配列要素の核酸への挿入
【課題】1個以上のタグ配列を核酸に挿入するための方法を提供する。
【解決手段】下記工程からなる、1個以上のタグ配列を核酸に挿入するための方法。(a)鋳型核酸を準備する工程;(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の一つの配列とハイブリダイズする工程;および、(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、アンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ部分、例えば、少なくとも一つのタグ配列に対して相補的な配列を、その3'末端に含む、新規核酸鎖を合成する工程。
【解決手段】下記工程からなる、1個以上のタグ配列を核酸に挿入するための方法。(a)鋳型核酸を準備する工程;(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の一つの配列とハイブリダイズする工程;および、(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、アンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ部分、例えば、少なくとも一つのタグ配列に対して相補的な配列を、その3'末端に含む、新規核酸鎖を合成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸中に配列要素(タグ配列とも呼ばれる)を挿入するための方法に関する。
【0002】
配列要素(タグ配列)を、既存の核酸の中に、特に3'末端に挿入するためには、これまでは、展開核酸の対向鎖の核酸合成、または、所謂アダプター/リンカーの連結を実行することが必要であった。これらはよく知られた方法であるが、時間と手間がかかる。現在、核酸の3'末端に特定のタグ配列を挿入するには3種の異なる方法が知られる。それらは下記の共通工程を含む。すなわち、(a)既に合成された核酸に対し、ポリメラーゼ反応によって対向鎖を生産するか、または、(b)核酸にタグ配列を付着させるために第2の酵素反応が必要とされる。下記の三つの方法が関連する。
【0003】
1)初期には、鋳型独立性DNAポリメラーゼを用いて、DNAの3'末端にホモポリマーを付着させた。独立反応においてホモポリマーを重合する鋳型独立性ポリメラーゼが本法には必要である。従って、この方法では、付着したホモポリマーに対して相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドが、対向鎖の合成を特異的に活性化することが可能である点で拡張が可能である。この方法は、もともと、cDNAクローニングで用いられた(Okayama H. & Berg P.,「全長cDNAの高効率クローニング」"High-Efficiency Cloning of Full-Length cDNA," Mol. Cell. Biol. 1982, 161-170)。現在、この方法は、RNAの直線的増幅にも用いられている。
【0004】
2)さらに、mRNAのキャップ末端に特定のタグ配列を挿入する、所謂「鋳型スイッチプライマー」による用法も知られている(Matz M., Shagin D., Bogdanova E., Britanova O., Lukyanov S., Diatchenko L. & Chenchik A.,「鋳型スイッチ作用およびステップアウトPCRによるcDNA末端増幅」Nucl. Acid Res., 1999, Vol. 27, No. 6, 1558-1560;米国特許第5,962,272号)。この方法は、RNAのキャップ末端にシトシンヌクレオチドを鋳型独立的に付着させるために、ある逆転写酵素、RNアーゼH-MMLVの性質と直接に関連する。このヌクレオチド付着は、既に1)で記載した、ただし1)では逆転写酵素で実行したのであるが、ポリマー末端付着に相当する。G塩基を有するオリゴヌクレオチドを3'末端にハイブリダイズするにはシトシンヌクレオチドを用いることが可能である。この方法は例えばcDNAクローニングに用いられる。
【0005】
3)最後に、外部から付着されたプライマーによって対向鎖も活性化されうる。このオリゴヌクレオチドプライマーは例えば、新規に合成された鎖の5'末端にタグ配列が挿入されるように、その5'末端において、ランダム配列に加えて特定の配列(タグ配列)を含むことが可能である。この形の合成は、タグ配列付きプライマーを利用する。しかしながら、いずれの場合も、3'末端にタグ配列に対する相補鎖を挿入するためには、対向鎖の合成が必要である。この方法は、例えば、cDNAクローニングまたは増幅反応に用いられる。
【0006】
従って、例えば、Makarov等による米国特許出願第2003/0143599号は、DNA分子であって、その後にランダムな断片に切断されるDNA分子の製造法を記載する。次に、事実上ほとんど既知の配列を持つプライマーを、生産された断片の内の少なくとも一つに付着させ、「プライマー結合断片」を生産し、次にこれが増幅される。しかしながら、前述の米国特許出願による方法では、プライマーは、所謂「末端付着」またはアダプター連結によって、得られたDNA断片の3'末端に挿入される。
【0007】
最後に、ある論文(Wharam S.D., Marsh P., Lloyd J.S., Ray T.D., Mock G.A., Assenberg R., McPhee J.E., Brown P., Weston A. and Cardy D.L.N.,「3方接合構造の形成に基づく、新規等熱核酸増幅アッセイによるDNAおよびRNA標的の特異的検出」"Specific detection of DNA and RNA targets using a novel isothermal nucleic acid amplification assay based on the formation of a three-way junction structure," Nucleic Acids Research, 2001, Vol. 29, No. 11 e54, 1-8)は、オリゴヌクレオチドではあるが、「鋳型スイッチ」が見られないオリゴヌクレオチドによる一定のDNAまたはRNA配列の検出を記載する。この場合は、オリゴヌクレオチド(「伸長プローブ」と呼ばれる)が伸長し、これが、標的配列にも「鋳型プローブ」にも結合して、y型、またはt型の「3方接合体」を形成する。
【0008】
本発明の課題は、核酸中に配列要素(タグ配列)を挿入するための新規方法であって、前述の既知の多段工程法の複雑さを回避し、その後に、新たに合成された核酸の3'末端における対向鎖の合成を要することなく第1ポリメラーゼ反応にタグ配列を挿入する新規方法を提供することである。この課題に対する解決は、核酸の中に一つのタグ配列、またはいくつかのタグ配列を挿入する方法であって、下記の工程によって特徴づけられる方法である。すなわち、
(a)鋳型核酸を準備する工程;
(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の少なくとも一つの配列断片とハイブリダイズする工程;および、
(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、アンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ部分、すなわち、少なくとも一つの鋳型タグ配列に対して相補的である配列をその3'末端に含む、新規核酸鎖を合成する工程を含み、それによって核酸の2本鎖領域が形成されることを特徴とする方法。
【0009】
本発明による方法の、さらに別の有利な実施態様、局面、および詳細は、特許請求項、説明、および実施例の外に、図面においても見出される。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、核酸の中に配列要素(一つのタグ配列またはいくつかのタグ配列)を挿入するための方法であって、下記の工程、すなわち、(a)鋳型核酸を準備する工程;(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の少なくとも一つの配列断片とハイブリダイズする工程;および、(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、その3'末端において、アンカーオリゴヌクレオチド(鋳型タグ配列)の非ハイブリダイズ部分に対して相補的である配列を含む、新規核酸鎖を合成する工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0011】
本発明による方法において使用されるアンカーオリゴヌクレオチドは、その5'末端領域に少なくとも1個の特定配列(鋳型タグ配列)を含み、この特定(鋳型タグ)配列に対して相補的な配列(タグ配列)が、新たに合成される鎖に挿入されるようにする。この鋳型タグ配列の3'末端のアンカーオリゴヌクレオチドは、鋳型核酸に対して相補的な少なくとも1個の配列(アンカー配列)を有し、そのために鋳型核酸配列とのハイブリダイゼーションが可能である。
【0012】
前述の工程(a)-(c)に加えて、本発明による方法は、工程(c)で生産された核酸の2本鎖がさらに処理される追加工程(d)を含む。この追加工程は、当然、追加過程が実行される一つの工程、またはいくつかの工程の組み合わせによって達成される。本明細書ではほんの数例について言及する。
【0013】
1)2本鎖の1本鎖への分離であって、この過程は、熱的(すなわち、加熱)、酵素的、および/または、化学的物質によって実施されるのが好ましい。
2)核酸の自由末端の連結であって、この過程は、天然の1本鎖または2本鎖特異的リガーゼ、またはその他のリガーゼ、例えばリボザイム、化学的連結、例えば、チオフォスフェートによるもの(米国特許第6,635,425号参照)、または、連結に好適な他の酵素、例えばトポイソメラーゼによる連結によって実施される。
3)核酸を配列特異的、または配列非特異的に切断/結合するヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼによる処理。
4)得られたRNAのその後の翻訳を伴う、または伴わないRNA合成。
5)DNA合成、例えば、新規に合成される核酸鎖の少なくとも一部に対して相補的な1本鎖核酸の合成、または、鋳型核酸の少なくとも一部の増幅。
6)核酸-核酸相互作用、例えば、新規に合成された核酸とアプタマーとの相互作用、または、新規に合成された核酸と、別の核酸、例えば、1個以上の特異的プライマーとのハイブリダイゼーション。
7)得られた核酸鎖に対する、例えば、タンパク結合によるある核酸分子の精製または濃縮による、ただしこれらに限定されないが、1種以上のタンパクの結合。
8)新規に合成された核酸鎖、またはその増幅産物の標識。
【0014】
2本鎖核酸の処理に関するさらなる可能性は当業者にはよく知られる。処理のタイプは、個別の実験法において必要な工程に従って実施されること、従って当業者によって選択されることが必要である。
【0015】
本発明は、核酸合成において、配列要素またはタグ配列が、新規に合成される核酸の中に、特に3'末端に挿入される方法を開示する。従って、アンカーオリゴヌクレオチドが、アンカー配列を介して、標的または鋳型核酸にハイブリダイズする。使用するポリメラーゼが、核酸合成時アンカーオリゴヌクレオチドに遭遇すると、標的核酸にそってそれ以上の合成は起こらず、代わりにアンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ領域にそって(すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列にそって)合成が起こる。そのため、タグ配列、すなわち、鋳型タグ配列に対して相補的な配列が、得られた核酸に、その3'末端において挿入される。本発明による方法では、鋳型スイッチは工程(c)で起こる。すなわち、使用するポリメラーゼは、標的または鋳型核酸から、アンカーオリゴヌクレオチドに跳躍する。従って、本発明による方法では、鎖置換活性を全く、またはごく僅かしか持たないポリメラーゼが使用される。
【0016】
本発明による方法は、ある核酸の、以前に定義された、またはランダムな配列領域の中に(アンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列は、ランダム配列、変性配列、または特異的配列であってもよい)、任意の配列を持つタグ配列を、最初のポリメラーゼ反応の時から挿入可能とした始めてのものである。このようにして、前述の従来法は、タグ配列を核酸に挿入するために余分の工程を要しないように改良される。次に、これは時間と出費を節約する。
【0017】
本発明による方法では、前述の工程(a)-(c)の全て、または要すれば、(a)-(d)工程の全てが、それぞれの場合において連続的に、別々の反応容器において実行される。さらに別の実施態様では、工程(a)-(c)、または要すれば、工程(a)-(d)の全てがまとめて、または、前述の2種以上の工程が同じ反応容器において実行される。これは余分の時間を節約する。
【0018】
配列要素(タグ配列)は、特に、核酸の新規合成鎖の3'末端に挿入される。
【0019】
本発明による方法では、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、またはそれらの混合物が核酸として使用される。核酸はまた、本発明による方法がそれによって影響されない限り、塩基類縁体を含んでもよい。
【0020】
本方法において使用されるアンカーオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の3'アンカー配列、および、該アンカー配列に対する1個以上の5'鋳型タグ配列(単数または複数)を有することが好ましい。
【0021】
次に、アンカーオリゴヌクレオチドに含まれる、前記少なくとも1個の鋳型タグ配列は、少なくとも1個の機能的配列を含むことが好ましい。
【0022】
本発明に従って使用されるアンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列は、特異的であっても、変性していても、または「ランダム」であってもよい。この配列は、十分なハイブリダイゼーションを確保するために、少なくとも4個の塩基を含むことが好ましい。特に、塩基の数は、4と50の間の任意の値、好ましくは4と30の間、理想的には6と20の間の任意の値である。
【0023】
本発明による方法の工程(c)における新規核酸鎖の合成は、極めて僅かな鎖置換活性を持つポリメラーゼによって実行されるのが好ましく、もっとも好ましい場合では、全く鎖置換活性を持たないポリメラーゼによって実行される(「鎖置換性」とは、ポリメラーゼが、核酸2本鎖を縦裂きして1本鎖とする能力を指す、下記参照)。本発明による方法における鋳型スイッチは、原理的には、使用するポリメラーゼの鎖置換活性が低ければ低いほどより効率的に起きることができる。しかしながら、本発明による方法のいくつかの特異的実施態様では、ポリメラーゼがごく僅かな鎖置換活性を持つことによってより効果的に配置される(下記参照)。
【0024】
本発明による方法は、下記の処理背景において使用することが可能である。すなわち、RNA増幅、所謂「ローリングサークル」法によるシグナル増幅、DNA増幅、メチル化DNAセクションのDNA増幅、DNAクローニングのための制限酵素用制限部位挿入法、環状DNA分子生産のための制限酵素用制限部位挿入法、直線的巨大分子に継続連結のための制限酵素用制限部位挿入法、例えば、PCRまたはRT(逆転写酵素)-PCR、およびリアルタイムPCRまたはリアルタイムRT-PCR(PCR =「ポリメラーゼ連鎖反応」)における核酸検出法、例えば、PCRまたはRT-PCR、およびリアルタイムPCRまたはリアルタイムRT-PCRにおける特異的核酸の検出および/または定量法、トランスクリプトームまたはゲノム断片の融合法、または全ゲノム増幅または全トランスクリプトーム増幅におけるトランスクリプトームまたはゲノム断片の融合法である。
【0025】
いくつかの頻繁に使用される用語について下記にさらに詳細に説明する。
ポリメラーゼ:ポリメラーゼとは、ある核酸鎖内部の個別のヌクレオチド間においてフォスフォジエステル結合の形成を触媒する酵素である(例えば、DNAおよりRNAポリメラーゼ)。選択された実験条件の下で鎖置換活性をほとんど、または全く持たないポリメラーゼは全て、本発明の方法による工程(c)における使用にとって好適である。鎖置換活性が高すぎると、アンカーオリゴヌクレオチドが分裂される可能性があり、その場合、タグ配列の挿入が妨げられ、極端な場合、完全に阻止される恐れがある。従って、本発明の方法によれば、使用されるポリメラーゼは、重合工程において鎖置換性を全く持たないことが特に好ましい。ごく僅かな鎖置換活性を持つ他のポリメラーゼの外に、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI、および、DNAおよびRNA依存性逆転写酵素が、この好ましいポリメラーゼに属する。ウィルス、細菌、古細菌、および真核細胞の酵素も後者に属し、これはさらに、イントロン、レトロトランスポゾン、およびレトロウィルス、例えば、MMLV、AMV、HIV由来の酵素も含む。しかしながら、本発明の方法によって合成核酸鎖の中にタグ配列を挿入するには、ごく僅かな鎖置換性しか持たない他のポリメラーゼも好適である。本発明による方法のいくつかの特異的実施態様では、僅かな鎖置換性しか持たないポリメラーゼと組み合わされるとさらに効果的に工夫することが可能である(下記参照)。本発明の意味における中等度の鎖置換活性とは、ポリメラーゼによる鎖置換の確率が、アンカーオリゴヌクレオチドの30%未満、好ましくは50%未満、特に好ましくは80%未満であることを指す。当業者にはよく知られるように、鎖置換確率は、反応温度、バッファー条件、それぞれのポリメラーゼ、およびアンカーオリゴヌクレオチドのハイブリダイズ割合の関数として変動する可能性がある。
【0026】
前述の意味において、例えば、熱不安定なポリメラーゼは、本発明による方法の工程(c)で使用するのに好適である。原理的には、選択された実験条件下で、全くまたはほとんど鎖置換活性を持たない熱不安定なポリメラーゼは全て好適である。DNAポリメラーゼ、例えば、細胞自身のDNA(修復ポリメラーゼと呼ばれる)の修復を実行するポリメラーゼは、レプリカーゼ同様、これらの熱不安定ポリメラーゼに属する。レプリカーゼは多くの場合著明な鎖置換活性を持つので、その鎖置換活性が低い時、または、鎖置換活性を突然変異(例えば、Phi29 DNAポリメラーゼのLys143突然変異、de Vega等「真核細胞型DNAポリメラーゼの3'-5'エキソヌクレアーゼ活性部位における触媒活動には不変のリシン残基が関与する」"An invariant lysine residue is involved in catalysis at the 3'-5' exonuclease active site of eukaryotic-type DNA polymerase," J. Mol. Biol.; 270(1):65-78, 1997)、付属因子の修飾または欠失によって抑制または除去した時に使用すべきである。さらに、DNAポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、DNAポリメラーゼI、T4ポリメラーゼ、T7ポリメラーゼ、および、逆転写酵素も、この熱不安定ポリメラーゼに属する。本発明では、ポリメラーゼが、65℃の温度で10分処理された後でも、初期活性の20%の最大活性を依然として保持している場合、すなわち、ポリメラーゼが少なくとも80%まで不活性化される場合、熱不安定と呼ぶ。
【0027】
本発明による方法の工程(c)には、熱不安定ポリメラーゼの外に、各熱安定ポリメラーゼも使用が可能である。原理的には、実験条件において全く、またはほとんど鎖置換活性を持たない熱安定ポリメラーゼは全て好適である。従って、これらのポリメラーゼは市場から入手が可能であり、当業者にはよく知られる。DNAポリメラーゼ、例えば、細胞自身のDNAの修復を実行するDNAポリメラーゼ(修復ポリメラーゼと呼ばれる)は、レプリカーゼ同様、この熱安定ポリメラーゼに属する。レプリカーゼは多くの場合著明な鎖置換活性を持つので、その鎖置換活性が低い時、または、鎖置換活性を突然変異、付属因子の修飾または欠失によって抑制または除去した時に使用すべきである。この時点で挙げられる熱安定ポリメラーゼの例としては、taqポリメラーゼ、taqポリメラーゼのクレノウ断片、および、好ましくはエキソヌクレアーゼ活性(pfu exo)を持たないpfuポリメラーゼがある。
【0028】
鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ: DNAポリメラーゼの鎖置換活性とは、使用される酵素が、DNAの2本鎖を、2本の単一鎖に分裂可能であることを意味する。RCAに使用が可能な鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼの例としては、ウィルス、原核細胞、真核細胞、または古細胞由来のホロ酵素、またはレプリカーゼの一部、phi29 DNAポリメラーゼ、クレノウDNAポリメラーゼexo-、および、Bst exo-と表示されるBacillus stearothermophilus由来のDNAポリメラーゼがある。"exo-"は、対応する酵素が、5'-3'活性を持たないことを意味する。phi29 DNAポリメラーゼのよく知られる例は、バクテリオファージのphi29 DNAポリメラーゼである。他のphi29 DNAポリメラーゼも、例えば、ファージCp-1, PRD-1, Phi 15, Phi 21, PZE, PZA, Nf, M2Y, B103, SF5, GA-1, Cp-5, Cp-7, PR4, PR5, PR722, およびL17に見られる。鎖置換活性を持つ、他の好適なDNAポリメラーゼも当業者には既知である。それとは別に、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼと理解してもよいものとして、それぞれのDNAポリメラーゼの外に触媒、例えば、2本鎖DNAの分裂、または1本鎖DNAの安定化を可能とするタンパクまたはリボソームが使用される限りにおいて、鎖置換活性を持たないDNAポリメラーゼも挙げられる。このようなタンパクとしては、例えば、ヘリカーゼ、SSBタンパク、および、大型酵素複合体、例えば、レプリカーゼの成分として存在することが可能な組み換えタンパクが挙げられる。この場合、鎖置換活性を持つポリメラーゼは、ポリメラーゼ自体の外に複数の成分によって生産される。鎖置換活性を持つポリメラーゼは、熱不安定でも、熱安定であってもよい。
【0029】
鋳型核酸:鋳型核酸の例としては、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、またはそれらの混合物がある。鋳型核酸または、化学的に修飾された形態で存在してもよい。鋳型核酸は、ペア鎖とのハイブリダイゼーションが起こる限り、塩基類縁体(例えば、非プリンまたは非ピリミジン塩基)を含んでも、あるいは、塩基類縁体から構成されていてもよい。さらに、鋳型核酸はまた、他の修飾体、例えば、フルオロフォア(単数または複数)、ビオチン、メチル化(単複)等を含んでもよい。それとは別に、対応する修飾体は当業者には十分によく知られる。鋳型核酸の必要な性質は、アンカーオリゴヌクレオチドが、その鋳型核酸にハイブリダイズすることが可能であること、鋳型核酸がポリメラーゼの標的として認識されることである。鋳型核酸は、種々の長さであってよく、1本鎖でも、部分的に2本鎖でも、または2本鎖であってもよい。2本鎖核酸の場合、アンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列のハイブリダイゼーションが起こるために、その2本鎖核酸はまず変性されなければならない。
【0030】
アンカーオリゴヌクレオチド:アンカーオリゴヌクレオチドは、その5'末端領域に少なくとも1個の特異的配列(鋳型タグ配列)を含み、その特異的(タグ鋳型)配列に対して相補的な配列(タグ配列)が、新規合成鎖に挿入されるのを可能とする。アンカーオリゴヌクレオチドは、この鋳型タグ配列の3'末端に、鋳型核酸に対して相補的な少なくとも1個の配列(アンカー配列)を有し、鋳型核酸とのハイブリダイゼーションを可能とする。さらに、1種以上の機能を担当することが可能な1個以上の配列が、3'アンカー配列と、5'鋳型タグ配列の間に挿入される。このような機能的配列としては、例えば、プライマー結合部位、プローブ結合部位、転写開始のプロモーター、制限エンドヌクレアーゼ制限部位、リボソーム結合部位等が挙げられる。追加の配列として、前述の機能の任意の組み合わせが可能である。
【0031】
アンカー配列:アンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列は、鋳型核酸の、アンカー核酸に対して相補的な配列に対してハイブリダイズすることが可能である。アンカー配列は、ランダム配列、変性配列、または特異的配列を含んでもよく、種々の長さを持ってもよい。従って、例えば、特異的アンカー配列は、例えば、転写物の配列にハイブリダイズすることが可能な配列、例えば、ポリA RNAのポリA尾部の配列、または、特異的に遺伝子に部分的にハイブリダイズすることが可能な配列を含んでもよい。さらにアンカー配列はまた、機能的配列を含んでもよく、その性質に従って、RNA、DNA、またはその両方の混合物であってもよい。アンカー配列は、標的核酸とのハイブリダイゼーションが起こる限り、塩基類縁体(例えば、非プリンまたは非ピリミジン類縁体)、またはヌクレオチド類縁体(例えばPNA)を含んでもよく、またはその両方から構成されてもよい。さらに、アンカー配列はまた副溝結合因子を含んでもよい。最後に、アンカー配列は、他の修飾体、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等を含んでもよい。対応する別様修飾体は当業者には十分によく知られる。
【0032】
鋳型タグ配列およびタグ配列:アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、タグ配列の鋳型として働き、核酸の新規合成鎖の中に挿入される配列である。鋳型タグ配列はある一定の配列を含んでもよい。しかしながら、鋳型タグ配列はまた、標的核酸にハイブリダイズしない、またはハイブリダイズが極めて弱いものである限り、変性配列を含んでもよい。このタグ配列は、種々の長さを持っていてもよい。タグ配列が合成される核酸鎖の中に挿入されるという事実とは別に、タグ配列は、さらに機能的配列を含み、そのために、例えば、ハイブリダイゼーション部位、プライマー結合部位、プローブ結合部位、転写および/または翻訳開始のためのプロモーターおよびシグナル配列、制限エンドヌクレアーゼの認識および制限部位、リボソーム結合部位、タンパク結合部位、抗体認識部位等、あるいは、その相補的配列が、合成される核酸鎖の中に挿入されるようにしてもよい。さらに、タグ配列はまた、これらの機能的配列の組み合わせを含んでもよい。鋳型タグ配列は、その性質によって、RNA、DNA、またはその混合部であってもよい。鋳型タグ配列、およびタグ配列は、塩基類縁体(例えば、非プリンまたは非ピリミジン類縁体)、またはヌクレオチド類縁体(例えば、PNA)を含んでもよいし、あるいは、両者から構成されてもよい。鋳型タグ配列、およびタグ配列は、さらに別の修飾体、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等を含んでもよい。対応する実施態様/修飾体は当業者には既知である。
【0033】
アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端:アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端は、遊離の3'-OH基を担ってもよい。しかしながら、別態様として、遊離3'-OH基は閉塞されてもよい、すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、その3'末端においてもはやポリメラーゼによって伸長されないようになっていてもよい。それとは別に、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端にはジデオキシヌクレオチドが挿入され、そのためにこの場合、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼによって伸長されないようになっていてもよい。アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端は、ある用途のための修飾体または添加物を担ってもよい。そのような添加物または修飾体として、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等がある。対応する実施態様/修飾体は当業者には既知である。アンカーオリゴヌクレオチドが同時にプライマーとしても機能する本発明の実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端は、ポリメラーゼによって伸長可能でなければならず、好ましくは、3'-OH末端を持つものでなければならない。
【0034】
アンカーオリゴヌクレオチドの5'末端:アンカーオリゴヌクレオチドの5'末端は、遊離リン酸基を有してもよい。しかしながら、遊離リン酸基は、別態様として、ブロックされ、または欠失されてもよい。アンカーオリゴヌクレオチドの5'末端は、ある用途のための修飾体または添加物を担ってもよい。そのような添加物または修飾体として、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等がある。対応する実施態様/修飾体は当業者には既知である。
【0035】
ローリングサークル増幅(RCA):ローリングサークル増幅は、「ローリングサークル複製」という名前でも知られる。RCAでは、少なくとも1個のプライマーが環状標的配列にハイブリダイズする。鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼでは、プライマーは伸長され、環状標的配列における連続合成によって、重合されてプライマー結合部位を超えたコンカテマー分子となる。使用されるプライマーは、標的配列とのハイブリダイゼーションが起こり、ポリメラーゼによってプライマー伸長が起こる限り、ランダム配列、変性配列、または特異的配列であってもよく、かつ、DNA、RNA、PNA、修飾塩基、または塩基類縁体であってもよい。プライマーはまた、少なくとも部分的2本鎖の環状標的配列における単一鎖切断点を介して形成されてもよい。それとは別に、鎖置換活性を持たないDNAポリメラーゼも使用が可能である。しかしながら、この場合は、適当なDNAポリメラーゼの外に、2本鎖DNAの分離、または単一鎖の安定化を可能とする、例えばタンパクまたはリボソームのような触媒を含む酵素カクテルを使用しなければならない。ヘリカーゼ、SSBタンパク、および組み換えタンパクが上記タンパクに属する。
【0036】
増幅:核酸増幅とは、核酸の直線的または指数関数的増加において少なくとも2倍以上の鋳型の増加を意味する。直線的増幅は、例えば、標的サークルにおける一つの特異的配列のみにハイブリダイズするプライマーによるRCAによって実現される。指数関数的増幅は、例えば、少なくとも二つの結合部位を持つプライマーが標的サークルにハイブリダイズする、または、少なくとも一つの結合部位を、かつ相補鎖において少なくとも一つの結合部位を持ってハイブリダイズする、プライマー付きRCAによって実現される。本発明にとって好適な、その他の直線的および指数関数的増幅法、例えば、PCR、NASBA、SDA、MDA、TMA、3SR等は当業者にはよく知られている。
【0037】
プライマー:本発明の意味におけるプライマーとは、核酸ポリメラーゼ活性を持つ酵素に対し開始点として機能する分子を指す。このプライマーは、当業者に対しポリメラーゼの開始点としての安定性を実証する、タンパク、核酸、または他の分子であってもよい。この分子は、分子間および分子内相互作用を通じて開始点として機能することが可能である。核酸プライマーの場合、これらはハイブリダイズしてはならないが、鋳型核酸とはその全長に渡ってハイブリダイズしてよい。
【0038】
第1鎖合成:本発明の意味では、第1鎖合成とは、鋳型核酸に対して相補的な新規合成核酸鎖が重合され、鋳型依存性タグ配列が、この新規合成核酸鎖の3'末端中に挿入される、ポリメラーゼ依存性核酸合成を指す。本発明による方法では、タグ配列の挿入と共に「テーリング」は起こらない。すなわち、新規合成核酸の中に鋳型独立的やり方でヌクレオチドが挿入されることはない。新規合成核酸鎖の3'末端にタグ配列を挿入するための鋳型は、そのアンカー配列によって鋳型核酸にハイブリダイズする、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列であることが好ましい。
【0039】
本発明による方法の好ましい第1実施態様は、RNA合成の際、核酸中に少なくとも1個のタグ配列を挿入することに関する。
【0040】
原理的には、RNA増幅法は、例えば、米国特許明細書第5,545,522号に記載される。この方法では、開始mRNAにたいしてアンチセンス方向の方向性を持つRNAが形成される。この方法では、その後にRNAのインビトロ転写(増幅)を実行するためには、第2鎖cDNA合成が不可避的に必要とされる。一方、本発明によるアンカーオリゴヌクレオチドを使用するならば、RNAポリメラーゼの第1鎖cDNA合成の際に、プロモーターは既に挿入されるので、次のインビトロ転写において、RNAは、事前の第2鎖合成を要せず、センス方向に翻字される態勢になっている。新規核酸鎖合成の際にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によってプロモーター配列が挿入される、本発明によるRNA増幅の模式図が図2に示される。
【0041】
本発明による方法の第1実施態様の好ましい実施によれば、工程(c)において挿入されるタグ配列は、少なくとも1個のRNAポリメラーゼ結合部位を含む。このRNAポリメラーゼ結合部位は、例えば、RNAポリメラーゼプロモーターであってもよい。
【0042】
さらに、本発明の方法の第1実施態様のある実施態様によれば、工程(c)は、それから新規核酸鎖の合成が起こる少なくとも1個のプライマーによって実行されることが好ましい。挿入されるプライマーは、例えば、核酸、ポリペプチド、またはタンパクであってもよい。使用されるプライマーがプライマー核酸である場合、その配列は、特異的、変性、またはランダムであってもよい。使用されるプライマーが(それが核酸であると、タンパクであるとを問わず)5'末端にタグ配列を持つとさらに別の利点が得られる可能性がある。
【0043】
本発明の方法の第1実施態様のある実施態様によれば、工程(d)において実行される過程は、RNAポリメラーゼによるRNA合成であるが、この過程は、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および/またはNTP修飾体の存在下に実行される。
【0044】
次に、工程(c)において新規に重合された核酸鎖は、鋳型核酸から分離されるが、この分離は、熱的に、酵素的に、および/または化学的に行うことが可能である。
【0045】
RNA合成が、工程(c)で新規合成された核酸鎖が鋳型核酸から分離された後始めて起こる場合も有利である可能性がある。
【0046】
本発明の方法の第1実施態様の、さらに別の好ましい実施態様では、工程(c)で使用されるプライマーは、少なくとも1個のタグ配列を含む。このタグ配列は、少なくとも1個の機能配列を含み、該機能配列の少なくとも一つがRNAポリメラーゼプロモーターである。同様に、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、少なくとも1個の機能的配列を持ち、該機能配列の少なくとも一つはRNAポリメラーゼプロモーターである。本発明の方法のこの実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーとは同一であってもよい。工程(c)で生産される2本鎖末端はここで閉鎖され、互いに連結されうる(例えば、化学的、または酵素的に)。別態様として、この2本鎖末端は連結されて自己相補的オリゴヌクレオチドとなってもよい。この自己相補的オリゴヌクレオチドは、自ら平滑末端を形成するが、例えば、2本鎖末端においてリガーゼによって連結される。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドによってさらに別の機能配列を挿入することも可能である。アンカーヌクレオチドの鋳型タグ配列によるRNAポリメラーゼプロモーターの挿入に代わる代替えとして、該プロモーターは、自己相補的オリゴヌクレオチドによって挿入されてもよい。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、本発明によるRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPおよび/またはNTP修飾体の存在下に行われるのが好ましい。
【0047】
本発明の方法の第1実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、使用される少なくとも1個のプライマーから成るタグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と同一であってもよい。このプライマータグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列に少なくとも部分的に同一であることが好ましい。本発明の意味では、部分的に同一とは、それぞれの実験条件下に、この部位において、新規合成核酸鎖が安定な2本鎖を形成するヌクレオチド数が同一であることを意味する。経験から、少なくとも約6ヌクレオチドの長さを持つ配列が必要である。この場合、工程(c)の後で、工程(d)において鎖分離が起こるとさらに有利である。鎖分離は、この場合も、熱的、酵素的、および/または化学的に起こってもよい。
【0048】
従って、新規合成核酸鎖の5'末端におけるタグ配列は、適正な相補的配列とのハイブリダイゼーションによって3'末端においてヘアピンループ構造を形成してもよい。次に、本発明によるRNAの合成が、RNAポリメラーゼ、およびNTPおよび/またはNTP修飾体の存在下に実行されることが好ましい。
【0049】
二つのヘアピン構造の両端も連結されてよい。これらの構造は平滑末端を持ってもよいし、あるいは、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換することが可能であるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは平滑末端を形成するので、例えば、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。本発明によるその後のRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPおよび/またはNTP修飾体の存在下に行われるのが好ましい。
【0050】
本発明による第1実施態様に基づいて、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)および/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、およびDNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼを、ローリングサークル増幅が起こるように用いることによって、この形成されたヘアピン構造を増幅することが可能である。このようにして、ヘアピン構造を持つコンカテマーDNA分子が形成される。次に、続くRNA合成が、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行される。
【0051】
本発明の方法の第1実施態様のさらに別の実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、および、RNAポリメラーゼ結合部位として機能する配列の5'方向におけるプライマータグ配列は、少なくとも1個のさらに別の機能配列を含んでもよい。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列における少なくとも1個の追加機能配列、および、プライマータグ配列における少なくとも1個の追加機能配列は同一であることが好ましい。理想的には、この追加の機能配列は、制限酵素の制限部位である。次に、制限エンドヌクレアーゼによって、この制限部位において切断することが可能である。
【0052】
次に、両ヘアピン構造の末端が連結されうる。これらの構造は平滑末端を持ってもよいし、あるいは、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。続いて行われるRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPおよび/またはNTP修飾体によって行われる。ヘアピン構造は、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)および/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、および鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼによって増幅されてDNA鋳型となる。続くRNA合成が、例えば、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行される。
【0053】
本発明の方法の第1実施態様の、別の好ましい実施態様によれば、プライマータグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を含み、さらに、この配列の5'方向に、少なくとも1個の別のヌクレオチドを有してもよい。
【0054】
本発明の方法の第1実施態様の、別の好ましい実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマータグ配列を含んでもよく、さらに、この配列の5'方向に少なくとも1個の別のヌクレオチドを有してもよい。
【0055】
前述の両実施態様においてさらに別の処理工程(d)を実行することが必要である場合には、その工程は鎖分離であることが好ましい。鎖分離は、この場合も、熱的、酵素的、および/または化学的に行われてよい。鎖分離とは、2本鎖の分離であって、二つの単一鎖の間の水素結合が破壊されて、二本の単一鎖を生ずることを指す。
【0056】
さらに、前述の二つの実施態様において、新規合成核酸鎖の5'末端にタグ配列を、3'末端に適当な相補的配列をハイブリダイズさせることによって突出末端を持つヘアピン構造が形成される。両ヘアピン構造の末端は連結されうる。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次にRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPによって行われるのが好ましい。形成されたヘアピン構造は、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、および鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼによって増幅されてDNA鋳型となる。続くRNA合成が、例えば、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行されうる。
【0057】
本発明の方法の第1実施態様の別の好ましい実施態様によれば、処理は工程(c)の後工程(d)に進み、新規生産の2本鎖末端は全て、事前の鎖分離無しに連結される。この鎖分離は、その後に、例えば、熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。従って、生産された環状構造は、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、および鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼによって増幅されてDNA鋳型となる。次に、続くRNA合成が、例えば、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行されることが好ましい。
【0058】
本発明の方法の好ましい第2実施態様は、DNA合成時に核酸中に少なくとも1個のタグ配列を挿入することに関する。
【0059】
本発明の方法の第2実施態様の好ましい実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマー結合部位に対して相補的な少なくとも1個の機能的配列を含む。
【0060】
さらに別の好ましい実施態様は、鋳型鎖からの新規合成核酸鎖の分離は、要すれば、工程(d)の処理中に行われることを提案する。さらに、DNA合成は、新規合成核酸鎖のプライマー結合部位に結合する少なくとも一つのプライマーによって実行される。最後に、鎖分離とDNA合成の両工程は数回繰り返されるのが有利である。
【0061】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、ポリメラーゼ反応のための少なくとも一つのプライマーは工程(c)で加えられ、プライマーは、プライマー結合部位に対応する少なくとも1個の機能的配列を含むタグ配列を持つ。従って、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、およびプライマータグ配列は、同一、部分的に同一、または相違のいずれかであってもよい。次に、要すれば、新規合成核酸鎖を鋳型鎖から分離し、工程(d)での処理に備える。本発明の方法のさらに別の有利な実施態様によれば、DNA合成は少なくとも1個のプライマーによって行われる。鎖分離およびDNA合成の工程は数回繰り返されてもよい。
【0062】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)で使用される少なくとも1個のタグ配列を有するプライマー、およびアンカーオリゴヌクレオチドは、これらは同一であるか、部分的に同一であるかどちらかであるが、鋳型タグ配列を持つ。次の工程(d)において要すれば任意に実行される処理は、好ましくは、鋳型鎖からの、新規合成DNA鎖の分離である。この分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に行われてもよい。この分離された、新規合成核酸鎖は、両端の自己ハイブリダイゼーションによってヘアピン構造を形成することが可能である。このヘアピン構造が平滑末端を持つ場合、これらの構造の末端を連結することが可能である。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、二つのヘアピン構造は粘着末端連結によって連結されてもよい。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは平滑末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。そこで、そのような連結構築体に基づいて、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、および少なくとも1個のプライマーによって少なくとも1個のDNA分子が生産される。このようにして生産される分子はコンカテマーであってもよい。
【0063】
本発明の方法の第2実施態様の好ましい実施態様によれば、処理は工程(c)の後、追加工程(d)に進み、新規生産の2本鎖末端は全て、事前の鎖分離無しに連結される。次に、対応する連結の後に鎖分離が行われ、その際、鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行されるのが好ましい。DNA合成は、この場合も、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、および、少なくとも1個のプライマーによって実行される。
【0064】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、および、機能配列として用いられる少なくとも一つのプライマーのタグ配列は、その5'末端領域に制限エンドヌクレアーゼの結合部位を持つことである。形成されたヘアピン構造は、その制限エンドヌクレアーゼ制限部位において、制限酵素(制限エンドヌクレアーゼ)によって切断され、その後この2個のヘアピン構造の末端は連結される。ヘアピン構造は、平滑末端を持ってもよいし、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、DNA合成が、好ましくは、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼおよび、dNTPおよび/またはdNTP修飾体によって実行される。
【0065】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)におけるポリメラーゼ反応のために、タグ配列を含む少なくとも1個のプライマーが添加される。さらに、この第2実施態様の一つの局面によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマータグ配列を含み、さらに、その配列の5'方向に少なくとも一つの別のヌクレオチドを含んでもよい。別の局面によれば、プライマータグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、さらに、その配列の5'方向に少なくとも1個の別のヌクレオチドを含むことも可能である。前述の2つの局面に関連して、鎖分離という形の処理が、要すれば任意に、追加工程(d)において実行される。その際、この鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に行われるのが好ましい。本発明の方法のさらに別の局面は、新規合成核酸鎖の5'末端におけるタグ配列を、3'末端において相補的な適当な配列とハイブリダイズすることによって突出末端を持つヘアピンループ構造を形成することが可能であるという事実を中心とする。次に、両ヘアピン構造の末端は連結される。当業者には、粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるということはよく知られている。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。別態様として、自己相補的オリゴヌクレオチドを用いて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。このようなオリゴヌクレオチドの長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。その後のDNA合成は、好ましくは、DNAポリメラーゼおよび、dNTPおよび/またはdNTP修飾体によって実行される。
【0066】
本発明の方法のさらに別の好ましい実施態様は、メチル化/非メチル化DNAセクションの選択的増幅に関する。
【0067】
メチル化/非メチル化DNAセクションの選択増幅では、タグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の新規合成鎖の3'末端に挿入される。工程(c)では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列に対し少なくとも部分的に同一であることが好ましい、タグ配列を持つ少なくとも一つのプライマーが使用されることが好ましい。本発明の意味では、部分的に同一とは、それぞれの実験条件下に、この部位において、新規合成核酸鎖が安定な2本鎖を形成するヌクレオチド数が同一であることを意味する。経験から、このようなことが起こるには、少なくとも約6ヌクレオチドの長さを持つ配列が必要である。
【0068】
メチル化/非メチル化DNAセクションの選択増幅では、DNAは、工程(c)における核酸合成反応後、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによって切断処置を受ける。メチル化部位は、これらの制限エンドヌクレアーゼによって認識されず、従って切断されない。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼが、半メチル化DNAを切断するのであれば、本方法によれば、工程(c)は、メチル化dNTP、好ましくはメチル化dCTPの存在下に実行しなければならない。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼとして下記の酵素を使用することが可能である。すなわち、HpaII, AatII, BcnI, Bsh1236I, Bsh1285I, BshTI, Bsp68I, Bsp119I, Bsp143II, Bsu15I, CseI, Cfr10I, Cfr42I, CpoI, Eco47III, Eco52I, Eco72I, Eco88I, Eco105I, EheI, Esp3I, FspAI, HhaI, Hin1I, Hin6I, HpaII, Kpn2I, MbiI, MluI, NotI. NsbI, PauI, PdiI, Pfl23II, Psp1406I, PvuI, SalI, SgsI, SmaI, SmuI, SsiI, TaiI, TauI, XhoI等である。
【0069】
メチル化/非メチル化DNAセクションの選択的増幅時、DNAは、別に、メチル化特異的制限エンドヌクレアーゼで切断処理してもよい。このようなエンドヌクレアーゼを用いることによって、その後、非メチル化DNAセクションを選択的に増幅し、その後、新規合成核酸鎖を、鋳型鎖から分離する。鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行することが可能である。次に、鎖分離の後、切断されないDNAセクション、およびメチル化領域に分子内ヘアピン構造が形成される。前述したように、これらは、連結反応に使用することが可能であり、その反応で得られた核酸を、例えば、ローリングサークル増幅によって増幅することが可能である。
【0070】
本発明の方法の好ましい第3実施態様は、鋳型核酸を検出するためのタグ配列の挿入に関する。
【0071】
本発明の方法の第3実施態様によれば、鋳型格段は例えばDNAまたはRNAであってもよい。核酸増幅は、鋳型核酸の検出のために実行されるのが好ましい。本発明の方法のこの第3実施態様では、二つの基本的局面が区別される。一方では、工程(c)で新規に合成される核酸は、工程(c)で自己増幅される。他方では、工程(c)で新規に合成される核酸は、検出核酸の増幅ではプライマーとして作用する。
【0072】
工程(c)で新規に合成される核酸が検出のために増幅される場合、第1実施態様では、使用されるアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマー結合部位に対して相補的な少なくとも1個の配列を含む。この場合、形成される核酸の処理は、追加の工程(d)において行われる。工程(d)では、鎖分離が先ず、好ましくは熱的、酵素的、および/または化学的に行われる。鎖分離に続いて、新規形成の核酸鎖の増幅が行われる。新規合成核酸の増幅は、少なくとも1個のプライマーの存在下に行われ、その際、そのプライマー結合部位が、使用されるアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の中に挿入される。単一プライマーの助けを借りて、新規合成核酸は、例えば、直線的増幅法によって増幅される。さらに別の好ましい実施態様では、新規合成核酸の指数関数的増幅を可能とするために、標的核酸に対して相補的な別の少なくとも一つのプライマーが加えられる。このプライマーは、核酸、ペプチド、またはタンパクであってもよい。
【0073】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明の方法の第3実施態様の工程(c)は、すなわち、新規合成核酸鎖の重合時、その5'領域にタグ配列を有する少なくとも1個のプライマーの存在下に実行される。本発明によれば、このタグ配列プライマーは、標的核酸に対するアンカーオリゴヌクレオチドの結合部位から3'側に位置する領域において、その3'末端によって該標的核酸に結合する。プライマーの3'領域は、特異的、変性的、またはランダムであってもよい。好ましい局面によれば、プライマータグ配列は、プライマー結合部位に対して相補的配列を含む。さらに別の好ましい実施態様では、タグ配列はまた、他の、および/または、新たな機能配列を含んでもよい。工程(c)におけるアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列およびプライマータグ配列に含まれる配列で、プライマー結合部位に対して相補的な配列は、同じであっても異なっていてもよい。単一プライマーの助けを借りて、新規合成核酸は、例えば、直線的増幅法によって増幅される。さらに別の好ましい実施態様では、新規合成核酸の指数関数的増幅を可能とするために、別の少なくとも一つのプライマーが加えられる。この少なくとも一つの追加プライマーは、a)核酸に対して相補的、b)プライマータグ配列と同一、c)標的核酸に結合する、工程(c)のタグ配列のプライマー部分と完全にまたは部分的に同一、または、d)標的核酸に対して相補的な領域と、タグ配列との間において、工程(c)のタグ配列とのプライマー融合部位を含む。
【0074】
本発明の方法の第3実施態様の記載の実施態様に使用される増幅法は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応("PCR")、鎖置換増幅法(SDA)、核酸配列増幅法(NASBA)、自己持続配列増幅法(3SR)、ローリングサークル増幅法(RCA)、または複数分裂増幅法(MDA)であってもよい。本発明の方法に適用が可能なさらに別の方法も当業者にはよく知られる。
【0075】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)で使用されるプライマーはタグ配列を持ち、アンカーオリゴヌクレオチドは、同一の、または少なくとも部分的に同一の鋳型タグ配列を持つ。後続の工程(d)において恐らく実行される処理は、新規合成DNA鎖の、鋳型鎖からの分離であることが好ましい。この分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。この分離された、新規合成核酸鎖は、末端の自己ハイブリダイゼーションによってヘアピン構造を形成することが可能である。ヘアピン構造が平滑末端を持つ場合、これら二つのヘアピン構造は、その平滑末端を通じて連結することが可能である。ヘアピン構造はまた、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験条件に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、少なくとも一つのDNA分子が、そのような連結構築体に基づいてローリングサークル増幅法によって生産される。このようにして生産された少なくとも一つのDNA分子がコンカテマーになることが可能である。
【0076】
本発明の方法の第3実施態様の好ましい実施態様によれば、工程(c)の後で、工程(d)において処理が要すれば随意に実行される。この処理では、新規に生産される2本鎖末端の全てが事前の鎖分離無しに連結される。対応する連結の後に鎖分離が、好ましくは熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。核酸合成が、再び、ローリングサークル増幅によって行われる。
【0077】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、使用されるプライマーのタグ配列とは、その5'末端領域において、機能配列として制限エンドヌクレアーゼ制限部位を有することである。形成されるヘアピン構造は、制限エンドヌクレアーゼ制限部位において制限酵素(制限エンドヌクレアーゼ)によって切断され、次に二つのヘアピン構造の末端は連結される。これらのヘアピン構造は、平滑末端を持ってもよいし、または、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、二つのヘアピン構造は、粘着末端連結の他に、平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチド自体は粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験条件に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、DNA合成が、好ましくは、ローリングサークル増幅法によって実行される。
【0078】
本発明によって提案される方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)で使用される少なくとも一つのプライマーはタグ配列、アンカーオリゴヌクレオチドは鋳型タグ配列、両配列はその内部領域では同一である配列を有し、そのために、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、または工程(c)のプライマータグ配列は、その5'末端において、交互反復配列、例えば、G-CまたはA-T塩基から成る、さらに別の配列を持つ。このようにして、自己ハイブリダイゼーションの際、鎖分離後、所謂粘着末端を持つヘアピンループが形成される。適当な配列は当業者にはよく知られる。後続の工程(d)で実行されてもよい処理は、新規合成DNA鎖の、鋳型鎖からの分離であることが好ましい。この鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。得られた粘着末端はリガーゼで連結されてもよい。次に、少なくとも一つのDNA分子が、そのような連結構築体に基づいてローリングサークル増幅法によって生産される。このようにして生産された少なくとも一つのDNA分子がコンカテマーになることが可能である。
【0079】
形成された核酸の検出は、当業者にはよく知られる適切な方法によって実行される。そのような既知の方法としては、例えば、蛍光プローブ、または、蛍光性核酸結合物質、例えば、SYBRグリーン(登録商標)、臭化エチジウム、PicoGreen(登録商標)、RiboGreen(登録商標)等による蛍光検出が挙げられる。例えば、増幅に使用されるヌクレオチドも、蛍光検出において蛍光発色団によって標識することが可能である。蛍光信号、および/または、生産された核酸セクションのサイズの検出は、例えば、ゲル電気泳動、毛細管電気泳動、アレイ、蛍光検出装置、またはリアルタイムサイクラーによって実行される。核酸の検出はまた、その長さ依存性質量に基づいて実行されてもよい。原理的には、本発明に従って核酸を増幅する方法は全て、増幅された核酸の検出にも使用が可能である。その際、検出は、増幅中または増幅後に行われる。
【0080】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい局面によれば、工程(c)における、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、および/または、プライマータグ配列は、核酸プローブの結合を可能とする少なくとも一つの新たな配列を含む。好適な検出プローブは、このように挿入されるプローブ結合部位に対して結合される。さらに、核酸を検出するための、当業者には既知の全てのプローブ、例えば、蛍光発色物質と関連するプローブ、または放射性標識プローブが適用可能である。
【0081】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、本発明は処理過程に関する。すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の5'末端が、検出核酸の配列の一部と同一であり、そのために、検出核酸は、円状(標的円)、または線状になることが可能となる処理過程である。検出核酸はこの処理過程に加えられ、本発明の方法の工程(c)において増幅されるような形で任意に処理される。処理は先ず、新規合成核酸鎖を、鋳型鎖から分離することを含み、その際、鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的になされることが好ましい。次に、増幅が行われる。好ましい実施態様では、検出核酸は標的円である。標的円とは、例えば、DNAまたはRNAから構成されてもよい、核酸の閉鎖リングを指す。この標的円は、例えば、ポリメラーゼによって、直線的ローリングサークル増幅(RCA)に基づいて増幅することが可能である。標的円の直線的RCAは、当業者には十分によく知られる。従って、新規合成核酸鎖の3'末端は、好ましくは標的円に結合し、そこで、標的円に対して相補的な核酸から成るコンカテマー鎖の合成のためにプライマーとして機能する。このためには鎖置換活性を持つポリメラーゼが必要である。
【0082】
さらに、前述の実施態様では、少なくとも一つの別のプライマーが使用される。その際、このプライマーの、少なくとも3'末端の配列が、標的円のある配列と同一である。少なくとも1個のこのようなプライマーを用いることによって、そのタグ配列の3'末端によって標的円に結合する、新規合成核酸鎖による標的円の指数関数的増幅(指数関数的RCA)が可能となる。
【0083】
最後に、標的円によって、得られたコンカテマーに少なくとも一つの配列を付着することが可能であり、これによって少なくとも1個の核酸プローブの結合が可能となる。
【0084】
本発明による方法の第4実施態様は、DNA断片を融合するための核酸の挿入に関する。
【0085】
この第4実施態様では、鋳型核酸としてRNAまたはDNAが使用されるのが好ましい。
【0086】
本発明の方法の第4実施態様では、処理工程(d)は、要すれば任意に工程(c)の後で行われるが、この工程は、例えば、熱的、酵素的、および/または化学的に行われる鎖分離を含むことが好ましい。次に、得られた単一鎖が融合される。
【0087】
本発明の方法の第4実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、少なくとも1個の機能配列を含み、該機能配列は、タグ配列であり、新規合成核酸に挿入される相補配列が自己ハイブリダイズするように、すなわち、新規合成核酸鎖が、その3'末端によって、第2の新規合成鎖の3'末端にハイブリダイズするように構築される。この場合、二つの新たに合成される核酸鎖は、ポリメラーゼ添加によって融合され、ポリメラーゼは、ヌクレオチド存在下に1本鎖領域をヌクレオチドで充填して2本鎖とする。
【0088】
本発明の方法の第4実施態様の好ましい実施態様では、工程(c)はプライマーの存在下に実行される。このプライマーは、鋳型核酸とハイブリダイズする領域に特異的、変性的、またはランダムな配列の内のいずれかを持つ核酸である。5'末端領域において、プライマーは、好ましくはタグ配列を持つが、理想的には、それ自体とハイブリダイズするタグ配列を持つ、すなわち、新規合成核酸とその5'末端によって、第2の新規合成鎖の5'末端とハイブリダイズするタグ配列を持つ。本発明のこの実施態様では、2本以上の新規合成核酸鎖が、それぞれの末端とハイブリダイズすることが可能である。このようにして、直線状または環状分子が形成される。
【0089】
さらに別の実施態様では、1本鎖領域は、最適な後続処理工程において、当業者によって適当とされたバッファーにおいて、DNAポリメラーゼおよびdNTPによって充填されて2本鎖領域とされる。この処理工程の後、実際の融合が、酵素的または化学的に、すなわち、当業者に既知で、実行可能な手段によって実行される。融合は、例えば、天然のリガーゼ、または、化学的ライゲーション、例えば、チオフォスフェート(米国特許第6,635,425号参照)、別の連結酵素、例えば、トポイソメラーゼ、またはある種のリボソームによって実行が可能である。このようにして、2本鎖環状、または2本鎖直線状DNA分子が形成される。
【0090】
要すれば任意に、前述の処理は、追加の工程において増幅反応を含んでもよい。その場合、増幅は、等温的に(例えば、環状DNA分子によるRCA、または、直線状DNA分子によるMDA)、または、非等温的(例えば、PCRによって)に実行される。さらに別の選択的工程としては、融合核酸、または、融合増幅核酸の配列決定がある。本発明の意味においては、配列決定とは、ある配列の検出の外に、ヌクレオチド配列の部分的、または完全な決定を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
図1は、新規核酸鎖の合成の際に見られるDNAポリメラーゼによるタグ配列の挿入を模式的に示す。アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列("NNNNNN"で表示)を持つ。アンカー配列のこの塩基は、鋳型核酸の対応相補セクションとハイブリダイズする。プライマーは、新規核酸の合成を開始するように働く。もしも、合成の進行中、DNAポリメラーゼがアンカーオリゴヌクレオチドに到達すると、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列に対する新規核酸鎖合成が鋳型スイッチによって継続し、それによって、鋳型タグ配列に対して相補的なタグ配列が、新規合成核酸鎖の中に挿入される。
【0092】
本発明をさらに具体的に説明するために、二三の例示の実施態様を下記に示す。
(実施態様1)
【0093】
本実施態様は、僅かな開始量から行う、本発明によるRNA増幅に関する。この変法の模式図が第2図に見出される。
【0094】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)RTキット(QIAGEN GmbH, Hilden、ドイツ)によって逆転写される。この逆転写酵素反応(RT反応)は、ヌクレオチド、1 μMのオリゴ-dTプライマー、および10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドの存在下に行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域にRNAポリメラーゼプロモーターの配列(本例では、T7 RNAポリメラーゼプロモーター)を、3'末端領域には8-マーのランダム配列を含む。次いで、このcDNAは、MegaScript Kit(登録商標)プロトコール(Ambion (Europe) Ltd., Huntington、英国)に従ってインビトロ転写において挿入される。この時、僅かな開始量を強力に増幅してセンス方向の全体RNAとする。
【0095】
前述の実験法の変法として、アンカーオリゴヌクレオチドは、タグ配列の挿入の外に、DNA合成の開始を起動するように使用し、従って、鋳型核酸(アンカー配列)とハイブリダイズする部分が、新規合成鎖のプライマーとして機能するようにすることも可能である。この場合、アンカーオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼによって伸長が可能な3'末端、例えば、遊離3'-OH末端を含んでいなければならない。
【0096】
前述の実験過程のさらに別の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある配列、または配列の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。さらに別の修飾では、オリゴ-dTプライマーの代わりに、ランダム、変性、または特異的プライマーが使用される。
【0097】
前述の実験過程のさらに別の修飾では、標的核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。このようにして、ゲノムの任意の配列をRNAに変換することが可能である。
(実施態様2)
【0098】
本実施態様は、本発明によるRNA増幅に関する。実施態様1によるRNA増幅と違って、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成核酸の3'末端のタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって新規合成核酸の5'末端に挿入される。プライマータグ配列、および、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の両方ともプロモーター配列を含む。これによって、新規合成核酸の3'末端と5'末端のタグ配列同士は、プロモーター範囲において互いに相補的とされる。新規合成核酸の3'末端が、新規合成核酸鎖の5'末端とハイブリダイズした後、今度はRNAポリメラーゼがこの2本鎖プロモーターに結合可能となり、インビトロ転写が起動される。第1鎖cDNA合成時、プロモーター配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、新規合成核酸鎖に挿入される、RNA増幅の模式図が図3に示される。
【0099】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)によって逆転写される。この逆転写酵素反応(RT反応)は、RTバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、およびアンカーオリゴヌクレオチド(10 μM)によって行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域にT7 RNAポリメラーゼプロモーターの配列を、3'領域には8-マーのランダム配列を含む。この反応では、アンカーオリゴヌクレオチドは同時にプライマーとしても機能する、すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチド自体がプライマーとして機能する場合には、プライマータグ配列と見なされる。37℃で60分のRT反応時間後、反応混合物を95℃で50分加熱する。その後、このcDNAは、MegaScript Kit(登録商標)プロトコール(Ambion)に従ってインビトロ転写において挿入される。この時、僅かな開始量を強力に増幅してセンス方向の全体RNAとする。
【0100】
前述の実験過程の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドは、別のRNAポリメラーゼプロモーターと共に使用することも可能である。
【0101】
前述の実験過程の第2の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドはまた、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある転写物、または転写物の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。
【0102】
前述の実験過程の第3の修飾として、標的核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。このようにして、例えば、ゲノムの任意の配列をRNAに変換することが可能である。
(実施態様3)
【0103】
実施態様3は再びRNA増幅であるが、実施態様2に記載されるRNA増幅の修飾に関する。違いは、新規合成DNA鎖が、3'突出末端によってヘアピン構造にハイブリダイズすることである。この突出末端は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸の中に挿入される。3'突出末端を用いることによって、RNAポリメラーゼは、転写時、5'後退末端において所謂鋳型スイッチを刺激し、これが、同じ配列の多数コピーを連続して含むRNA分子(コンカテマー)をもたらす。RNA増幅の模式図を図4に示す。図において、プロモーター配列は、第1鎖cDNA合成の際に、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。従って、プロモーター配列から成る、鋳型タグ配列5'は、少なくとも1個のさらに別の塩基を持つ。これは、5'末端から突出し、新規合成核酸の3'末端および5'末端とハイブリダイズする。
【0104】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)(QIAGEN)によって逆転写される。この逆転写酵素反応(RT反応)は、RTバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、アンカーオリゴヌクレオチド(10 μM)、およびプライマーによって行われる。プライマータグ配列と、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列とは同じである。これらは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む。しかしながら、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、3'末端に3個の余分のヌクレオチドを持つ。37℃で60分持続するRT反応後、反応混合物を95℃で50分加熱する。その後、このcDNAは、MegaScript Kit(登録商標)プロトコール(Ambion)に従ってインビトロ転写において挿入される。この時、僅かな開始量を強力に増幅してセンス方向の全体RNAとする。
【0105】
前述の実験過程の修飾として、アンカーヌクレオチドは、例えば、別のRNAポリメラーゼプロモーターと共に使用することが可能である。
【0106】
前述の実験過程の第2の修飾によれば、アンカーオリゴヌクレオチドはまた、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある転写物、または転写物の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。
【0107】
前述の実験過程の第3の修飾では、標的核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。このようにして、例えば、ゲノムの任意の配列をRNAに変換することが可能である。
(実施態様4)
【0108】
本実施態様は、所謂ローリングサークル増幅(RCA)によるシグナル増幅のためのアンカーオリゴヌクレオチドに関する。この処理過程の目的は、DNAまたはRNAを鋳型核酸としてインビトロDNA合成することによって、ある配列、または配列グループから出発するシグナルを増幅することである。本発明による方法では、鋳型核酸にハイブリダイズすることが可能なアンカー配列を有するアンカーオリゴヌクレオチドが必要とされる。その際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、環状核酸分子(標的円)の配列セクションと同一であり、そのため、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成鎖に挿入されたタグ配列は、その3'末端によって、標的円にハイブリダイズし、その後のRCAにおけるプライマーとして機能する(図5の模式図)。
【0109】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)(QIAGEN)、RTバッファー、dNTP、1 μMのアクチンプライマー(図5では"Spec. Seq"と表示)、およびβ-アクチンアンカーオリゴヌクレオチド(アンカーオリゴヌクレオチドのβ-アクチン配列は、図5では"anchor"と表示)によって、Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。β-アクチンアンカーオリゴヌクレオチドは、一方では、アンカー配列結合β-アクチン転写物、他方では、1本鎖DNAファージM13由来の鋳型タグ配列を有する。β-アクチンプライマーの配列は、転写物のβ-アクチンアンカーオリゴヌクレオチドの結合部位に対し3'に結合する。cDNA合成において、DNAファージM13のローリングサークル増幅においてプライマーとして働くタグ配列が挿入される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールに従って精製される。ローリングサークル増幅は、phi29 DNAポリメラーゼ、バッファー、ヌクレオチド、およびM13 DNAを含む50 μlの反応バッチにおいて実行する。開始量を強力に増幅してM13 DNAとする。
【0110】
前述の実験過程の修飾として、例えば、アンカーオリゴヌクレオチドを、新規合成核酸の3'末端のタグ配列が、別の標的円に結合して、その標的円におけるプライマーとして機能するように用いることも可能である。
【0111】
前述の実験過程の第2修飾として、ランダム、変性、または他の特異的配列を持つアンカーオリゴヌクレオチドを、アンカー配列として使用することが可能であり、および/または、新規核酸の合成を、ランダム、変性、または他の特異的、またはオリゴ-dTプライマーによって活性化することも可能である。
【0112】
前述の実験過程の第3の修飾によれば、鋳型核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。
(実施態様5)
【0113】
この新たな実施態様はDNA増幅に関する。本発明のこの実施態様は、実施例1(下記参照)に示される工程に相当する。ここでも、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成核酸の3'末端のタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって新規合成核酸の5'末端に挿入される。しかしながら、実施例1とは違って、本実施態様では、連結反応の前に、鋳型核酸からの新規合成核酸鎖の分離は行われない。実施例1と同様に、連結産物は、共にタグ配列に融合される二つの配列から成る。これらは、鎖分離の後、RCAによって増幅することが可能である(図8の模式図)。
【0114】
100 ngのgDNAが変性される。ポリメラーゼ反応が、1本鎖に対して、ここではOmniscript(登録商標)(QIAGEN)によって実行される。このポリメラーゼ反応は、適当なバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、プライマー、およびアンカーヌクレオチド(10 μM)の存在下に行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域に特異的配列(ここではT7プロモーター)、および3'領域に8-マーのランダム配列を含む。この実施態様では、使用されるプライマーと、アンカーオリゴヌクレオチドとは同一配列を有する。37℃で60分の反応時間後、DNAをT4リガーゼで連結する。得られた連結産物を95℃に加熱し、次いで、REPLI-g(登録商標)キット(QIAGEN)でRCA反応において増幅する。このようにして、開始量を強力に増幅してgDNAとする。
【0115】
前述の実験過程の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドが、例えば、別の鋳型タグ配列と用いられる。
【0116】
前述の実験過程の第2修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある配列、または配列の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。さらに、アンカー配列は、別の長さを持ってもよい。
【0117】
後述の実施例1は、さらに別の実施態様も含むことがある。例えば、実施例1に記載される実験過程に対するある修飾では、別の鋳型タグ配列を有するアンカーオリゴヌクレオチドが使用される。
【0118】
実施例1に記載される実験過程のさらに別の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、あるたった一つの配列、または配列の中の特定グループのみが増幅される。さらに、アンカー配列は、別の長さを持ってもよい。
【0119】
実施例1に記載される実験過程の第3の修飾では、リガーゼ反応時にDNAポリメラーゼが存在してもよい。これは、DNAポリメラーゼ活性の外にエキソヌクレアーゼ活性を有していてもよい。例えば、新規合成核酸の長さが大きい場合、分子内ハイブリダイゼーションでは平滑末端が形成されず、粘着末端が形成された場合、得られたギャップは、ポリメラーゼで埋めることが可能である。
【0120】
実施例1に記載される実験過程の第4の修飾では、リガーゼ反応の際、オリゴヌクレオチドが存在してもよい。このオリゴヌクレオチドは、分子内ハイブリダイゼーションによって平滑末端ヘアピン構造を形成し、その後、ヘアピン構造にハイブリダイズする新規合成核酸の平滑末端に連結されて、閉じた環状核酸分子を形成する。
(実施態様6)
【0121】
本実施態様は、メチル化DNAセクションのDNA増幅に関する。この増幅形は実施例1に従って始まる(下記参照)。本実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成核酸の3'末端に挿入されるタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって新規合成核酸の5'末端に挿入される。プライマータグ配列と、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列とは同じ配列を含む。これによって、新規合成核酸の3'末端と5'末端のタグ配列同士は、互いに相補的とされる。部分的にメチル化されたDNAに対して相補的な新規核酸鎖の合成後、該核酸鎖はメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによって切断処理される。その後、95℃で5分インキュベートして鎖分離を実行する。
【0122】
新規合成核酸の3'末端が、新規合成核酸鎖の相補的5'末端とハイブリダイズした後、未切断の新規合成鎖を有する、平滑な、2本鎖末端を持つヘアピン構造が形成される。このような2本のヘアピンループが、ダンベル型環状DNA分子が形成されるように、「平滑末端」連結において連結される。このようにすると、メチル化DNAはRCAで増幅されるが、非メチル化DNAは増幅されない(図9の模式図)。
【0123】
実験過程の第4実施態様では、オリゴヌクレオチドが、平滑末端ヘアピン構造が分子内ハイブリダイゼーションによって形成されるように、リガーゼ反応の際に存在し、その後、該ヘアピン構造にハイブリダイズする新規合成核酸の平滑末端に連結されて、閉じた環状核酸分子となる。
【0124】
100 ngのgDNAが変性される。ポリメラーゼ反応が、1本鎖に対して、ここではOmniscript(登録商標)(QIAGEN)によって実行される。このポリメラーゼ反応は、適当なバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、プライマー、およびアンカーヌクレオチド(10 μM)の存在下に行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域に特異的配列(ここではT7プロモーター)、および3'領域に8-マーのランダム配列を含む。プライマーは、アンカーオリゴヌクレオチドと同一の配列を持つ。37℃で1時間の反応時間後、DNAをメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ、本実施態様ではHpaIIで、非メチル化領域だけは消化されるが、メチル化領域は無傷のまま残るように、処理する。次に、DNAは95℃で5分加熱して変性し、次にT4リガーゼで連結する。得られた連結産物をREPLI-g(登録商標)キット(QIAGEN)でRCA反応において増幅する。このようにして、開始量を強力に増幅してメチル化DNAとする。
【0125】
前述のHpaII制限酵素の使用に対する変異形として、他の酵素も使用が可能である。例えば、AatII, BcnI, Bsh1236I, Bsh1285I, BshTI, Bsp68I, Bsp119I, Bsp143II, Bsu15I, CseI, Cfr10I, Cfr42I, CpoI, Eco47III, Eco52I, Eco72I, Eco88I, Eco105I, EheI, Esp3I, FspAI, HhaI, Hin1I, Hin6I, HpaII, Kpn2I, MbiI, MluI, NotI. NsbI, PauI, PdiI, Pfl23II, Psp1406I, PvuI, SalI, SgsI, SmaI, SmuI, SsiI, TaiI, TauI, XhoI等である。
【0126】
前述の実験過程のさらに別の修飾によれば、DNAは、メチレン化感受性制限エンドヌクレアーゼによってではなく、メチル化および非メチル化両方のDNAを消化するイソチゾマー(例えば、HpaIIのイソチゾマーはMspIである)によって消化される。連結産物の増幅によって残留DNAの増幅が実現される。
(実施態様7)
【0127】
本実施態様は、本発明によるアンカーオリゴヌクレオチドの、DNAクローニングのための使用に関する。この用法では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による新規核酸鎖の合成の際に、制限エンドヌクレアーゼの制限部位が挿入される。次に、新規合成核酸鎖と、鋳型鎖との変性が、第2鎖合成によって実行され、これによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識される2本鎖配列が得られる。
【0128】
鋳型核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。従って、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、第1プライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。ある実施態様では、第1プライマーの配列の中に制限部位が必要とされる。さらに、この実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドは、制限消化の後で連結が可能となるように、その配列の中に1個以上の制限部位を含む。例えば、切断されたベクターDNAについて、例えば、クローニング目的のために、連結が実行されてもよい。
【0129】
RT反応において、1 μの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dNTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(5'末端にNotIの制限部位の配列を含む)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(5'末端にNotI制限部位の配列を含む)によって、Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。一方、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカーとしてハイブリダイズするものとしてランダム配列を有する。cDNA合成において、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、NotI制限部位を含む新規合成核酸鎖の3'末端に挿入される。次に、cDNAの第2鎖が、クレノウ断片、dNTP、および、その配列が、付着したアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の一部と同一のプライマーにによる標準反応において生産される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールに従って精製され、次いでNotIによって切断され、その後、NotIによって切断されたベクターによる連結が実行される(図10の模式図)。そしてベクターは、コンピテントE.coli細胞へ形質転換される。一晩インキュベートした培養体を既知の方法で精製し、分解し、プラスミドを単離する。このようにして、挿入RNAから得られたcDNAの開始量を増幅する。
【0130】
前述の実験過程の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的アンカー配列と共に使用することが可能である。
【0131】
前述の実験過程のさらに別の修飾では、cDNA合成は、その5'末端に制限酵素に対する制限部位を担うランダムまたは特異的プライマーを介して起動される。
(実施態様8)
【0132】
本実施態様は、DNA増幅における本発明によるアンカーオリゴヌクレオチドの使用に関する。この用法では、制限エンドヌクレアーゼ制限部位が、新規合成核酸鎖の合成時に、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を介して挿入される。新規合成核酸鎖および鋳型鎖の変性がその後に行われ、次に、第2鎖合成が、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成された時点で実行される。
【0133】
鋳型核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。従って、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、第1プライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。ある実施態様では、この第1プライマーの配列の中に制限部位が必要とされる。さらに、この実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドは、制限消化の後で新規合成核酸鎖の分子内連結が可能となるように、その配列の中に1個以上の制限部位を含む。
【0134】
例えば、タグ配列は、ローリングサークル増幅のプライマー結合部位として機能してもよい。このようにして、全トランスクリプトーム、またはゲノムも増幅することが可能である(図11)。
【0135】
RT反応において、0.1 μの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dATP, dCTP, dGTP, dTTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(5'末端にNotIの制限部位の配列を含む)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドによって、Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。一方で、アンカーオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズするアンカーとしてランダム配列を有し、他方では、同様にNotI制限部位を含む鋳型タグ配列を有する。cDNA合成では、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、NotI制限部位を含む新規合成核酸の3'末端に挿入される。次に、cDNAの第2鎖が、クレノウ断片、dNTP、および、その配列が、付着したアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の一部と同一のプライマーによる標準反応において生産される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールによって精製され、次いでNotIによって切断される。次に、このDNAは、1000 μlの連結反応においてT4リガーゼによって連結され、それによって主に環状DNA分子が形成される。得られた環状DNA分子は、RCAで増やす(図11の模式図)。
【0136】
前述の実験過程の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的アンカー配列と共に使用することが可能である。さらに別の実施態様では、cDNA合成は、その5'末端に制限酵素に対する制限部位を含むランダムまたは特異的プライマーをによって起動される。
(実施態様9)
【0137】
本実施態様も、大型分子を生産するために、核酸の中に制限エンドヌクレアーゼの制限部位を挿入するためのアンカーヌクレオチドの使用に関する。しかしながら、実施態様8は、環状DNA分子に関するものであったが、実施態様9は、直線状DNA分子の生産に関する。標的核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。従って、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、第1プライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。ある実施態様では、この第1プライマーの配列の中に制限部位が必要とされる。さらに、この実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドは、制限消化の後で新規合成核酸鎖の分子内連結が可能となるように、その配列の中に1個以上の制限部位を含む(図12に模式図が見られる)。
【0138】
RT反応において、0.1 μの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dATP, dCTP, dGTP, dTTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(5'末端にNotIの制限部位の配列を含む)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドによって、標準的Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。一方で、アンカーオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズするアンカーとしてランダム配列を有し、他方では、同様にNotI制限部位を含む鋳型タグ配列を有する。cDNA合成では、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、NotI制限部位を含む新規合成核酸の3'末端に挿入される。次に、cDNAの第2鎖が、Omniscript(登録商標)、dNTP、および、その配列が、付着したアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の一部と同一のプライマーによる標準反応において生産される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールによって精製され、次いでNotIによって切断される。この反応混合物は65℃で5分間加熱され、NotIを不活性化する。次に、分液を、20 μlの連結反応においてT4リガーゼによって連結されコンカテマーとする。この連結産物を、精製DNA用標準的Repli-g(登録商標)プロトコール(QIAGEN)に従って増幅する。
【0139】
前述の実験過程の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的アンカー配列と共に使用することが可能である。さらに別の修飾では、cDNA合成は、ランダムまたは特異的プライマーから開始させてもよい。
(実施態様10)
【0140】
本実施態様は、リアルタイムPCRにおいてDNAを検出するためのアンカーオリゴヌクレオチドの挿入に関する。本発明の方法に関するこの実施態様では、プライマー結合部位が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の中に挿入される。さらに、新規合成核酸の中に挿入されるタグ配列は、これから3'側のプライマー結合部位に対するプローブ結合部位として機能する。これによって、リアルタイムPCRにおいて合成核酸分子の定量が可能となる。標的核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。RNAの場合、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、例えば、プライマー結合部位を含むタグを有する第1オリゴ-dTプライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。このリアルタイムPCRは、SYBRグリーンRT-PCRキット(QIAGEN)によって定量することが可能である。この方法のある修飾では、プローブ依存の、リアルタイムPCRも実行することが可能である。cDNAのリアルタイムPCR分析用の調製反応が図13に模式的に示される。この反応では、プローブとプライマー結合部位とが、新規核酸鎖合成の際、新規合成鎖の中に挿入される。
【0141】
RT反応において、0.01 μgの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dNTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(プライマー結合部位を含む)、および、1 μMのアンカーオリゴヌクレオチドによって、標準的RTプロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。アンカーオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズするアンカーとしてランダム配列、および、鋳型タグ配列を含む。このため、プライマーとプローブ結合部位は、新規合成核酸の3'末端に挿入される。ここで、リアルタイムPCRが、QuantiTect(登録商標)試薬(QIAGEN)、および、付着させたプライマー結合部位にハイブリダイズするプライマーによるリアルタイムPCRにおいて実行される。核酸は、増幅中、核酸基準と比較することによって定量される。
【0142】
前述の実験過程のさらに別の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的配列と共に使用することが可能である。さらに別の修飾では、cDNA合成は、ランダムまたは特異的プライマーから開始させてもよい。
(実施態様11)
【0143】
本実施態様は、トランスクリプトームまたはゲノム断片の融合のためのアンカーオリゴヌクレオチドに関する。過程における本変法の目的は、2個以上の新規合成核酸を融合するために、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を通じて新規合成核酸の中に融合部位を挿入することである。これは、例えば、進化的過程によって実行可能であるし、あるいはまた、DNAまたはRNAを鋳型核酸としてSAGEによって実行することも可能である。図14は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列が、新規合成鎖にどのように相補的に挿入されるかを模式的に示す。(AT)nタグを含む第1オリゴ-dTプライマー、および、(N)nをアンカー配列として、さらに、同様に(AT)n配列を鋳型タグ配列として含むアンカーオリゴヌクレオチドからスタートして、(AT)nタグが、新規合成核酸の両端に生産される。この両端は互いにハイブリダイズすることが可能である。2個以上の新規合成核酸鎖の両端がハイブリダイズすると、環状または直線状集合体が形成される。続くポリメラーゼおよびリガーゼ反応において、個々の分子が互いに共有的に直線的に結合し、融合分子が形成される。
【0144】
ポリメラーゼ反応において、0.01 μgの全体RNAが、T4ポリメラーゼ、polバッファー、dNTP、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドと接触させられる。この特別の場合では、アンカーオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ反応のプライマーとしても機能し、配列(AT)10N8(ここでは、(AT)10配列と、n=8のランダムアンカー配列が使用される)を挿入する。反応は37℃で60分実行される。続いて、反応混合物を95℃で5分加熱すると、DNAは変性し、ポリメラーゼは不活性化する。DNA分子を再度ハイブリダイズさせると、A-T末端は互いにハイブリダイズする。DNAポリメラーゼ(T4ポリメラーゼ)を添加すると、両端は完全に結合する。続くT4リガーゼによる連結反応において互いに共有的に結合された融合DNA分子が形成される。得られた大型分子は、MDA(REPLI-g(登録商標)、QIAGEN)によって増幅される。
【0145】
本発明は、下記の実施例においてさらに詳細に記述される。
【実施例1】
【0146】
本実施例はDNA増幅に関する。本発明による増幅のこの実施態様は、実施態様2に対応するRNA増幅に見られるものと同じ工程で始まる。本実施例では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸の3'末端に挿入されるタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって、新規合成核酸の5'末端に挿入された。プライマータグ配列も、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列も同一配列を含んでいた。このために、新規合成核酸の3'および5'末端のタグ配列は互いに相補的となった。新規合成核酸鎖の3'末端が、新規合成核酸鎖の、相補的5'末端とハイブリダイズすると、平滑的な、2本鎖末端を含むヘアピン構造が形成される。二つのこのようなヘアピンループが、「平滑末端」連結において連結され、ダンベル型の、環状DNA分子が形成された。これをRCAによって増幅した(図6の模式図)。
【0147】
16通りの異なる実験において、各100 ngにつき、RNAを、逆転写酵素Sensiscript(登録商標) (QIAGEN)によるポリメラーゼ反応で変換した。このポリメラーゼ反応は、適当なバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、およびアンカーオリゴヌクレオチド(10 μM)の存在下に実行した。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域に特異的配列(ここではT7 RNAポリメラーゼプロモーター)、および3'領域に8-マーのランダム配列を含んでいた。37℃で1時間の反応時間後、反応混合物を95℃で5分加熱した。次にT4リガーゼを用いてDNAを連結した。得られた連結産物は、REPLI-g(登録商標)キット(QIAGEN)でRCA反応において増幅した。このようにして、開始量を強力に増幅してcDNAとした。いずれの場合も、60 μgを超えるDNAが形成された(図7参照)。
【実施例2】
【0148】
本実施例では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列が、新規合成鎖の3'末端の合成のための鋳型として機能することが示される。この実験で挿入されるアンカーオリゴヌクレオチドとプライマーとはその配列が同じである。アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーのハイブリダイズ範囲は、3'末端における8-マーのランダム配列であった。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、プライマータグ配列は共に、tag7配列を持っていた。20 μlの逆転写反応を、100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、100 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、Sensiscript(登録商標) RTキット(QIAGEN)、および、プライマーとしても機能する10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon Biotechnologies, Inc.)を有するRTバッファーにおいて実行した。反応は37℃で60分行った。この逆転写反応の後、配分を分割した。cDNA反応配分の半分は、プライマーとしても機能するアンカーオリゴヌクレオチドを除くために、精製プロトコールに従ってMinElute キット(QIAGEN)で精製した。この精製DNAを10 μlの容量で溶出した。リアルタイムPCRで、同量の精製および未精製cDNAを、別々の反応容器において、増幅し、定量した。この実験では、配列
【0149】
aat tct aat acg act cac tat agg gag aag gnn nnn nnn
を用いた。リアルタイムPRCは、下記のプライマーを用いて実行した。すなわち、
【0150】
aat tct aat acg act cac tat agg
【0151】
リアルタイムPCRは、QuantiTect SYBR Greenプロトコール(QIAGEN)に従ってABI Prism 7700において行った。PCR断片のリアルタイムPCR分析は図15に見られる。新規合成核酸の両方(精製または未精製)について、同じCT値が達成された。
【0152】
これは、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、最初から、第2鎖合成時(ここでは、PCR時に実行される)挿入されなかったことを意味する。なぜなら、アンカーオリゴヌクレオチドは、精製の結果、PCR時、反応混合物の精製プローブの中にはもはや存在しないからである。従って、tag7配列は、新規合成鎖の合成時に鋳型スイッチによって逆転写酵素によって既に挿入されている。
【実施例3】
【0153】
本実験は、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の3'末端に、3'末端がブロックされた場合も、すなわち、3'末端がポリメラーゼによって伸長不能の場合も挿入されることを示した。これは、鋳型タグ配列が、新規核酸鎖の合成において鋳型スイッチによる鋳型としても機能すること、および、アンカーオリゴヌクレオチドは、第2鎖合成のためのプライマーとしては使用されないことを意味する。
【0154】
20 μlの逆転写反応を、100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、100 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、Sensiscript (QIAGEN)、1 μM のβ-アクチンプライマー(Operon)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon)を用い、Sensiscript標準プロトコールに従って実行した。反応は37℃で60分行った。アンカーオリゴヌクレオチドは、伸長不能の閉塞3'末端(逆方向塩基G = dG-ref-Q)を持ち、さらに、3'末端(アンカー配列)に8-マーのランダム配列と、5'末端に鋳型タグ配列(ここでは、T7P配列)を含んでいた。
【0155】
T7P-N8 block: AATTCTAATACGACTCACTA TAGGGAGAAGGNNNNNNNN-dG-ref-Q
T7P-N8: CAATTCTAATACGACTCACTA TAGGGAGAAGGNNNNNNNNG
T7P: AATTCTAATACGACTCACTA TAGGGAGAAGG
β-actin: GTCTCAAGTCAGTGTACAGG
【0156】
比較として、同じ実験を、その他は同じ配列を持つ、閉塞されていないアンカーオリゴヌクレオチドを用いて行った。
【0157】
RT反応で生産されたcDNAを、様々なPCR、すなわち、(a)β-アクチンおよびT7プライマー、または、(b)β-アクチンプライマーのみが供給されるPCRで増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。PCR断片のゲル分析が図16に見られる。kbラダー(1 kbラダー、Invitrogen GmbH)を標識として用いた。PCRに両プライマー(β-アクチンおよびT7プライマー)を用いた場合、cDNA増幅体は、350 bpのサイズにのみ認められた。従って、cDNA合成が、閉塞または未閉塞アンカーオリゴヌクレオチドによって実行されたかどうかは関与していない。すなわち、cDNA増幅体は、両方のアンカーオリゴヌクレオチド(閉塞/未閉塞3'末端)で得られた。一方、PCRをβ-アクチンプライマーのみで行った場合、増幅体は得生産されなかった。
【0158】
このことは、タグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの伸長によってではなく、逆転写酵素による第1鎖cDNA合成の際に、鋳型スイッチによって新規合成核酸の中に既に挿入されたことを意味する。なぜなら、対応する第2鎖合成のために必要とされるはずの、アンカーオリゴヌクレオチドにおける遊離3'-OH末端は必要とされないからである。
【実施例4】
【0159】
本実施例は、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端における種々の長さのアンカー配列が、様々な効率の下に鋳型核酸にハイブリダイズすることができることを示した。
【0160】
逆転写反応を、100 ngの全体RNA、または0 ngの全体RNA(陰性コントロール)、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、4UのOmniscript RT (QIAGEN)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon)を用いて実行した。本実験では、アンカーオリゴヌクレオチドは、同時にプライマーとしても機能した。反応は37℃で60分行った。アンカーオリゴヌクレオチドは、遊離3'-OH末端を担い、さらに、3'末端に8個以上の塩基から成るランダム配列(アンカー配列)、および鋳型タグ配列(T7)を含んでいた。
【0161】
種々の長さ(N8、N10、N12で、ここにN=A、C、G、またはT)のアンカー配列を持つ、様々のアンカーオリゴヌクレオチドを用いた。新規合成核酸は、T7配列のみを含むプライマーによるPCRにおいて増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。さらに別のPCRにおいて、同じ新規合成核酸を、β-アクチントランスクリプターゼを特異的に認識するプライマーを用いて増幅した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0162】
T7: gga tga cga cgc agt att g
s-actin primer: gtctcaagtcagtgtacagg
gtga tagcattgctttcgtg
T7N8: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nn
T7N10: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn n
T7N12: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn nnn
【0163】
PCR断片のゲル分析が図17に見られる。1 kbラダー(実施例3参照)をサイズマーカーとして用いた。陰性コントロールでは増幅体は認められなかった。なぜなら、逆転写反応においてRNAが存在しなかったからである。T7プライマーによる増幅によって、200 bpから1500 bpのサイズを持つ様々な大きさの断片が得られた。アンカー配列の長さが増すと、サイズも量も大きくなった。β-アクチンプライマーによって、予期したサイズの核酸断片が増幅された。
【0164】
以上から、アンカーオリゴヌクレオチドは、新規合成核酸の3'末端、および5'末端にタグ配列を導入するために、それ自体で、かつ、共同して、プライマーとして使用が可能であることが結論される。さらに、ランダムアンカー配列が長ければ長いほど、これらの配列が、鋳型核酸と特異的にハイブリダイズする頻度が低くなる。なぜなら、各配列の統計的頻度は、アンカーオリゴヌクレオチドのランダムアンカー配列の集団の中で減少していくからである。しかしながら、一方で、長いランダムアンカー配列ほど、鋳型核酸により効率的にハイブリダイズする。これは、T7配列のプライマーを用いたPCRによって得られる増幅体の量と長さから認めることができる(図17)。
【実施例5】
【0165】
本実施例は、各種逆転写酵素が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による新規合成核酸の3'末端へのタグ配列の付着を鋳型スイッチによって促進することを示す。
【0166】
逆転写反応を、100 ngの全体RNA、または1 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、各種逆転写酵素、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon)を用いて実行した。本実験では、アンカーオリゴヌクレオチド(T7 N6 T4)は、同時にプライマーとしても機能する。反応は37℃で60分行った。アンカーオリゴヌクレオチドは、遊離3'-OH末端を担い、さらに、3'末端に8-マーのランダム配列とそれに続く4T(アンカー配列)、および鋳型タグ配列(T7)を含んでいた。
【0167】
Omniscript (QIAGEN)、Sensiscript (QIAGEN)、MMLV RT (Invitrogen)、またはRNアーゼH活性を含まないMMLV RT(Superscript II、図18ではSSIIの省略形で表す)によって各反応を実行した。
【0168】
新規合成核酸は、T7配列のみを含むプライマーによるPCRにおいて増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。さらに別のPCRにおいて、同じ新規合成核酸を、β-アクチントランスクリプターゼを特異的に認識するプライマーを用いて増幅した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0169】
T7: gga tta cga ctc agt att g
T7 N6 T4: gga tta cga ctc agt att g nnnnnn tttt
s-actin primer: gtctcaagtcagtgtacagg
gtga tagcattgctttcgtg
【0170】
PCR断片のゲル分析が図18に見られる。1 kbラダー(実施例3参照)をサイズマーカーとして用いた。T7プライマーによる増幅によって、約300 bpから2500 bpのサイズを持つ様々な大きさの断片が得られた。β-アクチンプライマーによって、予期したサイズの核酸断片が増幅された。全ての逆転写酵素によって、第1鎖cDNAの中に、タグ配列が見事に挿入された。
【0171】
各種の逆転写酵素が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を通じて、新規合成核酸の中にタグ配列を挿入することが可能であると結論される。
【実施例6】
【0172】
本実施例では、アンカーオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション部位間の距離が変更可能であることが示される。以上から、新規核酸鎖の中にタグ配列を挿入するために、複数のアンカーオリゴヌクレオチドの複数の鋳型タグ配列を用いた。
【0173】
逆転写反応を、0 ng(陰性コントロール)、1 ng、または100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、4UのOmniscript(登録商標) (QIAGEN)、および、各種アンカーオリゴヌクレオチド(いずれの場合も10 μM)を用いて実行した。この特異的ケースでは、アンカーオリゴヌクレオチドはプライマーとしても働く。反応は37℃で30分行った。各アンカーオリゴヌクレオチドは、遊離3'-OH末端を担い、3'末端において、Tn配列(n = 0, 1, 2, または3)の間に配置される6-マーのランダム配列、および、5'末端に鋳型タグ配列(ここではT7と表示される)を含んでいた。プライマーは、0から3の間に位置する、3'末端のオリゴ-T領域の長さ(T0, T1, T2, T3)が異なっていた。
【0174】
新規合成核酸鎖は、T7配列とハイブリダイズするプライマーによるPCRで増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。さらに別のPCRにおいて、同じ新規合成核酸を、β-アクチントランスクリプターゼを特異的に認識するプライマーを用いて増幅した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0175】
T7: gga tga cga cgc agt att g
T3: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn ttt
T2: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn tt
T1: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn t
T0: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn
s-actin primer: gtctcaagtcagtgtacagg
gtga tagcattgctttcgtg
【0176】
PCR断片のゲル分析が図19に見られる。1 kbラダー(実施例3参照)をサイズマーカーとして用いた。T7プライマーによる増幅によって、約300 bpから2500 bpのサイズを持つ様々な大きさの断片の集団が得られた。β-アクチンプライマーによって、予期した一定サイズの断片が増幅された。本実施例で用いた全てのアンカーオリゴヌクレオチドにおいて、タグ配列が、鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の中に見事に挿入された。これは、タグ配列にハイブリダイズするプライマーによって新規合成核酸が見事に増幅されることから明白である(図19参照)。これらの増幅体は、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端においてチミン塩基の数を増すことによってアンカー配列の特異性を上げることによって平均して大きくなった。さらに特異性の増大と共に、プライマーディマー産物の量が減少した(図19で、RT反応においてRNAを全く含まない"0 ng"溶液における反応産物参照)。
【0177】
アンカー配列の特異性を増すことは、アンカーオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション距離を延ばすことが結論される。さらに、アンカー配列の特異性の増大と共に非特異的プライマーディマー産物は減少する。
【実施例7】
【0178】
本実施例に基づいて、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によるタグ配列挿入効率をリアルタイムPCRで調べた。従って、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を、新規合成核酸鎖に対するタグ配列の挿入のために用いた。
【0179】
逆転写反応を、100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、4UのSensiscript(登録商標)(QIAGEN)、および、各種アンカーオリゴヌクレオチド(いずれの場合も10 μM)、プライマー(Operon)を用いて、Sensiscriptキットハンドブック(QIAGEN)に従って実行した。反応は37℃で30分行った。
【0180】
いずれの場合も、アンカーオリゴヌクレオチドは全て、遊離3'-OHを担い、さらに3'領域にアンカー配列としてランダム配列を、5'領域に鋳型タグ配列(gga tga cga cgc agt att g)を含んでいた。この新規合成核酸を増幅し、リアルタイムPCRで定量した。この場合、タグ配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして挿入した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0181】
T7: gga tga cga cgc agt att g
N8: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nn
N10: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn n
N12: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn nnn
G2 N6: gga tga cga cgc agt att ggg nnn nnn
G4 N6: gga tga cga cgc agt att ggg gg nnn nnn
【0182】
PCR断片のリアルタイムPCR分析が図20に見られる。リアルタイムPCRは、QIAGENから発行されるQuantiTect SYBRグリーンキットのプロトコールに従った。全てのアンカーオリゴヌクレオチドにおいて、タグ配列は新規合成核酸鎖に見事に挿入された。次に、得られた新規合成核酸鎖を、その新規合成核酸鎖のタグ配列にハイブリダイズするプライマーによるリアルタイムPCRで分析したところ、結果は良好であった。
【0183】
これから、新規合成核酸鎖に対するタグ配列挿入効率は、リアルタイムPCRによって定量可能であることが認められる。この特別の実験では、ランダムアンカー配列を12塩基まで伸長したところ、挿入の効率は改善された(図20、プライマーN12を参照)。
【実施例8】
【0184】
本実施例は、全ゲノム増幅が、本発明による方法で実施が可能であることを示した。これと関連して、gDNAは鋳型核酸として機能する。本実施例でも、タグ配列は、ポリメラーゼ反応において、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の中に挿入された。
【0185】
アンカーオリゴヌクレオチドT7P N8がアンカーオリゴヌクレオチドとして用いられた。このアンカーオリゴヌクレオチドは、5'末端に、鋳型タグ配列としてT7プロモーター配列を含む。3'領域は、8-マーランダム配列を含んでいた。
【0186】
最初、HeLa細胞由来のcDNA 120 ngを、T7P N8オリゴヌクレオチド(10 μM)、反応バッファー、およびdNTP (0.5 mM)の存在下に、95℃で5分変性させた。それとは別に、同じ配列(T7P N8ブロック)を持つ、閉塞(すなわち、ポリメラーゼでは伸長不能な3'末端を持つ)アンカーオリゴヌクレオチドを、T7P N8オリゴヌクレオチドの代わりに挿入した。別の代替えとして、8-マーのランダムプライマーも用いた。
【0187】
T7P N8:
CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GGN NNN NNN N
T7P N8 block:
CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GGN NNN NNN N -dG-ref Q.
N8:
NNN NNN NN
【0188】
dG-ref Qは、ポリメラーゼによっては伸長されない、逆向きのグアニン塩基である。
【0189】
DNAを変性した後、試薬混合物を室温に冷却した。次に、4UのMMLV(RNアーゼHマイナス)(Superscript II, Invitrogen)を加え、溶液を37℃で1時間インキュベートした。1 μlの反応混合液をPCRに移した。PCRは、新規合成核酸鎖のタグ配列にハイブリダイズすることが可能なプライマー(ここでは、プライマーT7P)、dNTP、PCRバッファー、およびtaqポリメラーゼを有する20 μl溶液中で40サイクル行った。
【0190】
T7P:
CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GG
【0191】
本実験の結果は、アンカーオリゴヌクレオチドによるタグ配列の挿入は可能である、すなわち、DNAが鋳型に使用されるならば可能であることを示す。従って、本発明による方法において全ゲノム増幅は可能である。3'末端が閉塞されたアンカーオリゴヌクレオチドを用いた場合は、新規合成核酸に対するタグ配列の挿入は不可能であった。なぜなら、この場合、アンカーオリゴヌクレオチドも、ポリメラーゼ反応の際プライマーとして機能するからである(図21参照)。
【実施例9】
【0192】
本実施例は、逆転写酵素の外にも、他のポリメラーゼも、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による、新規合成核酸鎖に対するタグ配列の挿入を促進することが可能であることを示す。
【0193】
このために、アンカーオリゴヌクレオチドT7P N8を用いた(配列:CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GGN NNN NNN N)。先ず、HeLa細胞由来のgDNA 10 ngを、T7P N8オリゴヌクレオチド(10 μM)、1xクレノウバッファー、およびdNTP (0.5 mM)と共に、95℃で5分変性させた。それとは別に、N8プライマー(配列:NNN NNN NN)を用いた。変性した試薬混合液を室温に冷却した。1 μlのSensiscript (QIAGEN)、12 U AMV逆転写酵素、または10 Uのクレノウ断片、E. coliのDNAポリメラーゼI由来を、個々の液に加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、1 μlの反応混合液をPCRに移した。PCRは、T7Pプライマー(配列:CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GG)、dNTP、プライマー、PCRバッファー、およびtaqポリメラーゼを有する20 μl溶液中で40サイクル行った。
【0194】
本実施例における本実験の結果(図22参照)は、他のポリメラーゼ、この場合は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片も、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による、新規合成核酸鎖に対するタグ配列の挿入を促進することが可能であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、ポリメラーゼによるDNA合成時に見られる、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によるタグ配列の付着を模式的に示す。
【図2】図2は、RNA増幅に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、新規核酸鎖の合成時、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、プロモーター配列に対して相補的な配列が新たに合成される核酸鎖の中に挿入される。
【図3】図3は、RNA増幅に関連する、本発明によるさらに別の方法の模式図である。この方法では、新しい核酸鎖の合成時にプロモーター配列が挿入されるが、その際、プロモーター配列を含むプライマータグ配列と、プロモーター配列を含むアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成鎖のタグ配列とが互いにハイブリダイズしてプロモーターを形成する。
【図4】図4は、RNA増幅に関連する、本発明によるさらに別の方法の模式図である。この方法では、プロモーター配列が、新規核酸鎖の合成時に挿入され、それによって、プロモーター配列を含むプライマータグ配列と、プロモーター配列を含む、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入されるタグ配列とが、互いにハイブリダイズしてプロモーターを形成する。その際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プロモーター配列の5'に少なくとも1個の余分のヌクレオチド(extra nt)を持つ。
【図5】図5は、シグナル増幅に関連する、本発明による一般的に応用可能な方法の模式図である。この方法では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による新規核酸鎖の合成の際、タグ配列が新規合成鎖に挿入され、その際、新規合成鎖は、そのタグ配列によってその3'末端において標的円に結合し、ローリングサークル増幅によるその後のシグナル増幅においてプライマーとして機能することが可能である。
【図6】図6は、DNA増幅の模式図である。図において、RNAまたはDNAから始まる新規核酸鎖の合成において、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、プライマータグ配列に対して相補的なタグ配列が、新規合成核酸の3'末端に挿入され、そのために、新規合成核酸が、鋳型鎖から変性分離された後、ヘアピンループ構造を形成する。これらは、その後のローリングサークル増幅反応において核酸を増幅するために、連結反応に使用される。
【図7】図7は、実施例1で得られた実験結果を示す。
【図8】図8は、DNA増幅に関連する、本発明による一般的に応用可能な方法の模式図である。この方法では、RNAまたはDNAから始まる新規核酸鎖の合成の際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、タグ配列が、新規合成核酸の3'末端に挿入される。さらに、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と異なっていても、同じであってもよいタグ配列を持つプライマーが使用される。得られた2本鎖末端は連結され、その後、新規合成核酸鎖は鋳型鎖から分離されて、環状の、1本鎖核酸を形成し、これは、次に、ローリングサークル増幅によって増幅される。
【図9】図9は、メチル化DNAセクションの選択的増幅に関連する、本発明による一般的に応用可能な方法の模式図である(メチル化塩基は三角で示す)。DNAから始まる核酸合成反応の際、プライマータグ配列に対して相補的なタグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸の3'末端に挿入される。核酸合成反応の後、該DNAはメチレン感受性制限エンドヌクレアーゼによって切断処理を受ける。その後、新規合成核酸鎖は鋳型鎖から分離される。次に、分子内ヘアピン構造が、切断されなかったDNAセクション、すなわち、メチル化領域に形成される。この領域は、続くローリングサークル増幅反応において核酸を増幅するために、連結反応に用いられる。
【図10】図10は、DNAクローニングに関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、制限酵素制限部位が、新規核酸鎖の合成時にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。新規合成核酸鎖と鋳型鎖の変性が続いて起こる。次に、第2鎖合成が実行され、それによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成される。
【図11】図11は、DNA増幅に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、制限エンドヌクレアーゼ制限部位が、新規核酸鎖の合成時にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。同様に、プライマーも制限エンドヌクレアーゼ制限部位を含む。適合的制限部位が、アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーによって挿入される。新規合成核酸鎖と鋳型鎖の変性が続いて起こる。次に、第2鎖合成が実行され、それによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成される。両末端の制限消化、分子内ハイブリダイゼーション、および最終的連結の後、2本鎖環状核酸が形成され、これは次にローリングサークル増幅によって増幅される。
【図12】図12は、DNA増幅に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、制限エンドヌクレアーゼ制限部位が、新規核酸鎖の合成時にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。同様に、プライマーも制限エンドヌクレアーゼ制限部位を含む。適合的制限部位が、アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーによって挿入される。新規合成核酸鎖と鋳型鎖の変性が続いて起こる。次に、第2鎖合成が実行され、それによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成される。両末端の制限消化、続く分子内ハイブリダイゼーション、および最終的連結の後、2本鎖直線状核酸が形成され、これは次に複数分裂増幅(MDA)によって増幅される。
【図13】図13は、リアルタイムPCRによる核酸検出反応に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、プローブ/プライマーが、新規核酸鎖の合成の際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。
【図14】図14は、DNA分子の融合に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、新規核酸鎖の合成時、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、それ自身にたいして相補的な配列が、新規合成鎖の中に挿入される。すなわち、新規合成核酸鎖の3'末端が、別の新規合成鎖の3'末端に対してハイブリダイズすることが可能である。プライマータグ配列は、新規合成核酸鎖の5'末端が、別の新規合成鎖の5'にハイブリダイズ可能となるように準備される。この場合、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、プライマータグ配列とは同じである((AT)n)。従って、直線状または環状ハイブリダイゼーション構造が形成可能である。その後、1本鎖領域は、ポリメラーゼで充填され、1本鎖ニックは連結される。次いで、複数分裂増幅またはローリングサークル増幅を用いて、これらの配列を多重化することが可能である。
【図15】図15は、実施例2のリアルタイムPCR分析の棒グラフである。
【図16】図16は、実施例3の増幅体のゲル分析である。
【図17】図17は、実施例4の増幅体のゲル分析である。
【図18】図18は、実施例5のゲル分析である。
【図19】図19は、実施例6のゲル分析である。
【図20】図20は、実施例7のリアルタイム増幅結果に関する棒グラフである。
【図21】図21は、実施例8のゲル分析である。
【図22】図22は、実施例9のゲル分析である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸中に配列要素(タグ配列とも呼ばれる)を挿入するための方法に関する。
【0002】
配列要素(タグ配列)を、既存の核酸の中に、特に3'末端に挿入するためには、これまでは、展開核酸の対向鎖の核酸合成、または、所謂アダプター/リンカーの連結を実行することが必要であった。これらはよく知られた方法であるが、時間と手間がかかる。現在、核酸の3'末端に特定のタグ配列を挿入するには3種の異なる方法が知られる。それらは下記の共通工程を含む。すなわち、(a)既に合成された核酸に対し、ポリメラーゼ反応によって対向鎖を生産するか、または、(b)核酸にタグ配列を付着させるために第2の酵素反応が必要とされる。下記の三つの方法が関連する。
【0003】
1)初期には、鋳型独立性DNAポリメラーゼを用いて、DNAの3'末端にホモポリマーを付着させた。独立反応においてホモポリマーを重合する鋳型独立性ポリメラーゼが本法には必要である。従って、この方法では、付着したホモポリマーに対して相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドが、対向鎖の合成を特異的に活性化することが可能である点で拡張が可能である。この方法は、もともと、cDNAクローニングで用いられた(Okayama H. & Berg P.,「全長cDNAの高効率クローニング」"High-Efficiency Cloning of Full-Length cDNA," Mol. Cell. Biol. 1982, 161-170)。現在、この方法は、RNAの直線的増幅にも用いられている。
【0004】
2)さらに、mRNAのキャップ末端に特定のタグ配列を挿入する、所謂「鋳型スイッチプライマー」による用法も知られている(Matz M., Shagin D., Bogdanova E., Britanova O., Lukyanov S., Diatchenko L. & Chenchik A.,「鋳型スイッチ作用およびステップアウトPCRによるcDNA末端増幅」Nucl. Acid Res., 1999, Vol. 27, No. 6, 1558-1560;米国特許第5,962,272号)。この方法は、RNAのキャップ末端にシトシンヌクレオチドを鋳型独立的に付着させるために、ある逆転写酵素、RNアーゼH-MMLVの性質と直接に関連する。このヌクレオチド付着は、既に1)で記載した、ただし1)では逆転写酵素で実行したのであるが、ポリマー末端付着に相当する。G塩基を有するオリゴヌクレオチドを3'末端にハイブリダイズするにはシトシンヌクレオチドを用いることが可能である。この方法は例えばcDNAクローニングに用いられる。
【0005】
3)最後に、外部から付着されたプライマーによって対向鎖も活性化されうる。このオリゴヌクレオチドプライマーは例えば、新規に合成された鎖の5'末端にタグ配列が挿入されるように、その5'末端において、ランダム配列に加えて特定の配列(タグ配列)を含むことが可能である。この形の合成は、タグ配列付きプライマーを利用する。しかしながら、いずれの場合も、3'末端にタグ配列に対する相補鎖を挿入するためには、対向鎖の合成が必要である。この方法は、例えば、cDNAクローニングまたは増幅反応に用いられる。
【0006】
従って、例えば、Makarov等による米国特許出願第2003/0143599号は、DNA分子であって、その後にランダムな断片に切断されるDNA分子の製造法を記載する。次に、事実上ほとんど既知の配列を持つプライマーを、生産された断片の内の少なくとも一つに付着させ、「プライマー結合断片」を生産し、次にこれが増幅される。しかしながら、前述の米国特許出願による方法では、プライマーは、所謂「末端付着」またはアダプター連結によって、得られたDNA断片の3'末端に挿入される。
【0007】
最後に、ある論文(Wharam S.D., Marsh P., Lloyd J.S., Ray T.D., Mock G.A., Assenberg R., McPhee J.E., Brown P., Weston A. and Cardy D.L.N.,「3方接合構造の形成に基づく、新規等熱核酸増幅アッセイによるDNAおよびRNA標的の特異的検出」"Specific detection of DNA and RNA targets using a novel isothermal nucleic acid amplification assay based on the formation of a three-way junction structure," Nucleic Acids Research, 2001, Vol. 29, No. 11 e54, 1-8)は、オリゴヌクレオチドではあるが、「鋳型スイッチ」が見られないオリゴヌクレオチドによる一定のDNAまたはRNA配列の検出を記載する。この場合は、オリゴヌクレオチド(「伸長プローブ」と呼ばれる)が伸長し、これが、標的配列にも「鋳型プローブ」にも結合して、y型、またはt型の「3方接合体」を形成する。
【0008】
本発明の課題は、核酸中に配列要素(タグ配列)を挿入するための新規方法であって、前述の既知の多段工程法の複雑さを回避し、その後に、新たに合成された核酸の3'末端における対向鎖の合成を要することなく第1ポリメラーゼ反応にタグ配列を挿入する新規方法を提供することである。この課題に対する解決は、核酸の中に一つのタグ配列、またはいくつかのタグ配列を挿入する方法であって、下記の工程によって特徴づけられる方法である。すなわち、
(a)鋳型核酸を準備する工程;
(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の少なくとも一つの配列断片とハイブリダイズする工程;および、
(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、アンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ部分、すなわち、少なくとも一つの鋳型タグ配列に対して相補的である配列をその3'末端に含む、新規核酸鎖を合成する工程を含み、それによって核酸の2本鎖領域が形成されることを特徴とする方法。
【0009】
本発明による方法の、さらに別の有利な実施態様、局面、および詳細は、特許請求項、説明、および実施例の外に、図面においても見出される。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、核酸の中に配列要素(一つのタグ配列またはいくつかのタグ配列)を挿入するための方法であって、下記の工程、すなわち、(a)鋳型核酸を準備する工程;(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の少なくとも一つの配列断片とハイブリダイズする工程;および、(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、その3'末端において、アンカーオリゴヌクレオチド(鋳型タグ配列)の非ハイブリダイズ部分に対して相補的である配列を含む、新規核酸鎖を合成する工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0011】
本発明による方法において使用されるアンカーオリゴヌクレオチドは、その5'末端領域に少なくとも1個の特定配列(鋳型タグ配列)を含み、この特定(鋳型タグ)配列に対して相補的な配列(タグ配列)が、新たに合成される鎖に挿入されるようにする。この鋳型タグ配列の3'末端のアンカーオリゴヌクレオチドは、鋳型核酸に対して相補的な少なくとも1個の配列(アンカー配列)を有し、そのために鋳型核酸配列とのハイブリダイゼーションが可能である。
【0012】
前述の工程(a)-(c)に加えて、本発明による方法は、工程(c)で生産された核酸の2本鎖がさらに処理される追加工程(d)を含む。この追加工程は、当然、追加過程が実行される一つの工程、またはいくつかの工程の組み合わせによって達成される。本明細書ではほんの数例について言及する。
【0013】
1)2本鎖の1本鎖への分離であって、この過程は、熱的(すなわち、加熱)、酵素的、および/または、化学的物質によって実施されるのが好ましい。
2)核酸の自由末端の連結であって、この過程は、天然の1本鎖または2本鎖特異的リガーゼ、またはその他のリガーゼ、例えばリボザイム、化学的連結、例えば、チオフォスフェートによるもの(米国特許第6,635,425号参照)、または、連結に好適な他の酵素、例えばトポイソメラーゼによる連結によって実施される。
3)核酸を配列特異的、または配列非特異的に切断/結合するヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼによる処理。
4)得られたRNAのその後の翻訳を伴う、または伴わないRNA合成。
5)DNA合成、例えば、新規に合成される核酸鎖の少なくとも一部に対して相補的な1本鎖核酸の合成、または、鋳型核酸の少なくとも一部の増幅。
6)核酸-核酸相互作用、例えば、新規に合成された核酸とアプタマーとの相互作用、または、新規に合成された核酸と、別の核酸、例えば、1個以上の特異的プライマーとのハイブリダイゼーション。
7)得られた核酸鎖に対する、例えば、タンパク結合によるある核酸分子の精製または濃縮による、ただしこれらに限定されないが、1種以上のタンパクの結合。
8)新規に合成された核酸鎖、またはその増幅産物の標識。
【0014】
2本鎖核酸の処理に関するさらなる可能性は当業者にはよく知られる。処理のタイプは、個別の実験法において必要な工程に従って実施されること、従って当業者によって選択されることが必要である。
【0015】
本発明は、核酸合成において、配列要素またはタグ配列が、新規に合成される核酸の中に、特に3'末端に挿入される方法を開示する。従って、アンカーオリゴヌクレオチドが、アンカー配列を介して、標的または鋳型核酸にハイブリダイズする。使用するポリメラーゼが、核酸合成時アンカーオリゴヌクレオチドに遭遇すると、標的核酸にそってそれ以上の合成は起こらず、代わりにアンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ領域にそって(すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列にそって)合成が起こる。そのため、タグ配列、すなわち、鋳型タグ配列に対して相補的な配列が、得られた核酸に、その3'末端において挿入される。本発明による方法では、鋳型スイッチは工程(c)で起こる。すなわち、使用するポリメラーゼは、標的または鋳型核酸から、アンカーオリゴヌクレオチドに跳躍する。従って、本発明による方法では、鎖置換活性を全く、またはごく僅かしか持たないポリメラーゼが使用される。
【0016】
本発明による方法は、ある核酸の、以前に定義された、またはランダムな配列領域の中に(アンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列は、ランダム配列、変性配列、または特異的配列であってもよい)、任意の配列を持つタグ配列を、最初のポリメラーゼ反応の時から挿入可能とした始めてのものである。このようにして、前述の従来法は、タグ配列を核酸に挿入するために余分の工程を要しないように改良される。次に、これは時間と出費を節約する。
【0017】
本発明による方法では、前述の工程(a)-(c)の全て、または要すれば、(a)-(d)工程の全てが、それぞれの場合において連続的に、別々の反応容器において実行される。さらに別の実施態様では、工程(a)-(c)、または要すれば、工程(a)-(d)の全てがまとめて、または、前述の2種以上の工程が同じ反応容器において実行される。これは余分の時間を節約する。
【0018】
配列要素(タグ配列)は、特に、核酸の新規合成鎖の3'末端に挿入される。
【0019】
本発明による方法では、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、またはそれらの混合物が核酸として使用される。核酸はまた、本発明による方法がそれによって影響されない限り、塩基類縁体を含んでもよい。
【0020】
本方法において使用されるアンカーオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の3'アンカー配列、および、該アンカー配列に対する1個以上の5'鋳型タグ配列(単数または複数)を有することが好ましい。
【0021】
次に、アンカーオリゴヌクレオチドに含まれる、前記少なくとも1個の鋳型タグ配列は、少なくとも1個の機能的配列を含むことが好ましい。
【0022】
本発明に従って使用されるアンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列は、特異的であっても、変性していても、または「ランダム」であってもよい。この配列は、十分なハイブリダイゼーションを確保するために、少なくとも4個の塩基を含むことが好ましい。特に、塩基の数は、4と50の間の任意の値、好ましくは4と30の間、理想的には6と20の間の任意の値である。
【0023】
本発明による方法の工程(c)における新規核酸鎖の合成は、極めて僅かな鎖置換活性を持つポリメラーゼによって実行されるのが好ましく、もっとも好ましい場合では、全く鎖置換活性を持たないポリメラーゼによって実行される(「鎖置換性」とは、ポリメラーゼが、核酸2本鎖を縦裂きして1本鎖とする能力を指す、下記参照)。本発明による方法における鋳型スイッチは、原理的には、使用するポリメラーゼの鎖置換活性が低ければ低いほどより効率的に起きることができる。しかしながら、本発明による方法のいくつかの特異的実施態様では、ポリメラーゼがごく僅かな鎖置換活性を持つことによってより効果的に配置される(下記参照)。
【0024】
本発明による方法は、下記の処理背景において使用することが可能である。すなわち、RNA増幅、所謂「ローリングサークル」法によるシグナル増幅、DNA増幅、メチル化DNAセクションのDNA増幅、DNAクローニングのための制限酵素用制限部位挿入法、環状DNA分子生産のための制限酵素用制限部位挿入法、直線的巨大分子に継続連結のための制限酵素用制限部位挿入法、例えば、PCRまたはRT(逆転写酵素)-PCR、およびリアルタイムPCRまたはリアルタイムRT-PCR(PCR =「ポリメラーゼ連鎖反応」)における核酸検出法、例えば、PCRまたはRT-PCR、およびリアルタイムPCRまたはリアルタイムRT-PCRにおける特異的核酸の検出および/または定量法、トランスクリプトームまたはゲノム断片の融合法、または全ゲノム増幅または全トランスクリプトーム増幅におけるトランスクリプトームまたはゲノム断片の融合法である。
【0025】
いくつかの頻繁に使用される用語について下記にさらに詳細に説明する。
ポリメラーゼ:ポリメラーゼとは、ある核酸鎖内部の個別のヌクレオチド間においてフォスフォジエステル結合の形成を触媒する酵素である(例えば、DNAおよりRNAポリメラーゼ)。選択された実験条件の下で鎖置換活性をほとんど、または全く持たないポリメラーゼは全て、本発明の方法による工程(c)における使用にとって好適である。鎖置換活性が高すぎると、アンカーオリゴヌクレオチドが分裂される可能性があり、その場合、タグ配列の挿入が妨げられ、極端な場合、完全に阻止される恐れがある。従って、本発明の方法によれば、使用されるポリメラーゼは、重合工程において鎖置換性を全く持たないことが特に好ましい。ごく僅かな鎖置換活性を持つ他のポリメラーゼの外に、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI、および、DNAおよびRNA依存性逆転写酵素が、この好ましいポリメラーゼに属する。ウィルス、細菌、古細菌、および真核細胞の酵素も後者に属し、これはさらに、イントロン、レトロトランスポゾン、およびレトロウィルス、例えば、MMLV、AMV、HIV由来の酵素も含む。しかしながら、本発明の方法によって合成核酸鎖の中にタグ配列を挿入するには、ごく僅かな鎖置換性しか持たない他のポリメラーゼも好適である。本発明による方法のいくつかの特異的実施態様では、僅かな鎖置換性しか持たないポリメラーゼと組み合わされるとさらに効果的に工夫することが可能である(下記参照)。本発明の意味における中等度の鎖置換活性とは、ポリメラーゼによる鎖置換の確率が、アンカーオリゴヌクレオチドの30%未満、好ましくは50%未満、特に好ましくは80%未満であることを指す。当業者にはよく知られるように、鎖置換確率は、反応温度、バッファー条件、それぞれのポリメラーゼ、およびアンカーオリゴヌクレオチドのハイブリダイズ割合の関数として変動する可能性がある。
【0026】
前述の意味において、例えば、熱不安定なポリメラーゼは、本発明による方法の工程(c)で使用するのに好適である。原理的には、選択された実験条件下で、全くまたはほとんど鎖置換活性を持たない熱不安定なポリメラーゼは全て好適である。DNAポリメラーゼ、例えば、細胞自身のDNA(修復ポリメラーゼと呼ばれる)の修復を実行するポリメラーゼは、レプリカーゼ同様、これらの熱不安定ポリメラーゼに属する。レプリカーゼは多くの場合著明な鎖置換活性を持つので、その鎖置換活性が低い時、または、鎖置換活性を突然変異(例えば、Phi29 DNAポリメラーゼのLys143突然変異、de Vega等「真核細胞型DNAポリメラーゼの3'-5'エキソヌクレアーゼ活性部位における触媒活動には不変のリシン残基が関与する」"An invariant lysine residue is involved in catalysis at the 3'-5' exonuclease active site of eukaryotic-type DNA polymerase," J. Mol. Biol.; 270(1):65-78, 1997)、付属因子の修飾または欠失によって抑制または除去した時に使用すべきである。さらに、DNAポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、DNAポリメラーゼI、T4ポリメラーゼ、T7ポリメラーゼ、および、逆転写酵素も、この熱不安定ポリメラーゼに属する。本発明では、ポリメラーゼが、65℃の温度で10分処理された後でも、初期活性の20%の最大活性を依然として保持している場合、すなわち、ポリメラーゼが少なくとも80%まで不活性化される場合、熱不安定と呼ぶ。
【0027】
本発明による方法の工程(c)には、熱不安定ポリメラーゼの外に、各熱安定ポリメラーゼも使用が可能である。原理的には、実験条件において全く、またはほとんど鎖置換活性を持たない熱安定ポリメラーゼは全て好適である。従って、これらのポリメラーゼは市場から入手が可能であり、当業者にはよく知られる。DNAポリメラーゼ、例えば、細胞自身のDNAの修復を実行するDNAポリメラーゼ(修復ポリメラーゼと呼ばれる)は、レプリカーゼ同様、この熱安定ポリメラーゼに属する。レプリカーゼは多くの場合著明な鎖置換活性を持つので、その鎖置換活性が低い時、または、鎖置換活性を突然変異、付属因子の修飾または欠失によって抑制または除去した時に使用すべきである。この時点で挙げられる熱安定ポリメラーゼの例としては、taqポリメラーゼ、taqポリメラーゼのクレノウ断片、および、好ましくはエキソヌクレアーゼ活性(pfu exo)を持たないpfuポリメラーゼがある。
【0028】
鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ: DNAポリメラーゼの鎖置換活性とは、使用される酵素が、DNAの2本鎖を、2本の単一鎖に分裂可能であることを意味する。RCAに使用が可能な鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼの例としては、ウィルス、原核細胞、真核細胞、または古細胞由来のホロ酵素、またはレプリカーゼの一部、phi29 DNAポリメラーゼ、クレノウDNAポリメラーゼexo-、および、Bst exo-と表示されるBacillus stearothermophilus由来のDNAポリメラーゼがある。"exo-"は、対応する酵素が、5'-3'活性を持たないことを意味する。phi29 DNAポリメラーゼのよく知られる例は、バクテリオファージのphi29 DNAポリメラーゼである。他のphi29 DNAポリメラーゼも、例えば、ファージCp-1, PRD-1, Phi 15, Phi 21, PZE, PZA, Nf, M2Y, B103, SF5, GA-1, Cp-5, Cp-7, PR4, PR5, PR722, およびL17に見られる。鎖置換活性を持つ、他の好適なDNAポリメラーゼも当業者には既知である。それとは別に、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼと理解してもよいものとして、それぞれのDNAポリメラーゼの外に触媒、例えば、2本鎖DNAの分裂、または1本鎖DNAの安定化を可能とするタンパクまたはリボソームが使用される限りにおいて、鎖置換活性を持たないDNAポリメラーゼも挙げられる。このようなタンパクとしては、例えば、ヘリカーゼ、SSBタンパク、および、大型酵素複合体、例えば、レプリカーゼの成分として存在することが可能な組み換えタンパクが挙げられる。この場合、鎖置換活性を持つポリメラーゼは、ポリメラーゼ自体の外に複数の成分によって生産される。鎖置換活性を持つポリメラーゼは、熱不安定でも、熱安定であってもよい。
【0029】
鋳型核酸:鋳型核酸の例としては、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、またはそれらの混合物がある。鋳型核酸または、化学的に修飾された形態で存在してもよい。鋳型核酸は、ペア鎖とのハイブリダイゼーションが起こる限り、塩基類縁体(例えば、非プリンまたは非ピリミジン塩基)を含んでも、あるいは、塩基類縁体から構成されていてもよい。さらに、鋳型核酸はまた、他の修飾体、例えば、フルオロフォア(単数または複数)、ビオチン、メチル化(単複)等を含んでもよい。それとは別に、対応する修飾体は当業者には十分によく知られる。鋳型核酸の必要な性質は、アンカーオリゴヌクレオチドが、その鋳型核酸にハイブリダイズすることが可能であること、鋳型核酸がポリメラーゼの標的として認識されることである。鋳型核酸は、種々の長さであってよく、1本鎖でも、部分的に2本鎖でも、または2本鎖であってもよい。2本鎖核酸の場合、アンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列のハイブリダイゼーションが起こるために、その2本鎖核酸はまず変性されなければならない。
【0030】
アンカーオリゴヌクレオチド:アンカーオリゴヌクレオチドは、その5'末端領域に少なくとも1個の特異的配列(鋳型タグ配列)を含み、その特異的(タグ鋳型)配列に対して相補的な配列(タグ配列)が、新規合成鎖に挿入されるのを可能とする。アンカーオリゴヌクレオチドは、この鋳型タグ配列の3'末端に、鋳型核酸に対して相補的な少なくとも1個の配列(アンカー配列)を有し、鋳型核酸とのハイブリダイゼーションを可能とする。さらに、1種以上の機能を担当することが可能な1個以上の配列が、3'アンカー配列と、5'鋳型タグ配列の間に挿入される。このような機能的配列としては、例えば、プライマー結合部位、プローブ結合部位、転写開始のプロモーター、制限エンドヌクレアーゼ制限部位、リボソーム結合部位等が挙げられる。追加の配列として、前述の機能の任意の組み合わせが可能である。
【0031】
アンカー配列:アンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列は、鋳型核酸の、アンカー核酸に対して相補的な配列に対してハイブリダイズすることが可能である。アンカー配列は、ランダム配列、変性配列、または特異的配列を含んでもよく、種々の長さを持ってもよい。従って、例えば、特異的アンカー配列は、例えば、転写物の配列にハイブリダイズすることが可能な配列、例えば、ポリA RNAのポリA尾部の配列、または、特異的に遺伝子に部分的にハイブリダイズすることが可能な配列を含んでもよい。さらにアンカー配列はまた、機能的配列を含んでもよく、その性質に従って、RNA、DNA、またはその両方の混合物であってもよい。アンカー配列は、標的核酸とのハイブリダイゼーションが起こる限り、塩基類縁体(例えば、非プリンまたは非ピリミジン類縁体)、またはヌクレオチド類縁体(例えばPNA)を含んでもよく、またはその両方から構成されてもよい。さらに、アンカー配列はまた副溝結合因子を含んでもよい。最後に、アンカー配列は、他の修飾体、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等を含んでもよい。対応する別様修飾体は当業者には十分によく知られる。
【0032】
鋳型タグ配列およびタグ配列:アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、タグ配列の鋳型として働き、核酸の新規合成鎖の中に挿入される配列である。鋳型タグ配列はある一定の配列を含んでもよい。しかしながら、鋳型タグ配列はまた、標的核酸にハイブリダイズしない、またはハイブリダイズが極めて弱いものである限り、変性配列を含んでもよい。このタグ配列は、種々の長さを持っていてもよい。タグ配列が合成される核酸鎖の中に挿入されるという事実とは別に、タグ配列は、さらに機能的配列を含み、そのために、例えば、ハイブリダイゼーション部位、プライマー結合部位、プローブ結合部位、転写および/または翻訳開始のためのプロモーターおよびシグナル配列、制限エンドヌクレアーゼの認識および制限部位、リボソーム結合部位、タンパク結合部位、抗体認識部位等、あるいは、その相補的配列が、合成される核酸鎖の中に挿入されるようにしてもよい。さらに、タグ配列はまた、これらの機能的配列の組み合わせを含んでもよい。鋳型タグ配列は、その性質によって、RNA、DNA、またはその混合部であってもよい。鋳型タグ配列、およびタグ配列は、塩基類縁体(例えば、非プリンまたは非ピリミジン類縁体)、またはヌクレオチド類縁体(例えば、PNA)を含んでもよいし、あるいは、両者から構成されてもよい。鋳型タグ配列、およびタグ配列は、さらに別の修飾体、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等を含んでもよい。対応する実施態様/修飾体は当業者には既知である。
【0033】
アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端:アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端は、遊離の3'-OH基を担ってもよい。しかしながら、別態様として、遊離3'-OH基は閉塞されてもよい、すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、その3'末端においてもはやポリメラーゼによって伸長されないようになっていてもよい。それとは別に、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端にはジデオキシヌクレオチドが挿入され、そのためにこの場合、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼによって伸長されないようになっていてもよい。アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端は、ある用途のための修飾体または添加物を担ってもよい。そのような添加物または修飾体として、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等がある。対応する実施態様/修飾体は当業者には既知である。アンカーオリゴヌクレオチドが同時にプライマーとしても機能する本発明の実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端は、ポリメラーゼによって伸長可能でなければならず、好ましくは、3'-OH末端を持つものでなければならない。
【0034】
アンカーオリゴヌクレオチドの5'末端:アンカーオリゴヌクレオチドの5'末端は、遊離リン酸基を有してもよい。しかしながら、遊離リン酸基は、別態様として、ブロックされ、または欠失されてもよい。アンカーオリゴヌクレオチドの5'末端は、ある用途のための修飾体または添加物を担ってもよい。そのような添加物または修飾体として、例えば、フルオロフォア(単複)、ビオチン、メチル化(単複)等がある。対応する実施態様/修飾体は当業者には既知である。
【0035】
ローリングサークル増幅(RCA):ローリングサークル増幅は、「ローリングサークル複製」という名前でも知られる。RCAでは、少なくとも1個のプライマーが環状標的配列にハイブリダイズする。鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼでは、プライマーは伸長され、環状標的配列における連続合成によって、重合されてプライマー結合部位を超えたコンカテマー分子となる。使用されるプライマーは、標的配列とのハイブリダイゼーションが起こり、ポリメラーゼによってプライマー伸長が起こる限り、ランダム配列、変性配列、または特異的配列であってもよく、かつ、DNA、RNA、PNA、修飾塩基、または塩基類縁体であってもよい。プライマーはまた、少なくとも部分的2本鎖の環状標的配列における単一鎖切断点を介して形成されてもよい。それとは別に、鎖置換活性を持たないDNAポリメラーゼも使用が可能である。しかしながら、この場合は、適当なDNAポリメラーゼの外に、2本鎖DNAの分離、または単一鎖の安定化を可能とする、例えばタンパクまたはリボソームのような触媒を含む酵素カクテルを使用しなければならない。ヘリカーゼ、SSBタンパク、および組み換えタンパクが上記タンパクに属する。
【0036】
増幅:核酸増幅とは、核酸の直線的または指数関数的増加において少なくとも2倍以上の鋳型の増加を意味する。直線的増幅は、例えば、標的サークルにおける一つの特異的配列のみにハイブリダイズするプライマーによるRCAによって実現される。指数関数的増幅は、例えば、少なくとも二つの結合部位を持つプライマーが標的サークルにハイブリダイズする、または、少なくとも一つの結合部位を、かつ相補鎖において少なくとも一つの結合部位を持ってハイブリダイズする、プライマー付きRCAによって実現される。本発明にとって好適な、その他の直線的および指数関数的増幅法、例えば、PCR、NASBA、SDA、MDA、TMA、3SR等は当業者にはよく知られている。
【0037】
プライマー:本発明の意味におけるプライマーとは、核酸ポリメラーゼ活性を持つ酵素に対し開始点として機能する分子を指す。このプライマーは、当業者に対しポリメラーゼの開始点としての安定性を実証する、タンパク、核酸、または他の分子であってもよい。この分子は、分子間および分子内相互作用を通じて開始点として機能することが可能である。核酸プライマーの場合、これらはハイブリダイズしてはならないが、鋳型核酸とはその全長に渡ってハイブリダイズしてよい。
【0038】
第1鎖合成:本発明の意味では、第1鎖合成とは、鋳型核酸に対して相補的な新規合成核酸鎖が重合され、鋳型依存性タグ配列が、この新規合成核酸鎖の3'末端中に挿入される、ポリメラーゼ依存性核酸合成を指す。本発明による方法では、タグ配列の挿入と共に「テーリング」は起こらない。すなわち、新規合成核酸の中に鋳型独立的やり方でヌクレオチドが挿入されることはない。新規合成核酸鎖の3'末端にタグ配列を挿入するための鋳型は、そのアンカー配列によって鋳型核酸にハイブリダイズする、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列であることが好ましい。
【0039】
本発明による方法の好ましい第1実施態様は、RNA合成の際、核酸中に少なくとも1個のタグ配列を挿入することに関する。
【0040】
原理的には、RNA増幅法は、例えば、米国特許明細書第5,545,522号に記載される。この方法では、開始mRNAにたいしてアンチセンス方向の方向性を持つRNAが形成される。この方法では、その後にRNAのインビトロ転写(増幅)を実行するためには、第2鎖cDNA合成が不可避的に必要とされる。一方、本発明によるアンカーオリゴヌクレオチドを使用するならば、RNAポリメラーゼの第1鎖cDNA合成の際に、プロモーターは既に挿入されるので、次のインビトロ転写において、RNAは、事前の第2鎖合成を要せず、センス方向に翻字される態勢になっている。新規核酸鎖合成の際にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によってプロモーター配列が挿入される、本発明によるRNA増幅の模式図が図2に示される。
【0041】
本発明による方法の第1実施態様の好ましい実施によれば、工程(c)において挿入されるタグ配列は、少なくとも1個のRNAポリメラーゼ結合部位を含む。このRNAポリメラーゼ結合部位は、例えば、RNAポリメラーゼプロモーターであってもよい。
【0042】
さらに、本発明の方法の第1実施態様のある実施態様によれば、工程(c)は、それから新規核酸鎖の合成が起こる少なくとも1個のプライマーによって実行されることが好ましい。挿入されるプライマーは、例えば、核酸、ポリペプチド、またはタンパクであってもよい。使用されるプライマーがプライマー核酸である場合、その配列は、特異的、変性、またはランダムであってもよい。使用されるプライマーが(それが核酸であると、タンパクであるとを問わず)5'末端にタグ配列を持つとさらに別の利点が得られる可能性がある。
【0043】
本発明の方法の第1実施態様のある実施態様によれば、工程(d)において実行される過程は、RNAポリメラーゼによるRNA合成であるが、この過程は、ヌクレオシド三リン酸(NTP)および/またはNTP修飾体の存在下に実行される。
【0044】
次に、工程(c)において新規に重合された核酸鎖は、鋳型核酸から分離されるが、この分離は、熱的に、酵素的に、および/または化学的に行うことが可能である。
【0045】
RNA合成が、工程(c)で新規合成された核酸鎖が鋳型核酸から分離された後始めて起こる場合も有利である可能性がある。
【0046】
本発明の方法の第1実施態様の、さらに別の好ましい実施態様では、工程(c)で使用されるプライマーは、少なくとも1個のタグ配列を含む。このタグ配列は、少なくとも1個の機能配列を含み、該機能配列の少なくとも一つがRNAポリメラーゼプロモーターである。同様に、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、少なくとも1個の機能的配列を持ち、該機能配列の少なくとも一つはRNAポリメラーゼプロモーターである。本発明の方法のこの実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーとは同一であってもよい。工程(c)で生産される2本鎖末端はここで閉鎖され、互いに連結されうる(例えば、化学的、または酵素的に)。別態様として、この2本鎖末端は連結されて自己相補的オリゴヌクレオチドとなってもよい。この自己相補的オリゴヌクレオチドは、自ら平滑末端を形成するが、例えば、2本鎖末端においてリガーゼによって連結される。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドによってさらに別の機能配列を挿入することも可能である。アンカーヌクレオチドの鋳型タグ配列によるRNAポリメラーゼプロモーターの挿入に代わる代替えとして、該プロモーターは、自己相補的オリゴヌクレオチドによって挿入されてもよい。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、本発明によるRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPおよび/またはNTP修飾体の存在下に行われるのが好ましい。
【0047】
本発明の方法の第1実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、使用される少なくとも1個のプライマーから成るタグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と同一であってもよい。このプライマータグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列に少なくとも部分的に同一であることが好ましい。本発明の意味では、部分的に同一とは、それぞれの実験条件下に、この部位において、新規合成核酸鎖が安定な2本鎖を形成するヌクレオチド数が同一であることを意味する。経験から、少なくとも約6ヌクレオチドの長さを持つ配列が必要である。この場合、工程(c)の後で、工程(d)において鎖分離が起こるとさらに有利である。鎖分離は、この場合も、熱的、酵素的、および/または化学的に起こってもよい。
【0048】
従って、新規合成核酸鎖の5'末端におけるタグ配列は、適正な相補的配列とのハイブリダイゼーションによって3'末端においてヘアピンループ構造を形成してもよい。次に、本発明によるRNAの合成が、RNAポリメラーゼ、およびNTPおよび/またはNTP修飾体の存在下に実行されることが好ましい。
【0049】
二つのヘアピン構造の両端も連結されてよい。これらの構造は平滑末端を持ってもよいし、あるいは、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換することが可能であるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは平滑末端を形成するので、例えば、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。本発明によるその後のRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPおよび/またはNTP修飾体の存在下に行われるのが好ましい。
【0050】
本発明による第1実施態様に基づいて、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)および/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、およびDNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼを、ローリングサークル増幅が起こるように用いることによって、この形成されたヘアピン構造を増幅することが可能である。このようにして、ヘアピン構造を持つコンカテマーDNA分子が形成される。次に、続くRNA合成が、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行される。
【0051】
本発明の方法の第1実施態様のさらに別の実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、および、RNAポリメラーゼ結合部位として機能する配列の5'方向におけるプライマータグ配列は、少なくとも1個のさらに別の機能配列を含んでもよい。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列における少なくとも1個の追加機能配列、および、プライマータグ配列における少なくとも1個の追加機能配列は同一であることが好ましい。理想的には、この追加の機能配列は、制限酵素の制限部位である。次に、制限エンドヌクレアーゼによって、この制限部位において切断することが可能である。
【0052】
次に、両ヘアピン構造の末端が連結されうる。これらの構造は平滑末端を持ってもよいし、あるいは、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。続いて行われるRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPおよび/またはNTP修飾体によって行われる。ヘアピン構造は、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)および/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、および鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼによって増幅されてDNA鋳型となる。続くRNA合成が、例えば、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行される。
【0053】
本発明の方法の第1実施態様の、別の好ましい実施態様によれば、プライマータグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を含み、さらに、この配列の5'方向に、少なくとも1個の別のヌクレオチドを有してもよい。
【0054】
本発明の方法の第1実施態様の、別の好ましい実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマータグ配列を含んでもよく、さらに、この配列の5'方向に少なくとも1個の別のヌクレオチドを有してもよい。
【0055】
前述の両実施態様においてさらに別の処理工程(d)を実行することが必要である場合には、その工程は鎖分離であることが好ましい。鎖分離は、この場合も、熱的、酵素的、および/または化学的に行われてよい。鎖分離とは、2本鎖の分離であって、二つの単一鎖の間の水素結合が破壊されて、二本の単一鎖を生ずることを指す。
【0056】
さらに、前述の二つの実施態様において、新規合成核酸鎖の5'末端にタグ配列を、3'末端に適当な相補的配列をハイブリダイズさせることによって突出末端を持つヘアピン構造が形成される。両ヘアピン構造の末端は連結されうる。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次にRNA合成は、RNAポリメラーゼおよび、NTPによって行われるのが好ましい。形成されたヘアピン構造は、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、および鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼによって増幅されてDNA鋳型となる。続くRNA合成が、例えば、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行されうる。
【0057】
本発明の方法の第1実施態様の別の好ましい実施態様によれば、処理は工程(c)の後工程(d)に進み、新規生産の2本鎖末端は全て、事前の鎖分離無しに連結される。この鎖分離は、その後に、例えば、熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。従って、生産された環状構造は、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、少なくとも1個のプライマー、および鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼによって増幅されてDNA鋳型となる。次に、続くRNA合成が、例えば、RNAポリメラーゼ、NTPおよび/またはNTP修飾体、および生産されたDNA鋳型によって実行されることが好ましい。
【0058】
本発明の方法の好ましい第2実施態様は、DNA合成時に核酸中に少なくとも1個のタグ配列を挿入することに関する。
【0059】
本発明の方法の第2実施態様の好ましい実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマー結合部位に対して相補的な少なくとも1個の機能的配列を含む。
【0060】
さらに別の好ましい実施態様は、鋳型鎖からの新規合成核酸鎖の分離は、要すれば、工程(d)の処理中に行われることを提案する。さらに、DNA合成は、新規合成核酸鎖のプライマー結合部位に結合する少なくとも一つのプライマーによって実行される。最後に、鎖分離とDNA合成の両工程は数回繰り返されるのが有利である。
【0061】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、ポリメラーゼ反応のための少なくとも一つのプライマーは工程(c)で加えられ、プライマーは、プライマー結合部位に対応する少なくとも1個の機能的配列を含むタグ配列を持つ。従って、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、およびプライマータグ配列は、同一、部分的に同一、または相違のいずれかであってもよい。次に、要すれば、新規合成核酸鎖を鋳型鎖から分離し、工程(d)での処理に備える。本発明の方法のさらに別の有利な実施態様によれば、DNA合成は少なくとも1個のプライマーによって行われる。鎖分離およびDNA合成の工程は数回繰り返されてもよい。
【0062】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)で使用される少なくとも1個のタグ配列を有するプライマー、およびアンカーオリゴヌクレオチドは、これらは同一であるか、部分的に同一であるかどちらかであるが、鋳型タグ配列を持つ。次の工程(d)において要すれば任意に実行される処理は、好ましくは、鋳型鎖からの、新規合成DNA鎖の分離である。この分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に行われてもよい。この分離された、新規合成核酸鎖は、両端の自己ハイブリダイゼーションによってヘアピン構造を形成することが可能である。このヘアピン構造が平滑末端を持つ場合、これらの構造の末端を連結することが可能である。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、二つのヘアピン構造は粘着末端連結によって連結されてもよい。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは平滑末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。そこで、そのような連結構築体に基づいて、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、および少なくとも1個のプライマーによって少なくとも1個のDNA分子が生産される。このようにして生産される分子はコンカテマーであってもよい。
【0063】
本発明の方法の第2実施態様の好ましい実施態様によれば、処理は工程(c)の後、追加工程(d)に進み、新規生産の2本鎖末端は全て、事前の鎖分離無しに連結される。次に、対応する連結の後に鎖分離が行われ、その際、鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行されるのが好ましい。DNA合成は、この場合も、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ、dNTPおよび/またはdNTP修飾体、および、少なくとも1個のプライマーによって実行される。
【0064】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、および、機能配列として用いられる少なくとも一つのプライマーのタグ配列は、その5'末端領域に制限エンドヌクレアーゼの結合部位を持つことである。形成されたヘアピン構造は、その制限エンドヌクレアーゼ制限部位において、制限酵素(制限エンドヌクレアーゼ)によって切断され、その後この2個のヘアピン構造の末端は連結される。ヘアピン構造は、平滑末端を持ってもよいし、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、DNA合成が、好ましくは、鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼおよび、dNTPおよび/またはdNTP修飾体によって実行される。
【0065】
本発明の方法の第2実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)におけるポリメラーゼ反応のために、タグ配列を含む少なくとも1個のプライマーが添加される。さらに、この第2実施態様の一つの局面によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマータグ配列を含み、さらに、その配列の5'方向に少なくとも一つの別のヌクレオチドを含んでもよい。別の局面によれば、プライマータグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、さらに、その配列の5'方向に少なくとも1個の別のヌクレオチドを含むことも可能である。前述の2つの局面に関連して、鎖分離という形の処理が、要すれば任意に、追加工程(d)において実行される。その際、この鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に行われるのが好ましい。本発明の方法のさらに別の局面は、新規合成核酸鎖の5'末端におけるタグ配列を、3'末端において相補的な適当な配列とハイブリダイズすることによって突出末端を持つヘアピンループ構造を形成することが可能であるという事実を中心とする。次に、両ヘアピン構造の末端は連結される。当業者には、粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるということはよく知られている。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。別態様として、自己相補的オリゴヌクレオチドを用いて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。このようなオリゴヌクレオチドの長さと配列は、それぞれの実験的背景に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。その後のDNA合成は、好ましくは、DNAポリメラーゼおよび、dNTPおよび/またはdNTP修飾体によって実行される。
【0066】
本発明の方法のさらに別の好ましい実施態様は、メチル化/非メチル化DNAセクションの選択的増幅に関する。
【0067】
メチル化/非メチル化DNAセクションの選択増幅では、タグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の新規合成鎖の3'末端に挿入される。工程(c)では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列に対し少なくとも部分的に同一であることが好ましい、タグ配列を持つ少なくとも一つのプライマーが使用されることが好ましい。本発明の意味では、部分的に同一とは、それぞれの実験条件下に、この部位において、新規合成核酸鎖が安定な2本鎖を形成するヌクレオチド数が同一であることを意味する。経験から、このようなことが起こるには、少なくとも約6ヌクレオチドの長さを持つ配列が必要である。
【0068】
メチル化/非メチル化DNAセクションの選択増幅では、DNAは、工程(c)における核酸合成反応後、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによって切断処置を受ける。メチル化部位は、これらの制限エンドヌクレアーゼによって認識されず、従って切断されない。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼが、半メチル化DNAを切断するのであれば、本方法によれば、工程(c)は、メチル化dNTP、好ましくはメチル化dCTPの存在下に実行しなければならない。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼとして下記の酵素を使用することが可能である。すなわち、HpaII, AatII, BcnI, Bsh1236I, Bsh1285I, BshTI, Bsp68I, Bsp119I, Bsp143II, Bsu15I, CseI, Cfr10I, Cfr42I, CpoI, Eco47III, Eco52I, Eco72I, Eco88I, Eco105I, EheI, Esp3I, FspAI, HhaI, Hin1I, Hin6I, HpaII, Kpn2I, MbiI, MluI, NotI. NsbI, PauI, PdiI, Pfl23II, Psp1406I, PvuI, SalI, SgsI, SmaI, SmuI, SsiI, TaiI, TauI, XhoI等である。
【0069】
メチル化/非メチル化DNAセクションの選択的増幅時、DNAは、別に、メチル化特異的制限エンドヌクレアーゼで切断処理してもよい。このようなエンドヌクレアーゼを用いることによって、その後、非メチル化DNAセクションを選択的に増幅し、その後、新規合成核酸鎖を、鋳型鎖から分離する。鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行することが可能である。次に、鎖分離の後、切断されないDNAセクション、およびメチル化領域に分子内ヘアピン構造が形成される。前述したように、これらは、連結反応に使用することが可能であり、その反応で得られた核酸を、例えば、ローリングサークル増幅によって増幅することが可能である。
【0070】
本発明の方法の好ましい第3実施態様は、鋳型核酸を検出するためのタグ配列の挿入に関する。
【0071】
本発明の方法の第3実施態様によれば、鋳型格段は例えばDNAまたはRNAであってもよい。核酸増幅は、鋳型核酸の検出のために実行されるのが好ましい。本発明の方法のこの第3実施態様では、二つの基本的局面が区別される。一方では、工程(c)で新規に合成される核酸は、工程(c)で自己増幅される。他方では、工程(c)で新規に合成される核酸は、検出核酸の増幅ではプライマーとして作用する。
【0072】
工程(c)で新規に合成される核酸が検出のために増幅される場合、第1実施態様では、使用されるアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プライマー結合部位に対して相補的な少なくとも1個の配列を含む。この場合、形成される核酸の処理は、追加の工程(d)において行われる。工程(d)では、鎖分離が先ず、好ましくは熱的、酵素的、および/または化学的に行われる。鎖分離に続いて、新規形成の核酸鎖の増幅が行われる。新規合成核酸の増幅は、少なくとも1個のプライマーの存在下に行われ、その際、そのプライマー結合部位が、使用されるアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の中に挿入される。単一プライマーの助けを借りて、新規合成核酸は、例えば、直線的増幅法によって増幅される。さらに別の好ましい実施態様では、新規合成核酸の指数関数的増幅を可能とするために、標的核酸に対して相補的な別の少なくとも一つのプライマーが加えられる。このプライマーは、核酸、ペプチド、またはタンパクであってもよい。
【0073】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明の方法の第3実施態様の工程(c)は、すなわち、新規合成核酸鎖の重合時、その5'領域にタグ配列を有する少なくとも1個のプライマーの存在下に実行される。本発明によれば、このタグ配列プライマーは、標的核酸に対するアンカーオリゴヌクレオチドの結合部位から3'側に位置する領域において、その3'末端によって該標的核酸に結合する。プライマーの3'領域は、特異的、変性的、またはランダムであってもよい。好ましい局面によれば、プライマータグ配列は、プライマー結合部位に対して相補的配列を含む。さらに別の好ましい実施態様では、タグ配列はまた、他の、および/または、新たな機能配列を含んでもよい。工程(c)におけるアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列およびプライマータグ配列に含まれる配列で、プライマー結合部位に対して相補的な配列は、同じであっても異なっていてもよい。単一プライマーの助けを借りて、新規合成核酸は、例えば、直線的増幅法によって増幅される。さらに別の好ましい実施態様では、新規合成核酸の指数関数的増幅を可能とするために、別の少なくとも一つのプライマーが加えられる。この少なくとも一つの追加プライマーは、a)核酸に対して相補的、b)プライマータグ配列と同一、c)標的核酸に結合する、工程(c)のタグ配列のプライマー部分と完全にまたは部分的に同一、または、d)標的核酸に対して相補的な領域と、タグ配列との間において、工程(c)のタグ配列とのプライマー融合部位を含む。
【0074】
本発明の方法の第3実施態様の記載の実施態様に使用される増幅法は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応("PCR")、鎖置換増幅法(SDA)、核酸配列増幅法(NASBA)、自己持続配列増幅法(3SR)、ローリングサークル増幅法(RCA)、または複数分裂増幅法(MDA)であってもよい。本発明の方法に適用が可能なさらに別の方法も当業者にはよく知られる。
【0075】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)で使用されるプライマーはタグ配列を持ち、アンカーオリゴヌクレオチドは、同一の、または少なくとも部分的に同一の鋳型タグ配列を持つ。後続の工程(d)において恐らく実行される処理は、新規合成DNA鎖の、鋳型鎖からの分離であることが好ましい。この分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。この分離された、新規合成核酸鎖は、末端の自己ハイブリダイゼーションによってヘアピン構造を形成することが可能である。ヘアピン構造が平滑末端を持つ場合、これら二つのヘアピン構造は、その平滑末端を通じて連結することが可能である。ヘアピン構造はまた、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、この二つのヘアピン構造は、粘着末端連結および平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験条件に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、少なくとも一つのDNA分子が、そのような連結構築体に基づいてローリングサークル増幅法によって生産される。このようにして生産された少なくとも一つのDNA分子がコンカテマーになることが可能である。
【0076】
本発明の方法の第3実施態様の好ましい実施態様によれば、工程(c)の後で、工程(d)において処理が要すれば随意に実行される。この処理では、新規に生産される2本鎖末端の全てが事前の鎖分離無しに連結される。対応する連結の後に鎖分離が、好ましくは熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。核酸合成が、再び、ローリングサークル増幅によって行われる。
【0077】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、使用されるプライマーのタグ配列とは、その5'末端領域において、機能配列として制限エンドヌクレアーゼ制限部位を有することである。形成されるヘアピン構造は、制限エンドヌクレアーゼ制限部位において制限酵素(制限エンドヌクレアーゼ)によって切断され、次に二つのヘアピン構造の末端は連結される。これらのヘアピン構造は、平滑末端を持ってもよいし、または、後退した3'または5'末端(粘着末端)を持ってもよい。それとは別に、二つのヘアピン構造は、粘着末端連結の他に、平滑末端連結によって結合されてもよい。粘着末端が、ポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼ活性によって平滑末端に変換が可能であり、従って簡単に連結されるという事実は当業者にはよく知られる。それとは別に、ヘアピン構造は、自己相補的オリゴヌクレオチドによって連結されてもよい。この場合、このようなオリゴヌクレオチド自体は粘着末端を形成するので、リガーゼを用いて連結してヘアピン構造とすることが可能である。それとは別に、自己相補的オリゴヌクレオチドを通じて、さらに別の機能配列を挿入することも可能である。この自己相補的オリゴヌクレオチドの配列の長さと配列は、それぞれの実験条件に依存するが、当業者によって容易に決めることが可能である。次に、DNA合成が、好ましくは、ローリングサークル増幅法によって実行される。
【0078】
本発明によって提案される方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、工程(c)で使用される少なくとも一つのプライマーはタグ配列、アンカーオリゴヌクレオチドは鋳型タグ配列、両配列はその内部領域では同一である配列を有し、そのために、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、または工程(c)のプライマータグ配列は、その5'末端において、交互反復配列、例えば、G-CまたはA-T塩基から成る、さらに別の配列を持つ。このようにして、自己ハイブリダイゼーションの際、鎖分離後、所謂粘着末端を持つヘアピンループが形成される。適当な配列は当業者にはよく知られる。後続の工程(d)で実行されてもよい処理は、新規合成DNA鎖の、鋳型鎖からの分離であることが好ましい。この鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的に実行される。得られた粘着末端はリガーゼで連結されてもよい。次に、少なくとも一つのDNA分子が、そのような連結構築体に基づいてローリングサークル増幅法によって生産される。このようにして生産された少なくとも一つのDNA分子がコンカテマーになることが可能である。
【0079】
形成された核酸の検出は、当業者にはよく知られる適切な方法によって実行される。そのような既知の方法としては、例えば、蛍光プローブ、または、蛍光性核酸結合物質、例えば、SYBRグリーン(登録商標)、臭化エチジウム、PicoGreen(登録商標)、RiboGreen(登録商標)等による蛍光検出が挙げられる。例えば、増幅に使用されるヌクレオチドも、蛍光検出において蛍光発色団によって標識することが可能である。蛍光信号、および/または、生産された核酸セクションのサイズの検出は、例えば、ゲル電気泳動、毛細管電気泳動、アレイ、蛍光検出装置、またはリアルタイムサイクラーによって実行される。核酸の検出はまた、その長さ依存性質量に基づいて実行されてもよい。原理的には、本発明に従って核酸を増幅する方法は全て、増幅された核酸の検出にも使用が可能である。その際、検出は、増幅中または増幅後に行われる。
【0080】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい局面によれば、工程(c)における、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列、および/または、プライマータグ配列は、核酸プローブの結合を可能とする少なくとも一つの新たな配列を含む。好適な検出プローブは、このように挿入されるプローブ結合部位に対して結合される。さらに、核酸を検出するための、当業者には既知の全てのプローブ、例えば、蛍光発色物質と関連するプローブ、または放射性標識プローブが適用可能である。
【0081】
本発明の方法の第3実施態様のさらに別の好ましい実施態様によれば、本発明は処理過程に関する。すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の5'末端が、検出核酸の配列の一部と同一であり、そのために、検出核酸は、円状(標的円)、または線状になることが可能となる処理過程である。検出核酸はこの処理過程に加えられ、本発明の方法の工程(c)において増幅されるような形で任意に処理される。処理は先ず、新規合成核酸鎖を、鋳型鎖から分離することを含み、その際、鎖分離は、熱的、酵素的、および/または化学的になされることが好ましい。次に、増幅が行われる。好ましい実施態様では、検出核酸は標的円である。標的円とは、例えば、DNAまたはRNAから構成されてもよい、核酸の閉鎖リングを指す。この標的円は、例えば、ポリメラーゼによって、直線的ローリングサークル増幅(RCA)に基づいて増幅することが可能である。標的円の直線的RCAは、当業者には十分によく知られる。従って、新規合成核酸鎖の3'末端は、好ましくは標的円に結合し、そこで、標的円に対して相補的な核酸から成るコンカテマー鎖の合成のためにプライマーとして機能する。このためには鎖置換活性を持つポリメラーゼが必要である。
【0082】
さらに、前述の実施態様では、少なくとも一つの別のプライマーが使用される。その際、このプライマーの、少なくとも3'末端の配列が、標的円のある配列と同一である。少なくとも1個のこのようなプライマーを用いることによって、そのタグ配列の3'末端によって標的円に結合する、新規合成核酸鎖による標的円の指数関数的増幅(指数関数的RCA)が可能となる。
【0083】
最後に、標的円によって、得られたコンカテマーに少なくとも一つの配列を付着することが可能であり、これによって少なくとも1個の核酸プローブの結合が可能となる。
【0084】
本発明による方法の第4実施態様は、DNA断片を融合するための核酸の挿入に関する。
【0085】
この第4実施態様では、鋳型核酸としてRNAまたはDNAが使用されるのが好ましい。
【0086】
本発明の方法の第4実施態様では、処理工程(d)は、要すれば任意に工程(c)の後で行われるが、この工程は、例えば、熱的、酵素的、および/または化学的に行われる鎖分離を含むことが好ましい。次に、得られた単一鎖が融合される。
【0087】
本発明の方法の第4実施態様によれば、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、少なくとも1個の機能配列を含み、該機能配列は、タグ配列であり、新規合成核酸に挿入される相補配列が自己ハイブリダイズするように、すなわち、新規合成核酸鎖が、その3'末端によって、第2の新規合成鎖の3'末端にハイブリダイズするように構築される。この場合、二つの新たに合成される核酸鎖は、ポリメラーゼ添加によって融合され、ポリメラーゼは、ヌクレオチド存在下に1本鎖領域をヌクレオチドで充填して2本鎖とする。
【0088】
本発明の方法の第4実施態様の好ましい実施態様では、工程(c)はプライマーの存在下に実行される。このプライマーは、鋳型核酸とハイブリダイズする領域に特異的、変性的、またはランダムな配列の内のいずれかを持つ核酸である。5'末端領域において、プライマーは、好ましくはタグ配列を持つが、理想的には、それ自体とハイブリダイズするタグ配列を持つ、すなわち、新規合成核酸とその5'末端によって、第2の新規合成鎖の5'末端とハイブリダイズするタグ配列を持つ。本発明のこの実施態様では、2本以上の新規合成核酸鎖が、それぞれの末端とハイブリダイズすることが可能である。このようにして、直線状または環状分子が形成される。
【0089】
さらに別の実施態様では、1本鎖領域は、最適な後続処理工程において、当業者によって適当とされたバッファーにおいて、DNAポリメラーゼおよびdNTPによって充填されて2本鎖領域とされる。この処理工程の後、実際の融合が、酵素的または化学的に、すなわち、当業者に既知で、実行可能な手段によって実行される。融合は、例えば、天然のリガーゼ、または、化学的ライゲーション、例えば、チオフォスフェート(米国特許第6,635,425号参照)、別の連結酵素、例えば、トポイソメラーゼ、またはある種のリボソームによって実行が可能である。このようにして、2本鎖環状、または2本鎖直線状DNA分子が形成される。
【0090】
要すれば任意に、前述の処理は、追加の工程において増幅反応を含んでもよい。その場合、増幅は、等温的に(例えば、環状DNA分子によるRCA、または、直線状DNA分子によるMDA)、または、非等温的(例えば、PCRによって)に実行される。さらに別の選択的工程としては、融合核酸、または、融合増幅核酸の配列決定がある。本発明の意味においては、配列決定とは、ある配列の検出の外に、ヌクレオチド配列の部分的、または完全な決定を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
図1は、新規核酸鎖の合成の際に見られるDNAポリメラーゼによるタグ配列の挿入を模式的に示す。アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列("NNNNNN"で表示)を持つ。アンカー配列のこの塩基は、鋳型核酸の対応相補セクションとハイブリダイズする。プライマーは、新規核酸の合成を開始するように働く。もしも、合成の進行中、DNAポリメラーゼがアンカーオリゴヌクレオチドに到達すると、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列に対する新規核酸鎖合成が鋳型スイッチによって継続し、それによって、鋳型タグ配列に対して相補的なタグ配列が、新規合成核酸鎖の中に挿入される。
【0092】
本発明をさらに具体的に説明するために、二三の例示の実施態様を下記に示す。
(実施態様1)
【0093】
本実施態様は、僅かな開始量から行う、本発明によるRNA増幅に関する。この変法の模式図が第2図に見出される。
【0094】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)RTキット(QIAGEN GmbH, Hilden、ドイツ)によって逆転写される。この逆転写酵素反応(RT反応)は、ヌクレオチド、1 μMのオリゴ-dTプライマー、および10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドの存在下に行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域にRNAポリメラーゼプロモーターの配列(本例では、T7 RNAポリメラーゼプロモーター)を、3'末端領域には8-マーのランダム配列を含む。次いで、このcDNAは、MegaScript Kit(登録商標)プロトコール(Ambion (Europe) Ltd., Huntington、英国)に従ってインビトロ転写において挿入される。この時、僅かな開始量を強力に増幅してセンス方向の全体RNAとする。
【0095】
前述の実験法の変法として、アンカーオリゴヌクレオチドは、タグ配列の挿入の外に、DNA合成の開始を起動するように使用し、従って、鋳型核酸(アンカー配列)とハイブリダイズする部分が、新規合成鎖のプライマーとして機能するようにすることも可能である。この場合、アンカーオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼによって伸長が可能な3'末端、例えば、遊離3'-OH末端を含んでいなければならない。
【0096】
前述の実験過程のさらに別の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある配列、または配列の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。さらに別の修飾では、オリゴ-dTプライマーの代わりに、ランダム、変性、または特異的プライマーが使用される。
【0097】
前述の実験過程のさらに別の修飾では、標的核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。このようにして、ゲノムの任意の配列をRNAに変換することが可能である。
(実施態様2)
【0098】
本実施態様は、本発明によるRNA増幅に関する。実施態様1によるRNA増幅と違って、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成核酸の3'末端のタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって新規合成核酸の5'末端に挿入される。プライマータグ配列、および、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の両方ともプロモーター配列を含む。これによって、新規合成核酸の3'末端と5'末端のタグ配列同士は、プロモーター範囲において互いに相補的とされる。新規合成核酸の3'末端が、新規合成核酸鎖の5'末端とハイブリダイズした後、今度はRNAポリメラーゼがこの2本鎖プロモーターに結合可能となり、インビトロ転写が起動される。第1鎖cDNA合成時、プロモーター配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、新規合成核酸鎖に挿入される、RNA増幅の模式図が図3に示される。
【0099】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)によって逆転写される。この逆転写酵素反応(RT反応)は、RTバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、およびアンカーオリゴヌクレオチド(10 μM)によって行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域にT7 RNAポリメラーゼプロモーターの配列を、3'領域には8-マーのランダム配列を含む。この反応では、アンカーオリゴヌクレオチドは同時にプライマーとしても機能する、すなわち、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチド自体がプライマーとして機能する場合には、プライマータグ配列と見なされる。37℃で60分のRT反応時間後、反応混合物を95℃で50分加熱する。その後、このcDNAは、MegaScript Kit(登録商標)プロトコール(Ambion)に従ってインビトロ転写において挿入される。この時、僅かな開始量を強力に増幅してセンス方向の全体RNAとする。
【0100】
前述の実験過程の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドは、別のRNAポリメラーゼプロモーターと共に使用することも可能である。
【0101】
前述の実験過程の第2の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドはまた、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある転写物、または転写物の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。
【0102】
前述の実験過程の第3の修飾として、標的核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。このようにして、例えば、ゲノムの任意の配列をRNAに変換することが可能である。
(実施態様3)
【0103】
実施態様3は再びRNA増幅であるが、実施態様2に記載されるRNA増幅の修飾に関する。違いは、新規合成DNA鎖が、3'突出末端によってヘアピン構造にハイブリダイズすることである。この突出末端は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸の中に挿入される。3'突出末端を用いることによって、RNAポリメラーゼは、転写時、5'後退末端において所謂鋳型スイッチを刺激し、これが、同じ配列の多数コピーを連続して含むRNA分子(コンカテマー)をもたらす。RNA増幅の模式図を図4に示す。図において、プロモーター配列は、第1鎖cDNA合成の際に、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。従って、プロモーター配列から成る、鋳型タグ配列5'は、少なくとも1個のさらに別の塩基を持つ。これは、5'末端から突出し、新規合成核酸の3'末端および5'末端とハイブリダイズする。
【0104】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)(QIAGEN)によって逆転写される。この逆転写酵素反応(RT反応)は、RTバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、アンカーオリゴヌクレオチド(10 μM)、およびプライマーによって行われる。プライマータグ配列と、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列とは同じである。これらは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む。しかしながら、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、3'末端に3個の余分のヌクレオチドを持つ。37℃で60分持続するRT反応後、反応混合物を95℃で50分加熱する。その後、このcDNAは、MegaScript Kit(登録商標)プロトコール(Ambion)に従ってインビトロ転写において挿入される。この時、僅かな開始量を強力に増幅してセンス方向の全体RNAとする。
【0105】
前述の実験過程の修飾として、アンカーヌクレオチドは、例えば、別のRNAポリメラーゼプロモーターと共に使用することが可能である。
【0106】
前述の実験過程の第2の修飾によれば、アンカーオリゴヌクレオチドはまた、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある転写物、または転写物の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。
【0107】
前述の実験過程の第3の修飾では、標的核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。このようにして、例えば、ゲノムの任意の配列をRNAに変換することが可能である。
(実施態様4)
【0108】
本実施態様は、所謂ローリングサークル増幅(RCA)によるシグナル増幅のためのアンカーオリゴヌクレオチドに関する。この処理過程の目的は、DNAまたはRNAを鋳型核酸としてインビトロDNA合成することによって、ある配列、または配列グループから出発するシグナルを増幅することである。本発明による方法では、鋳型核酸にハイブリダイズすることが可能なアンカー配列を有するアンカーオリゴヌクレオチドが必要とされる。その際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、環状核酸分子(標的円)の配列セクションと同一であり、そのため、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成鎖に挿入されたタグ配列は、その3'末端によって、標的円にハイブリダイズし、その後のRCAにおけるプライマーとして機能する(図5の模式図)。
【0109】
100 ngの全体RNAが、Omniscript(登録商標)(QIAGEN)、RTバッファー、dNTP、1 μMのアクチンプライマー(図5では"Spec. Seq"と表示)、およびβ-アクチンアンカーオリゴヌクレオチド(アンカーオリゴヌクレオチドのβ-アクチン配列は、図5では"anchor"と表示)によって、Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。β-アクチンアンカーオリゴヌクレオチドは、一方では、アンカー配列結合β-アクチン転写物、他方では、1本鎖DNAファージM13由来の鋳型タグ配列を有する。β-アクチンプライマーの配列は、転写物のβ-アクチンアンカーオリゴヌクレオチドの結合部位に対し3'に結合する。cDNA合成において、DNAファージM13のローリングサークル増幅においてプライマーとして働くタグ配列が挿入される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールに従って精製される。ローリングサークル増幅は、phi29 DNAポリメラーゼ、バッファー、ヌクレオチド、およびM13 DNAを含む50 μlの反応バッチにおいて実行する。開始量を強力に増幅してM13 DNAとする。
【0110】
前述の実験過程の修飾として、例えば、アンカーオリゴヌクレオチドを、新規合成核酸の3'末端のタグ配列が、別の標的円に結合して、その標的円におけるプライマーとして機能するように用いることも可能である。
【0111】
前述の実験過程の第2修飾として、ランダム、変性、または他の特異的配列を持つアンカーオリゴヌクレオチドを、アンカー配列として使用することが可能であり、および/または、新規核酸の合成を、ランダム、変性、または他の特異的、またはオリゴ-dTプライマーによって活性化することも可能である。
【0112】
前述の実験過程の第3の修飾によれば、鋳型核酸としてRNAの代わりに、ゲノムDNAまたはその他のDNAを使用することも可能である。
(実施態様5)
【0113】
この新たな実施態様はDNA増幅に関する。本発明のこの実施態様は、実施例1(下記参照)に示される工程に相当する。ここでも、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成核酸の3'末端のタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって新規合成核酸の5'末端に挿入される。しかしながら、実施例1とは違って、本実施態様では、連結反応の前に、鋳型核酸からの新規合成核酸鎖の分離は行われない。実施例1と同様に、連結産物は、共にタグ配列に融合される二つの配列から成る。これらは、鎖分離の後、RCAによって増幅することが可能である(図8の模式図)。
【0114】
100 ngのgDNAが変性される。ポリメラーゼ反応が、1本鎖に対して、ここではOmniscript(登録商標)(QIAGEN)によって実行される。このポリメラーゼ反応は、適当なバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、プライマー、およびアンカーヌクレオチド(10 μM)の存在下に行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域に特異的配列(ここではT7プロモーター)、および3'領域に8-マーのランダム配列を含む。この実施態様では、使用されるプライマーと、アンカーオリゴヌクレオチドとは同一配列を有する。37℃で60分の反応時間後、DNAをT4リガーゼで連結する。得られた連結産物を95℃に加熱し、次いで、REPLI-g(登録商標)キット(QIAGEN)でRCA反応において増幅する。このようにして、開始量を強力に増幅してgDNAとする。
【0115】
前述の実験過程の修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドが、例えば、別の鋳型タグ配列と用いられる。
【0116】
前述の実験過程の第2修飾として、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、ある配列、または配列の中の特定グループのみが増幅されるようにしてもよい。さらに、アンカー配列は、別の長さを持ってもよい。
【0117】
後述の実施例1は、さらに別の実施態様も含むことがある。例えば、実施例1に記載される実験過程に対するある修飾では、別の鋳型タグ配列を有するアンカーオリゴヌクレオチドが使用される。
【0118】
実施例1に記載される実験過程のさらに別の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカー配列の領域に、例えば、特異的または変性的配列を含み、それによって、あるたった一つの配列、または配列の中の特定グループのみが増幅される。さらに、アンカー配列は、別の長さを持ってもよい。
【0119】
実施例1に記載される実験過程の第3の修飾では、リガーゼ反応時にDNAポリメラーゼが存在してもよい。これは、DNAポリメラーゼ活性の外にエキソヌクレアーゼ活性を有していてもよい。例えば、新規合成核酸の長さが大きい場合、分子内ハイブリダイゼーションでは平滑末端が形成されず、粘着末端が形成された場合、得られたギャップは、ポリメラーゼで埋めることが可能である。
【0120】
実施例1に記載される実験過程の第4の修飾では、リガーゼ反応の際、オリゴヌクレオチドが存在してもよい。このオリゴヌクレオチドは、分子内ハイブリダイゼーションによって平滑末端ヘアピン構造を形成し、その後、ヘアピン構造にハイブリダイズする新規合成核酸の平滑末端に連結されて、閉じた環状核酸分子を形成する。
(実施態様6)
【0121】
本実施態様は、メチル化DNAセクションのDNA増幅に関する。この増幅形は実施例1に従って始まる(下記参照)。本実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成核酸の3'末端に挿入されるタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって新規合成核酸の5'末端に挿入される。プライマータグ配列と、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列とは同じ配列を含む。これによって、新規合成核酸の3'末端と5'末端のタグ配列同士は、互いに相補的とされる。部分的にメチル化されたDNAに対して相補的な新規核酸鎖の合成後、該核酸鎖はメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによって切断処理される。その後、95℃で5分インキュベートして鎖分離を実行する。
【0122】
新規合成核酸の3'末端が、新規合成核酸鎖の相補的5'末端とハイブリダイズした後、未切断の新規合成鎖を有する、平滑な、2本鎖末端を持つヘアピン構造が形成される。このような2本のヘアピンループが、ダンベル型環状DNA分子が形成されるように、「平滑末端」連結において連結される。このようにすると、メチル化DNAはRCAで増幅されるが、非メチル化DNAは増幅されない(図9の模式図)。
【0123】
実験過程の第4実施態様では、オリゴヌクレオチドが、平滑末端ヘアピン構造が分子内ハイブリダイゼーションによって形成されるように、リガーゼ反応の際に存在し、その後、該ヘアピン構造にハイブリダイズする新規合成核酸の平滑末端に連結されて、閉じた環状核酸分子となる。
【0124】
100 ngのgDNAが変性される。ポリメラーゼ反応が、1本鎖に対して、ここではOmniscript(登録商標)(QIAGEN)によって実行される。このポリメラーゼ反応は、適当なバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、プライマー、およびアンカーヌクレオチド(10 μM)の存在下に行われる。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域に特異的配列(ここではT7プロモーター)、および3'領域に8-マーのランダム配列を含む。プライマーは、アンカーオリゴヌクレオチドと同一の配列を持つ。37℃で1時間の反応時間後、DNAをメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ、本実施態様ではHpaIIで、非メチル化領域だけは消化されるが、メチル化領域は無傷のまま残るように、処理する。次に、DNAは95℃で5分加熱して変性し、次にT4リガーゼで連結する。得られた連結産物をREPLI-g(登録商標)キット(QIAGEN)でRCA反応において増幅する。このようにして、開始量を強力に増幅してメチル化DNAとする。
【0125】
前述のHpaII制限酵素の使用に対する変異形として、他の酵素も使用が可能である。例えば、AatII, BcnI, Bsh1236I, Bsh1285I, BshTI, Bsp68I, Bsp119I, Bsp143II, Bsu15I, CseI, Cfr10I, Cfr42I, CpoI, Eco47III, Eco52I, Eco72I, Eco88I, Eco105I, EheI, Esp3I, FspAI, HhaI, Hin1I, Hin6I, HpaII, Kpn2I, MbiI, MluI, NotI. NsbI, PauI, PdiI, Pfl23II, Psp1406I, PvuI, SalI, SgsI, SmaI, SmuI, SsiI, TaiI, TauI, XhoI等である。
【0126】
前述の実験過程のさらに別の修飾によれば、DNAは、メチレン化感受性制限エンドヌクレアーゼによってではなく、メチル化および非メチル化両方のDNAを消化するイソチゾマー(例えば、HpaIIのイソチゾマーはMspIである)によって消化される。連結産物の増幅によって残留DNAの増幅が実現される。
(実施態様7)
【0127】
本実施態様は、本発明によるアンカーオリゴヌクレオチドの、DNAクローニングのための使用に関する。この用法では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による新規核酸鎖の合成の際に、制限エンドヌクレアーゼの制限部位が挿入される。次に、新規合成核酸鎖と、鋳型鎖との変性が、第2鎖合成によって実行され、これによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識される2本鎖配列が得られる。
【0128】
鋳型核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。従って、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、第1プライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。ある実施態様では、第1プライマーの配列の中に制限部位が必要とされる。さらに、この実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドは、制限消化の後で連結が可能となるように、その配列の中に1個以上の制限部位を含む。例えば、切断されたベクターDNAについて、例えば、クローニング目的のために、連結が実行されてもよい。
【0129】
RT反応において、1 μの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dNTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(5'末端にNotIの制限部位の配列を含む)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(5'末端にNotI制限部位の配列を含む)によって、Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。一方、アンカーオリゴヌクレオチドは、アンカーとしてハイブリダイズするものとしてランダム配列を有する。cDNA合成において、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、NotI制限部位を含む新規合成核酸鎖の3'末端に挿入される。次に、cDNAの第2鎖が、クレノウ断片、dNTP、および、その配列が、付着したアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の一部と同一のプライマーにによる標準反応において生産される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールに従って精製され、次いでNotIによって切断され、その後、NotIによって切断されたベクターによる連結が実行される(図10の模式図)。そしてベクターは、コンピテントE.coli細胞へ形質転換される。一晩インキュベートした培養体を既知の方法で精製し、分解し、プラスミドを単離する。このようにして、挿入RNAから得られたcDNAの開始量を増幅する。
【0130】
前述の実験過程の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的アンカー配列と共に使用することが可能である。
【0131】
前述の実験過程のさらに別の修飾では、cDNA合成は、その5'末端に制限酵素に対する制限部位を担うランダムまたは特異的プライマーを介して起動される。
(実施態様8)
【0132】
本実施態様は、DNA増幅における本発明によるアンカーオリゴヌクレオチドの使用に関する。この用法では、制限エンドヌクレアーゼ制限部位が、新規合成核酸鎖の合成時に、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を介して挿入される。新規合成核酸鎖および鋳型鎖の変性がその後に行われ、次に、第2鎖合成が、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成された時点で実行される。
【0133】
鋳型核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。従って、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、第1プライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。ある実施態様では、この第1プライマーの配列の中に制限部位が必要とされる。さらに、この実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドは、制限消化の後で新規合成核酸鎖の分子内連結が可能となるように、その配列の中に1個以上の制限部位を含む。
【0134】
例えば、タグ配列は、ローリングサークル増幅のプライマー結合部位として機能してもよい。このようにして、全トランスクリプトーム、またはゲノムも増幅することが可能である(図11)。
【0135】
RT反応において、0.1 μの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dATP, dCTP, dGTP, dTTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(5'末端にNotIの制限部位の配列を含む)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドによって、Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。一方で、アンカーオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズするアンカーとしてランダム配列を有し、他方では、同様にNotI制限部位を含む鋳型タグ配列を有する。cDNA合成では、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、NotI制限部位を含む新規合成核酸の3'末端に挿入される。次に、cDNAの第2鎖が、クレノウ断片、dNTP、および、その配列が、付着したアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の一部と同一のプライマーによる標準反応において生産される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールによって精製され、次いでNotIによって切断される。次に、このDNAは、1000 μlの連結反応においてT4リガーゼによって連結され、それによって主に環状DNA分子が形成される。得られた環状DNA分子は、RCAで増やす(図11の模式図)。
【0136】
前述の実験過程の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的アンカー配列と共に使用することが可能である。さらに別の実施態様では、cDNA合成は、その5'末端に制限酵素に対する制限部位を含むランダムまたは特異的プライマーをによって起動される。
(実施態様9)
【0137】
本実施態様も、大型分子を生産するために、核酸の中に制限エンドヌクレアーゼの制限部位を挿入するためのアンカーヌクレオチドの使用に関する。しかしながら、実施態様8は、環状DNA分子に関するものであったが、実施態様9は、直線状DNA分子の生産に関する。標的核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。従って、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、第1プライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。ある実施態様では、この第1プライマーの配列の中に制限部位が必要とされる。さらに、この実施態様では、アンカーオリゴヌクレオチドは、制限消化の後で新規合成核酸鎖の分子内連結が可能となるように、その配列の中に1個以上の制限部位を含む(図12に模式図が見られる)。
【0138】
RT反応において、0.1 μの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dATP, dCTP, dGTP, dTTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(5'末端にNotIの制限部位の配列を含む)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドによって、標準的Omniscript(登録商標)プロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。一方で、アンカーオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズするアンカーとしてランダム配列を有し、他方では、同様にNotI制限部位を含む鋳型タグ配列を有する。cDNA合成では、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって、NotI制限部位を含む新規合成核酸の3'末端に挿入される。次に、cDNAの第2鎖が、Omniscript(登録商標)、dNTP、および、その配列が、付着したアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の一部と同一のプライマーによる標準反応において生産される。このcDNAは、QIAquick(登録商標)(QIAGEN)標準プロトコールによって精製され、次いでNotIによって切断される。この反応混合物は65℃で5分間加熱され、NotIを不活性化する。次に、分液を、20 μlの連結反応においてT4リガーゼによって連結されコンカテマーとする。この連結産物を、精製DNA用標準的Repli-g(登録商標)プロトコール(QIAGEN)に従って増幅する。
【0139】
前述の実験過程の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的アンカー配列と共に使用することが可能である。さらに別の修飾では、cDNA合成は、ランダムまたは特異的プライマーから開始させてもよい。
(実施態様10)
【0140】
本実施態様は、リアルタイムPCRにおいてDNAを検出するためのアンカーオリゴヌクレオチドの挿入に関する。本発明の方法に関するこの実施態様では、プライマー結合部位が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の中に挿入される。さらに、新規合成核酸の中に挿入されるタグ配列は、これから3'側のプライマー結合部位に対するプローブ結合部位として機能する。これによって、リアルタイムPCRにおいて合成核酸分子の定量が可能となる。標的核酸としてDNAまたはRNAの使用が可能である。RNAの場合、鋳型スイッチに従って、DNA合成が、例えば、プライマー結合部位を含むタグを有する第1オリゴ-dTプライマーから始まってアンカーオリゴヌクレオチドの5'末端まで実行されると、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって新規合成核酸の3'末端に挿入される。このリアルタイムPCRは、SYBRグリーンRT-PCRキット(QIAGEN)によって定量することが可能である。この方法のある修飾では、プローブ依存の、リアルタイムPCRも実行することが可能である。cDNAのリアルタイムPCR分析用の調製反応が図13に模式的に示される。この反応では、プローブとプライマー結合部位とが、新規核酸鎖合成の際、新規合成鎖の中に挿入される。
【0141】
RT反応において、0.01 μgの全体RNAが、逆転写酵素、RTバッファー、dNTP、1 μMのオリゴ-dTプライマー(プライマー結合部位を含む)、および、1 μMのアンカーオリゴヌクレオチドによって、標準的RTプロトコールに従って、cDNAに書き換えられる。アンカーオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズするアンカーとしてランダム配列、および、鋳型タグ配列を含む。このため、プライマーとプローブ結合部位は、新規合成核酸の3'末端に挿入される。ここで、リアルタイムPCRが、QuantiTect(登録商標)試薬(QIAGEN)、および、付着させたプライマー結合部位にハイブリダイズするプライマーによるリアルタイムPCRにおいて実行される。核酸は、増幅中、核酸基準と比較することによって定量される。
【0142】
前述の実験過程のさらに別の修飾では、アンカーオリゴヌクレオチドは、例えば、特異的、または変性的配列と共に使用することが可能である。さらに別の修飾では、cDNA合成は、ランダムまたは特異的プライマーから開始させてもよい。
(実施態様11)
【0143】
本実施態様は、トランスクリプトームまたはゲノム断片の融合のためのアンカーオリゴヌクレオチドに関する。過程における本変法の目的は、2個以上の新規合成核酸を融合するために、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を通じて新規合成核酸の中に融合部位を挿入することである。これは、例えば、進化的過程によって実行可能であるし、あるいはまた、DNAまたはRNAを鋳型核酸としてSAGEによって実行することも可能である。図14は、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列が、新規合成鎖にどのように相補的に挿入されるかを模式的に示す。(AT)nタグを含む第1オリゴ-dTプライマー、および、(N)nをアンカー配列として、さらに、同様に(AT)n配列を鋳型タグ配列として含むアンカーオリゴヌクレオチドからスタートして、(AT)nタグが、新規合成核酸の両端に生産される。この両端は互いにハイブリダイズすることが可能である。2個以上の新規合成核酸鎖の両端がハイブリダイズすると、環状または直線状集合体が形成される。続くポリメラーゼおよびリガーゼ反応において、個々の分子が互いに共有的に直線的に結合し、融合分子が形成される。
【0144】
ポリメラーゼ反応において、0.01 μgの全体RNAが、T4ポリメラーゼ、polバッファー、dNTP、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチドと接触させられる。この特別の場合では、アンカーオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ反応のプライマーとしても機能し、配列(AT)10N8(ここでは、(AT)10配列と、n=8のランダムアンカー配列が使用される)を挿入する。反応は37℃で60分実行される。続いて、反応混合物を95℃で5分加熱すると、DNAは変性し、ポリメラーゼは不活性化する。DNA分子を再度ハイブリダイズさせると、A-T末端は互いにハイブリダイズする。DNAポリメラーゼ(T4ポリメラーゼ)を添加すると、両端は完全に結合する。続くT4リガーゼによる連結反応において互いに共有的に結合された融合DNA分子が形成される。得られた大型分子は、MDA(REPLI-g(登録商標)、QIAGEN)によって増幅される。
【0145】
本発明は、下記の実施例においてさらに詳細に記述される。
【実施例1】
【0146】
本実施例はDNA増幅に関する。本発明による増幅のこの実施態様は、実施態様2に対応するRNA増幅に見られるものと同じ工程で始まる。本実施例では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸の3'末端に挿入されるタグ配列の外に、タグ配列が、その5'末端にタグ配列を持つプライマーによって、新規合成核酸の5'末端に挿入された。プライマータグ配列も、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列も同一配列を含んでいた。このために、新規合成核酸の3'および5'末端のタグ配列は互いに相補的となった。新規合成核酸鎖の3'末端が、新規合成核酸鎖の、相補的5'末端とハイブリダイズすると、平滑的な、2本鎖末端を含むヘアピン構造が形成される。二つのこのようなヘアピンループが、「平滑末端」連結において連結され、ダンベル型の、環状DNA分子が形成された。これをRCAによって増幅した(図6の模式図)。
【0147】
16通りの異なる実験において、各100 ngにつき、RNAを、逆転写酵素Sensiscript(登録商標) (QIAGEN)によるポリメラーゼ反応で変換した。このポリメラーゼ反応は、適当なバッファー、ヌクレオチド(0.5 mM)、およびアンカーオリゴヌクレオチド(10 μM)の存在下に実行した。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、5'領域に特異的配列(ここではT7 RNAポリメラーゼプロモーター)、および3'領域に8-マーのランダム配列を含んでいた。37℃で1時間の反応時間後、反応混合物を95℃で5分加熱した。次にT4リガーゼを用いてDNAを連結した。得られた連結産物は、REPLI-g(登録商標)キット(QIAGEN)でRCA反応において増幅した。このようにして、開始量を強力に増幅してcDNAとした。いずれの場合も、60 μgを超えるDNAが形成された(図7参照)。
【実施例2】
【0148】
本実施例では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列が、新規合成鎖の3'末端の合成のための鋳型として機能することが示される。この実験で挿入されるアンカーオリゴヌクレオチドとプライマーとはその配列が同じである。アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーのハイブリダイズ範囲は、3'末端における8-マーのランダム配列であった。アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、プライマータグ配列は共に、tag7配列を持っていた。20 μlの逆転写反応を、100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、100 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、Sensiscript(登録商標) RTキット(QIAGEN)、および、プライマーとしても機能する10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon Biotechnologies, Inc.)を有するRTバッファーにおいて実行した。反応は37℃で60分行った。この逆転写反応の後、配分を分割した。cDNA反応配分の半分は、プライマーとしても機能するアンカーオリゴヌクレオチドを除くために、精製プロトコールに従ってMinElute キット(QIAGEN)で精製した。この精製DNAを10 μlの容量で溶出した。リアルタイムPCRで、同量の精製および未精製cDNAを、別々の反応容器において、増幅し、定量した。この実験では、配列
【0149】
aat tct aat acg act cac tat agg gag aag gnn nnn nnn
を用いた。リアルタイムPRCは、下記のプライマーを用いて実行した。すなわち、
【0150】
aat tct aat acg act cac tat agg
【0151】
リアルタイムPCRは、QuantiTect SYBR Greenプロトコール(QIAGEN)に従ってABI Prism 7700において行った。PCR断片のリアルタイムPCR分析は図15に見られる。新規合成核酸の両方(精製または未精製)について、同じCT値が達成された。
【0152】
これは、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、最初から、第2鎖合成時(ここでは、PCR時に実行される)挿入されなかったことを意味する。なぜなら、アンカーオリゴヌクレオチドは、精製の結果、PCR時、反応混合物の精製プローブの中にはもはや存在しないからである。従って、tag7配列は、新規合成鎖の合成時に鋳型スイッチによって逆転写酵素によって既に挿入されている。
【実施例3】
【0153】
本実験は、タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の3'末端に、3'末端がブロックされた場合も、すなわち、3'末端がポリメラーゼによって伸長不能の場合も挿入されることを示した。これは、鋳型タグ配列が、新規核酸鎖の合成において鋳型スイッチによる鋳型としても機能すること、および、アンカーオリゴヌクレオチドは、第2鎖合成のためのプライマーとしては使用されないことを意味する。
【0154】
20 μlの逆転写反応を、100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、100 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、Sensiscript (QIAGEN)、1 μM のβ-アクチンプライマー(Operon)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon)を用い、Sensiscript標準プロトコールに従って実行した。反応は37℃で60分行った。アンカーオリゴヌクレオチドは、伸長不能の閉塞3'末端(逆方向塩基G = dG-ref-Q)を持ち、さらに、3'末端(アンカー配列)に8-マーのランダム配列と、5'末端に鋳型タグ配列(ここでは、T7P配列)を含んでいた。
【0155】
T7P-N8 block: AATTCTAATACGACTCACTA TAGGGAGAAGGNNNNNNNN-dG-ref-Q
T7P-N8: CAATTCTAATACGACTCACTA TAGGGAGAAGGNNNNNNNNG
T7P: AATTCTAATACGACTCACTA TAGGGAGAAGG
β-actin: GTCTCAAGTCAGTGTACAGG
【0156】
比較として、同じ実験を、その他は同じ配列を持つ、閉塞されていないアンカーオリゴヌクレオチドを用いて行った。
【0157】
RT反応で生産されたcDNAを、様々なPCR、すなわち、(a)β-アクチンおよびT7プライマー、または、(b)β-アクチンプライマーのみが供給されるPCRで増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。PCR断片のゲル分析が図16に見られる。kbラダー(1 kbラダー、Invitrogen GmbH)を標識として用いた。PCRに両プライマー(β-アクチンおよびT7プライマー)を用いた場合、cDNA増幅体は、350 bpのサイズにのみ認められた。従って、cDNA合成が、閉塞または未閉塞アンカーオリゴヌクレオチドによって実行されたかどうかは関与していない。すなわち、cDNA増幅体は、両方のアンカーオリゴヌクレオチド(閉塞/未閉塞3'末端)で得られた。一方、PCRをβ-アクチンプライマーのみで行った場合、増幅体は得生産されなかった。
【0158】
このことは、タグ配列は、アンカーオリゴヌクレオチドの伸長によってではなく、逆転写酵素による第1鎖cDNA合成の際に、鋳型スイッチによって新規合成核酸の中に既に挿入されたことを意味する。なぜなら、対応する第2鎖合成のために必要とされるはずの、アンカーオリゴヌクレオチドにおける遊離3'-OH末端は必要とされないからである。
【実施例4】
【0159】
本実施例は、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端における種々の長さのアンカー配列が、様々な効率の下に鋳型核酸にハイブリダイズすることができることを示した。
【0160】
逆転写反応を、100 ngの全体RNA、または0 ngの全体RNA(陰性コントロール)、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、4UのOmniscript RT (QIAGEN)、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon)を用いて実行した。本実験では、アンカーオリゴヌクレオチドは、同時にプライマーとしても機能した。反応は37℃で60分行った。アンカーオリゴヌクレオチドは、遊離3'-OH末端を担い、さらに、3'末端に8個以上の塩基から成るランダム配列(アンカー配列)、および鋳型タグ配列(T7)を含んでいた。
【0161】
種々の長さ(N8、N10、N12で、ここにN=A、C、G、またはT)のアンカー配列を持つ、様々のアンカーオリゴヌクレオチドを用いた。新規合成核酸は、T7配列のみを含むプライマーによるPCRにおいて増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。さらに別のPCRにおいて、同じ新規合成核酸を、β-アクチントランスクリプターゼを特異的に認識するプライマーを用いて増幅した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0162】
T7: gga tga cga cgc agt att g
s-actin primer: gtctcaagtcagtgtacagg
gtga tagcattgctttcgtg
T7N8: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nn
T7N10: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn n
T7N12: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn nnn
【0163】
PCR断片のゲル分析が図17に見られる。1 kbラダー(実施例3参照)をサイズマーカーとして用いた。陰性コントロールでは増幅体は認められなかった。なぜなら、逆転写反応においてRNAが存在しなかったからである。T7プライマーによる増幅によって、200 bpから1500 bpのサイズを持つ様々な大きさの断片が得られた。アンカー配列の長さが増すと、サイズも量も大きくなった。β-アクチンプライマーによって、予期したサイズの核酸断片が増幅された。
【0164】
以上から、アンカーオリゴヌクレオチドは、新規合成核酸の3'末端、および5'末端にタグ配列を導入するために、それ自体で、かつ、共同して、プライマーとして使用が可能であることが結論される。さらに、ランダムアンカー配列が長ければ長いほど、これらの配列が、鋳型核酸と特異的にハイブリダイズする頻度が低くなる。なぜなら、各配列の統計的頻度は、アンカーオリゴヌクレオチドのランダムアンカー配列の集団の中で減少していくからである。しかしながら、一方で、長いランダムアンカー配列ほど、鋳型核酸により効率的にハイブリダイズする。これは、T7配列のプライマーを用いたPCRによって得られる増幅体の量と長さから認めることができる(図17)。
【実施例5】
【0165】
本実施例は、各種逆転写酵素が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による新規合成核酸の3'末端へのタグ配列の付着を鋳型スイッチによって促進することを示す。
【0166】
逆転写反応を、100 ngの全体RNA、または1 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、各種逆転写酵素、および、10 μMのアンカーオリゴヌクレオチド(Operon)を用いて実行した。本実験では、アンカーオリゴヌクレオチド(T7 N6 T4)は、同時にプライマーとしても機能する。反応は37℃で60分行った。アンカーオリゴヌクレオチドは、遊離3'-OH末端を担い、さらに、3'末端に8-マーのランダム配列とそれに続く4T(アンカー配列)、および鋳型タグ配列(T7)を含んでいた。
【0167】
Omniscript (QIAGEN)、Sensiscript (QIAGEN)、MMLV RT (Invitrogen)、またはRNアーゼH活性を含まないMMLV RT(Superscript II、図18ではSSIIの省略形で表す)によって各反応を実行した。
【0168】
新規合成核酸は、T7配列のみを含むプライマーによるPCRにおいて増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。さらに別のPCRにおいて、同じ新規合成核酸を、β-アクチントランスクリプターゼを特異的に認識するプライマーを用いて増幅した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0169】
T7: gga tta cga ctc agt att g
T7 N6 T4: gga tta cga ctc agt att g nnnnnn tttt
s-actin primer: gtctcaagtcagtgtacagg
gtga tagcattgctttcgtg
【0170】
PCR断片のゲル分析が図18に見られる。1 kbラダー(実施例3参照)をサイズマーカーとして用いた。T7プライマーによる増幅によって、約300 bpから2500 bpのサイズを持つ様々な大きさの断片が得られた。β-アクチンプライマーによって、予期したサイズの核酸断片が増幅された。全ての逆転写酵素によって、第1鎖cDNAの中に、タグ配列が見事に挿入された。
【0171】
各種の逆転写酵素が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を通じて、新規合成核酸の中にタグ配列を挿入することが可能であると結論される。
【実施例6】
【0172】
本実施例では、アンカーオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション部位間の距離が変更可能であることが示される。以上から、新規核酸鎖の中にタグ配列を挿入するために、複数のアンカーオリゴヌクレオチドの複数の鋳型タグ配列を用いた。
【0173】
逆転写反応を、0 ng(陰性コントロール)、1 ng、または100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、4UのOmniscript(登録商標) (QIAGEN)、および、各種アンカーオリゴヌクレオチド(いずれの場合も10 μM)を用いて実行した。この特異的ケースでは、アンカーオリゴヌクレオチドはプライマーとしても働く。反応は37℃で30分行った。各アンカーオリゴヌクレオチドは、遊離3'-OH末端を担い、3'末端において、Tn配列(n = 0, 1, 2, または3)の間に配置される6-マーのランダム配列、および、5'末端に鋳型タグ配列(ここではT7と表示される)を含んでいた。プライマーは、0から3の間に位置する、3'末端のオリゴ-T領域の長さ(T0, T1, T2, T3)が異なっていた。
【0174】
新規合成核酸鎖は、T7配列とハイブリダイズするプライマーによるPCRで増幅した。PCRは、QIAGENから支給されるTaq PCRハンドブックによる終末点PCR用の標準プロトコールに従った。さらに別のPCRにおいて、同じ新規合成核酸を、β-アクチントランスクリプターゼを特異的に認識するプライマーを用いて増幅した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0175】
T7: gga tga cga cgc agt att g
T3: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn ttt
T2: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn tt
T1: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn t
T0: gga tga cga cgc agt att g nnnnnn
s-actin primer: gtctcaagtcagtgtacagg
gtga tagcattgctttcgtg
【0176】
PCR断片のゲル分析が図19に見られる。1 kbラダー(実施例3参照)をサイズマーカーとして用いた。T7プライマーによる増幅によって、約300 bpから2500 bpのサイズを持つ様々な大きさの断片の集団が得られた。β-アクチンプライマーによって、予期した一定サイズの断片が増幅された。本実施例で用いた全てのアンカーオリゴヌクレオチドにおいて、タグ配列が、鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の中に見事に挿入された。これは、タグ配列にハイブリダイズするプライマーによって新規合成核酸が見事に増幅されることから明白である(図19参照)。これらの増幅体は、アンカーオリゴヌクレオチドの3'末端においてチミン塩基の数を増すことによってアンカー配列の特異性を上げることによって平均して大きくなった。さらに特異性の増大と共に、プライマーディマー産物の量が減少した(図19で、RT反応においてRNAを全く含まない"0 ng"溶液における反応産物参照)。
【0177】
アンカー配列の特異性を増すことは、アンカーオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション距離を延ばすことが結論される。さらに、アンカー配列の特異性の増大と共に非特異的プライマーディマー産物は減少する。
【実施例7】
【0178】
本実施例に基づいて、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によるタグ配列挿入効率をリアルタイムPCRで調べた。従って、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列を、新規合成核酸鎖に対するタグ配列の挿入のために用いた。
【0179】
逆転写反応を、100 ngの全体RNA、0.5 mM dNTP、10 UのRNアーゼ阻害剤(Promega)、4UのSensiscript(登録商標)(QIAGEN)、および、各種アンカーオリゴヌクレオチド(いずれの場合も10 μM)、プライマー(Operon)を用いて、Sensiscriptキットハンドブック(QIAGEN)に従って実行した。反応は37℃で30分行った。
【0180】
いずれの場合も、アンカーオリゴヌクレオチドは全て、遊離3'-OHを担い、さらに3'領域にアンカー配列としてランダム配列を、5'領域に鋳型タグ配列(gga tga cga cgc agt att g)を含んでいた。この新規合成核酸を増幅し、リアルタイムPCRで定量した。この場合、タグ配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして挿入した。下記のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0181】
T7: gga tga cga cgc agt att g
N8: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nn
N10: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn n
N12: gga tga cga cgc agt att g nnn nnn nnn nnn
G2 N6: gga tga cga cgc agt att ggg nnn nnn
G4 N6: gga tga cga cgc agt att ggg gg nnn nnn
【0182】
PCR断片のリアルタイムPCR分析が図20に見られる。リアルタイムPCRは、QIAGENから発行されるQuantiTect SYBRグリーンキットのプロトコールに従った。全てのアンカーオリゴヌクレオチドにおいて、タグ配列は新規合成核酸鎖に見事に挿入された。次に、得られた新規合成核酸鎖を、その新規合成核酸鎖のタグ配列にハイブリダイズするプライマーによるリアルタイムPCRで分析したところ、結果は良好であった。
【0183】
これから、新規合成核酸鎖に対するタグ配列挿入効率は、リアルタイムPCRによって定量可能であることが認められる。この特別の実験では、ランダムアンカー配列を12塩基まで伸長したところ、挿入の効率は改善された(図20、プライマーN12を参照)。
【実施例8】
【0184】
本実施例は、全ゲノム増幅が、本発明による方法で実施が可能であることを示した。これと関連して、gDNAは鋳型核酸として機能する。本実施例でも、タグ配列は、ポリメラーゼ反応において、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸鎖の中に挿入された。
【0185】
アンカーオリゴヌクレオチドT7P N8がアンカーオリゴヌクレオチドとして用いられた。このアンカーオリゴヌクレオチドは、5'末端に、鋳型タグ配列としてT7プロモーター配列を含む。3'領域は、8-マーランダム配列を含んでいた。
【0186】
最初、HeLa細胞由来のcDNA 120 ngを、T7P N8オリゴヌクレオチド(10 μM)、反応バッファー、およびdNTP (0.5 mM)の存在下に、95℃で5分変性させた。それとは別に、同じ配列(T7P N8ブロック)を持つ、閉塞(すなわち、ポリメラーゼでは伸長不能な3'末端を持つ)アンカーオリゴヌクレオチドを、T7P N8オリゴヌクレオチドの代わりに挿入した。別の代替えとして、8-マーのランダムプライマーも用いた。
【0187】
T7P N8:
CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GGN NNN NNN N
T7P N8 block:
CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GGN NNN NNN N -dG-ref Q.
N8:
NNN NNN NN
【0188】
dG-ref Qは、ポリメラーゼによっては伸長されない、逆向きのグアニン塩基である。
【0189】
DNAを変性した後、試薬混合物を室温に冷却した。次に、4UのMMLV(RNアーゼHマイナス)(Superscript II, Invitrogen)を加え、溶液を37℃で1時間インキュベートした。1 μlの反応混合液をPCRに移した。PCRは、新規合成核酸鎖のタグ配列にハイブリダイズすることが可能なプライマー(ここでは、プライマーT7P)、dNTP、PCRバッファー、およびtaqポリメラーゼを有する20 μl溶液中で40サイクル行った。
【0190】
T7P:
CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GG
【0191】
本実験の結果は、アンカーオリゴヌクレオチドによるタグ配列の挿入は可能である、すなわち、DNAが鋳型に使用されるならば可能であることを示す。従って、本発明による方法において全ゲノム増幅は可能である。3'末端が閉塞されたアンカーオリゴヌクレオチドを用いた場合は、新規合成核酸に対するタグ配列の挿入は不可能であった。なぜなら、この場合、アンカーオリゴヌクレオチドも、ポリメラーゼ反応の際プライマーとして機能するからである(図21参照)。
【実施例9】
【0192】
本実施例は、逆転写酵素の外にも、他のポリメラーゼも、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による、新規合成核酸鎖に対するタグ配列の挿入を促進することが可能であることを示す。
【0193】
このために、アンカーオリゴヌクレオチドT7P N8を用いた(配列:CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GGN NNN NNN N)。先ず、HeLa細胞由来のgDNA 10 ngを、T7P N8オリゴヌクレオチド(10 μM)、1xクレノウバッファー、およびdNTP (0.5 mM)と共に、95℃で5分変性させた。それとは別に、N8プライマー(配列:NNN NNN NN)を用いた。変性した試薬混合液を室温に冷却した。1 μlのSensiscript (QIAGEN)、12 U AMV逆転写酵素、または10 Uのクレノウ断片、E. coliのDNAポリメラーゼI由来を、個々の液に加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、1 μlの反応混合液をPCRに移した。PCRは、T7Pプライマー(配列:CAA TTC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGA GAA GG)、dNTP、プライマー、PCRバッファー、およびtaqポリメラーゼを有する20 μl溶液中で40サイクル行った。
【0194】
本実施例における本実験の結果(図22参照)は、他のポリメラーゼ、この場合は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片も、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による、新規合成核酸鎖に対するタグ配列の挿入を促進することが可能であることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、ポリメラーゼによるDNA合成時に見られる、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によるタグ配列の付着を模式的に示す。
【図2】図2は、RNA増幅に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、新規核酸鎖の合成時、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、プロモーター配列に対して相補的な配列が新たに合成される核酸鎖の中に挿入される。
【図3】図3は、RNA増幅に関連する、本発明によるさらに別の方法の模式図である。この方法では、新しい核酸鎖の合成時にプロモーター配列が挿入されるが、その際、プロモーター配列を含むプライマータグ配列と、プロモーター配列を含むアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される、新規合成鎖のタグ配列とが互いにハイブリダイズしてプロモーターを形成する。
【図4】図4は、RNA増幅に関連する、本発明によるさらに別の方法の模式図である。この方法では、プロモーター配列が、新規核酸鎖の合成時に挿入され、それによって、プロモーター配列を含むプライマータグ配列と、プロモーター配列を含む、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入されるタグ配列とが、互いにハイブリダイズしてプロモーターを形成する。その際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列は、プロモーター配列の5'に少なくとも1個の余分のヌクレオチド(extra nt)を持つ。
【図5】図5は、シグナル増幅に関連する、本発明による一般的に応用可能な方法の模式図である。この方法では、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列による新規核酸鎖の合成の際、タグ配列が新規合成鎖に挿入され、その際、新規合成鎖は、そのタグ配列によってその3'末端において標的円に結合し、ローリングサークル増幅によるその後のシグナル増幅においてプライマーとして機能することが可能である。
【図6】図6は、DNA増幅の模式図である。図において、RNAまたはDNAから始まる新規核酸鎖の合成において、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、プライマータグ配列に対して相補的なタグ配列が、新規合成核酸の3'末端に挿入され、そのために、新規合成核酸が、鋳型鎖から変性分離された後、ヘアピンループ構造を形成する。これらは、その後のローリングサークル増幅反応において核酸を増幅するために、連結反応に使用される。
【図7】図7は、実施例1で得られた実験結果を示す。
【図8】図8は、DNA増幅に関連する、本発明による一般的に応用可能な方法の模式図である。この方法では、RNAまたはDNAから始まる新規核酸鎖の合成の際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、タグ配列が、新規合成核酸の3'末端に挿入される。さらに、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と異なっていても、同じであってもよいタグ配列を持つプライマーが使用される。得られた2本鎖末端は連結され、その後、新規合成核酸鎖は鋳型鎖から分離されて、環状の、1本鎖核酸を形成し、これは、次に、ローリングサークル増幅によって増幅される。
【図9】図9は、メチル化DNAセクションの選択的増幅に関連する、本発明による一般的に応用可能な方法の模式図である(メチル化塩基は三角で示す)。DNAから始まる核酸合成反応の際、プライマータグ配列に対して相補的なタグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって新規合成核酸の3'末端に挿入される。核酸合成反応の後、該DNAはメチレン感受性制限エンドヌクレアーゼによって切断処理を受ける。その後、新規合成核酸鎖は鋳型鎖から分離される。次に、分子内ヘアピン構造が、切断されなかったDNAセクション、すなわち、メチル化領域に形成される。この領域は、続くローリングサークル増幅反応において核酸を増幅するために、連結反応に用いられる。
【図10】図10は、DNAクローニングに関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、制限酵素制限部位が、新規核酸鎖の合成時にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。新規合成核酸鎖と鋳型鎖の変性が続いて起こる。次に、第2鎖合成が実行され、それによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成される。
【図11】図11は、DNA増幅に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、制限エンドヌクレアーゼ制限部位が、新規核酸鎖の合成時にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。同様に、プライマーも制限エンドヌクレアーゼ制限部位を含む。適合的制限部位が、アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーによって挿入される。新規合成核酸鎖と鋳型鎖の変性が続いて起こる。次に、第2鎖合成が実行され、それによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成される。両末端の制限消化、分子内ハイブリダイゼーション、および最終的連結の後、2本鎖環状核酸が形成され、これは次にローリングサークル増幅によって増幅される。
【図12】図12は、DNA増幅に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、制限エンドヌクレアーゼ制限部位が、新規核酸鎖の合成時にアンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。同様に、プライマーも制限エンドヌクレアーゼ制限部位を含む。適合的制限部位が、アンカーオリゴヌクレオチドとプライマーによって挿入される。新規合成核酸鎖と鋳型鎖の変性が続いて起こる。次に、第2鎖合成が実行され、それによって、制限エンドヌクレアーゼによって認識可能な2本鎖配列が形成される。両末端の制限消化、続く分子内ハイブリダイゼーション、および最終的連結の後、2本鎖直線状核酸が形成され、これは次に複数分裂増幅(MDA)によって増幅される。
【図13】図13は、リアルタイムPCRによる核酸検出反応に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、プローブ/プライマーが、新規核酸鎖の合成の際、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって挿入される。
【図14】図14は、DNA分子の融合に関連する、本発明による方法の模式図である。この方法では、新規核酸鎖の合成時、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列によって、それ自身にたいして相補的な配列が、新規合成鎖の中に挿入される。すなわち、新規合成核酸鎖の3'末端が、別の新規合成鎖の3'末端に対してハイブリダイズすることが可能である。プライマータグ配列は、新規合成核酸鎖の5'末端が、別の新規合成鎖の5'にハイブリダイズ可能となるように準備される。この場合、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列と、プライマータグ配列とは同じである((AT)n)。従って、直線状または環状ハイブリダイゼーション構造が形成可能である。その後、1本鎖領域は、ポリメラーゼで充填され、1本鎖ニックは連結される。次いで、複数分裂増幅またはローリングサークル増幅を用いて、これらの配列を多重化することが可能である。
【図15】図15は、実施例2のリアルタイムPCR分析の棒グラフである。
【図16】図16は、実施例3の増幅体のゲル分析である。
【図17】図17は、実施例4の増幅体のゲル分析である。
【図18】図18は、実施例5のゲル分析である。
【図19】図19は、実施例6のゲル分析である。
【図20】図20は、実施例7のリアルタイム増幅結果に関する棒グラフである。
【図21】図21は、実施例8のゲル分析である。
【図22】図22は、実施例9のゲル分析である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の中に1個以上のタグ配列を挿入する方法であって、
(a)鋳型核酸を準備する工程;
(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の少なくとも一つの配列セクションとハイブリダイズする工程;および、
(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、アンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ部分、例えば、少なくとも一つの鋳型タグ配列に対して相補的な配列を、その3'末端に含む、新規核酸鎖を合成する工程を含み、それによって核酸の2本鎖領域が形成されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
工程(c)において生産された核酸の2本鎖領域は、続く工程(d)においてさらに処理されることを特徴とする、請求項1による方法。
【請求項3】
少なくとも1個のアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも1個のアンカー配列は3'領域に位置づけられ、少なくとも1個のアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも1個の鋳型タグ配列は、少なくとも1個のアンカーオリゴヌクレオチドの5'領域に位置づけられることを特徴とする、請求項1または2による方法。
【請求項4】
少なくとも1個の鋳型タグ配列は少なくとも1個の機能配列を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項による方法。
【請求項5】
僅かしか、または全く鎖置換活性を持たないポリメラーゼが工程(c)で使用されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項による方法。
【請求項6】
工程(c)は、それから新規核酸鎖の合成が始まるプライマーによって実行されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項による方法。
【請求項7】
核酸の中に少なくとも1個のタグ配列を挿入するための処置は、RNAの合成のために機能することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項8】
核酸に少なくとも1個のタグ配列を挿入するための方法が、DNAの合成に役立つことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項9】
タグ配列を挿入するための方法が、鋳型核酸を検出するために使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項10】
核酸を挿入するための処置が、DNA断片を融合するために使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項11】
メチル化DNAセクションが選択的に増幅されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項12】
非メチル化DNAセクションが選択的に増幅されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による処理法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項による方法におけるアンカーオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項14】
第1鎖合成において合成される核酸であって、該核酸は、第1鎖合成時に鋳型依存性に挿入されたタグ配列をその3'末端に有し、その際、タグ配列に対して相補的な配列が、鋳型核酸の一部ではないことを特徴とする、前記核酸。
【請求項15】
タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって3'末端に挿入されることを特徴とする、請求項14による核酸。
【請求項16】
3'領域においてアンカー配列を、および5'領域において鋳型タグ配列を持つアンカーオリゴヌクレオチドであって、その際、該アンカー配列は、新規核酸鎖の合成の際に鋳型核酸とハイブリダイズし、一方、鋳型タグ配列は、この鋳型核酸とはハイブリダイズしないものであり、ここで鋳型核酸の一部に対して相補的であり、その合成は、鋳型鎖のアンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列のハイブリダイズ部位の3'で始まる、新規核酸鎖の合成が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の5'末端におけるポリメラーゼの鋳型スイッチによって終了することを特徴とする、前記アンカーオリゴヌクレオチド。
【請求項1】
核酸の中に1個以上のタグ配列を挿入する方法であって、
(a)鋳型核酸を準備する工程;
(b)少なくとも一つのアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのアンカー配列を、鋳型核酸の少なくとも一つの配列セクションとハイブリダイズする工程;および、
(c)鋳型核酸に対し部分的に相補的であり、かつ、アンカーオリゴヌクレオチドの非ハイブリダイズ部分、例えば、少なくとも一つの鋳型タグ配列に対して相補的な配列を、その3'末端に含む、新規核酸鎖を合成する工程を含み、それによって核酸の2本鎖領域が形成されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
工程(c)において生産された核酸の2本鎖領域は、続く工程(d)においてさらに処理されることを特徴とする、請求項1による方法。
【請求項3】
少なくとも1個のアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも1個のアンカー配列は3'領域に位置づけられ、少なくとも1個のアンカーオリゴヌクレオチドの少なくとも1個の鋳型タグ配列は、少なくとも1個のアンカーオリゴヌクレオチドの5'領域に位置づけられることを特徴とする、請求項1または2による方法。
【請求項4】
少なくとも1個の鋳型タグ配列は少なくとも1個の機能配列を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項による方法。
【請求項5】
僅かしか、または全く鎖置換活性を持たないポリメラーゼが工程(c)で使用されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項による方法。
【請求項6】
工程(c)は、それから新規核酸鎖の合成が始まるプライマーによって実行されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項による方法。
【請求項7】
核酸の中に少なくとも1個のタグ配列を挿入するための処置は、RNAの合成のために機能することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項8】
核酸に少なくとも1個のタグ配列を挿入するための方法が、DNAの合成に役立つことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項9】
タグ配列を挿入するための方法が、鋳型核酸を検出するために使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項10】
核酸を挿入するための処置が、DNA断片を融合するために使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項11】
メチル化DNAセクションが選択的に増幅されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による方法。
【請求項12】
非メチル化DNAセクションが選択的に増幅されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項による処理法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項による方法におけるアンカーオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項14】
第1鎖合成において合成される核酸であって、該核酸は、第1鎖合成時に鋳型依存性に挿入されたタグ配列をその3'末端に有し、その際、タグ配列に対して相補的な配列が、鋳型核酸の一部ではないことを特徴とする、前記核酸。
【請求項15】
タグ配列が、アンカーオリゴヌクレオチドによって3'末端に挿入されることを特徴とする、請求項14による核酸。
【請求項16】
3'領域においてアンカー配列を、および5'領域において鋳型タグ配列を持つアンカーオリゴヌクレオチドであって、その際、該アンカー配列は、新規核酸鎖の合成の際に鋳型核酸とハイブリダイズし、一方、鋳型タグ配列は、この鋳型核酸とはハイブリダイズしないものであり、ここで鋳型核酸の一部に対して相補的であり、その合成は、鋳型鎖のアンカーオリゴヌクレオチドのアンカー配列のハイブリダイズ部位の3'で始まる、新規核酸鎖の合成が、アンカーオリゴヌクレオチドの鋳型タグ配列の5'末端におけるポリメラーゼの鋳型スイッチによって終了することを特徴とする、前記アンカーオリゴヌクレオチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
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【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−300921(P2007−300921A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−121557(P2007−121557)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121557(P2007−121557)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】
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