0024】
搬送車両1が組付エリアA2に搬入され、組付エリアA2内の所定位置に達したら、搬送車両1が停止される。このとき、駆動台車10及び従動台車20は共に床面上にある。そして、床面に立っている作業者が、従動台車20上のシートSを持ち上げて搬出し、車体Bに組み付ける。従動台車20のシートSが搬出されたら、作業者が発進スイッチを押すことにより搬送車両1が発進し、搬送経路Lに沿って走行して再び搭載エリアA1に搬入される。以上を繰り返すことにより、シートSの搬送及び車体Bへの組付が行われる。
【0025】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、駆動台車10に設けたガイドピン15を従動台車20に設けた連結リング24のガイド穴24aに挿入することにより、駆動台車10と従動台車20とを連結しているが、これに限らず、例えば、ガイドピンを従動台車に、ガイド穴を駆動台車に設けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 搬送車両
2 搬入装置
3 作業台
10 駆動台車
11 駆動部
15 ガイドピン
20 従動台車
23 部品載置部
24 連結リング
24a ガイド穴
30 カムレール
31 水平部
32,33 傾斜部
100 部品搬送システム
A1 搭載エリア
A2 組付エリア
B 車体
L 搬送経路
S シート(部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を搭載し、所定の搬送経路に沿って走行する自走式の駆動台車と、駆動台車に連結され、当該連結状態を維持しながら駆動台車に対する上下動が許容された従動台車とを備え、従動台車に部品を搭載して搬送する部品搬送システムであって、
従動台車の走行経路に、従動台車を駆動台車に対して持ち上げるカムレールを設けた部品搬送システム。
【請求項2】
駆動台車及び従動台車のうち、一方にガイドピンを設けると共に他方にガイド穴を設け、ガイド穴の内周にガイドピンを挿入することにより駆動台車と従動台車とを連結した請求項1記載の部品搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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