説明

都市設計方法、都市のヒートアイランド特性評価方法及び都市設計システム

【課題】都市のヒートアイランド現象を直接的に抑制可能にする。
【解決手段】本発明の都市設計方法は、敷地内にビル等の空間構成要素を建設する設計を行い、かつ空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して色彩要素を選定する設計を行うことにより、都市を設計する。この都市設計方法は、敷地、空間構成要素及び色彩要素について、方位を含む立体的な第1ジオラマデータ1を作成する立面図設計工程S1と、第1ジオラマデータ1に対し、敷地の緯度及び経度の立地情報5を付加して第2ジオラマデータ2を作成する立地情報付加工程S2と、第2ジオラマデータ2に対し、所定日時の日照情報6を付加して第3ジオラマデータ3を作成する日照情報付加工程S3と、第3ジオラマデータ3と、色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて都市のアルベドを算定するアルベド算定工程S4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートアイランド特性を考慮した都市設計方法と、都市のヒートアイランド特性評価方法と、ヒートアイランド特性を考慮可能な都市設計システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、都市のヒートアイランド現象(灼熱化)が問題になっている。この現象は、住居用のビルやオフィス用のビル等の建築物が多い街にのみ生じるのではなく、全国において生じつつある。また、最近では、この現象は、四季を問わずに気温が上昇する地球温暖化とも結びついているとも考えられている。そのような都市に暮らす人間においては、夏季の体温上昇による生理的障害である熱中症患者が増加の一途を辿るという問題まで提起するに至っている。
【0003】
近年の研究によれば、都市のヒートアイランド現象は、ある程度広い敷地を考慮した場合、その敷地内に建設されるビル等の建築物の他、道路、舗道、駐車場、外構等の土木構造物その他の空間構成要素の外皮に起因している。外皮とは、建築物の壁面や屋上面の他、道路の表面等、空間構成要素のうち、太陽光を受ける表面である。都市においては、ビルの乱立、高層化等により敷地面積当たりの外皮の面積が拡大し、特に夏季において、外皮が太陽光を地表に向けて反射し、舗装面が太陽光の熱を吸収するからである(非特許文献1)。
【0004】
このため、特許文献1〜3等に開示された技術が提案されてはいる。特許文献1に開示された技術は、建築物の外皮を木質のチップ等で構成しようとするものである。また、特許文献2に開示された技術は、舗装面が日射を反射し得るように構成するとともに、顆粒状の樹脂を舗装中に混合しようとするものである。さらに、特許文献3に開示された技術は、舗装面が日射を反射し得るように構成するとともに、熱伝導性の材料を舗装中に混合しようとするものである。これらの技術を採用すれば、チップ等が太陽光の赤外線を反射し、ヒートアイランド現象を抑制可能と考えられる。また、舗装中の樹脂や熱伝導性材料は舗装内への蓄熱を防止し、やはりヒートアイランド現象を抑制可能と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−105644号公報
【特許文献2】特開2007−270494号公報
【特許文献3】特開2007−262805号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2009-7-13 NIKKEI ARCHITECTURE 第65〜68頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、現在行われているヒートアイランド現象の対策は、社会的、経済的成長に伴う都市の拡大の中、CO2等の温暖化ガス排出量のさらなる増大につながるものであることから、効果が限定的である。
【0008】
また、ヒートアイランド現象を抑制するための従来の技術は、いずれも個々の建築物や道路の外皮をどのように構成するかという認識に留まっている。このため、仮に、都市の中の一つの建築物等にその技術を採用したとしても、都市のヒートアイランド現象を中々抑制することはできない。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、都市のヒートアイランド現象を直接的に抑制可能にすることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の都市設計方法は、敷地内に建築物、土木構造物その他の空間構成要素を建設する設計を行い、かつ該空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して色彩要素を選定する設計を行うことにより、都市を設計する都市設計方法であって、
前記敷地、前記空間構成要素及び前記色彩要素について、方位を含む立体的な第1ジオラマデータを作成する立面図設計工程と、
該第1ジオラマデータに対し、該敷地の緯度及び経度の立地情報を付加して第2ジオラマデータを作成する立地情報付加工程と、
該第2ジオラマデータに対し、所定日時の日照情報を付加して第3ジオラマデータを作成する日照情報付加工程と、
該第3ジオラマデータと、該色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて前記都市のアルベドを算定するアルベド算定工程とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明は、都市設計方法において、都市のヒートアイランド現象を直接的に抑制しようとするものである。都市設計方法は敷地に新たに都市を設計、建設する場合に有効である。
【0012】
すなわち、一般的な都市設計方法は、敷地内に建築物、土木構造物その他の空間構成要素を建設する設計を行う。建築物とは、住居用のビルやオフィス用のビル等である。都市には、1棟以上の建築物が設計、建設される。土木構造物とは、道路、舗道、駐車場、外構等である。本明細書では、建築物、土木構造物を含めて空間構成要素という。例えば、敷地のどこに、どの程度の大きさのビルを建設するかが設計される。また、ビルにおいては、どの位置に壁面や屋上面を設けるかが設計される。また、そのビルのどこに窓や出入口を設けるのかも設計される。さらに、道路や歩道においては、どのようにそれらを通すかが設計される。
【0013】
また、一般的な都市設計方法は、空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して色彩要素を選定する設計を行う。例えば、ビルにおいては、壁面や屋上面にどのようなタイル等の建材を設けるのかが設計される。また、道路や歩道をアスファルト敷きにするのか、コンクリート敷きにするのか、またインターロッキングブロック敷き等にするのかが設計される。
【0014】
本発明の都市設計方法では、まず、立面図設計工程において、敷地、空間構成要素及び色彩要素について、方位を含む立体的な第1ジオラマデータを作成する。この立面図設計工程は、一般的な都市設計方法中に行われ得る。例えば、敷地と方位の決定、建築物や土木構造物の面積や高さの決定、建築物や土木構造物の外皮の構造物の決定、建築物の屋上面の形状の決定等を行い、第1ジオラマデータとする。この立面図設計工程は、一般的な建築用二次元CADソフトによって行ってもよく、建築用三次元CADソフトによっておこなってもよい。立面図設計工程を建築用三次元CADソフトによって行うことが好ましい。
【0015】
各建築物等毎に設計事務所等が設計を行う場合もあれば、一定面積の敷地内の建築物等を一括して設計事務所等が設計を行う場合もあり得る。敷地が広い程、都市のヒートアイランド現象を抑制する効果が大きいことから、本発明の都市設計方法では、特定の敷地内について、各建築物等の立体的なデータを統合して第1ジオラマデータを作成する必要がある。この都市設計方法により、ある敷地は、空間構成要素とともに一つの都市として構成されることとなる。近年の大型マンション群、ショッピングモール等の都市開発がこの例である。
【0016】
本発明の都市設計方法では、続く立地情報付加工程において、第1ジオラマデータに対し、敷地の緯度及び経度の立地情報を付加して第2ジオラマデータを作成する。これにより、その都市の地球上の位置が特定される。敷地内の1点の緯度及び経度の立地情報を付加してもよいが、敷地が大きい場合、敷地を区切る各点の緯度及び経度の立地情報を付加することが好ましい。緯度及び経度は、例えば、Google Maps APIを利用した住所等から緯度及び経度を調べるインターネット上の座標取得ツール等で取得可能である。
【0017】
本発明の都市設計方法では、続く日照情報付加工程において、第2ジオラマデータに対し、所定日時の日照情報を付加して第3ジオラマデータを作成する。これにより、地球上の特定の位置にある都市が何月何日の何時何分にはどの方向から太陽光を受けるのかが特定される。所定日時は、例えば夏至の正午等の瞬間だけであってもよく、夏季、1年間等の連続時間であってもよい。最も正確にその都市のヒートアイランド特性を評価しようとする場合には、1年間の日照情報を付加することが好ましい。
【0018】
本発明の都市設計方法では、続くアルベド算定工程において、第3ジオラマデータと、色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて都市のアルベドを算定する。アルベドとは、その都市全体の反射能であり、その都市がヒートアイランド現象をどの程度抑制できるかを指標可能な評価値である。
【0019】
アルベドは、色彩要素を特定した空間構成要素の面積と、その色彩要素による太陽光の反射率とによって決定される。各面積は第3ジオラマデータで得られる。このため、色彩要素と太陽光の反射率との関係を予め求めておく。
【0020】
例えば、ある建築物の壁面の面積をA、その壁面をある色彩要素で設計した場合のその反射率をaとする。また、その建築物の屋上面の面積をB、その屋上面をある色彩要素で設計した場合のその反射率をbとする。また、道路の面積をC、その屋上面をある色彩要素で設計した場合のその反射率をcとする。さらに、駐車場の面積をD、その屋上面をある色彩要素で設計した場合のその反射率をdとする。他の空間構成要素の面積と、色彩要素による反射率とについても同様とする。この場合、アルベドは、
アルベド=(Aa+Bb+Cc+Dd+…)/(A+B+C+D+…)…(1)式
で表わされる。
【0021】
第3ジオラマデータがある瞬間の日照情報を付加したものであれば、第3ジオラマデータは、その瞬間の太陽を視点とした静止画として把握される。パース画と同様に把握することも可能である。この場合、アルベド算定工程では、その第3ジオラマデータをまず画像処理することが可能である。この画像処理では、各色彩要素に相当し、RGB値で特定される複数の色と、各色が占める面積とを把握する。次いで、アルベド算定工程では、画像処理後の第3ジオラマデータに対し、色から反射率への変換を行う。この際、予め定めた変換テーブルにより、各色と各色の反射率とを置換することが可能である。反射率は、太陽光の全ての波長に対するものであってもよく、特に赤外線に対するものであってもよい。そして、アルベド算定工程では、上記(1)式に基づく積算を行う。
【0022】
第3ジオラマデータが連続期間の日照情報を付加したものであれば、第3ジオラマデータは、その連続期間の太陽を視点とした動画として把握される。この場合、データ処理量は多くなるが、静止画に対して行うのと同様、画像処理、色から反射率への変換及び積算を行う。積算されたアルベドから、連続期間の平均アルベドを算出してもよい。
【0023】
こうして、設計している都市のアルベドが算定される。発明者らの知見によれば、アルベドが0.5以上の都市は、太陽光を50%以上宇宙(天空)に反射し、ヒートアイランド現象の抑制効果が大きい。このため、アルベドが0.5以上の都市はヒートアイランド現象を生じ難く、人間が住みやすいことが予想される。一方、アルベドが0.5未満の都市はヒートアイランド現象を生じ易く、人間が住み難いことが予想される。
【0024】
したがって、本発明の都市設計方法によれば、設計している都市のアルベドを算定することから、ヒートアイランド現象を直接的に抑制可能な都市を設計することが可能である。
【0025】
本発明の都市設計方法は、第1ジオラマデータに変更を加え、再度、立地情報付加工程、日照情報付加工程及びアルベド算出工程を行う再設計工程を有していることが好ましい(請求項2)。
【0026】
この場合、一旦、アルベド算定工程において、設計中の都市のアルベドが例えば0.5未満であることが明らかになれば、再設計工程において、第1ジオラマデータを作成し直すことが可能である。この際、空間構成要素の位置を変更したり、空間構成要素の構成を変更したり、色彩要素を変更する。それらを変更後、立地情報付加工程、日照情報付加工程及びアルベド算定工程を行えば、変更後の都市のアルベドが算定される。変更後の都市のアルベドが0.5以上であれば、その都市はヒートアイランド現象を生じ難く、人間が住みやすいことが予想される。
【0027】
本発明の都市のヒートアイランド特性評価方法は、敷地内に建設した建築物、土木構造物その他の空間構成要素と、該空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して設定された色彩要素とからなる都市のヒートアイランド特性評価方法であって、
前記敷地、前記空間構成要素及び前記材質要素について、方位を含む立体的な第1ジオラマデータを作成する立面図設計工程と、
該第1ジオラマデータに対し、該敷地の緯度及び経度の立地情報を付加して第2ジオラマデータを作成する立地情報付加工程と、
該第2ジオラマデータに対し、所定日時の日照情報を付加して第3ジオラマデータを作成する日照情報付加工程と、
該第3ジオラマデータと、該色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて前記都市のアルベドを算定するアルベド算定工程とを備えていることを特徴とする(請求項3)。
【0028】
本発明は、都市のヒートアイランド特性評価方法において、上記都市設計方法と同様、都市のヒートアイランド現象を直接的に抑制しようとするものである。都市のヒートアイランド特性評価方法は、既存の都市がどの程度のヒートアイランド特性を有しているかを評価することができる。既存の都市がヒートアイランド現象を生じ易ければ、その都市をリフォームすることによって、ヒートアイランド現象を生じ難く、人間が住みやすい都市にすることが可能である。また、日照情報付加工程において、所定日時を現実の日時とし、その際の実際の天候を加味した日照情報を付加することとすれば、その年のその日時でのアルベドを算定することができる。
【0029】
したがって、本発明の都市のヒートアイランド特性評価方法によっても、ヒートアイランド現象を直接的に抑制可能な都市を設計、建設できる。
【0030】
本発明の都市設計システムは、少なくとも建築用CADソフトがインストールされたコンピュータで構成され、
敷地と、該敷地に建設する建築物、土木構造物その他の空間構成要素と、該空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して選定する色彩要素とについて作成される方位を含む立体的な第1ジオラマデータと、
該第1ジオラマデータに対し、該敷地の緯度及び経度の立地情報を付加して作成される第2ジオラマデータと、
該第2ジオラマデータに対し、所定日時の日照情報を付加して作成される第3ジオラマデータと、
該第3ジオラマデータと、該色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて前記都市のアルベドを算定するアルベド算定プログラムとを備えていることを特徴とする(請求項4)。
【0031】
本発明の都市設計システムによれば、上記都市設計方法及び上記特性評価方法を容易に実行することが可能である。
【0032】
アルベド算定プログラムは、上記アルベド算定工程を実行するためのプログラムである。建築用CADソフトとしては、二次元CADソフトであってもよく、三次元CADソフトであってもよい。この都市設計システムは、画像処理ソフトがインストールされていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例の都市設計システムの一部を示すブロック図である。
【図2】実施例の都市設計方法及び都市のヒートアイランド特性評価方法を示す流れ図である。
【図3】実施例の都市設計方法等に係り、夏至の正午における第3ジオラマデータの仮想の立面図である。
【図4】実施例の都市設計方法等に係り、夏至の正午における第3ジオラマデータの仮想の平面図である。
【図5】実施例の都市設計方法等に係り、冬至の正午における第3ジオラマデータの仮想の立面図である。
【図6】実施例の都市設計方法等に係り、冬至の正午における第3ジオラマデータの仮想の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0035】
実施例の都市設計システムは、図1に示すように、アルベド算定プログラム4がインストールされたコンピュータである。コンピュータには、他に建築用二次元CADソフト及び画像処理ソフトがインストールされている。また、コンピュータのメモリには、各色と各色の反射率とが相関付けられた変換テーブル7が記憶されている。以下、このコンピュータにより、都市設計方法及び都市のヒートアイランド特性評価方法を実行する。
【0036】
まず、図2に示すように、立面図設計工程S1として、建築用二次元CADソフトにより、敷地、空間構成要素及び色彩要素について、方位を含む立体的な第1ジオラマデータ1を作成する。この際、一般的な都市設計方法として、敷地と方位の決定、建築物や土木構造物の面積や高さの決定、建築物や土木構造物の外皮の構造物の決定、建築物の屋上面の形状の決定等を行う。
【0037】
次いで、立地情報付加工程S2において、第1ジオラマデータ1に対し、敷地の緯度及び経度の立地情報5を付加して第2ジオラマデータ2を作成する。これにより、その都市の地球上の位置が特定される。
【0038】
そして、日照情報付加工程S3において、第2ジオラマデータに対し、夏至の正午の日照情報6を付加して第3ジオラマデータ3を作成する。これにより、地球上の特定の位置にある都市が夏至の正午にどの方向から太陽光を受けるのかが特定される。夏至の正午の第3ジオラマデータ3の仮想の立面図を図3に示し、その仮想の平面図を図4に示す。図3は左が真南、右が真北であることを示しており、太陽を視点とした光路が太陽の入射光を示している。なお、図3において、建築物A〜Cの壁面に照射した太陽光が地表に向かって反射せず、天空に向かって反射するのは、特開2007−192016記載の建材をその壁面に採用していることによる。また、夏季には、屋上面に太陽光を反射し易い建材を設けることとしている。これらにより、建築物A〜Cの壁面や屋上面に照射した太陽光を全て天空に反射し、地表や建築物に蓄熱を行わないようにし、夏季の冷房費を節約できるようにしている。
【0039】
また、冬至の正午の日照情報6を付加して第3ジオラマデータ3を作成する。これにより、地球上の特定の位置にある都市が冬至の正午にどの方向から太陽光を受けるのかが特定される。冬至の正午の第3ジオラマデータ3の仮想の立面図を図5に示し、その仮想の平面図を図6に示す。図5も左が真南、右が真北であることを示しており、太陽を視点とした光路が太陽の入射光を示している。なお、図5において、建築物A〜Cの壁面に照射した太陽光が天空に向かって反射せず、地表に向かって反射しているのは、特開2007−192016記載の建材をその壁面に採用していることによる。また、冬季には、屋上面に太陽光を反射し難い建材を設けることとしている。これらにより、建築物A〜Cの壁面や屋上面に照射した太陽光から地表や建築物に蓄熱を行い、冬季の暖房費を節約できるようにしている。
【0040】
続いて、アルベド算定工程S4において、アルベド算定プログラム4を実行する。アルベド算定プログラム4は、まず画像処理ソフトを立ち上げる。画像処理ソフトは、第3ジオラマデータ3を取り込み、各色彩要素に相当し、RGB値で特定される複数の色と、各色が占める面積とを算出する。次いで、画像処理ソフトは、画像処理後の第3ジオラマデータに対し、変換テーブル7を用いて色から反射率への変換を行う。そして、アルベド算定プログラムでは、上記(1)式に基づく積算を行う。こうして、設計中の都市や既存の都市のアルベドが算定される。
【0041】
仮に、その都市のアルベドが0.5未満であれば、再設計工程S5において、第1ジオラマデータ1を作成し直す。この際、ビルの位置を変更したり、ビルの構成を変更したり、壁面の建材を変更する。それらを変更後、立地情報付加工程S2、日照情報付加工程S3及びアルベド算定工程S4を行う。これにより、変更後の都市のアルベドが算定される。変更後の都市のアルベドが0.5以上であれば、その都市はヒートアイランド現象を生じ難く、人間が住みやすいことが予想される。
【0042】
したがって、この都市設計方法によれば、設計している都市のアルベドを算定することから、ヒートアイランド現象を直接的に抑制可能な都市を設計することが可能である。
【0043】
また、このヒートアイランド特性評価方法により、既存の都市がどの程度のヒートアイランド特性を有しているかを評価すれば、その都市を人間が住みやすい都市にすることが可能である。
【0044】
また、この都市設計システムによれば、上記都市設計方法及び上記特性評価方法を容易に実行することが可能である。
【0045】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、これから計画されるあらゆる都市、既に社会的、経済的に稼働している既存の都市に利用可能である。また、本発明は、日本国内のみならず、世界各国において利用可能である。さらに、本発明は、地球上の位置によってアルベドを調整することから、地球全体を一つの都市として施策することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…第1ジオラマデータ
S1…立面図設計工程
5…立地情報
2…第2ジオラマデータ
S2…立地情報付加工程
6…日照情報
3…第3ジオラマデータ
S3…日照情報付加工程
S4…アルベド算定工程
4…アルベド算定プログラム
S5…再設計工程
7…変換テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷地内に建築物、土木構造物その他の空間構成要素を建設する設計を行い、かつ該空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して色彩要素を選定する設計を行うことにより、都市を設計する都市設計方法であって、
前記敷地、前記空間構成要素及び前記色彩要素について、方位を含む立体的な第1ジオラマデータを作成する立面図設計工程と、
該第1ジオラマデータに対し、該敷地の緯度及び経度の立地情報を付加して第2ジオラマデータを作成する立地情報付加工程と、
該第2ジオラマデータに対し、所定日時の日照情報を付加して第3ジオラマデータを作成する日照情報付加工程と、
該第3ジオラマデータと、該色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて前記都市のアルベドを算定するアルベド算定工程とを備えていることを特徴とする都市設計方法。
【請求項2】
前記第1ジオラマデータに変更を加え、再度、前記立地情報付加工程、前記日照情報付加工程及び前記アルベド算出工程を行う再設計工程を有している請求項1記載の都市設計方法。
【請求項3】
敷地内に建設した建築物、土木構造物その他の空間構成要素と、該空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して設定された色彩要素とからなる都市のヒートアイランド特性評価方法であって、
前記敷地、前記空間構成要素及び前記材質要素について、方位を含む立体的な第1ジオラマデータを作成する立面図設計工程と、
該第1ジオラマデータに対し、該敷地の緯度及び経度の立地情報を付加して第2ジオラマデータを作成する立地情報付加工程と、
該第2ジオラマデータに対し、所定日時の日照情報を付加して第3ジオラマデータを作成する日照情報付加工程と、
該第3ジオラマデータと、該色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて前記都市のアルベドを算定するアルベド算定工程とを備えていることを特徴とする都市のヒートアイランド特性評価方法。
【請求項4】
少なくとも建築用CADソフトがインストールされたコンピュータで構成され、
敷地と、該敷地に建設する建築物、土木構造物その他の空間構成要素と、該空間構成要素の所定範囲毎に区切られた表面に対して選定する色彩要素とについて作成される方位を含む立体的な第1ジオラマデータと、
該第1ジオラマデータに対し、該敷地の緯度及び経度の立地情報を付加して作成される第2ジオラマデータと、
該第2ジオラマデータに対し、所定日時の日照情報を付加して作成される第3ジオラマデータと、
該第3ジオラマデータと、該色彩要素と太陽光の反射率との関係とに基づいて前記都市のアルベドを算定するアルベド算定プログラムとを備えていることを特徴とする都市設計システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−193555(P2012−193555A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58820(P2011−58820)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511069954)株式会社アセット建設 (1)
【出願人】(591169984)
【Fターム(参考)】