説明

部品整列装置及び部品整列方法

【課題】専用のマニピュレータを用いることなく短時間で部品を整列させることができる部品整列装置及び部品整列方法を提供すること。
【解決手段】部品整列方法は、パレット上の部品の整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させる。より具体的には、この部品整列方法は、複数のボルトがパレット上に散らばるように設定された態様で、このパレットを振動及び揺動する発散工程と、パレット上のボルトがそれぞれの近傍にとどまるように設定された態様でパレットを振動する粗整列工程と、パレット上のボルトをそれぞれの近傍の整列孔に係合させるように設定された態様でパレットを振動する細整列工程と、整列孔に係合しているボルトを外さずに、整列孔に係合していないボルトを、ボルトが係合していない整列孔へ誘導するように設定された態様でパレットを振動及び揺動する誘導整列工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品整列装置及び部品整列方法に関する。詳しくは、ボルトやねじなどの複数の部品をパレット上に整列させる部品整列装置及び部品整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の製造工程では、締付装置を用いて、部品をねじやボルトでワークに複数箇所で固定することが行われている。
例えば、この締付装置は、ロボットアームと、このロボットアームの先端に設けられたナットランナと、このナットランナの近傍に設けられたマガジンと、を備える(特許文献1参照)。この締付装置によれば、マガジンにボルトを装填しておき、ナットランナにより、マガジンからボルトを順次受け取って、この受け取ったボルトをワークの所定箇所に差し込む。その後、ソケットを回転させて、ボルトを締め付ける。
【0003】
ところで、1つのラインで複数種類の車種を製造するためには、締付装置は、それ1台で複数種類のボルトを締め付けることができるように構成されていることが好ましい。しかしながら、上述の構成では、マガジンに装填されるボルトは一種類であるため、複数種類のボルトを締め付けることはできない。
【0004】
そこで近年では、複数種類のボルトを締め付けられるように、ボルトが係合するヘッドをマガジンから切り離すことができるように構成された締付装置が提案されている。この締付装置では、ヘッドをマガジンから切り離し、切り離したヘッドにボルトを装填した後に再びマガジンに戻す。ここで、複数のヘッドにボルトを順次装填するためには、パレット上にボルトを整列させておく必要がある。このようなパレットに部品を整列させる部品整列装置は、以下に示すように、従来においても提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、パレット上に複数の部品を配置した上で、このパレットに振動と揺動を同時に加えることで、各部品を各係合穴に落とし込むことにより、部品をパレット上に整列させる部品整列装置が示されている。また、このような部品整列装置と関連して、特許文献2には、パレット上に部品が正しく整列されたか否かを、カメラで撮影した画像に基づいて判定する装置が示されている。
【0006】
また、特許文献3には、パレット上の各整列穴に部品が正しく整列されているか否かを判定し、部品が正しく整列されていない場合には、マニピュレータで部品を直に操作し、部品を所定の整列穴に整列させる装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7−15233号公報
【特許文献2】特開平9−57543号公報
【特許文献3】特開平3−121727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、上述の特許文献1に示された装置では、振動や揺動を利用することにより簡易な構成にできるものの、整列成功率を向上するためには時間がかかってしまう。
一方、特許文献3に示された装置では、部品の整列成功率を向上させることができるものの、マニピュレータにより部品を1つずつ操作し、各整列穴に落とし込む必要があるため、整列させるために時間がかかるおそれがある。また、このような細かな操作を行う専用のマニピュレータを設ける必要があるため、装置にかかるコストが増加するおそれもある。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、専用のマニピュレータを用いることなく短時間で部品を整列させることができる部品整列装置及び部品整列方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の部品整列装置は、複数の部品(例えば、後述のボルトB)をパレット(例えば、後述のパレット30)上の所定の位置に整列させる部品整列装置(例えば、後述の部品整列装置1)であって、前記パレットを振動する振動装置(例えば、後述の加振器22)と、前記パレットを揺動する揺動装置(例えば、後述の搬送ロボット10)と、前記パレット上の複数の部品を検出する検出手段(例えば、後述の検査カメラ23)と、前記振動装置及び前記揺動装置を制御する制御装置(例えば、後述の制御盤50、ロボットコントローラ51、カメラコントローラ52、及び加振器コントローラ53)と、を備え、前記制御装置は、前記検出手段の出力に基づいて、前記パレット上の部品の整列率を算出し、当該整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、複数の部品が設けられたパレットを、振動装置で振動し、かつ揺動装置で揺動することにより、パレット上に複数の部品を整列する。特にここで、パレット上の部品の整列率を算出し、この整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させる。このように、整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させることにより、短時間で部品を整列させることができる。また、この構成によれば、パレットの振動及び揺動させるだけでよいので、振動装置及び揺動装置として加振器やロボットなど汎用のものを用いることができる。すなわち、上述の従来の部品整列装置と異なり、専用のマニピュレータを用いる必要がない。
【0012】
この場合、前記制御装置は、前記パレット上に複数の領域(例えば、後述の領域1〜8)を設定するとともに、当該領域ごとの部品の整列率を算出し、整列率の低い領域から順に部品が整列するようにパレットの振動及び揺動の態様を変化させることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、パレットの複数の領域ごとの部品の整列率を算出し、整列率の低い領域から順に部品が整列するようにパレットの振動及び揺動の態様を変化させる。これにより、より短時間で効率的に部品を整列させることができる。
【0014】
本発明の部品整列方法は、パレット(例えば、後述のパレット30)を振動及び揺動することで、複数の部品をパレット上の所定の位置に整列させる部品整列方法であって、前記パレット上の部品の整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、複数の部品が設けられたパレットを、振動装置で振動しかつ揺動装置で揺動することにより、パレット上に複数の部品を整列する。特にここで、パレット上の部品の整列率を算出し、この整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させる。このように、整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させることにより、短時間で部品を整列させることができる。また、この方法によれば、パレットの振動及び揺動させるだけでよいので、加振器やロボットなど汎用のものを用いることができる。すなわち、上述の従来の部品整列装置と異なり、専用のマニピュレータを用いる必要がない。
【0016】
この場合、前記パレットのうち前記複数の部品を整列させる位置には、それぞれ部品が係合する整列部(例えば、後述の整列孔33)が形成され、所定の条件が満たされるまでの間、複数の部品が前記パレット上に散らばるように設定された態様で、前記パレットを振動及び揺動する第1工程(例えば、後述の発散工程)と、前記条件が満たされてから、前記整列率が所定の第2判定値に達するまでの間、前記パレット上の複数の部品がそれぞれの近傍にとどまるように設定された態様で前記パレットを振動する第2工程(例えば、後述の粗整列工程)と、前記整列率が前記第2判定値を超えてから、所定の第3判定値に達するまでの間、前記パレット上の複数の部品をそれぞれの近傍の整列部に係合させるように設定された態様で前記パレットを振動する第3工程(例えば、後述の細整列工程)と、前記整列率が前記第3判定値を超えてからは、整列部に係合している部品を外さずに、整列部に係合していない部品を、部品が係合していない整列部へ誘導するように設定された態様で前記パレットを振動及び揺動する第4工程(例えば、後述の誘導整列工程)と、を含むことが好ましい。
【0017】
この発明によれば、第1工程では、複数の部品がパレット上に散らばるように、パレットを振動及び揺動する。第2工程では、散らばった部品がその近傍にとどまるようにパレットを振動し、第3工程では、パレット上の複数の部品をそれぞれの近傍の整列部に係合させるようにパレットを振動する。すなわち、これら工程では、パレットの全領域に偏りなく部品を散りばめたのち、これら領域において部品を整列させる。これにより、より短時間で効率的に部品を整列させることができる。
また、第4工程では、部品が整列していない領域に部品を誘導し、部品を整列させる。これにより、パレットの全領域の整列率を効率的に高くすることができる。
【0018】
この場合、前記パレットのうち前記複数の部品を整列させる位置には、それぞれ部品が係合する整列部が形成され、所定の条件が満たされるまでの間、前記パレットを所定の第1振動数及び第1振幅で振動し、かつ、所定の態様で揺動する第1工程(例えば、後述の発散工程)と、前記条件が満たされてから、前記整列率が所定の第2判定値に達するまでの間、前記パレットを前記第1振動数よりも大きな第2振動数及び前記第1振幅よりも小さな第2振幅で振動する第2工程(例えば、後述の粗整列工程)と、前記整列率が前記第2判定値を超えてから、所定の第3判定値に達するまでの間、前記パレットを前記第2振動数よりも小さな第3振動数及び前記第2振幅よりも大きな第3振幅で振動する第3工程(例えば、後述の細整列工程)と、前記整列率が前記第3判定値を超えてからは、前記パレットを前記第3振動数よりも大きな第4振動数及び前記第3振幅よりも小さな第4振幅で振動し、かつ、整列部に係合していない部品を、部品が係合していない整列部へ誘導するように設定された態様で揺動する第4工程(例えば、後述の誘導整列工程)と、を含むことが好ましい。
【0019】
この発明によれば、第1工程では第1振動数及び第1振幅で振動し、かつ、所定の態様で揺動する、第2工程では、第1振動数よりも大きな第2振動数及び第1振幅よりも小さな第2振幅でパレットを振動し、第3工程では、第2振動数よりも小さな第3振動数及び第2振幅よりも大きな第3振幅でパレットを振動する。また、第4工程では、第3振動数よりも大きな第4振動数及び第3振幅よりも小さな第4振幅でパレットを振動し、かつ、整列部に係合していない部品を、部品が係合していない整列部へ誘導するように設定された態様でパレットを揺動する。これにより。上述の部品整列方法とほぼ等しい効果を奏すると期待できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させることにより、短時間で部品を整列させることができる。また、パレットの振動及び揺動させるだけでよいので、振動装置及び揺動装置として加振器やロボットなど汎用のものを用いることができる。すなわち、専用のマニピュレータを用いる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る部品整列装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】上記実施形態に係るパレットの構成を示す斜視図である。
【図3】上記実施形態に係るパレットの構成を示す上面図である。
【図4】上記実施形態に係る検査カメラにより撮影されたパレットの上面の画像の一部を示す図である。
【図5】上記実施形態に係る複数のボルトをパレット上に整列させる手順を示すフローチャートである。
【図6】上記実施形態の変形例に係る部品整列装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る部品整列装置1の概略構成を示す模式図である。
部品整列装置1は、搬送ロボット10と、搬送ロボット10に取り付けられた把持ツールユニット20と、システム全体を制御する制御盤50と、を含んで構成される。この部品整列装置1は、複数のボルトが散りばめられたパレット30を把持ツールユニット20で把持し、このパレット30を振動及び揺動することで、複数のボルトをパレット30上の所定の位置に整列させる。
【0023】
図2は、パレット30の構成を示す斜視図である。
図3は、パレット30の構成を示す上面図である。
パレット30は、略箱状であり、正方形状の底部31と、この底部31を四方から囲う壁部32とを含んで構成される。
【0024】
略平らに形成された底部31のうち、複数のボルトBを整列させる位置には、これら複数のボルトBが係合する整列孔33が形成されている。図3に示すように、正方形状の底部31には、25個の整列孔33が等間隔で設けられている。これら整列孔33の内径は、ボルトBのねじ溝が形成された円柱状の軸部BRの外径よりもやや大きく形成されている。すなわち、これら複数の整列孔33にそれぞれボルトBの軸部BRを嵌めることにより、パレット30上にボルトBを整列させることができる。以下では、その軸部BRが整列孔33に嵌った状態にあるボルトを、整列されたボルトという。
【0025】
また、本実施形態では、下記式(1)に示すように、整列孔33の数に対する、整列されたボルトの数の割合を整列率として定義する。
整列率(%)=(整列されたボルト数/整列孔数)×100 ・・・ (1)
【0026】
また、下記式(2)に示すように、パレット30のうち所定の領域のみを対象とする場合、その領域に対する整列率は、対象とする領域内の整列孔33の数に対する、この対象とする領域内における整列されたボルトの数の割合として定義される。
領域の整列率(%)=(領域内の整列されたボルト数/領域内の整列孔数)×100
・・・ (2)
【0027】
図1に戻って、搬送ロボット10は、床面に取り付けられたロボット本体11と、このロボット本体11に軸支された多関節アーム13とを備える。この多関節アーム13の先端側には、把持ツールユニット20が軸支されている。
【0028】
多関節アーム13は、ロボット本体11側から順に、第1腕部131、第2腕部132、第3腕部133、第4腕部134を備える。
第1腕部131は、略直線状に延出しており、ロボット本体11に軸支される。ロボット本体11は、略垂直方向に延びる軸を回転中心として、第1腕部131を回転させる。
第2腕部132は、略直線状に延出しており、第1腕部131に軸支される。第1腕部131は、図示しない駆動機構により、第1腕部131の延出方向に交差する方向を回転中心として、第2腕部132を回転させる。これにより、第1腕部131の延出方向と第2腕部132の延出方向との成す角度が変化する。
第3腕部133は、略直線状に延出しており、第2腕部132に軸支される。第2腕部132は、図示しない駆動機構により、第2腕部132の延出方向に交差する方向を回転中心として、第3腕部133を回転させる。これにより、第2腕部132の延出方向と第3腕部133の延出方向との成す角度が変化する。
【0029】
第4腕部134は、略直線状に延出しており、第3腕部133に軸支される。第3腕部133は、図示しない駆動機構により、第3腕部133の延出方向に交差する方向を回転中心として、第4腕部134を回転させる。これにより、第3腕部133の延出方向と第4腕部134の延出方向との成す角度が変化する。
また、第4腕部134の先端側には、把持ツールユニット20が軸支されている。この第4腕部134は、図示しない駆動機構により、第4腕部134の延出方向に延びる軸を回転中心として、把持ツールユニット20を回転させる。
【0030】
搬送ロボット10は、以上のような複数の腕部131〜134で構成された多関節アーム13により、パレット30の三次元空間内における位置を変更したり、パレット30を様々な態様で揺動したりすることができる。このような搬送ロボット10の動作は、制御盤50に接続されたロボットコントローラ51により制御される。
【0031】
把持ツールユニット20は、多関節アーム13の先端部に取り付けられたブラケット21と、このブラケット21に固定された加振器22、エアチャック24、及び検査カメラ23とを備える。
【0032】
加振器22は、制御盤50に接続された加振器コントローラ53により設定された態様で振動する。加振器22で発生した振動は、ブラケット21を介してエアチャック24に伝達し、このエアチャック24により把持されたパレット30を振動させる。
【0033】
加振器コントローラ53は、加振器22で発生させる振動の波形を生成するファンクションジェネレータや、生成した波形を増幅し加振器22に供給する電力増幅器などを含んで構成される。加振器コントローラ53は、制御盤50から送信された制御信号に基づいて動作し、設定された態様の振動を加振器22に発生させる。
【0034】
エアチャック24は、開閉自在に設けられた2つの爪部241,242を備える。このエアチャック24は、これら2つの爪部241,242でパレット30の壁部32を挟持することにより、パレット30を把持する。
【0035】
検査カメラ23は、その撮影レンズをパレット30の上面に向けた上体でブラケット21に固定され、パレット30上の複数のボルトBを撮影する。また、この撮影レンズとパレット30との間の距離は、この検査カメラ23によりパレット30上に散りばめられた全てのボルトBを撮影できるように設定されることが好ましい。検査カメラ23は、制御盤50に接続されたカメラコントローラ52により制御される。カメラコントローラ52は、検査カメラ23により撮影されたパレット30の上面の画像の画像信号を制御盤50に送信する。
【0036】
制御盤50は、各種信号が入力される入力回路と、後述の図5に示すフローチャートの実行に係る各種プログラムなどが記憶される記憶装置と、上記各種プログラム及び各種信号に基づいて演算を実行するCPUと、を含むコンピュータにより構成される。この他、制御盤50は、上記コントローラ51〜53に制御信号を出力する出力回路や、検査カメラ23から出力された画像信号に画像処理を施す画像処理ユニットなどを備える。
【0037】
制御盤50は、検査カメラ23の出力に基づいてパレット30上のボルトの整列率を算出する。そして、制御盤50は、後に図5を参照して詳述するように、算出した整列率に応じて加振器22によるパレット30の振動及び搬送ロボット10によるパレット30の揺動の態様を変化させることにより、パレット30上に複数のボルトを整列させる。
【0038】
制御盤50では、以下のようにして整列率を算出する。
図4は、検査カメラにより撮影されたパレット30の上面の画像の一部を示す図である。図4には、4つのボルトBのうち3つがパレット30に整列された状態を示す。
【0039】
整列されたボルトBは、その軸部BRが整列孔33に嵌ることにより、頭部BHが検査カメラ側に向けられた状態となる。これに対して、整列されていないボルトBは、その軸部BRが整列孔33に嵌っていないので、頭部BHが検査カメラ23側へ向けられた状態にはならない。
そこで、本実施形態では、検査カメラにより撮影されたパレットの上面の画像から、整列されたボルトが存在することを示す頭部BHの六角形状の輪郭を、画像処理ユニットにより抽出する。これにより、パレット上に整列されたボルトの数を算出することができる。整列率は、以上のようにして算出した整列されたボルトの数を用いて、上記式(1)及び(2)に基づいて算出される。
【0040】
次に、図5を参照して、ボルトをパレット上に整列させる手順について説明する。
【0041】
図5は、ボルトをパレット上に整列させる手順を示すフローチャートである。以下詳しく説明するように部品整列装置1では、パレット上のボルトBの整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させる。そこで、このボルトを整列させる手順は、パレットの振動及び揺動の態様に応じて、発散工程(ステップS1,S2)と、粗整列工程(ステップS3,S4)と、細整列工程(ステップS5,S6)と、誘導整列工程(ステップS7)と、に分けられる。
【0042】
ステップS1では、周波数f1及び振幅r1の振動を加振器で発生することによりパレットを振動するとともに、搬送ロボットによりパレットを所定の態様で揺動する。
ステップS2では、パレット全体におけるボルトの整列率を算出し、この整列率が所定の第1閾値より大きいか否かを判別する。本実施形態では、この第1閾値を例えば10%とする。この判別がYESの場合にはステップS3に移り、NOの場合にはステップS1に移る。
【0043】
この発散工程(S1,S2)におけるパレットの振動の態様、すなわち周波数f1及び振幅r1や、パレットの揺動の態様は、具体的には、パレットに載せられた複数のボルトが、パレットの全面にわたって散らばるように設定される。本実施形態では、例えば、周波数f1を35Hzに設定し、振幅r1を1.5mmに設定する。また、複数のボルトが偏らずにパレットの全面に散らばるように、多方向に揺動することが好ましい。
【0044】
ステップS3では、周波数f2及び振幅r2の振動を加振器で発生することによりパレットを振動する。
ステップS4では、パレット全体におけるボルトの整列率を算出し、この整列率が所定の第2閾値より大きいか否かを判別する。本実施形態では、第2閾値を例えば45%に設定する。この判別がYESの場合にはステップS5に移り、NOの場合にはステップS3に移る。
【0045】
この粗整列工程(S3,S4)におけるパレットの振動の態様、すなわち周波数f2及び振幅r2は、具体的には、パレットの全面に亘って散りばめられた複数のボルトが、それぞれの近傍にとどまるように設定される。本実施形態では、例えば、周波数f2をf1よりも大きな50Hzに設定し、振幅r2をr1よりも小さな1.0mmに設定する。また、この粗整列工程では、パレット上でボルトが散らばらないように、基本的にはパレットを揺動しない。すなわち、パレットを水平に保った状態で振動する。
【0046】
ステップS5では、周波数f3及び振幅r3の振動を加振器で発生することによりパレットを振動する。
ステップS6では、パレット全体におけるボルトの整列率を算出し、この整列率が所定の第3閾値より大きいか否かを判別する。本実施形態では、第3閾値を例えば80%に設定する。この判別がYESの場合にはステップS7に移り、NOの場合にはステップS5に移る。
【0047】
この細整列工程(S5,S6)におけるパレットの振動の態様、すなわち周波数f3及び振幅r3は、具体的には、パレット上の複数のボルトを、それぞれの近傍の整列孔に係合させるように設定する。本実施形態では、例えば、周波数f3をf2よりも小さな40Hzに設定し、振幅r3をr2よりも大きな1.4mmに設定する。また、これらステップS5,S6では、パレット上でボルトが散らばらないように、基本的にはパレットを揺動しない。すなわち、パレットを水平に保った状態で振動する。
【0048】
ステップS7では、周波数f4及び振幅r4の振動を加振器で発生することによりパレットを振動するとともに、後述の手順でパレットを揺動する。
【0049】
この誘導整列工程(S7)におけるパレットの振動の態様、すなわち周波数f4及び振幅r4や、センシング揺動処理の実行時におけるパレットの揺動の態様は、整列しているボルトを外さずに、かつ、整列していないボルトを、ボルトが係合していない整列孔に誘導するように設定する。本実施形態では、例えば、周波数f4をf3よりも大きな55Hzに設定し、振幅r4をr3よりも小さな1.0mmに設定する。
【0050】
図3を参照して、上述の誘導整列工程においてパレットを揺動する手順について説明する。
先ず、整列孔33が形成された領域を、図3に示すように8つの領域(領域1〜領域8)に分ける。誘導整列工程における揺動の手順は、主に以下に示す4つの工程で構成される。
【0051】
[第1工程]
第1工程では、8つの領域のうち、整列孔の数が比較的多い領域1〜4へ重点的にボルトを誘導する。
具体的には、先ず領域1〜4の整列率を算出し、各領域の整列率を比較する。次に、整列率の低い領域からボルトが整列するように、整列率の低い領域から順に下方に傾け、整列されていないボルトを整列率の低い領域に順に誘導する。なお、整列率が100%の領域へは傾けず、また、整列率の等しい領域があった場合には番号の小さい領域へ先に誘導する。
この第1工程は、上記領域1〜4へボルトを誘導する手順を所定の回数(例えば3回)繰り返した場合、対象とする全ての領域1〜4の整列率が100%になった場合、又は、対象とする領域1〜4のうち整列率が100%未満の領域が1つだけになった場合には、次の第2工程に移る。
【0052】
[第2工程]
第2工程では、8つの領域のうち、整列孔の数が比較的少ない領域5〜8へ重点的にボルトを誘導する。
具体的には、先ず領域5〜8の整列率を算出し、各領域の整列率を比較する。次に、整列率の低い領域からボルトが整列するように、整列率の低い領域から順に下方へ傾け、整列されていないボルトを整列率の低い領域に順に誘導する。なお、整列率が100%の領域へは傾けず、また、整列率の等しい領域があった場合には番号の小さい領域へ先に誘導する。
この第2工程は、上記領域5〜8へボルトを誘導する手順を所定の回数(例えば3回)繰り返した場合、対象とする全ての領域5〜8の整列率が100%になった場合、又は、対象とする領域5〜8のうち整列率が100%未満の領域が1つだけになった場合には、次の第3工程に移る。
【0053】
[第3工程]
第3工程では、8つの領域全てを対象として、整列率の低い領域へボルトを誘導する。
具体的には、先ず領域1〜8の整列率を算出し、各領域の整列率を比較する。次に、整列率の低い領域からボルトが整列するように、整列率の低い領域から順に下方へ傾け、整列されていないボルトを整列率の低い領域に順に誘導する。なお、整列率が100%の領域へは傾けず、また、整列率の等しい領域があった場合には番号の小さい領域へ先に誘導する。
この第3工程は、上記領域1〜8へボルトを誘導する手順を所定の回数(例えば3回)繰り返した場合、対象とする全ての領域1〜8の整列率が100%になった場合、又は、対象とする領域1〜8のうち整列率が100%未満の領域が1つだけになった場合には、次の第4工程に移る。
【0054】
[第4工程]
第4工程では、8つの領域のうち整列率が100%未満の領域のみを対象として、この領域へボルトを誘導する。
具体的には、先ず領域1〜8の整列率を算出し、整列率が100%未満の領域を抽出する。次に、抽出した領域と、この領域と対称の位置にある領域とを交互に傾ける。すなわち、例えば領域8の整列率が100%未満であった場合には、この領域8と、対称の位置にある領域6とを交互に傾ける。
この第4工程は、上記整列率が100%未満の領域へボルトを誘導する手順を所定の回数(例えば3回)繰り返した場合、又は、全ての領域1〜8の整列率が100%になった場合には、終了する。
【0055】
なお、上述した周波数及び振幅の値は、整列させるボルトとして8gのものを用いた場合における設定例を示すものである。したがって、上述の周波数(f1、f2、f3、f4)及び振幅(r1、r2、r3、r4)の具体的な値は、ボルトの大きさや重さなどに応じて適宜変更してもよい。しかしながら、この場合であっても、これら周波数(f1〜f4)及び振幅(r1〜r4)は、下記式(3)及び(4)、あるいは、下記式(5)及び(6)を満たしていることが好ましい。
f1<f2,f2>f3,f3<f4 (3)
r1>r2,r2<r3,r3>r4 (4)
f1<f3<f2<f4 (5)
r4<r2<r3<r1 (6)
【0056】
本実施形態によれば、以下のような作用効果がある。
(1)本実施形態によれば、複数のボルトが設けられたパレット30を、加振器22で振動しかつ搬送ロボット10で揺動することにより、パレット30上に複数のボルトを整列する。特にここで、パレット30上のボルトの整列率を算出し、この整列率に応じてパレット30の振動及び揺動の態様を変化させる。このように、整列率に応じてパレット30の振動及び揺動の態様を変化させることにより、短時間でボルトを整列させることができる。また、本実施形態によれば、パレット30の振動及び揺動させるだけでよいので、加振器22や搬送ロボット10など汎用のものを用いることができる。すなわち、専用のマニピュレータを用いる必要がない。
【0057】
(2)本実施形態によれば、パレット30の複数の領域ごとのボルトの整列率を算出し、整列率の低い領域から順にボルトが整列するようにパレット30の振動及び揺動の態様を変化させる。これにより、より短時間で効率的にボルトを整列させることができる。
【0058】
(3)本実施形態によれば、発散工程では、複数のボルトがパレット30上に散らばるように、パレット30を振動及び揺動する。粗整列工程では、散らばったボルトがその近傍にとどまるようにパレット30を振動し、細整列工程では、パレット30上の複数のボルトをそれぞれの近傍の整列孔33に係合させるようにパレット30を振動する。すなわち、これら工程では、パレット30の全領域に偏りなくボルトを散りばめたのち、これら領域においてボルトを整列させる。これにより、より短時間で効率的にボルトを整列させることができる。
また、誘導整列工程では、ボルトが整列していない領域に重点的にボルトを誘導し、このボルトを整列させる。これにより、パレット30の全領域の整列率を効率的に高くすることができる。
【0059】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【0060】
上記実施形態では、検査カメラ23を把持ツールユニット20のブラケット21に取り付けたが、これに限らない。検査カメラ23は、把持ツールユニット20及び搬送ロボット10とは別体で設けてもよい。これにより、整列率の算出精度が向上する場合がある。
【0061】
上記実施形態では、検査カメラ23により、ボルトを含むパレット30上面の画像を撮影し、この撮影された画像に基づいて整列されたボルトを検出したが、これに限るものではない。例えば、図6に示すように、パレット30の裏面側に、複数の近接センサ26を設け、これら近接センサ26により、パレット30上の整列されたボルトを検出してもよい。あるいは、このような近接センサ26と、上記実施形態の検査カメラ23とを組み合わせてパレット30上の整列されたボルトを検出してもよい。
【0062】
上記実施形態では、把持ツールユニット20に加振器22を設け、把持ツールユニット20自体を振動させることによりパレット30を振動させたが、これに限らない。例えば、加振器を把持ツールユニット及び搬送ロボットとは別体で設けてもよい。この場合、別体で設けられた加振器に、搬送ロボットによりパレットを接触させることにより、パレットを振動することができる。
【0063】
上記実施形態において、発散工程では、パレット全体におけるボルトの整列率を算出し、この整列率が所定の第1閾値よりも大きい場合に、次の粗整列工程に移ったが、これに限らない。例えば、発散工程を実行してから所定の時間が経過したことを条件に、発散工程から粗整列工程へ移ってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…部品整列装置
10…搬送ロボット(揺動装置)
20…把持ツールユニット
22…加振器(振動装置)
23…検査カメラ(検出手段)
26…近接センサ(検出手段)
30…パレット
33…整列孔(整列部)
B…ボルト(部品)
50…制御盤(制御装置)
51…ロボットコントローラ(制御装置)
52…カメラコントローラ(制御装置)
53…加振器コントローラ(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品をパレット上の所定の位置に整列させる部品整列装置であって、
前記パレットを振動する振動装置と、
前記パレットを揺動する揺動装置と、
前記パレット上の複数の部品を検出する検出手段と、
前記振動装置及び前記揺動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記検出手段の出力に基づいて、前記パレット上の部品の整列率を算出し、当該整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させることを特徴とする部品整列装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記パレット上に複数の領域を設定するとともに、当該領域ごとの部品の整列率を算出し、整列率の低い領域から順に部品が整列するようにパレットの振動及び揺動の態様を変化させることを特徴とする請求項1に記載の部品整列装置。
【請求項3】
パレットを振動及び揺動することで、複数の部品をパレット上の所定の位置に整列させる部品整列方法であって、
前記パレット上の部品の整列率に応じてパレットの振動及び揺動の態様を変化させることを特徴とする部品整列方法。
【請求項4】
前記パレットのうち前記複数の部品を整列させる位置には、それぞれ部品が係合する整列部が形成され、
所定の条件が満たされるまでの間、複数の部品が前記パレット上に散らばるように設定された態様で、前記パレットを振動及び揺動する第1工程と、
前記条件が満たされてから、前記整列率が所定の第2判定値に達するまでの間、前記パレット上の複数の部品がそれぞれの近傍にとどまるように設定された態様で前記パレットを振動する第2工程と、
前記整列率が前記第2判定値を超えてから、所定の第3判定値に達するまでの間、前記パレット上の複数の部品をそれぞれの近傍の整列部に係合させるように設定された態様で前記パレットを振動する第3工程と、
前記整列率が前記第3判定値を超えてからは、整列部に係合している部品を外さずに、整列部に係合していない部品を、部品が係合していない整列部へ誘導するように設定された態様で前記パレットを振動及び揺動する第4工程と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の部品整列方法。
【請求項5】
前記パレットのうち前記複数の部品を整列させる位置には、それぞれ部品が係合する整列部が形成され、
所定の条件が満たされるまでの間、前記パレットを所定の第1振動数及び第1振幅で振動し、かつ、所定の態様で揺動する第1工程と、
前記条件が満たされてから、前記整列率が所定の第2判定値に達するまでの間、前記パレットを前記第1振動数よりも大きな第2振動数及び前記第1振幅よりも小さな第2振幅で振動する第2工程と、
前記整列率が前記第2判定値を超えてから、所定の第3判定値に達するまでの間、前記パレットを前記第2振動数よりも小さな第3振動数及び前記第2振幅よりも大きな第3振幅で振動する第3工程と、
前記整列率が前記第3判定値を超えてからは、前記パレットを前記第3振動数よりも大きな第4振動数及び前記第3振幅よりも小さな第4振幅で振動し、かつ、整列部に係合していない部品を、部品が係合していない整列部へ誘導するように設定された態様で揺動する第4工程と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の部品整列方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−189078(P2010−189078A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32610(P2009−32610)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】