説明

配向膜組成物及び液晶表示素子

【課題】高温加熱処理とラビング処理を必要としない、垂直配向能に優れたむらの無い均一な配向膜を形成することが可能な配向膜組成物、及びその配向膜組成物用いた液晶表示素子を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種類以上含有することを特徴とする配向膜組成物。
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じか異なった炭素数4以上の炭化水素基、R6は炭素数4以上の炭化水素2価基、R7は−SiR8910、又は−P(=O)(OH)2、R8、R9、及びR10は同じか異なった−Cl、−OH、−OCH3、又は−OC25である。)さらに、一般式R11−R7(ここで、R11は炭素数4以上の直鎖状炭化水素基、R7は前記と同様である。)で表される化合物を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に使用する、液晶を垂直配向させる配向膜を形成する配向膜組成物、及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の一つとして、ツイステッドネマティックモードの液晶表示素子が広く使用されている。近年、視野角依存性及びコントラスト比の点で優れている、負の誘電異方性を有する液晶分子を基板に対して垂直に配向させ、電圧の印加により液晶分子を基板と平行に動作させる垂直配向モードの液晶表示素子の開発が盛んに行われている。
【0003】
液晶分子を基板に対して垂直に配向させる方法として、ポリイミドからなる配向膜をガラス基板上のITO面に設ける方法が開示されている(特許文献1〜4)。これらの方法において、垂直配向膜は、ポリアミック酸等を有機溶媒に溶解させた溶液をスピンナー等により塗布した後、120〜250℃の加熱処理によりイミド化し、さらに、垂直配向能を付与させるためにフェルト布等を用いてラビング処理を施すことにより形成されている。
【0004】
また、共役エノン構造を有したポリアミック酸等からなる液晶配向剤を用いて、垂直配向膜を設ける方法が開示されている(特許文献5)。この方法においては、配向剤を有機溶媒に溶解した溶液をスピンナー等により塗布した後、150〜250℃の加熱処理によりイミド化し、さらに、320〜450nmの紫外線を照射して垂直配向能を付与させている。
【特許文献1】特開2001−305549号公報
【特許文献2】特開2001−311080号公報
【特許文献3】特開2002−323701号公報
【特許文献4】特開2003−295194号公報
【特許文献5】特開2003−114437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法により形成される配向膜は、基板表面にTFTや配線が形成されている場合、基板表面には凹凸が存在し、その凹凸に起因した塗布むらが発生し、均一な液晶配向膜が得られないという問題があった。
また、スピンナー等により塗布した後、120〜250℃で加熱処理しているため、基板として、ガラス基板以外に可撓性のある汎用性プラスチックフィルムに適用できないという問題があった。
【0006】
さらに、ラビング法により配向能を発現させる場合、基板表面の凹凸の存在によりラビングむらが発生し、配向性が不均一となり、液晶配向の乱れが生じるという問題があった。
さらにまた、ラビング布で配向膜を擦るラビング法は静電気や微細なゴミが発生しやすく、TFTも損傷を受けやすいので、表示欠陥が発生しやすくなる。
【0007】
従って、本発明は上記従来の問題を解決するために、高温加熱処理とラビング処理を必要としない、垂直配向能に優れたむらの無い均一な配向膜を形成することが可能な配向膜組成物、及びその配向膜組成物用いた液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、配向膜組成物を、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種類以上含有する配向膜組成物とすることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明は、以下に記載する配向膜組成物と液晶表示素子に係るものであり、この発明によって前記課題が解決される。
【0009】
(1)下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種類以上含有することを特徴とする配向膜組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じか異なった炭素数4以上の炭化水素基、R6は炭素数4以上の炭化水素2価基、R7は−SiR8910、又は−P(=O)(OH)2、R8、R9、及びR10は同じか異なった−Cl、−OH、−OCH3、又は−OC25である。)
【0010】
(2)前記一般式(1)で表される化合物と、一般式R11-R7(ここで、R11は炭素数4以上の直鎖状炭化水素基、R7は前記と同様である。)で表される化合物とを含有することを特徴とする前記(1)記載の配向膜組成物。
【0011】
(3)前記(1)又は(2)に記載の配向膜組成物からなる液晶配向膜を設けたことを特徴とする液晶表示素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温加熱処理とラビング処理を必要としない、垂直配向能に優れたむらの無い均一な配向膜を形成することが可能な配向膜組成物、及び液晶配向の乱れや表示欠陥のない液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の配向膜組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種類以上含有することを特徴とする。
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じか異なった炭素数4以上の炭化水素基、R6は炭素数4以上の炭化水素2価基、R7は−SiR8910、又は−P(=O)(OH)2、R8、R9、及びR10は同じか異なった−Cl、−OH、−OCH3、又は−OC25である。)
【0014】
一般式(1)で表される化合物において、その化合物はガラス基板やプラスチックフィルム基板上に設けられたITOなどの透明電極に化学的あるいは物理的に吸着する吸着部分、すなわち置換基R7で現される部分と、基板面に対して平行な方向にπ−πスタッキングして、(すなわち、トリフェニレン基が基板に垂直な方向に配向して)安定な構造を形成して液晶分子の配向を制御する配向制御部分、すなわち置換基R1−O−、R2−O−、R3−O−、R4−O−、R5−O−及び−R6−O−を有したトリフェニレン部分とからなる。
【0015】
すなわち、吸着部分の置換基R7は、−SiR8910、又は−P(=O)(OH)2であり、置換基R8、R9、及びR10は同じか異なった−Cl、−OH、−OCH3、又は−OC25であり、ガラス基板やプラスチックフィルム基板上に設けられたITOなどの透明電極に化学的あるいは物理的に吸着することができる。
【0016】
また、配向制御部分の置換基R1、R2、R3、R4、及びR5は同じか異なった炭素数4以上の炭化水素基であり、炭素数が3以下の炭化水素では良好な垂直配向能が発現しない。具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基(イコシル基)、ヘンエイコシル基(ヘンイコシル基)、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、及びトリアコンチル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数4〜12の炭化水素基である。
【0017】
置換基R6はR1、R2、R3、R4、及びR5と同じか異なった炭素数4以上の炭化水素の2価基であり、具体的には、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコシレン基(イコシレン基)、ヘンエイコシレン基(ヘンイコシレン基)、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、及びトリアコンチレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数8〜18の炭化水素基であり、置換基R7を基板と効果的に吸着させるために、隣接する置換基R5より多い炭素数を有する炭化水素基である。
【0018】
また、本発明の配向膜組成物は、一般式(1)で表される化合物を複数用いることも可能であるが、良好な垂直配向能を発現させるためにはトリフェニレン部分と基板との距離を一定に保つために、置換基R6として同じ炭素数の炭化水素基を有した化合物を用いることが好ましい。
【0019】
一般式(1)で表される化合物は、例えば下式に示すような方法により製造することができる。
【化3】

【0020】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば以下に示す化合物を好ましく用いることができる。
好ましい化合物としては、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスブチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスペンチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘプチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスオクチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスノニルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスウンデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキスドデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキストリデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[18−(3,6,7,10,11−ペンタキステトラデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクタデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスブチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスペンチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘプチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスオクチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスノニルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスウンデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスドデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸、
[14−(3,6,7,10,11−ペンタキスブチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[14−(3,6,7,10,11−ペンタキスペンチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[14−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[14−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘプチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[14−(3,6,7,10,11−ペンタキスオクチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[14−(3,6,7,10,11−ペンタキスノニルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[14−(3,6,7,10,11−ペンタキスデシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[12−(3,6,7,10,11−ペンタキスブチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−テトラデシル]−ホスホン酸、
[12−(3,6,7,10,11−ペンタキスペンチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ドデシル]−ホスホン酸、
[12−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ドデシル]−ホスホン酸、
[12−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘプチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ドデシル]−ホスホン酸、
[12−(3,6,7,10,11−ペンタキスオクチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ドデシル]−ホスホン酸、
[11−(3,6,7,10,11−ペンタキスブチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ウンデシル]−ホスホン酸、
[11−(3,6,7,10,11−ペンタキスペンチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ウンデシル]−ホスホン酸、
[11−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ウンデシル]−ホスホン酸、
[11−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘプチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ウンデシル]−ホスホン酸、
[8−(3,6,7,10,11−ペンタキスブチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクチル]−ホスホン酸、
[8−(3,6,7,10,11−ペンタキスペンチルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−オクチル]−ホスホン酸。
【0021】
さらに、本発明の本発明の配向膜組成物として、一般式(1)で表される化合物以外に、末端に置換基R7を有する直鎖状炭化水素基を有する化合物を混合して用いることも可能である。末端に置換基R7を有する直鎖状炭化水素基としては、一般式R11-R7(ここで、R11は炭素数4以上の直鎖状炭化水素基、R7は前記と同様である)で表される直鎖状の炭化水素基を有する化合物が挙げられる。
【0022】
一般式R11-R7で表される化合物において、その化合物は一般式(1)で表される化合物と同様にガラス基板やプラスチックフィルム基板上に設けられたITOなどの透明電極に化学的あるいは物理的に吸着する吸着部分、すなわち置換基R7で現される部分と、ファンデアワールス力などにより凝集する部分、すなわち置換基R11で現される部分からなる。置換基R11は自己及び一般式(1)で表される化合物の置換基R6で表される部分と凝集するため、配向膜の構造をより安定にする機能を有する。
【0023】
置換基R11の具体例として、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基(イコシル基)、ヘンエイコシル基(ヘンイコシル基)、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、及びトリアコンチル基などが挙げられる。好ましくは、良好な垂直配向能を発現させるためには、一般式(1)におけるトリフェニレン部分と基板との距離を規定する置換基R6の炭素数と同じかそれ以下の炭素数を有するアルキル基が好ましい。
【0024】
一般式(1)で表される化合物と、R11−R7で表される化合物の好ましい混合比は、モル比で1:0.1〜1:40であり、より好ましくは、モル比で1:0.5〜1:10である。
【0025】
また、本発明の配向膜組成物は、均一な配向膜を得るために、一般式(1)で表される化合物を、又は一般式(1)で表される化合物と一般式R11-R7で表される化合物とを溶解する有機溶媒で溶解した溶液として使用することが好ましく、配向膜はその溶液中に基板を一定時間放置した後、洗浄し、室温で乾燥することにより形成される。加熱処理やラビング処理を施さなくても垂直配向性に優れたむらの無い均一な配向膜となる。
有機溶媒としては、一般式(1)で表される化合物が溶解し、乾燥の点で低沸点の有機溶媒が好ましい。
【0026】
また、本発明の配向膜組成物を用いた液晶表示素子は、前記のような配向組成物中に、ITOなどの電極を設けたガラス基板やプラスチック基板を浸した後、洗浄及び乾燥してITO上に配向膜を形成し、電極面どうしを対向配置し、スペーサーにより一定の電極面間距離を有する表示セルを作製し、液晶組成物を注入することによって作製することができる。液晶組成物としては、公知の組成物を用いることができる。誘電率異方性の異なる(正、負及び0の誘電率を有する)液晶組成物の何れも用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
合成例
<1,2−ビスヘキシルオキシ−4−ヨードベンゼンの合成>
750mLの氷酢酸に69.3g(253mmol)のヨウ素、32.8g(144mmol)の過ヨウ素酸、150mLの蒸留水、及び22.5mLの濃硫酸を加え、室温で5分撹拌した後、80.00g(287mmol)の1,2−ジヘキシルオキシベンゼンを加え、40℃で24時間撹拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、KOH水溶液(1M,1.5L)と3Lの蒸留水で洗浄し、800mLのクロロホルムで抽出した。有機相をMgSOで乾燥し、溶媒を留去した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製した後、蒸留して、218.6g(75%)の淡茶色液体を得た。
【0028】
<3,4,3',4'−テトラキスヘキシルオキシビフェニルの合成>
1200mLの蒸留水/アセトン(1/1)、194gのPd/C(Pd:10%)、194gのZn粉末、及び200g(495mmol)の1,2−ビスヘキシルオキシ−4−ヨードベンゼンからなる混合物を50℃で24時間撹拌した。得られた反応混合物をガラスフィルターでろ過し、クロロホルムで抽出した。有機相を蒸留水で洗浄し、MgSOで乾燥した。溶媒を留去し、123gの黄色固体を得た。エタノールから再結晶して、58.5g(43%)の白色固体を得た。
【0029】
<2−ヘキシルオキシフェノールの合成>
740mLのメチルエチルケトン、120g(1.09mol)のカテコール、178g(1.09mmol)の1−ブロモヘキサン、及び211g(1.53mol,1.4eq.)の炭酸カリウムからなる混合物を25時間還流した。冷却後、ろ過し、溶媒を留去した。202gの残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した後、蒸留して101g(48%)の透明液体を得た。
【0030】
<1−(16−ブロモヘキサデシル)−2−ヘキシルオキシベンゼンの合成>
350mLの脱水塩化メチレンに12.8g(66mmol)の2−ヘキシルオキシフェノール、23.3g(73mmol)の16−ブロモヘキサデカン−1−オール、及び20.0g(99mmol)のトリ−n−ブチルホスフィンを加え、アルゴン下で氷冷した。撹拌しながら25.0g(99mmol)の1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジンを少量ずつ加えた後、150mLの塩化メチレンを加えた。アルゴン下、室温で30分間撹拌した後、6時間還流した。冷却後、100mLのヘキサンに反応溶液を投下し、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、26.5g(81%)の透明液体を得た。
【0031】
<2−(16−ブロモヘキサデシル)−3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレンの合成>
40mLの塩化メチレンに5.70g(10mmol)の3,3’,4,4’−テトラキスヘキシルオキシビフェニルと15.3g(31mmol)の1−(16−ブロモヘキサデシル)−2−ヘキシルオキシベンゼンを溶解し、アルゴン下で10.0g(62mmol)のFeCl3を加え、室温で3時間撹拌した。得られた反応混合物を800mLのメタノールに投下し、でろ過し、102gの固体を得た。シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色固体を得た。エタノールから再結晶して、8.2g(76%)の白色固体を得た。
【0032】
<[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸ジエチルエステルの合成>
6.1g(5.8mmol)の2−(16−ブロモヘキサデシル)−3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレンに20mLの亜リン酸トリエチルをアルゴン下で加え、150℃で27時間撹拌した。過剰の亜リン酸トリエチルを留去し、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、5.4g(84%)の白色固体を得た。
【0033】
<[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸の合成>
2.0g(1.8mmol)の[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸ジエチルエステルを15mLの塩化メチレンに溶解し、1.2mLのトリメチルシリルブロマイドをアルゴン下で加え、室温で撹拌した。27時間後、溶媒と過剰のトリメチルシリルブロマイドを留去し、100mLのエタノールに残留物を溶解した。室温で48時間撹拌した後、溶媒を留去して、1.9g(99%)の白色固体を得た。
【0034】
実施例1
厚さ1.1mmのITO付きガラス基板(SuperITO−A、ITO層:約100nm厚、アルバック成膜(株)製)を二枚用意し、過酸化水素水(約30%)、アンモニア水溶液(約30%)及びイオン交換水からなる溶液(それぞれを1:1:5の割合で混合)に浸し、約15分間超音波処理した後、同溶液に60℃で60分間浸して、ITO表面を洗浄した。
【0035】
〈配向膜組成物の調製〉
合成例で得られた[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル−ホスホン酸(一般式(1)におけるR1〜R5:ヘキシル基、R6:ヘキサデシレン基、R7:−P(=O)(OH)2)10.5mgを10mLのエタノールに溶解して、配向膜組成物を調製した。得られた配向膜組成物に洗浄した2枚のITO付きガラス基板を浸し、室温15分間超音波処理した後、同溶液に20℃で放置した。24時間後、基板を取り出し、イオン交換水で十分洗浄し、エアーブロー(室温)により乾燥した後、メタノールで十分洗浄し、窒素ブロー(室温)により乾燥して、ITO面上に配向膜を設けた。
【0036】
〈表示セルと液晶表示素子の作製〉
次に、上記の2枚の配向膜を設けたITO付きガラス基板を、相互の電極面が対向するように配置(対向配置)し、樹脂フィルムスペーサーにより約18μmの電極面間距離を有する内部空間を形成するように構成して表示セルを作製した。
作製した表示セルに、液晶組成物MLC−6610(メルクジャパン社製)を充填し、液晶組成物が等方相を示す温度まで加熱した後、室温まで冷却し、隙間を接着剤で封止して液晶表示素子を作製した。
【0037】
〈配向特性の評価〉
上記のようして作製した液晶表示素子について、偏光顕微鏡を用いてコノスコープ像を観察した結果を図1に示す。円内にある十文字の交点が、円の中心にあれば液晶が垂直配向していることを示す。十文字の交点が円の中心からずれる場合、そのずれた距離が長いほど液晶がより傾いていることを示す。図1に示すように、実施例1で得られた液晶組成物は基板表面に対して垂直配向していることが分かる。また、コノスコープ像は、場所に依らず、どの部分を観察しても同様の結果が得られたことから、むらがなく均一に配向していることが分かった。即ち、実施例1で得られた液晶組成物は、基板表面に対して一様に垂直配向している、いわゆるホメオトロピック配向していることが分かった。
【0038】
実施例2
液晶組成物として、RDP−95407(大日本インキ化学工業(株)社製)を用いる以外は実施例1と同様に配向膜組成物を調製し、表示セルと液晶表示素子を作製し、配向特性を評価した。図2にそのコノスコープ像の観察結果を示した。液晶組成物が基板表面に対して一様にホメオトロピック配向していた。
【0039】
実施例3
配向膜組成物として、10.5mgの[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸と55.6mgのテトラデシルホスホン酸を10mLのエタノールに溶解した溶液を用いる以外は、実施例1と同様に配向膜組成物を調製し、表示セルと液晶表示素子を作製し、配向特性を評価した。図3にそのコノスコープ像の観察結果を示した。液晶組成物が基板表面に対して一様にホメオトロピック配向していた。
【0040】
実施例4
液晶組成物として、RDP−95407(大日本インキ化学工業(株)社製)を用いる以外は実施例3と同様に配向膜組成物を調製し、表示セルと液晶表示素子を作製し、配向特性を評価した。図4にそのコノスコープ像の観察結果を示した。液晶組成物が基板表面に対して一様にホメオトロピック配向していた。
【0041】
実施例5
配向膜組成物として、合成例で得られた[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸10.5mgと41.7mgのテトラデシルホスホン酸を10mLのエタノールに溶解した溶液を用い、液晶組成物として、RDP−95407(大日本インキ化学工業(株)社製)と液晶組成物MX−001543(メルクジャパン社製)の混合物(9/1の重量比)を用いる以外は実施例1と同様にして液晶表示素子を作製し、配向特性を評価した。図5にそのコノスコープ像の観察結果を示した。液晶組成物が基板表面に対して一様に垂直配向した、いわゆるホメオトロピック配向していることが分かった。
【0042】
実施例6
配向膜組成物として、10.5mgの[16−(3,6,7,10,11−ペンタキスヘキシルオキシトリフェニレン−2−イルオキシ)−ヘキサデシル]−ホスホン酸と55.6mgのテトラデシルホスホン酸を10mLのエタノールに溶解した溶液を用いる以外は、実施例5と同様に配向膜組成物を調製し、表示セルと液晶表示素子を作製し、配向特性を評価した。図6にそのコノスコープ像の観察結果を示した。液晶組成物が基板表面に対して一様にホメオトロピック配向していた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1で得られた液晶表示素子のコノスコープ像である。
【図2】実施例2で得られた液晶表示素子のコノスコープ像である。
【図3】実施例3で得られた液晶表示素子のコノスコープ像である。
【図4】実施例4で得られた液晶表示素子のコノスコープ像である。
【図5】実施例5で得られた液晶表示素子のコノスコープ像である。
【図6】実施例6で得られた液晶表示素子のコノスコープ像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種類以上含有することを特徴とする配向膜組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じか異なった炭素数4以上の炭化水素基、R6は炭素数4以上の炭化水素2価基、R7は−SiR8910、又は−P(=O)(OH)2、R8、R9、及びR10は同じか異なった−Cl、−OH、−OCH3、又は−OC25である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物と、一般式R11−R7(ここで、R11は炭素数4以上の直鎖状炭化水素基、R7は前記と同様である。)で表される化合物とを含有することを特徴とする請求項1記載の配向膜組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配向膜組成物からなる液晶配向膜を設けたことを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−191404(P2007−191404A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9428(P2006−9428)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】